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○健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針

(平成十六年七月三十日)

(厚生労働省告示第三百八号)

健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百五十条第五項の規定に基づき、健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針を次のように定めたので、同項の規定に基づき公表し、平成十六年八月一日より施行する。

健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針

第一 本指針策定の背景と目的

一 「二十一世紀における国民健康づくり運動(健康日本二十一)」(平成十二年三月三十一日厚生省発健医第百十五号等)を中核とする国民の健康づくりや疾病予防をさらに推進するため、健康増進法(平成十四年法律第百三号)が平成十五年五月一日に施行され、同法に基づく健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針(平成十六年厚生労働省告示第二百四十二号。以下「健康診査等実施指針」という。)が平成十六年六月十四日に公布されたところである。

また、平成二十年四月一日には、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)及び特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成十九年厚生労働省令第百五十七号)が施行されたことに伴い、健康診査等実施指針の一部が改正されるとともに、同法に基づく特定健康診査及び特定保健指導の適切かつ有効な実施を図るための基本的な指針(平成二十年厚生労働省告示第百五十号)等の関連告示が適用され、生活習慣病のうち特に糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の発症や重症化を予防することを目的として、メタボリックシンドロームに着目した生活習慣病予防のための健康診査(以下「特定健康診査」という。)及び保健指導(以下「特定保健指導」という。)の実施が、保険者に対し義務付けられることとなった。

さらに、平成二十五年度からは「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動(健康日本二十一(第二次))」(平成二十四年厚生労働省告示第四百三十号。以下「健康日本二十一(第二次)」という。)が適用され、健康づくりや疾病予防の更なる推進を図ることとされた。

加えて、平成二十八年四月一日には、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律(平成二十七年法律第三十一号)による健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百五十条の改正により、全国健康保険協会管掌健康保険及び組合管掌健康保険の保険者(以下「保険者」という。)は、健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者及びその被扶養者(以下「加入者」という。)の自助努力についての支援その他の加入者の健康の保持増進のために必要な事業を行うように努めなければならないこととされた。

本指針は、同条第六項に基づき、健康診査等実施指針と調和を保ちつつ、保険者が加入者を対象として行う特定健康診査及び特定保健指導のほか、同条第一項に規定する健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る加入者の自助努力についての支援その他の加入者の健康の保持増進のために必要な事業(以下「保健事業」という。)に関して、その効果的かつ効率的な実施を図るため、基本的な考え方を示すものである。

二 我が国では、生活環境の変化や高齢化の進展に伴って、疾病に占める生活習慣病の割合が増えてきており、がん、循環器疾患、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患をいう。以下同じ。)等の生活習慣病が死因の約六割を占めている。また、医療費に占める割合についてもがん、循環器疾患、糖尿病、COPD等の生活習慣病が三割を占めている。

しかしながら、生活習慣病は、多くの場合、食生活、身体活動等の日常の生活習慣を見直すことによってその発症や進行を未然に防ぐことが可能であると言われている。一方で、本人に明確な自覚症状がないまま、症状が悪化することが多いことから、本人が自らの生活習慣の問題点を発見し、意識して、その特徴に応じて、生活習慣の改善に継続的に取り組み、それを保険者等が支援していくことが必要である。

このような生活習慣の改善に向けた取組は、個々の加入者の生涯にわたる生活の質(以下「QOL」という。)の維持及び向上に大きく影響し、ひいては、医療費全体の適正化にも資するものである。

三 こうした中で、近年、特定健康診査の実施や診療報酬明細書及び調剤報酬明細書(以下「診療報酬明細書等」という。)の電子化の進展等により、保険者が健康や医療に関する情報を活用して加入者の健康課題の分析、保健事業の評価等を行うための基盤の整備が進んでいる。

また、平成二十七年には、健康寿命の延伸とともに医療費の適正化を図ることを目的として、民間主導の活動体である日本健康会議が発足し、自治体、企業、保険者等における先進的な取組を横展開するため、平成三十二年までの数値目標を定めた「健康なまち・職場づくり宣言二〇二〇」が採択されたところである。

四 本指針は、これらの保健事業をめぐる動向を踏まえ、生活習慣病対策をはじめとして、加入者の自主的な健康増進及び疾病予防の取組について、保険者がその支援の中心となって、加入者の特性を踏まえた効果的かつ効率的な保健事業を展開することを目指すものである。

五 保険者をはじめとする保健事業の実施者は、本指針、健康診査等実施指針等に基づき、保健事業の積極的な推進が図られるよう努めるものとする。

第二 保健事業の基本的な考え方

一 保険者の役割の重視

1 保険者は、加入者の立場に立って、健康の保持増進を図り、もって病気の予防や早期回復を図る役割が期待されており、都道府県、市町村(特別区を含む。以下同じ。)及び他の保険者並びに後期高齢者医療広域連合等様々な実施主体と連携しながら、個々の加入者の自主的な健康増進及び疾病予防の取組を支援すべきであること。また、加入者の健康の保持増進により、医療費の適正化及び保険者の財政基盤強化が図られることは保険者自身にとっても重要であること。

2 保険者は、加入者の特性に応じたきめ細かい保健事業を実施し、その際には職場及び地域の特性にも配慮すること。また、保健事業への参加率が低い傾向にあると考えられる被扶養者や小規模な事業所に使用される被保険者についても、保健事業への参加を促進するため、高齢者の医療の確保に関する法律第百五十七条の二第一項の規定に基づき都道府県ごとに組織される保険者協議会等を活用することなどにより、他の被用者保険の保険者、国民健康保険(以下「国保」という。)の保険者、市町村及び地域産業保健センターと連携するなどの工夫をすること。

3 保険者は、保健事業の実施にとどまらず、禁煙の推進、身体活動の機会の提供、医療機関への受診勧奨など、加入者の健康を支え、かつ、それを守るための職場環境の整備を事業主に働きかけるよう努めること。

二 健康・医療情報の活用及びPDCAサイクルに沿った事業運営

保健事業の効果的かつ効率的な推進を図るためには、健康・医療情報(健康診査の結果や診療報酬明細書等から得られる情報(以下「診療報酬明細書等情報」という。)、各種保健医療関連統計資料その他の健康や医療に関する情報をいう。以下同じ。)を活用して、PDCAサイクル(事業を継続的に改善するため、Plan(計画)―Do(実施)―Check(評価)―Act(改善)の段階を繰り返すことをいう。以下同じ。)に沿って事業運営を行うことが重要であること。また、事業の運営に当たっては、費用対効果の観点も考慮すること。

三 生活習慣病対策としての発症予防と重症化予防の推進

生活習慣病に対処するため、二次予防(健康診査等による疾病の早期発見及び早期治療をいう。)及び三次予防(疾病が発症した後、必要な治療を受け、心身機能の維持及び回復を図ることをいう。)に加え、一次予防(生活習慣を改善して健康を増進し、疾病の発症を予防することをいい、健康診査の結果等を踏まえ、特に疾病の発症の予防のための指導が必要な者(以下「要指導者」という。)に対して生活習慣の改善に関する指導を行うことを含む。以下同じ。)を重視し、総人口に占める高齢者の割合が最も高くなる時期に高齢期を迎える現在の青年期・壮年期の世代への生活習慣病の改善に向けた働きかけを重点的に行うとともに、小児期からの健康な生活習慣づくりにも配慮すること。

また、合併症の発症、症状の進展等の重症化予防の推進を図ること。

四 特定健康診査及び特定保健指導の実施

1 特定健康診査については、糖尿病等の生活習慣病の発症には、内臓脂肪の蓄積(以下「内臓脂肪型肥満」という。)が関与しており、肥満に加え、高血糖、高血圧等の状態が重複した場合には、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症リスクが高くなるため、糖尿病等の生活習慣病の発症や重症化を予防することを目的として、メタボリックシンドロームに着目し、生活習慣を改善するための特定保健指導を必要とする者を的確に抽出するために行うものである。

2 特定保健指導については、内臓脂肪型肥満に着目し、生活習慣を改善するための保健指導を行うことにより、対象者が自らの生活習慣における課題を認識して行動変容と自己管理を行うとともに健康的な生活を維持することができるようになることを通じて、糖尿病等の生活習慣病を予防することを目的とするものである。

3 これらの実施に当たっては、特定健康診査及び特定保健指導の適切かつ有効な実施を図るための基本的な指針を参照すること。

五 きめ細かい保健指導の重視

1 保険者は、特定健康診査及び特定保健指導の実施にとどまらず、健康診査においては、個々の加入者に生活習慣の問題点を発見させ、意識させるという機能を重視するべきであり、健康診査の結果を踏まえた、よりきめ細かい、個々の加入者の生活習慣等の特性に応じた継続的な保健指導に重点を置くこと。

2 健康診査の結果等を踏まえ、要指導者に対して生活習慣の改善に関する保健指導を行うことを中心に位置付けるが、必要な者には、受診勧奨や、重症化予防のための保健指導等を実施するよう努めること。

六 地域や保険者の特性に応じた事業運営

1 市町村や保険者ごとに、住民及び加入者の疾病構造、健康水準、受診実態、活用できる物的・人的資源等が大きく異なり、医療費にも格差があることから、各保険者は、事業所や地域の特性、医療費の傾向等の分析を行うとともに、加入者のニーズを把握し、分析の結果を踏まえて優先順位や課題を明らかにし、保険者の特性に応じた効果的かつ効率的な保健事業を行うよう努めること。

2 保健事業を行うに当たっては、都道府県や保険者協議会等関係者と十分連携し、地域ごとの医療費の特性や健康課題について共通の認識を持った上で、地域の特性に応じた保健事業を行うよう努めること。

3 地域の関係者が連携、協力して健康づくりを行うとの観点から、地域の特性の分析や、それに応じた課題に対する保健事業の企画及び実施に当たっては、それぞれの地域において、他の被用者保険の保険者、国保の保険者や、健康増進法に基づく健康増進事業や介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に基づく事業等の実施主体である市町村と積極的に連携、協力すること。

また、関係者間で、保険者協議会や、必要に応じ地域・職域連携協議会等の場も活用することにより、各種行事や専門職研修等を共同して実施したり、施設や保健師等の物的・人的資源を共同して利用するなど、効率的に事業を行うよう努めること。

第三 保健事業の内容

保険者は、第二の保健事業の基本的な考え方を踏まえ、本項に示す保健事業を実施するよう努めること。また、加入者が参加しやすいような環境づくりに努め、特に参加率が低い加入者については重点的に参加を呼びかけたり、加入者の参加率を高めるために事業主に協力を要請するなどの工夫を行うこと。

なお、本指針は、今後重点的に実施すべき保健事業を示すものであり、以下の項目以外でも、保険者独自の創意工夫により、健康増進及び疾病予防の観点から、より良い保健事業を展開することを期待するものであること。

一 健康診査

1 健康診査は、健康診査後の通知及び保健指導とともに、保健事業の中核的な事業の一つであり、今後とも、健康診査等実施指針等に沿って、効果的かつ効率的に実施していくことが重要であること。

2 加入者の利便性を考慮して、健康増進法等に基づく健康増進事業等と連携を図り、各種検診の同時実施に努めること。

また、その際には、検診の種類ごとに、対象者、対象年齢、検査項目等を適切に設定し、加入者に周知すること。

3 被扶養者の健康保持は被扶養者本人のみならず家族の健康管理にも影響する重要なものであることを踏まえ、特に被扶養者の健康診査については、受診が容易になるよう、健康診査の場所、時期及び期間に配慮したり、他の被用者保険の保険者と共同実施する等の工夫を行うこと。

また、市町村等が実施する保健事業の情報を加入者に提供するなど、市町村等と連携、協力することによって、受診率が向上するよう努めること。

4 検査項目及び検査方法の設定及び見直し

(一) 検査項目及び検査方法については、科学的知見の蓄積等を踏まえて設定及び見直しを行うこと。そのため、保険者は、一般に入手可能な手段により、他の実施者の実施状況、医学的に有効な検査項目及び検査方法等、必要な情報収集を行うこと。

(二) 検査項目及び検査方法の設定又は見直しを他の事業者に委託する場合には、委託契約において、当該事業者が必要な情報収集を行い、検査項目及び検査方法を適切に見直すことを求めるとともに、それを適切に管理すること。

二 健康診査後の通知

1 健康診査を行った場合には、速やかに、治療を要する者及び要指導者の把握をはじめとして、対象者の健康水準の把握及び評価を行うこと。また、保険者以外の者が健康診査を行う場合でも、事後の指導を有効に行うため、必要な範囲で、結果の把握に努めること。

2 健康診査の結果の通知については、医師、保健師等の助言及び指導を得て、治療を要する者に対して、必要に応じ医療機関での受診を勧めるとともに、経年的な変化を分かりやすく表示したり、生活習慣等に関する指導事項を添付するなど、対象者に自らの生活習慣等の問題点を発見、意識させ、療養及び疾病予防に効果的につながるような工夫を行うこと。また、保険者以外の者が健康診査を行う場合でも、その者による効果的な結果の通知に努めること。なお、個人情報保護に配慮しつつ、事業所内の電子メールやウェブサイトを活用するなど、確実で効果的な通知方法を工夫すること。

三 保健指導

保健指導は、健康診査の結果、生活状況、就労状況、生活習慣等を十分に把握し、生活習慣の改善に向けての行動変容の方法を本人が選択できるよう配慮するとともに、加齢による心身の特性の変化などライフステージや性差に応じた内容とすること。その際には、個人や集団を対象として行う方法があり、適切に組み合わせて効果的かつ効率的な方策をとること。

四 健康教育

1 健康教育(対象者の生活状況等に即した生活習慣病の予防等に関する指導及び教育を実施することをいう。以下同じ。)は、保険者の特性や課題に応じて、テーマや対象、実施方法等を選定し、計画的かつ効果的な実施に努めること。その際、個別の保健指導と併せて実施する等、個人の行動変容に対する取組を支援していくものとすること。

2 生活習慣病は生命及び健康に対して危険をもたらすものであることを示す一方で、生活習慣の改善が健康増進や疾病予防につながった好事例を示すなど、具体的な事例を挙げながら、運動習慣、食習慣、喫煙、飲酒、歯の健康の保持等について、生活習慣に着目した健康管理の重要性を加入者に理解させること。

3 喫煙や飲酒が健康に及ぼす悪影響については、多くの疫学研究等により指摘がなされており、職場の内外において、例えば、喫煙の弊害を具体的な数値を挙げて説明するなど、効果的な指導及び教育を行うこと。

4 心の健康づくりは、身体的な健康と密接に関わっており、特に職域における被保険者の健康の保持増進に極めて重要であることから、保険者は、加入者への心の健康に関する正しい知識の普及啓発等を通じ、心の病気の予防、早期発見及び早期治療ができるような健康教育を推進すること。また、その際、プライバシーの保護に配慮する一方で、他の健康教育と一体的に実施するなど、心の健康に関する健康教育が利用しやすくなる工夫を行うこと。

五 健康相談

1 健康相談は、加入者の相談内容に応じ、主体性を重んじながら、生活習慣の改善をはじめとした必要な助言及び支援を行うこと。その際には、加入者の生活習慣に関する意識及びプライバシーの保護に配慮すること。

2 定期的に健康相談を開催し、加入者の参加を促すとともに、疾病別に行うなど、より効果的で充実したものとなるよう工夫すること。

また、実施時間に配慮する、事業所内に健康相談室を設ける、事業所の巡回相談を行う、専門の電話相談窓口を設ける、電子メールを活用する等の工夫を行い、従来健康相談を利用する機会が少なかった加入者にも利用の機会を増やすよう努めること。

3 加入者が心の健康に関する相談を利用しやすい環境となるよう、他の健康相談と一体的に実施するなどの工夫を行うこと。

六 訪問指導

1 保健指導については、特定の会場を設けたり、事業所を訪問して実施する方法のほか、加入者の心身の状況、置かれている環境、受診状況等に照らして、居宅を訪問して指導することが効果的と認められる者を対象として実施すること。その際には、例えば、他の保険者等と連携、協力するなど、効率的に行うよう工夫すること。

2 居宅等における訪問指導を実施する場合には、おおむね次の事項に関する指導を必要に応じて本人又はその家族に対し行うこと。

(一) 健康診査の結果、診療報酬明細書等情報等からみて、医療機関に受診が必要な者への受診勧奨

(二) 地域における保健医療サービス、福祉・介護予防等の実施状況を勘案し、必要があると認められる場合には、これらのサービス等の活用方法又は居宅における療養方法に関する指導

(三) 生活習慣病等の予防に関する指導

(四) 心の健康づくりに関する指導

3 特に、複数の医療機関を重複して受診する加入者については、その事情を十分に聴取し、必要に応じて適切な受診につながるような助言及び指導を行うこと。

また、継続的な治療が必要であるにもかかわらず、医療機関を受診していない加入者についても、その事情を十分に聴取した上で、適切な助言及び指導を行うこと。その際には、必要に応じて、医療機関と十分な連携を図ること。

4 居宅等における訪問指導を実施する場合には、健康増進法に基づく健康増進事業との重複を避けるために実施の実態を把握するなど、市町村と連携、協力して、効率的な実施に努めること。

七 健康管理及び疾病の予防に係る加入者の自助努力についての支援

1 健康管理及び疾病の予防に係る加入者の自助努力についての支援は、加入者の健康づくりに向けた意識や行動の変容を図ることを目的として、加入者がそれぞれの年齢や健康状態等に応じ、健康づくりの取組を開始するきっかけや継続するための支援等として実施するものである。当該支援を実施する場合には、個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドライン(平成二十八年五月十八日保発第一号厚生労働省保険局長通知)も踏まえつつ、当該目的に照らして、当該支援が真に効果的であるかについて定期的に評価しながら行うこと。

2 当該支援の実施に当たっては、必要な医療を受けるべき加入者の医療機関への受診抑制を招き、これにより症状が重症化すること等がないよう、十分に留意すること。

第四 保健事業の実施計画(◆データヘルス◆計画)の策定、実施及び評価

保険者は、健康・医療情報を活用した加入者の健康課題の分析、保健事業の評価等を行うための基盤が近年整備されてきていること等を踏まえ、健康・医療情報を活用してPDCAサイクルに沿った効果的かつ効率的な保健事業の実施を図るための保健事業の実施計画(以下「実施計画」という。)を策定した上で、保健事業の実施及び評価を行うこと。

実施計画の策定、保健事業の実施及び評価に当たっては、次の事項に留意すること。

一 実施計画の策定

実施計画の策定に当たっては、特定健康診査の結果、診療報酬明細書等情報等を活用し、保険者、事業所、加入者等ごとに、生活習慣の状況、健康状態、医療機関への受診状況、医療費の状況等を把握し、分析すること。その際、性別、年齢階層別、疾病別の分析のほか、経年的な変化、他の保険者又は事業所との比較等、更に詳細な分析を行うよう努めること。

これらの分析結果に基づき、直ちに取り組むべき健康課題、中長期的に取り組むべき健康課題等を明確にして、目標値の設定を含めた事業内容の企画を行うこと。

また、具体的な事業内容の検討に当たっては、食生活、身体活動、休養、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康など、健康日本二十一(第二次)に示された各分野及びその考え方を参考にすること。その際、身体の健康のみならず、心の健康の維持についても留意すること。

二 実施計画に基づく事業の実施

実施計画に基づく事業(以下単に「事業」という。)の実施に当たっては、特定健康診査及び特定保健指導の実施率の向上を図り、加入者の健康状態に関する情報の把握を適切に行うとともに、特定健康診査の結果等を踏まえ、対象者を健康状態等により分類し、それぞれの分類にとって効果が高いと予測される事業を提供するよう努めること。

特に疾病の重症化の予防等に係る事業を行う際には、医療機関や地域の医療関係団体との連携を図ること。

1 一次予防の取組としては、加入者に自らの生活習慣等の問題点を発見させ、その改善を促す取組を行うこと。このような取組としては、情報通信技術(ICT)等を活用し、加入者自身の健康・医療情報を本人に分かりやすく提供すること、加入者の性別若しくは年齢階層ごと又は保険者、事業所等ごとの健康・医療情報を提供すること、加入者の健康増進に資する自発的な活動を推奨する仕組みを導入すること等が考えられる。

2 生活習慣病の発症を予防するため、特定保健指導の実施率の向上に努めること。

また、特定保健指導の実施に当たっては、特定健康診査の結果や診療報酬明細書等情報等を活用して、生活習慣の改善により予防効果が大きく期待できる者を明確にし、優先順位をつけて行うことが考えられること。

3 疾病の重症化を予防する取組としては、健康診査の結果や診療報酬明細書等情報等を活用して抽出した疾病リスクが高い者に対して、優先順位を設定して、症状の進展及び虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病性腎症等の合併症の発症を抑えるため、適切な保健指導、医療機関への受診勧奨を行うこと等が考えられること。その際、医療機関に受診中の者に対して保健指導等を実施する場合には、当該医療機関と連携すべきこと。

4 健康・医療情報を活用したその他の取組としては、診療報酬明細書等情報等を活用して、複数の医療機関を重複して受診している加入者に対し、医療機関、保険者等の関係者が連携して、適切な受診の指導を行うこと等が考えられること。

また、診療報酬明細書等情報等に基づき、後発医薬品を使用した場合の具体的な自己負担の差額に関して加入者に通知を行うなど、後発医薬品の使用促進に資する取組を行うことも、医療費の適正化等の観点から有効であることも多いと考えられるため、積極的にこれらの取組の実施に努めること。その他、保健指導の場などの多様な機会を通じて、後発医薬品の啓発・普及に努めること。

三 事業の評価

事業の評価は、健康・医療情報を活用して、費用対効果の観点も考慮しつつ行うこと。なお、評価の際に用いることが可能な指標としては、生活習慣の状況(食生活、日常生活における歩数、アルコール摂取量、喫煙の有無等をいう。)、健康診査等の受診率及びその結果、医療費等があること。

四 事業の見直し

それぞれの事業については、少なくとも毎年度効果の測定及び評価を行った上で、必要に応じて事業内容等の見直しを行うこと。

五 計画期間、他の計画との関係等

計画期間は、特定健康診査等実施計画(高齢者の医療の確保に関する法律第十九条第一項に規定する特定健康診査等実施計画をいう。)や健康増進計画(健康増進法第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画及び同条第二項に規定する市町村健康増進計画をいう。)との整合性も踏まえ、複数年とすること。

また、特定健康診査等実施計画は保健事業の中核をなす特定健康診査及び特定保健指導の具体的な実施方法等を定めるものであることから、保険者が保健事業を総合的に企画し、より効果的かつ効率的に実施することができるよう、可能な限り実施計画と特定健康診査等実施計画を一体的に策定することが望ましいこと。

なお、策定した実施計画については、分かりやすい形でホームページ等を通じて公表すること。

第五 事業運営上の留意事項

保険者は、保健事業の運営に当たって、特に次の事項に留意すること。

一 保健事業の担当者

1 第三に掲げられた保健事業を実施する際には、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、管理栄養士、栄養士、歯科衛生士等、生活習慣病の予防等に関し知識及び経験を有する者をもって充てること。

2 担当者の資質の向上のため、加入者の生活習慣の改善等に向けた取組の目的及び内容を理解させ、さらに知識及び技術を習得させるため、定期的な研修を行うこと。その際には、効果的な研修を行うため、他の保険者等と共同して行うことも有効であること。

二 職域及び地域におけるリーダー的人材の育成

一に掲げた直接の事業担当者のほかにも、職域及び地域のそれぞれにおいて、保険者による保健事業の目的及び内容を理解し、個々の加入者の保健事業への積極的な参加を呼びかけ、生活習慣の改善等に向けた取組を支援するリーダー的な人材の育成に努めること。地域における人材の育成に当たっては、保険者協議会等の場を通じて、他の保険者や市町村との連携に努めること。その際、必要に応じて、既存の制度や活動(例えば、健康保険組合の健康管理委員(各職場ごとに健康管理に関する情報、知識等を広く被保険者等に周知し、保健事業の有効かつ円滑な実施を図るため、被保険者の中から委嘱された者をいう。)や地域のボランティア活動)も活用すること。

三 委託事業者の活用

1 よりきめ細やかな保健事業を行うために委託事業者を活用することも可能であること。

その際は、事業が実効を上げるよう、保健や医療に関する専門家を有するなど、保健指導を効果的に行うノウハウを有するような一定の水準を満たす事業者を選定し委託すること。

特に、個人を対象とした指導や小集団を対象とした指導等においては、保険者において企画及び調整を行うことを前提に、実際の指導に当たっては保健師等の専門職を活用することが重要であること。

2 委託を行う際には、効果的な事業が行われるよう、委託事業者との間で、保健事業の趣旨や加入者への対応について、事前に十分に協議を行い、共通の認識を得ておくこと。

また、事業の終了後は、当該事業の効果について、客観的な指標を用いて評価を行うこと。

四 健康情報の継続的な管理

1 健康情報を継続的に管理することは、加入者の健康の自己管理に役立ち、疾病の発症及び重症化の予防の観点からも重要であること。

健康情報の管理は、健康の自己管理の観点から本人が主体となって行うことが原則であるが、保険者は、健康診査の結果、保健指導の内容、主な受診歴等、個々の加入者に係る健康情報を、少なくとも五年間継続して保存及び管理し、必要に応じて活用することにより、加入者による健康の自己管理及び疾病の発症や重症化の予防の取組を支援するよう努めること。

2 健康情報の提供の際の手続等については、当該情報を第三者に提供する場合には、原則としてあらかじめ加入者本人の同意を得るなど、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)及び健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(平成十六年十二月二十七日保発第一号厚生労働省保険局長通知)によること。

なお、保険者が保健事業により得た加入者の健康に関する情報を事業主に提供する場合には、保険者が事業主に代わって行った労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)に基づく事業により得られた情報以外は、原則として本人の同意を必要とすること。

3 保険者を異動する際において、加入者が希望する場合には、異動元の保険者が保存及び管理をしている健康情報を加入者に提供するとともに、異動先の保険者に同情報を提供するように加入者に対し勧奨すること。

さらに、健康情報の継続的な管理に資するよう、既存の健康手帳等を活用し、健康診査の記録を綴じ込める記録簿を新たに発行するなど、必要に応じて工夫を行うこと。

五 事業主との関係

1 保険者は、十分な保健事業を実施することができるよう、事業主又は事業主の代表者等(以下「事業主等」という。)に対して、保険者又は事業所ごとの加入者の健康状況や健康課題を客観的な指標を用いて示すことなどにより、保健事業の必要性についての理解を得るよう努めること。また、事業主等に対して、保健事業の内容、実施方法、期待される効果等を事前に十分に説明し、加入者が参加しやすい実施時間及び場所を確保することにより、保健事業に参加しやすい職場環境を醸成すること。さらに、加入者に対して保健事業への参加を勧奨してもらうこと等について、事業主等の協力が得られるよう努めること。

2 職場における禁煙や身体活動の機会の提供など、個々の加入者が健康づくりに自主的に取り組みやすい環境が職場において実現するよう、必要に応じて、事業主等に働きかけること。

3 保険者が行う保健事業は、事業主が行う福利厚生事業や労働安全衛生法に基づく事業と密接な関係がある。このため、特に健康保険組合においては、保健事業の実施に当たって、それぞれの役割分担を含めて、事前に事業主等と十分な調整を行い、効率的な実施に努めること。また、被保険者の健康水準の維持及び向上に役立てるため、例えば、高齢者の医療の確保に関する法律第二十七条第二項及び第三項の規定に基づき、四十歳以上の被保険者に係る労働安全衛生法に基づく健康診断の結果の提供を求めるとともに、四十歳未満の被保険者に係る健康診断の結果についても、本人の同意を前提として、提供してもらうよう事業主等に依頼するなど、労働安全衛生法に基づく事業との積極的な連携に努めること。

改正文 (平成二一年三月三一日厚生労働省告示第二三四号) 抄

平成二十一年四月一日から施行する。

改正文 (平成二六年三月三一日厚生労働省告示第一三九号) 抄

平成二十六年四月一日から適用する。