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○国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針

(平成五年四月十四日)

(厚生省告示第百十七号)

社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)第七十条の二第一項の規定に基づき、国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針を次のように策定したので、同条第四項の規定により告示する。

国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針

近年、高齢化の進展、家族形態・扶養意識の変化、自由時間の増大、生活の質や心の豊かさの重視等を背景として、社会福祉の分野については、ボランティア活動等への関心の高まり、ボランティア登録者数の増加、非営利の民間団体による自発的な福祉活動の急速な進展が見られる。また、最近では、地域とのかかわりの重視等の観点から企業及び労働組合による福祉に関する社会貢献活動が活発化している。

これらの活動には次のような意義があり、国民の参加の促進が必要である。

第一に、活動の担い手にとっては、自己実現への欲求及び地域社会への参加意欲が充足される。また、活動の受け手にとっては、社会参加が促されるとともに公的サービスでは対応し難い多様な福祉需要が充足される。

第二に、社会にとっては、社会連帯や相互扶助の意識に基づき地域社会の様々な構成員が共に支え合い、交流する住みよい福祉のまちづくりが進むとともに、公的サービスとあいまって厚みのある福祉サービスの提供体制が形成される。

第三に、福祉の担い手の養成確保の観点からは、総合的かつ体系的にサービスを提供するために、福祉の専門職から一般のボランティアまで多様かつ重層的な構成をとることが必要であり、また、ボランティア活動の経験は、社会福祉事業に従事する者の業務への理解を高めるとともに、将来福祉の職場に参画する契機ともなり得る。さらに、社会福祉施設におけるボランティア活動を通じて、その介護や育児の技術等が地域に伝達され、住民の介護力等の向上の機会としても役立つ。

今後の明るく活力ある長寿社会を創造し、障害者の自立の促進や、子供が健やかに生まれ育つための環境づくりを図る上で、これらの国民の社会福祉に関する活動の一層の発展が期待されるところであるが、現状においては、これらの活動に対する国民の理解、活動しやすくするためのネットワーク体制等はなお十分なものとはいい難く、活動意欲に沿った基盤整備を進める必要がある。

この指針は、以上のような基本的認識の下に、国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針を定めるものである。

第一 国民の社会福祉に関する活動への参加の促進に当たっての考え方

一 自主性の尊重

ボランティア活動や住民参加による福祉活動等、国民の福祉活動への参加を促進するに当たっては、活動の自主性、自発性及び創造性が最大限に尊重され、その支援策が国民の自己実現や社会参加への意欲に沿い、これらに寄与するよう行われなければならない。

二 公的サービスとの役割分担と連携

高齢化や少子化の進展等の中で必要とされる社会福祉の基礎的需要については、高齢者保健福祉推進十か年戦略等の着実な実施により行政が第一義的に供給するものとし、ボランティア活動等の福祉活動は、これらの公的サービスでは対応し難い福祉需要について柔軟かつ多様なサービスを提供することが期待される。

三 地域福祉の総合的推進

住民生活に密着した地域社会において、住民が自主的な福祉活動を、自由に、かつ、継続的に安定して行うことができるような基盤をつくるとともに、市町村、社会福祉協議会等関係各方面との連携の下に、地域の実情に即して創意工夫することにより、公私の福祉サービスが総合的に提供されるよう努める。

四 皆が支え合う福祉コミュニティーづくり

従来、ボランティア活動は一部の献身的な人が少数の恵まれない人に対して行う一方的な奉仕活動と受けとめられがちであったが、今後はこれにとどまらず、高齢化の進展、ノーマライゼーションの理念の浸透、住民参加型互酬ボランティアの広がり等に伴い、地域社会の様々な構成員が互いに助け合い交流するという広い意味での福祉マインドに基づくコミュニティーづくりを目指す。

第二 国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置

一 福祉活動に対する理解の増進

1 福祉教育・学習

ア 福祉活動への理解を深めるため、幼少期からの福祉活動の体験を通して、福祉マインドや、社会連帯の意識を育むことが重要であり、また、そのような体験は児童の健全育成に極めて有効である。このため、児童・生徒に対するボランティア活動についての啓発普及、社会福祉施設への訪問、体験宿泊活動等を一層推進する。

イ 今後は、これにとどまらず、幼少期から高齢期に至るまで生涯を通じた福祉教育・学習の機会を提供していく必要がある。福祉教育・学習の推進を図るに当たっては、社会福祉事業経営者等はもとより、学校、教育委員会等教育関係者の理解と協力を得る必要がある。

ウ 職場における研修の中で家庭や地域とのかかわり、老後への備え等福祉に対する理解を深めることも必要である。

2 啓発普及

ア ボランティア活動への国民の理解を一層深める契機となるような全国的な大会の開催を推進するなど、全国的規模の啓発普及に努める。

イ また、長寿社会福祉基金を活用し、先駆的モデル的活動についての広報、啓発、情報提供及び調査研究を推進する。

ウ 市町村等においては、各種のモデル事業等を活用し、広報、啓発を集中的に実施する。

エ その他ボランティア月間の設定等創意工夫を生かした取組が必要である。

3 社会的評価

ア 福祉活動への参加を更に促進するには、福祉活動が社会的に十分評価されることが必要であり、今後は国、都道府県及び市町村のみならず、各種民間団体、企業等においても積極的に評価を行い、社会全体で評価のシステムをつくり上げていくことが必要である。

イ このため、現在実施している厚生労働大臣表彰等のほか、積極的な評価策を検討する必要がある。

ウ さらに、採用時等におけるボランティア活動実績の考慮、入学選抜等学校教育におけるボランティア活動に対する評価などの動向を踏まえつつ、社会福祉関係団体等の理解と協力を得ながらボランティア活動の実績に関する情報提供等の方策について検討を進める必要がある。

二 福祉活動の条件整備

ボランティア活動等に取り組みやすいような基盤整備を行うことが、ボランティア活動等を振興する上で最も重要である。社会福祉協議会は、社会福祉法に基づき、福祉活動への住民の参加のための援助を行うこととされていることから、これを中心として社会福祉施設、ボランティアに関する各種民間団体等各方面との連携を図り、誰でも、いつでも、気軽に活動を始めることができ、支援を受けられる体制づくりを進めるため、以下の施策を推進する。

1 養成研修及びボランティア保険の普及

ア ボランティア活動を始めるに当たり必要な、基礎的知識・技術の習得を支援するため、国及び都道府県においてボランティアリーダー等の養成研修を推進する。その際、高齢者、障害者、児童等の特性に応じた研修内容の充実を図るとともに、高齢者等の持つ知識や経験を積極的に生かした取組も必要である。

イ 介護実習普及センターや福祉人材センターの整備、児童館等の積極的活用に努める。

ウ ボランティア活動に安心して取り組めるような保険制度等の普及拡大に努める。

2 ボランティアセンターの整備充実

ア ボランティア活動の拠点となり、広報、啓発、ボランティアの登録及びあっせん、グループの組織化並びに活動の場等の情報の収集及び提供を行うボランティアセンターを国、都道府県及び市町村各段階の社会福祉協議会等に整備するとともに、多角的な福祉活動のネットワークの体系化を推進する。

イ ネットワークの核となり、連絡調整に当たるコーディネーターの配置等機能の充実に努める。

ウ ボランティアセンターは、ボランティア活動に関し、社会福祉施設、学校、非営利民間団体、企業、労働組合等との連携の強化に努める。

3 地域における福祉活動の推進体制の整備とモデル事業の推進

ア 市町村におけるボランティアセンターを中心とした活動を活発化するため、モデル事業を推進する。

イ 福祉関係者はもとより、幅広く学校、企業、自治会等の地域の関係団体の参加を得て協議の場を設け、地域ぐるみでボランティア活動の気運を醸成するとともに、活動の組織化等の基盤づくりを計画的に進める。

ウ 社会福祉協議会が、地域住民や民生委員・児童委員、社会福祉施設、各種民間団体と協力して、福祉活動のネットワークづくりを進め、地域福祉を推進する体制の整備を推進する。

4 社会福祉施設等の受入れ支援体制の整備

ア 社会福祉施設の持つ機能・専門技術を積極的に地域に開放するとともに、地域住民の福祉活動への参加が円滑に行えるように、施設内の地域交流スペースの確保、モデル事業の活用等による施設への地域福祉コーディネーターの配置により、施設内の受入れ及び活動の支援体制の整備に努める。

イ また、児童・生徒のボランティア活動や企業等の社会貢献活動の積極的受入れ等に努めるほか、地域住民の社会福祉施設等への訪問や入所者等との交流が日常的に行われるよう努める。

三 住民参加型福祉サービス供給組織の活動

1 ボランティア意識を基盤とした新しい取組として、福祉公社、消費生活協同組合、農業協同組合及び住民参加の自主的福祉組織による福祉活動が活発化し、また、市区町村社会福祉協議会においても住民参加型の自主的な福祉活動が急速に進展しており、これらは会員制、互酬性及び有償性に特色がある。

2 いずれも、国民が福祉活動に参加する多様な選択肢を提供するものであり、皆参加の福祉社会づくりに欠かせないものとして、これらの活動に対する国民の理解の増進に努める必要がある。

3 その活動が円滑かつ継続的に行えるよう、住民参加型グループの組織化、市町村及び社会福祉協議会の協力による各団体の連携、意識啓発による担い手の確保、活動マニュアル等の開発及び普及、教育研修等の支援に努める。

四 企業及び労働組合の社会貢献活動

1 地域社会に目を向け、社会貢献活動に取り組む企業及び労働組合が増加しており、このような気運を更に高め、条件整備を進めるため行政と民間が共同して各種の調査研究を進める。

2 活動マニュアル及びプログラムの開発及び普及を進める。

3 ボランティアセンター等において、各企業等のニーズに合ったコーディネートや社会参加に関する教育研修及び各種情報提供を行う体制の整備に努める必要がある。

4 従業員の自主的な活動を企業が支援するためのボランティア休暇制度の啓発、活動評価手法の開発普及等の条件整備も必要である。

5 企業等の社会貢献活動として行われる寄付活動を支援するため、寄付金控除等の税制上の措置に加え、企業等の意向に沿った寄付先の紹介、あっせん等を行うシステムについて検討する。

6 顕彰等社会的評価の充実について各方面の理解の増進に努める。

五 地方公共団体における社会福祉に関する活動への参加の促進のための支援

1 住民に最も身近な市町村の対応が特に重要であり、社会福祉協議会の福祉活動専門員の設置、ボランティアセンターの情報の集約及び提供機能の強化、地域福祉センター等の活動拠点の整備等について支援措置が必要である。

2 これらの事業を実施するほか、都道府県及び市町村において、平成三年度より累次の地方財政措置が講じられている地域福祉基金の積極的活用及び昭和六十一年度より寄付金控除等税制上の優遇措置が講じられているボランティア基金の一層の造成に努めるとともに、地域の実情に即し、地域住民の創意工夫と自主性を尊重しつつ、ボランティア団体や住民参加による福祉活動を行う団体等に対し財政上の措置その他の支援措置を講ずるよう努めるものとする。

3 なお、福祉活動への参加の促進のための支援については、都道府県は市町村との連携の強化を図るとともに、保健医療はもとより、教育、商工、労働等の関係施策との連携に努める必要がある。

(平一二厚告二五八・平一二厚告四七〇・一部改正)

改正文(平成一二年一二月二八日厚生省告示第四七〇号) 抄

平成十三年一月六日から適用する。