添付一覧
D 査察の事前の活動
通告
被査察締約国又は接受国の領域への入国及び査察施設への移動
査察の事前の説明
E 査察の実施
一般規則
安全
通信
査察団及び被査察締約国の権利
試料の採取、取扱い及び分析
査察期間の延長
査察の事後の説明
F 出国
G 報告
H 一般規則の適用
第三部 第四条、第五条及び第六条3の規定に基づく検証措置に関する一般規定
A 冒頭査察及び施設協定
B 共通の措置
C 査察の事前の活動
第四部(A) 第四条の規定に基づく化学兵器の廃棄及びその検証
A 申告
化学兵器
第三条1(a)(iii)の規定に基づく化学兵器の申告
過去における移譲及び受領の申告
化学兵器の廃棄のための全般的な計画の提出
B 貯蔵施設を保全するための措置及び貯蔵施設における準備
C 廃棄
化学兵器の廃棄のための原則及び方法
廃棄の規律
廃棄の中間の期限の変更
廃棄の完了の期限の延期
廃棄のための詳細な年次計画
廃棄に関する年次報告
D 検証
化学兵器の申告の現地査察による検証
貯蔵施設の体系的な検証
査察及び訪問
化学兵器の廃棄の体系的な検証
化学兵器の廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設
化学兵器の廃棄施設における体系的な現地検証のための措置
第四部(B) 老朽化した化学兵器及び遺棄化学兵器
A 総則
B 老朽化した化学兵器のための制度
C 遺棄化学兵器のための制度
第五部 第五条の規定に基づく化学兵器生産施設の廃棄及びその検証
A 申告
化学兵器生産施設の申告
第三条1(c)(iii)の規定に基づく化学兵器生産施設の申告
過去における移譲及び受領の申告
廃棄のための全般的な計画の提出
廃棄のための年次計画及び廃棄に関する年次報告の提出
B 廃棄
化学兵器生産施設の廃棄に関する一般原則
化学兵器生産施設の閉鎖に関する原則及び方法
化学兵器生産施設の廃棄の前に行われる当該施設の技術的な保守
化学兵器生産施設の化学兵器の廃棄施設への一時的な転換に関する原則及び方法
化学兵器生産施設の廃棄に関する原則及び方法
廃棄の規律
廃棄のための詳細な計画
詳細な計画の検討
C 検証
化学兵器生産施設の申告の現地査察による検証
化学兵器生産施設及びその活動の終了の体系的な検証
化学兵器生産施設の廃棄の検証
化学兵器生産施設の化学兵器の廃棄施設への一時的な転換の検証
D この条約によって禁止されていない目的のための化学兵器生産施設の転換
転換を要請する手続
決定が行われるまでの間の措置
転換のための条件
執行理事会及び会議の決定
転換のための詳細な計画
詳細な計画の検討
第六部 第六条に規定するこの条約によって禁止されていない活動(表1の化学物質及びこれに関係する施設のための制度)
A 一般規定
B 移譲
C 生産
生産に関する一般原則
単一の小規模な施設
他の施設
D 申告
単一の小規模な施設
10及び11に規定する他の施設
E 検証
単一の小規模な施設
10及び11に規定する他の施設
第七部 第六条に規定するこの条約によって禁止されていない活動(表2の化学物質及びこれに関係する施設のための制度)
A 申告
国内の集計された資料の申告
表2の化学物質を生産し、加工し又は消費する事業所の申告
化学兵器のための過去における表2の化学物質の生産に関する申告
締約国に対する情報
B 検証
総則
査察の目的
冒頭査察
査察
査察手続
査察の通告
C この条約の締約国でない国に対する移譲
第八部 第六条に規定するこの条約によって禁止されていない活動(表3の化学物質及びこれに関係する施設のための制度)
A 申告
国内の集計された資料の申告
表3の化学物質を生産する事業所の申告
化学兵器のための過去における表3の化学物質の生産に関する申告
締約国に対する情報
B 検証
総則
査察の目的
査察手続
査察の通告
C この条約の締約国でない国に対する移譲
第九部 第六条に規定するこの条約によって禁止されていない活動(他の化学物質を生産する施設のための制度)
A 申告
他の化学物質を生産する施設の一覧表
技術事務局の援助
締約国に対する情報
B 検証
総則
査察の目的
査察手続
査察の通告
C Bの規定の実施及び検討
実施
検討
第十部 第九条の規定に基づく申立てによる査察
A 査察員及び査察補の指名及び選定
B 査察の事前の活動
通告
被査察締約国又は接受国の領域への入国
最終外縁の代替的な決定
査察施設の所在地の検証
査察施設の保全(退去の監視)
査察の事前の説明及び査察のための計画
外縁における活動
C 査察の実施
一般規則
管理されたアクセス
オブザーバー
査察期間
D 査察の事後の活動
出国
報告
第十一部 化学兵器の使用の疑いがある場合における調査
A 総則
B 査察の事前の活動
調査の要請
通告
査察団の選任
査察団の派遣
説明
C 査察の実施
アクセス
試料の採取
査察施設の拡大
査察期間の延長
面談
D 報告
手続
内容
E この条約の締約国でない国
第一部 定義
1 「承認された装置」とは、査察団の任務の遂行に必要な装置及び機器であって、第二部27の規定によって技術事務局が作成する規則に従って技術事務局が認証したものをいう。承認された装置には、査察団が使用する運営用備品又は記録用資材を含めることができる。
2 第二条の化学兵器生産施設の定義に規定する「建物」は、特別な建物及び標準的な建物から成る。
(a) 「特別な建物」とは、次のものをいう。
(i) 生産又は充填のための特別な設備が配置されている建物(地下の工作物を含む。)
(ii) この条約によって禁止されていない化学物質の生産又は充填のために通常使用される建物とは明確に異なる特徴を有する建物(地下の工作物を含む。)
(b) 「標準的な建物」とは、第二条8(a)(i)に規定する化学物質又は腐食性の化学物質を生産しない施設のための産業用の一般的な規格に従って建設される建物(地下の工作物を含む。)をいう。
3 「申立てによる査察」とは、第九条の8から25までの規定に基づく他の締約国の要請により、締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所における施設又は区域に対して行われる査察をいう。
4 「識別可能な有機化学物質」とは、炭素化合物(炭素の酸化物及び硫化物並びに金属炭酸塩を除く。)から成るすべての化学物質であって、化学名、構造式が判明している場合には当該構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号によって識別することができるものをいう。
5 第二条の化学兵器生産施設の定義に規定する「設備」は、特別な設備及び標準的な設備から成る。
(a) 「特別な設備」とは、次のものをいう。
(i) 一連の主要な生産設備(生成物の合成、分離又は精製のための反応器又は設備、技術の最終段階(例えば、反応工程、生成物の分離工程)において熱移転のために直接使用された設備及び同条8(a)(i)に規定する化学物質と接触していたか又は化学兵器生産施設が操業する場合に当該化学物質と接触することとなる他の設備を含む。)
(ii) 化学兵器の充填のための機器類
(iii) 化学兵器生産施設としての施設(同条8(a)(i)に規定する化学物質又は腐食性の化学物質を生産しない施設のための産業用の一般的な規格に従って建設される施設とは異なるもの)の操業のために特別に設計され、建造され又は設置された他の設備(例えば、高ニッケル合金又は他の特別な耐食性材料から作られた設備、廃棄物の管理若しくは処理、空気のろ過又は溶剤の回収のための特殊な設備、特別な隔離設備及び安全用遮蔽体、化学兵器のために毒性化学物質の分析に使用される標準的でない実験設備、特別に設計された工程制御盤、特別な設備のための専用の予備品)
(b) 「標準的な設備」とは、次のものをいう。
(i) 化学産業において一般的に使用される生産設備であって、特別な設備の類型には含まれないもの
(ii) 化学産業において通常使用される他の設備(例えば、消火設備、警備及び安全監視設備、医療施設、実験施設、通信設備)
6 第六条の規定において「施設」とは、次の産業施設(「事業所」、「工場」及び「設備単位」)のいずれかをいう。
(a) 「事業所」(例えば、工業所、製作所)とは、中間的な管理組織を有する一又は二以上の工場が地域的に統合されたものであって、単一の運営管理の下にあり、かつ、共通の基盤的施設(例えば、次の(i)から(viii)までに掲げるもの)を有するものをいう。
(i) 管理事務所その他の事務所
(ii) 修理及び保守のための作業場
(iii) 医療センター
(iv) 光熱・用水設備
(v) 中央分析実験施設
(vi) 研究開発実験施設
(vii) 排水及び廃棄物中央処理場
(viii) 貯蔵倉庫
(b) 「工場」(例えば、生産施設、作業所)とは、補助的な及び付随する基盤的施設(例えば、次の(i)から(vi)までに掲げるもの)を有する一又は二以上の設備単位を含む敷地、工作物又は建物であって相対的に独立したものをいう。
(i) 小規模な管理組織
(ii) 原料及び生成物の貯蔵及び取扱いのための場所
(iii) 排水又は廃棄物の取扱い及び処理のための場所
(iv) 制御及び分析のための実験施設
(v) 救急医療及び関係する医療組織
(vi) 申告された化学物質及びその原料又は当該化学物質から生成される生成物の当該工場への、当該工場の周辺における及び当該工場からの移動に関する記録
(c) 「設備単位」(例えば、生産の設備単位、加工の設備単位)とは、化学物質の生産、加工又は消費に必要な設備の組合せ(槽及び槽に付随する設備を含む。)をいう。
7 「施設協定」とは、第四条から第六条までの規定に従って現地検証の対象となる特定の施設に関する締約国と機関との間の協定又は取決めをいう。
8 「接受国」とは、この条約に従って査察の対象となる他の締約国の施設又は区域が自国の領域内にある国をいう。
9 「国内の同行員」とは、査察団の国内滞在期間中、当該査察団に同行し及び当該査察団を援助するために、被査察締約国が希望するとき及び適当な場合において接受国が希望するときに、これらの国によって指定される個人をいう。
10 「国内滞在期間」とは、査察団が入国地点に到着してから入国地点から出国するまでの期間をいう。
11 「冒頭査察」とは、第三条から第六条までの規定及びこの附属書に従って行われる申告を検証するために施設に対して行われる最初の現地査察をいう。
12 「被査察締約国」とは、自国の領域内若しくはその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所においてこの条約に基づいて査察が行われる締約国又は接受国の領域内にある自国の施設若しくは区域が査察の対象となる締約国をいう。ただし、第二部21に規定する締約国を含まない。
13 「査察補」とは、査察又は訪問に当たって査察員を補佐するため、第二部Aの規定に従って技術事務局が指名する個人(例えば、医療、警備及び管理のための要員、通訳)をいう。
14 「査察命令」とは、個別の査察の実施のために事務局長が査察団に対して与える指示をいう。
15 「査察手引書」とは、技術事務局が作成する査察の実施のための追加的な手続を取りまとめたものをいう。
16 「査察施設」とは、査察が行われる施設又は区域であって、それぞれの施設協定、査察の要請(代替外縁又は最終外縁によって拡大されたものを含む。)又は査察命令において具体的に定められるものをいう。
17 「査察団」とは、個別の査察を行うために事務局長が選任する査察員及び査察補の集団をいう。
18 「査察員」とは、この条約に基づいて査察又は訪問を行うため、第二部Aに規定する手続に従って技術事務局が指名する個人をいう。
19 「モデル協定」とは、この附属書の検証に関する規定を実施するため、締約国と機関との間で締結する協定のための一般的な形式及び内容を定める文書をいう。
20 「オブザーバー」とは、申立てによる査察に立ち会う要請締約国又は第三の締約国の代表者をいう。
21 「外縁」とは、申立てによる査察について、地理上の座標又は地図上の記述のいずれかによって定められる査察施設の外側の境界をいう。
(a) 「要請外縁」とは、第十部8の規定に従って指定される査察施設の外縁をいう。
(b) 「代替外縁」とは、要請外縁に代えて被査察締約国が指定する査察施設の外縁をいう。代替外縁については、第十部17に定める要件を満たすものとする。
(c) 「最終外縁」とは、第十部の16から21までの規定に従って査察団と被査察締約国との間の交渉において合意される最終の査察施設の外縁をいう。
(d) 「申告外縁」とは、第三条から第六条までの規定に従って申告された施設の外側の境界をいう。
22 第九条の規定の適用上、「査察期間」とは、査察団が査察施設へのアクセスを認められてから当該査察施設を出発するまでの期間をいう。ただし、検証活動の事前又は事後に行われる説明のための時間を除く。
23 第四条から第六条までの規定の適用上、「査察期間」とは、査察団が査察施設に到着してから当該査察施設を出発するまでの期間をいう。ただし、検証活動の事前又は事後に行われる説明のための時間を除く。
24 「入国地点」又は「出国地点」とは、この条約に基づく査察のために査察団が国内に到着し又はその任務の完了の後出国するために指定された場所をいう。
25 「要請締約国」とは、第九条の規定に基づいて申立てによる査察を要請した締約国をいう。
26 「トン」とは、メートル・トン、すなわち、千キログラムをいう。
第二部 検証の一般規則
A 査察員及び査察補の指名
1 技術事務局は、この条約が効力を生じた後三十日以内に、すべての締約国に対し、指名のために提案する査察員及び査察補の氏名、国籍、地位、資格及び職業上の経験を書面によって通報する。
2 締約国は、自国に対して指名のために提案された査察員及び査察補の名簿の受領を直ちに確認するものとし、当該名簿の受領の確認の後三十日以内に、技術事務局に対し、各査察員及び査察補の受入れを書面によって通報する。締約国が当該名簿の受領の確認の後三十日以内に書面により受け入れない旨を宣言する場合を除くほか、当該名簿に含まれる査察員及び査察補は、指名されたものとみなす。締約国は、その反対する理由を当該宣言に含めることができる。
受け入れられない場合には、提案された査察員又は査察補は、受け入れない旨を宣言した締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所において、検証活動に従事せず又は参加しない。技術事務局は、必要な場合には、当初の名簿に追加して更に提案を行う。
3 この条約に基づく検証活動は、指名された査察員及び査察補のみによって行われる。
4 締約国は、いつでも、既に指名されている査察員又は査察補の受入れに反対する権利を有する。ただし、5の規定が適用される場合は、この限りでない。当該締約国は、書面により、受入れに反対する旨を技術事務局に通報するものとし、反対する理由をその通報に含めることができる。当該締約国による反対は、技術事務局による通報の受領の後三十日で効力を生ずる。技術事務局は、査察員又は査察補の指名の撤回を当該締約国に直ちに通報する。
5 査察の通告を受けた締約国は、当該査察のための査察団の名簿に掲げられている指名された査察員又は査察補を当該査察団から除外することを求めてはならない。
6 締約国により受け入れられ、当該締約国について指名される査察員又は査察補の数は、適切な数の査察員及び査察補の利用及び交替を可能にするのに十分なものでなければならない。
7 事務局長は、提案した査察員又は査察補が受け入れられないことにより、十分な数の査察員又は査察補の指名が妨げられる等技術事務局の任務の効果的な遂行が阻害されると認める場合には、この問題を執行理事会に送付する。
8 査察員及び査察補の名簿の修正が必要であるか又は要請される場合にはいつでも、当初の名簿について定められた方法と同様の方法で代替の査察員及び査察補を指名する。
9 他の締約国の領域内に存在する締約国の施設の査察を行う査察団の構成員については、被査察締約国及び接受国である締約国(以下「接受締約国」という。)の双方にこの附属書に定める手続を適用して指名する。
B 特権及び免除
10 締約国は、査察員及び査察補の名簿又はその変更の通報の受領を確認した後三十日以内に、各査察員又は査察補が査察活動を行う目的で自国の領域内に入国し及び滞在することができるように数次の出入国査証又は通過査証その他の文書を提供する。これらの文書は、技術事務局に提供した後少なくとも二年間は有効なものとする。
11 査察員及び査察補は、その任務を効果的に遂行するため、次の(a)から(i)までに規定する特権及び免除を与えられる。特権及び免除は、この条約のために査察団の構成員に対して与えられるものであり、当該構成員の個人の一身上の便宜のために与えられるものではない。特権及び免除は、被査察締約国又は接受国の領域内に到着してから当該領域を出発するまでの全期間にわたって当該構成員に対して与えられ、その後は、当該構成員の公の任務の遂行に当たって既に行われた行為に関して与えられる。
(a) 査察団の構成員は、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約第二十九条の規定に基づいて外交官が享受する不可侵を与えられる。
(b) この条約に基づいて査察活動を行う査察団の住居内及び事務所の構内は、外交関係に関するウィーン条約第三十条1の規定に基づいて外交官の住居に与えられる不可侵及び保護を与えられる。
(c) 査察団の書類及び通信(記録を含む。)は、外交関係に関するウィーン条約第三十条2の規定に基づいて外交官のすべての書類及び通信に与えられる不可侵を享受する。査察団は、技術事務局と通信するために暗号を使用する権利を有する。
(d) 査察団の構成員が携行する試料及び承認された装置は、この条約に定めるところに従って不可侵とし、及びすべての関税を免除される。有害な試料は、関連規則に従って輸送する。
(e) 査察団の構成員は、外交関係に関するウィーン条約第三十一条の1から3までの規定に基づいて外交官に与えられる免除を与えられる。
(f) この条約に基づく活動を行う査察団の構成員は、外交関係に関するウィーン条約第三十四条の規定に基づいて外交官に与えられる賦課金及び租税の免除を与えられる。
(g) 査察団の構成員は、いかなる関税又は関係する課徴金も支払うことなく、個人的な使用のための物品を被査察締約国又は接受締約国の領域内に持ち込むことを許可される。ただし、輸出入が法律によって禁止されており又は検疫規則によって規制されている物品を除く。
(h) 査察団の構成員は、一時的な公の任務を有する外国政府の代表者に与えられる通貨及び為替に関する便益と同一の便益を与えられる。
(i) 査察団の構成員は、被査察締約国又は接受国の領域内で個人的な利得を目的とするいかなる職業活動又は商業活動にも従事してはならない。
12 査察団の構成員は、被査察締約国でない締約国の領域を通過する場合には、外交関係に関するウィーン条約第四十条1の規定に基づいて外交官が享受する特権及び免除を与えられる。当該査察団の構成員が携行する書類及び通信(記録を含む。)、試料並びに承認された装置に関しては、11の(c)及び(d)に規定する特権及び免除が与えられる。
13 査察団の構成員は、その特権及び免除を害されることなく、被査察締約国又は接受国の法令を尊重する義務を負い、及び査察命令と両立する限度においてこれらの国の国内問題に介入しない義務を負う。被査察締約国又は接受締約国がこの附属書に規定する特権及び免除の濫用があったと認める場合には、濫用があったか否かを決定するため、及び濫用があったと決定するときはこれが繰り返されることを防止するため、当該被査察締約国又は接受締約国と事務局長との間で協議を行う。
14 事務局長は、査察団の構成員に対する裁判権からの免除が正義の実現を阻害するものであり、かつ、この条約の実施を害することなくこれを放棄することができると認める場合には、当該免除を放棄することができる。放棄は、常に明示的に行わなければならない。
15 オブザーバーは、このBの規定に基づいて査察員に対して与えられる特権及び免除と同一の特権及び免除を与えられる。ただし、11(d)の規定に基づいて与えられる特権及び免除は、この限りでない。
C 共通の措置
入国地点
16 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に入国地点を指定し、及び技術事務局に対し必要な情報を提供する。当該入国地点については、査察団が少なくともいずれかの入国地点からいかなる査察施設へも十二時間以内に到着することができるようなものとする。技術事務局は、すべての締約国に対し入国地点の所在地に関する情報を提供する。
17 締約国は、技術事務局に通報することにより、入国地点を変更することができる。その変更は、すべての締約国に対し適切な通報が行われるようにするため、技術事務局が変更の通報を受領した後三十日で効力を生ずる。
18 技術事務局は、入国地点の数が査察の適時の実施のために不十分であり又は締約国が提案する入国地点の変更の結果査察の適時の実施が妨げられると認める場合には、このような問題を解決するために当該締約国と協議を行う。
19 被査察締約国の施設若しくは区域が接受締約国の領域内に存在する場合又は入国地点から査察の対象となる施設若しくは区域へのアクセスが認められるために他の締約国の領域を通過することが必要となる場合には、当該被査察締約国は、この附属書に従って、当該査察に関する権利を行使し及び義務を履行する。当該接受締約国は、これらの施設又は区域の査察を容易にし、及び査察団がその任務を適時のかつ効果的な方法で遂行することができるようにするため必要な援助を提供する。被査察締約国の施設又は区域の査察を行うためにその領域を通過することが必要とされる締約国は、その通過を容易にする。
20 被査察締約国の施設又は区域がこの条約の締約国でない国の領域内に存在する場合には、当該被査察締約国は、これらの施設又は区域の査察がこの附属書に従って行われることを確保するために必要なすべての措置をとる。締約国は、この条約の締約国でない国の領域内に一又は二以上の施設又は区域を有する場合には、自国について指名された査察員及び査察補の受入れがその接受国によって行われることを確保するために必要なすべての措置をとる。被査察締約国がアクセスを確保することができない場合には、当該被査察締約国は、アクセスを確保するために必要なすべての措置をとったことを証明する。
21 査察の対象となる施設又は区域が、締約国の領域内であり、かつ、この条約の締約国でない国の管轄又は管理の下にある場所に存在する場合には、当該締約国は、これらの施設又は区域の査察がこの附属書に従って行われることを確保するため、被査察締約国及び接受締約国に対して求められることとなる必要なすべての措置をとる。当該締約国は、これらの施設又は区域へのアクセスを確保することができない場合には、アクセスを確保するために必要なすべての措置をとったことを証明する。この21の規定は、当該査察の対象となる施設又は区域が当該締約国の施設又は区域である場合には、適用しない。
不定期飛行に使用する航空機の利用に関する措置
22 査察団は、定期の商業上の輸送を利用することによって適時に移動することができない場合には、第九条の規定に基づく査察その他の査察のため、技術事務局が所有し又は借り上げる航空機を利用することを必要とすることがある。締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、査察施設が存在する領域へ及び当該領域から査察団及び査察に必要な装置を輸送する不定期飛行に使用する航空機のために常に有効な外交上の許可番号を技術事務局に通報する。指定される入国地点への往復の航空路は、外交上の許可を与えるための基礎として締約国と技術事務局との間で合意した確立された国際航空路に沿うものとする。
23 技術事務局は、不定期飛行に使用する航空機を利用する場合には、査察施設が存在する国の空域に入る前の最終の飛行場から入国地点までの当該航空機の飛行計画を、当該飛行場からの出発予定時刻の少なくとも六時間前までに、国内当局を通じて被査察締約国に提出する。当該飛行計画は、民間航空機について適用される国際民間航空機関の手続に従って提出する。技術事務局は、その所有し又は借り上げる航空機に関し、各飛行計画の備考欄に常に有効な外交上の許可番号及びその航空機が査察のための航空機であることを示す適当な注釈を含める。
24 被査察締約国又は接受締約国は、査察団が到着予定時刻までに入国地点に到着することができるようにするため、査察が行われる国の空域に入る前の最終の飛行場からの当該査察団の出発予定時刻の少なくとも三時間前までに、23の規定に従って提出される飛行計画が承認されることを確保する。
25 被査察締約国は、技術事務局が査察団の利用する航空機を所有し又は借り上げる場合には、入国地点において、技術事務局が要請する当該航空機のための駐機場、警備上の保護、役務及び燃料を提供する。当該航空機は、着陸料、出国税及びこれらに類する課徴金を免除される。技術事務局は、このような燃料、警備上の保護及び役務の費用を負担する。
管理上の措置
26 被査察締約国は、査察団が必要とする便宜(例えば、通信手段、面談その他の任務の遂行のために必要な範囲内の通訳、輸送、作業場所、宿泊、食事、医療)を提供し又はそのための措置をとる。この点に関し、被査察締約国が査察団のために負担した費用については、機関が償還する。
承認された装置
27 29の規定が適用される場合を除くほか、被査察締約国は、28の規定に従って承認された装置であって、技術事務局が査察を行うために必要であると決定したものを査察団が査察施設に持ち込むことにつき、いかなる制限も課してはならない。技術事務局は、このような目的のために必要とされる承認された装置の一覧表及びこれらの装置を規律する規則であってこの附属書に適合するものを作成し及び、必要に応じ、改定する。技術事務局は、承認された装置の一覧表及び当該規則を作成するに当たり、承認された装置が使用される可能性のあるすべての種類の施設の安全が十分に考慮されることを確保する。承認された装置の一覧表については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。
28 技術事務局は、装置を保管し、指定し、検査し及び承認する。技術事務局は、可能な範囲内で、求められる査察の特定の種類に合わせて特別に設計された装置を選定する。指定され及び承認された装置については、許可なしに変更されることのないように特別に保護する。
29 被査察締約国は、定められた時間的な枠組みを害することなく、入国地点において査察団の構成員の立会いの下に、装置を検査する権利、すなわち、自国若しくは接受国の領域内に持ち込まれ又はこれらの領域から撤去される装置を識別するために点検する権利を有する。技術事務局は、その識別を容易にするため、当該装置が指定され及び承認されたものであることを認証する書類及び標識を添付する。また、装置の検査に当たっては、被査察締約国は、当該装置が特定の種類の査察のために承認された装置に適合することを十分確認する。被査察締約国は、承認された装置に適合しない装置又は認証のための書類及び標識が添付されていない装置を排除することができる。装置の検査のための手続は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。
30 査察団が、現地において入手可能な装置であって技術事務局に属しないものを使用することが必要であると認める場合において、当該装置を使用することができるよう被査察締約国に要請するときは、当該被査察締約国は、可能な範囲内でその要請に従う。
D 査察の事前の活動
通告
31 事務局長は、査察団の入国地点への予定される到着の前に及び定められた時間的な枠組みがある場合には当該時間的な枠組みの範囲内で、査察を行う意向を締約国に通告する。
32 事務局長が行う通告には、次の事項に関する情報を含める。
(a) 査察の種類
(b) 入国地点
(c) 入国地点への到着の日及び予定時刻
(d) 入国地点への到着の手段
(e) 査察を行う施設
(f) 査察員及び査察補の氏名
(g) 適当な場合には特別な飛行のための航空機の利用の許可
33 被査察締約国は、査察を行う意向についての技術事務局の通告の受領の後一時間以内に、当該通告の受領を確認する。
34 締約国の施設であって他の締約国の領域内に存在するものの査察を行う場合には、双方の締約国は、31及び32の規定に従って同時に通告を受ける。
被査察締約国又は接受国の領域への入国及び査察施設への移動
35 査察団の到着の通告を受けた被査察締約国又は接受締約国は、その領域への査察団の即時の入国を確保するものとし、国内の同行員を通じて又は他の手段により、入国地点から査察施設を経由して出国地点に至るまでの間、査察団並びにその装置及び備品の安全な移動を確保するため権限の範囲内で可能なすべてのことを行う。
36 被査察締約国又は接受締約国は、必要に応じ、入国地点への到着の後十二時間以内に査察団が査察施設に到着するよう援助する。
査察の事前の説明
37 査察団は、査察施設への到着に際して査察の開始の前に、当該査察施設の代表者から、適宜地図その他の文書を用いて、当該査察施設、当該査察施設において行われている活動、安全上の措置並びに査察のために必要な管理上の及び受入れに関する措置に関して説明を受ける。説明に費やす時間については、必要な最小限度に制限するものとし、いかなる場合にも三時間を超えてはならない。
E 査察の実施
一般規則
38 査察団の構成員は、この条約、事務局長が定める規則及び締約国と機関との間で締結する施設協定に従ってその任務を遂行する。
39 査察団は、事務局長の査察命令を厳格に遵守するものとし、この命令を逸脱する活動を慎む。
40 査察団の活動は、その任務の適時の、かつ、効果的な遂行を確保するよう並びに被査察締約国又は接受国にとっての不便及び査察を行う施設又は区域に対する障害ができる限り少なくなることを確保するように行う。査察団は、施設の操業を不必要に妨げ又は遅滞させること及び施設の安全に影響を及ぼすことを回避する。特に、査察団は、いかなる施設も稼働してはならない。査察員は、その査察命令を遂行するため施設において具体的な稼働が行われる必要があると認める場合には、査察を行う施設の指名された代表者に対し具体的な稼働を行うよう要請する。当該代表者は、可能な範囲内でその要請に応ずる。
41 査察団の構成員は、被査察締約国又は接受国の領域内でその任務を遂行するに当たり、当該被査察締約国が要請する場合には、当該被査察締約国の代表者の同行を受け入れる。ただし、そのために査察団の任務の遂行が遅滞させられ又は妨げられてはならない。
42 査察の実施のための詳細な手続については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する指針を考慮して、技術事務局が作成し、査察手引書に記載する。
安全
43 査察員及び査察補は、その活動を行うに当たり、査察施設において定められている安全に関する規則(施設内の管理区域の保護及び人の安全のための規則を含む。)を遵守する。この義務の履行のため、会議は、第八条21(i)の規定に従って適当な詳細な手続を検討し及び承認する。
通信
44 査察員は、国内滞在期間中、技術事務局の本部と通信する権利を有する。このため、査察員は、自己の所有する承認された装置であって正当な認証を受けたものを使用することができるものとし、被査察締約国又は接受締約国に対し他の電気通信手段へのアクセスを認めるよう要請することができる。査察団は、外縁を巡視する要員と査察団の他の構成員との間で自己の所有する双方向の無線通信システムを使用する権利を有する。
査察団及び被査察締約国の権利
45 査察団は、この条約の関連する本文及び附属書、施設協定並びに査察手引書に定める手続に従い、阻害されることなく査察施設へのアクセスが認められる権利を有する。査察を行う物件は、査察員が選定する。
46 査察員は、関連する事実を確認するため被査察締約国の代表者の立会いの下に施設の要員と面談する権利を有する。査察員は、査察の実施のために必要な情報及び資料のみを要請するものとし、被査察締約国は、要請に応じて情報を提供する。施設の要員に対する質問が査察に関連のないものと認められる場合には、被査察締約国は、当該質問に対し異議を申し立てる権利を有する。査察団長が更にこれに異議を申し立て及び査察に関連のあることを表明する場合には、当該質問については、回答を得るため書面により被査察締約国に提出する。査察団は、査察の報告の被査察締約国の協力についての記述において、面談又は質問への回答が許可されなかったこと及び行われた説明について注記することができる。
47 査察員は、その任務の遂行に関連すると認める文書及び記録を検査する権利を有する。
48 査察員は、その要請により被査察締約国又は査察を行う施設の代表者に写真を撮影させる権利を有する。瞬間現像による写真の撮影が認められる。査察団は、写真が要請したものに合致するか否かを決定するものとし、合致しない場合には、再度写真を撮影させる。査察団及び被査察締約国は、すべての写真の写しを一枚ずつ保有する。
49 被査察締約国の代表者は、査察団が行うすべての検証活動に立ち会う権利を有する。
50 被査察締約国は、その要請に基づいて、技術事務局が自国の施設について収集した情報及び資料の写しを受領する。
51 査察員は、査察が行われている間に生ずるあいまいな点に関し、説明を要請する権利を有する。その要請については、被査察締約国の代表者を通じて速やかに行う。被査察締約国の代表者は、査察が行われている間に、あいまいな点を解消するために査察団に対し必要な説明を行う。査察施設内に存在する物体又は建物に関する問題が解決されない場合において、要請があるときは、当該物体又は建物の性質及び機能を明らかにするために当該物体又は建物の写真の撮影が行われる。査察が行われている間にあいまいな点を解消することができない場合には、査察員は、直ちに技術事務局に通報する。査察員は、このような解決されなかった問題、関連する説明及び撮影された写真の写しの一枚を査察報告に含める。
試料の採取、取扱い及び分析
52 被査察締約国又は査察が行われる施設の代表者は、査察団の要請により、査察員の立会いの下に、試料を採取する。被査察締約国又は査察が行われる施設の代表者との間で事前に合意がある場合には、査察団は、自ら試料を採取することができる。
53 可能な場合には、試料の分析については、現地において実施する。査察団は、自己が持ち込んだ承認された装置を使用して現地における試料の分析を実施する権利を有する。被査察締約国は、査察団の要請により、合意される手続に従って現地における試料の分析のために援助を提供する。このことに代えて、査察団は、その立会いの下に現地における適当な分析が実施されるよう要請することができる。
54 被査察締約国は、採取されたすべての試料の一部又は採取された試料と同一のものを保有する権利及び現地において試料を分析する時に立ち会う権利を有する。
55 査察団は、必要と認める場合には、現地外における分析のために、機関が指定する実験施設に試料を移送する。
56 事務局長は、試料の警備、保全及び保存について並びに現地外における分析のために移送する試料の秘密を保護することを確保することについて主要な責任を負う。事務局長は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する手続であって査察手引書に記載されるものによってこれを行う。事務局長は、次のことを行う。
(a) 試料の採取、取扱い、移送及び分析を規律する厳重な制度を確立すること。
(b) 指定される実験施設について、種々の分析を実施するための認証を行うこと。
(c) 指定される実験施設における設備及び手続の標準化並びに移動式の分析用装置及び関連する手続の標準化を監督し、並びにこれらの実験施設、移動式装置及び手続の認証について質の管理及び総合的な水準を監視すること。
(d) 指定される実験施設の中から、特定の調査に関係して分析を行い又はその他の役割を果たすものを選定すること。
57 現地外における分析を実施する場合には、試料は、少なくとも二の指定された実験施設において分析する。技術事務局は、分析の速やかな処理を確保する。試料については、技術事務局が責任を負うものとし、使用されなかった試料又はその一部は、技術事務局に返還される。
58 技術事務局は、実験施設における試料の分析の結果であってこの条約の遵守に関連するものを取りまとめ、これを査察の最終報告に含める。技術事務局は、指定された実験施設が使用した設備及び用いた方法に関する詳細な情報を査察の最終報告に含める。
査察期間の延長
59 査察期間は、被査察締約国の代表者との合意により延長することができる。
査察の事後の説明
60 査察団は、査察が完了した後、査察団のとりあえずの調査結果を検討し及びあいまいな点を解消するため、被査察締約国の代表者及び査察施設について責任を有する者と会合する。査察団は、被査察締約国の代表者に対し、試料の一覧表、収集した書面による情報の写し及び収集した資料の写し並びに現地外に持ち出すその他の資料を付してとりあえずの調査結果を書面により標準様式に従って提供する。この文書には、査察団長が署名する。被査察締約国の代表者は、その内容について知らされたことを示すため、当該文書に連署する。この会合については、査察の完了の後二十四時間以内に完了する。
F 出国
61 査察団は、査察の事後の手続が完了した後、被査察締約国又は接受国の領域からできる限り速やかに退去する。
G 報告
62 査察員は、査察の後十日以内に、自己の行った活動及び調査結果に基づく事実関係についての最終報告を作成する。最終報告には、査察命令に定めるところにより、この条約の遵守に関連する事実のみを含める。最終報告は、また、被査察締約国の査察団に対する協力の態様に関する情報を提供する。異なる見解を有する査察員がある場合には、当該見解を最終報告に添付することができる。最終報告は、秘密のものとして取り扱う。
63 最終報告は、被査察締約国に直ちに提出する。被査察締約国がその調査結果に関して直ちに書面による意見を表明する場合には当該意見を最終報告に添付する。最終報告は、被査察締約国が表明した意見を付して、査察の後三十日以内に事務局長に提出する。
64 最終報告が不確かな点を含む場合又は国内当局と査察員との間の協力が求められる水準に達していない場合には、事務局長は、関係締約国に対し説明を求める。
65 不確かな点が解消されない場合又は確認された事実がこの条約に基づく義務が履行されなかったことを示唆する場合には、事務局長は、遅滞なく執行理事会に通報する。
H 一般規則の適用
66 この部の規定は、この条約に基づいて行われるすべての査察について適用する。ただし、この部の規定が第三部から第十一部までにおいて特定の種類の査察について定める規定と異なる場合を除く。この場合には、当該特定の種類の査察について定める規定が優先する。
第三部 第四条、第五条及び第六条3の規定に基づく検証措置に関する一般規定
A 冒頭査察及び施設協定
1 第四条、第五条及び第六条3の規定に従って現地査察の対象となる申告された施設は、当該施設の申告の後速やかに冒頭査察を受ける。当該冒頭査察は、提供された情報を検証し、当該施設における将来の検証活動(現地査察及び現地に設置する機器による継続的な監視を含む。)を計画するために必要な追加の情報を入手し及び施設協定を準備することを目的とする。
2 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後に、定められた時間的な枠組みの範囲内で、技術事務局がすべての施設において申告を検証し及び体系的な検証措置を開始することができることを確保する。
3 締約国は、第四条、第五条及び第六条3の規定に従って現地査察の対象となる申告された各施設につき、機関との間で施設協定を締結する。
4 施設協定は、この条約が締約国について効力を生じた後又は施設が最初に申告された後百八十日以内に、締結する。ただし、5から7までの規定を適用する化学兵器の廃棄施設を除く。
5 この条約が締約国について効力を生じた後一年を経過した後に操業を開始する化学兵器の廃棄施設については、施設協定は、その廃棄施設の操業の開始の少なくとも百八十日前までに締結する。
6 この条約が締約国について効力を生じた時に操業している化学兵器の廃棄施設又はその後一年以内に操業を開始する化学兵器の廃棄施設については、施設協定は、この条約が当該締約国について効力を生じた後二百十日以内に締結する。ただし、執行理事会が、第四部(A)51の規定に従って承認する検証の経過措置(経過的な施設協定、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた検証のための措置並びに経過措置の実施のための時間的な枠組みを含む。)が十分であると決定する場合を除く。
7 6に規定する施設であってこの条約が締約国について効力を生じた後二年以内に操業を停止するものについては、執行理事会は、第四部(A)51の規定に従って承認する検証の経過措置(経過的な施設協定、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた検証のための措置並びに経過措置の実施のための時間的な枠組みを含む。)が十分であると決定することができる。
8 施設協定は、モデル協定に基づくものとし、各施設における査察を規律する詳細な措置を規定する。モデル協定は、将来の技術的発展を考慮に入れた規定を含むものとし、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。
9 技術事務局は、冒頭査察の後の査察において参照するための写真、図面その他の情報を入れる封印された容器を各施設において保有することができる。
B 共通の措置
10 技術事務局は、適当な場合には、この条約の関連規定及び締約国と機関との間の施設協定に基づき、継続的な監視のための機器及びシステム並びに封印を設置させ及び使用する権利を有する。
11 被査察締約国は、合意される手続に従い、査察団が使用し又は設置する機器を検査し及び自国の代表者の立会いの下で試験を行わせる権利を有する。査察団は、被査察締約国が化学兵器の廃棄の技術的工程を監視するために設置した機器を使用する権利を有する。このため、査察団は、被査察締約国が設置した機器であって化学兵器の廃棄の検証のために自己が使用することを意図する機器を検査する権利及び自己の立会いの下で当該機器の試験を行わせる権利を有する。
12 被査察締約国は、継続的な監視のための機器及びシステムを設置するために必要な準備及び援助を提供する。
13 11及び12の規定を実施するため、会議は、第八条21(i)の規定に従って適当な詳細な手続を検討し及び承認する。
14 監視のための機器が設置されている施設において監視システムに影響を及ぼすおそれのある事態が発生し又は発生するおそれがある場合には、被査察締約国は、直ちに技術事務局に通報する。被査察締約国は、必要な場合には、できる限り速やかに監視システムの機能を回復し及び暫定的な措置をとるため、技術事務局とその後の措置を調整する。
15 査察団は、それぞれの査察が行われている間に、監視システムが正確に機能していること及び施した封印に手が触れられていないことを検証する。更に、装置の必要な保守若しくは交換を実施し又は必要に応じて監視システムの監視範囲を調整するため、監視システムを維持することを目的とした訪問が必要とされることがある。
16 監視システムが異常を示す場合には、技術事務局は、これが装置の故障に起因するものであるか又は施設における活動に起因するものであるかを決定するため、直ちに措置をとる。このような検討の後問題が解決されない場合には、技術事務局は、必要に応じ施設の現地査察又は訪問を直ちに行うことにより、現状を直ちに確認する。技術事務局は、異常の発見の後直ちに問題を被査察締約国に報告するものとし、当該被査察締約国は、問題の解決について援助する。
C 査察の事前の活動
17 被査察締約国は、18に規定する場合を除くほか、査察団の入国地点への到着予定時刻の少なくとも二十四時間前までに査察の通告を受ける。
18 被査察締約国は、査察団の入国地点への到着予定時刻の少なくとも七十二時間前までに冒頭査察の通告を受ける。
第四部(A) 第四条の規定に基づく化学兵器の廃棄及びその検証
A 申告
化学兵器
1 第三条1(a)(ii)の規定に従って締約国が行う化学兵器の申告には、次の事項を含める。
(a) 申告する各化学物質の総量
(b) 次の事項によって明示する化学兵器の貯蔵施設の正確な所在地
(i) 名称
(ii) 地理上の座標
(iii) 化学兵器の貯蔵施設の詳細な図面(境界地図並びに施設内の掩蔽壕及び貯蔵場所の位置を含む。)
(c) 化学兵器の各貯蔵施設についての次の事項を含む詳細な目録
(i) 第二条の規定に従って化学兵器として定義される化学物質
(ii) 化学兵器として定義される弾薬類、子爆弾弾薬類及び装置であって充填されていないもの
(iii) (ii)に規定する弾薬類、子爆弾弾薬類又は装置の使用に直接関連して使用するように特別に設計された装置
(iv) (ii)に規定する弾薬類、子爆弾弾薬類又は装置の使用に直接関連して使用するように特別に設計された化学物質
2 1(c)(i)の化学物質の申告については、次の規定を適用する。
(a) 化学物質については、化学物質に関する附属書の表に従って申告する。
(b) 化学物質に関する附属書の表に掲げていない化学物質については、当該化学物質を適当な表に掲げるために必要となる情報(純粋な化合物の毒性を含む。)を提供する。前駆物質については、主要な最終反応生成物の毒性及びその識別についての情報を提供する。
(c) 化学物質は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の最新の命名法に基づく化学名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号によって識別する。前駆物質については、主要な最終反応生成物の毒性及びその識別についての情報を提供する。
(d) 二以上の化学物質の混合物である場合には、各化学物質を識別し、各化学物質の百分率を提供し、及び当該混合物を各化学物質のうち最も毒性の強い化学物質の種類に応じて申告する。二成分型化学兵器の一の成分が二以上の化学物質の混合物から成る場合には、各化学物質を識別し、及び各化学物質の百分率を提供する。
(e) 二成分型化学兵器は、16に規定する化学兵器の種類に応じて、関連する最終生成物に基づいて申告する。二成分型弾薬類及び装置のそれぞれにつき、次の補足的な情報を提供する。
(i) 毒性最終生成物の化学名
(ii) 成分の化学的組成及び各成分の量
(iii) 各成分の実際の重量比
(iv) 必須成分と認められる成分
(v) 百パーセントの収率を仮定した場合に必須成分から化学量論的に計算される毒性最終生成物の予定量。個別の毒性最終生成物の必須成分の申告量(トン)は、百パーセントの収率を仮定した場合に化学量論的に計算される当該毒性最終生成物の量(トン)に相当するものとみなす。
(f) 多成分型化学兵器の申告は、二成分型化学兵器について定める申告と同様に行う。
(g) 化学物質の貯蔵の形態(例えば、弾薬類、子爆弾弾薬類、装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器)を申告する。その申告には、次の事項に関する情報を含める。
(i) 種類
(ii) 大きさ又は口径
(iii) 数量
(iv) 容器ごとの充填化学物質の名目重量
(h) 貯蔵施設において現存する化学物質ごとの総重量を申告する。
(i) 更に、ばらの状態で貯蔵される化学物質については、判明している場合には、百分率による純度を申告する。
3 1(c)(ii)に規定する充填されていない弾薬類、子爆弾弾薬類又は装置のそれぞれの種類についての申告には、次の事項に関する情報を含める。
(a) 数量
(b) 個別の名目充填量
(c) 充填予定の化学物質
第三条1(a)(iii)の規定に基づく化学兵器の申告
4 第三条1(a)(iii)の規定に基づく化学兵器の申告には、1から3までに規定するすべての情報を含める。自国の領域内に当該化学兵器が存在する締約国は、申告が行われることを確保するために他の国と適当な措置をとる責任を有する。自国の領域内に当該化学兵器が存在する締約国は、この4の規定に基づく義務を履行することができない場合には、その理由を表明する。
過去における移譲及び受領の申告
5 千九百四十六年一月一日以降に化学兵器を移譲し又は受領した締約国は、移譲し又は受領した各化学物質の量がばらの状態又は弾薬の形態で一年当たり一トンを超える場合には、第三条1(a)(iv)の規定に従ってその移譲又は受領について申告する。この申告は、1及び2に規定する目録の様式に従って行う。この申告は、また、供給国及び受領国、移譲又は受領の日並びに移譲された化学兵器のできる限り正確な最新の所在地を示す。締約国は、千九百四十六年一月一日から千九百七十年一月一日までの間における化学兵器の移譲又は受領について求められる情報が必ずしもすべて入手可能でない場合には、入手可能なすべての情報を申告し、及び完全な申告を行うことができない理由についての説明を行う。
化学兵器の廃棄のための全般的な計画の提出
6 第三条1(a)(v)の規定に従って提出される化学兵器の廃棄のための全般的な計画は、化学兵器の廃棄のための締約国の計画の全体の概要及びこの条約に規定する廃棄に関する義務を履行するために締約国が払う努力に関する情報を提供する。その計画は、次の事項を明示する。
(a) 廃棄の全般的な日程(既存の及び可能な場合には計画されている化学兵器の廃棄施設について、各年の廃棄期間中に廃棄する予定の化学兵器の種類及びおよその量を含む。)
(b) 既存の又は廃棄のための期間中に操業する予定の化学兵器の廃棄施設の数
(c) 既存の又は計画されている化学兵器の廃棄施設について、
(i) 名称及び所在地
(ii) 廃棄する化学兵器の種類及びおよその量並びに廃棄する充填化学物質の種類(例えば、神経剤、びらん剤)及びおよその量
(d) 化学兵器の廃棄施設の操業のための要員を訓練するための計画
(e) 化学兵器の廃棄施設が満たさなければならない安全及び排出に関する自国の基準
(f) 化学兵器を廃棄するための新たな方法の開発及び既存の方法の改善に関する情報
(g) 化学兵器を廃棄するための費用の見積り
(h) 廃棄のための計画に悪影響を及ぼすおそれのある問題
B 貯蔵施設を保全するための措置及び貯蔵施設における準備
7 締約国は、化学兵器の申告を行う時までに、自国の貯蔵施設を保全するために適当と認める措置をとるものとし、廃棄のために移動する場合を除くほか、自国の化学兵器の当該貯蔵施設外への移動を防止する。
8 締約国は、37から49までの規定に基づく検証のために速やかなアクセスが可能となるように自国の貯蔵施設において化学兵器が配置されることを確保する。
9 化学兵器の貯蔵施設外への移動(廃棄のための移動を除く。)を防止するために当該貯蔵施設が閉鎖されている間、締約国は、当該貯蔵施設において標準的な保守活動(化学兵器の標準的な保守、安全の監視及び警備活動並びに化学兵器の廃棄のための準備を含む。)を継続することができる。
10 化学兵器の保守活動には、次の事項を含めない。
(a) 化学物質又は弾殻の取替え
(b) 弾薬類又はその部品若しくは構成物質の当初の性質の変更
11 すべての保守活動は、技術事務局による監視の対象とする。
C 廃棄
化学兵器の廃棄のための原則及び方法
12 「化学兵器の廃棄」とは、化学物質を実質的に不可逆的に化学兵器の生産に適しないものに転換する過程並びに弾薬類及び他の装置を不可逆的に使用することができないようにする過程をいう。
13 締約国は、化学兵器の廃棄の方法を決定する。ただし、水中に投棄する方法、地中に埋める方法又は野外において焼却する方法を用いてはならない。締約国は、特別に指定され、適切に設計され及び設備が適切に整えられた施設においてのみ化学兵器を廃棄する。
14 締約国は、自国の化学兵器の廃棄施設が化学兵器を確実に廃棄することができるように建設され及び操業していること並びに廃棄の過程がこの条約に基づいて検証されることを確保する。
廃棄の規律
15 化学兵器の廃棄の規律は、第一条及び他の条に定める義務(体系的な現地検証に関する義務を含む。)を基礎とするものである。廃棄の規律は、廃棄のための期間中に安全保障が損なわれないことについての締約国の利害、廃棄の初期の段階における信頼の醸成及び化学兵器を廃棄する過程において漸進的に得られる経験を考慮し、並びに貯蔵されている化学兵器の実際の構成及び化学兵器の廃棄のために選択される方法のいかんにかかわらず当該廃棄の規律を適用することを考慮したものである。廃棄の規律は、平準化の原則を基礎とするものである。
16 締約国が申告する化学兵器は、廃棄のため次の三の種類に分類する。
種類1 表1の化学物質を基礎とする化学兵器並びにその部品及び構成物質
種類2 他のすべての化学物質を基礎とする化学兵器並びにその部品及び構成物質
種類3 充填されていない弾薬類及び装置並びに化学兵器の使用に直接関連して使用するように特別に設計された装置
17 締約国は、
(a) この条約が自国について効力を生じた後二年以内に種類1の化学兵器の廃棄を開始し、この条約が効力を生じた後十年以内に廃棄を完了する。締約国は、次の廃棄の期限に従い化学兵器を廃棄する。
(i) 第一段階 この条約が効力を生じた後二年以内に、最初の廃棄施設の試験を完了する。この条約が効力を生じた後三年以内に、種類1の化学兵器の一パーセント以上を廃棄する。
(ii) 第二段階 この条約が効力を生じた後五年以内に、種類1の化学兵器の二十パーセント以上を廃棄する。
(iii) 第三段階 この条約が効力を生じた後七年以内に、種類1の化学兵器の四十五パーセント以上を廃棄する。
(iv) 第四段階 この条約が効力を生じた後十年以内に、種類1の化学兵器のすべてを廃棄する。
(b) この条約が自国について効力を生じた後一年以内に種類2の化学兵器の廃棄を開始し、この条約が効力を生じた後五年以内に廃棄を完了する。種類2の化学兵器は、廃棄のための期間を通じて毎年均等の割合で廃棄する。この場合において、種類2の化学兵器の比較の基礎は、当該化学兵器に含まれる化学物質の重量とする。
(c) この条約が自国について効力を生じた後一年以内に種類3の化学兵器の廃棄を開始し、この条約が効力を生じた後五年以内に廃棄を完了する。種類3の化学兵器は、廃棄のための期間を通じて毎年均等の割合で廃棄する。充填されていない弾薬類及び装置の比較の基礎は名目充填量(立方メートル)とし、設備の比較の基礎はその数とする。
18 二成分型化学兵器の廃棄については、次の規定を適用する。
(a) 廃棄の規律の適用上、個別の毒性最終生成物の必須成分の申告量(トン)は、百パーセントの収率を仮定した場合に化学量論的に計算される当該毒性最終生成物の量(トン)に相当するものとみなす。
(b) 二成分型弾薬類及び装置において必須成分の一定の量を廃棄するに当たっては、他方の成分について、当該二成分型弾薬類及び装置の種類についての成分の実際の重量比に対応する量を廃棄する義務を伴う。
(c) 成分の実際の重量比に基づいて(b)の他方の成分が必要とされる量を超えて申告される場合には、超過量は、廃棄作業の開始の後の最初の二年間に廃棄する。
(d) その後は、廃棄のための期間中の各年の終了の時に、締約国は、申告した他方の成分につき、二成分型弾薬類及び装置の種類についての成分の実際の重量比に基づいて決定される量を保有することができる。
19 多成分型化学兵器の廃棄の規律は、二成分型化学兵器について定める廃棄の規律と同様のものとする。
廃棄の中間の期限の変更
20 執行理事会は、特に15から19までに定める廃棄の規律との適合性を評価するため、第三条1(a)(v)の規定及び6の規定に従って提出される化学兵器の廃棄のための全般的な計画を検討する。執行理事会は、自国の計画が廃棄の規律に適合しない締約国と、当該計画を廃棄の規律に適合したものとすることを目的として協議する。
21 締約国は、やむを得ない例外的な事情により、種類1の化学兵器の廃棄の規律の第一段階、第二段階又は第三段階に定める廃棄の水準を達成することができないと認める場合には、当該水準の変更を提案することができる。その提案については、この条約が効力を生じた後百二十日以内に行わなければならず、かつ提案理由についての詳細な説明を含める。
22 締約国は、21の規定に基づいて変更された17(a)に定める廃棄の期限による種類1の化学兵器の廃棄を確保するため、すべての必要な措置をとる。ただし、当該締約国は、廃棄の中間の期限までに廃棄することが求められている割合の種類1の化学兵器の廃棄を確保することができないと認める場合には、その期限を遵守する義務の猶予を与えることを会議に対して勧告するよう執行理事会に要請することができる。その要請については、廃棄の中間の期限の少なくとも百八十日前までに行わなければならず、かつ、当該要請の理由についての詳細な説明及び次の廃棄の中間の期限を遵守する義務の履行を確保するための計画を含める。
23 期限の延期が認められる場合においても、締約国は、次の廃棄の期限までに累積される廃棄の義務を履行する。20からこの23までの規定に基づいて認められる期限の延期は、この条約が効力を生じた後十年以内に種類1の化学兵器のすべてを廃棄する締約国の義務を何ら変更するものではない。
廃棄の完了の期限の延期
24 締約国は、この条約が効力を生じた後十年以内に種類1の化学兵器のすべての廃棄を確保することができないと認める場合には、当該化学兵器の廃棄の完了の期限の延期について執行理事会に対し要請を行うことができる。当該要請については、この条約が効力を生じた後九年以内に行わなければならない。
25 24の要請には、次の事項を含める。
(a) 延長しようとする期間
(b) 延期の理由についての詳細な説明
(c) 延長期間及び当初の十年の廃棄のための期間の残余の期間における廃棄のための詳細な計画
26 会議は、次の会期において、執行理事会の勧告に基づいて24の要請に関する決定を行う。期限の延期は、必要な最小限度とし、締約国がすべての化学兵器の廃棄を完了する期限については、いかなる場合にも、この条約が効力を生じた後十五年を超えて延期してはならない。執行理事会は、期限の延期を認めるための条件(必要と認められる具体的な検証措置及び自国の廃棄のための計画における問題を克服するために締約国がとるべき具体的な措置を含む。)を定める。延長期間中の検証の費用については、第四条16の規定に従って割り当てる。
27 期限の延期が認められた場合には、締約国は、その後のすべての期限を遵守するために適当な措置をとる。
28 締約国は、種類1の化学兵器のすべてを廃棄するまでの間、29の規定に従って廃棄のための詳細な年次計画及び36の規定に従って種類1の化学兵器の廃棄に関する年次報告を引き続き提出する。更に、締約国は、延長期間中の各九十日における自国の廃棄活動についての報告を当該九十日が経過する日までに執行理事会に提出する。執行理事会は、廃棄の完了に向けての進捗状況を検討し、この進捗状況を文書により記録するために必要な措置をとる。延長期間中の廃棄活動に関するすべての情報については、要請に応じ、執行理事会が締約国に提供する。
廃棄のための詳細な年次計画
29 廃棄のための詳細な年次計画は、第四条7(a)の規定に従って各年の廃棄期間の開始の少なくとも六十日前までに技術事務局に提出するものとし、次の事項を明示する。
(a) 各廃棄施設において廃棄される化学兵器の具体的な種類ごとの量及び化学兵器の具体的な種類ごとの廃棄の完了に係る日程
(b) 化学兵器の各廃棄施設の詳細な図面及び以前に提出した図面に変更がある場合には当該変更
(c) 当該各年における化学兵器の各廃棄施設の活動の詳細な日程(当該廃棄施設の設計、建設又は変更、設備の設置及び点検、要員の訓練並びに化学兵器の具体的な種類ごとの廃棄作業に必要な時間並びに活動を休止する予定の期間を明らかにするもの)
30 締約国は、自国のそれぞれの化学兵器の廃棄施設につき、技術事務局が当該廃棄施設における使用のためにとりあえずの査察手続を作成することを援助するため、施設の詳細な情報を提供する。
31 化学兵器の各廃棄施設の詳細な情報には、次の事項に関する情報を含める。
(a) 名称、住所及び位置
(b) 施設の詳細な図面(注釈が付されたもの)
(c) 施設の設計図、工程図並びに配管及び計器の配置の図面
(d) 弾薬類、装置及び容器からの充填化学物質の除去、取り出された充填化学物質の一時的な貯蔵、化学物質の廃棄並びに弾薬類、装置及び容器の廃棄に必要な設備についての詳細な技術的な説明(設計図及び機器の仕様を含む。)
(e) 廃棄の工程についての詳細な技術的な説明(物質の流量、温度及び圧力並びに設計上の廃棄の効率を含む。)
(f) 化学兵器の具体的な種類ごとの廃棄施設の設計上の能力
(g) 廃棄による生成物及びその最終的な処理方法についての詳細な説明
(h) この条約に基づく査察を容易にするための措置についての詳細な技術的な説明
(i) 廃棄施設における一時的な保管場所であって当該廃棄施設に化学兵器を直接供給するために使用されるものについての詳細な説明(当該保管場所の図面及び当該廃棄施設において廃棄される化学兵器の具体的な種類ごとの貯蔵能力に関する情報を含む。)
(j) 廃棄施設において実施されている安全及び医療のための措置についての詳細な説明
(k) 査察員の住居及び作業場所についての詳細な説明
(l) 国際的な検証のために提案する措置
32 締約国は、自国のそれぞれの化学兵器の廃棄施設につき、工場の操業のための手引書、安全及び医療のための計画、実験施設の活動及び質の管理のための手引書並びに取得された環境基準に係る許可を提出する。ただし、既に提出した場合は、この限りでない。
33 締約国は、自国の化学兵器の廃棄施設における査察活動に影響を及ぼすおそれのある事態について、速やかに技術事務局に通報する。
34 30から32までに規定する情報の提出の期限は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。
35 技術事務局は、化学兵器の廃棄施設の詳細な情報を検討した後、必要が生ずる場合には、締約国の化学兵器の廃棄施設が化学兵器を確実に廃棄するように設計されることを確保し、検証措置の実施について事前に計画することを可能にし、及び検証措置の実施が施設の正常な操業に適合しかつ施設の操業が適切な検証を可能にすることを確保するため、関係締約国と協議を行う。
廃棄に関する年次報告
36 化学兵器の廃棄のための計画の実施状況に関する情報は、第四条7(b)の規定に従って各年の廃棄期間の満了の後六十日以内に技術事務局に提出されるものとし、化学兵器の各廃棄施設において当該各年において廃棄された化学兵器の実際の量を明示する。廃棄の目標が達成されなかった場合には、その理由を表明すべきである。
D 検証
化学兵器の申告の現地査察による検証
37 化学兵器の申告の検証は、第三条の規定に従って行われる申告が正確であることを現地査察によって確認することを目的とする。
38 査察員は、申告が行われた後速やかにこの検証を行う。査察員は、特に、化学物質の量及び識別並びに弾薬類及び装置の種類及び数を検証する。
39 査察員は、適当な場合には、各貯蔵施設における化学兵器の在庫を正確に確認することを容易にするため、定められた封印、標識その他の在庫の管理手続を使用する。
40 査察員は、在庫の確認を行うに当たり、貯蔵されていた化学兵器が移動されているか否かを明確に示し及び在庫の確認を行う間貯蔵施設の保全を確保するため、定められた封印を必要に応じて施す。当該封印については、別段の合意がある場合を除くほか、在庫の確認の完了の後撤去する。
貯蔵施設の体系的な検証
41 貯蔵施設の体系的な検証は、当該貯蔵施設からの化学兵器の移動が常に明らかにされていることを確保することを目的とする。
42 体系的な検証は、化学兵器の申告が行われた後できる限り速やかに開始し、すべての化学兵器が貯蔵施設から移動されるまで継続する。体系的な検証は、施設協定に従い、現地査察及び現地に設置する機器による監視を組み合わせたものとする。
43 すべての化学兵器が貯蔵施設から移動された時に、技術事務局は、その旨の締約国の申告を確認する。技術事務局は、その確認の後、貯蔵施設の体系的な検証を終了するものとし、査察員が設置した監視のための機器を速やかに撤去する。
査察及び訪問
44 査察が行われる具体的な貯蔵施設については、査察が行われる正確な時期が予知されることのないように技術事務局が選定する。体系的な現地査察の頻度を決定するための指針については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する勧告を考慮して、技術事務局が作成する。
45 技術事務局は、体系的な査察又は訪問のための査察団の貯蔵施設への到着予定時刻の四十八時間前に、当該貯蔵施設の査察又は訪問を行う旨の決定を被査察締約国に通告する。緊急の問題を解決するために査察又は訪問が行われる場合には、この期間を短縮することができる。技術事務局は、査察又は訪問の目的を明示する。
46 被査察締約国は、査察員の到着のために必要な準備を行うものとし、査察員の入国地点から貯蔵施設までの速やかな輸送を確保する。施設協定は、査察員のための管理上の措置を明示する。
47 被査察締約国は、査察団が査察を行うために貯蔵施設に到着する時に、当該貯蔵施設に関する次の資料を提供する。
(a) 貯蔵用の建物及び場所の数
(b) 貯蔵用の各建物及び各場所につき種類及び識別番号又は名称を示した貯蔵施設の図面
(c) 貯蔵施設における貯蔵用の各建物及び各場所につき、化学兵器の具体的な種類ごとの数及び二成分型弾薬類の一部を構成しない容器については各容器の充填化学物質の実際の量
48 査察員は、利用可能な時間内に在庫を確認するに当たり、次のことを行う権利を有する。
(a) 次のいずれかの査察の方法を用いること。
(i) 貯蔵施設において貯蔵されているすべての化学兵器の在庫の確認
(ii) 査察員が選定する貯蔵施設の具体的な建物又は場所において貯蔵されているすべての化学兵器の在庫の確認
(iii) 貯蔵施設において貯蔵されている化学兵器であって査察員が選定する一又は二以上の具体的な種類のもののすべての在庫の確認
(b) 確認した在庫と合意された記録とを照合すること。
49 査察員は、施設協定に基づき、次の権利を有する。
(a) 阻害されることなく貯蔵施設のすべての部分(当該貯蔵施設におけるすべての弾薬類、装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器を含む。)へのアクセスが認められること。査察員は、その活動を行うに当たり、当該貯蔵施設における安全規則を遵守する。査察を行う物件は、査察員が選定する。
(b) 貯蔵施設の冒頭査察及びその後の査察に際して、試料を採取する弾薬類、装置及び容器を指定し並びに独特の目印(除去され又は変更されようとした場合にそれが明らかになるようなもの)を当該弾薬類、装置及び容器に付すること。試料は、廃棄のための計画に従って実行可能な限り速やかに、いかなる場合にも廃棄作業が終了するまでに、化学兵器の貯蔵施設又は廃棄施設において当該目印が付された物件から採取する。
化学兵器の廃棄の体系的な検証
50 化学兵器の廃棄の検証は、次のことを目的とする。
(a) 廃棄されることとなる貯蔵されている化学兵器の識別及び量を確認すること。
(b) (a)の化学兵器が廃棄されたことを確認すること。
51 この条約が効力を生じた後の三百九十日の間の化学兵器の廃棄作業については、検証の経過措置によって規律する。この経過措置(経過的な施設協定、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた検証のための措置並びに経過措置の実施のための時間的な枠組みを含む。)は、機関と被査察締約国との間で合意する。この経過措置については、31の規定に従って提供される廃棄施設の詳細な情報の評価及び当該廃棄施設への訪問に基づいて技術事務局が行う勧告を考慮して、この条約が当該被査察締約国について効力を生じた後六十日以内に執行理事会が承認する。執行理事会は、その第一回会期において、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する勧告に基づき、この経過措置のための指針を定める。検証の経過措置は、全経過期間を通じて、50に規定する目的に従って化学兵器の廃棄の検証が行われるように、かつ、実施中の廃棄作業が阻害されないように作成する。
52 53から61までの規定は、この条約が効力を生じた後三百九十日を経過した後に開始する化学兵器の廃棄作業について適用する。
53 技術事務局は、この条約、廃棄施設の詳細な情報及び場合に応じ従前の査察の経験に基づき、各廃棄施設における化学兵器の廃棄の査察のための計画案を作成する。当該計画案については、この条約に従って廃棄施設が廃棄作業を開始する少なくとも二百七十日前までにその作成を完了するものとし、意見を求めるために被査察締約国に提出する。技術事務局と被査察締約国との間の意見の相違は、協議によって解決されるべきである。解決されない問題は、この条約の完全な実施を促進することを目的として、適切な措置のために執行理事会に送付される。
54 技術事務局は、化学兵器の廃棄施設に精通し及び査察のための計画の妥当性を評価するため、被査察締約国の各廃棄施設がこの条約に従って廃棄作業を開始する少なくとも二百四十日前までに当該各廃棄施設に対して冒頭訪問を行う。
55 化学兵器の廃棄作業が既に開始されている既存の施設については、被査察締約国は、技術事務局が冒頭訪問を行う前に当該施設の除染を行うことを必要としない。冒頭訪問の期間は、五日を超えてはならず、また、訪問の要員数は、十五人を超えてはならない。
56 合意された検証のための詳細な計画は、技術事務局による適当な勧告を付して、執行理事会に対し検討のために送付される。執行理事会は、この条約に基づく検証の目的及び義務に従って承認することを目的として、当該計画を検討する。執行理事会は、また、廃棄の検証のための計画が検証の目的に合致すること及び効果的かつ実際的であることを確認すべきである。この検討は、廃棄期間の開始の少なくとも百八十日前までに完了すべきである。
57 執行理事会の理事国は、検証のための計画の妥当性に関する問題について技術事務局と協議することができる。執行理事会のいずれの理事国も異議を申し立てない場合には、当該計画は、実施に移される。
58 問題がある場合には、執行理事会は、当該問題について調整するために締約国と協議を開始する。問題が解決されない場合には、当該問題は、会議に提起される。
59 化学兵器の廃棄施設に関する詳細な施設協定は、その廃棄施設の具体的な特性及びその操業の方式を考慮して、次の事項を明示する。
(a) 現地査察の詳細な手続
(b) 現地に設置する機器による継続的な監視を通じた検証及び査察員自身による検証のための措置
60 査察員は、この条約に基づく化学兵器の廃棄施設における廃棄の開始の少なくとも六十日前までに各廃棄施設へのアクセスを認められる。当該アクセスは、査察のための装置の設置を監督し、その装置を検査し及びその装置の稼働の試験を行うこと並びに当該廃棄施設についての最終的な工学上の検討を行うことを目的とする。化学兵器の廃棄作業が既に開始されている既存の廃棄施設については、廃棄作業は、査察のための装置の設置及び試験のため、六十日を超えない範囲で必要な最小限度の期間停止する。締約国及び技術事務局は、試験及び検討の結果に基づき、廃棄施設に関する詳細な施設協定への追加又は変更について合意することができる。
61 被査察締約国は、化学兵器の貯蔵施設から廃棄施設への化学兵器の輸送につき、その出発の少なくとも四時間前までに、化学兵器の廃棄施設に所在する査察団長に対し書面により通報する。その通報は、貯蔵施設の名称、出発及び到着の予定時刻、輸送される化学兵器の具体的な種類及び量、目印が付された物件が搬出されているか否か並びに輸送の方法を明示する。その通報には、二以上の輸送の通報を含めることができる。この情報について変更がある場合には、査察団長は、当該変更について書面により速やかに通報を受ける。
化学兵器の廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設
62 査察員は、廃棄施設に化学兵器が到着したこと及び当該化学兵器が貯蔵されることを検証する。査察員は、化学兵器の廃棄に先立ち、施設の安全規則に適合する合意された手続を使用して、各輸送についての目録を検証する。査察員は、廃棄に先立ち化学兵器の目録を正確に確認することを容易にするため、適当な場合には、定められた封印、標識その他の目録の管理手続を使用する。
63 化学兵器の廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設は、化学兵器が当該貯蔵施設に搬入された後直ちに及び当該貯蔵施設において貯蔵されている間、施設協定に従って体系的な検証の対象とする。
64 査察員は、実際の廃棄作業の終了のたびごとに、廃棄のために貯蔵施設から搬出された化学兵器の目録を作成する。査察員は、62に規定する目録の管理手続を使用して、残存する化学兵器の目録が正確であることを検証する。
化学兵器の廃棄施設における体系的な現地検証のための措置
65 査察員は、実際の廃棄作業が行われている間を通じて、化学兵器の廃棄施設及び当該廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設において活動を行うためのアクセスを認められる。
66 査察員は、化学兵器の各廃棄施設において、いかなる化学兵器も転用されていないこと及び廃棄の過程が完了したことを確認するため、当該査察員自身により及び現地に設置する機器による監視を通じ、次の事項について検証する権利を有する。
(a) 当該廃棄施設における化学兵器の受領
(b) 化学兵器の一時的な保管場所並びにその保管場所に貯蔵される化学兵器の具体的な種類及び量
(c) 廃棄される化学兵器の具体的な種類及び量
(d) 廃棄の工程
(e) 廃棄の最終生成物
(f) 金属の部分の切断
(g) 廃棄の過程及び当該廃棄施設全体の保全
67 査察員は、試料の採取のため、化学兵器の廃棄施設内の一時的な保管場所に存在する弾薬類、装置又は容器に目印を付する権利を有する。
68 廃棄施設の日常的な操業に際して得られる情報については、適当な資料の裏付けがある場合には、査察の要請を満たす範囲内で査察の目的のために使用する。
69 技術事務局は、各廃棄期間の満了の後、定められた量の化学兵器の廃棄が完了したことを報告する締約国の申告を確認する。
70 査察員は、施設協定に基づき、(a)阻害されることなく化学兵器の廃棄施設及び廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設のすべての部分(これらの施設におけるすべての弾薬類、装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器を含む。)へのアクセスが認められる権利を有する。査察を行う物件は、被査察締約国が合意し、かつ、執行理事会が承認した検証のための計画に従って査察員が選定する。
(b) 廃棄の過程において、現地における試料の体系的な分析を監視する。
(c) 必要な場合には、化学兵器の廃棄施設又は廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設に存在する装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器から当該査察員の要請によって採取された試料を受領する。
第四部(B) 老朽化した化学兵器及び遺棄化学兵器
A 総則
1 老朽化した化学兵器については、Bの規定に従って廃棄する。
2 遺棄化学兵器(第二条5(b)の定義に該当するものを含む。)については、Cの規定に従って廃棄する。
B 老朽化した化学兵器のための制度
3 締約国は、自国の領域内に第二条5(a)に定義する老朽化した化学兵器を有する場合には、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、すべての入手可能な関連する情報(可能な範囲内で、老朽化した化学兵器の所在地、種類、量及び現状に関する情報を含む。)を技術事務局に提出する。
同条5(b)に定義する老朽化した化学兵器については、締約国は、第三条1(b)(i)の規定に基づく申告(可能な範囲内で、第四部(A)の1から3までに規定する情報を含む。)を技術事務局に対して行う。
4 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後に老朽化した化学兵器の存在を知った場合には、その後百八十日以内に、3に規定する情報を技術事務局に提出する。
5 技術事務局は、3及び4の規定に従って提出される情報を検証し並びに特に化学兵器が第二条5の老朽化した化学兵器の定義に該当するか否かを決定するため、冒頭査察及び必要に応じてその後の査察を行う。千九百二十五年から千九百四十六年までの間に生産された化学兵器について化学兵器として使用することができるか否かを決定するための指針は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。
6 締約国は、技術事務局が第二条5(a)の定義に該当すると確認した老朽化した化学兵器については毒性廃棄物として取り扱う。当該締約国は、自国の法令に従って、当該老朽化した化学兵器を毒性廃棄物として廃棄し又はその他の方法によって処分するためにとる措置を技術事務局に通報する。