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○千九百六十一年の麻薬に関する単一条約

(昭和三十九年十二月十二日)

(条約第二十二号)

千九百六十一年の麻薬に関する単一条約をここに公布する。

千九百六十一年の麻薬に関する単一条約

前文

締約国は、

人類の健康及び福祉に思いをいたし、

麻薬の医療上の使用が苦痛の軽減のために依然として不可欠であること及びこの目的のための麻薬の入手を確保するために適切な措置を執らなければならないことを認め、

麻薬の中毒が個人にとつて重大な害悪であり、人類に対する社会的及び経済的な危険を伴うものであることを認め、

この害悪を防止し、かつ、これと戦う締約国の義務を自覚し、

麻薬の濫用に対する措置が効果的であるためには、協同して、かつ、世界的規模で行動することが必要であることを考慮し、

世界的規模におけるそのような行動には、同一の原理によつて導かれ、かつ、共通の目標を有する国際協力が必要であると了解し、

麻薬統制の分野における国際連合の権限を認め、また、関係国際機関が国際連合のわく内にあることを希望し、

麻薬に関する現行の諸条約に代わる普遍的に受けいれられる国際条約であつて、麻薬の使用を医療上及び学術上の目的に制限し、かつ、前記の目標に到達するための継続的な国際協力及び国際統制について規定するものを締結することを希望して、

ここに次のとおり協定する。

第一条 定義

1 この条約においては、別段の明文の規定がある場合又は文脈により異なつた意味に解釈しなければならない場合を除くほか、次の定義に従う。

(a) 「統制委員会」とは、国際麻薬統制委員会をいう。

(b) 「大麻」とは、名称のいかんを問わず、大麻植物の花又は果実のついた枝端で樹脂が抽出されていないもの(枝端から離れた種子及び葉を除く。)をいう。

(c) 「大麻植物」とは、カンナビス属の植物をいう。

(d) 「大麻樹脂」とは、粗のものであると精製したものであるとを問わず、大麻植物から得た樹脂で分離されているものをいう。

(e) 「コカ樹」とは、エリスロキシロン属の植物をいう。

(f) 「コカ葉」とは、コカ樹の葉(すべてのエクゴニン、コカインその他のエクゴニンアルカロイドを除去したものを除く。)をいう。

(g) 「麻薬委員会」とは、理事会の麻薬委員会をいう。

(h) 「理事会」とは、国際連合の経済社会理事会をいう。

(i) 「栽培」とは、けし、コカ樹又は大麻植物の栽培をいう。

(j) 「薬品」とは、天然のものであると合成のものであるとを問わず、附表Ⅰ及び附表Ⅱに掲げる物質をいう。

(k) 「総会」とは、国際連合の総会をいう。

(l) 「不正取引」とは、この条約の規定に違反する栽培又は薬品の取引をいう。

(m) 「輸入」及び「輸出」とは、それぞれの語意において、いずれかの国から他の国へ、又は同一の国のいずれかの領域から他の領域へ薬品を現実に輸送することをいう。

(n) 「製造」とは、薬品を得るためのすべての工程(生産を除くものとし、精製及び薬品の他の薬品への転換を含む。)をいう。

(o) 「薬用あへん」とは、医薬としての使用に適応させるために必要な工程を経たあへんをいう。

(p) 「あへん」とは、けしの液汁の凝固したものをいう。

(q) 「けし」とは、パパヴェル・ソムニフェルム・L種の植物をいう。

(r) 「けしがら」とは、刈取り後のけしのすべての部分(種子を除く。)をいう。

(s) 「製剤」とは、薬品を含有する混合物で固体又は液体のものをいう。

(t) 「生産」とは、あへん、コカ葉、大麻又は大麻樹脂をそれらが得られる植物から分離することをいう。

(u) 「附表Ⅰ」、「附表Ⅱ」、「附表Ⅲ」及び「附表Ⅳ」とは、この条約に附属する薬品又は製剤の表でそれぞれ対応する番号を附したもの(第三条の規定に従つて改正された場合には改正後のもの)をいう。

(v) 「事務総長」とは、国際連合事務総長をいう。

(w) 「特殊在庫量」とは、いずれかの国又は領域の政府が政府の特殊な目的のため及び例外的事態に応ずるためにその国又は領域に保有する薬品の数量をいう。「特殊な目的」という表現は、この規定の趣旨に従つて解釈するものとする。

(x) 「在庫量」とは、いずれかの国又は領域に保有される薬品で(i)から(iii)までに掲げる用途に供されるものの数量をいう。ただし、(iv)及び(v)に掲げるものを除く。

(i) その国又は領域における医療上及び学術上の目的のための消費

(ii) その国又は領域における薬品その他の物質の製造のための使用

(iii) 輸出

(iv) 小売薬剤師その他の許可を受けた小口分配業者及び正当に許可を受けて治療又は学術研究の業務に従事する施設又は有資格者が保有する数量

(v) 特殊在庫量として保有される数量

(y) 「領域」とは、国の一部分であつて、第三十一条に定める輸入証明書及び輸出許可書の制度の適用上個別の単位として取り扱われるものをいう。この定義は、第四十二条及び第四十六条に用いる「領域」の語には、適用しない。

2 この条約の適用上、薬品が小口分配、医療上の使用又は学術研究のためにいずれかの人又は企業に供給されたときは、その薬品は、消費されたものとみなす。「消費」の語は、この規定の趣旨に従つて解釈するものとする。

第二条 統制を受ける物質

1 附表Ⅰに掲げる薬品は、特定の薬品に限つて適用される統制措置を除くほか、この条約に基づいて薬品に適用されるすべての統制措置、特に第四条(c)、第十九条、第二十条、第二十一条、第二十九条、第三十条、第三十一条、第三十二条、第三十三条、第三十四条及び第三十七条に定める統制措置の適用を受けるものとする。

2 附表Ⅱに掲げる薬品は、小口取引について第三十条2及び同条5に定める措置を除くほか、附表Ⅰに掲げる薬品に適用される統制措置と同一の統制措置の適用を受けるものとする。

3 附表Ⅲに掲げる製剤以外の製剤は、その含有する薬品に適用される統制措置と同一の統制措置の適用を受けるものとする。ただし、これらの製剤については、その薬品に関する見積り(第十九条)及び統計(第二十条)と別個の見積り及び統計を必要とせず、また、第二十九条2(c)及び第三十条1(b)(ii)の規定を適用することを要しない。

4 附表Ⅲに掲げる製剤は、附表Ⅱに掲げる薬品を含有する製剤に適用される統制措置と同一の統制措置の適用を受けるものとする。ただし、これらの製剤については、第三十一条1(b)及び同条3から15までの規定並びに取得及び小口分配に関して第三十四条(b)の規定を適用することを要せず、また、これらの製剤に係る見積り(第十九条)及び統計(第二十条)については、必要な資料は、これらの製剤の製造に使用される薬品の数量に関するものに限られる。

5 附表Ⅳに掲げる薬品は、附表Ⅰにも含まれるものとし、附表Ⅰに掲げる薬品に適用されるすべての統制措置の適用を受けるものとする。さらに、

(a) 締約国は、これらの薬品の特に危険な特性に照らして必要であると認める特別の統制措置を執るものとし、また、

(b) 締約国は、自国における一般的状況から判断して、これらのいかなる薬品についてもその生産、製造、輸出、輸入、取引、所持又は使用を禁止することが公衆の健康及び福祉を保護するために最も適した手段であると認めるときは、これらの行為を禁止するものとする。ただし、医療上及び学術上の研究(締約国の直接の監督及び管理の下に又はこれに従つて行なわれる臨床試験を含む。)にのみ必要なこれらの薬品の数量については、この限りでない。

6 附表Ⅰに掲げるすべての薬品について適用される統制措置のほか、あへんは第十九条1(f)、第二十一条の二、第二十三条及び第二十四条の規定の適用を受け、コカ葉は第二十六条及び第二十七条の規定の適用を受け、大麻は第二十八条の規定の適用を受けるものとする。

7 けしは第十九条1(e)、第二十条1(g)、第二十一条の二及び第二十二条から第二十四条までに定める統制措置の適用を受け、コカ樹は第二十二条、第二十六条及び第二十七条に定める統制措置の適用を受け、大麻植物は第二十二条及び第二十八条に定める統制措置の適用を受け、けしがらは第二十五条に定める統制措置の適用を受け、大麻の葉は第二十八条に定める統制措置の適用を受けるものとする。

8 締約国は、この条約の適用を受けない物質で薬品の不正な製造に使用されるおそれがあるものに対して実行可能な監督措置を執るため、最善の努力を払うものとする。

9 締約国は、医療上及び学術上の目的以外の目的で産業上一般に使用される薬品に対してこの条約の規定を適用することを要求されない。ただし、次のことを条件とする。

(a) 適当な変質法その他の手段により、確実に、そのように使用される薬品が濫用され又は悪影響を及ぼすおそれ(第三条3)がないようにし、かつ、有害な物質を実際に回収することができないようにすること。

(b) 自国が提出する統計資料(第二十条)中に、そのように使用される各薬品の数量をも記載すること。

(昭五〇条二二・一部改正)

第三条 統制範囲の変更

1 締約国又は世界保健機関は、その有する資料によりいずれかの附表の改正が必要であると認める場合には、事務総長に対し、その旨を通告し、かつ、その通告の裏付けとなる資料を提出するものとする。

2 事務総長は、前記の通告及び関係があると認める資料を締約国、麻薬委員会及び、その通告が締約国によつて行なわれたときは、世界保健機関に送付する。

3 通告が附表Ⅰ又は附表Ⅱに掲げられていない物質に関するものである場合には、

(i) 締約国は、入手することができる資料に照らし、附表Ⅰに掲げる薬品に適用されるすべての統制措置をその物質に暫定的に適用することの可能性を検討するものとする。

(ii) 麻薬委員会は、(iii)に定める決定が行なわれるまでの間、附表Ⅰに掲げる薬品に適用されるすべての統制措置を締約国がその物質に暫定的に適用すべきことを決定することができる。締約国は、その措置をその物質に暫定的に適用するものとする。

(iii) 世界保健機関は、その物質が附表Ⅰ若しくは附表Ⅱに掲げる薬品と同様の濫用のおそれがあり、かつ、同様の悪影響を及ぼすものであると認め、又はその物質が薬品に転換されうるものであると認めた場合には、その旨を麻薬委員会に通知する。麻薬委員会は、世界保健機関の勧告に従い、その物質を附表Ⅰ又は附表Ⅱに加えることを決定することができる。

4 いずれかの製剤が、その含有する物質のために、濫用のおそれがなく、かつ、悪影響を及ぼさず(この条3)、さらに、その製剤中の薬品を容易に回収することができないものであると世界保健機関が認めた場合には、麻薬委員会は、世界保健機関の勧告に従い、その製剤を附表Ⅲに加えることができる。

5 附表Ⅰに掲げるいずれかの薬品が濫用され及び悪影響を及ぼすおそれ(この条3)の著しいものであり、かつ、そのおそれが附表Ⅳに掲げる薬品以外の他の物質には存しない実質的な治療上の利点より大きいと世界保健機関が認めた場合には、麻薬委員会は、世界保健機関の勧告に従い、その薬品を附表Ⅳに加えることができる。

6 通告が附表Ⅰ若しくは附表Ⅱに掲げる薬品又は附表Ⅲに掲げる製剤に関するものである場合には、麻薬委員会は、5に定める措置のほか、世界保健機関の勧告に従い、次の方法によりいずれの附表をも改正することができる。

(a) 附表Ⅰから附表Ⅱへ、又は附表Ⅱから附表Ⅰへ薬品を転記すること。

(b) 附表から薬品又は製剤を削ること。

7 麻薬委員会がこの条の規定に基づいて行なういずれの決定も、事務総長により、すべての国際連合加盟国、国際連合の非加盟国であるこの条約の締約国、世界保健機関及び統制委員会に通告される。この決定は、各締約国がその通告を受領した日にその締約国について効力を生ずるものとし、その場合には、締約国は、この条約によつて要求される措置を執るものとする。

(a) 麻薬委員会が行なつたいずれかの附表を改正する決定は、いずれかの締約国が、その決定の通告を受領した日から九十日以内に、要請を行なつたときは、理事会の審査を受けるものとする。審査の要請は、その基礎となつているすべての関係資料とともに事務総長に送付するものとする。

(b) 事務総長は、審査の要請及び関係資料の写しを麻薬委員会、世界保健機関及びすべての締約国に送付し、九十日以内に意見を提出するよう要請する。事務総長が受領したすべての意見は、審議のために理事会に提出される。

(c) 理事会は、麻薬委員会の決定を確認し、変更し、又は取り消すことができるものとし、理事会の決定は、最終的なものとする。理事会の決定の通告は、すべての国際連合加盟国、国際連合の非加盟国であるこの条約の締約国、麻薬委員会、世界保健機関及び統制委員会に送付される。

(d) 審査が行なわれている間、麻薬委員会の最初の決定は、なお効力を有する。

9 この条の規定に従つて行なわれる麻薬委員会の決定は、第七条に規定する審査の手続を受けない。

第四条 一般的義務

締約国は、次のことを行なうために必要な立法上及び行政上の措置を執るものとする。

(a) 自国の領域においてこの条約の規定を実施すること。

(b) この条約の規定の実施にあたり他の国と協力すること。

(c) この条約の規定に従うことを条件として、薬品の生産、製造、輸出、輸入、分配、取引、使用及び所持を医療上及び学術上の目的にのみ制限すること。

第五条 国際統制機関

締約国は、薬品の国際統制に関する国際連合の権限を認め、この条約によつて経済社会理事会の麻薬委員会及び国際麻薬統制委員会にそれぞれ割り当てられた任務をこれらの機関に委託することに同意する。

第六条 国際統制機関の経費

麻薬委員会及び統制委員会の経費は、総会が決定する方法で国際連合が負担する。国際連合加盟国でない締約国は、総会が公平と認め、かつ、これらの締約国の政府と協議して随時決定する額をこれらの経費に充てるため分担するものとする。

第七条 麻薬委員会の決定及び勧告の審査

第三条の規定に基づく決定を除くほか、この条約の規定に基づいて麻薬委員会が採択した決定又は勧告は、麻薬委員会の他の決定又は勧告と同様に、理事会又は総会による承認又は修正を受けるものとする。

第八条 麻薬委員会の任務

麻薬委員会は、この条約の目的に関するすべての事項を審議する権限を有し、特に次のことを行なう権限を有する。

(a) 第三条の規定に従つて附表を改正すること。

(b) 統制委員会の任務に関係がある事項について統制委員会の注意を喚起すること。

(c) この条約の目的の達成及び規定の実施(学術上の研究の計画及び学術的又は技術的な性質を有する資料の交換を含む。)のために勧告を行なうこと。

(d) 麻薬委員会がこの条約に基づいて採択する決定及び勧告について、それに沿つた措置を考慮するように、非締約国の注意を喚起すること。

第九条 統制委員会の構成及び任務

1 統制委員会は、理事会が選挙する次の十三人の委員で構成する。

(a) 世界保健機関が指名する少なくとも五人の者の名簿の中から選挙する医学上、薬理学上又は薬学上の経験のある三人の委員

(b) 国際連合加盟国及び国際連合加盟国でない締約国が指名する者の名簿の中から選挙する十人の委員

2 統制委員会の委員は、その能力及び公平無私であることによつて一般的信任を有する者でなければならない。統制委員会の委員は、その任期中、その任務の公平な遂行を害するおそれのある地位につき、又はそのようなおそれのある活動に従事してはならない。理事会は、統制委員会と協議の上、統制委員会の任務の遂行にあたつての職権行使上の完全な独立を確保するために必要なすべての措置を執るものとする。

3 理事会は、公平な地理的代表の原則に留意しつつ、生産国、製造国及び消費国における薬品の事情について知識を有し、かつ、これらの国と関係のある者を公平な割合で統制委員会に含めることの重要性について、考慮を払わなければならない。

4 統制委員会は、諸国の政府と協力して、かつ、この条約の規定に従うことを条件として、栽培並びに薬品の生産、製造及び使用を医療上及び学術上の目的に必要とされる適当な量に制限し、これらの目的のための薬品の入手を確保し、並びに不正な栽培並びに薬品の不正な生産、製造、取引及び使用を防止するよう努めるものとする。

5 統制委員会がこの条約に基づいてとるすべての措置は、諸国の政府と統制委員会との間の協力を促進するとの趣旨並びにこの条約の目的を達成するための効果的な国内措置を支援し及び容易にすることを目的とした諸国の政府と統制委員会との間の継続的な対話を可能にするとの趣旨に合致したものでなければならない。

(昭五〇条二二・一部改正)

第十条 統制委員会の委員の任期及び報酬

1 統制委員会の委員の任期は、五年とする。委員は、再選されることができる。

2 統制委員会の各委員の任期は、その後任者が出席する資格を有する統制委員会の最初の会合の日の前日に終了する。

3 三会期連続して会議に出席しなかつた統制委員会の委員は、辞任したものとみなす。

4 理事会は、統制委員会の勧告があつたときは、第九条2の規定によつて委員に要求される条件を満たさなくなつた統制委員会の委員を解任することができる。この勧告は、統制委員会の九人の委員の賛成投票によつて行なう。

5 任期中の委員について統制委員会に欠員を生じた場合には、理事会は、第九条の関係規定に従つてその残りの任期について他の委員を選挙することにより、できる限りすみやかにその欠員を補充する。

6 統制委員会の委員は、総会が決定する妥当な額の報酬を受ける。

(昭五〇条二二・一部改正)

第十一条 統制委員会の手続規則

1 統制委員会は、議長及び必要と認める他の役員を選挙し、並びにその手続規則を採択する。

2 統制委員会は、その任務の適正な遂行上必要であると認める回数の会合を開催する。ただし、暦年ごとに少なくとも二回の会議を開催しなければならない。

3 統制委員会の会議に必要な定足数は、八人とする。

(昭五〇条二二・一部改正)

第十二条 見積制度の運用

1 統制委員会は、第十九条に定める見積りを提出する期限、方法及びその書式を定める。

2 統制委員会は、この条約が適用されない国及び領域につき、この条約の規定による見積りを提出するようそれらの国及び領域の政府に要請する。

3 いずれかの国がそのいずれかの領域についての見積りを定められた期限までに提出しないときは、統制委員会は、できる限りその見積りを作成するものとし、その見積りの作成にあたつては、実行可能な限度でその国の政府と協力するものとする。

4 統制委員会は、見積り(補足見積りを含む。)を検討するものとし、また、特殊な目的のための需要に関する見積りを除くほか、見積りが提出された国又は領域につき、その見積りを完全なものにし又はそれに含まれている事項を説明するために必要であると認める資料を要求することができる。

5 統制委員会は、薬品の使用及び分配を医療上及び学術上の目的に必要とされる適当な量に制限し及びこれらの目的のための薬品の入手を確保するために、できる限りすみやかに見積り(補足見積りを含む。)を確認するものとし、又は関係政府の同意を得てその見積りを修正することができる。統制委員会は、政府と統制委員会との間で意見が一致しない場合には、独自の見積り(補足見積りを含む。)を作成し、通知し及び公表する権利を有する。

6 統制委員会は、第十五条の報告のほか、少なくとも毎年一回、自己が定める時期に、見積りに関する資料でこの条約の実施に役だつと認めるものを発表する。

(昭五〇条二二・一部改正)

第十三条 統計報告制度の運用

1 統制委員会は、第二十条に定める統計報告を提出する方法及びその書式を定める。

2 統制委員会は、締約国又は他のいずれかの国がこの条約の規定に従つているかどうかを決定するため、統計報告を検討する。

3 統制委員会は、前記の統計報告に含まれている資料を完全なものにし又は説明するために必要であると認める資料をさらに要求することができる。

4 特殊な目的のために必要な薬品に関する統計資料について質問し又は意見を表明することは、統制委員会の権限外とする。

第十四条 この条約の規定の実施を確保するために統制委員会が執る措置

(a) 統制委員会は、この条約の規定に基づいて諸国の政府から統制委員会に提出された資料、国際連合の機関若しくは専門機関から通知された資料又は統制委員会の勧告に基づいて麻薬委員会により承認されている機関であることを条件として、他の政府間機関若しくは対象となつている問題について直接に権能を有し、かつ、国際連合憲章第七十一条の規定に基づいて経済社会理事会と協議する地位にあり若しくは理事会との間の特別な取極により同様な地位にある国際的な非政府機関から通知された資料を検討した結果、いずれかの締約国、国又は領域がこの条約の規定を実施していないためこの条約の目的がそこなわれるおそれが大であると信ずるに足りる客観的な理由を有する場合には、関係政府に対して協議の開始を提案し又は説明を求める権利を有する。いずれかの締約国、国又は領域が条約の規定を履行しているが不正な栽培又は薬品の不正な生産、製造、取引若しくは消費の重要な中心となつており又は中心となる著しいおそれが明らかにある場合には、統制委員会は、関係政府に対して協議の開始を提案する権利を有する。統制委員会は、当該事件について締約国、理事会及び麻薬委員会の注意を喚起する(d)の権利を留保して、この(a)の規定に基づく資料の要求及びいずれかの政府の説明又は協議の提案及びいずれかの政府との協議を極秘のものとして取り扱わなければならない。

(b) 統制委員会は、(a)の規定に基づく措置をとつた後、必要と認めるときは、この条約の規定を実施するために当該状況の下で必要と認められる是正措置をとるよう関係政府に求めることができる。

(c) 統制委員会は、(a)の事件を解明するために必要と認める場合には、関係政府が適当と考える方法によつてその領域内で当該事件の調査を行なうよう関係政府に提案することができる。関係政府は、この調査を行なうことを決定した場合には、当該調査において関係政府の職員を補佐するため必要な資格を有する者の専門的意見及び役務を提供するように統制委員会に要請することができる。統制委員会が起用する者は、関係政府の承認を受けるものとする。この調査の方法及び期間は、関係政府と統制委員会との間の協議によつて決定する。関係政府は、調査の結果を統制委員会に通知し及び必要と認める是正措置を明示するものとする。

(d) 統制委員会は、関係政府が(a)の規定に基づいて説明を求められて十分な説明を行なわず若しくは(b)の規定に基づいて求められた是正措置をとらなかつたと認め、又は是正するためには国際的規模における協力を必要とするような重大な事態が存在すると認める場合には、当該事件について締約国、理事会及び麻薬委員会の注意を喚起することができる。統制委員会は、この条約の目的がそこなわれるおそれが大であり、かつ、他のいかなる方法によつても当該事件を十分に解決することができなかつた場合には、当該事件について締約国、理事会及び麻薬委員会の注意を喚起しなければならない。統制委員会は、また、是正するためには国際的規模における協力を必要とするような重大な事態が存在し、この事態を締約国、理事会及び麻薬委員会に通知することがそのような協力を容易にする最も適切な方法であると認める場合にも、当該事件について締約国、理事会及び麻薬委員会の注意を喚起しなければならない。理事会は、当該事件についての統制委員会の報告及び麻薬委員会の報告がある場合にはその報告を検討した後に、当該事件について総会の注意を喚起することができる。

2 統制委員会は、1(d)の規定に従いいずれかの事件について締約国、理事会及び麻薬委員会の注意を喚起する場合において、必要と認めるときは、当該国若しくは当該領域からの薬品の輸入、そこへの薬品の輸出又はその双方を一定の期間又は統制委員会が当該国若しくは当該領域における事情について満足するまでの間停止するよう締約国に勧告することができる。当該国は、この問題を理事会に提出することができる。

3 統制委員会は、この条の規定に基づいて処理したいずれの事件についても報告を公表し及びそれを理事会に通知する権利を有し、理事会は、それをすべての締約国に送付する。統制委員会は、この条の規定に基づいて行なつた決定又はそれに関連する資料を前記の報告の中で公表する場合において関係政府が要請をしたときは、その政府の意見をもその報告の中で公表しなければならない。

4 この条の規定に基づいて公表される統制委員会の決定が全会一致によるものでない場合には、少数意見をも公表しなければならない。

5 いずれの国も、自国に直接関係のある問題がこの条の規定に基づいて審議される統制委員会の会合に代表者を出席させるよう招請されるものとする。

6 この条の規定に基づく統制委員会の決定は、委員の全員の三分の二の多数によつて行なう。

(昭五〇条二二・一部改正)

第十四条の二 技術的及び財政的援助

統制委員会は、適当と認めるときは、第十四条1及び2に規定する措置のほかに又はそれに代わるものとして、関係政府の同意を得て、この条約に基づく義務(第二条、第三十五条、第三十八条及び第三十八条の二に規定するものを含む。)の関係政府による遂行を支援するため技術的援助若しくは財政的援助又はその双方をその政府に与えるよう国際連合の関係機関及び専門機関に勧告することができる。

(昭五〇条二二・追加)

第十五条 統制委員会の報告

1 統制委員会は、その業務に関する年次報告及び必要と認める追加の報告を作成する。これらの報告には、統制委員会が自由に利用しうる見積り及び統計資料を分析して得た結果並びに、適当な場合には、諸国の政府が自発的に又は要求を受けて行なつた説明の記述並びに統制委員会が附することを希望する自己の意見及び勧告をその内容として含ませるものとする。これらの報告は、麻薬委員会を通じて理事会に提出するものとし、麻薬委員会は、適切と認める意見を附することができる。

2 前記の報告は、事務総長が締約国に通知し、その後に公表する。締約国は、その無制限の配布を許すものとする。

第十六条 事務局

麻薬委員会及び統制委員会の事務局の役務は、事務総長が提供するものとし、統制委員会の事務局長は、事務総長が統制委員会と協議して任命する。

(昭五〇条二二・全改)

第十七条 特別の行政機関

締約国は、この条約の規定を実施するため、特別の行政機関を維持しなければならない。

第十八条 締約国が事務総長に提出する資料

1 締約国は、麻薬委員会がその任務の遂行上必要なものとして要請する資料、特に次の資料を事務総長に提出しなければならない。

(a) 自国の各領域におけるこの条約の運用に関する年次報告

(b) この条約を実施するために随時公布されるすべての法令の条文

(c) 不正取引の事件に関して麻薬委員会が定める事項(発覚した不正取引の事件のうち、不正取引のための薬品の入手源の解明に役だつ資料があるために、又はその不正取引の数量若しくは不正取引をした者が用いた方法から見て重要である各事件の詳細を含む。)

(d) 輸出及び輸入の許可書又は証明書を発給する権限のある政府当局の名称及び所在地

2 締約国は、1の資料を、麻薬委員会が要請する方法により、その要請する期限までに、その要請する書式を用いて提出する。

第十九条 薬品需要量の見積り

1 締約国は、毎年、統制委員会に対し、統制委員会が定める方法により、その支給する用紙を用いて、自国の各領域についての次の事項に関する見積りを提出しなければならない。

(a) 医療上及び学術上の目的のために消費される薬品の数量

(b) 他の薬品、附表Ⅲに掲げる製剤及びこの条約の適用を受けない物質を製造するために使用される薬品の数量

(c) 当該見積りに係る年の十二月三十一日に保有されるべき薬品の在庫量

(d) 特殊在庫量を増加するために必要な薬品の数量

(e) けしの栽培に使用される土地の面積(ヘクタールで表示する。)及び位置

(f) あへんの生産数量(概算)

(g) 合成薬品を製造する工業施設の数

(h) (g)の各施設が製造する合成薬品の数量

(a) 第二十一条3に規定する控除を受けることを条件として、各領域についての各薬品(あへん及び合成薬品を除く。)の見積りの総計は、1(a)、(b)及び(d)に規定する数量の合計に、当該見積りに係る年の前年の十二月三十一日現在の現実の在庫量を1(c)の規定による見込数量の水準まで引き上げるために必要な数量を加えた数量とする。

(b) 第二十一条3に規定する輸入に関する控除及び第二十一条の二2に規定する控除を受けることを条件として、各領域についてのあへんの見積りの総計は、1(a)、(b)及び(d)に規定する数量の合計に、当該見積りに係る年の前年の十二月三十一日現在の現実の在庫量を1(c)の規定による見込数量の水準まで引き上げるために必要な数量を加えた数量又は1(f)に規定する数量のいずれか多い方の数量とする。

(c) 第二十一条3に規定する控除を受けることを条件として、各領域についての各合成薬品の見積りの総計は、1(a)、(b)及び(d)に規定する数量の合計に、当該見積りに係る年の前年の十二月三十一日現在の現実の在庫量を1(c)の規定による見込数量の水準まで引き上げるために必要な数量を加えた数量又は1(h)に規定する数量の合計のいずれか多い方の数量とする。

(d) (a)から(c)での規定に従つて提出される見積りは、押収され、かつ、正当な使用のために放出された数量及び一般国民の需要のために特殊在庫量から引き出された数量を考慮に入れるため適当に修正されるものとする。

3 いずれの国も、当該見積りに係る年において、補足見積りを、それを必要とする事情の説明を附して、提出することができる。

4 締約国は、見積りに示された数量を決定するために使用した方法及びその方法のいかなる変更をも統制委員会に通報しなければならない。

5 第二十一条3に規定する控除を受けることを条件として、及び該当する場合には第二十一条の二の規定を考慮して、見積りを超過することは、許されない。

(昭五〇条二二・一部改正)

第二十条 統制委員会に提出する統計報告

1 締約国は、統制委員会に対し、統制委員会が定める方法により、その支給する用紙を用いて、自国の各領域についての次の事項に関する統計報告を提出しなければならない。

(a) 薬品の生産又は製造

(b) 他の薬品、附表Ⅲに掲げる製剤及びこの条約の適用を受けない物質を製造するための薬品の使用並びに薬品を製造するためのけしがらの使用

(c) 薬品の消費

(d) 薬品及びけしがらの輸入及び輸出

(e) 薬品の押収及び押収した薬品の処分

(f) 報告に係る年の十二月三十一日における薬品の在庫量

(g) 確認が可能な範囲内におけるけしの栽培面積

(a) 1((d)を除く。)に掲げる事項に関する統計報告は、毎年作成し、その統計報告に係る年の翌年の六月三十日までに統制委員会に提出するものとする。

(b) 1(d)に掲げる事項に関する統計報告は、四半期ごとに作成し、その統計報告に係る四半期の終了後一箇月以内に統制委員会に提出するものとする。

3 締約国は、特殊在庫量に関する統計報告の提出を要求されない。ただし、締約国は、特殊な目的のためにその国若しくは領域に輸入し又はそこで入手した薬品に関する報告及び一般国民の需要に応ずるために特殊在庫量から引き出した薬品の数量に関する報告を別に提出しなければならない。

(昭五〇条二二・全改)

第二十一条 製造及び輸入の制限

1 いずれかの国又は領域がいずれかの年において製造し及び輸入する各薬品の数量の総計は、次の数量の合計をこえてはならない。

(a) 該当する見積りの限度内で医療上及び学術上の目的のために消費される数量

(b) 該当する見積りの限度内で他の薬品、附表Ⅲに掲げる製剤及びこの条約の適用を受けない物質を製造するために使用される数量

(c) 輸出される数量

(d) 在庫量を該当する見積りに記載された水準まで引き上げるためにその在庫量に加えられる数量

(e) 該当する見積りの限度内で特殊な目的のために取得される数量

2 押収され、かつ、正当な使用のために放出された数量及び一般国民の需要のために特殊在庫量から引き出された数量は、1に掲げる数量の合計から控除するものとする。

3 いずれかの年において製造され及び輸入された数量が1に掲げる数量の合計から2の規定に基づいて控除される数量を差し引いた数量をこえると統制委員会が認めるときは、その年の末に残存するそのように認められた超過量は、翌年において、製造され又は輸入される数量及び第十九条2に定める見積りの総計から控除するものとする。

(a) 輸入又は輸出に関する統計報告(第二十条)により、いずれかの国又は領域に輸出された数量が、その国又は領域についての第十九条2に定める見積りの総計にその国又は領域から輸出された数量として記入されている数量を加え、かつ、3に規定する超過量を控除した数量をこえていることが明らかである場合には、統制委員会は、知らせておくべきであると認める国にこの事実を通告することができる。

(b) 締約国は、前記の通告を受領したときは、その年においては、その国又は領域への当該薬品のその後の輸出を許可してはならない。ただし、次の場合は、この限りでない。

(i) 当該国又は領域について過剰輸入量及び追加需要量の双方に関する補足見積りが提出された場合

(ii) 輸出が医療上不可欠であると輸出国の政府が認める例外的な場合

第二十一条の二 あへんの生産制限

1 いずれかの国又は領域によるあへんの生産は、いずれかの年において生産される数量が、第十九条1(f)の規定に従つて作成されたあへんの生産見積りをできる限り超過しないことを確保するように組織され、かつ、統制されなければならない。

2 統制委員会は、この条約の規定に従つて提供された資料をもとにして、第十九条1(f)の規定に従つて見積りを提出した締約国がその領土内で生産されるあへんをその関連見積りに基づく合法的な目的に制限しておらず、かつ、合法的な生産であるか非合法的な生産であるかを問わずその締約国の領土内で生産されたあへんのかなりの量が不正取引の対象となつていると認定する場合には、その締約国の説明(この説明は、当該認定の通知の後一箇月以内に統制委員会に提出する。)を検討した後に、季節及びその締約国のあへんの輸出契約を考慮して控除が技術的に可能な最初の年につき、生産される数量及び第十九条2(b)に定める見積りの総計から、その量の全部又は一部を控除することを決定することができる。その決定は、その締約国がその通知を受けた後九十日で効力を生ずる。

3 統制委員会は、2の規定に基づいて行なつた控除についての決定を関係締約国に通知した後、当該事態の十分な解決を得るためにその締約国と協議するものとする。

4 統制委員会は、当該事態の十分な解決が得られない場合において、適当と認めるときは、第十四条の規定を適用することができる。

5 統制委員会は、2の規定に基づき控除についての決定を行なうにあたり、関連するあらゆる事情(2にいう不正取引の問題をひき起こした事情を含む。)のほか、締約国がとることとなつた新たな関連統制措置をも考慮に入れるものとする。

(昭五〇条二二・追加)

第二十二条 栽培に適用される特別規定

1 締約国は、自国又はその領域における一般的状況から判断して、けし、コカ樹又は大麻植物の栽培を禁止することが公衆の健康及び福祉を保護し並びに薬品が不正取引に向けられることを防止するために最も適した措置であると認めるときは、栽培を禁止しなければならない。

2 けし又は大麻植物の栽培を禁止する締約国は、学術上又は研究上の目的のためその締約国に必要とされる少量を除くほか、不正に栽培された植物を押収し、かつ、廃棄するために適当な措置をとらなければならない。

(昭五〇条二二・全改)

第二十三条 国のあへん機関

1 あへんの生産のためのけしの栽培を許す締約国は、この条に定める任務を遂行する一又は二以上の政府機関(以下この条において「機関」という。)を、それがまだ設置されていない場合にはそれを設置した上で、維持しなければならない。

2 前記の各締約国は、あへんの生産のためのけしの栽培及びあへんについて次の規定を適用しなければならない。

(a) 機関は、あへんの生産のためのけしの栽培を許す地域及び土地を指定しなければならない。

(b) 機関が免許を与える栽培者のみが、前記の栽培に従事することを許されるものとする。

(c) 各免許証には、栽培を許す土地の面積を明記するものとする。

(d) すべてのけしの栽培者は、収穫したすべてのあへんを機関に納入することを要求されるものとする。機関は、できる限りすみやかに、おそくとも収穫の終了後四箇月以内に、前記の収穫したあへんを買い上げ、かつ、これを占有しなければならない。

(e) 機関は、あへんに関し、輸入、輸出及び卸取引を行ない、並びに在庫量(あへんアルカロイド、薬用あへん又はあへん製剤の製造業者が保有するものを除く。)を保有する独占的権利を有するものとする。締約国は、この独占的権利を薬用あへん及びあへん製剤に及ぼすことを要しない。

3 2に定める政府の任務は、当該締約国の憲法上許容される場合には、単一の政府機関が遂行しなければならない。

第二十四条 国際取引に向けられるあへんの生産の制限

(a) いずれの締約国も、あへんの生産を開始し又はその現在の生産を従来よりも増加しようとするときは、自国のあへんの生産の結果世界におけるあへんの生産過剰を生ずることがないようにするため、統制委員会が公表する見積りによるその時の世界のあへんの需要量を考慮に入れなければならない。

(b) 締約国は、その領域におけるあへんの生産又はその生産の増加の結果あへんの不正取引を生ずるおそれがあると認めるときは、あへんの生産を許し、又はその生産を増加してはならない。

(a) 1の規定に従うことを条件として、千九百六十一年一月一日においてあへんを輸出のために生産していなかつた締約国がその生産するあへんを年間五トンを限度として輸出することを希望するときは、その締約国は、次の事項に関する資料を附して、その旨を統制委員会に通告しなければならず、統制委員会は、この通告を承認することも、また、当該締約国に対して輸出のためのあへんの生産に従事しないよう勧告することもできる。

(i) 生産され、かつ、輸出されるあへんについてこの条約に基づいて実施されている統制

(ii) 当該締約国が前記のあへんを輸出しようとしている国の名称

(b) 3に規定する締約国以外の締約国が年間五トンをこえる数量のあへんを輸出のために生産することを希望するときは、その締約国は、次の事項を含む関係資料を附して、その旨を理事会に通告しなければならず、理事会は、この通告を承認することも、また、当該締約国に対して輸出のためのあへんの生産に従事しないよう勧告することもできる。

(i) 輸出のために生産される数量の見積り

(ii) 生産されるあへんに関する実施中又は計画中の統制

(iii) 当該締約国が前記のあへんを輸出しようとしている国の名称

3 2(a)及び(b)の規定にかかわらず、自国が生産したあへんを千九百六十一年一月一日の直前の十年間に輸出した締約国は、その生産するあへんを引き続き輸出することができる。

(a) 締約国は、次の締約国の領域で生産されたあへんを除くほか、いずれの国又は領域からもあへんを輸入してはならない。

(i) 3に規定する締約国

(ii) 2(a)に定めるところに従つて統制委員会に通告した締約国

(iii) 2(b)に定めるところに従つて理事会の承認を受けた締約国

(b) (a)の規定にかかわらず、締約国は、千九百六十一年一月一日前の十年間にあへんを生産し、かつ、輸出したいずれの国が生産するあへんをも輸入することができる。ただし、その輸出国が第二十三条に規定する目的のために国の統制機関を設置して維持しており、かつ、その生産するあへんが不正取引に向けられないことを確保する効果的な手段を講じていることを条件とする。

5 この条の規定は、締約国が次のことを行なうことを妨げない。

(a) 自国の需要を満たすために十分な数量のあへんを生産すること。

(b) 不正取引において押収したあへんをこの条約の要件に従つて他の締約国に輸出すること。

第二十五条 けしがらの統制

1 あへんの生産以外の目的のためのけしの栽培を許す締約国は、次のことを確保するために必要なすべての措置を執らなければならない。

(a) 前記のけしからあへんを生産しないこと。

(b) けしがらからの薬品の製造を十分に統制すること。

2 締約国は、第三十一条4から15までに規定する輸入証明書及び輸出許可書の制度をけしがらに適用しなければならない。

3 締約国は、けしがらの輸入及び輸出に関し、第二十条1(d)及び2(b)の規定により薬品について要求されるものと同様の統計資料を提出しなければならない。

第二十六条 コカ樹及びコカ葉

1 締約国は、コカ樹の栽培を許すときは、コカ樹及びコカ葉につき、けしの統制について第二十三条に規定する統制制度と同様の統制制度を適用しなければならない。ただし、同条2(d)の規定については、同条の機関に課される義務は、収穫の終了後できる限りすみやかに収穫物を占有することのみとする。

2 締約国は、野生のコカ樹を根絶する措置をできる限り実施するものとする。締約国は、コカ樹が不法に栽培されたときは、これを廃棄しなければならない。

第二十七条 コカ葉に関する追加規定

1 締約国は、芳香剤(いかなるアルカロイドをも含有するものであつてはならない。)の調製のためのコカ葉の使用を許し、並びにそのような使用に必要な限度においてコカ葉の生産、輸入、輸出、取引及び所持を許すことができる。

2 締約国は、前記の芳香剤の調製のためのコカ葉に関しては、見積り(第十九条)及び統計資料(第二十条)を別に提出しなければならない。ただし、同一のコカ葉がアルカロイド及び芳香剤の抽出のために使用され、かつ、見積り及び統計資料中にその旨が説明されている場合は、この限りでない。

第二十八条 大麻の統制

1 締約国は、大麻又は大麻樹脂の生産のための大麻植物の栽培を許すときは、大麻植物につき、けしの統制について第二十三条に規定する統制制度と同様の統制制度を適用しなければならない。

2 この条約は、もつぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る。)又は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には、適用しない。

3 締約国は、大麻植物の葉の悪用及び不正取引を防止するために必要な措置を執るものとする。

第二十九条 製造

1 締約国は、薬品の製造を免許制度の下に置かなければならない。ただし、その製造が国営企業によつて行なわれる場合は、この限りでない。

2 締約国は、次のことを行なわなければならない。

(a) 薬品の製造を行ない又はそれに従事するすべての人及び企業を監督すること。

(b) 薬品の製造を行なう事業所及びその構内を免許制度によつて監督すること。

(c) 製造することを許される薬品の種類及び数量を明記した許可書を免許を受けた薬品の製造業者が定期的に取得すべきものと定めること。もつとも、この許可書は、製剤については、必要とすることを要しない。

3 締約国は、市場の一般的状況を考慮して、薬品の製造業者の手もとにその業務の正常な遂行に必要な数量をこえる数量の薬品及びけしがらが蓄積されることを防止しなければならない。

第三十条 取引及び分配

(a) 締約国は、薬品の取引及び分配を免許制度の下に置かなければならない。ただし、その取引又は分配が国営企業によつて行なわれる場合は、この限りでない。

(b) 締約国は、次のことを行なわなければならない。

(i) 薬品の取引若しくは分配を行ない又はそれに従事するすべての人及び企業を監督すること。

(ii) 薬品の取引又は分配を行なう事業所及びその構内を免許制度によつて監督すること。免許制度は、製剤については、適用することを要しない。

(c) 免許に関する(a)及び(b)の規定は、治療又は学術研究の業務に従事することを正当に許可されてその業務に従事している者に対しては、適用することを要しない。

2 締約国は、また、次のことを行なわなければならない。

(a) 市場の一般的状況を考慮して、取引業者、分配業者、国営企業又は前記の正当に許可された者の手もとにその業務の正常な遂行に必要な数量をこえる数量の薬品及びけしがらが蓄積されることを防止すること。

(b)

(i) 個人に対して薬品を供給し又は調剤するためには処方せんを要するものと定めること。この規定は、個人がその正当に許可された治療の業務に関連して合法的に取得し、使用し、調剤し、又は施用する薬品については、適用することを要しない。

(ii) 必要であり又は望ましいと認めるときは、附表Ⅰに掲げる薬品の処方は権限のある政府当局又は権限を与えられた職業団体が控付きの冊子の形で発給する公定の用紙に記入すべきものと定めること。

3 締約国は、手書き又は印刷の薬品販売の申込み文書、薬品に関する商業用の各種の広告又は説明書、薬品の包装における内包装の包み及び薬品を販売に供する場合に用いるレッテルに世界保健機関から通知された国際一般名称を表示すべきものと定めることが望ましい。

4 締約国は、必要であり又は望ましいと認めるときは、薬品の内包装又はその包みに明らかな二本の赤帯を附すべきものと定めなければならない。薬品の外包装の外側には、二本の赤帯を附してはならない。

5 締約国は、薬品を販売に供する場合に用いるレッテルに正確な薬品の含有量を重量又は百分率によつて表示すべきものと定めなければならない。この規定は、個人に対して処方せんに従つて調剤される薬品については、適用することを要しない。

6 2及び5の規定は、附表Ⅱに掲げる薬品の小口取引又は小口分配には、適用することを要しない。

第三十一条 国際取引に関する特別規定

1 締約国は、いずれの国又は領域に対しても、事情を知りながら、次の条件に適合しない薬品の輸出を許してはならない。

(a) その国又は領域の法令に従つて行なわれること。

(b) その国又は領域についての第十九条2に定める見積りの総計にその国又は領域が再輸出しようとする数量を加えた数量の限度内で行なわれること。

2 締約国は、自由港及び自由地帯において、自国の領域の他の部分における監督及び統制と同一の監督及び統制を実施しなければならない。もつとも、一層厳重な措置を執ることを妨げない。

3 締約国は、次のことを行なわなければならない。

(a) 薬品の輸入及び輸出を免許制度によつて統制すること。ただし、その輸入又は輸出が国営企業によつて行なわれる場合は、この限りでない。

(b) 薬品の輸入若しくは輸出を行ない又はそれに従事するすべての人及び企業を監督すること。

(a) 薬品の輸入又は輸出を許す締約国は、その各輸入又は輸出(その薬品が一種類であるか二種類以上であるかを問わない。)について個別に輸入又は輸出の許可書を取得すべきものと定めなければならない。

(b) この許可書には、薬品の名称、国際一般名称(もしあれば)、輸入し又は輸出する数量並びに輸入業者及び輸出業者の氏名及び住所を記載し、かつ、その輸入又は輸出を行なわなければならない期間を明示するものとする。

(c) 輸出許可書には、また、輸入証明書(この条5)の番号及び日付並びにそれを発給した当局を記載するものとする。

(d) 輸入許可書は、二回以上の荷送りによる輸入を許すことができる。

5 締約国は、輸出許可書を発給する前に、輸入する国又は領域の権限のある当局が発給した輸入証明書でそれに掲げる薬品の輸入が承認されたことを証明するものを要求するものとし、この証明書は、輸出許可書を申請する人又は企業が提出するものとする。締約国は、麻薬委員会が承認した様式に実行可能な限り従つて輸入証明書を作成するものとする。

6 各送り荷には、輸出許可書一通が添附されるものとし、また、輸出許可書を発給する政府は、輸入する国又は領域の政府に対し、その一通を送付するものとする。

(a) 輸入する国又は領域の政府は、輸入が行なわれたとき、又は輸入のために定められた期間が満了したときは、その旨の裏書きを附して、輸出許可書を輸出する国又は領域の政府に返送するものとする。

(b) その裏書きには、実際に輸入された数量を明示するものとする。

(c) 輸出許可書中に明示された数量より少ない数量が実際に輸出された場合には、権限のある当局は、その実際に輸出された数量を輸出許可書及びその公の写しに記載するものとする。

8 郵便私書箱あて又は輸出許可書に記載された者以外の者の銀行口座あての荷送りによる輸出は、禁止する。

9 保税倉庫あての荷送りによる輸出は、禁止する。ただし、輸出許可書を申請する人又は企業が提出する輸入証明書において、その送り荷を保税倉庫に入れておく目的でその輸入を承認したことを輸入国政府が証明する場合は、この限りではない。このような証明がある場合には、輸出許可書に、その送り荷がそのような目的で輸出される旨を明示しなければならない。保税倉庫から出すためには、そのつど、当該保税倉庫を管轄する当局の許可を受けることを必要とし、外国を仕向地とする場合には、新規のこの条約上の輸出として取り扱う。

10 締約国の領域に入り又はその領域を出る薬品の送り荷で輸出許可書が添附されていないものは、権限のある当局が留置するものとする。

11 締約国は、他の国へ送られる薬品に対し、その送り荷がそれを運搬する輸送手段からおろされるか否かを問わず、自国の領域の通過を許してはならない。ただし、その送り荷に対する輸出許可書が当該締約国の権限のある当局に提示される場合は、この限りでない。

12 薬品の送り荷の通過を許す国又は領域の権限のある当局は、その送り荷に添附されている輸出許可書に記載された仕向地と異なる仕向地へその送り荷が転送されることを防止するため、必要なすべての措置を執らなければならない。ただし、送り荷が通過する国又は領域の政府が転送を許可する場合は、この限りでない。送り荷が通過する国又は領域の政府は、要請された転送をその国又は領域から新たな仕向地である国又は領域への輸出として取り扱う。転送が許可された場合には、7(a)及び(b)の規定は、送り荷が通過する国又は領域と最初にその送り荷を輸出した国又は領域との間にも適用する。

13 薬品の送り荷に対しては、通過中又は保税倉庫に保管中は、当該薬品の性質を変化させるいかなる加工をも施してはならない。その包装は、権限のある当局の許可を得ないで変更してはならない。

14 薬品の締約国の領域の通過に関する11から13までの規定は、通過する国又は領域に着陸しない航空機によつて当該送り荷が輸送される場合には、適用しない。航空機がこれらの国又は領域に着陸する場合には、これらの規定は、必要に応じて適用するものとする。

15 この条の規定は、通過中の薬品について締約国が実施する統制を制限する国際協定の規定を害するものではない。

16 1(a)及び2の規定を除くほか、この条のいかなる規定も、附表Ⅲに掲げる製剤については、適用することを要しない。

第三十二条 国際交通に従事する船舶又は航空機の救急箱内の薬品の運搬に関する特別規定

1 船舶又は航空機が、その航行中に救急の目的のため又は緊急の場合のために必要とされることがある少量の薬品を国際間で運搬することは、この条約上の輸入又は輸出として取り扱わない。

2 船舶又は航空機の登録国は、1に規定する薬品の適正でない使用又は不正な目的への流用を防止するため、適当な保障措置を執らなければならない。麻薬委員会は、適当な国際機関と協議して、その保障措置を勧告する。

3 船舶又は航空機が1の規定に従つて運搬する薬品は、当該船舶又は航空機の登録国の法令、許可及び免許によつて規律される。ただし、関係地の権限のある当局が船舶上又は航空機上において点検、検査その他の取締りの措置を実施する権利は、害されない。緊急の場合におけるこれらの薬品の施用は、第三十条2(b)の規定の違反として取り扱わない。

第三十三条 薬品の所持

締約国は、法律により認められて所持する場合を除くほか、薬品の所持を許してはならない。

第三十四条 監督及び監視の措置

(a) 締約国は、この条約に従つて免許を取得するすべての者又はこの条約に従つて設立された国営企業において管理者若しくは監督者の地位を有するすべての者が、この条約に基づいて制定される法令の規定を効果的かつ忠実に実施するために十分な資格を有することを要するものと定めなければならない。

(b) 締約国は、政府当局、製造業者、取引業者、学術研究者、学術研究施設及び病院が、製造した各薬品の数量並びに取得及び処分ごとに取得し又は処分した各薬品の数量を記録すべきものと定めなければならない。これらの記録は、それぞれ、二年以上の期間保存しなければならない。処方せん用紙の控付きの冊子(第三十条2(b))を使用する場合には、その冊子の控えの部分も、二年以上の期間保存しなければならない。

第三十五条 不正取引に対する措置

締約国は、その憲法上、法律上及び行政上の制度に妥当な考慮を払いつつ、次のことを行なわなければならない。

(a) 不正取引に対する防止及び抑圧の措置について全国的規模における調整を確保すること。締約国は、この目的のため、そのような調整について責任を有する適当な機関を指定して活用することができる。

(b) 麻薬の不正取引をなくすための活動において相互に援助すること。

(c) 不正取引をなくすための協同活動を維持するため、相互に、及び自国が構成員となつている関係国際機関と密接に協力すること。

(d) 適当な機関の間における国際協力が迅速に行なわれるようにすること。

(e) 司法書類が訴追のために国際間で送付される場合には、その送付が締約国の指定する機関に対して迅速に行なわれるようにすること。この規定は、司法書類が外交上の経路によつて自国へ送付されることを要求する締約国の権利を害するものではない。

(f) 適当と認めるときは、第十八条の資料のほか、自国の領土内における薬品に係る不正な行為に関する資料(不正な栽培並びに薬品の不正な生産、製造、使用及び取引に関する資料を含む。)を、事務総長を通じて統制委員会及び麻薬委員会に提出すること。

(g) できる限り統制委員会が要請する方法で及び期限までに、(f)に規定する資料を提出すること。統制委員会は、締約国が要請する場合には、その締約国による資料の提出及び領土内における薬品に係る不正な行為を減少させるためのその締約国の努力について、助言を与えることができる。

(昭五〇条二二・全改)

第三十六条 刑罰規定

(a) 各締約国は、その憲法上の制限に従うことを条件として、この条約の規定に違反する栽培並びに薬品の生産、製造、抽出、製剤、所持、提供、販売のための提供、分配、購入、販売、交付(名目のいかんを問わない。)、仲介、発送、通過発送、輸送、輸入、輸出その他この条約の規定に違反すると当該締約国が認めるいかなる行為も、それが故意に行なわれたときは処罰すべき犯罪となることを確保し、並びに重大な犯罪に対しては特に拘禁刑又はその他の自由をはく奪する刑による相当な処罰が行なわれることを確保する措置をとらなければならない。

(b) (a)の規定にかかわらず、締約国は、薬品の濫用者が(a)の犯罪を犯した場合には、有罪判決若しくは処罰に代わるものとして又は有罪判決若しくは処罰のほかに、第三十八条1の規定に従つて、そのような濫用者が治療、教育、後保護、更生及び社会復帰の措置を受けるものとすることができる。

2 締約国の憲法上の制限、法制及び国内法に従うことを条件として、

(a)

(i) 1に掲げる犯罪は、二以上の国にわたつて行なわれたときは、国ごとに別個の犯罪とみなす。

(ii) これらの犯罪への故意による参加、その犯罪の共謀及び未遂並びにこの条に掲げる犯罪に関連する予備行為及び資金の操作は、1に定める処罰すべき犯罪とする。

(iii) これらの犯罪に対する外国の有罪判決は、累犯の認定のために考慮される。

(iv) 自国民又は外国人によつて行なわれた前記の重大な犯罪は、その犯罪が行なわれた領域の属する締約国により、又は犯罪者が発見された領域の属する締約国により(犯罪人引渡しがその請求を受けた締約国の法律上認められず、かつ、その犯罪者がまだ訴追及び判決を受けていない場合に限る。)訴追される。

(b)

(i) 1及び2(a)(ii)に掲げる犯罪は、締約国間の現行の犯罪人引渡条約における引渡犯罪とみなす。締約国は、相互間で将来締結されるすべての犯罪人引渡条約にその犯罪を引渡犯罪として含めることを約束する。

(ii) 条約の存在を犯罪人引渡しの条件とする締約国は、自国との間に犯罪人引渡条約を締結していない他の締約国から犯罪人引渡しの請求を受けた場合には、随意にこの条約を1及び2(a)(ii)に掲げる犯罪に関する犯罪人引渡しのための法的基礎とみなすことができる。その犯罪人引渡しは、その請求を受けた締約国の法律に定めるその他の条件に従うものとする。

(iii) 条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国は、犯罪人引渡しの請求を受けた締約国の法律に定める条件に従い、相互間で、1及び2(a)(ii)に掲げる犯罪を引渡犯罪と認めるものとする。

(iv) 犯罪人引渡しは、その請求を受けた締約国の法律に従つて行なわれなければならず、その締約国は、(b)(i)から(iii)までの規定にかかわらず、権限のある当局がその犯罪を重大でないものと認めたときは、犯罪人引渡しをすることを拒絶する権利を有する。

3 この条の規定は、裁判管轄権の問題に関しては、当該締約国の刑事法の規定を害するものではない。

4 この条のいかなる規定も、この条に掲げる犯罪を締約国の国内法に従つて定義し、訴追し、及び処罰するという原則に影響を及ぼすものではない。

(昭五〇条二二・一部改正)

第三十七条 押収及び没収

第三十六条に掲げる犯罪の実行にあたつて用い、又は用いようとした薬品、物質及び装置は、押収し、及び没収することができる。

第三十八条 薬品の濫用に対する措置

1 締約国は、薬品の濫用の防止に特別の考慮を払い、薬品の濫用の防止並びに濫用に陥つた者の早期発見、治療、教育、後保護、更生及び社会復帰のため、あらゆる可能な措置をとり、また、相互に協力するものとする。

2 締約国は、できる限り、薬品の濫用者の治療、後保護、更生及び社会復帰に従事する職員の養成を促進するものとする。

3 締約国は、薬品の濫用及びその防止に係る問題に対する理解を職業上必要とする者がそれらの問題に対する理解を得ることを援助するためあらゆる可能な措置をとるものとし、また、薬品の濫用がまん延するおそれがある場合には、それらの問題に対する一般大衆の理解を増進するものとする。

(昭五〇条二二・全改)

第三十八条の二 地域センターに関する協定

締約国は、薬品の不正取引に対する措置の一部として望ましいと認める場合には、その憲法上、法律上及び行政上の制度に妥当な考慮を払い、また、希望するときは統制委員会又は専門機関の技術的助言を得て、薬品の不正な使用及び取引から生ずる問題と戦うために学術上の研究及び教育のための地域センターを設立する協定を、その地域内の他の関係締約国と協議したうえで、制定することを促進するものとする。

(昭五〇条二二・追加)

第三十九条 この条約が要求する措置より厳重な国内統制措置の適用

この条約のいかなる規定にもかかわらず、締約国は、この条約で定める措置より精細な又は厳重な統制措置を執ること特に、附表Ⅲに掲げる製剤又は附表Ⅱに掲げる薬品に対し、附表Ⅰに掲げる薬品に適用されるすべての統制措置又はこれらのうち公衆の健康及び福祉を保護するために必要であり又は望ましいと認める統制措置を適用するものと定めることを妨げられないものとする。

第四十条 この条約の用語並びに署名、批准及び加入の手続

1 この条約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語による本文をひとしく正文とし、国際連合加盟国、国際司法裁判所規程の当事国であり又は国際連合の専門機関の加盟国である国際連合の非加盟国その他理事会が締約国となるよう招請する国による署名のため、千九百六十一年八月一日まで開放しておく。

2 この条約は、批准されなければならない。批准書は、事務総長に寄託するものとする。

3 この条約は、千九百六十一年八月一日後は、1に規定する国による加入のため開放しておく。加入書は、事務総長に寄託するものとする。

第四十一条 効力発生

1 この条約は、四十番目に寄託される批准書又は加入書が第四十条の規定に従つて寄託された日の後三十日目の日に効力を生ずる。

2 前記の四十番目の批准書又は加入書の寄託の日の後に批准書又は加入書を寄託する国については、この条約は、その国の批准書又は加入書の寄託の日の後三十日目の日に効力を生ずる。

第四十二条 適用領域

この条約は、いずれかの締約国が国際関係について責任を有するすべての非本土領域に、それらの領域の事前の同意が当該締約国若しくは当該領域の憲法により又は慣行上必要とされる場合を除くほか、適用する。非本土領域の事前の同意が必要とされる場合には、当該締約国は、できる限り短い期間内に当該領域の必要な同意を得るように努力しなければならず、その同意を得た場合には、その旨を事務総長に通告するものとする。この条約は、事務総長がその通告を受領した日から、その通告に掲げる領域に適用する。非本土領域の事前の同意が必要とされない場合には、当該締約国は、署名、批准又は加入の際に、この条約を適用する非本土領域を宣言するものとする。

第四十三条 第十九条、第二十条、第二十一条及び第三十一条の規定の適用上の領域

1 締約国は、第十九条、第二十条、第二十一条及び第三十一条の規定の適用上その一の領域を二以上の領域に分割し、又は二以上の領域を単一の領域に統合することを事務総長に通告することができる。

2 二以上の締約国は、それらの締約国の間に関税同盟を設立した結果それらの締約国が第十九条、第二十条、第二十一条及び第三十一条の規定の適用上単一の領域を形成することを事務総長に通告することができる。

3 1及び2の規定に基づく通告は、その通告が行なわれた年の翌年の一月一日に効力を生ずる。

第四十四条 従前の国際条約の終了

1 この条約の規定は、効力を生じたときは、締約国間において次の条約の規定を終了させ、かつ、これらに代わるものとする。

(a) 千九百十二年一月二十三日にヘーグで署名された国際あへん条約

(b) 千九百二十五年二月十一日にジュネーヴで署名されたあへん煙こうの製造、国内取引及び使用に関する協定

(c) 千九百二十五年二月十九日にジュネーヴで署名された国際あへん条約

(d) 千九百三十一年七月十三日にジュネーヴで署名された麻薬の製造制限及び分配取締に関する条約

(e) 千九百三十一年十一月二十七日にバンコックで署名された極東におけるあへん吸食管理に関する協定

(f) 千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された千九百十二年一月二十三日にヘーグで、千九百二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九日及び千九百三十一年七月十三日にジュネーヴで、千九百三十一年十一月二十七日にバンコックで、並びに千九百三十六年六月二十六日にジュネーヴで締結された麻薬に関する協定、条約及び議定書を改正する議定書。ただし、千九百三十六年六月二十六日の条約に関する部分を除く。

(g) (f)に掲げる千九百四十六年の議定書によつて改正された(a)から(e)までに掲げる条約及び協定

(h) 千九百四十八年十一月十九日にパリで署名された千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の条約の範囲外の薬品を国際統制の下に置く議定書

(i) 千九百五十三年六月二十三日にニュー・ヨークで署名されたけしの栽培並びにあへんの生産、国際取引、卸取引及び使用の制限及び取締に関する議定書(効力を生じた場合)

2 この条約が効力を生じたときは、千九百三十六年六月二十六日にジュネーヴで署名された危険薬品の不正取引の防止のための条約第九条の規定は、同条約の締約国で同時にこの条約の締約国であるものの間で終了し、この条約の第三十六条2(b)の規定がこれに代わるものとする。ただし、これらの締約国は、事務総長にあてた通告により前記の第九条の規定を引き続き有効とすることができる。

第四十五条 経過規定

1 第九条に定める統制委員会の任務は、この条約の効力発生の日(第四十一条1)から、それぞれの任務の性質に応じ、暫定的に、第四十四条(c)に掲げる条約(改正後のもの)の第六章の規定に基づいて構成された常設中央委員会及び第四十四条(d)に掲げる条約(改正後のもの)の第二章の規定に基づいて構成された監督機関が行なう。

2 理事会は、第九条の統制委員会がその任務の遂行を開始する日を定める。この日以後、統制委員会は、第四十四条に掲げる条約の締約国でこの条約の締約国でないものに関し、1に規定する常設中央委員会及び監督機関の任務を行なうものとする。

第四十六条 廃棄

1 締約国は、この条約の効力発生の日(第四十一条1)から二年の期間が満了した後は、自国のために、又は自国が国際関係について責任を有する領域で第四十二条の規定に従つて与えた同意を撤回したもののために、事務総長に文書を寄託することによつてこの条約を廃棄することができる。

2 廃棄は、事務総長がいずれの年においても七月一日以前にその文書を受領したときは翌年の一月一日に効力を生じ、七月一日後にその文書を受領したときは翌年の七月一日以前に受領したものと同様に効力を生ずる。

3 この条約は、1の規定に従つて行なわれる廃棄の結果第四十一条1に定める効力発生のための条件が存在しなくなつたときは、終了する。

第四十七条 改正

1 いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができる。改正案の本文及びその理由は、事務総長に通告するものとし、事務総長は、これを締約国及び理事会に通知する。理事会は、次のいずれかのことを決定することができる。

(a) 改正案を審議するため、国際連合憲章第六十二条4の規定に従つて会議を招集すること。

(b) 締約国に対し、改正案を受諾するかどうかを照会し、及びその提案についての意見を理事会に提出するよう求めること。

2 1(b)の規定に基づいて配布した改正案に対してその配布の後十八箇月以内にいずれの締約国からも反対がなかつたときは、その改正案は、直ちに効力を生ずる。改正案に対していずれかの締約国から反対があつたときは、理事会は、締約国から受領した意見を考慮して、その改正案を審議するための会議を招集するかどうかを決定することができる。

第四十八条 紛争

1 この条約の解釈又は適用に関して二以上の締約国間に紛争を生じたときは、それらの締約国は、交渉、調査、仲介、調停、仲裁、地域的機関への依頼、司法上の手続その他それらの締約国が選ぶ平和的手段によつて紛争を解決するため、協議しなければならない。

2 前記の方法によつて解決することができない紛争は、決定のために国際司法裁判所に付託するものとする。

第四十九条 過渡的留保

1 締約国は、署名、批准又は加入の際に、自国のいずれかの領域において、次の事項を暫定的に許す権利を確保することができる。

(a) あへんの医療に準ずる場合における使用

(b) あへんの吸食

(c) コカ葉の咀嚼そしやく

(d) 大麻、大麻樹脂並びに大麻のエキス及びチンキの医療以外の目的のための使用

(e) (a)から(d)までに規定する薬品の(a)から(d)までに掲げる使用のための生産、製造及び取引

2 1の規定に基づく留保は、次の制限に従うものとする。

(a) 1に掲げる行為は、留保の対象である領域において慣習的なものであり、かつ、千九百六十一年一月一日に許されていた限りにおいてのみ許される。

(b) 1に規定する薬品の1に掲げる使用のための輸出を非締約国又は第四十二条の規定に基づいてこの条約が適用される領域以外の領域に対して行なうことは、許されない。

(c) あへんの吸食は、千九百六十四年一月一日において権限のある当局によつて登録されている者にのみ許される。

(d) あへんの医療に準ずる場合における使用は、第四十一条1に定めるこの条約の効力発生の日から十五年以内に廃止しなければならない。

(e) コカ葉の咀嚼そしやくは、第四十一条1に定めるこの条約の効力発生の日から二十五年以内に禁止しなければならない。

(f) 大麻の医療上及び学術上の目的以外の目的のための使用は、できる限りすみやかに、いかなる場合にも第四十一条1に定めるこの条約の効力発生の日から二十五年以内に、廃止しなければならない。

(g) 1に規定する薬品の1に掲げる使用のための生産、製造及び取引は、そのような使用の減少に応じて減少させ、最終的には廃止しなければならない。

3 1の規定に基づいて留保を行なう締約国は、次のことを行なわなければならない。

(a) 第十八条1(a)の規定に従つて事務総長に提出する年次報告中に、1に掲げる使用、生産、製造又は取引の廃止の方向に向かつて前年中に遂げられた進展についての記述を含めること。

(b) 留保の対象であるそれぞれの行為につき、統制委員会に対し、統制委員会が定める方法による見積り(第十九条)及び統計報告(第二十条)を提出すること。

(a) 統制委員会又は事務総長は、1の規定に基づいて留保を行なう締約国が次のいずれかのことを行なわないときは、当該締約国に対し、遅延を指摘した通告を送付し、その通告の受領の後三箇月の期間内に当該年次報告、見積り又は統計報告を提出するよう要請するものとする。

(i) 3(a)に規定する記述を含む年次報告を報告内容に係る年の終了後六箇月以内に提出すること。

(ii) 3(b)の見積りを第十二条1の規定に従つて統制委員会が定める提出期限の後三箇月以内に提出すること。

(iii) 3(b)の統計報告を第二十条2の規定に基づく提出期限の後三箇月以内に提出すること。

(b) 締約国が前記の期間内に統制委員会又は事務総長の要請に従わないときは、1の規定に基づいて行なわれた当該留保は、効力を失うものとする。

5 留保を行なつた国は、いつでも、書面で通告することによつてその留保の全部又は一部を撤回することができる。

第五十条 その他の留保

1 留保は、第四十九条又は2及び3の規定に従つて行なわれるものを除くほか、認められない。

2 いずれの国も、署名、批准又は加入の際に、この条約の次の規定について留保を行なうことができる。

第十二条2及び3、第十三条2、第十四条1及び2、第三十一条1(b)並びに第四十八条

3 締約国となることを希望する国で2又は第四十九条の規定に従つて行なわれる留保以外の留保を認められることを希望するものは、その意向を事務総長に通告することができる。当該留保について事務総長が通知した日の後十二箇月の期間の満了までに、この期間の末日以前にこの条約を批准し又はこれに加入した国の三分の一が異議を申し出ないときは、その留保は、認められたものとする。ただし、留保に対して異議を申し出た国は、留保を行なつた国に対し、この条約に基づく法的義務で当該留保によつて影響を受けるものを負うことを要しないものと了解される。

4 留保を行なつた国は、いつでも、書面で通告することによつてその留保の全部又は一部を撤回することができる。

第五十一条 通告

事務総長は、第四十条1に規定するすべての国に対し、次の事項を通知するものとする。

(a) 第四十条の規定に従つて行なわれる署名、批准及び加入

(b) 第四十一条の規定に従つてこの条約が効力を生ずる日

(c) 第四十六条の規定に従つて行なわれる廃棄

(d) 第四十二条、第四十三条、第四十七条、第四十九条及び第五十条の規定に基づいて行なわれる宣言及び通告

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受け、各自の政府のためにこの条約に署名した。

千九百六十一年三月三十日にニュー・ヨークで本書一通を作成した。この本書は、国際連合に寄託するものとし、その認証謄本は、すべての国際連合加盟国及び第四十条1に規定するその他の国に送付するものとする。

アフガニスタンのために

アブドゥル・H・タビビ

アルバニアのために

アルゼンティンのために

第四十八条2の規定に関する留保 アルゼンティン共和国は、国際司法裁判所の義務的管轄を承認しない。

第四十九条の規定に関する留保 アルゼンティン共和国は、1(c)の「コカ葉の咀嚼そしやく」及び1(e)の「(c)に規定する薬品の(c)に掲げる使用のための取引」についての権利を留保する。

M・アマデオ

千九百六十一年七月三十一日

オーストラリアのために

H・S・ウォーレン

オーストリアのために

ベルギーのために

ワルター・ロリダン

千九百六十一年七月二十八日

ボリヴィアのために

ブラジルのために

政府の承認を条件として

アルイジオ・ゲデス・レジス・ビッテンクール

ブルガリアのために

第十二条2及び3、第十三条2、第十四条1及び2、第三十一条1(b)並びに第四十八条2の規定に関する留保(別紙参照)を附して

A・ゲオルギエフ

千九百六十一年七月三十一日

留保の本文(別紙)

(1) ブルガリア人民共和国政府は、第四十八条2の規定を、決定のために国際司法裁判所に付託されるいかなる紛争についてもそれぞれの場合においてすべての紛争当事国の同意が必要である旨の留保を附して、受諾する。

(2) ブルガリア人民共和国政府は、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約第四十条の規定により同条約の締約国となる機会を奪われた国に関しては、第十二条2及び3、第十三条2、第十四条1及び2並びに第三十一条1(b)の規定の拘束を受けると考えない。

ビルマのために

本官は、この単一条約への本官の署名が、シャン州が次の権利を留保することを許される旨の了解を条件とすることを宣言する。

(1) シャン州における中毒者に対し、この単一条約の効力発生の日から二十年の過渡的期間中、あへんの吸食を許す権利

(2) 前記の使用のためにあへんを生産し及び製造する権利

(3) シャン州政府が千九百六十三年十二月三十一日にあへん消費者の名簿の作成を完了した後にその名簿を提出する権利

ティン・モン

白ロシア・ソヴィエト社会主義共和国のために

第十二条2及び3、第十三条2、第十四条1及び2並びに第三十一条1(b)の規定に関する留保を附して。留保の本文は、別紙のとおりである。

F・グリヤズノフ

千九百六十一年七月三十一日

留保の本文(別紙)

白ロシア・ソヴィエト社会主義共和国政府は、麻薬に関する単一条約第四十条に定める手続により同条約の締約国となる可能性を奪われた国に関しては、同条約第十二条2及び3、第十三条2、第十四条1及び2並びに第三十一条1(b)の規定の拘束を受けると考えない。

カンボディアのために

カンボディアの議会による批准を条件として

ノン・キムニイ

カメルーンのために

カナダのために

R・E・カラン

中央アフリカ共和国のために

セイロンのために

チャードのために

J・シャルロ

批准を条件として

チリのために

D・シュヴァイツァー

批准を条件として

中国のために

魏学仁

コロンビアのために

コンゴー(ブラザヴィル)のために

E・ダデ

コンゴー(レオポルドヴィル)のために

ジェルヴェ・P・バヒジ

千九百六十一年四月二十八日

コスタ・リカのために

G・オルティス・マルティン

キューバのために

サイプラスのために

チェッコスロヴァキアのために

第十二条2及び3、第十三条2、第十四条1及び2並びに第三十一条1(b)の規定に関する留保を附して署名。留保の本文は、別紙のとおりである。

ドクトル ズデネック・チェルニーク

千九百六十一年七月三十一日

留保の本文(別紙)

チェッコスロヴァキア社会主義共和国政府は、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約第四十条に定める手続により同条約の締約国となる可能性を奪われた国に関しては、同条約第十二条2及び3、第十三条2、第十四条1及び2並びに第三十一条1(b)の規定の拘束を受けない。

ダホメのために

ルイ・イグナシオ=ピント

デンマークのために

A・ヘッセルンド・イェンセン

ドミニカ共和国のために

エクアドルのために

エム・サルヴァドルのために

M・ラファエル・ウルキァ

エティオピアのために

ドイツ連邦共和国のために

マラヤ連邦のために

フィンランドのために

ヘンリク・ブロムステット

フランスのために

ガボンのために

ガーナのために

アレックス・サッキイ

政府の承認を条件として

ギリシャのために

グァテマラのために

ギニアのために

ハイティのために

エルネスト・ジャン=ルイ