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○放射性医薬品基準

(平成二十五年三月二十九日)

(厚生労働省告示第八十三号)

薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第四十二条第一項の規定に基づき、放射性医薬品基準を次のように定め、放射性医薬品基準(平成八年厚生省告示第二百四十二号。以下「旧基準」という。)は、廃止する。ただし、旧基準に収められていた医薬品であって現に同法第十四条又は第十九条の二の規定による承認を受けているものの基準については、平成二十六年三月三十一日までは、なお従前の例によることができることとし、旧基準の規定に貯法が定められている当該医薬品の貯法については、なお従前の例による。

放射性医薬品基準

目次

第1 通則

第2 製剤総則

[1]製剤通則

[2]製剤各条

1 液剤

2 ガス剤

3 カプセル剤

4 ジェネレータ剤

5 注射剤

第3 一般試験法

1 物理的試験法

放射線測定法

1.01 ガンマ線測定法

1.02 ベータ線測定法

クロマトグラフィー

1.11 液体クロマトグラフィー

1.12 ガスクロマトグラフィー

1.13 薄層クロマトグラフィー

1.14 ろ紙クロマトグラフィー

分光学的測定法

1.21 原子吸光光度法

1.22 紫外可視吸光度測定法

その他の物理的試験法

1.31 電気泳動法

1.32 pH測定法

2 化学的試験法

2.01 鉄試験法

3 生物学的試験法/微生物学的試験法

3.01 エンドトキシン試験法

3.02 発熱性物質試験法

3.03 無菌試験法

4 製剤試験法

4.01 製剤均一性試験法

4.02 注射剤の採取容量試験法

4.03 注射剤の不溶性異物検査法

4.04 注射剤の不溶性微粒子試験法

4.05 崩壊試験法

4.06 溶出試験法

5 容器試験法

5.01 注射剤用ガラス容器試験法

6 その他

6.01 滅菌法及び無菌操作法

7 試薬・試液、標準液

第4 医薬品各条

1 フルシクロビン(18F)注射液

2 フルデオキシグルコース(18F)注射液

3 フルテメタモル(18F)注射液

4 フロルベタピル(18F)注射液

5 クロム酸ナトリウム(51Cr)注射液

6 クエン酸ガリウム(67Ga)注射液

7 クリプトン(81mKr)ジェネレータ

8 塩化ストロンチウム(89Sr)注射液

9 塩化イットリウム(90Y)溶液

10 エキサメタジムテクネチウム(99mTc)注射液

11 [N,N′―エチレンジ―L―システイネート(3―)]オキソテクネチウム(99mTc),ジエチルエステル注射液

12 過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液

13 過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータ

14 ガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム(99mTc)注射液

15 ジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム(99mTc)注射液

16 ジメルカプトコハク酸テクネチウム(99mTc)注射液

17 テクネチウムスズコロイド(99mTc)注射液

18 テクネチウム大凝集人血清アルブミン(99mTc)注射液

19 テクネチウム人血清アルブミン(99mTc)注射液

20 テトロホスミンテクネチウム(99mTc)注射液

21 人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム(99mTc)注射液

22 ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液

23 N―ピリドキシル―5―メチルトリプトファンテクネチウム(99mTc)注射液

24 ピロリン酸テクネチウム(99mTc)注射液

25 フィチン酸テクネチウム(99mTc)注射液

26 ヘキサキス(2―メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム(99mTc)注射液

27 メチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液

28 メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンテクネチウム(99mTc)注射液

29 インジウム(111In)オキシキノリン液

30 塩化インジウム(111In)注射液

31 塩化インジウム(111In)溶液(イブリツモマブ チウキセタン用)

32 塩化インジウム(111In)溶液(ペンテトレオチド用)

33 ジエチレントリアミン五酢酸インジウム(111In)注射液

34 イオフルパン(123I)注射液

35 イオマゼニル(123I)注射液

36 塩酸N―イソプロピル―4―ヨードアンフェタミン(123I)注射液

37 3―ヨードベンジルグアニジン(123I)注射液

38 ヨウ化ナトリウム(123I)カプセル

39 15―(4―ヨードフェニル)―3(R,S)―メチルペンタデカン酸(123I)注射液

40 3―ヨードベンジルグアニジン(131I)注射液

41 ヨウ化ナトリウム(131I)液

42 ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル

43 ヨウ化人血清アルブミン(131I)注射液

44 ヨウ化ヒプル酸ナトリウム(131I)注射液

45 ヨウ化メチルノルコレステノール(131I)注射液

46 キセノン(133Xe)吸入用ガス

47 ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)注射液

48 塩化タリウム(201Tl)注射液

49 塩化ラジウム(223Ra)注射液

第5 参照赤外吸収スペクトル

第1 通則

1 この放射性医薬品基準は、第4 医薬品各条に規定する放射性医薬品(以下「各条医薬品」という。)について、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「法」という。)第42条第1項の規定によりその製法、性状、品質、貯法等に関する基準を定めたものである。この基準の略名を「放薬基」とする。

2 放薬基で「日本薬局方」及び「生物学的製剤基準」とは、法第41条第1項の規定により定める日本薬局方及び法第42条第1項の規定により定める生物学的製剤基準をいい、「日本産業規格」とは、産業標準化法(昭和24年法律第185号)第11条の規定により定める日本産業規格をいう。

3 放薬基で「基準名」とは、第4 医薬品各条に掲げる名称又はその別名をいい、法第50条の適用については、これを一般的名称とみなす。

4 放薬基の医薬品の適否は、通則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条の規定によって判定する。ただし、医薬品各条の規定中、性状の項は参考に供したもので、適否の判定基準を示すものではない。

5 放薬基の医薬品は、その医薬品名の前後に「 」を付けて示す。ただし、第4 医薬品各条の表題ではこれを付けない。

6 放薬基における主な単位については、次の記号を用いる。

メートル m

センチメートル cm

ミリメートル mm

マイクロメートル μm

ナノメートル nm

キログラム kg

グラム g

ミリグラム mg

マイクログラム μg

ナノグラム ng

ピコグラム pg

セルシウス度 ℃

モル mol

平方センチメートル cm2

リットル L

ミリリットル mL

マイクロリットル μL

メガヘルツ MHz

キロパスカル kPa

ルクス lx

モル毎リットル mol/L

質量百分率 %

質量百万分率 ppm

体積百分率 vol%

質量対容量百分率 w/v%

エンドトキシン単位 EU

ギガベクレル GBq

メガベクレル MBq

キロベクレル kBq

ベクレル Bq

メガ電子ボルト MeV

キロ電子ボルト keV

電子ボルト eV

シーベルト Sv

ミリシーベルト mSv

マイクロシーベルト μSv

7 製造工程のバリデーション並びに適切な工程管理及び品質管理の試験検査に関する記録により、その品質が放薬基に適合することが恒常的に保証される場合には、出荷時の検査等において、必要に応じて各条の規格の一部について試験を省略することができる。

8 放薬基に規定する試験法に代わる方法で、それが規定の方法以上の真度及び精度がある場合には、その方法を用いることができる。ただし、その結果について疑いのある場合は、規定の方法で最終の判定を行う。

9 生物学的な試験法の規定は、試験の本質に影響のない場合に限り、試験方法の細部については変更することができる。

10 試験又は貯蔵に用いる温度は、原則として、具体的な数値を記載することとするが、以下の記述を用いることもできる。

標準温度は20℃、常温は15~25℃、室温は1~30℃、微温は30~40℃とする。冷所は、別に規定するもののほか、1~15℃の場所とする。

冷水は10℃以下、微温湯は30~40℃、温湯は60~70℃、熱湯は約100℃の水とする。

11 「検定日」又は「検定日時」とは、医薬品が表示された放射能を有すべき日又は日時をいう。また、「製造日」又は「製造日時」とは、医薬品が製造された日又は日時をいう。

12 減圧は、別に規定するもののほか、2.0kPa以下とする。

13 医薬品等の試験に用いる水は、試験を妨害する物質を含まない等、試験を行うのに適した水とする。

14 溶質名の次に溶液と記載し、特に溶媒名を示さないものは水溶液を示す。

15 溶液の濃度を(1→3)、(1→10)、(1→100)等で示したものは、固形の薬品は1g、液状の薬品は1mLを溶媒に溶かして全量をそれぞれ3mL、10mL、100mL等とする割合を示す。また、混液を(10:1)又は(5:3:1)等で示したものは、液状薬品の10容量と1容量の混液又は5容量と3容量と1容量の混液等を示す。

16 質量を「精密に量る」とは、量るべき最小位を考慮し、0.1mg、0.01mg又は0.001mgまで量ることを意味し、また、質量を「正確に量る」とは、指示された数値の質量をその桁数まで量ることを意味する。

17 医薬品の試験において、n桁の数値を得るには、通例、(n+1)桁まで数値を求めた後、(n+1)桁目の数値を四捨五入する。

18 医薬品の試験は、別に規定するもののほか常温で行い、操作直後に観察するものとする。ただし、温度の影響があるものの判定は、標準温度における状態を基準とする。

19 医薬品の試験の操作において、「直ちに」とあるのは、通例、前の操作の終了から30秒以内に次の操作を開始することを意味する。

20 性状の項において、白色と記載したものは白色又はほとんど白色を、無色と記載したものは無色又はほとんど無色を示す。また、液状の医薬品の澄明性を試験するには、黒色又は白色の背景を用いるものとする。

21 性状の項において、溶解性を示す用語は次による。溶解性は、別に規定するもののほか、固形の場合は粉末とした後、溶媒中に入れ、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶ける度合をいう。

用語

溶質1g又は1mLを溶かすのに要する溶媒量

極めて溶けやすい

1mL未満

溶けやすい

1mL以上 10mL未満

やや溶けやすい

10mL以上 30mL未満

やや溶けにくい

30mL以上 100mL未満

溶けにくい

100mL以上 1000mL未満

極めて溶けにくい

1000mL以上 10000mL未満

ほとんど溶けない

10000mL以上

22 医薬品の試験において、医薬品が溶媒に溶け又は混和するとは、澄明に溶けるか又は任意の割合で澄明に混和することを示し、繊維等を認めないか又は極めてわずかに認める程度である。

23 確認試験は、医薬品中に含有されている放射性核種を当該放射性核種から放出される放射線の性質に基づいて確認するために、又は医薬品をその特性に基づいて確認するために必要な試験である。

24 純度試験は、医薬品中の混在物を試験するために行うもので、第4 医薬品各条の他の試験項目とともに、医薬品の純度を規定する試験でもあり、通例、その混在物の種類及びその量の限度を規定する。この試験の対象となる混在物は、その医薬品を製造する過程又は保存の間に混在を予想されるもの又は重金属、ヒ素その他の有害な混在物である。混在物のうち、放射化学的異物とは、同一放射性核種を含む異種化合物をいい、異核種とは、放射性の異種核種をいう。また、異物を用い又は加えることが予想される場合については、その試験を行う。

25 定量法は、医薬品の放射能を物理的方法によって測定するか、又は更に医薬品の組成を物理的、化学的方法によって測定し比放射能を算出する試験法である。

26 定量に供する試料の採取量に「約」を付けたものは、記載された量の±10%の範囲をいう。

27 容器とは、医薬品を入れるもので、栓、蓋等も容器の一部である。容器は内容医薬品に規定された性状及び品質に対して影響を与える物理的、化学的作用を及ぼさない。

28 気密容器とは、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、固形又は液状の異物が侵入せず、内容医薬品の損失、風解、潮解又は蒸発を防ぐことができる容器をいう。

気密容器の規定がある場合には、密封容器を用いることができる。

29 密封容器とは、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、気体の侵入しない容器をいう。

30 遮光とは、通常の取扱い、運搬又は保存状態において、内容医薬品に規定された性状及び品質に対して影響を与える光の透過を防ぎ、内容医薬品を光の影響から保護することができることをいう。

31 放射線を遮へいするための容器は、十分な遮へい能力を有するものを用いる。容器の外装は、容易に破損しないものを用いる。容器の外装に係る1センチメートル線量当量率は次のとおりとする。

(1) 容器の外装の表面において2mSv毎時以下

(2) 容器の外装の表面から1m離れた位置において100μSv毎時以下

32 各条医薬品についての法第50条第8号の規定による直接の容器又は直接の被包の記載事項は、次のとおりとする。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第211条第1項各号に掲げる医薬品であって、当該記載事項がその外部の容器又は外部の被包に記載されている場合は、直接の容器又は直接の被包への記載を省略することができる(ただし、(2)を除く)。

(1) 検定日又は検定日時における放射能

(2) 日本産業規格による放射能標識及びその上部に「放射性医薬品」の明らかな文字。ただし、医薬品が次の表に掲げる種類につき、それぞれ同表に定める数量以下又は濃度以下の放射性核種を含む場合には、放射能標識は省略することができる。

第1欄

第2欄

第3欄

放射性核種

数量

(Bq)

濃度

(Bq/g)

18F

1×106

1×101

51Cr

1×107

1×103

67Ga

1×106

1×102

81mKr

1×1010

1×103

81Rb

1×106

1×101

89Sr

1×106

1×103

90Y

1×105

1×103

99Mo

1×106

1×102

99mTc

1×107

1×102

111In

1×106

1×102

123I

1×107

1×102

131I

1×106

1×102

133Xe

1×104

1×103

201Tl

1×106

1×102

備考 第1欄に掲げる放射性核種が2種類以上のものについては、放射性核種のそれぞれの数量の第2欄に掲げる数量に対する割合の和が1となるようなそれらの数量又は放射性核種のそれぞれの濃度の第3欄に掲げる濃度に対する割合の和が1となるようなそれらの濃度とする。

(3) 貯法

(4) 有効期間又は有効期限

(5) 第2 製剤総則又は第4 医薬品各条において表示事項として定められた事項

33 各条医薬品についての法第52条第1項第4号の規定による添付文書等の記載事項は、次のとおりとする。

(1) 日本薬局方に収められていない医薬品については、「放射性医薬品基準」又は「放薬基」の文字及び基準名

(2) 第2 製剤総則又は第4 医薬品各条において添付文書等の記載事項として定められた事項

第2 製剤総則

[1]製剤通則

(1) 製剤通則においては、製剤全般に共通する事項を規定する。

(2) 製剤各条においては、剤形に応じた製剤特性を規定する。製剤特性は、適切な試験により確認する。

(3) 製剤における放射能の規定において、例えば、「検定日又は検定日時において、表示された放射能の90~110%を含む」と規定されたものは、放射能を定量するとき、検定日又は検定日時において、その範囲内にあることを示すものである。

(4) 添加剤は、製剤に含まれる有効成分以外の物質で、有効成分及び製剤の有用性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る又は使用性を向上させる等の目的で用いられる。製剤には、必要に応じて、適切な添加剤を加えることができる。ただし、用いる添加剤はその製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害でなければならない。また、添加剤は有効成分の効果を妨げるものであってはならない。

(5) 製剤の製造等に用いられる精製水は「精製水」及び「精製水(容器入り)」を示し、注射用水は「注射用水」及び「注射用水(容器入り)」を示す。

(6) 製剤の容器・包装は、製剤の品質確保、適正な使用及び投与時の安全確保に適したものとする。

[2]製剤各条

1 液剤

(1) 液剤は、液状の製剤で、ガス剤、カプセル剤、ジェネレータ剤及び注射剤以外のものである。

(2) 本剤を製するには、通例、有効成分をそのまま用いる又は溶剤に溶解する。本剤は、医薬品の性質により、用時溶解して用いる製剤とすることもある。

(3) 本剤に用いる容器は、通例、気密容器とする。

2 ガス剤

(1) ガス剤は、常温で気体であるような物質(以下「ガス」という。)の製剤であり、他の適切なガスで薄められたものを含む。

(2) 本剤を製するには、通例、適切な方法でガスを分離又は精製する。

(3) 本剤に用いる容器は、通例、密封容器とする。

3 カプセル剤

(1) カプセル剤は、カプセルに充填又はカプセル基剤で被包成形した製剤であって、経口投与するものである。

(2) 本剤を製するには、通例、有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和して均質としたもの又は適切な方法で粒状若しくは成形物としたものを、カプセルにそのまま又は軽く成形して充填する。

(3) 本剤は、別に規定するもののほか、製剤均一性試験法に適合する。

(4) 本剤は、別に規定するもののほか、溶出試験法又は崩壊試験法に適合する。

(5) 本剤に用いる容器は、通例、気密容器とする。

4 ジェネレータ剤

(1) ジェネレータ剤は、適切な化学形の親核種又はその化合物を適切な保持体に保持させ、これに子孫核種又はその化合物を溶出させるために必要な装置及び不必要な被ばくを避けるための十分な遮へい装置を合わせたものである。

(2) 本剤を製するには、通例、適切な保持体に親核種又はその化合物を保持させ、必要な装置と合わせる。

5 注射剤

(1) 注射剤は、皮下、筋肉内又は血管等の体内組織・器官に直接投与する、通例、溶液、懸濁液若しくは乳濁液又は用時溶解若しくは用時懸濁して用いる固形の無菌製剤である。

(2) 本剤のうち溶液、懸濁液又は乳濁液の製剤を製するには、通例、次の方法による。

(i) 有効成分をそのまま又は有効成分に添加剤を加えたものを注射用水、他の水性溶剤又は非水性溶剤等に溶解、懸濁又は乳化して均質としたものを注射剤用の容器に充填して密封し、滅菌する。

(ii) 有効成分をそのまま又は有効成分に添加剤を加えたものを注射用水、他の水性溶剤又は非水性溶剤等に溶解、懸濁又は乳化して均質としたものを無菌ろ過するか、無菌的に調製して均質としたものを注射剤用の容器に充填して密封する。

ただし、微生物による汚染に十分に注意し、調製から滅菌に至る操作は、注射剤の組成や貯法を考慮してできるだけ速やかに行う。有効成分の濃度を%で示す場合にはw/v%を意味する。

用時溶解又は用時懸濁して用いる本剤で、その名称に「注射用」の文字を冠するものには、溶解液又は懸濁用液(以下「溶解液等」という。)を添付することができる。また、用時pHを調節して用いる本剤にあっては、適切なpH調節用の液を添付することができる。

(3) 有効成分が溶液中で分解又は失活することを防ぐために、凍結乾燥注射剤として製することができる。

凍結乾燥注射剤は、通例、有効成分をそのまま又は有効成分及び賦形剤等の添加剤を注射用水に溶解し、無菌ろ過し、注射剤用の容器に充填した後に凍結乾燥するか、又は専用容器で凍結乾燥した後に直接の容器に充填して製する。

(4) 薬液調製時若しくは投薬時の過誤、細菌汚染若しくは異物混入の防止又は緊急投与を目的に、充填済シリンジ剤として製することができる。

充填済シリンジ剤は、通例、有効成分をそのまま又は有効成分及び添加剤を用いて溶液、懸濁液又は乳濁液を調製して注射筒に充填して製する。

(5) 本剤を製するに用いる溶剤又は本剤に添付する溶解液等若しくはpH調節用の液は、本剤の使用に際して無害なものでなければならない。また、本剤の効果を妨げるものであってはならない。

水性注射剤の溶剤には、注射用水を用いる。ただし、通例、生理食塩液、リンゲル液その他の適切な水性溶液をこれに代用することができる。

これらの水性注射剤の溶剤は、皮内、皮下及び筋肉内投与のみに用いるものを除き、別に規定するもののほか、エンドトキシン試験法に適合する。

エンドトキシン試験法の適用が困難な場合は、発熱性物質試験法を適用できる。

(6) 本剤には、別に規定するもののほか、着色だけを目的とする物質を加えてはならない。

(7) 本剤で水性溶剤を用いるものは、血液又は体液と等張にするため、塩化ナトリウム又はその他の添加剤を、また、pHを調節するため酸又はアルカリを加えることができる。

(8) 本剤で分割投与するものは、微生物の発育を阻止するに足りる量の適切な保存剤を加えることができる。

(9) 本剤及び添付された溶解液等又はpH調節用の液は、皮内、皮下及び筋肉内投与のみに用いるものを除き、別に規定するもののほか、エンドトキシン試験法に適合する(特に規定するもののほか、150EU/バイアル未満。ただし、脊髄くう内に投与するものにあっては12EU/バイアル未満。)。エンドトキシン試験法の適用が困難な場合は、発熱性物質試験法を適用できる。ただし、別に規定するもののほか、出荷後に放射能の減衰を待って試験を行うことができる。

(10) 本剤及び添付された溶解液等又はpH調節用の液は、別に規定するもののほか、無菌試験法に適合する。ただし、半減期14日以内の核種を含む本剤で、バリデートされた滅菌法又は無菌操作法により製造されているものについては、製造日に開始した無菌試験法の完了以前に出荷することができる。

(11) 本剤の容器は、注射剤用ガラス容器試験法の規定に適合する無色のものを使用する。ただし、別に規定する場合は、注射剤用ガラス容器試験法の規定に適合する着色容器を使用することができる。

(12) 本剤及び添付された溶解液等又はpH調節用の液は、別に規定するもののほか、注射剤の不溶性異物検査法に適合する。

(13) 本剤で用時溶解して用いるもの又はpH調節用の液は、別に規定するもののほか、不溶性微粒子試験法に適合する。

(14) 本剤の薬液の実容量は、別に規定するもののほか、表示量よりやや過量で、表示量を注射するに足りる量である。

(15) 用時、本剤の調製に用いる薬液で、放射性物質を含有しないものは、別に規定するもののほか、注射剤の採取容量試験法に適合する。

(16) 本剤で用時溶解又は用時懸濁して用いるものは、別に規定するもののほか、製剤均一性試験法に適合する。

(17) 通例、懸濁性注射剤は血管内又は脊髄くう内投与に、また、乳濁性注射剤は脊髄くう内投与に用いない。

(18) 懸濁性注射剤中の粒子の最大粒子径は、通例、150μm以下であり、乳濁性注射剤中の粒子の最大粒子径は、通例、7μm以下である。

(19) 本剤は、これに添付する文書又はその容器若しくは被包に、別に規定するもののほか、次の事項を記載する。

(i) 本剤で溶剤の規定のない場合は、本剤を製する溶剤に注射用水若しくは0.9%以下の塩化ナトリウム液又はpHを調節するための酸若しくはアルカリを用いたときを除き、本剤を製する溶剤の名称。

(ii) 本剤に溶解液等又はpH調節用の液を添付するときは、溶解液等又はpH調節用の液の名称、内容量、成分及び分量又は割合。また、その外部容器又は外部被包に溶解液等又はpH調節用の液を添付していること。

(iii) 本剤に安定剤、保存剤又は賦形剤を加えたときは、その名称及びその分量。ただし、容器内の空気を二酸化炭素又は窒素で置換したときを除く。

(20) 本剤で2mL以下のアンプル又はこれと同等の大きさの直接の容器に収められたものについては、その名称中の「注射液」、「注射用」又は「水性懸濁注射液」の文字の記載は「注」、「注用」又は「水懸注」の文字の記載をもって代えることができる。

2mLを超え10mL以下のアンプル又はこれと同等の大きさのガラスその他これに類する材質からなる直接の容器で、その記載がその容器に直接印刷されているものに収められた本剤についても、同様に記載を省略することができる。

(21) 本剤に用いる容器は、密封容器とする。

第3 一般試験法

一般試験法は、共通の試験法、医薬品の品質評価に有用な試験法及びこれに関連する事項をまとめたものである。別に規定するもののほか、液体クロマトグラフィーによる試験、エンドトキシン試験、ガスクロマトグラフィーによる試験、ガンマ線測定、原子吸光光度法による試験、紫外可視吸光度測定、製剤均一性試験、注射剤の採取容量試験、注射剤の不溶性異物検査、注射剤の不溶性微粒子試験、注射剤用ガラス容器試験、鉄試験、電気泳動法による試験、薄層クロマトグラフィーによる試験、発熱性物質試験、pH測定、ベータ線測定、崩壊試験、無菌試験、溶出試験及びろ紙クロマトグラフィーによる試験は、それぞれの試験法により行う。

1 物理的試験法

放射線測定法

1.01 ガンマ線測定法

ガンマ線測定法は、放射性核種が放出する放射線のうちガンマ線又はX線(以下「ガンマ線」という。)を測定する方法である。当該方法には、放射線検出部としてGe半導体検出器、NaI(Tl)シンチレーション検出器及び電離箱による測定法がある。

別に規定するもののほか、Ge半導体検出器による測定法は、核種の確認、異核種の検出又はこれらの定量に用い、電離箱又はNaI(Tl)シンチレーション検出器による測定法は、核種が特定されている場合の放射能又は放射能濃度の定量に用いる。

(1) Ge半導体検出器による測定法

Ge半導体検出器による測定法は、試料から放出されるガンマ線のスペクトルを測定し、全エネルギーピーク(以下「ピーク」という。)のエネルギーとその計数率から、核種の確認、異核種の検出又はこれらの定量を行う。

核種の確認又は異核種の検出を行う場合には、あらかじめエネルギー校正曲線を、定量を行う場合には、ピーク計数効率曲線(以下「計数効率曲線」という。)を作成する。

(i) 装置

Ge半導体検出器、波高分析器、データ処理装置、遮へい体等から構成されるガンマ線スペクトロメータを用いる。

(ii) エネルギー校正曲線の作成

適切なガンマ線エネルギー標準線源を検出器から一定の距離に置き、ガンマ線スペクトルを測定する。スペクトルのピークチャネルと核データから得られるエネルギーとの関係を低エネルギーから高エネルギーにわたって適当な間隔で求め、スペクトロメータのエネルギー校正曲線を作成する。

(iii) 計数効率曲線の作成法

適切なガンマ線標準線源を検出器から一定の距離に置き、ガンマ線スペクトルを測定する。ピーク領域の計数率と標準線源の放射能との比に適切な補正を行って計数効率を算出する。適当なエネルギー範囲にわたって何点かの計数効率を算出し、計数効率曲線を作成する。

計数効率は次の式により求める。

F:ピーク計数効率

N:ピーク領域の正味計数率(s-1)

A:標準線源の放射能(Bq)

R:1壊変当たりのガンマ線放出割合

C:補正係数

なお、標準線源として、試料と同一核種の放射能標準溶液を用いる場合は、計数効率曲線を作成する必要はなく、標準線源と試料の計数率を比較するだけで試料中の放射能を定量することができる。

(iv) 核種の確認及び異核種の検出方法

試料のガンマ線スペクトルを測定し、スペクトル中に認められるピークのエネルギーをエネルギー校正曲線から求め、核種を決定する。放出されるガンマ線が1種類の場合等、得られたガンマ線スペクトルからだけでは核種同定が困難な場合がある。このような場合には、一定時間経過後、再度同一測定条件でガンマ線スペクトルを測定し、ピークエネルギーの計数率の時間的変化から半減期を算出して核種を決定する。

(v) 放射能の定量

放射能を定量するときは、試料溶液を適切な測定容器に入れ、計数効率曲線の作成時と同一の測定条件でガンマ線スペクトルを測定する。着目するガンマ線のピーク領域の計数率を算出し、次の式により試料の放射能を求める。

A:試料中の放射能(Bq)

N:試料溶液のピーク領域の正味計数率(s-1)

F:計数効率曲線から求めたピーク計数効率

R:1壊変当たりのガンマ線放出割合

Cg:補正係数

なお、異核種が混入している場合は、着目するピークへの重なり等の影響がないことを確認する。また、異核種の放射能も同様の方法で求める。

エネルギー校正曲線及び計数効率曲線は一定期間使用できるが、必要に応じて再校正する。

(2) NaI(Tl)シンチレーション検出器による測定法

当該方法による定量は、NaI(Tl)シンチレーション検出器を用いて試料と同一核種の放射能標準溶液から放出されるガンマ線に対する計数効率を求め、同一条件で試料を測定することにより行う。

(i) 装置

NaI(Tl)シンチレーション検出器、光電子増倍管、波高分析器等から構成されるNaI(Tl)シンチレーション計数装置を用いる。

(ii) 計数効率の求め方

標準溶液の一定量を適切な材質、形状の測定容器に採取し、標準線源とする。NaI(Tl)シンチレーション計数装置を用いて適切なエネルギー範囲の計数率を求め、その正味計数率と標準線源の放射能との比から計数効率を算出する。

(iii) 放射能の定量

放射能の定量は、標準線源と同一容量の試料溶液を材質及び形状が同一である測定容器に採取し、NaI(Tl)シンチレーション計数装置を用いて、標準線源による校正時と同じエネルギー範囲の計数率を求め、次の式により放射能を求める。

A:試料中の放射能(Bq)

N:正味計数率(s-1)

F:計数効率

Cg:補正係数

NaI(Tl)シンチレーション計数装置はエネルギー依存性の高いスペクトロメータであり、計数効率校正時のエネルギー範囲と試料測定時の範囲が異なると、計数率に大きな変化を与えることがあるので注意が必要である。また、計数効率が高い条件でカスケードガンマ線を測定するとパルスのサム効果が無視できなくなるので、測定距離を遠ざける等の対応が必要である。

計数効率は、一定期間使用できるが、必要に応じて再校正する。

(3) 電離箱による測定法

当該方法では、電離箱を用いて電離電流又は換算された指示値(以下「電離電流値」という。)を測定する。放射能を定量するときは、目的とする核種ごとに電離電流値を放射能に換算する定数(以下「放射能換算定数」という。)をあらかじめ求めておく。

(i) 装置

電離箱、電流測定器、データ処理装置、遮へい体等から構成される放射線測定装置を用いる。電離箱には、高感度で気温・気圧変動の影響を受けない井戸形の加圧型電離箱(以下「電離箱」という。)を用いる。

(ii) 放射能換算定数の求め方(校正)

測定対象核種と同一核種の放射能標準溶液の一定量を定められた測定容器に採取し、標準線源とする。標準線源を電離箱内の一定の位置に置いて測定し、放射能と電離電流値との比を次の式から算出して放射能換算定数とする。

K=As/Is

K:放射能換算定数(Bq/A)

As:標準線源の放射能(Bq)

Is:正味の電離電流値(A)

算出した放射能換算定数は同一の測定条件に対して一定期間使用できるが、セシウム137等の長半減期核種の同一線源を測定して、放射能換算定数に変化がないことを適宜確認することが望ましい。また、必要に応じて再校正する。

(iii) 異核種が含まれる場合の放射能換算定数の補正

試料に異核種が含まれる場合、得られる電離電流値には、異核種による寄与が付加される。このような場合、試料の一部又は全部をGe半導体検出器で測定して、含まれる異核種の定量を行い、その混入率から、放射能換算定数に対する補正係数を求める。

異核種の寄与も含めた全電離電流値は次の式で表される。

Itotal:異核種の寄与を含めた正味の全電離電流値(A)

A0:目的核種の放射能(Bq)

K0:目的核種に対する放射能換算定数(Bq/A)

A1:異核種1の放射能(Bq)

K1:異核種1に対する放射能換算定数(Bq/A)

A2:異核種2の放射能(Bq)

K2:異核種2に対する放射能換算定数(Bq/A)

放射能換算定数に対する補正係数Hは次の式で表される。

異核種に対する放射能換算定数(Ki、i=1、2、…)は、それぞれの放射能標準線源を用いて求めることが望ましいが、測定器のエネルギー特性から算出する方法でもよい。

これらの方法で異核種に対する放射能換算定数を求めることが困難な場合で、異核種が1種類又は2種類までに限定されているときには次に示す方法から補正係数を求めることができる。

異核種の混入率をパラメータとして、混入率ごとに見かけ上の放射能換算定数(放射能換算定数K×補正係数H)をあらかじめ求めておく。例えば目的核種と異核種との半減期の違いを利用して、同一試料を経時変化させて測定すれば様々な混入率に対する見かけ上の放射能換算定数を得ることができ、校正曲線を作成することができる。実際の試料を測定するときは、Ge半導体検出器で異核種の混入率を求め、作成した校正曲線から目的核種の放射能を算出する。

(iv) 放射能の定量

試料中の放射能を定量するときは、電離箱内の所定の位置に測定試料を置いて電離電流値を測定し、次の式により放射能を求める。

A=K・I・Cg・H

A:試料中の放射能(Bq)

K:放射能換算定数(Bq/A)

I:正味の電離電流値(A)

Cg:試料の測定条件が校正時の測定条件と異なることによる補正係数

H:異核種による補正係数

Cgの主な補正因子は液量及び測定容器の材質、形状である。

1.02 ベータ線測定法

ベータ線測定法は、一般的に純ベータ核種と呼ばれるガンマ線を放出しないでベータ線だけを放出する核種の測定に用いる。当該方法には、液体シンチレーション計数装置及び電離箱による測定法がある。

液体シンチレーション計数装置による測定は、ベータ線測定法として一般的なものであるが、測定可能な放射能の上限が低いため、試料の希釈及び分取を行う必要がある。これに対し、電離箱による測定法は、高エネルギーベータ線で、かつ、放射能が高い場合に有効であり、一般的に放射性医薬品を測定する場合には希釈は必要ない。

(1) 液体シンチレーション計数装置による測定法

液体シンチレーション計数装置は、液体シンチレータに測定試料を添加し、ベータ線とシンチレータとの相互作用によって生じる光を計測するものである。液体シンチレータは有機溶媒と蛍光体を主成分としたものであるが、本定量法では界面活性剤等を加え、測定試料をシンチレータに均質に分散することができる親水性のシンチレータを用いる。このとき、含水量によって相変化が生じるが、通常は、計数率が高く安定なゾルの状態で測定する。

本測定法は、測定する溶液からの分取により測定試料を調製するため、その分取は正確に行う必要がある。また、測定可能な放射能に上限があるため、分取した溶液は、適切に希釈しなければならない。さらに、液体シンチレーション計数装置のベータ線に対する計数効率は、クエンチングと呼ばれる消光効果に依存するため、その補正が必要である。

本測定法には、液体シンチレーション計数装置の一般的な定量法である外部標準法及び効率トレーサ法がある。

(i) 外部標準法

外部標準法は試料に外部から一定のガンマ線を照射して、生じたコンプトン電子スペクトルを測定することにより、クエンチング指標と計数効率の関係を得る測定方法である。

ア 試料調製

クエンチング標準線源

クエンチング校正曲線を作成するためにクエンチングの異なる標準線源を数本調製する。バイアルに親水性のシンチレータの一定量を加えた後、クエンチャ(強制的にクエンチングを起こさせるために添加する物質をいう。)として測定試料と同一の溶媒を、量を変化させて添加し、クエンチング効果の異なる試料を作製する。測定核種と同一核種の標準溶液から一定量正確に分取して、それぞれのバイアルに同一の放射能を滴加する。密栓後、均一に混合し、クエンチング標準線源とする。

測定試料

測定試料は、クエンチングがクエンチング校正曲線の範囲内となるように適量滴加する。また、高計数率によるパイルアップや数え落としがないように、測定試料は適切に希釈したものを用いる。このときの希釈倍率及びバイアルへの滴加液量は正確に測定する。

バックグラウンド試料

バックグラウンド試料は、クエンチング標準線源と同様の手順で、標準溶液の代わりに蒸留水等を用いて試料を作製する。

イ クエンチング校正曲線の作成

クエンチング標準線源を測定して計数率を求める。このとき、計数領域の上限は無限大、下限は電気ノイズの影響を受けない範囲で低レベルに設定する。また、バックグラウンド試料についても同様に測定し、バックグラウンド計数率を求め、正味計数率を算出する。

また、外部線源照射によるコンプトン電子スペクトルの測定も行い、クエンチング指標Qsを求める。一般的な液体シンチレーション計数装置は内部に外部線源を装備し、外部標準法モードを選択すれば自動的に照射される機能を持っているため、試料測定と同時にクエンチング指標も得られる。

正味計数率及びクエンチング標準線源の放射能から、計数効率を次の式によって求める。

εβ=Nn/Ast

εβ:計数効率

Nn:正味計数率(s-1)

Ast:クエンチング標準線源の放射能(Bq)

クエンチング指標Qsiに対する計数効率εβiをグラフにプロットし、クエンチング校正曲線を作成する。

ウ 放射能の定量

試料より得られる計数率を求める。このとき計数領域の上限及び下限の設定は、クエンチング校正曲線作成時の測定条件と同一とする。また、バックグラウンド試料についても同様に測定し、正味計数率(Nns)を求める。このとき、外部線源照射によるコンプトン電子スペクトルの測定も行い、試料に対するクエンチング指標Qssを求める。クエンチング校正曲線から、クエンチング指標Qssにおける計数効率を読み取り、次の式により試料中の放射能を求める。

A=Nns/εβs

A:試料中の放射能(Bq)

Nns:正味計数率(s-1)

εβs:Qssにおける計数効率

一般的な液体シンチレーション計数装置では、クエンチング校正曲線のデータを内蔵メモリに登録することで、一連の解析を自動的に行うことが可能である。しかし、クエンチング校正曲線は機器の安定性に影響されるため、定期的に、あるいは必要に応じて再校正する。

(ii) 効率トレーサ法

効率トレーサ法は、同一条件の下で標準線源と試料を測定し、標準線源の計数効率が100%となる点へ試料に対する計数効率を補外して測定試料の放射能を求める方法である。効率トレーサ法は、クエンチング効果の影響が小さいことや、測定対象核種と同一核種の標準線源を必要としないこと、即ち長半減期核種の標準線源を用いることができるという利点がある。

ア 試料調製

標準線源

効率トレーサ法に用いる標準線源は、クエンチング効果があまり大きくない条件下で100%に近い計数効率が得られる核種であれば良く、必ずしも測定試料と同一のものである必要はない。ただし、標準線源のベータ線エネルギーは測定試料のベータ線エネルギーより高くないことが望ましい。一般的に多くの核種の測定において、炭素14は半減期も長く有効である。

測定試料

測定試料は、高計数率によるパイルアップや数え落としがないように、適切に希釈したものを用いる。希釈率及び滴加量は正確に測定する。また、当該方法においては必ずしも標準線源と同じシンチレータを用いる必要はない。

バックグラウンド試料

バックグラウンド試料は、測定試料とクエンチング効果を同程度にするため、ほぼ同じ液量の蒸留水又は希塩酸溶液を滴加して作製する。

イ 放射能の定量

標準線源のスペクトル測定において、計数領域の上限を無限大として、計数領域の下限のチャネルR1、R2、…を設定し、それぞれのエネルギー範囲における計数率NS1、NS2、…を求める。得られた計数率と標準線源の放射能から、それぞれの計数領域における計数効率ε1、ε2、…を次の式により算出する。

εi:領域Riにおける計数効率

Ast:標準線源の放射能(Bq)

Nsi:領域Riにおける正味計数率(s-1)

測定試料のスペクトルデータにおいて、標準線源測定時と同じ計数領域の下限のチャネルR1、R2、…における、それぞれの範囲の計数率N1、N2、…を求める。算出したεiに対する測定試料の計数率Niをプロットし、最小二乗法によって標準線源の計数効率100%に補外した値が測定試料の放射能となる。

通例、液体シンチレーション計数装置は自動放射能測定機能を装備し、これら一連の手順を自動的に解析可能である。また、標準線源のデータがあらかじめ解析プログラムに記録されている場合はこれも利用可能である。しかし、装置の安定性とともにプログラムの正常動作を確認する意味においても、必要に応じて標準溶液を測定して正常に動作しているかを確認することが望ましい。

(2) 電離箱による定量法

当該方法による定量法は、本来ガンマ線を測定するために設計された電離箱を用いるため、ベータ線測定の場合には、測定対象が最大エネルギー1MeV以上の純ベータ核種で、放射能が数十MBq以上であるときに限り用いることができる。この測定法は試料から放出されるベータ線が線源自身や容器、保持具等の周辺部材及び電離箱壁等との相互作用の結果生じる制動放射線(電磁)を測定する。このため、これらの測定条件は全て校正時と同一又は適切に補正できるものとする。

(i) 放射能換算定数の求め方(校正)

測定対象核種と同一核種の放射能標準溶液の一定量を定められた測定容器に採取し、標準線源とする。標準線源を電離箱内の一定の位置に置いて測定し、放射能と電離電流値との比を次の式から算出して放射能換算定数とする。

K=As/Is

K:放射能換算定数(Bq/A)

As:標準線源の放射能(Bq)

Is:正味の電離電流値(A)

(ii) 放射能の定量

放射能の定量は、標準線源と同一形状の測定試料を同一条件で測定し、次の式から算出する。

A=K・I・C

A:試料中の放射能(Bq)

K:放射能換算定数(Bq/A)

I:正味の電離電流値(A)

C:試料の測定条件が校正時測定条件と違うことによる補正係数

Cの主な補正因子は、液量及び測定容器の材質・形状であるが、電離箱でベータ線を測定する場合、これらの補正因子の影響は非常に大きいため、補正係数は高い精度で求める。

(iii) ガンマ線放出異核種の確認及び補正

本法において定量を行う場合、ガンマ線スペクトロメータを用いて不純物として含まれるガンマ線放出核種の確認を行う。

試料中に異核種が含まれる場合、次の式に従って、得られた全電離電流値から異核種の寄与分を差し引く。

I:目的核種による正味の電離電流値(A)

I0:得られる正味の電離電流値(異核種からの寄与を含む)(A)

Ai:異核種i(i=1、2、…n)の放射能(Bq)

Ki:異核種i(i=1、2、…n)に対する放射能換算定数

ベータ線エネルギーの制動放射線への変換率は一般的に低いため、純ベータ核種に対する電離箱レスポンスは、ガンマ線放出核種のレスポンスに対して非常に小さく、1/100程度となることも少なくない。このため、不純物として含まれるガンマ線放出核種の混入率が低い場合でも、寄与率は相対的に大きくなる。したがって、この補正はガンマ線スペクトロメータによる異核種の測定精度に大きく依存することに注意しなければならない。また、異核種としてガンマ線放出核種の混入率がある程度高くなると(核種にもよるが、1%程度が上限の目安である。)測定精度そのものに影響を与えることになるため、注意を要する。

クロマトグラフィー

1.11 液体クロマトグラフィー

日本薬局方の一般試験法の液体クロマトグラフィーを準用する。

1.12 ガスクロマトグラフィー

日本薬局方の一般試験法のガスクロマトグラフィーを準用する。

1.13 薄層クロマトグラフィー

薄層クロマトグラフィーは、適当な固定相で作られた薄層を用い、混合物を移動相で展開させてそれぞれの成分に分離する方法であり、物質の確認又は純度の試験等に用いる。

薄層板の調製

日本薬局方の一般試験法の薄層クロマトグラフィーの薄層板の調製の項を準用する。

操作法

別に規定するもののほか、次の方法による。

薄層板の下端から約20mmの高さの位置を原線とし、適当量の試料溶液を原線上に点状又は帯状に塗布し、風乾する。担体を必要とする場合には、第4 医薬品各条に規定する担体溶液を薄層板の原線上に塗布し、更に同じ位置に試料溶液を塗布し、風乾する。次に、別に規定するもののほか、あらかじめ展開溶媒を約10mmの深さに入れ、展開用容器を密閉し、常温で約1時間放置し、これに先の薄層板を器壁に触れないように入れ、容器を密閉し、常温で展開を行う。

展開後、薄層板を取り出し、直ちに溶媒の先端の位置に印を付け、風乾した後、第4 医薬品各条に規定のある場合はその方法によって、スポット又はバンドの位置を調べる。放射能を計数する場合には、更に適当なクロマトグラムスキャナを用いて測定した後、ピーク面積を求めるか、薄層を適当な一定の幅にかき取るか又は薄層板を切り離して、適当な計数装置により計数する。Rf値は次の式によって求める。

なお、第4 医薬品各条にスポット又はバンドの位置を確認するための対照物質の規定がある場合には、これらを緩衝液等の適当な溶媒に溶かした液について同様に行う。

Rf=原線からスポット又はバンドの中心までの距離/原線から溶媒先端までの距離

1.14 ろ紙クロマトグラフィー

ろ紙クロマトグラフィーは、ろ紙を用い、混合物を移動相で展開させてそれぞれの成分に分離する方法であり、物質の確認、純度の試験等に用いる。

操作法

別に規定するもののほか、次の方法による。

幅20~30mmの長方形のろ紙の下端から約50mmの高さの位置を原線とし、適当量の試料溶液を原線上に点状又は帯状に塗布し、風乾する。担体を必要とする場合には、第4 医薬品各条に規定する担体溶液をろ紙の原線上に塗布し、更に同じ位置に試料溶液を塗布し、風乾する。次にあらかじめ展開溶媒を入れ、その蒸気で飽和させておいた高さ約500mmの展開用容器に、このろ紙を入れ、器壁に触れないように注意してつるし、下端から約10mmまでを、器底の展開溶媒中に浸し、容器を密閉し、常温で展開を行う。

展開後、ろ紙を容器から取り出し、直ちに溶媒の先端の位置に印を付け、風乾した後、第4 医薬品各条に規定のある場合はその方法によって、スポット又はバンドの位置を調べる。放射能を計数する場合は、更に適当なクロマトグラムスキャナを用いて測定した後、ピーク面積を求めるか、ろ紙を適当な一定の幅に切り離して、適当な計数装置により計数する。Rf値は次の式によって求める。

なお、第4 医薬品各条にスポット又はバンドの位置を確認するための対照物質の規定がある場合には、これらを緩衝液等の適当な溶媒に溶かした液について同様に行う。

Rf=原線からスポット又はバンドの中心までの距離/原線から溶媒先端までの距離

分光学的測定法

1.21 原子吸光光度法

日本薬局方の一般試験法の原子吸光光度法を準用する。

1.22 紫外可視吸光度測定法

日本薬局方の一般試験法の紫外可視吸光度測定法を準用する。

その他の物理的試験法

1.31 電気泳動法

電気泳動法は、適当な緩衝液と支持体を用い、両端に直流電圧を与えることで混合物を移動させてそれぞれの成分に分離する方法であり、物質の確認、純度の試験等に用いる。

操作法

別に規定するもののほか、次の方法による。

電気泳動膜の適当な位置を原線とする。この泳動膜を第4 医薬品各条に規定する緩衝液に浸し、過剰の液を除いた後、適当量の試料溶液を原線上に点状又は帯状に塗布する。

なお、第4 医薬品各条にスポット又はバンドの位置を確認するための対照物質の規定がある場合は、これらを緩衝液等の適当な溶媒に溶かした液について同様に試験を行う。担体を必要とする場合には、第4 医薬品各条に規定する担体溶液を泳動膜の原線上に塗布し、更に同じ位置に試料溶液を塗布する。この泳動膜を適当な支持枠に固定し、泳動膜の両端を等しい長さだけ緩衝液に浸すように支持枠を泳動用容器に入れる。緩衝液容器に白金電極を固定し、直流定電圧発生装置に連結して電気泳動を行う。

泳動後、支持枠を泳動用容器から取り出し、泳動膜を外し、風乾した後、第4 医薬品各条に規定する方法により、スポット又はバンドの位置を調べ、更に放射能を計数する。放射能の計数は、適当なクロマトグラムスキャナを用いて測定した後、ピーク面積を求めるか、泳動膜を適当な一定の幅に切り離して、適当な計数装置により計数する。

1.32 pH測定法

日本薬局方の一般試験法のpH測定法を準用する。

2 化学的試験法

2.01 鉄試験法

日本薬局方の一般試験法の鉄試験法を準用する。