添付一覧
○◆国民年金・厚生年金保険障害認定基準について◆
(昭和61年3月31日)
(庁保発第15号)
(各都道府県知事あて社会保険庁年金保険部長通知)
今般、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号。以下「改正法」という。)が本年4月1日から施行されることに伴い、国民年金法施行令等の一部を改正する等の政令(昭和61年政令第53号。以下「整備政令」という。)が本年3月28日をもつて公布され、同年4月1日から施行されることとされた。
整備政令による改正後の国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)別表並びに厚生年金保険法施行令(昭和29年政令第110号)別表第1及び別表第2に規定する障害の程度の認定に関しては、別添「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」を定め、本年4月1日よりこれにより取り扱うこととしたので、その運用に遺憾なきを期せられたく通知する。
なお、今般の改正法施行後もなお従前の例によることとされた改正法による改正前の国民年金法(昭和34年法律第141号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)の規定に基づく障害給付に係る障害の程度の認定に関しては、それぞれ国民年金障害等級認定基準(昭和54年11月1日庁保発第31号)及び国民年金において併合認定を行う場合の後発障害認定基準(昭和54年11月1日庁保発第32号)並びに厚生年金保険の障害認定要領(昭和52年7月15日庁保発第20号)により取り扱うものであるので、申し添える。
[別添]
国民年金・厚生年金保険
障害認定基準
平成25年6月1日改正
国民年金・厚生年金保険障害認定基準/目次
第1 一般的事項
1 障害の状態
2 傷病
3 初診日
4 障害認定日
5 傷病が治った状態
6 事後重症による年金
7 基準傷病、基準障害、はじめて2級による年金
第2 障害認定に当たっての基本的事項
1 障害の程度
2 認定の時期
3 認定の方法
第3 障害認定に当たっての基準
第1章 障害等級認定基準
第1節 眼の障害
第2節 聴覚の障害
第3節 鼻腔機能の障害
第4節 平衡機能の障害
第5節 そしゃく・嚥下機能の障害
第6節 言語機能の障害
第7節 肢体の障害
第1 上肢の障害
第2 下肢の障害
第3 体幹・脊柱の機能の障害
第4 肢体の機能の障害
(参考)肢体の障害関係の測定方法
第8節 精神の障害
第9節 神経系統の障害
第10節 呼吸器疾患による障害
(参考)「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」より抜粋
第11節 心疾患による障害
第12節 腎疾患による障害
第13節 肝疾患による障害
第14節 血液・造血器疾患による障害
第15節 代謝疾患による障害
第16節 悪性新生物による障害
第17節 高血圧症による障害
第18節 その他の疾患による障害
第19節 重複障害
第2章 併合等認定基準
第1節 基本的事項
第2節 併合(加重)認定
第3節 総合認定
第4節 差引認定
別表1 併合判定参考表
別表2 併合(加重)認定表
別表3 現在の活動能力減退率及び前発障害の活動能力減退率
別表4 差引結果認定表
第1 一般的事項
1 障害の状態
障害基礎年金、障害厚生年金及び障害手当金が支給される「障害の状態」とは、身体又は精神に、国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)別表(厚生年金保険法施行令(昭和29年政令第110号)第3条の8において厚生年金保険の1級及び2級の障害の状態とされる場合を含む。以下「国年令別表」という。)、厚生年金保険法施行令別表第1(以下「厚年令別表第1」という。)及び厚生年金保険法施行令別表第2(以下「厚年令別表第2」という。)に定める程度の障害の状態があり、かつ、その状態が長期にわたって存在する場合をいう。
2 傷病
(1) 「傷病」とは、疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病を総称したものをいう。
(2) 「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである。
3 初診日
「初診日」とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいう。
4 障害認定日
「障害認定日」とは、障害の程度の認定を行うべき日をいい、請求する傷病の初診日から起算して1年6月を経過した日又は1年6月以内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)をいう。
5 傷病が治った場合
「傷病が治った場合」とは、器質的欠損若しくは変形又は機能障害を残している場合は、医学的に傷病が治ったとき、又は、その症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待し得ない状態に至った場合をいう。
6 事後重症による年金
「事後重症による年金」とは、傷病により障害の状態にあるものが、障害認定日において政令で定める障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなかった場合で、当該傷病による障害により65歳に達する日の前日までに、政令で定める障害等級に該当する程度の障害の状態に該当し、かつ、65歳に達する日の前日までに裁定請求のあった場合に支給する年金をいう。
7 基準傷病、基準障害、はじめて2級による年金
(1) 「基準傷病」とは、既に発している傷病による障害と、新たに発した傷病(既に発している傷病の初診日以後に初診日のある傷病に限る。)による障害を併合して、初めて、障害等級が1級又は2級に該当する程度の障害の状態に至った場合における新たに発した当該傷病をいう。
(2) 「基準障害」とは、基準傷病による障害をいう。
(3) 「はじめて2級による年金」とは、既に基準傷病以外の傷病により障害の状態にあるものが、基準傷病に係る障害認定日以後65歳に達する日の前日までの間において、初めて、基準障害と他の障害とを併合して障害等級が1級又は2級に該当する程度の障害の状態に至った場合に支給される障害基礎年金及び障害厚生年金をいう。
第2 障害認定に当たっての基本的事項
1 障害の程度
障害の程度を認定する場合の基準となるものは、国年令別表、厚年令別表第1及び厚年令別表第2に規定されているところであるが、その障害の状態の基本は、次のとおりである。
(1) 1級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。
(2) 2級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。
(3) 3級
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については、第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)
(4) 障害手当金
「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。
2 認定の時期
障害の程度の認定時期は、次のとおりとする。
(1) 障害認定日
(2) 「事後重症による年金」については、裁定請求書を受理した日(65歳に達する日の前日までに受付けたものに限る。)
(3) 「はじめて2級による年金」については、障害の程度が2級以上に該当した日(65歳に達する日の前日までに該当したものに限る。)
(4) 「障害手当金」については、初診日から起算して5年を経過する日までの間において傷病の治った日
3 認定の方法
(1) 障害の程度の認定は、診断書及びX線フィルム等添付資料により行う。
ただし、提出された診断書等のみでは認定が困難な場合又は傷病名と現症あるいは日常生活状況等との間に医学的知識を超えた不一致の点があり整合性を欠く場合には、再診断を求め又は療養の経過、日常生活状況等の調査、検診、その他所要の調査等を実施するなどして、具体的かつ客観的な情報を収集した上で、認定を行う。
また、原則として、本人の申立等及び記憶に基づく受診証明のみでは判断せず、必ず、その裏付けの資料を収集する。
(2) 障害の程度の認定は、第2の「障害の程度」に定めるところに加え、第3の第1章「障害等級認定基準」に定めるところにより行うものとする。
なお、同一人について、2以上の障害がある場合の障害の程度の認定は、第3の第1章「障害等級認定基準」に定めるところによるほか、第3の第2章「併合等認定基準」に定めるところにより行う。
ただし、第1章の第10節から第18節までの内科的疾患の併存している場合及び第1章各節の認定要領において特に定めている場合は、総合的に認定する。
(3) 「傷病が治らないもの」の障害の程度の認定に当たっては、障害の程度の認定時期以後おおむね1年以内に、その状態の変動が明らかに予測されるときは、その予測される状態を勘案して認定を行う。
(4) 「障害等級認定基準」及び「併合等認定基準」に明示されていない障害及び障害の程度については、その障害によって生じる障害の程度を医学的検査結果等に基づき判断し、最も近似している認定基準の障害の程度に相当するものを準用して行う。
(5) 「傷病が治らないもの」であって、3級の第14号と認定したものについては、経過観察を行い、症状が固定に達したものは、3級の第14号に該当しないものとする。
第3 障害認定に当たっての基準
第1章 障害等級認定基準
第1節/眼の障害
眼の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
眼の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
1級 |
両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの |
|
一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの |
|||
ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの |
|||
自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの |
|||
2級 |
両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの |
||
一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの |
|||
ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの |
|||
自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの |
|||
身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
|||
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたもの |
ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下に減じたもの |
|||
自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下に減じたもの |
|||
別表第2 |
障害手当金 |
両眼の視力がそれぞれ0.6以下に減じたもの |
|
一眼の視力が0.1以下に減じたもの |
|||
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
|||
両眼による視野が2分の1以上欠損したもの |
|||
ゴールドマン型視野計による測定の結果、I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下に減じたもの |
|||
自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下に減じたもの |
|||
自動視野計による測定の結果、両眼中心視野視認点数が40点以下に減じたもの |
|||
両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの |
|||
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
2 認定要領
眼の障害は、視力障害、視野障害又はその他の障害に区分する。
(1) 視力障害
ア 視力は、万国式試視力表又はそれと同一の原理に基づく試視力表により測定する。
イ 視標面照度は500~1,000ルクス、視力検査室の明るさは50ルクス以上で視標面照度を上回らないこととし、試視力表から5mの距離で視標を判読することによって行う。
ウ 屈折異常のあるものについては、矯正視力により認定するが、この場合最良視力が得られる矯正レンズによって得られた視力を測定する。眼内レンズ挿入眼は裸眼と同様に扱い、屈折異常がある場合は適正に矯正した視力を測定する。
エ 両眼の視力を別々に測定し、良い方の眼の視力と他方の眼の視力とで障害の程度を認定する。
オ 屈折異常のあるものであっても次のいずれかに該当するものは、裸眼視力により認定する。
(ア) 矯正が不能のもの
(イ) 矯正により不等像視を生じ、両眼視が困難となることが医学的に認められるもの
(ウ) 最良視力が得られる矯正レンズの装用が困難であると医学的に認められるもの
カ 視力が0.01に満たないもののうち、明暗弁のもの又は手動弁のものは視力0として計算し、指数弁のものは0.01として計算する。
キ 「両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.03以下のものをいう。
ク 「一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のものをいう。
ケ 「両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.07以下のものをいう。
コ 「一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のものをいう。
サ 「両眼の視力がそれぞれ0.1以下に減じたもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.1以下のものをいう。
シ 「両眼の視力がそれぞれ0.6以下に減じたもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.6以下のものをいう。
ス 「一眼の視力が0.1以下に減じたもの」とは、一眼の視力が0.1以下のものをいう。
(2) 視野障害
ア 視野は、ゴールドマン型視野計又は自動視野計を用いて測定する。認定は、ゴールドマン型視野計又は自動視野計のどちらか一方の測定結果で行うこととし、両者の測定結果を混在させて認定することはできない。
イ ゴールドマン型視野計を用いる場合は、それぞれ以下によって測定した「周辺視野角度の和」、「両眼中心視野角度」、「求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの」及び「両眼による視野が2分の1以上欠損したもの」に基づき、認定を行う。なお、傷病名と視野障害の整合性の確認が必要な場合又はⅠ/4の視標で測定不能の場合は、Ⅴ/4の視標による視野を確認した上で総合的に認定する。
(ア) 「周辺視野角度の和」とは、Ⅰ/4の視標による8方向(上・内上・内・内下・下・外下・外・外上の8方向)の周辺視野角度の和とする。8方向の周辺視野角度はⅠ/4視標が視認できない部分を除いて算出するものとする。
Ⅰ/4の視標で、周辺にも視野が存在するが中心部の視野と連続しない部分は、中心部の視野のみで算出する。
Ⅰ/4の視標で、中心10度以内に視野が存在しない場合は、周辺視野角度の和が80度以下として取り扱う。
(イ) 「両眼中心視野角度」とは、以下の手順に基づき算出したものをいう。
a Ⅰ/2の視標による8方向(上・内上・内・内下・下・外下・外・外上の8方向)の中心視野角度の和を左右眼それぞれ求める。8方向の中心視野角度はⅠ/2視標が視認できない部分を除いて算出するものとする。
b aで求めた左右眼の中心視野角度の和に基づき、次式により、両眼中心視野角度を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。
両眼中心視野角度=(3×中心視野角度の和が大きい方の眼の中心視野角度の和+中心視野角度の和が小さい方の眼の中心視野角度の和)/4
c なお、Ⅰ/2の視標で中心10度以内に視野が存在しない場合は、中心視野角度の和は0度として取り扱う。
(ウ) 「求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの」とは、求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標による視野の面積が、中心5度以内の視野の面積と同程度におさまるものをいう。なお、その際、面積は厳格に計算しなくてよい。
(エ) 「両眼による視野が2分の1以上欠損したもの」とは、両眼で一点を注視しつつ測定した視野が、生理的限界の面積の2分の1以上欠損している場合の意味であり、左右眼それぞれに測定したⅠ/4の視標による視野表を重ね合わせることで、両眼による視野の面積を得る。その際、面積は厳格に計算しなくてよい。なお、視野の生理的限界は、左右眼それぞれに上・内上・内・内下60度、下70度、外下80度、外95度、外上75度である。
ウ 自動視野計を用いる場合は、それぞれ以下によって測定した「両眼開放視認点数」及び「両眼中心視野視認点数」に基づき、認定を行う。
(ア) 「両眼開放視認点数」とは、視標サイズⅢによる両眼開放エスターマンテスト(図1)で120点測定し、算出したものをいう。
(イ) 「両眼中心視野視認点数」とは、以下の手順に基づき算出したものをいう。
a 視標サイズⅢによる10―2プログラム(図2)で中心10度以内を2度間隔で68点測定し、左右眼それぞれについて感度が26dB以上の検査点数を数え、左右眼それぞれの中心視野視認点数を求める。なお、dBの計算は、背景輝度31.5asbで、視標輝度10,000asbを0dBとしたスケールで算出する。
b aで求めた左右眼の中心視野視認点数に基づき、次式により、両眼中心視野視認点数を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。
両眼中心視野視認点数=(3×中心視野視認点数が多い方の眼の中心視野視認点数+中心視野視認点数が少ない方の眼の中心視野視認点数)/4
(図1) |
(図2) |
エ ゴールドマン型視野計では、中心30度内は適宜矯正レンズを使用し、30度外は矯正レンズを装用せずに測定する。
自動視野計では、10―2プログラムは適宜矯正レンズを使用し、両眼開放エスターマンテストは矯正眼鏡を装用せずに実施する。
オ 自動視野計を用いて測定した場合において、認定上信頼性のある測定が困難な場合は、ゴールドマン型視野計で測定し、その測定結果により認定を行う。
カ ゴールドマン型視野計又は自動視野計の結果は、診断書に添付する。
キ 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるものをいう。
ク 「ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下に減じたもの」とは、ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下のものをいう。
ケ 「自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下に減じたもの」とは、自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下のものをいう。
コ 「ゴールドマン型視野計による測定の結果、I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下に減じたもの」とは、ゴールドマン型視野計による測定の結果、I/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のものをいう。
サ 「自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下に減じたもの」とは、自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が100点以下のものをいう。
シ 「自動視野計による測定の結果、両眼中心視野視認点数が40点以下に減じたもの」とは、自動視野計による測定の結果、両眼中心視野視認点数が40点以下のものをいう。
(3) その他の障害
ア 「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、普通にまぶたを閉じた場合に角膜を完全に覆い得ない程度のものをいう。
イ 「調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの」とは、眼の調節機能及び輻輳機能の障害のため複視や眼精疲労による頭痛等が生じ、読書等が続けられない程度のものをいう。
ウ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
(ア) 「まぶたの運動障害」のうち、眼瞼痙攣等で常時両眼のまぶたに著しい運動障害を残すことで作業等が続けられない程度のもの
(イ) 「眼球の運動障害」のうち、麻痺性斜視で複視が強固のため片眼に眼帯をしないと生活ができないため、労働が制限される程度のもの
(ウ) 「瞳孔の障害」のうち、散瞳している状態で瞳孔の対光反射の著しい障害により羞明(まぶしさ)を訴え、労働に支障をきたす程度のもの
(4) 視力障害、視野障害、まぶたの欠損障害、調節機能障害、輻輳機能障害、まぶたの運動障害、眼球の運動障害又は瞳孔の障害が併存する場合には、併合認定の取扱いを行う。
第2節/聴覚の障害
聴覚の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
聴覚の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
1級 |
両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの |
|
|
2級 |
両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの |
|
|
|
身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
|
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの |
別表第2 |
障害手当金 |
一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの |
2 認定要領
聴覚の障害による障害の程度は、純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)及び語音による聴力検査値(語音明瞭度)により認定する。
(1) 聴力レベルは、オージオメータ(JIS規格又はこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定するものとする。
ただし、聴覚の障害により障害年金を受給していない者に対し、1級に該当する診断を行う場合には、オージオメータによる検査に加えて、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査を実施する。また、その結果(実施した検査方法及び検査所見)を診断書に記載し、記録データのコピー等を提出(添付)するものとする。
(2) 聴力レベルのデシベル値は、話声域すなわち周波数500、1000、2000ヘルツにおける純音の各デシベル値をa、b、cとした場合、次式により算出する。
平均純音聴力レベル値=(a+2b+c)/4
なお、この算式により得た値が境界値に近い場合には
(a+2b+2c+d)/6の算式により得た値を参考とする。
a:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
b:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
c:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
d:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値
(3) 最良語音明瞭度の算出は、次によるものとする。
ア 検査は、録音器又はマイク付オージオメータにより、通常の会話の強さで発声し、オージオメータの音量を適当に強めたり、弱めたりして最も適した状態で行う。
イ 検査語は、語音弁別能力測定用語音集により、2秒から3秒に1語の割合で発声し、語音明瞭度を検査する。
なお、語音聴力表は、「57s式語表」あるいは「67s式語表」とする。
ウ 語音明瞭度は、次式により算出し、語音明瞭度の最も高い値を最良語音明瞭度(語音弁別能)とする。
語音明瞭度=(正答語音数/検査語数)×100(%)
(4) 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のものをいう。
(5) 「両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
ア 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの
イ 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの
(6) 「一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの」とは、一耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のものをいう。
(7) 聴覚の障害により障害年金を受給していない者の障害の状態が1級に該当する場合は、オージオメータによる検査結果のほか、聴性脳幹反応検査等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査結果を把握して、総合的に認定する。
(8) 聴覚の障害(特に内耳の傷病による障害)と平衡機能障害とは、併存することがあるが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。
第3節/鼻腔機能の障害
鼻腔機能の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
鼻腔機能の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
厚年令別表第2 |
障害手当金 |
鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
2 認定要領
(1) 「鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの」とは、鼻軟骨部の全部又は大部分を欠損し、かつ、鼻呼吸障害のあるものをいう。
(2) 嗅覚脱失は、認定の対象とならない。
第4節/平衡機能の障害
平衡機能の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
平衡機能の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
2級 |
平衡機能に著しい障害を有するもの |
|
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
|
別表第2 |
障害手当金 |
神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
2 認定要領
(1) 平衡機能の障害には、その原因が内耳性のもののみならず、脳性のものも含まれるものである。
(2) 「平衡機能に著しい障害を有するもの」とは、四肢体幹に器質的異常がない場合に、閉眼で起立・立位保持が不能又は開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒あるいは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度のものをいう。
(3) 中等度の平衡機能の障害のために、労働能力が明らかに半減しているものは、3級と認定する。
中等度の平衡機能の障害とは、閉眼で起立・立位保持が不安定で、開眼で直線を10メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す程度のものをいう。
(4) めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものは、併合判定参考表の8号(3級又は障害手当金)と認定する。
第5節/そしゃく・嚥下機能の障害
そしゃく・嚥下機能の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
そしゃく・嚥下機能の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
2級 |
そしゃくの機能を欠くもの |
|
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
そしゃくの機能に相当程度の障害を残すもの |
別表第2 |
障害手当金 |
そしゃくの機能に障害を残すもの |
2 認定要領
(1) そしゃく・嚥下機能の障害は、歯、顎(顎関節も含む。)、口腔(舌、口唇、硬口蓋、頬、そしゃく筋等)、咽頭、喉頭、食道等の器質的、機能的障害(外傷や手術による変形、障害も含む。)により食物の摂取が困難なもの、あるいは誤嚥の危険が大きいものである。
(2) そしゃく・嚥下機能の障害の程度は、摂取できる食物の内容、摂取方法によって次のように区分するが、関与する器官、臓器の形態・機能、栄養状態等も十分考慮して総合的に認定する。
ア 「そしゃく・嚥下の機能を欠くもの」とは、流動食以外は摂取できないもの、経口的に食物を摂取することができないもの、及び、経口的に食物を摂取することが極めて困難なもの(食餌が口からこぼれ出るため常に手、器物等でそれを防がなければならないもの、または、一日の大半を食事に費やさなければならない程度のもの)をいう。
イ 「そしゃく・嚥下の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、経口摂取のみでは十分な栄養摂取ができないためにゾンデ栄養の併用が必要なもの、または、全粥又は軟菜以外は摂取できない程度のものをいう。
ウ 「そしゃく・嚥下の機能に障害を残すもの」とは、ある程度の常食は摂取できるが、そしゃく・嚥下が十分できないため、食事が制限される程度のものをいう。
(3) 歯の障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う。
(4) 食道の狭窄、舌、口腔、咽頭の異常等によって生じる嚥下の障害については、そしゃく機能の障害に準じて、すなわち、摂取し得る食物の内容によって認定を行う。
(5) そしゃく機能の障害と嚥下機能の障害は、併合認定しない。
第6節/音声又は言語機能の障害
音声又は言語機能の障害による障害の程度は、次により認定する。
1 認定基準
音声又は言語機能の障害については、次のとおりである。
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
|
国年令別表 |
2級 |
音声又は言語機能に著しい障害を有するもの |
|
厚年令 |
別表第1 |
3級 |
言語の機能に相当程度の障害を残すもの |
別表第2 |
障害手当金 |
言語の機能に障害を残すもの |
2 認定要領
(1) 音声又は言語機能の障害とは、発音に関わる機能又は音声言語の理解と表出に関わる機能の障害をいい、構音障害又は音声障害、失語症及び聴覚障害による障害が含まれる。
ア 構音障害又は音声障害
歯、顎、口腔(舌、口唇、口蓋等)、咽頭、喉頭、気管等の発声器官の形態異常や運動機能障害により、発音に関わる機能に障害が生じた状態のものをいう。
イ 失語症
大脳の言語野の後天性脳損傷(脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷や脳炎など)により、一旦獲得された言語機能に障害が生じた状態のものをいう。
ウ 聴覚障害による障害
先天的な聴覚障害により音声言語の表出ができないものや、中途の聴覚障害によって発音に障害が生じた状態のものをいう。
(2) 「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」とは、発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないものをいう。
(3) 「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が、互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つものをいう。
(4) 「言語の機能に障害を残すもの」とは、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が、互いに確認することなどで、ある程度成り立つものをいう。
(5) 構音障害、音声障害又は聴覚障害による障害については、発音不能な語音を評価の参考とする。発音不能な語音は、次の4種について確認するほか、語音発語明瞭度検査等が行われた場合はその結果を確認する。
ア 口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音等)
イ 歯音、歯茎音(さ行、た行、ら行等)
ウ 歯茎硬口蓋音(しゃ、ちゃ、じゃ等)
エ 軟口蓋音(か行音、が行音等)
(6) 失語症については、失語症の障害の程度を評価の参考とする。失語症の障害の程度は、音声言語の表出及び理解の程度について確認するほか、標準失語症検査等が行われた場合はその結果を確認する。
(7) 失語症が、音声言語の障害の程度と比較して、文字言語(読み書き)の障害の程度が重い場合には、その症状も勘案し、総合的に認定する。
(8) 喉頭全摘出手術を施したものについては、原則として次により取り扱う。
ア 手術を施した結果、発音に関わる機能を喪失したものについては、2級と認定する。
イ 障害の程度を認定する時期は、喉頭全摘出手術を施した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
(9) 歯のみの障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う。
(10) 音声又は言語機能の障害(特に構音障害)とそしゃく・嚥下機能の障害とは併存することが多いが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。また、音声又は言語機能の障害(特に失語症)と肢体の障害又は精神の障害とは併存することが多いが、この場合についても、併合認定の取扱いを行う。
第7節/肢体の障害
肢体の障害による障害の程度は、「上肢の障害」、「下肢の障害」、「体幹・脊柱の機能の障害」及び「肢体の機能の障害」に区分し、次により認定する。
第1 上肢の障害
1 認定基準
上肢の障害については、次のとおりである。