添付一覧
(c) 25の規定に従って合意する基準に基づいて締約国が行う提案
12 いかなる事業所も、このBの規定による査察を年二回を超えて受けない。ただし、このことは、第九条の規定に基づく査察を制限するものではない。
13 技術事務局は、このBの規定に基づく査察を行う事業所を選定するに当たり、第八部及びこの部の規定に従って締約国が一暦年において受ける査察の合計の回数に関する次の制限を遵守する。当該回数は、第八部及びこの部の規定に従って締約国が申告する事業所の総数の五パーセントに三を加えた数又は二十のうちいずれか低い方の数を超えてはならない。
査察の目的
14 Aの規定に従って他の化学物質を生産する施設の一覧表に掲げられた事業所においては、査察は、活動が申告において提供された情報に合致していることを検証することを一般的な目的とする。当該査察は、特に、第六部の規定に従う場合を除くほか表1の化学物質が存在しないこと(特にその生産が行われていないこと)を検証することを目的とする。
査察手続
15 合意される指針、この附属書の他の関連規定及び秘密扱いに関する附属書のほか、16から20までの規定を適用する。
16 施設協定は、被査察締約国が要請する場合を除くほか、締結しない。
17 査察については、査察のために選定された事業所において1に規定する化学物質を生産する工場、特に、1(b)の規定に従って一覧表に掲げられたPSF工場を中心に行う。被査察締約国は、第十部Cに規定する管理されたアクセスの規則に従い、これらの工場へのアクセスを管理する権利を有する。査察団が第二部51の規定に基づいてあいまいな点を解消するため当該事業所の他の部分へのアクセスを認めることを要請する場合には、当該アクセスの範囲は、査察団と被査察締約国との間で合意する。
18 査察団及び被査察締約国が記録へのアクセスが査察の目的を達成するために役立つことを一致して認める場合には、査察団は、当該アクセスを認められる。
19 試料の採取及び現地における分析は、化学物質に関する附属書の表に掲げる化学物質であって申告されていないものが存在しないことを点検するために行うことができる。あいまいな点が解消されない場合には、試料については、被査察締約国との合意に従い、指定された現地外の実験施設において分析することができる。
20 査察期間は、二十四時間を超えてはならない。ただし、査察団と被査察締約国との間の合意により延長することができる。
査察の通告
21 締約国は、技術事務局により、査察が行われる事業所に査察団が到着する少なくとも百二十時間前までに査察の通告を受ける。
C Bの規定の実施及び検討
実施
22 Bの規定については、会議がこの条約が効力を生じた後の三番目の年における通常会期において別段の決定を行う場合を除くほか、この条約が効力を生じた後の四番目の年の開始の時から実施する。
23 事務局長は、この条約が効力を生じた後の三番目の年における会議の通常会期のため、第七部、第八部及びこの部のAの規定の実施に当たって得られた技術事務局の経験の概要を記載した報告を作成する。
24 会議は、この条約が効力を生じた後の三番目の年における通常会期において、事務局長の報告に基づき、Bの規定に基づく検証のために利用可能な資金をPSF工場と他の化学物質を生産する施設との間にどのように配分するかについて決定することができる。会議がその決定を行わない場合には、この配分は、技術事務局の専門的意見にゆだねられるものとし、11の考慮すべき要素に加えられる。
25 会議は、この条約が効力を生じた後の三番目の年における通常会期において、執行理事会の助言により、11に規定する選定の過程における考慮すべき要素として締約国がいかなる基準(例えば、地域)に基づいて査察についての提案を行うべきであるかを決定する。
検討
26 この部の規定については、第八条22の規定に従って開催される会議の第一回特別会期において、得られた経験を基礎として、化学産業の検証制度全般(第六条の規定及び第七部からこの部までの規定)の広範な検討に照らして再検討する。会議は、その後、検証制度をより効果的なものにするため勧告を行う。
第十部 第九条の規定に基づく申立てによる査察
A 査察員及び査察補の指名及び選定
1 第九条の規定に基づく申立てによる査察は、この任務のために特別に指名される査察員及び査察補のみによって行われる。事務局長は、同条の規定に基づく申立てによる査察のための査察員及び査察補を指名するため、通常の査察活動のための査察員及び査察補の中から査察員及び査察補を選定することにより、提案する査察員及び査察補の名簿を作成する。当該名簿は、査察員及び査察補の利用可能性並びにこれらの者の交替が必要であることを考慮して、査察員の選定を柔軟に行うことができるように必要な資格、経験、技術及び訓練を有する十分な数の査察員及び査察補によって構成する。できる限り広範な地理的基礎に基づいて査察員及び査察補を選定することが重要であることについても、十分な考慮を払う。査察員及び査察補の指名については、第二部Aに規定する手続に従う。
2 事務局長は、具体的な要請の事情を考慮して、査察団の規模を決定し、及びその構成員を選定する。査察団の規模については、査察命令を適正に遂行するために必要な最小限度に保つ。要請締約国又は被査察締約国の国民は、査察団の構成員となることはできない。
B 査察の事前の活動
3 締約国は、申立てによる査察のための査察の要請を行う前に、技術事務局が当該要請に応じて直ちに措置をとることができることの確認を事務局長に求めることができる。事務局長は、当該確認を直ちに与えることができない場合には、確認を求められた順序に従ってできる限り早い機会に当該確認を行う。事務局長は、また、当該要請に応じて直ちに措置をとることができる時期についての見込みを当該締約国に常時通報する。事務局長は、要請に応じて適時の措置をとることができないとの結論に達する場合には、将来において事態を改善するための適当な措置をとるよう執行理事会に求めることができる。
通告
4 執行理事会及び事務局長に対して行う申立てによる査察の要請には、少なくとも、次の事項に関する情報を含める。
(a) 査察が行われる締約国及び適当な場合には接受国
(b) 使用される入国地点
(c) 査察施設の規模及び種類
(d) この条約の違反の可能性についての懸念(当該懸念に関係するこの条約の規定の明示、可能性のある違反の性質及び状況の明示並びに当該懸念を引き起こす基礎となったすべての適当な情報を含む。)
(e) 要請締約国のオブザーバーの氏名
要請締約国は、必要と認める追加の情報を提出することができる。
5 事務局長は、一時間以内に要請締約国に対しその要請の受領を確認する。
6 要請締約国は、査察団の入国地点への到着予定時刻の少なくとも十二時間前までに事務局長が被査察締約国に対し査察施設の所在地に関する情報を提供することができるように、適当な時に査察施設の所在地を事務局長に通報する。
7 査察施設については、地理上の座標(可能な場合には最も近い秒を明示する。)を付した施設の図面を提供することにより、要請締約国ができる限り具体的に指定する。要請締約国は、また、可能な場合には、査察施設の概略を付した地図及び査察施設の要請外縁をできる限り正確に明示する図面を提供する。
8 要請外縁は、
(a) 建物又はその他の工作物から外側に少なくとも十メートルの距離を置くものとする。
(b) 既存の警備用の囲いを横切ってはならない。
(c) 要請締約国が要請外縁の中に含めることを意図する既存の警備用の囲いから外側に少なくとも十メートルの距離を置くものとする。
9 要請外縁が8の規定に適合しない場合には、当該要請外縁については、8の規定に適合するように査察団が変更する。
10 事務局長は、査察団の入国地点への到着予定時刻の少なくとも十二時間前までに、7に規定する査察施設の所在地について執行理事会に通報する。
11 事務局長は、10の規定に従って執行理事会に通報すると同時に、査察の要請(7に規定する査察施設の所在地を含む。)を被査察締約国に伝達する。この通告には、第二部32に規定する情報も含める。
12 査察団の入国地点への到着の時に、被査察締約国は、査察団により査察命令について通報を受ける。
被査察締約国又は接受国の領域への入国
13 事務局長は、第九条の13から18までの規定に従い、査察の要請を受領した後できる限り速やかに査察団を派遣する。査察団は、10及び11の規定に適合して、かつ、最小限度の時間内に、査察の要請に明示される入国地点に到着する。
14 被査察締約国が要請外縁を受け入れることができる場合には、要請外縁は、できる限り速やかに、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間以内に、最終外縁として指定される。被査察締約国は、査察団を査察施設の最終外縁に輸送する。被査察締約国が必要と認める場合には、その輸送の開始の時刻については、最終外縁の指定のためにこの14に定める期限の十二時間前を限度として早めることができる。その輸送については、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後三十六時間以内に完了する。
15 すべての申告された施設については、次の(a)及び(b)の手続を適用する(この部の規定の適用上、「申告された施設」とは、第三条から第五条までの規定に従って申告されたすべての施設をいう。第六条の規定に関しては、「申告された施設」とは、第六部の規定に従って申告された施設並びに第七部の7及び10(c)の規定並びに第八部の7及び10(c)の規定による申告によって明示された工場のみをいう。)。
(a) 要請外縁が申告外縁に含まれ又は一致する場合には、申告外縁を最終外縁と認める。ただし、最終外縁は、被査察締約国が合意する場合には、要請締約国の要請する外縁に一致するように縮小することができる。
(b) 被査察締約国は、実行可能な限り速やかに最終外縁に査察団を輸送するものとし、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間以内に当該査察団が最終外縁に到着することを確保する。
最終外縁の代替的な決定
16 被査察締約国は、要請外縁を受け入れることができない場合には、入国地点において、できる限り速やかに、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間以内に、代替外縁を提案する。意見の相違がある場合には、被査察締約国及び査察団は、最終外縁に関して合意に達するために交渉を行う。
17 代替外縁は、8の規定に従ってできる限り具体的に指定されるべきである。代替外縁は、要請外縁の全体を包含するものとし、自然の地形の特徴及び人工の境界を考慮して、原則として要請外縁と密接な関係を有するものとすべきである。代替外縁については、周囲に警備用障壁が存在する場合には、通常、これに近接するものとすべきである。被査察締約国は、次に掲げる要件のうち少なくとも二のものを満たすことにより、これらの外縁の間にこの17に定める関係を確立することに努めるべきである。
(a) 代替外縁を要請外縁の区域より著しく大きい区域に拡大しないこと。
(b) 代替外縁を要請外縁から短い一様の距離に保つこと。
(c) 要請外縁の少なくとも一部が代替外縁から目で見えるものとすること。
18 査察団が代替外縁を受け入れることができる場合には、代替外縁は、最終外縁となるものとし、査察団は、入国地点から最終外縁に輸送される。被査察締約国が必要と認める場合には、その輸送の開始の時刻については、代替外縁の提案のために16に定める期限の十二時間前を限度として早めることができる。その輸送については、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後三十六時間以内に完了する。
19 最終外縁について合意されない場合には、外縁についての交渉は、できる限り速やかに完了するものとし、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間を超えて継続してはならない。合意に達しない場合には、被査察締約国は、査察団を代替外縁上の地点に輸送する。当該被査察締約国が必要と認める場合には、その輸送の開始の時刻については、代替外縁の提案のために16に定める期限の十二時間前を限度として早めることができる。その輸送については、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後三十六時間以内に完了する。
20 19の代替外縁上の地点への到着の後、被査察締約国は、最終外縁についての交渉及び合意並びに最終外縁内へのアクセスを促進するため、代替外縁への速やかなアクセスを査察団に認める。
21 19の代替外縁上の地点への査察団の到着の後七十二時間以内に合意に達しない場合には、当該代替外縁が最終外縁として指定される。
査察施設の所在地の検証
22 査察団は、査察団が輸送された査察施設が要請締約国の指定する査察施設に一致することを確かめるため、所在地の確認のための装置であって承認されたものを使用し及び自己の指示により当該装置を設置させる権利を有する。査察団は、地図上において識別される地域的な目標によって査察施設の所在地を検証することができる。被査察締約国は、この作業において査察団を援助する。
査察施設の保全(退去の監視)
23 被査察締約国は、査察団の入国地点への到着の後十二時間以内に、要請外縁のすべての出口(陸路、空路及び水路を利用するすべての輸送機関のためのもの)からのすべての輸送機関による退去について事実関係の情報の収集を開始する。被査察締約国は、査察団が代替外縁又は最終外縁のうち最初に到着する外縁への到着の時に査察団に対しこの情報を提供する。
24 23に規定する義務については、輸送の記録、写真撮影若しくはビデオ録画又は査察団が退去を監視するために提供する化学的証拠の検知用装置によって得られる資料によって事実関係の情報を収集することにより、履行することができる。これに代えて、被査察締約国は、査察団の一又は二以上の構成員が独自に、輸送の記録を作成し、写真を撮影し、退去のための輸送のビデオ録画を作成し若しくは化学的証拠の検知用装置を使用すること又は当該被査察締約国と査察団との間で合意する他の活動を行うことを認めることによっても、当該義務を履行することができる。
25 査察団が代替外縁又は最終外縁のうち最初に到着する外縁への到着の時に、査察施設の保全(査察団による退去の監視の手続)を開始する。
26 25の手続は、査察団による輸送機関のための出口の特定並びに、当該出口及びそれを利用する輸送に関し、査察団による記録の作成、写真撮影及びビデオ録画の作成を行うことを含むものとする。査察団は、査察施設から退去するための輸送が他に行われないことを点検するため同行員を伴い外縁の他のいかなる場所にも赴く権利を有する。
27 退去の監視のための追加的な手続であって査察団及び被査察締約国が合意するものには、特に、次の事項を含めることができる。
(a) 感知器の使用
(b) 無作為の選定によるアクセス
(c) 試料の分析
28 査察施設の保全及び退去の監視は、すべて、外縁から外側五十メートルを超えない幅の地帯内で行う。
29 査察団は、管理されたアクセスの範囲内で、査察施設からの輸送機関による退去について査察を行う権利を有する。被査察締約国は、査察の対象となる輸送機関であって査察団が十分なアクセスを認められないものが、査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念と関係する目的のために使用されていないことを査察団に対して証明するため、あらゆる合理的な努力を払う。
30 査察施設に入る施設の要員及び輸送機関並びに査察施設を退去する施設の要員及び個人の乗用の輸送機関は、査察の対象とならない。
31 退去の監視の手続については、査察が行われている間継続することができる。ただし、査察施設の正常な操業を不当に妨げ又は遅滞させてはならない。
査察の事前の説明及び査察のための計画
32 査察のための計画の作成を容易にするため、被査察締約国は、査察団にアクセスを認めるのに先立ち、安全上の措置及び受入れに関する措置についての説明を当該査察団に対して行う。
33 査察の事前の説明は、第二部37の規定に従って行う。被査察締約国は、査察の事前の説明において、査察団に対し、機微に係るものでありかつ申立てによる査察の目的に関係しないと認める設備、文書又は場所を示すことができる。更に、査察施設について責任を有する要員は、当該査察施設の物理的な配置及び他の特徴について査察団に説明する。査察団は、当該査察施設のすべての工作物及び主要な地理的な特徴を示す縮尺された地図又は略図の提供を受ける。査察団は、また、施設の要員及び記録の利用可能性について説明を受ける。
34 査察団は、査察の事前の説明の後、自己にとって利用可能かつ適当な情報に基づき、自己が行う活動(査察施設においてアクセスを望む具体的な場所を含む。)を明示する査察のための最初の計画を作成する。当該計画は、また、査察団を小集団に分割するか否かを明示する。当該計画については、被査察締約国及び査察施設の代表者に提供する。当該計画の実施は、Cの規定(アクセス及び活動に関する規定を含む。)に適合したものとする。
外縁における活動
35 査察団は、最終外縁又は代替外縁のうち最初に到着する外縁への到着の時に、このBに規定する手続に従って直ちに外縁における活動を開始し及び申立てによる査察が完了するまでこれらの活動を継続する権利を有する。
36 査察団は、外縁における活動を行うに当たり、次のことを行う権利を有する。
(a) 第二部の27から30までの規定に従って監視のための機器を使用すること。
(b) ふき取りにより試料を採取すること及び空気、土壌又は排水の試料を採取すること。
(c) 自己と被査察締約国との間で合意する追加的な活動を行うこと。
37 査察団の外縁における活動は、外縁から外側五十メートルを限度とする幅の地帯内で行うことができる。査察団は、また、被査察締約国が合意する場合には、当該地帯内の建物又は工作物に対するアクセスを認められる。すべての指向性を有する監視については、外縁の内側に向ける。申告された施設については、被査察締約国の裁量により、当該地帯は、申告外縁の内側、外側又は双方の側に設けることができる。
C 査察の実施
一般規則
38 被査察締約国は、要請外縁内又は要請外縁が最終外縁と異なる場合には最終外縁内でのアクセスを認める。これらの外縁内での具体的な場所へのアクセスの程度及び性質については、管理されたアクセスを基礎として査察団と被査察締約国との間で交渉を行う。
39 被査察締約国は、査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念を解消するため、できる限り速やかに、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後百八時間以内に、要請外縁内でのアクセスを認める。
40 被査察締約国は、査察団の要請に応じ、査察施設への空中からのアクセスを認めることができる。
41 被査察締約国は、38に規定するアクセスを認めるに当たり、財産権又は捜索及び押収に関して当該被査察締約国が有する憲法上の義務を考慮して、最大限度のアクセスを認める義務を負う。被査察締約国は、管理されたアクセスにより、国家の安全保障を保護するために必要な措置をとる権利を有する。この41の規定は、この条約によって禁止されている活動を行ってはならないとの義務の回避を隠すために被査察締約国が援用することはできない。
42 被査察締約国は、場所、活動又は情報への十分なアクセスを認めない場合には、申立てによる査察を引き起こしたこの条約の違反の可能性についての懸念を解消するための代替的な手段を提供するため、あらゆる合理的な努力を払う義務を負う。
43 第四条から第六条までの規定に従って申告された施設の最終外縁への到着の後、査察の事前の説明及び査察のための計画についての討議に引き続いてアクセスが認められる。この場合において、当該説明及び討議は、必要な最小限度に限られるものとし、いかなる場合にも三時間を超えてはならない。第三条1(d)の規定に従って申告された施設については、最終外縁への到着の後十二時間以内に、交渉を行い、及び管理されたアクセスを開始する。
44 査察団は、査察の要請に従って申立てによる査察を行うに当たり、この条約の違反の可能性についての懸念を解消するのに十分な関連する事実を提供するために必要な方法のみを使用するものとし、当該懸念の解消に関連しない活動を慎む。査察団は、被査察締約国によるこの条約の違反の可能性に関係する事実を収集し及び記録するものとし、被査察締約国が明示的に要請する場合を除くほか、明らかに関係のない情報を求め又は記録してはならない。収集された資料であって収集後に関連しないことが判明したものについては、保有してはならない。
45 査察団は、できる限り干渉の程度が低く、かつ、任務の効果的な及び適時の遂行に合致する方法で申立てによる査察を行うとの原則を指針とする。査察団は、できる限り、自己が受入れ可能と認める手続のうち最も干渉の程度が低い手続からとるものとし、自己が必要と認める場合にのみ、より干渉の程度が高い手続に移行する。
管理されたアクセス
46 査察団は、化学兵器に関係しない機微に係る設備、情報又は場所の保護を確保するため、被査察締約国が行う査察のための計画の変更の提案その他の提案(事前の説明の段階を含め査察のいかなる段階で行われるかを問わない。)を考慮する。
47 被査察締約国は、アクセスのために使用される外縁に出入りするための地点を指定する。査察団及び被査察締約国は、48の規定による最終外縁内及び要請外縁内の具体的な場所へのアクセスの程度、査察団が行う具体的な査察活動(試料の採取を含む。)、被査察締約国による具体的な活動の実施並びに被査察締約国による具体的な情報の提供について交渉する。
48 被査察締約国は、秘密扱いに関する附属書の規定に従い、化学兵器に関係しない機微に係る設備を保護し並びに化学兵器に関係しない秘密の情報及び資料の開示を防止するための措置をとる権利を有する。当該措置には、特に、次のことを含めることができる。
(a) 機微に係る文書を事務所内から撤去すること。
(b) 機微に係る表示、貯蔵品及び設備を覆うこと。
(c) 設備の機微に係る部品(例えば、コンピュータ又は電子系統)を覆うこと。
(d) コンピュータ・システムのオンライン接続を終了し及びデータ表示装置の使用を終了すること。
(e) 化学物質に関する附属書の表1から表3までに掲げる化学物質又は適当な分解生成物が存在するか否かについての試料の分析を制限すること。
(f) 無作為の選定に基づくアクセスの方法を採用すること。当該方法を採用する場合には、査察員は、査察を行う特定の割合又は数の建物を任意に選定することを要請される。同様の方法は、機微に係る建物の内部及び当該建物内にある物について適用することができる。
(g) 例外的な場合には、査察施設の特定の場所へのアクセスを個々の査察員にのみ与えること。
49 被査察締約国は、査察団が十分なアクセスを認められず又は48の規定に従って保護された物件、建物、工作物、容器又は輸送機関が、査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念と関係する目的のために使用されていないことを査察団に対して証明するため、あらゆる合理的な努力を払う。
50 49の規定については、特に、覆い又は環境を保護するための遮蔽物を被査察締約国の裁量により部分的に撤去する方法、囲われている場所の入口からその内部を目視によって査察する方法その他の方法により、達成することができる。
51 第四条から第六条までの規定に従って申告された施設については、次の規定を適用する。
(a) 施設協定を締結した施設については、最終外縁内のアクセス及び活動は、当該施設協定によって定められる境界内において阻害されない。
(b) 施設協定を締結していない施設については、アクセス及び活動についての交渉は、この条約に定める査察のための一般的な指針によって規律される。
(c) 第四条から第六条までの規定に基づく査察のために認められるアクセスを超えるアクセスは、このCに定める手続に従って管理される。
52 第三条1(d)の規定に従って申告された施設については、被査察締約国は、47及び48に規定する手続により、化学兵器に関係しない場所又は工作物への十分なアクセスを認めなかった場合には、当該場所又は工作物が査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念と関係する目的のために使用されていないことを査察団に対して証明するため、あらゆる合理的な努力を払う。
オブザーバー
53 要請締約国は、申立てによる査察におけるオブザーバーの参加に関する第九条12の規定に従い、オブザーバーが査察団の到着の時から合理的な期間内に査察団と同一の入国地点に到着するよう調整するため、技術事務局と連絡を保つ。
54 オブザーバーは、査察期間中、被査察締約国若しくは接受国に所在する要請締約国の大使館又は大使館が存在しない場合には要請締約国と連絡を取る権利を有する。被査察締約国は、オブザーバーに対し通信手段を提供する。
55 オブザーバーは、査察施設の代替外縁又は最終外縁のうち査察団が最初に到着する外縁に到着する権利及び被査察締約国により当該査察施設へのアクセスが認められる権利を有する。オブザーバーは、査察団に対し勧告を行う権利を有するものとし、査察団は、適当と認める範囲内でその勧告を考慮する。査察団は、査察が行われている間を通じて査察の実施及び調査結果についてオブザーバーに常時通報する。
56 国内滞在期間を通じて、被査察締約国は、オブザーバーが必要とする便宜(例えば、通信手段、通訳、輸送、作業場所、宿泊、食事、医療)を提供し又はそのための措置をとる。被査察締約国又は接受国の領域内におけるオブザーバーの滞在に係るすべての費用については、要請締約国が負担する。
査察期間
57 査察期間は、被査察締約国との合意により延長する場合を除くほか、八十四時間を超えてはならない。
D 査察の事後の活動
出国
58 査察団及び要請締約国のオブザーバーは、査察施設における査察の事後の手続が完了した後速やかに入国地点に赴くものとし、最小限度の時間内に被査察締約国の領域から退去する。
報告
59 査察の報告については、査察団が行った活動及び査察団による事実関係の調査結果(特に、申立てによる査察の要請において示されたこの条約の違反の可能性についての懸念に関するもの)を概括的に要約するものとし、この条約に直接関係する情報のみを含める。当該報告には、また、査察員に対して認められたアクセス及び協力の程度及び性質並びに当該アクセス及び協力が査察団が査察命令を遂行することをどの程度可能にしたかについての当該査察団による評価を含める。申立てによる査察の要請において示されたこの条約の違反の可能性についての懸念に関係する詳細な情報は、最終報告の附属として提出され、及び機微に係る情報を保護するための適当な保護措置の下で技術事務局内で保有される。
60 査察団は、その主要な勤務地に戻った後七十二時間以内に、特に、秘密扱いに関する附属書17の規定を考慮し、査察のとりあえずの報告を事務局長に提出する。事務局長は、当該報告を要請締約国、被査察締約国及び執行理事会に速やかに送付する。
61 査察の最終報告案については、申立てによる査察の完了の後二十日以内に被査察締約国に提供する。被査察締約国は、化学兵器に関係しない情報及び資料であって、その秘密性のため技術事務局の外部に送付されるべきでないと認めるものを特定する権利を有する。技術事務局は、当該報告案の変更について被査察締約国が行う提案を検討し、及び裁量により、可能な限り当該提案を採用する。その後、査察の最終報告については、申立てによる査察の完了の後三十日以内に、第九条の21から25までの規定に従って行われる配布及び検討のため、事務局長に提出する。
第十一部 化学兵器の使用の疑いがある場合における調査
A 総則
1 化学兵器の使用又は戦争の方法としての暴動鎮圧剤の使用の疑いがある場合に第九条又は第十条の規定に従って開始される調査については、この附属書及び事務局長が定める詳細な手続に従って行う。
2 化学兵器の使用の疑いがある場合に必要な具体的な手続は、次の追加的な規定によるものとする。
B 査察の事前の活動
調査の要請
3 事務局長に提出する化学兵器の使用の疑いがある場合の調査の要請には、可能な範囲内で、次の事項に関する情報を含めるべきである。
(a) その領域内で化学兵器が使用された疑いのある締約国
(b) 入国地点又はアクセスのための他の安全な経路についての提案
(c) 化学兵器が使用された疑いのある場所の所在地及び性質
(d) 化学兵器が使用された疑いのある時期
(e) 使用されたと思われる化学兵器の種類
(f) 疑いのある化学兵器の使用の程度
(g) 使用された可能性のある毒性化学物質の性質
(h) 人、動物及び植物に対する影響
(i) 適当な場合には具体的な援助の要請
4 調査を要請した締約国は、必要と認める追加の情報をいつでも提出することができる。
通告
5 事務局長は、調査を要請した締約国に対しその要請の受領を直ちに確認し、並びに執行理事会及びすべての締約国に通報する。
6 事務局長は、適当な場合には、その領域内において調査を行うことが要請された締約国に通告する。事務局長は、また、調査が行われている間他の締約国の領域へのアクセスが必要となる可能性がある場合には、当該他の締約国に通告する。
査察団の選任
7 事務局長は、資格を有する専門家であって特定の分野におけるその専門的知識が化学兵器の使用の疑いがある場合の調査において必要となるものの名簿を作成し及びこれを常時改定する。当該名簿については、この条約が効力を生じた後三十日以内及び当該名簿が改定されるごとに、各締約国に対し書面により通報する。当該名簿に掲げる資格を有する専門家は、各締約国が当該名簿の受領の後三十日以内に書面により受け入れない旨を宣言する場合を除くほか、指名されたものとみなす。
8 事務局長は、具体的な要請の事情及び特性を考慮して、申立てによる査察のために既に指名されている査察員及び査察補の中から査察団長及び査察団の構成員を選定する。更に、具体的な調査の適切な実施のために必要とされる専門的知識が既に指名されている査察員からは得られないと事務局長が認める場合には、査察団の構成員は、資格を有する専門家の名簿の中から選定することができる。
9 事務局長は、査察団に対する説明に際し、査察が最も効果的かつ速やかに行われることを確保するため、調査を要請した締約国又はその他の者が提供した追加の情報を当該説明に含める。
査察団の派遣
10 事務局長は、化学兵器の使用の疑いがある場合の調査の要請を受領した後直ちに、関係締約国との連絡を通じ、査察団の安全な受入れのための措置を要請し及び確認する。
11 事務局長は、査察団の安全を考慮して、できる限り早い機会に当該査察団を派遣する。
12 調査の要請の受領の後二十四時間以内に査察団が派遣されなかった場合には、事務局長は、その遅滞の理由について執行理事会及び関係締約国に通報する。
説明
13 査察団は、到着の時に及び査察が行われている間はいつでも、被査察締約国の代表者から説明を受ける権利を有する。
14 査察団は、査察の開始の前に、特に事務的な措置及び安全上の措置の基礎となる査察のための計画を作成する。当該査察のための計画については、必要に応じて改定する。
C 査察の実施
アクセス
15 査察団は、使用された疑いのある化学兵器により影響を受ける可能性のあるすべての場所へのアクセスが認められる権利を有する。査察団は、また、当該化学兵器の使用についての効果的な調査に関連すると認める病院、難民の収容施設その他の場所へのアクセスが認められる権利を有する。これらのアクセスについては、査察団は、被査察締約国と協議する。
試料の採取
16 査察団は、必要と認める種類及び量の試料を採取する権利を有する。査察団が必要と認め、かつ、要請する場合には、被査察締約国は、査察員又は査察補の監督の下に、試料の採取を援助する。被査察締約国は、また、化学兵器が使用された疑いのある場所に隣接する区域及び査察団が要請する他の区域から適当な対照試料を採取することを許可し、並びにその採取に協力する。
17 使用の疑いがある場合の調査における重要な試料には、毒性化学物質、弾薬類及び装置、弾薬類及び装置の残滓、環境に関する試料(例えば、空気、土壌、植物、水、雪)並びに人又は動物の生物医学上の試料(例えば、血液、尿、排せつ物、組織)を含める。
18 採取された試料と同一のものを入手することができず、かつ、試料の分析が現地外の実験施設において実施される場合において、要請があるときは、その分析の完了の後、残りの試料は、すべて被査察締約国に返還される。
査察施設の拡大
19 査察団が査察が行われている間に隣接する締約国に調査を拡大する必要があると認める場合には、事務局長は、当該締約国に対し、その領域へのアクセスの必要性について通告し、並びに査察団の安全な受入れのための措置を要請し及び確認する。
査察期間の延長
20 査察団が調査に関連する具体的な場所への安全なアクセスが可能でないと認める場合には、調査を要請した締約国に直ちに通報する。必要な場合には、安全なアクセスが認められ及び査察団がその任務を完了するまで査察期間を延長する。
面談
21 査察団は、使用された疑いのある化学兵器により影響を受けた可能性のある者と面談し及び当該者を検査する権利を有する。査察団は、また、当該化学兵器の使用の目撃者及び当該化学兵器の使用により影響を受けた可能性のある者を治療した又は当該者と接触した医療要員その他の者と面談する権利を有する。査察団は、利用可能な場合には、当該化学兵器の使用により影響を受けた可能性のある者の医療歴へのアクセスを認められ、及び適宜検死に参加することを許可される。
D 報告
手続
22 査察団は、被査察締約国の領域への到着の後二十四時間以内に、事務局長に対し状況報告を送付するものとし、更に、調査が行われている間を通じて、必要に応じ、経過報告を送付する。
23 査察団は、その主要な勤務地に戻った後七十二時間以内に、とりあえずの報告を事務局長に提出する。最終報告については、査察団がその主要な勤務地に戻った後三十日以内に事務局長に提出する。事務局長は、執行理事会及びすべての締約国に対し、とりあえずの報告及び最終報告を速やかに送付する。
内容
24 状況報告には、援助を緊急に必要としていることその他の関連する情報を記載する。経過報告には、援助が更に必要であることが調査の過程において明らかになった場合には、その旨を記載する。
25 最終報告は、特に調査の要請において示された使用された疑いのある化学兵器の使用についての事実関係の調査結果を要約したものとする。更に、当該使用に関する調査報告には、調査の過程についての説明(調査の各種の段階に応じたもの)であって特に次の事項に言及したものを含める。
(a) 試料の採取及び現地における分析が行われた場所及び時期
(b) 裏付けとなる証拠(例えば、面談の記録、医療上の検査及び科学的な分析の結果、査察団が調査した文書)
26 査察団が、その調査の過程において、特に、実験施設における採取した試料の分析を通じて不純物その他の物質を識別することによって、使用された化学兵器の出所を識別するために役立つ可能性のある情報を得た場合には、当該情報を報告に含める。
E この条約の締約国でない国
27 化学兵器がこの条約の締約国でない国に関係して又は締約国の管理の下にない領域内において使用された疑いがある場合には、機関は、国際連合事務総長と密接に協力する。機関は、要請がある場合には、その資源を同事務総長の利用に供する。
秘密情報の保護に関する附属書(「秘密扱いに関する附属書」)
目次
A 秘密情報の取扱いに関する一般原則
B 技術事務局の職員の雇用及び行為
C 現地における検証活動を行うに際し機微に係る設備を保護し及び秘密の資料の開示を防止するための措置
D 秘密の扱いに関する違反又は当該違反の疑いがある場合の手続
A 秘密情報の取扱いに関する一般原則
1 秘密情報を保護する義務は、非軍事上及び軍事上の活動及び施設の検証について適用する。機関は、第八条に規定する一般的な義務に従って次のことを行う。
(a) この条約に基づく機関の責任を適時、かつ、効果的に果たすために必要な最小限度の量の情報及び資料のみを要請すること。
(b) 査察員及び技術事務局のその他の職員が最高水準の能率、能力及び誠実性を満たすことを確保するために必要な措置をとること。
(c) この条約を実施するために協定及び規則を作成し並びに締約国により機関に対してアクセスが認められる情報をできる限り正確に明示すること。
2 事務局長は、秘密情報の保護を確保することについて主要な責任を負う。事務局長は、次の指針に従って、技術事務局による秘密情報の取扱いを規律する厳重な制度を確立する。
(a) 情報は、次のいずれかの場合には、秘密情報と認める。
(i) 当該情報を提供した締約国であって当該情報に関係するものが秘密情報として指定する場合
(ii) 認められていない情報の開示が、当該情報に関係する締約国又はこの条約の実施の枠組みに対し、損害を引き起こすことが合理的に予想されると事務局長が判断する場合
(b) 技術事務局が取得したすべての資料及び文書については、秘密情報を含むか否かを判断するため、技術事務局の適当な組織が評価する。締約国が他の締約国によるこの条約の継続的な遵守を確認するために必要であるとして要請する資料については、定期的に当該締約国に提供する。当該資料は、次のものを含む。
(i) 第三条から第六条までの規定及び検証附属書に従って締約国が行う冒頭報告、冒頭申告、年次報告及び年次申告
(ii) 検証活動の結果及びその実効性についての一般的な報告
(iii) この条約に従ってすべての締約国に提供される情報
(c) この条約の実施に関連して機関が取得したいかなる情報も、次のいずれかに該当する場合を除くほか、公表してはならず、又はその他の方法で提供してはならない。
(i) この条約の実施に関する一般的な情報については、会議又は執行理事会の決定に従い、取りまとめ、公開することができる。
(ii) いかなる情報も、当該情報に関係する締約国の明示の同意を得て提供することができる。
(iii) 秘密情報として分類された情報については、当該情報がこの条約の必要とするところに完全に一致する場合に限って提供されることを確保する手続によってのみ、機関が提供する。当該手続については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。
(d) 秘密の資料又は文書に係る機微の水準については、当該資料又は文書の適切な取扱い及び保護を確保するために一律に適用される基準に基づいて定める。このため、この条約の作成過程における関連する作業を考慮して、情報を秘密の程度に関する適当な区分に分類すること及び情報の秘密性が維持される正当な期間を定めることを確保するための明確な基準を有する分類制度を導入する。当該分類制度は、その実施に当たって必要な柔軟性を維持しつつ、秘密情報を提供する締約国の権利を保護するものとする。当該分類制度については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。
(e) 秘密情報は、機関の構内で確実に保管する。資料又は文書の一部は、締約国の国内当局に保管することもできる。具体的な施設の査察のためにのみ必要となる機微に係る情報(特に、写真、図面その他の文書)については、当該施設において施錠の上、保管することができる。
(f) 情報については、技術事務局が、この条約の検証に関する規定の効果的な実施に最大限度適合するようにしつつ、当該情報が関係する施設を直接特定することができない方法で取り扱い及び保管する。
(g) 施設から持ち出す秘密情報の量については、この条約の検証に関する規定の適時の、かつ、効果的な実施のために必要な最小限度に保つ。
(h) 秘密情報へのアクセスについては、当該秘密情報の分類に従って規律する。機関内の秘密情報の配布については、知る必要がある場合にのみ配布するとの基準に厳重に従う。
3 事務局長は、技術事務局による秘密情報の取扱いを規律する制度の実施状況について、毎年、会議に報告する。
4 締約国は、機関から受領する情報をその情報に関して定められた秘密の水準に従って取り扱う。締約国は、要請に応じ、機関が締約国に提供する情報の取扱いの詳細を提供する。
B 技術事務局の職員の雇用及び行為
5 職員の雇用条件については、秘密情報へのアクセス及び秘密情報の取扱いがAの規定に従って事務局長が定める手続に適合することを確保するようなものとする。
6 技術事務局における職務上の地位に基づき秘密情報へのアクセスが必要である場合には、当該地位については、アクセスが認められる範囲を明示した正式の職務規則によって規律する。
7 事務局長及び査察員その他の職員は、その職を退いた後も、その公的任務の遂行に際して知るに至った秘密情報を権限のない者に開示してはならない。事務局長及び査察員その他の職員は、いずれかの締約国に関係する自己の活動に関連してアクセスが認められた情報を、いかなる国若しくは団体に対しても又は技術事務局外のいかなる個人に対しても提供してはならない。
8 査察員は、その任務を遂行するに当たり、その査察命令を遂行するために必要な情報及び資料のみを要請する。査察員は、随伴的に収集した情報であって、この条約の遵守についての検証に関係しないものの記録は作成しない。
9 職員は、個々に、その雇用期間中及び雇用期間の終了の後五年間に適用される秘密の保護に関する契約を技術事務局と締結する。
10 査察員その他の職員は、不当な開示を避けるため、警備上考慮すべきことにつき適切に助言を受け、及び不当に開示した場合に課される制裁につき適切に注意を喚起される。
11 締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所における活動に関する秘密情報へのアクセスが職員に対して認められる少なくとも三十日前までに、当該締約国は、当該職員に対して認められる予定のアクセスについて通報を受ける。ただし、査察員については、当該査察員の指名の提案のための通報をもって足りるものとする。
12 査察員その他の技術事務局の職員の任務の遂行を評価するに当たっては、秘密情報の保護に関する当該職員の記録について特別の注意を払う。
C 現地における検証活動を行うに際し機微に係る設備を保護し及び秘密の資料の開示を防止するための措置
13 締約国は、秘密を保護するために必要と認める措置をとることができる。ただし、この条約の本文及び検証附属書に従いこの条約を遵守していることを証明する義務を履行することを条件とする。締約国は、査察を受ける時に、査察団に対し、機微に係るものでありかつ査察の目的に関係しないと認める設備、文書又は場所を示すことができる。
14 査察団は、できる限り干渉の程度が低く、かつ、任務の効果的な及び適時の遂行に合致する方法で現地査察を行うとの原則を指針とする。査察団は、化学兵器に関係しない機微に係る設備又は情報の保護を確保するため、査察を受ける締約国が行う提案(査察のいかなる段階で行われるかを問わない。)を考慮する。
15 査察団は、査察の実施を規律するこの条約の本文及び附属書の規定を厳格に遵守する。査察団は、機微に係る設備を保護し及び秘密の資料の開示を防止するための手続を十分に尊重する。
16 検証に係る措置及び施設協定を作成するに当たり、秘密情報を保護する必要に十分な考慮を払う。個々の施設のための査察手続に関する協定には、施設において査察員がアクセスを認められる場所の確定、現地における秘密情報の保管、合意される区域における査察活動の範囲、試料の採取及びその分析、記録へのアクセス並びに機器及び継続的な監視のための設備の使用に関する具体的かつ詳細な措置を含める。
17 査察の後に作成する報告には、この条約の遵守に関連する事実のみを含める。当該報告については、機関が定める秘密情報の取扱いを規律する規則に従って取り扱う。必要な場合には、報告に含まれる情報については、技術事務局及び被査察締約国の外部に送付する前に、機微の程度の低いものとするための処理をする。
D 秘密の扱いに関する違反又は当該違反の疑いがある場合の手続
18 事務局長は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する勧告を考慮して、秘密の扱いに関する違反又は当該違反の疑いがある場合にとられる必要な手続を定める。
19 事務局長は、秘密の保護に関する個々の契約の実施を監督する。事務局長は、秘密情報の保護に関する義務の違反が生じたとの十分な根拠があると判断する場合には、速やかに調査を開始する。事務局長は、締約国が秘密の扱いに関する違反を申し立てる場合にも、速やかに調査を開始する。
20 事務局長は、秘密情報を保護する義務に違反した職員に対し、適当な懲戒処分を行う。重大な違反の場合には、事務局長は、裁判権からの免除を放棄することができる。
21 締約国は、事務局長が秘密の扱いに関する違反又は当該違反の疑いを調査し及び違反が確かめられた場合に適当な措置をとるに当たり、可能な範囲内で協力し及び支援する。
22 機関は、技術事務局の構成員による秘密の扱いに関する違反について損害賠償責任を負わない。
23 締約国及び機関の双方に関係する違反については、会議の補助機関として設置する「秘密の扱いに関係する紛争の解決のための委員会」が検討する。同委員会は、会議が設置する。同委員会の構成及び運営手続を規律する規則については、第一回会期において会議が採択する。
改正文 (令和二年六月五日外務省告示第二一三号) 抄
令和二年六月七日に効力を生ずる。