アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定

(平成十一年十二月二十一日)

(条約第二十一号)

社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定をここに公布する。

社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定

日本国及びドイツ連邦共和国は、

社会保障の分野における両国間の関係を規律することを希望して、

次のとおり協定した。

第一条

(1) この協定の適用上、

(a) 「領域」とは、日本国については、日本国の領域をいい、ドイツ連邦共和国については、ドイツ連邦共和国の領域をいう。

(b) 「国民」とは、日本国については、日本国の国籍に関する法律にいう日本国民をいい、ドイツ連邦共和国については、ドイツ連邦共和国基本法にいうドイツ人をいう。

(c) 「法令」とは、次条(1)に掲げる年金保険制度に関する一方の締約国の法律及び規則をいう。

(d) 「権限のある当局」とは、日本国については、次条(1)(a)に掲げる年金保険制度を管轄する政府機関をいい、ドイツ連邦共和国については、連邦労働社会省をいう。

(e) 「行政当局」とは、権限のある当局及びこの協定の実施に関係するその他の行政当局をいう。

(f) 「保険者」とは、次条(1)に掲げる年金保険制度の実施に責任を有する保険機関をいう。

(g) 「保険期間」とは、一方の締約国の法令による保険料納付期間及び当該法令において給付を受ける権利の確立又は給付の額の計算に際して考慮されるその他の期間をいう。

(h) 「給付」とは、一方の締約国の法令による年金給付その他の現金給付をいう。

(2) この協定の適用上、この協定において定義されていない用語は、各々の締約国の法令において与えられている意味を有するものとする。

第二条

(1) この協定は、次の年金保険制度について適用する。

(a) 日本国については、

1 国民年金

2 厚生年金保険

3 国家公務員共済年金

4 地方公務員等共済年金

5 私立学校教職員共済年金

6 農林漁業団体職員共済年金

(2から6までに掲げる年金保険制度を以下「日本国の被用者年金制度」という。)

(b) ドイツ連邦共和国については、

1 法定年金保険

2 製鉄従業者付加保険

3 農業者老齢保障

(2) 一方の締約国の法令の規定するところによりこの協定を適用するための要件及びこの協定と同種の社会保障に関する他の協定又は欧州連合の取極を適用するための要件の双方が満たされる場合、この協定の適用に際して当該他の協定又は欧州連合の取極を考慮しない。

第三条

この協定は、次の個人について適用する。

(a) いずれかの締約国の国民

(b) 千九百五十一年七月二十八日の難民の地位に関する条約第一条又は千九百六十七年一月三十一日の難民の地位に関する議定書第一条にいう難民

(c) その他の者

第四条

(1) 前条(a)又は(b)に掲げる者であっていずれかの締約国の領域内に通常居住するものは、一方の締約国の法令の適用に際して当該一方の締約国の国民に対して与えられる待遇と同等の待遇を受ける。この(1)の規定は、同条(a)又は(b)に掲げる者に由来する権利に関し、同条(c)に掲げる者であっていずれかの締約国の領域内に通常居住するものについても適用する。

(2) 一方の締約国の法令による給付は、両締約国の領域外の地域に通常居住する他方の締約国の国民に対しては、当該地域に通常居住する当該一方の締約国の国民に対して支給する場合と同一の条件で支給する。

第五条

一方の締約国の領域内に通常居住することを給付を受ける権利の取得又は給付の支払のための要件として定めた当該一方の締約国の法令の規定は、第三条(a)又は(b)に掲げる者であって他方の締約国の領域内に通常居住するものについては適用せず、同条(a)又は(b)に掲げる者に由来する権利に関し、同条(c)に掲げる者であって当該他方の締約国の領域内に通常居住するものについても適用しない。

第六条

第二条(1)に掲げる年金保険制度への強制加入に関しては、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、一方の締約国の領域内において被用者又は自営業者として就労する者については、当該一方の締約国の強制加入に関する法令のみを適用する。

第七条

(1) 強制加入に関しては、一方の締約国の領域内で雇用されている者が雇用者によりその雇用関係に基づいて他方の締約国の領域に派遣され、当該雇用者のために役務を提供する場合には、当該他方の締約国への派遣の開始から六十暦月目の月の末日までの期間は、その被用者がなお当該一方の締約国の領域内において就労しているものとみなして、当該一方の締約国の強制加入に関する法令のみを適用する。当該派遣が前記の期間を超えて継続される場合には、当該他方の締約国の権限のある当局又はその指定する機関は、当該被用者及びその雇用者の共同の申請に基づき、当該被用者に対して引き続き当該一方の締約国の強制加入に関する法令が適用されることを条件として、引き続き当該他方の締約国の強制加入に関する法令の適用を免除することができる。免除に関する決定に先立ち、当該一方の締約国の権限のある当局又はその指定する機関は、当該被用者に対して引き続き当該一方の締約国の強制加入に関する法令が適用されるか否かを明らかにする機会を与えられるものとする。

(2)

(a) 通常ドイツ連邦共和国の領域内において就労する自営業者が一時的に日本国の領域内において就労する場合には、(1)の規定は、当該自営業者について準用する。

(b) 通常日本国の領域内において就労する自営業者がその自営活動の枠内で一時的にドイツ連邦共和国の領域内において就労する場合には、ドイツ連邦共和国の領域内における就労の開始から六十暦月目の月の末日までの期間は、当該自営業者に対して日本国の国民年金に関する法令が適用され得ることを条件として、強制加入に関するドイツの法令を適用しない。当該就労が前記の期間を超えて継続される場合には、ドイツ連邦共和国の権限ある当局又はその指定する機関は、当該自営業者の申請に基づき、当該自営業者に対して日本国の国民年金に関する法令が適用され得ることを条件として、引き続き強制加入に関するドイツの法令の適用を免除することができる。免除に関する決定に先立ち、日本国の権限のある当局又はその指定する機関は、当該自営業者に対して日本国の国民年金に関する法令が適用され得るか否かを明らかにする機会を与えられるものとする。

第八条

(1) 一方の締約国を旗国とする海上航行船舶において被用者として就労する者の強制加入に関しては、

(a) 当該者に対していずれか一方の締約国の強制加入に関する法令のみが適用される場合には、当該法令のみの適用が維持される。

(b) 当該者に対して両締約国の強制加入に関する法令が適用される場合には、雇用者がその領域内に所在するか又は通常居住する締約国の強制加入に関する法令のみを適用する。

(2) 一方の締約国を旗国とする海上航行船舶において就労する自営業者の強制加入に関しては、当該自営業者がその領域内に通常居住する締約国の強制加入に関する法令のみを適用する。

第九条

この協定のいかなる規定も、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約又は千九百六十三年四月二十四日の領事関係に関するウィーン条約の規定に影響を及ぼすものではない。

第十条

強制加入に関しては、一方の締約国の権限のある当局又はその指定する機関は、第六条から前条までの規定によれば被用者又は自営業者に対して当該一方の締約国の強制加入に関する法令が適用されることとなる場合であっても、当該被用者及び雇用者の共同の申請又は当該自営業者の申請に基づき、当該一方の締約国の法令の適用を免除することができる。ただし、当該被用者又は自営業者に対して他方の締約国の強制加入に関する法令が適用されることを条件とする。免除に関する決定に先立ち、当該他方の締約国の権限のある当局又はその指定する機関は、当該被用者又は自営業者に対して当該他方の締約国の強制加入に関する法令が適用されるか否かを明らかにする機会を与えられるものとする。当該決定を行うに当たっては、雇用又は自営活動の性質及び状況を考慮する。

第十一条

(1) 一方の締約国の法令による個々の給付を受ける権利の確立に当たっては、(2)の規定に従うことを条件として、当該給付を受ける権利の確立のために算入される当該一方の締約国の法令による保険期間と重複しない限りにおいて、他方の締約国の法令において給付を受ける権利の確立のために算入される保険期間は、当該一方の締約国の法令による当該保険期間と通算する。

(2) 一方の締約国の法令による特定の給付を受ける権利が特定の保険期間を満たすことを要件とする場合には、(1)の規定の適用に当たっては、他方の締約国の法令による同種の保険期間のみを考慮する。

(3) (1)の規定の適用に当たっては、一方の締約国の法令による保険期間と通算される他方の締約国の法令による保険期間は、当該他方の締約国の法令に従って計算する。ただし、実際に経過していない期間であって加算されたものは、考慮しない。

(4) この協定に別段の定めがある場合を除くほか、給付の額は、各々の締約国の適用すべき法令に従って計算する。

第十二条

ドイツ連邦共和国については、次の規定を適用する。

(1) 個人報酬点数は、ドイツの法令の下で取得される報酬点数に基づいて決定する。

(2) 前条(1)から(3)までの規定は、ドイツの法令の下で保険者の裁量により支給される給付について準用する。

(3) 日本国の法令による保険期間は、鉱山事業所の坑内作業によるものである場合には、前条の規定により鉱山労働者年金保険において考慮する。ドイツの法令において、常時の坑内作業又はこれと同等の作業に従事したことが給付を受ける権利のための要件とされる場合、日本国の法令による保険期間は、当該期間中に同種の活動が行われた限りにおいてのみ、ドイツの保険者によって考慮される。

(4) ドイツの法令が、定められた期間内に一定の強制保険料納付期間を満たすことを給付を受ける権利のための要件とする旨を規定し、かつ、当該定められた期間を特定の保険期間その他の期間がある場合において当該期間分延長する旨を規定している場合には、日本国の法令による同種の保険期間及び日本国における期間で次に掲げるものも、その延長のために考慮する。

(a) 疾病、妊娠、失業又は労働に係る災害を理由とするドイツの法律及び規則に基づく手当金(年金給付を除く。)に相当する手当金が日本国の法律及び規則に基づいて支払われている期間

(b) 日本国において育児を行っている期間

(5) ドイツの法令上一定の期間の保険料が納付されていることを要件として強制加入が免除される場合においては、日本国の法令による保険料納付期間も考慮する。

第十三条

日本国については、次の規定を適用する。

(1) 第十一条(1)及び(2)の規定の適用に当たっては、ドイツの法令による保険期間は、日本国の被用者年金制度の保険期間及びこれに対応する国民年金の保険期間として考慮する。

(2) 第十一条(1)及び(2)の規定の適用に当たっては、ドイツ連邦共和国の鉱山労働者年金保険において鉱山での常時の坑内作業に従事した期間として認められた保険期間は、日本国の厚生年金保険において同種の作業に従事した期間として考慮する。

(3) 日本国の法令が、障害年金又は遺族年金を受ける権利の確立のために初診日又は死亡日が特定の保険期間中にあることを要件として定めている場合において、初診日又は死亡日がドイツの法令による同種の保険期間中にあるときは、これらの年金を受ける権利の確立に当たり当該要件は満たされたものとみなす。ただし、国民年金の下でこれらの年金のうちのいずれかのものを受ける権利がこの(3)の規定を適用せずとも確立される場合には、この(3)の規定は、日本国の被用者年金制度の下での同一の事由によるこれらの年金を受ける権利の確立に当たっては、適用しない。

(4) 日本国の法令による次に掲げる給付に関しては、当該給付を受けるための要件がこの協定により満たされる場合には、支給される当該給付の額は、日本国の法令による保険期間及びドイツの法令による同種の保険期間を合算した期間に対する当該日本国の法令による保険期間の比率に基づき計算する。

(a) 障害基礎年金その他の記録された保険期間にかかわらず一定額が支給される給付

(b) 日本国の被用者年金制度の下での障害年金及び遺族年金(日本国の法令による実際の保険期間が日本国の法令上定められた期間に満たない場合に支給されるものであってその額が当該定められた期間に基づき計算されるものに限る。)

(5) 日本国の法令による次に掲げる給付に関しては、当該給付を受けるための要件が第十一条(1)及び(2)の規定に従ってドイツの法令による保険期間を通算することによって満たされる場合には、支給される当該給付の額は、当該給付を受ける権利の確立のために必要とされる期間に対する日本国の法令による保険期間の比率に基づき計算する。

(a) 老齢厚生年金の配偶者加給その他の保険期間が日本国の法令上定められた期間を満たした場合に一定額が支給される給付

(b) 日本国の被用者年金制度の下での日本国民以外の者に対する脱退一時金その他の一時金

(6) (4)及び(5)の規定の適用上、日本国の法令による保険期間は、保険料納付期間及び保険料免除期間をいい、当該給付が支給される年金制度における保険期間に限るものとする。

第十四条

この協定及び両締約国の法令の実施に際して、両締約国の保険者、保険者の連合組織及び行政当局は、自国内のこれらの機関の間で行われる援助と同様の方法で相互に援助を行う。この援助は、無償で行う。ただし、当該援助を行うために必要とされる追加的な経費については、通信のための経費を除き、当該援助を要請した機関が負担する。

第十五条

(1) 一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則が当該一方の締約国の法令の適用上提出すべき文書に係る行政上又は領事事務上の手数料の免除又は軽減についての規定を含む場合、当該規定は、この協定及び他方の締約国の法令の適用上提出すべき文書についても適用する。

(2) この協定及び一方の締約国の法令の適用上提出すべき文書については、認証その他これに類する手続を要しない。

第十六条

(1) この協定及び両締約国の法令の実施に際して、両締約国の保険者、保険者の連合組織及び行政当局は、各々の言語により相互に連絡することができる。

(2) この協定及び両締約国の法令の実施に際して、一方の締約国の保険者、保険者の連合組織及び行政当局は、関係者又はその代理人に対して書面により又は適当な場合には口頭により、当該一方の締約国の言語で直接連絡することができる。ただし、一方の締約国による強制執行に直接結び付き得る文書を他方の締約国の領域内に通常居住する関係者又はその代理人に対して送付する場合には、当該他方の締約国の言語による翻訳を添付する。

(3) この協定及び両締約国の法令の実施に際して、一方の締約国の保険者、保険者の連合組織及び行政当局は、他方の締約国の言語で作成されていることを理由として申請書その他の文書の受理を拒否してはならない。

第十七条

(1) 一方の締約国の法令による給付の申請、不服申立て又はその他の申告が他方の締約国の法令による類似の申請、不服申立て又は申告を受理する権限を有する当該他方の締約国の保険者、保険者の連合組織又は行政当局に対して提出された場合、当該給付の申請、不服申立て又はその他の申告は、その提出の日にこれを受理する権限を有する当該一方の締約国の保険者、保険者の連合組織又は行政当局に対して提出されたものとみなす。

(2) 一方の締約国の保険者、保険者の連合組織又は行政当局は、(1)の規定に従って提出された申請、不服申立て又は申告を遅滞なく他方の締約国の関係する保険者、保険者の連合組織又は行政当局に送付する。

第十八条

(1) 一方の締約国の保険者、保険者の連合組織及び行政当局は、当該一方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報(この協定の実施のために必要なものに限る。)を当該一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則に従って他方の締約国のこれらの機関に伝達する。

(2) 一方の締約国の保険者、保険者の連合組織及び行政当局は、他方の締約国のこれらの機関の要請に基づき、当該一方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報(当該他方の締約国の法令の実施のために必要なものに限る。)を当該一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則に従って当該他方の締約国のこれらの機関に伝達することができる。

(3) (1)及び(2)の規定に従って行われる情報の伝達に関し、個人に関する情報は、両締約国の法令その他関連する法律及び規則並びに次の規定により保護される。

(a) 受領機関は、伝達される個人に関する情報をこの協定及び両締約国の法令を実施する目的並びに受領国の他の社会保障の目的(関連する司法手続を含む。)のためにのみ使用することができる。また、これらの情報は、前記の目的のためにのみ他の関係機関に対して提供することができる。ただし、この(a)の規定は、刑事法上の法益の保護のため又は課税の目的のために受領国の法律及び規則により提供が義務付けられている場合には、これらの情報の提供を妨げるものではない。

(b) 個々の事案において、受領機関は、伝達機関の要請に基づき、伝達された個人に関する情報の使用及びそれにより得られた結果について伝達機関に対し通報する。

(c) 伝達機関は、伝達される情報が正確であること及び伝達の目的に照らして必要な範囲に限定されていることを確保する。誤った情報又は伝達を行うことが伝達国の法律及び規則に合致しない情報が伝達されたことが明らかになった場合には、伝達機関は、受領機関に対し直ちにこの事実を通報する。この場合には、受領機関は、直ちに当該情報を訂正又は廃棄する。

(d) 伝達機関及び受領機関は、関係者の申出に基づき、伝達された個人に関する情報の内容及びその伝達の目的を当該関係者に対し通報する。

(e) 伝達された個人に関する情報は、伝達された目的のために必要とされなくなった場合には、受領機関により、受領国の法律及び規則に従って廃棄される。

(f) 伝達機関及び受領機関は、個人に関する情報の伝達及び受領について記録する。

(g) 伝達機関及び受領機関は、個人に関する情報が許可なく使用され、修正され及び開示されることのないよう効果的に保護する。

第十九条

(1) 両締約国の政府は、この協定の実施のために必要な取極を締結する。

(2) 両締約国の権限のある当局は、この協定の実施のために必要な行政上の措置について合意することができる。

(3) 両締約国の政府は、(1)の規定に基づく取極において、この協定の実施のための連絡機関を指定する。

(4) 両締約国の権限のある当局は、各々の法令の改正又は補足について相互に通報する。

第二十条

一方の締約国の保険者は、他方の締約国の領域内にいる者に対して現金給付をいずれの締約国の通貨によっても有効なものとして支払うことができる。当該現金給付が当該他方の締約国の通貨で支払われる場合、換算率は、送金が行われる日の為替相場によるものとする。

第二十一条

(1) この協定の解釈又は適用に関して両締約国の間に紛争が生ずる場合には、両締約国は、交渉により友好的に当該紛争を解決するよう努める。

(2) 両締約国が交渉により紛争を解決することができない場合には、当該紛争は、いずれか一方の締約国の要請により、仲裁裁判所に決定のため付託する。仲裁裁判所は、個々の事案ごとに設置され、各締約国が任命した各一人の仲裁人と、このように選定された二人の仲裁人が議長とすることで合意し、かつ、両締約国によって任命される一人の第三国の国民の三人の仲裁人により構成される。最初の二人の仲裁人については、一方の締約国が他方の締約国に対し紛争を仲裁裁判所に付託する旨を外交上の経路を通じて通告した日から六十日の期間内に、議長については、その後の三十日の期間内に任命される。

(3) (2)に規定する各々の期間内に、いずれかの締約国が仲裁人を任命できない場合又は議長について両締約国の任命した仲裁人による合意が得られない場合には、いずれの締約国も、国際司法裁判所長に対し、必要な任命を行うことを要請することができる。同所長が一方の締約国の国民である場合又はその他の理由により任命を行えない場合には、国際司法裁判所次長(同次長も任命を行えない場合には、国際司法裁判所における先任の裁判官で任命を行うことができるもの)に対して任命を行うよう要請することができる。

(4) 仲裁裁判所は、投票の過半数による議決で決定を行う。決定は、最終的なものとし、拘束力を有する。

(5) 各締約国は、自国が任命した仲裁人に係る費用及び自国が仲裁に参加する費用を負担する。議長に係る費用その他の経費は、両締約国の間で折半して負担する。ただし、仲裁裁判所は、費用の分担に関し、異なる定めを行うことができる。

(6) 仲裁裁判所は、自らの手続に関する規則を定める。

第二十二条

(1) この協定は、その効力発生前には給付を受ける権利を確立させるものではない。

(2) この協定の実施に当たっては、この協定の効力発生前の保険期間その他法的に関連する事実も考慮する。

(3) この協定の効力発生前に行われた決定は、この協定により確立されるいかなる権利にも影響を及ぼすものではない。

(4) この協定の効力発生前に決定が行われた年金給付についてこの協定の規定によってその給付の額に変更がある場合には、申請に基づいて新たに決定が行われる。

第二十三条

この協定に附属する議定書は、この協定の不可分の一部を成す。

第二十四条

(1) この協定は、批准されるものとする。批准書は、できる限り速やかにボンにおいて交換される。

(2) この協定は、批准書の交換が行われた月の翌々月の初日に効力を生ずる。

第二十五条

(1) この協定は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの締約国も、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面によりこの協定の終了の通告を行うことができる。この場合には、この協定は、終了の通告が行われた月の後十二箇月目の月の末日まで効力を有する。

(2) この協定が(1)の規定に従って終了する場合においても、この協定の下で取得された給付を受ける権利及び給付の支払に関する権利は維持される。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受け、この協定に署名した。

千九百九十八年四月二十日に東京で、ひとしく正文である日本語、ドイツ語及び英語により、本書二通を作成した。日本語及びドイツ語の本文の解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国のために

小渕恵三

ドイツ連邦共和国のために

フランク・エルベ

議定書

社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当たり、下名は、協定の不可分の一部を成す次の規定を協定した。

(1) 協定第一条(1)の規定に関し、

(a) ドイツ連邦共和国については、「法令」には、保険者及び保険者の連合組織の規則を含める。

(b) ドイツの法令については、「給付」には、現物給付を含める。

(2) 協定第一条(1)及び第二条(2)の規定に関し、

日本国については、「法令」には、協定と同種の社会保障に関する他の協定の実施のために制定された法律及び規則を含めない。

(3) 協定第二条の規定に関し、

(a) 日本国については、次のことが了解される。

1 国民年金は、国民年金基金を含まない。

2 厚生年金保険は、厚生年金基金を含まない。

3 地方公務員等共済年金は、地方議会議員の年金制度を含まない。

(b) 日本国については、国民年金には、老齢福祉年金その他の福祉的目的のため経過的又は補完的に支給される年金であって、専ら又は主として国庫を財源として支給されるものを含めない。

(c) ドイツ連邦共和国については、協定第十一条から第十三条までの規定は、製鉄従業者付加保険及び農業者老齢保障には適用しない。

(4) 協定第二条(2)の規定に関し、

ドイツ連邦共和国が第三国と締結した社会保障に関する協定又は社会保障に関する欧州連合の取極が保険制度間の負担の配分に関する規定を含む場合には、これらの規定は、協定の適用に際して考慮する。

(5) 協定第三条の規定に関し、

ドイツの法令の適用に当たっては、同条(b)には、千九百五十四年九月二十八日の無国籍者の地位に関する条約第一条にいう無国籍者を含める。

(6) 協定第四条(1)の規定に関し、

(a) 同条(1)の規定は、ドイツ連邦共和国が第三国と締結した社会保障に関する協定又は社会保障に関する欧州連合の取極に含まれる保険制度間の負担の配分に関する規定に影響を及ぼすものではない。

(b) 同条(1)の規定は、被保険者及び雇用者が保険者及び保険者の連合組織の運営機関に参加すること並びに社会保障に係る裁判に参加することを保証するいずれの締約国の法令にも影響を及ぼすものではない。

(c) 日本国の領域内に通常居住する日本国民は、ドイツの法定年金保険に少なくとも六十箇月の期間有効な保険料拠出を行っている場合、当該保険に任意に加入する権利を有する。ただし、ドイツの法令の下での任意加入の権利に関するより有利な規定は影響を受けない。この(c)の規定は、協定第三条にいう難民及びこの議定書の(5)にいう無国籍者であって日本国の領域内に通常居住するものについても適用する。

(d) ドイツ連邦共和国の領域内に通常居住するドイツ国民は、協定第二条(1)(a)に掲げる年金保険制度に少なくとも六十箇月の期間有効な保険料拠出を行っている場合、日本国の国民年金に任意に加入する権利を有する。この(d)の規定は、協定第三条にいう難民であってドイツ連邦共和国の領域内に通常居住するものについても適用する。

(e) 同条(1)の規定は、日本国の領域外に通常居住することに基づいて日本国民に対して認められる合算対象期間に関する日本国の法令の規定及び日本国民以外の者に対する脱退一時金に関する日本国の法令の規定に影響を及ぼすものではない。

(7) 協定第五条の規定に関し、

(a) 日本国については、同条の規定は、初診日又は死亡日において六十歳以上六十五歳未満であった者に関して障害基礎年金又は遺族基礎年金を受ける権利の取得のために日本国の領域内に通常居住していることを要件として定めた日本国の法令の規定には、影響を及ぼすものではない。

(b) ドイツ連邦共和国については、

1 所得能力の減退を理由とするドイツの法令による年金に関し、同条の規定は、日本国の領域内に通常居住する者に対しては、労働市場の状況のいかんにかかわらず当該年金を受ける権利が存在する場合にのみ適用する。

2 同条の規定は、次のものに影響を及ぼすものではない。

(aa) ドイツ連邦共和国の領域外で経過した保険期間に基づく給付に関するドイツの法令

(bb) リハビリテーション給付に関するドイツの法令

(cc) 刑事訴訟手続を回避するために国外に逃亡する者の給付の請求権の停止を定めたドイツの法令

(8) 協定第六条から第八条まで及び第十条の規定に関し、

(a) 強制加入に関するドイツの法令が適用される者には、ドイツの法令の規定するところにより実際には強制加入とならない者も含む。

(b) これらの条の規定のうち被用者の強制加入に関するものは、被用者ではないが強制加入に関するドイツの法令の下で被用者として取り扱われる者についても適用する。

(9) 協定第四条、第七条及び第十条の規定に関し、

日本国の領域内において就労する者であって協定第七条又は第十条の規定に基づいて強制加入に関するドイツの法令の適用を受けるものに随伴する配偶者又は子については、

(a) 当該配偶者又は子が日本国民以外の者である場合には、強制加入に関する日本国の法令は、適用しない。ただし、当該配偶者又は子が別段の申出を行う場合には、この(a)の規定は、適用しない。

(b) 当該配偶者又は子が日本国民である場合には、強制加入に関する日本国の法令の適用の免除は、日本国の法令に従って決定する。

(10) 協定第七条、第八条及び第十条の規定に関し、

(a) これらの条の規定により、強制加入に関するドイツの法令が日本国の領域内にいる者に対して適用される場合には、当該者及びその雇用者については失業保険への強制加入に関するドイツの法律及び規則を同様に適用する。

(b) これらの条の規定により、強制加入に関する日本国の法令がドイツ連邦共和国の領域内又はドイツ連邦共和国を旗国とする海上航行船舶上で就労する者に対して適用される場合には、当該者及びその雇用者については失業保険への強制加入に関するドイツの法律及び規則は、適用しない。

(11) 協定第七条の規定に関し、

協定の効力発生前に派遣が開始されていた場合には、派遣期間は、協定の効力発生の日に開始したものとする。

(12) 協定第七条(1)及び第十条の規定に関し、

日本国の被用者年金制度に加入していない者については、これらの条の規定による強制加入に関するドイツの法令の適用の免除は、当該者に対して日本国の国民年金に関する法令が適用され得ることを条件とする。

(13) 協定第十条の規定に関し、

同条の規定により、日本国の領域内において強制加入に関するドイツの法令が適用される者については、当該者がドイツ連邦共和国の領域内で直近に就労していた場所において就労しているものとみなす。当該者が過去においてドイツ連邦共和国の領域内で就労したことがない場合には、当該者は、ドイツの権限のある当局が所在する場所で就労しているものとみなす。

(14) 協定第十一条(1)及び第十三条の規定に関し、

これらの規定は、日本国の法令による給付であって次に掲げるものについては適用しない。

(a) 厚生年金保険の障害手当金

(b) 共済年金の障害一時金

(c) 共済年金の職域加算年金

(d) 協定の効力発生後に導入されるその他の給付であって協定第十九条(1)の規定に基づく取極において合意されるもの

(15) 協定第十三条の規定に関し、

(a) 同条(3)の規定の適用に当たっては、二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を有する者については、同条(3)にいう要件は、日本国の法令に従って、一の被用者年金制度につき満たされたものとみなす。

(b) 同条(4)の規定に従って日本国の被用者年金制度の給付の額を計算するに際して、当該給付を受ける権利を有する者が二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を有する場合には、同条(4)にいう日本国の法令による保険期間は、当該二以上の日本国の被用者年金制度における保険期間を合算した期間とする。ただし、当該合算した期間が同条(4)(b)にいう日本国の法令上定められた期間を超える場合には、この(b)の規定及び同条(4)に規定される計算方法は、適用しない。

(16) 協定第十五条(1)の規定に関し、

日本国については、同条(1)の規定は、戸籍の証明に係る手数料の免除又は軽減を定める市町村の条例には影響を及ぼすものではないことが了解される。

(17) 協定第十六条(2)の規定に関し、

ドイツの法令の適用に際しては、通知その他の文書は、日本国の領域内に通常居住する関係者又はその代理人に対して、受取通知付きの書留郵便により直接送付することができる。この(17)の規定は、戦争の犠牲者に対する援助に関するドイツの法律及び規則の実施に際して送付される通知その他の文書についても適用する。

(18) 協定第十七条の規定に関し、

(a) 日本国の法令による給付の申請を行う者がドイツの法令による保険期間を有していることを表明する場合には、当該給付の申請をもって、ドイツの法令による相当する給付の申請がその日に提出されたものとみなす。ただし、この(a)の規定は、当該者がドイツの法令による老齢給付を受ける権利に関する決定が延期されるべきことを表明する場合には適用しない。

(b) 日本国に関しては、同条の規定の適用上、ドイツの法令による給付の申請、不服申立て又はその他の申告は、日本国の被用者年金制度における類似の申請、不服申立て又は申告を受理する権限を有する保険者、保険者の連合組織又は行政当局に対して提出されなければならない。

(19) 協定第十九条の規定に関し、

協定の下でドイツ連邦共和国の保険者、保険者の連合組織及び行政当局から日本国のこれらの機関に対して行われる連絡及び伝達は、日本国の権限のある当局に対して行われる場合を除き、日本国の連絡機関を通じて行われるものとする。

(20) 協定第二十二条の規定に関し、

(a) ドイツの法令の適用に際して、同条(4)に基づく新たな決定により、年金給付を受ける権利が消滅し、又は年金給付の額が協定の効力発生前の最後の期間に対して支払われた額よりも少なくなる場合には、当該最後の期間に支払われた年金給付の額と同じ額が引き続き支払われるものとする。

(b) ドイツの法令において、協定によって給付を受ける権利が存在することとなる年金給付の決定の申請が、協定の効力発生後十二箇月以内に行われる場合、当該年金給付は、月初において資格要件が初めて満たされた暦月から支給する。ただし、最も早い場合であっても協定の効力発生の時点からとする。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受け、この議定書に署名した。

千九百九十八年四月二十日に東京で、ひとしく正文である日本語、ドイツ語及び英語により、本書二通を作成した。日本語及びドイツ語の本文の解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国のために

小渕恵三

ドイツ連邦共和国のために

フランク・エルベ

(平成一一年一二月二一日外務省告示第五一〇号で平成一二年二月一日に効力発生)