アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○高齢者の医療の確保に関する法律第八条第一項の規定に基づき定める計画

(平成三十一年三月二十日)

(厚生労働省告示第七十九号)

高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第八条第一項の規定に基づき、高齢者の医療の確保に関する法律第八条第一項の規定に基づき定める計画(平成二十六年厚生労働省告示第百八号)の全部を次のように改正したので、同条第七項の規定に基づき公表する。

高齢者の医療の確保に関する法律第八条第一項の規定に基づき定める計画

目次

第一 計画の位置付け

一 計画のねらい

二 計画の期間

第二 医療費を取り巻く現状と課題

一 医療費の動向

二 生活習慣病の有病者及び予備群の状況

第三 目標と取組

一 基本理念

1 国民の生活の質の維持及び向上

2 超高齢社会の到来への対応

二 医療費適正化に向けた目標

1 国民の健康の保持の推進に関する達成目標

2 医療の効率的な提供の推進に関する達成目標

3 計画期間における医療に要する費用の見込み

三 目標を達成するために国が取り組むべき施策

1 国民の健康の保持の推進に関する施策

2 医療の効率的な提供の推進に関する施策

第四 都道府県医療費適正化計画における地域の課題を踏まえた医療費適正化に資する特徴的な施策

一 住民の健康づくり等の推進

1 乳幼児期からの健康づくりの推進

2 健康な食生活の推進

3 がん検診の推進

二 高齢者の健康づくり等の推進

1 高齢者の社会活動等の推進

2 歯と口くうの健康づくりの推進

3 骨粗しよう症対策等の推進

第五 計画の推進

一 関係者の連携及び協力による計画の推進

二 計画の達成状況の評価

1 進捗状況公表

2 進捗状況に関する調査及び分析等

3 実績評価

第一 計画の位置付け

一 計画のねらい

我が国は、国民皆保険の下、誰もが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた。

しかしながら、急速な少子高齢化、経済の低成長、国民生活や意識の変化等医療を取り巻く様々な環境が変化してきており、国民皆保険を堅持し続けていくためには、国民の生活の質の維持及び向上を確保しながらも、国民の健康の保持及び医療の効率的な提供の推進に関する目標を定め、これらの目標の達成を通じて、結果として将来的な医療費の伸びの適正化を図るとともに、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図る必要がある。

このための仕組みとして、平成18年の医療制度改革において、医療費の適正化(以下「医療費適正化」という。)を推進するための計画に関する制度が創設された。

本計画は、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。以下「法」という。)第8条第1項の規定に基づき、国民の健康の保持及び医療の効率的な提供の推進に関し、国が達成すべき目標に関する事項を定めるとともに、これらの目標を達成するために国が取り組むべき施策に関する事項等を定めることにより、医療費適正化が総合的かつ計画的に推進されるようにすることを目的とするものである。

二 計画の期間

本計画の期間は、平成30年度から平成35年度までの6年間とする。

第二 医療費を取り巻く現状と課題

一 医療費の動向

平成28年度の国民医療費は42兆1,381億円となっており、前年度の42兆3,644億円に比べ2,263億円、0.5%の減少となっている。

また、過去10年の推移を振り返ると、国民医療費の伸び率は、平成25年度及び平成28年度を除き、毎年度国民所得の伸び率を上回っている。特に、患者の負担割合の増加や診療報酬のマイナス改定といった国民医療費の抑制につながる取組がなされていない年度においては、国民医療費は年間約1兆円(年率約2~3%程度)ずつ伸びる傾向にある。

また、後期高齢者の医療費についてみると、平成12年度の介護保険制度の導入に伴い、後期高齢者の医療費の一部が医療保険制度の対象範囲から除外されるようになったこと、平成14年10月から高齢者の医療費の対象年齢が段階的に引き上げられていること等により、平成11年度から平成17年度まではほぼ横ばいとなっているものの、後期高齢者医療制度が開始された平成20年度以降は伸び続けている。

また、平成28年度の一人当たり国民医療費をみると、75歳以上では年間91.0万円、65歳以上では年間72.7万円であるのに対し、65歳未満では年間18.4万円となっており、約4倍~5倍の開きがある。

今後は、高齢者人口がピークを迎える2040年頃に向け、さらに医療費が増加することになると予想される。

二 生活習慣病の有病者及び予備群の状況

高齢化の急速な進展及び生活習慣の変化に伴い、疾病構造が変化し、疾病全体に占めるがん(悪性新生物)、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病等の生活習慣病の割合が増加している。死因別死亡割合をみると、生活習慣病が5割以上を占め、国民医療費に占める生活習慣病の割合も約3分の1となっている。

また、生活習慣病の中でも、特に、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症の重要な危険因子である糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の有病者やその予備群が増加しており、その発症前の段階であるメタボリックシンドロームの該当者及び予備群の割合は、40歳から74歳までの者でみると、男性で約5人に2人、女性で約10人に1人の割合に達している。

こうした状況を踏まえると、医療費適正化に向けた取組においては、糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の発症、あるいは重症化や合併症への進行の予防に重点を置き、生涯にわたって生活の質の維持・向上を図ることが重要である。

なお、生活習慣病としてがんも大きな比重を占めているが、がん対策については、別途、がん対策基本法(平成18年法律第98号)第10条第1項の規定に基づき策定された「がん対策推進基本計画」(平成30年3月9日閣議決定)に基づいて対策を進めていくこととしている。

第三 目標と取組

一 基本理念

1 国民の生活の質の維持及び向上

医療費適正化のための具体的な取組は、第一義的には、今後の国民の健康と医療の在り方を展望し、国民の生活の質を確保・向上する形で良質かつ適切な医療の効率的な提供を目指すものでなければならない。

2 超高齢社会の到来への対応

2017年に1,700万人を超える75歳以上の人口は、2040年には2,200万人を超えると推計されており、これに伴い、さらなる医療費の増加が予想される。

これを踏まえ、医療費適正化のための具体的な取組は、結果として後期高齢者の医療費の伸び率が中長期にわたって徐々に低下していくものでなければならない。

二 医療費適正化に向けた目標

国民の受療の実態をみると、高齢期に向けて生活習慣病の外来受療率が徐々に増加し、次に75歳頃を境にして生活習慣病を中心とした入院受療率が上昇している。これを個人に置き換えると、不適切な食生活や運動不足等の不健康な生活習慣の継続がやがて糖尿病、高血圧症、脂質異常症等の発症を招き、その結果、通院及び服薬が始まり、生活習慣の改善がないままに、虚血性心疾患や脳血管疾患等の発症に至るという経過をたどることになる。

また、平成28年度における後期高齢者の一人当たり医療費をみると、一番低い新潟県が年間約75万円、一番高い福岡県が年間約117万円と、約1.5倍の差があり、入院医療費がその差の大きな原因となっている。

以上のことから、国民医療費の急増を抑えていくために重要な施策は、一つは、若い時からの生活習慣病の予防対策である。生活習慣病の発症を予防することができれば、通院しなければならない者が減少し、さらには重症化や合併症の発症を抑え、入院が必要となる者も結果として減少することとなる。

また、生活習慣病に患した後の対策も重要であり、例えば糖尿病が重症化して人工透析に移行した場合には、個人の生活の質(QOL)が著しく低下することに加え、多額の医療費が必要になることから、保険者及び後期高齢者医療広域連合(以下「保険者等」という。)により、生活習慣病の発症予防として、個人の生活習慣の改善を促す取組を進めることに併せ、生活習慣病に患した後には、速やかな医療機関の受診勧奨を行っている。一部の保険者等においては、糖尿病の重症化予防の取組として、糖尿病性腎症の患者に対し、医療機関及び薬局と連携して専門的な保健指導を実施するなど、先進的な保健事業を実施している。こうした取組を全国に展開していくため、平成27年7月には、民間主導の活動体である日本健康会議が発足しており、この動きと連動して、都道府県や保険者等の取組を推進することとする。

また、高齢期には生活習慣病の予防に加え、心身機能の低下に起因した疾病の予防も重要であり、保険者等において、こうした高齢期の特性に合わせた栄養指導等の取組を進めている。

次に、第二期医療費適正化計画の計画期間においては、高齢者の入院医療費と平均在院日数との高い相関関係を踏まえ、平均在院日数の短縮を目標として、病院・病床機能の分化・強化、在宅医療の推進及び医療と介護の連携の強化を図ること等の取組を推進してきた。

今後、急速な少子高齢化の進展が見込まれる中にあっては、患者の視点に立って、どの地域の患者も、その状態像に即した適切な医療を適切な場所で受けられることが必要であり、医療機関の自主的な取組により、医療機関の病床を医療ニーズの内容に応じて機能分化しながら、切れ目のない医療・介護を提供することにより、限られた医療資源を有効に活用することが医療費適正化の観点からも重要である。このため、本計画の計画期間においては、病床機能の分化及び連携の推進並びに地域包括ケアシステムの構築を推進することとする。

上記に加え、「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」が平成25年4月に策定されるなど、後発医薬品の使用促進の取組が進められており、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(平成29年6月9日閣議決定)において、平成32年9月までに後発医薬品の使用割合を80%以上とすることとされたところである。

こうした現状や考え方に立ち、国が達成すべき目標を、それぞれ次の1及び2のように設定するが、これらの目標については、今後の状況を踏まえ、医療費適正化により資するものとなるようにする観点から検証を加え、必要な見直しを行うこととする。

1 国民の健康の保持の推進に関する達成目標

(1) 特定健康診査の実施率

平成35年度において、40歳から74歳までの対象者の70%以上が特定健康診査(法第18条第1項に規定する特定健康診査をいう。以下同じ。)を受診することとする。

(2) 特定保健指導の実施率

平成35年度において、特定保健指導(法第18条第1項に規定する特定保健指導をいう。以下同じ。)が必要と判定された対象者の45%以上が特定保健指導を受けることとする。

(3) メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少率

平成35年度において、メタボリックシンドロームの該当者及び予備群(当該年度に特定保健指導が必要と判定された対象者をいう。)が、平成20年度と比べて25%以上減少することとする。

(4) たばこ対策

がん、循環器疾患等の生活習慣病の発症予防のためには、予防可能な最大の危険因子の一つである喫煙及び受動喫煙による健康被害を回避することが重要である。こうした健康被害を予防するため、たばこの健康影響や禁煙についての普及啓発に取り組むこととする。

(5) 予防接種

疾病予防という公衆衛生の観点及び国民の健康の保持の観点から、予防接種の適正な実施が重要であることから、予防接種の対象者が適切に接種を受けられるようにするために、関係団体との連携や普及啓発等の取組を行うこととする。

(6) 生活習慣病等の重症化予防の推進

生活習慣病等の症状の進展及び合併症の発症等の重症化予防のために、日本健康会議の動きとも連動して、都道府県や保険者等の取組を推進し、先進的な取組を横展開することとする。

(7) その他予防・健康づくりの推進

(1)から(6)まで以外の取組についても、健康寿命の延伸の観点から、保険者等に対してインセンティブを付与すること等により、保険者等の予防・健康づくりの取組を推進することとする。

2 医療の効率的な提供の推進に関する達成目標

(1) 後発医薬品の使用促進

「経済財政運営と改革の基本方針2017」において、平成32年9月までに後発医薬品の使用割合を80%以上とすることとされたことを踏まえ、平成32年9月までに後発医薬品の使用割合を80%以上とすることを前提に、平成35年度には、後発医薬品の使用割合が80%以上に到達していることとする。

(2) 医薬品の適正使用の推進

重複投薬の是正等、医薬品の適正使用を推進することが重要であることから、医薬品の適正使用に関する普及啓発や保険者等による医療機関及び薬局と連携した訪問指導の取組の横展開等を行うこととする。

また、複数疾患を有する患者は、複数種類の医薬品の投与を受けている可能性が高いが、それが副作用の発生や医薬品の飲み残し等につながっているとの指摘があることから、適切な投薬に関する普及啓発や保険者等による医療機関及び薬局と連携した服薬状況の確認及び併用禁忌の防止の取組の実施等、複数種類の医薬品の投与の適正化に関する取組の横展開等を行うこととする。なお、複数種類の医薬品の投与の適否については、一概に判断できないことに留意する。

3 計画期間における医療に要する費用の見込み

今後、さらなる医療費の増加が見込まれる中にあって、国としては、特定健康診査及び特定保健指導(以下「特定健康診査等」という。)をはじめとする国民の健康の保持の推進に関する施策や、後発医薬品の使用促進をはじめとする医療の効率的な提供の推進に関する施策を進めることにより、医療費適正化を推進していく。

具体的な医療費の見込みについては、計画期間における47都道府県の医療費の見込みを機械的に足し上げると、入院医療費について、病床機能の分化及び連携の推進の成果を踏まえた入院医療費は19.9兆円、入院外医療費について、医療費適正化の取組がなされない場合の平成35年度における入院外医療費は約30.4兆円、医療費適正化の取組がなされた場合の平成35年度における入院外医療費は約29.9兆円となっており、医療費適正化の取組がなされた場合の平成35年度における医療費の総額は約49.7兆円となっている。なお、一部の都道府県においては、医療費適正化の取組がなされない場合の平成35年度における医療費を算出していないことから、医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(平成28年厚生労働省告示第128号)を基に、国において算出していることに留意する。また、病床機能の分化及び連携による在宅医療等への移行による入院外医療費への影響については見込んでいないことに留意する。

三 目標を達成するために国が取り組むべき施策

1 国民の健康の保持の推進に関する施策

(1) 保険者による特定健康診査等の推進

国は、保険者による特定健康診査等の取組が効率的かつ効果的に実施されるよう、次のような支援を行う。

① 保健事業の人材養成

保険者による特定健康診査等実施計画(法第19条第1項に規定する特定健康診査等実施計画をいう。)の策定及び同計画に基づく着実な保健事業の展開を支援するため、各保険者における保健事業の企画立案、実施及び実施後評価を行うことができる人材の養成を支援する。

特に、保健指導の実施者の質及び量的な確保が重要であり、保健指導の実施に携わる医師、保健師及び管理栄養士等に対する実践的な特定保健指導のプログラムの習得のための研修の実施を支援する。

② 特定健康診査等の内容の見直し

平成30年度より、特定保健指導における積極的支援(特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成19年厚生労働省令第157号)第8条第1項に規定する積極的支援をいう。)対象者について、保健指導の実施量による評価に代え、保健指導による腹囲・体重の改善状況による評価を可能とするなど、特定保健指導の運用を柔軟にしており、今後、当該運用の実践例の分析等を行う。

さらに、特定健康診査等に関するデータや現場での優れた実践例の分析等を踏まえ、より効果的かつ効率的な特定健康診査等が実施できるよう、特定健康診査の項目、特定保健指導の基準等を必要に応じて見直す。

③ 集合的な契約の活用の支援

生活習慣病対策の実効性を高めるためには、多くの被保険者及び被扶養者が特定健康診査等を受けられるようにすることが必要である。

そのためには、自宅や職場に近い場所で受診でき、被保険者及び被扶養者の立替払い等の負担を避けられる体制づくりが必要となるが、このような体制を全国の保険者が効率的に実現できるよう、複数の保険者による複数の健診・保健指導機関との集合的な契約の枠組みの活用を支援する。

④ 好事例の収集及び公表

日本健康会議の動きとも連動して、保険者又はその委託を受けた健診・保健指導機関における好事例(特定健康診査等の実施率を高めるための受診勧奨や結果通知等の取組例、生活習慣の改善率の高い特定保健指導の提供例等)を収集し、公表する。

また、特に優れた取組を行っている保険者に対しては、表彰等を行う。

⑤ 被用者保険の被扶養者の特定健康診査の実施率向上に向けた対策

被用者保険の被扶養者の特定健康診査の実施率向上には、被扶養者が特定健康診査を受診しやすい環境の整備等が必要であり、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が実施するがん検診と特定健康診査を同時に実施する取組や、市町村への特定健康診査の実施の委託を推進する。また、被扶養者の特定健康診査の受診意欲を高めるための保険者による取組を推進する。

⑥ 特定健康診査等の効果の検証及び医療費適正化効果の検証

診療報酬明細書及び特定健康診査等の実施状況に関する結果(以下「レセプト等」という。)の分析を行い、特定保健指導を実施することによる特定健康診査における検査値の改善効果及び医療費適正化の効果の検証を進める。

⑦ 特定健康診査の情報等に係る保険者と関係者の連携の推進

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づき事業者が実施する健康診断の結果の保険者への提供の促進を図る等、特定健康診査の情報等について、保険者と関係者の間の連携を推進する。

⑧ 国庫補助

保険者に対し、特定健康診査等の実施に要する費用の一部を助成する。

⑨ 保険者に対するインセンティブの付与

保険者の特定健康診査等の実施率等に応じて、インセンティブを付与することにより、保険者による特定健康診査等の取組を推進する。

⑩ 保険者別の特定健康診査等の実施率の公表

保険者機能の責任を明確にする観点から、平成29年度実績より、全保険者の特定健康診査等の実施率を公表する。

(2) 都道府県や市町村の啓発事業の促進及び国による国民運動

保険者による特定健康診査等の取組は、都道府県や市町村を中心とした一般的な住民向けの健康増進対策(ポピュレーションアプローチによる健康増進対策)と相まって、生活習慣病予防の成果を効果的に発揮するものである。

都道府県や市町村によるポピュレーションアプローチの例としては、運動習慣の定着、食生活の改善に向けた適切な量と質を確保した食事の普及啓発、たばこの健康影響についての知識及び禁煙支援プログラムの普及、生活習慣等に関する特徴の分析及び住民への提供並びに生活習慣を改善していくための特定保健指導の対象を含む住民による自主活動やサークル活動の立ち上げの支援等が考えられる。

国は、特定健康診査等をはじめとする健康診査及び保健指導等の実施率向上等のため、国民一人一人の健康への意識付けに向けた広報活動を強化するとともに、都道府県や市町村における取組に対して適宜助言その他の支援を行うほか、先進的な事例等については広く他の地方自治体に横展開する等の取組を行う。

また、国としても、国民の健康寿命の延伸と健康格差の縮小を図り、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現するため、運動、食生活、禁煙及び健診・検診の受診をテーマにスマート・ライフ・プロジェクトを推進し、地方自治体や企業等と協力・連携しながら国民運動を進める。

(3) 効果的な保健事業の推進

① 保険者等によるレセプト等の利活用の促進

健康・医療情報を活用することにより、PDCAサイクルに沿った効果的かつ効率的な保健事業の実施を推進するため、◆データヘルス◆計画の策定等、保険者がレセプト等に基づき分析を行い、当該結果に基づき実施する保健指導を推進する。

② 糖尿病性腎症患者の重症化予防の取組の展開

レセプト等により抽出した糖尿病性腎症患者であって、生活習慣を改善することにより重症化を予防することが期待される者に対し、保険者等が医療機関及び薬局や地域の医療関係者と連携して保健指導を実施することを推進する。

③ 重複受診者及び頻回受診者等に対する訪問指導等

レセプト等により抽出した重複受診者及び頻回受診者等に対して訪問指導等を実施することにより、適正受診の促進を図る取組を推進する。

④ 特定保健指導の対象にならない者への対応

特定健康診査を受診した者のうち、服薬者であるため特定保健指導の対象とならないが高血圧である者等について、特定健康診査の結果に基づき健康の保持増進のために保健指導が必要と認められる者に対する保健指導を推進する。

⑤ 保険者等の連携の促進

各都道府県の保険者協議会(法第157条の2第1項に規定する保険者協議会をいう。以下同じ。)における特定健康診査の実施等に関する保険者と関係者間の連絡調整及び医療に要する費用に関する情報についての調査・分析等に関する業務の実施の徹底を図るとともに、都道府県が医療費適正化計画又は医療計画(医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第1項の規定に基づく医療計画をいう。以下同じ。)を策定する際には保険者協議会の意見を聴くこととされていることも踏まえ、保険者協議会が十分に機能を発揮できるよう取組を行う。

(4) たばこ対策の推進

禁煙希望者に対する禁煙支援、未成年者の喫煙防止対策、受動喫煙防止対策及びたばこによる健康への影響や禁煙についての教育、普及啓発等に取り組む。

また、望まない受動喫煙の防止を図ることを目的とした健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号)が成立したことを踏まえ、同法の円滑な施行に向けた取組を行う。

(5) 予防接種の推進

予防接種に関する啓発及び知識の普及、予防接種の研究開発の推進及びワクチンの供給の確保等の必要な措置、予防接種事業に従事する者に対する研修の実施等必要な措置並びに予防接種の有効性及び安全性の向上を図るために必要な調査及び研究について着実な実施を図るとともに、副反応報告制度の運用及び健康被害の救済についても円滑な運用を行う。

(6) 生活習慣病等の重症化予防の推進

多くの保険者等で取組が推進されるよう、日本健康会議とも連携しつつ、実施に当たっての民間事業者の育成や普及に加え、効果的な事例の収集、取組を広げるための課題の検証や推進方策の検討を行い、保険者等に提供する等の必要な支援を行う。また、高齢者の特性に応じた保健事業を推進する観点から、効果的な事例の周知を行う。

(7) その他予防・健康づくりの推進

その他保険者等の予防・健康づくりの取組として、加入者に健康情報を分かりやすく伝える取組や、加入者が自主的に健康づくりに取り組んだ場合等に還元可能なポイントを提供する等の個人の健康づくりに向けた自助努力を喚起する取組が推進されるよう、保険者等に対してインセンティブを付与する等の支援を行う。

2 医療の効率的な提供の推進に関する施策

(1) 病床機能の分化及び連携並びに地域包括ケアシステムの構築

本計画においては、地域医療構想(医療計画に定める地域における将来の医療提供体制に関する構想に関する事項をいう。以下同じ。)における病床機能の分化及び連携の推進の成果を反映し、医療費の見込みを定めることとしていることを踏まえ、都道府県の地域医療構想に基づく取組の進捗状況の把握及び医療介護総合確保基金を通じた都道府県に対する財政支援等に取り組む。

また、病床機能の分化及び連携を推進するためには、まちづくりの視点にも留意しつつ、患者ができる限り住み慣れた地域で生活を継続できる体制整備を進めることが重要であることから、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など多様な住まいの整備、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことを可能とする観点からの医療・介護サービス等の充実など、地域包括ケアシステムの構築に関する施策の支援に取り組む。

(2) 後発医薬品の使用促進

後発医薬品の使用促進を図るため、後発医薬品と先発医薬品の自己負担の差額を加入者に対し通知する取組及び加入者が医療機関等に対し後発医薬品を希望することを示すカードを配布する取組といった保険者等による後発医薬品の普及及び啓発に係る取組等について、保険者等に対してインセンティブを付与すること等により支援する。また、患者及び医療関係者が安心して後発医薬品を使用することができるよう、医療関係者に対する啓発資料の送付や情報提供を進めるとともに、安定供給体制の確保について、医薬品の製造販売業者への指導等を行う。

加えて、後発医薬品の使用促進に向けて、平成30年度実績より、保険者等別の後発医薬品の使用割合を公表する。

(3) 医薬品の適正使用の推進

保険者等において服用薬の一元的かつ継続的な把握ができるよう、保険者協議会を活用した重複投薬の是正に向けた取組や、処方医と連携したかかりつけ薬剤師・薬局による取組を推進する。

このほか、複数種類の医薬品の投与を受けている患者に対して、その服薬状況の分析も踏まえ、保険者協議会を通じた保険者等による医療機関及び薬局と連携した服薬状況の確認及び併用禁忌の防止の取組を推進する。なお、複数種類の医薬品の投与の適否については、一概に判断できないことに留意する。

これらの取組については、保険者等に対するインセンティブを付与すること等により支援する。

第四 都道府県医療費適正化計画における地域の課題を踏まえた医療費適正化に資する特徴的な施策

医療費適正化を推進していくためには、特定健康診査等の推進や後発医薬品の使用促進のみならず、地域の課題を踏まえ、生涯を通じた予防や健康管理の取組等、総合的な取組の推進が必要である。第三の三に掲げる施策に加え、都道府県医療費適正化計画(法第9条第1項に規定する都道府県医療費適正化計画をいう。以下同じ。)においては、地域の課題も踏まえて、以下のような特徴的な取組を推進することとされている。

一 住民の健康づくり等の推進

1 乳幼児期からの健康づくりの推進

乳幼児に対する健康診査や学校教育活動等の機会を活用し、子どもの適正体重の管理及び朝食の摂取等に関する親世代への働きかけの促進を図るとともに、乳幼児期からの基本的生活習慣の確立や子どもの頃からの食育を推進する取組

2 健康な食生活の推進

生活習慣病の予防のため、食塩摂取量の減少、野菜摂取量の増加等、適切な量と質を確保した食事の普及啓発を図るとともに、飲食店や食料品店等と連携して健康な食事を実践しやすい環境を整備する取組

3 がん検診の推進

都道府県医療費適正化計画と連携して、都道府県がん対策推進計画(がん対策基本法第12条第1項に規定する都道府県がん対策推進計画をいう。)に基づき、がん検診の受診率向上に向けた環境整備やがん予防に係る普及啓発を行う取組

二 高齢者の健康づくり等の推進

1 高齢者の社会活動等の推進

高齢者の就業機会の確保、生涯学習の充実、ライフステージに応じたスポーツ活動の促進を支援すること等により、高齢者の社会活動等の推進を図る取組

2 歯と口くうの健康づくりの推進

かかりつけ歯科医の普及や8020運動を引き続き推進し、歯と口の機能を維持することで、高齢者の誤えん性肺炎、低栄養等の予防を図るため、口くうケアに係る体制整備及び定期的な歯科検診の受診等を促進するとともに、歯科口くう保健の推進に関する法律(平成23年法律第95号)に基づき生涯にわたる歯と口くうの健康づくりに関する施策を総合的に推進する取組

3 骨粗しよう症対策等の推進

(1) 骨粗しよう症の予防及び早期発見のため、骨粗しよう症に関する健康診断及び望ましい食生活を推進するとともに、骨粗しよう症を予防するための適度な運動の必要性について普及啓発を図る取組

(2) ロコモティブシンドローム(運動器症候群)に関する周知及び予防を推進する取組

4 フレイル対策の推進

フレイル(高齢者の虚弱)に関する周知及び住民の通いの場づくりによる高齢者の健康づくり・介護予防を推進する取組

第五 計画の推進

一 関係者の連携及び協力による計画の推進

本計画は、保険者等や医療機関といった多様な主体が、互いに連携しながら、国民の生活の質の維持・向上、安心・信頼の医療の確保、生活習慣の予防等の推進に向け、それぞれが担当すべき取組を進めていく必要がある。

このため、国は、国民の健康の保持の推進に関しては都道府県や保険者等及び特定健康診査等の実施機関等と、医療の効率的な提供の推進に関しては都道府県や医療機関及び介護サービス事業者等と情報交換を行うとともに、必要な連携及び協力に努めることとする。

また、法第9条第9項及び第10項の規定により、保険者協議会を組織している都道府県は、都道府県医療費適正化計画に基づく施策の実施に関して必要があると認め、当該保険者協議会を組織する保険者等に対して必要な協力を求める場合は、当該保険者協議会を通じて協力を求めることができることとされている。医療費適正化の推進に向け、保険者協議会等を積極的に活用することが期待されることから、国は、保険者協議会の体制及び運営について、必要に応じ、助言及び協力に努めることとする。

二 計画の達成状況の評価

国は、毎年、進捗状況の管理を行い、適切な分析及び対応を行ういわゆるPDCAサイクルに基づく管理を行う。

1 進捗状況公表

国は、計画に掲げた目標の達成に向けた進捗状況を把握するため、法第11条第6項の規定により、年度(計画最終年度及び実績評価を行った年度を除く。)ごとに全国医療費適正化計画の進捗状況を公表する。

2 進捗状況に関する調査及び分析等

国は、第四期医療費適正化計画の作成に資するため、法第11条第7項の規定により、計画期間の最終年度である平成35年度に計画の進捗状況に関する調査及び分析を行い、その結果を公表する。また、計画期間において、国民の健康の保持の推進に関する目標及び医療の効率的な提供の推進に関する目標を達成できないと認める場合又は国における医療に要する費用が国の医療に要する費用の目標を著しく上回ると認める場合には、法第11条第8項の規定により、その要因を分析するとともに、当該要因の解消に向けて、保険者等、医療機関その他の関係者と協力して必要な対策を講じる。

3 実績評価

本計画の計画期間の終了年度の翌年度(平成36年度)に、第三の二の1及び2の目標の達成状況及び第三の三の施策の実施状況に関する調査及び分析を行い、本計画の実績に関する評価を行う。

都道府県が行う都道府県医療費適正化計画の実績評価及びこれまでの全国レベルでの評価等を踏まえ、国全体としての評価を行う。