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○感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針

(平成十一年四月一日)

(厚生省告示第百十五号)

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第九条第一項の規定に基づき、感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針を次のように策定したので、同条第五項の規定により告示する。

感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針

明治三十年の伝染病予防法の制定以来百年が経過し、この間、医学・医療の進歩、公衆衛生水準の向上、国民の健康・衛生意識の向上、人権の尊重及び行政の公正性・透明性の確保の要請、国際交流の活発化、航空機による大量輸送の進展等、感染症を取り巻く状況は、大きく変化した。そこで、現代における感染症の脅威と感染症を取り巻く状況の変化を踏まえた施策の再構築が必要となり、平成十年、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「法」という。)を制定した。

同法は制定後も数次にわたる改正を行っているが、感染症を取り巻く状況は日々変遷し、それらに適切に対応する必要がある。また、感染症の発生の予防とまん延の防止、感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の提供、感染症及び病原体等に関する調査並びに研究の推進、医薬品の研究開発、病原体等の検査体制の確立、人材養成、啓発や知識の普及、特定病原体等を適正に取り扱う体制の確保とともに、国と地方公共団体、地方公共団体相互の連携と役割分担を明確にし、海外の国際機関等との連携を通じた国際協力を積極的に進めることにより、感染症対策を総合的に推進する必要がある。

本指針は、感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針であり、本指針、本指針に即して都道府県等(都道府県並びに保健所を設置する市及び特別区(以下「保健所設置市等」という。)をいう。以下同じ。)が策定する予防計画、厚生労働大臣が策定する特定感染症予防指針、地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)に基づき厚生労働大臣が策定する基本指針、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)に基づき都道府県が策定する医療計画並びに新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号。以下「特措法」という。)に基づき都道府県知事が作成する都道府県行動計画及び保健所設置市等の長が作成する市町村行動計画がそれぞれ整合性が取れるように定められ、もって、感染症対策が総合的かつ計画的に推進されることが必要である。

なお、本指針については、施行後の状況変化等に的確に対応する必要があること等から、法第九条第三項に基づき、感染症の予防に関する施策の効果に関する評価及び第九の体制の確保に係る目標を踏まえ、本指針における第五、第六、第十、第十一、第十三、第十五、第十六及び第十八に掲げる事項については少なくとも三年ごとに、第一から第四まで、第七から第九まで、第十二、第十四、第十七及び第十九に掲げる事項については少なくとも六年ごとに、それぞれ再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更していくものである。

第一 感染症の予防の推進の基本的な方向

一 事前対応型行政の構築

感染症対策は、国内外における感染症に関する情報の収集、分析並びに国民及び医師等医療関係者への公表(以下「感染症発生動向調査」という。)を適切に実施するための体制(以下「感染症発生動向調査体制」という。)の整備、本指針、予防計画及び特定感染症予防指針に基づく取組を通じて、普段から感染症の発生及びまん延を防止していくことに重点を置いた事前対応型の行政として取り組んでいくことが重要である。

また、都道府県は、都道府県、保健所設置市等、感染症指定医療機関、診療に関する学識経験者の団体、消防機関その他の関係機関(高齢者施設等の関係団体等を含む。)で構成される都道府県連携協議会を通じ、予防計画等について協議を行うとともに、予防計画に基づく取組状況を毎年報告し、進捗確認を行うことで、平時より感染症の発生及びまん延を防止していくための取組を関係者が一体となってPDCAサイクルに基づく改善を図り、実施状況について検証することが必要である。

二 国民個人個人に対する感染症の予防及び治療に重点を置いた対策

今日、多くの感染症の予防及び治療が可能となってきているため、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報の収集及び分析とその分析の結果並びに感染症の予防及び治療に必要な情報の国民への積極的な公表を進めつつ、国民個人個人における予防及び感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の提供を通じた早期治療の積み重ねによる社会全体の予防を推進していくことが重要である。

三 人権の尊重

1 感染症の予防と患者等の人権の尊重の両立を基本とする観点から、患者の個人の意思や人権を尊重し、一人一人が安心して社会生活を続けながら良質かつ適切な医療を受けられ、入院の措置がとられた場合には早期に社会に復帰できるような環境の整備に努めるべきである。

2 感染症に関する個人情報の保護には十分留意すべきである。また、感染症に対する差別や偏見の解消のため、報道機関に協力を求めることを含め、あらゆる機会を通じて正しい知識の普及啓発に努めるべきである。

四 健康危機管理の観点に立った迅速かつ的確な対応

感染症の発生は、周囲へまん延する可能性があり、国民の健康を守るための健康危機管理の観点に立った迅速かつ的確な対応が求められる。そのため、感染症の発生状況等の的確な把握が不可欠であり、感染症の病原体の検査を含めた総合的な感染症発生動向調査体制の確立に向けて、疫学的視点を重視しつつ、行政機関内の関係部局はもちろんのこと、その他の関係者が適切に連携して迅速かつ的確に対応できる体制の整備を行うとともに、本指針及び予防計画に基づき、また健康危機管理の段階に応じた行動計画等の策定及びその周知を通じ、健康危機管理体制の構築を行うことが必要である。

五 国及び地方公共団体の果たすべき役割

1 国及び地方公共団体は、施策の実施に当たり、地域の特性に配慮しつつ、相互に連携して、感染症の発生の予防及びまん延の防止のための施策を講ずるとともに、正しい知識の普及、情報の収集及び分析並びに公表、研究の推進、人材の養成及び資質の向上並びに確保、迅速かつ正確な検査体制の整備並びに社会福祉等の関連施策との有機的な連携に配慮した医療提供体制の整備等の感染症対策に必要な基盤を整備する責務を負う。この場合、国及び地方公共団体は、感染症の発生の予防及びまん延の防止のための施策に関する国際的動向を踏まえるとともに、感染症の患者等の人権を尊重することが重要である。

2 都道府県連携協議会は、法に基づく予防計画の策定等を通じて、都道府県、保健所設置市等その他の関係者の平時からの意思疎通、情報共有、連携の推進を目的に、各都道府県においてそれぞれの実情に即して設置すること。その上で、予防計画の協議等を行う場でもある都道府県連携協議会で議論する内容は広範に及ぶため、全体を統括する役割と、予防計画の項目等に沿って、各論点ごとに議論する役割に分けることが重要である。

3 予防計画の作成者たる都道府県と、当該都道府県の管内の保健所設置市等は、各々の予防計画に沿って感染症対策を行うが、保健所設置市等においても、基本指針及び都道府県が策定する予防計画に即して予防計画を策定することに鑑み、都道府県連携協議会等を通じて、予防計画を立案する段階から、相互に連携して感染症対策を行う必要がある。

4 都道府県等においては、保健所については地域における感染症対策の中核的機関として、また、地方衛生研究所等(地域保健法第二十六条に規定する業務を行う同法第五条第一項に規定する地方公共団体の機関(当該地方公共団体が当該業務を他の機関に行わせる場合は、当該機関)をいう。以下同じ。)については都道府県等における感染症の技術的かつ専門的な機関として明確に位置付けるとともに、それぞれの役割が十分に果たされるよう、体制整備や人材育成等の取組を計画的に行うことが重要である。また、国において都道府県等が行う取組を支援することが重要である。

5 国は、都道府県の区域を越えた応援職員の派遣の仕組みの整備、応援職員の人材育成支援等を通じて都道府県等の取組を支援する必要がある。また、法第三十六条の二第一項に規定する新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間(以下「新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間」という。)において、危機管理の教育を受けた感染症の専門家や保健師等の派遣、患者の移送等の総合調整を行う必要がある。

6 都道府県は、平時から感染症対応が可能な専門職を含む人材の確保、他の地方公共団体等への人材派遣、国及び他の地方公共団体からの人材の受入れ等に関する体制を構築する必要がある。新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間には、情報集約、地方公共団体間調整、業務の一元化等の対応により、保健所設置市等を支援する必要がある。

7 都道府県等は、複数の都道府県等にわたる広域的な地域に感染症のまん延のおそれがあるときには、近隣の都道府県等や、人及び物資の移動に関して関係の深い都道府県等と相互に協力しながら感染症対策を行う必要がある。また、このような場合に備えるため、国と連携を図りながらこれらの都道府県等との協力体制についてあらかじめ協議をしておくことが望ましい。また、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、迅速に体制を移行し、対策が実行できるよう、医療提供体制、保健所、検査及び宿泊療養の対応能力を構築することが必要である。

8 市町村は、自宅療養者等の療養環境の整備等、都道府県が実施する施策への協力や感染状況等の情報提供、相談対応を通じて住民に身近な立場から感染症の発生及びまん延の防止を図る必要がある。

六 国民の果たすべき役割

国民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めなければならない。また、感染症の患者等について、偏見や差別をもって患者等の人権を損なわないようにしなければならない。

七 医師等の果たすべき役割

1 医師その他の医療関係者は、六に定める国民の果たすべき役割に加え、医療関係者の立場で国及び地方公共団体の施策に協力するとともに、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、患者等に対する適切な説明を行い、その理解の下に良質かつ適切な医療を提供するよう努めなければならない。

2 病院、診療所、病原体等の検査を行っている機関、老人福祉施設等の開設者等は、施設における感染症の発生の予防やまん延の防止のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

3 保険医療機関又は保険薬局は、感染症の入院患者の医療その他必要な医療の実施について、国又は地方公共団体が講ずる措置に協力するものとする。特に公的医療機関等(法第三十六条の二第一項に規定する公的医療機関等をいう。以下同じ。)、地域医療支援病院及び特定機能病院は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症(以下「新興感染症」という。)に係る医療を提供する体制の確保に必要な措置を迅速かつ適確に講ずるため、都道府県知事が通知する医療の提供等の事項について、措置を講じなければならない。

八 獣医師等の果たすべき役割

1 獣医師その他の獣医療関係者は、六に定める国民の果たすべき役割に加え、獣医療関係者の立場で国及び地方公共団体の施策に協力するとともに、感染症の予防に寄与するよう努めなければならない。

2 動物等取扱業者(法第五条の二第二項に規定する者をいう。以下同じ。)は、六に定める国民の果たすべき役割に加え、自らが取り扱う動物及びその死体(以下「動物等」という。)が感染症を人に感染させることがないように、感染症の予防に関する知識及び技術の習得、動物等の適切な管理その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

九 感染症対策における国際協力

感染症は、もはや一つの国で解決できるものではなく、世界各国が互いに協力しながら対策を進めていかなければならない。特に、感染症に関して海外の政府機関、研究機関、世界保健機関等の国際機関等との情報交換や国際的取組への協力を進めるとともに、感染症に関する研究や人材養成の面においても国際的な協力を行う必要がある。

十 予防接種

予防接種は、感染源対策、感染経路対策及び感受性対策からなる感染症予防対策の中で、主として感受性対策を受け持つ重要なものである。そのため、ワクチンの有効性及び安全性の評価を十分に行いながら、ワクチンに関する正しい知識の普及を進め、国民の理解を得つつ、積極的に予防接種を推進していく必要がある。

第二 感染症の発生の予防のための施策に関する事項

一 感染症の発生の予防のための施策に関する考え方

1 感染症の発生の予防のための対策においては、第一の一に定める事前対応型行政の構築を中心として、国及び地方公共団体が具体的な感染症対策を企画、立案、実施及び評価していくことが重要である。

2 感染症の発生の予防のための対策のための日常行われるべき施策は、二に定める感染症発生動向調査がその中心としてなされるものであるが、さらに、平時(患者発生後の対応時(法第四章又は法第五章の規定による措置が必要とされる状態をいう。以下同じ。)以外の状態をいう。以下同じ。)における四に定める食品保健対策、五に定める環境衛生対策、六に定める検疫所における感染症の国内への侵入防止対策等について、関係各機関及び関係団体との連携を図りながら具体的に講ずる必要がある。また、患者発生後の対応時においては、第三に定めるところにより適切に措置を講ずる必要がある。

3 予防接種による予防が可能であり、ワクチンの有効性及び安全性が確認されている感染症については、実施体制の整備等を進め、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)に基づき適切に予防接種が行われることが重要である。また、市町村(特別区を含む。第十一を除き、以下同じ。)は、地域の医師会等と十分な連携を行い、個別接種の推進その他の対象者が接種をより安心して受けられるような環境の整備を地域の実情に応じて行うべきである。さらに、国及び地方公共団体においては、国民が予防接種を受けようと希望する場合、予防接種が受けられる場所、機関等についての情報を積極的に提供していくことが重要である。

二 感染症発生動向調査

1 国及び都道府県等が、感染症発生動向調査を実施することは、感染症の予防のための施策の推進に当たり、最も基本的な事項である。

2 一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の情報収集、分析及び公表について、精度管理を含めて全国的に統一的な体系で進めていくことが不可欠である。国及び都道府県等は、特に現場の医師に対して、感染症発生動向調査の重要性についての理解を求め、医師会等を通じ、その協力を得ながら、適切に進めていくことが必要である。

3 このため、国及び都道府県等においては、法第十二条に規定する届出の義務について、医師会等を通じて周知を行い、病原体の提出を求めるとともに、最新の医学的知見を踏まえた感染症発生動向調査の実施方法の見直しについての検討やデジタル化が進む中での迅速かつ効果的に情報を収集・分析する方策についての検討を推進することが重要である。また、都道府県は、法第十四条第一項及び第十四条の二第一項に規定する指定に当たっては、定量的な感染症の種類ごとの患率等の推定を含めて、感染症の発生の状況及び動向の正確な把握ができるように行うことが重要である。

4 法第十三条の規定による届出を受けた都道府県知事、保健所を設置する市の長及び特別区の長(以下「都道府県知事等」という。)は、当該届出に係る動物又はその死体が感染症を人に感染させることを防止するため、速やかに第三の五に定める積極的疫学調査の実施その他必要な措置を講ずることが重要である。この場合においては、当該都道府県等における保健所、地方衛生研究所、動物等取扱業者の指導を行う機関等が相互に連携することが重要である。

5 一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症の患者並びに新感染症にかかっていると疑われる者については、法に基づき健康診断等の感染症の発生の予防及びまん延の防止並びに患者に対する良質かつ適切な医療の提供が迅速かつ適切に行われる必要があり、また、四類感染症については、病原体に汚染された場合の消毒、ねずみ族の駆除等の感染症の発生の予防及びまん延の防止のための措置が迅速かつ適切に行われる必要があるほか、一部の五類感染症についても、感染の拡大防止のため迅速に対応する必要があることから、医師から都道府県知事等への届出については、適切に行われることが求められる。

6 二類感染症、三類感染症、四類感染症及び五類感染症の疑似症については、感染症の発生の予防及びまん延の防止のための措置が迅速かつ適切に行われる必要があることから、法第十四条に規定する指定届出機関から都道府県知事等への届出が適切に行われることが求められる。また、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の疑似症について、厚生労働大臣が認めたときは、指定届出機関以外の病院又は診療所の医師に対し、都道府県知事等への届出を求めることが可能である。

7 感染症の病原体の迅速かつ正確な特定は、患者への良質かつ適切な医療の提供のために不可欠であるが、さらに、感染症の発生の予防及びまん延の防止のために極めて重要な意義を有している。したがって、国及び都道府県等は、国立感染症研究所及び地方衛生研究所等を中心として、病原体に関する情報が統一的に収集、分析及び公表される体制を構築するとともに、患者に関する情報とともに全国一律の基準及び体系で一元的に機能する感染症発生動向調査体制を構築する必要がある。また、国立感染症研究所及び地方衛生研究所等が必要に応じて医療機関等の協力も得ながら、病原体の収集・分析を行うことが望ましい。

8 新型インフルエンザ等感染症等の新興感染症が発生した場合の健康危機管理体制を有効に機能させるためには、まず、新型インフルエンザウイルス等の出現を迅速かつ的確に把握することが不可欠である。国においては、検疫及び国内での新型インフルエンザウイルス等の監視体制を一層強化するとともに、新型インフルエンザウイルス等の出現が予想される地域を視野に入れた国内外の情報収集体制の整備を図ることが重要である。

9 世界のいずれかの地域において新型インフルエンザウイルス等が出現し、又は流行した場合には、国は、世界保健機関等と連携した上で、感染症に関する早期警戒と対策のためのネットワークである「グローバル感染症警報・対応ネットワーク」を速やかに活用し、情報を収集する。この他、海外の感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報の収集については、国立感染症研究所をはじめとして関係各機関の役割分担の下、積極的に進めていくことが重要である。

三 結核に係る定期の健康診断

1 高齢者、結核発症の危険性が高いとされる幾つかの特定の集団、発症すると二次感染を起こしやすい職業等の定期の健康診断の実施が有効かつ合理的であると認められる者については、重点的な健康診断の実施が重要である。

2 都道府県においては、予防計画の中に、市町村の意見を踏まえ、罹患率等の地域の実情に応じ、定期の健康診断の対象者について定めることが重要である。

四 感染症の予防のための対策と食品保健対策の連携

都道府県等においては、感染症対策部門と食品保健部門の効果的な役割分担と連携が必要である。飲食に起因する感染症である食品媒介感染症の予防に当たっては、食品の検査及び監視を要する業種や給食施設への発生予防指導については、他の食中毒対策と併せて食品保健部門が主体となり、二次感染によるまん延の防止等の情報の公表や指導については感染症対策部門が主体となることが効果的かつ効率的である。

五 感染症の予防のための対策と環境衛生対策の連携

1 平時において、水や空調設備、ねずみ族及び昆虫等を介する感染症の発生の予防対策を講ずるに当たっては、都道府県等においては、感染症を媒介するねずみ族及び昆虫等(以下「感染症媒介昆虫等」という。)の駆除並びに防及び防虫に努めることの必要性等の正しい知識の普及、蚊を介する感染症が流行している海外の地域等に関する情報の提供、カラス等の死亡鳥類の調査、関係業種への指導等について感染症対策部門と環境衛生部門の連携を図ることが重要である。

2 平時における感染症媒介昆虫等の駆除並びに防鼠及び防虫は、感染症対策の観点からも重要である。この場合の駆除並びに防鼠及び防虫については、地域によって実情が異なることから、各市町村が各々の判断で適切に実施するものとする。また、駆除に当たっては、過剰な消毒及び駆除とならないような配慮が必要である。

六 検疫所における感染症の国内への侵入予防対策

検疫所は、国内に常在しない感染症の病原体が船舶又は航空機を介して国内に侵入することを防止するため、検疫法(昭和二十六年法律第二百一号)に基づき次の事務を行う。

1 船舶又は航空機の乗客等について、質問、診察及び検査等を実施することにより検疫感染症の患者の有無を確認する。また、貨物等についても検査及び防疫措置を実施する。

2 感染症の病原体の国内への侵入防止を図るため、入国者等の求めに応じ、検疫感染症及び検疫感染症以外の検疫法施行令(昭和二十六年政令第三百七十七号)で定める感染症に関する診察や病原体の有無に関する検査を行うとともに、出国者に対して、予防接種等の業務を実施する。あわせて、海外における検疫感染症の発生状況等を把握し、必要な情報を提供する。

3 検疫港又は検疫飛行場の一定区域内において、検疫感染症及びこれに準ずる感染症の病原体を媒介するねずみ族及び虫類といった媒介動物等の調査を行い、当該区域内において検疫感染症等が流行し、又は流行するおそれがあると認めるときは、媒介動物等の駆除等を実施するとともに、関係行政機関へ通報する。

4 検疫所長は、医療機関に迅速かつ適確に入院を委託することができる体制を整備するため、必要に応じて、医療機関の管理者と協議し、合意が成立したときは、協定を締結する。当該協定を締結しようとするときは、あらかじめ当該協定に係る医療機関の所在地を管轄する都道府県知事の意見を聴く。また、当該協定を締結したときは、当該協定に係る医療機関の所在地を管轄する都道府県知事に対し、遅滞なく、当該協定の内容を通知する。

七 関係各機関及び関係団体との連携

感染症の予防を効果的かつ効率的に進めていくためには、国や地方公共団体の感染症対策部門、食品保健部門、環境衛生部門等が適切に連携を図っていくことが基本であるが、学校、企業等の関係機関及び団体等とも連携を図ることが重要である。さらに、国と地方公共団体の連携体制、地方公共団体相互の連携体制、行政機関と医師会等の専門職能団体や高齢者施設等関係団体等の関係団体の連携体制を、都道府県連携協議会等を通じて構築しておく必要がある。

さらに、広域での対応に備え、国と地方公共団体の連携強化や都道府県等間の連携強化を図るほか、管内及び管内周辺に検疫所がある都道府県等においては、検疫所との連携体制をあらかじめ構築しておく必要がある。

八 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において、地域の実情に即した感染症の発生の予防のための施策に関する事項を定めるに当たっては、一から七までに定める事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 感染症の発生の予防のための施策の考え方の整理

2 感染症発生動向調査のための体制の構築に関する事項

3 結核に係る定期の健康診断の対象者の選定等の実施に関する事項

4 感染症の発生の予防のための対策と食品保健対策及び環境衛生対策の連携に関する事項

5 感染症の発生の予防のための都道府県等における関係部局の連携や医師会等の専門職能団体や高齢者施設等関係団体等との連携に関する事項

6 都道府県等における保健所及び地方衛生研究所等の体制強化、役割分担及び両者の連携に関する事項

7 保健所間の連携に関する事項

8 検疫所との連携に関する事項

第三 感染症のまん延の防止のための施策に関する事項

一 患者等発生後の対応時の対応に関する考え方

1 感染症のまん延の防止のための対策の実施に当たっては、健康危機管理の観点に立ち、迅速かつ的確に対応することが重要であり、その際には患者等の人権を尊重することが重要である。また、国民個人個人の予防及び良質かつ適切な医療の提供を通じた早期治療の積み重ねによる社会全体の予防の推進を図っていくことが基本である。

2 感染症のまん延の防止のためには、国及び都道府県等が感染症発生動向調査等による情報の公表等を行うことにより、患者等を含めた国民、医療関係者等の理解と協力に基づいて、国民が自ら予防に努め、健康を守る努力を行うことが重要である。

3 都道府県知事は、情報(新興感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報に限る。)の公表に関し、当該情報に関する住民の理解の増進に資するため必要があると認めるときは、市町村長に対し、必要な協力を求めることが重要である。また、当該協力のために必要があると認めるときは、協力を求めた市町村長に対し、個人情報の保護に留意の上、患者数及び患者の居住地域等の情報を提供することができる。

4 対人措置(法第四章に規定する措置をいう。以下同じ。)等一定の行動制限を伴う対策を行うに当たっては、必要最小限のものとするべきであり、仮に措置を行う場合であっても患者等の人権の尊重が必要である。

5 都道府県知事等が対人措置及び対物措置(法第五章に規定する措置をいう。以下同じ。)を行うに当たっては、感染症発生動向調査等により収集された情報を適切に活用する必要がある。

6 事前対応型行政を進める観点から、都道府県等においては、特定の地域に感染症が集団発生した場合における医師会等の専門職能団体や高齢者施設等関係団体等、近隣の地方公共団体との役割分担及び連携体制について、まん延の防止の観点からあらかじめ定めておくことが必要である。

7 複数の都道府県等にまたがるような広域的な感染症のまん延の場合には、国が技術的援助等の役割を積極的に果たすとともに、各都道府県等においても都道府県等相互の連携体制をあらかじめ構築しておくことが必要である。

8 感染症のまん延の防止のため緊急の必要があるときは、必要に応じ、国及び都道府県は、予防接種法第六条に基づく指示を行い、臨時の予防接種が適切に行われるようにする必要がある。

二 検体の採取等、健康診断、就業制限及び入院

1 対人措置を講ずるに当たっては、感染症の発生及びまん延に関する情報を対象となる患者等に提供し、その理解と協力を求めながら行うことを基本とし、人権の尊重の観点から必要最小限のものとするとともに、審査請求に係る教示等の手続及び法第二十条第六項に基づく患者等に対する意見を述べる機会の付与を厳正に行うことが必要である。

2 検体の提出若しくは検体の採取に応じるべきことの勧告又は検体の採取の措置の対象者は、一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者若しくは感染症の患者と接触した者など当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者又は新感染症の所見がある者若しくは新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者とすべきである。

3 国は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において必要があると認めるときは、感染症指定医療機関の管理者等に対し、当該感染症の患者若しくは所見がある者の検体又は当該感染症の病原体の全部又は一部の提出を要請し、例えば、その中で得られた検査結果と、発生届や退院届等の情報を連結解析することにより、重篤性等の当該感染症の特性の分析に資する情報を把握し、感染症指定医療機関等に還元し患者の診療等に活用するとともに、政策に反映することが重要である。

4 健康診断の勧告等については、病原体の感染経路その他の事情を十分に考慮した上で、科学的に当該感染症にかかっていると疑うに足りる理由のある者を対象とすべきである。また、法に基づく健康診断の勧告等以外にも、国及び都道府県等が情報の公表を的確に行うことにより、国民が自発的に健康診断を受けるよう勧奨することも考えられる。

5 就業制限については、その対象者の自覚に基づく自発的な休暇、就業制限の対象以外の業務に一時的に従事すること等により対応することが基本であり、都道府県等は、対象者その他の関係者に対し、このことの周知等を行うことが重要である。

6 入院の勧告等に係る入院においては、医師から患者等に対する十分な説明と同意に基づいた医療の提供が基本である。都道府県等においては、入院後も、法第二十四条の二に基づく処遇についての都道府県知事等に対する苦情の申出や、必要に応じての十分な説明及びカウンセリング(相談)を通じ、患者等の精神的不安の軽減を図るよう要請することが重要である。

都道府県知事等が入院の勧告を行うに際しては、都道府県等の職員から患者等に対して、入院の理由、退院請求、審査請求に関すること等、入院の勧告の通知に記載する事項を含め十分な説明を行うことが重要である。また、入院勧告等を実施した場合にあっては、都道府県等は、講じた措置の内容、提供された医療の内容及び患者の病状について、患者ごとに記録票を作成する等の統一的な把握を行うことが望ましい。

7 入院の勧告等に係る患者等が法第二十二条第三項に基づく退院請求を行った場合には、都道府県知事等は当該患者が病原体を保有しているかどうかの確認を速やかに行うことが重要である。

三 感染症の診査に関する協議会

感染症の診査に関する協議会については、感染症のまん延の防止の観点から、感染症に関する専門的な判断を行うことは当然であるが、患者等への医療及び人権の尊重の視点も必要であることから、都道府県知事等は、協議会の委員の任命に当たっては、この趣旨を十分に考慮することが必要である。

四 消毒その他の措置

消毒、ねずみ族及び昆虫等の駆除、物件に対する措置、建物への立入制限又は封鎖、交通の制限及び遮断等の措置を講ずるに当たっては、都道府県知事等及び都道府県知事の指示を受けた市町村長は、可能な限り関係者の理解を得ながら実施していくよう努めるとともに、これらの措置は、個人の権利に配慮しつつ、必要最小限のものでなければならない。

五 積極的疫学調査

1 法第十五条に規定する感染症の発生の状況、動向及び原因の調査(以下「積極的疫学調査」という。)については、国際交流の進展等に即応し、より一層、その内容を充実させることが求められる。

2 積極的疫学調査については、対象者の協力が得られるようその趣旨をよく説明し、理解を得ることに努めることが重要である。また、一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者については、正当な理由なく応じない場合には、指示、罰則の対象となることを、人権に配慮しあらかじめ丁寧に説明することが求められる。

3 積極的疫学調査は、①一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者が発生し、又は発生した疑いがある場合、②五類感染症の発生の状況に異状が認められる場合、③国内で発生していない感染症であって国外でまん延しているものが発生するおそれがある場合、④動物が人に感染させるおそれがある感染症が発生し、又は発生するおそれがある場合、⑤その他都道府県知事等が必要と認める場合に的確に行うことが重要である。この場合においては、保健所、地方衛生研究所、動物等取扱業者の指導を行う機関等と密接な連携を図ることにより、地域における流行状況の把握並びに感染源及び感染経路の究明を迅速に進めていくことが重要である。

4 都道府県知事等が積極的疫学調査を実施する場合にあっては、必要に応じて国立感染症研究所、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、他の都道府県等の地方衛生研究所等の協力を求め、それを得ながら実施していくことが重要であり、協力の求めがあった場合は、国や関係する地方公共団体は必要な支援を積極的にしていくことが必要である。

5 緊急時において、国が積極的疫学調査を実施する場合には、調査を行う地域の実情を把握している都道府県等と連携を取りながら必要な情報の収集を行っていくことが重要である。

六 指定感染症の指定

国は、指定感染症について、その有する感染力や重篤性等を勘案して、健康危機管理の観点から緊急避難的に法に規定する措置の全部又は一部を発動できるものとしたという趣旨を踏まえ、指定すべきと判断するに至った根拠を明示して厚生科学審議会の意見を聴くとともに、意思決定の過程の透明化を図らなければならない。また、当該感染症にかかった場合の病状が重篤であり、かつ、全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものと認めたときは、速やかに、その旨や必要な情報を公表する。

七 新感染症への対応

1 新感染症は、感染力や罹患した場合の重篤性が極めて高い一類感染症と同様の危険性を有する一方、病原体が不明であるという特徴を有するものである。

2 新感染症に関し、都道府県知事等に対し法第五十一条第二項に規定する技術的指導及び助言を行うとき、法第五十一条の二第一項に規定する指示を行うとき又は法第五十三条に規定する指定を行うときは、国はこれをすべきとの判断に至った根拠を明示して厚生科学審議会の意見を聴くとともに、それらの意思決定の過程の透明化を図らなければならない。また、新感染症と疑われる症例が報告された場合には、国は、感染症その他の関連分野の専門家からなるチームを構成して、調査を実施する等の積極的な役割を果たすことが求められる。

八 感染症のまん延の防止のための対策と食品保健対策の連携

1 食品媒介感染症が疑われる疾患が発生した場合には、都道府県等においては、保健所長等の指揮の下、食品保健部門にあっては主として病原体の検査等を行うとともに、感染症対策部門にあっては患者に関する情報を収集するといったような役割分担により、相互に連携を図りながら、迅速な原因究明を行うことが重要である。

2 病原体、原因食品、感染経路等が判明した場合には、都道府県等の食品保健部門にあっては一次感染を防止するため、原因物質に汚染された食品等の販売禁止、営業停止等の行政処分を行うとともに、また、感染症対策部門にあっては必要に応じ、消毒等を行う。

3 二次感染による感染症のまん延の防止については、感染症対策部門において感染症に関する情報の公表の他必要な措置をとる等により、その防止を図る必要がある。

4 原因となった食品等の究明に当たっては、保健所等は、地方衛生研究所、国立試験研究機関等との連携を図ることが重要である。

九 感染症のまん延の防止のための対策と環境衛生対策の連携

水や空調設備、ねずみ族及び昆虫等を介した感染症のまん延の防止のための対策を講ずるに当たっては、都道府県等の感染症対策部門にあっては、環境衛生部門との連携が重要である。

十 患者等発生後の対応時における検疫所の対応

水際対策は、国内体制を整備するまでの時間を確保するための措置でもあることを踏まえ、国内に常在しない感染症の患者等が発生した場合においては、検疫所は、当該感染症に対して次の措置を実施する。

1 船舶又は航空機の乗客等について実施した質問、診察及び検査等の結果により検疫感染症(検疫法第二条第二号に掲げる感染症を除く。2において同じ。)の患者及び新感染症の所見がある者を発見した際には、必要な限度において、感染症指定医療機関等に患者等を移送し、隔離又は停留の措置を実施する。検疫所による隔離又は停留の措置を実施する場合には、当該措置に係る調整が円滑に行われるよう、検疫所及び関係機関が相互に緊密な連携を図る。

2 検疫感染症及び新感染症の病原体に感染したおそれのある者で停留されないものに対し、必要に応じて、当該感染症の潜伏期間を考慮した一定期間、当該者の健康状態についての報告を求め、健康状態の異状についての有無を確認する。

3 隔離又は停留等を行うに当たっては、関係者との連携を図りながら、必要な療養施設等を確保する。

なお、検疫手続の対象となる入国者について、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の病原体の保有が明らかになった場合又は2により入国者の健康状態の異状を確認した場合には、関係都道府県等への通知により、国内の感染症対策との連携を図る。

十一 関係各機関及び関係団体との連携

感染症のまん延の防止のためには、特に感染症の集団発生や原因不明の感染症が発生した場合に対応できるよう、国と地方公共団体、地方公共団体相互間の連携体制及び行政機関と医師会等の医療関係団体並びに国や都道府県等における関係部局の連携体制を構築しておくことが重要である。

十二 予防計画を策定するに当たっての留意点

各都道府県の予防計画において、地域の事情に即した感染症のまん延の防止のための施策に関する事項を定めるに当たっては、一から十一までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。このほか、感染症のまん延の防止の観点からの感染症対策と食品保健対策や環境衛生対策の役割分担と連携や医師会等の医療関係団体等との連携についても、各都道府県の実情を踏まえた上で規定することが望ましい。

1 対人措置及び対物措置を実施する際の留意点や関係各機関の連携に関する事項

2 積極的疫学調査のための体制の構築

3 新感染症の発生時の対応に関する事項

第四 感染症及び病原体等に関する情報の収集、調査及び研究に関する事項

一 感染症及び病原体等に関する情報の収集、調査及び研究に関する基本的な考え方

感染症対策は、科学的な知見に基づいて推進されるべきものであることから、感染症及び病原体等に関する調査及び研究は、感染症対策の基本となるべきものである。このため、国としても、必要な情報基盤の整備、調査及び研究の方向性の提示、海外の研究機関等も含めた関係機関との連携の確保、調査及び研究に携わる人材の育成等の取組を通じて、調査及び研究を積極的に推進することが必要である。

二 国における感染症及び病原体等に関する情報の収集、調査及び研究の推進

1 国立感染症研究所、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立保健医療科学院、検疫所、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、大学研究機関、地方衛生研究所等、感染症指定医療機関等が相互に連携を図りつつ、感染症及び病原体等に関する調査及び研究を積極的に進めていくことが必要である。

2 国は、諸外国のデータ等も含めた感染症及び病原体に関する情報収集、分析疫学研究、全国規模の調査や高度な検査技術等を必要とする研究、感染経路や宿主動物に関する調査、病原体等を迅速かつ簡便に検出する検査法の開発のための研究、保健衛生情報が社会に与える影響の人間行動学的な手法による実証的な研究等の感染症対策に直接結びつく応用研究をこれまで以上に推進する必要がある。このため、国立感染症研究所、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、大学研究機関、地方衛生研究所等のこの分野における機能を強化する必要がある。また、国は、海外及び民間との積極的な連携や地方公共団体における調査及び研究の支援を進めることが重要である。

3 医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、国は、感染症の情報を迅速に収集し共有する観点から全国的な感染症発生動向調査の情報基盤を整備し、都道府県は、国又は他の都道府県に対する発生届及び積極的疫学調査に関する情報の報告等を電磁的方法により行うことが重要である。また、新興感染症に係る入院患者の重症度等を効率的に把握する基盤を整備するとともに、新興感染症データバンク事業による病原体情報の収集や、国が収集した様々な情報の連結をした上での重症度等の感染症情報に関する調査・分析、都道府県等の本庁や保健所、大学その他研究機関等への情報提供を迅速に実施することが重要である。

4 海外において国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると考えられる感染症が発生した場合等は、必要に応じて我が国からも専門家を派遣し、世界保健機関、米国疾病管理センター等と連携を図りながら対処を進めるとともに、当該感染症について情報の収集、調査研究を進めることが必要である。

5 国立感染症研究所及び国立研究開発法人国立国際医療研究センターは、研究協力機関(調査又は研究が特に必要と認められる感染症及び病原体等について、地方衛生研究所、大学研究機関等のうち共同して研究等を行うものとして適当と認めるものをいう。)との共同研究、積極的疫学調査の共同実施等を行うものとする。また、緊急に対応が必要となる新感染症の出現時や感染症の大量発生時、新たな薬剤耐性菌の出現時等において、これらのつながりを通じて感染症及び病原体等に関する調査及び研究を推進していく体制を構築していくことが重要である。

三 地方公共団体における情報の収集、調査及び研究の推進

1 都道府県等における情報の収集、調査及び研究の推進に当たっては、地域における感染症対策の中核的機関である保健所及び都道府県等における感染症及び病原体等の技術的かつ専門的な機関である地方衛生研究所等が都道府県等の関係主管部局と連携を図りつつ、計画的に取り組むことが重要である。

2 保健所においては、地域における感染症対策の中核的機関との位置付けから、感染症対策に必要な情報の収集、疫学的な調査及び研究を地方衛生研究所等との連携の下に進め、地域における総合的な感染症の情報の発信拠点としての役割を果たしていくことが重要である。

3 地方衛生研究所等においては、都道府県等における感染症及び病原体等の技術的かつ専門的な機関として、国立感染症研究所や他の地方衛生研究所等、検疫所、都道府県等の関係部局及び保健所との連携の下に、感染症及び病原体等の調査、研究、試験検査並びに感染症及び病原体等に関する情報等の収集、分析及び公表の業務を通じて感染症対策に重要な役割を果たしていくこととする。

4 地方公共団体における調査及び研究については、例えば、その地域に特徴的な感染症の発生の動向やその対策等の地域の環境や当該感染症の特性等に応じた取組が重要であり、その取組に当たっては、疫学的な知識及び感染症対策の経験を有する職員の活用が特に求められる。

5 感染症の発生届及び積極的疫学調査に関する情報を迅速かつ効率的に収集し、感染症対策の推進に活かしていくための仕組みとして、厚生労働省令で定める感染症指定医療機関の医師が都道府県に対して届出等を行う場合には、電磁的方法によることが必要である。また、収集した様々な情報について個人を特定しないようにした上で、連結して分析することも重要である。

6 感染症指定医療機関は、新興感染症の対応を行い、知見の収集及び分析を行う。

7 厚生労働省令で定める感染症指定医療機関の医師は、新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者が入院した場合や、当該患者又は所見がある者が退院又は死亡した場合にも電磁的方法で報告することが求められる。

四 関係各機関及び関係団体との連携

感染症及び病原体等に関する調査及び研究に当たっては、関係各機関及び関係団体が適切な役割分担を行うことが重要である。このため、国立感染症研究所、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、大学研究機関、地方衛生研究所等をはじめとする関係研究機関等は、相互に十分な連携を図ることが必要である。

五 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において感染症及び病原体等に関する研究の推進に関する事項を定めるに当たっては、一から四までの事項を踏まえるとともに、それぞれの地域の実情に応じた感染症の発生動向をはじめとして、地域の環境や当該地域に多い感染症の特性に応じた調査及び研究の推進の方向性について規定することが望ましい。

第五 病原体等の検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項

一 病原体等の検査の実施体制及び検査能力の向上に関する基本的な考え方

1 感染症対策において、病原体等の検査の実施体制及び検査能力(以下「病原体等の検査体制等」という。)を十分に有することは、人権の尊重の観点や感染の拡大防止の観点から極めて重要である。

2 地方衛生研究所等をはじめとする各検査機関における病原体等の検査体制等について、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成十年厚生省令第九十九号)に基づき整備し、管理することが重要である。このほか、国及び都道府県等は、感染症指定医療機関のみならず、一般の医療機関における検査、民間の検査機関等における検査等に対し技術支援や精度管理等を実施することが重要である。

3 新興感染症のまん延が想定される感染症が発生した際に、検査が流行初期の段階から円滑に実施されるよう、都道府県連携協議会等を活用し、関係者や関係機関と協議の上、平時から計画的な準備を行うことが重要である。また、併せて民間の検査機関等との連携を推進することが重要である。

二 国における病原体等の検査の推進

国においては、国内では発生がまれな感染症の病原体等の同定検査や病原体等のより詳細な解析等の役割を担うことが必要である。このため、病原体等安全管理基準のレベル4(バイオセーフティーレベル4)に対応する施設として整備した国立感染症研究所村山庁舎における十分な体制の構築等を図る必要がある。

国立感染症研究所は、一類感染症の病原体等に関する検査について、その有する病原体等の検査能力に応じて、平時から国際的な精度基準で検証するなど適確かつ迅速に実施することが重要である。

国は、国立試験研究機関等において、全国的規模で行うことが適当である又は高度の専門性が要求される調査及び研究を推進するとともに、国立試験研究機関と地方衛生研究所等との連携体制を構築すること等により、地方衛生研究所等に対する技術的支援を行うこと。

新興感染症の病原体等については、国立感染症研究所が検査法の迅速な開発等に努めるとともに、地方衛生研究所等が国立感染症研究所と連携して、人体から検出される病原体や、水、環境又は動物からの病原体の検出が可能となるよう、人材の養成及び必要な資器材の整備を行うよう努める。また、国は検査試薬の確保に努める。

三 都道府県等における病原体等の検査の推進

1 都道府県等は、広域にわたり又は大規模に感染症が発生し、又はまん延した場合を想定し、都道府県連携協議会等を活用し、地方衛生研究所等や保健所における病原体等の検査に係る役割分担を明確にした上で、それぞれの連携を図ること。また、必要な対応について、保健所設置市等とも連携しながら、あらかじめ近隣の都道府県等との協力体制について協議しておくことが望ましい。

2 地方衛生研究所等を有する都道府県等は、地方衛生研究所等が十分な試験検査機能を発揮できるよう、計画的な人員の確保や配置を行う等、平時から体制整備を行うことが重要である。地方衛生研究所等を有していない都道府県等は、地方衛生研究所等を有する都道府県等との連携を確保すること等により試験検査に必要な対応を行うことが重要である。

3 地方衛生研究所等は、新興感染症の発生初期において検査を担うことを想定し、平時からの研修や実践的な訓練の実施、検査機器等の設備の整備、検査試薬等の物品の確保等を通じ、自らの試験検査機能の向上に努めるとともに、地域の検査機関の資質の向上と精度管理に向けて、積極的な情報の収集及び提供や技術的指導を行い、質の向上を図ることが重要である。また、国立感染症研究所の検査手法を活用して地方衛生研究所等が検査実務を行うほか、保健所や他の都道府県等の地方衛生研究所等と連携して、迅速かつ適確に検査を実施することが重要である。

4 都道府県等は、新興感染症のまん延時に備え、検査体制を速やかに整備できるよう、都道府県知事等と民間検査機関又は医療機関との検査等措置協定等により、平時から計画的に準備を行う必要がある。

四 国及び都道府県等における総合的な病原体等の検査情報の収集、分析及び公表のための体制の構築

感染症の病原体等に関する情報の収集、分析及び公表は、患者に関する情報とともに、感染症発生動向調査の言わば車の両輪として位置付けられるものである。国及び都道府県等においては、病原体等に関する情報の収集のための体制を構築するとともに、患者情報と病原体情報が迅速かつ総合的に分析され、公表できるようにしていくことが重要である。

五 関係機関及び関係団体との連携

国及び都道府県等においては、病原体等の情報の収集に当たって、国及び都道府県等が医師会等の医療関係団体、民間検査機関等と連携を図りながら進めることが重要である。また、特別な技術が必要とされる検査については、国立感染症研究所、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、大学の研究機関、地方衛生研究所等が相互に連携を図って実施していくことが求められる。

六 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において病原体等の検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項を定めるに当たっては、一から五までの事項を踏まえるとともに、地域の実情に応じ検査の実施体制・検査能力向上の方向性を規定することが望ましい。

第六 感染症に係る医療を提供する体制の確保に関する事項

一 感染症に係る医療提供の考え方

1 近年の医学・医療の著しい進歩により、多くの感染症について治癒やコントロールが可能となった現在においては、感染症の患者に対して早期に良質かつ適切な医療を提供し、重症化を防ぐとともに、感染症の病原体の感染力を減弱し、かつ、消失させることにより周囲への感染症のまん延を防止することが施策の基本である。

2 実際の医療現場においては、感染症に係る医療は特殊なものではなく、まん延防止を担保しながら一般の医療の延長線上で行われるべきであるとの認識の下、良質かつ適切な医療の提供が行われるべきである。このため、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関及び第一種協定指定医療機関等においては、①感染症の患者に対しては、感染症のまん延の防止のための措置をとった上で、できる限り感染症以外の患者と同様の療養環境において医療を提供すること、②通信の自由が実効的に担保されるよう必要な措置を講ずること、③患者がいたずらに不安に陥らないように、十分な説明及びカウンセリング(相談)を患者の心身の状況を踏まえつつ行うこと等が重要である。また、結核指定医療機関においては、患者に薬物療法を含めた治療の必要性について十分に説明し、理解及び同意を得て治療を行うことが重要である。

3 特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関、第一種協定指定医療機関、第二種協定指定医療機関及び結核指定医療機関は、その機能に応じて、それぞれの役割を果たすとともに、相互の連携体制や、国立感染症研究所及び国立研究開発法人国立国際医療研究センターとの連携体制を構築していく必要がある。

4 都道府県は、新興感染症が発生した際に、速やかに外来診療、入院、自宅療養者等への医療等が提供できるよう、都道府県医療審議会や都道府県連携協議会等を活用し、関係者や関係機関と協議の上、平時から計画的な準備を行うことが重要である。その際、主に当該感染症に対応する医療機関等と当該感染症以外に対応する医療機関等の役割分担が図られるよう調整しておくことが重要である。

二 国における感染症に係る医療を提供する体制

1 厚生労働大臣は、新感染症の所見がある者並びに一類感染症、二類感染症及び新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として、総合的な診療機能とともに集中治療室又はこれに準ずる設備を有する病院について、その開設者の同意を得て、当該病院の所在地を管轄する都道府県知事と協議した上で、特定感染症指定医療機関を指定することとする。

2 厚生労働大臣は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に、全国的な新興感染症の発生の状況及び動向その他の事情等を総合的に勘案し、特に必要があると認めるときは、感染症医療担当従事者又は感染症予防等業務関係者(以下「感染症医療担当従事者等」という。)の広域的な応援の調整を行うものとする。さらに、特に緊急の必要があると認めるときは、公的医療機関等の医療機関に直接、感染症医療担当従事者等の応援を求めることができ、必要な調整を行うものとする。法第四十四条の四の二第四項から第六項まで(これらの規定を法第四十四条の八において準用する場合を含む。)又は法第五十一条の二第四項から第六項までの規定に基づく厚生労働大臣による医療人材の応援を調整する場合の方針については、まずは都道府県同士で応援を調整することを優先しつつ、全国的な感染症の発生の状況及び動向その他の事情等を総合的に勘案し特に必要があると認めるときに行うこととする。特に、公的医療機関等その他厚生労働省令で定める医療機関に対し応援を求める場合については、広域的な人材の確保に係る応援について特に緊急の必要があると認めるときに行うものとする。

3 新型インフルエンザ等感染症などの感染症の汎流行時に、その予防又は治療に必要な医薬品の供給及び流通を適確に行うため、医薬品の備蓄又は確保に努める。また、国は、医薬品の備蓄や適正な使用方法等に関する計画をあらかじめ策定し、関係者の理解を得ておく必要がある。

4 国内において発生数が極めて少ない感染症の治療に必要な医薬品の確保を十分にすることができるよう、特に、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関等において、これらの希少感染症に対する医薬品を必要に応じて直ちに使用することができるよう、国は、十分に配慮することが必要である。

三 都道府県における感染症に係る医療を提供する体制

1 都道府県知事は、主として一類感染症の患者の入院を担当させ、これと併せて二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として、総合的な診療機能を有する病院のうち、法第三十八条第二項に規定する厚生労働大臣の定める基準に適合するものについて、その開設者の同意を得て、第一種感染症指定医療機関を、原則として都道府県に一箇所指定する。この場合において、当該指定に係る病床は、原則として二床とすることとする。ただし、地理的条件、社会的条件、交通事情等に照らし、一つの病院に複数の都道府県の区域内の一類感染症、二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させることが効率的であると認められるときは、病院の所在地を管轄する都道府県知事は、当該指定に係る病床が一都道府県当たり二床以上となる限りにおいて、当該病院について、当該複数の都道府県の区域内の一類感染症、二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる第一種感染症指定医療機関として指定することができる。

2 都道府県知事は、二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として、総合的な診療機能を有する病院のうち、法第三十八条第二項に規定する厚生労働大臣の定める基準に適合するものについて、その開設者の同意を得て、第二種感染症指定医療機関に指定することとする。

3 第二種感染症指定医療機関を、管内の二次医療圏(医療法第三十条の四第二項第十四号に規定する区域をいう。以下同じ。)ごとに原則として一箇所指定し、当該指定に係る病床の数は、当該二次医療圏の人口を勘案して必要と認める数とする。ただし、地理的条件、社会的条件、交通事情等に照らし、一つの病院に複数の二次医療圏の区域内の二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させることが効率的であると認められるときは、当該指定に係る病床が当該複数の二次医療圏の区域内の人口を勘案して必要と認める病床数の総和以上となる限りにおいて、当該病院について、当該複数の二次医療圏の区域内の二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる第二種感染症指定医療機関として指定することができる。

4 一類感染症又は二類感染症が集団発生した場合や新型インフルエンザ等感染症の汎流行時には、一般の医療機関に緊急避難的にこれらの患者を入院させることがあるため、都道府県等においては、そのために必要な対応についてあらかじめ定めておくことが重要である。特に、全国的かつ急速なまん延が想定される新興感染症については、入院患者数及び外来受診者の急増が想定されることから、平時から、法に基づき締結する医療措置協定等により、当該感染症の患者の入院体制及び外来体制や、当該感染症の後方支援体制を迅速に確保できるようにしておくことが適当である。

5 都道府県は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に新興感染症の入院を担当する医療機関と平時に医療措置協定を締結し、第一種協定指定医療機関に指定する。

6 都道府県は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に新興感染症の発熱外来、自宅療養者等への医療の提供を担当する医療機関、薬局等と平時に医療措置協定を締結し、第二種協定指定医療機関に指定する。

7 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間前においては、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関の感染症病床を中心に対応する。都道府県は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に5又は6の医療機関に代わって患者を受け入れる医療機関又は感染症医療担当従事者等を派遣する医療機関と平時に医療措置協定を締結するとともに、回復した患者の退院先となる介護老人保健施設等の高齢者施設等とも連携した上で、後方支援体制を整備する。また、医療人材の応援体制を整備するとともに、法第四十四条の四の二第一項から第三項まで(これらの規定を法第四十四条の八において準用する場合を含む。)又は法第五十一条の二第一項から第三項までの規定に基づく都道府県の区域を越えた医療人材の応援を要請する場合の方針について、平時から確認しておくことが重要である。

8 新興感染症が発生した際に、流行初期の段階から入院・発熱外来対応を行う旨の医療措置協定を締結し、実際に対応した医療機関については、流行初期医療確保措置の対象となる。

9 新興感染症の発生及びまん延に備え、5から7までの医療措置協定を締結するに当たっては、新型コロナウイルス感染症(COVID―19をいう。以下同じ。)における医療提供体制を参考とし、各都道府県単位で必要な医療提供体制を確保することを基本としつつ、重症者用の病床の確保も行うとともに、各地域の実情に応じて、特に配慮が必要な患者(精神疾患を有する患者、妊産婦、小児、透析患者、障害者児、高齢者、認知症である者、がん患者、外国人等)、感染症以外の患者への対応を含めて切れ目のない医療提供体制の整備を図ることが重要である。

10 公的医療機関等、特定機能病院及び地域医療支援病院については、各地域におけるその機能や役割を踏まえ、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に新興感染症に係る医療を提供する体制の確保に必要な措置を講ずることを義務付ける。

11 6の第二種協定指定医療機関のうち、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に、高齢者施設等の療養者に対し、新興感染症に係る医療の提供を行う医療機関、薬局等と平時に医療措置協定を締結し、特に高齢者施設等に対する医療支援体制を確認する。

12 新興感染症の汎流行時に、地域におけるその予防又は治療に必要な医薬品等の供給及び流通を適確に行うため、必要な医薬品等の確保に努め、新興感染症に対応する医療機関及び薬局等が、必要に応じて使用できるようにすることが望ましい。また、医療機関と平時に法に基づき医療措置協定を締結するに当たっては、診療等の際に用いる個人防護具の備蓄を求めておくことにより、個人防護具の備蓄の実施が医療措置協定に適切に位置づけられるように努める。

四 その他感染症に係る医療の提供のための体制

1 感染症の患者に係る医療は、感染症指定医療機関のみで提供されるものではなく、一般医療機関においても提供されることがあることに留意する必要がある。具体的には、一類感染症、二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者であっても、最初に診察を受ける医療機関は、一般の医療機関であることが多く、さらに三類感染症、四類感染症又は五類感染症については、原則として一般の医療機関において医療が提供されるものである。

2 一類感染症、二類感染症等であって、国内に病原体が常在しないものについて、国内で患者が発生するおそれが高まる場合には、都道府県が当該感染症の外来診療を担当する医療機関を選定し、保健所が当該医療機関に感染が疑われる患者を誘導するなど初期診療体制を確立することにより、地域における医療提供体制に混乱が生じないようにすることについて検討することも必要である。

3 また、一般の医療機関においても、国及び都道府県等から公表された感染症に関する情報について積極的に把握し、同時に医療機関内において感染症のまん延の防止のために必要な措置も講ずることが重要である。さらに、感染症の患者について差別的な取扱いを行うことなく、良質かつ適切な医療の提供がなされることが求められる。

4 一般の医療機関における感染症の患者への良質かつ適切な医療の提供が確保されるよう、国及び都道府県等においては、医師会等の医療関係団体と緊密な連携を図ることが重要である。

五 関係各機関及び関係団体との連携

1 感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の提供のため、新感染症、一類感染症、二類感染症及び新型インフルエンザ等感染症に対応する感染症指定医療機関については、国及び都道府県がそれぞれ、必要な指導を積極的に行うことが重要である。

2 特に地域における感染症対策の中核的機関である保健所においては、感染症指定医療機関や地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会等の医療関係団体等との緊密な連携が重要である。

3 一般の医療機関は、多くの場合感染症の患者を診察する最初の医療機関となることから、当該医療機関での対応が感染症の予防の観点からも、感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の提供の観点からも極めて重要である。このため、国、都道府県等は、それぞれ医師会、薬剤師会、看護協会等の医療関係団体との連携を通じて、一般の医療機関との有機的な連携を図ることが重要である。また、都道府県においては、都道府県連携協議会や都道府県医療審議会等を通じ、平時から、医療関係団体以外の、高齢者施設等の関係団体や障害者施設等の関係団体等とも連携し、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間における医療提供体制を検討しておくことが必要である。

六 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において地域における感染症に係る医療を提供する体制の確保に関する事項を定めるに当たっては、一から五までに定める事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 感染症に係る医療の提供の考え方

2 第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関、第一種協定指定医療機関及び第二種協定指定医療機関の整備の目標に関する事項

3 医療措置協定による新興感染症の汎流行時に係る入院体制、外来診療体制、自宅療養者等への医療提供体制、後方支援体制、医療人材の派遣及び個人防護具の備蓄等に係る事項

4 医薬品の備蓄又は確保等に関する事項

5 平時及び患者発生後の対応時における一般の医療機関における感染症の患者に対する医療の提供に関する事項

6 医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会等の医療関係団体や高齢者施設等関係団体等との連携に関する事項

第七 感染症の患者の移送のための体制の確保に関する事項

一 感染症の患者の移送のための体制の確保に関する考え方

都道府県知事又は保健所設置市等の長が入院を勧告した患者又は入院させた患者の医療機関への移送は、都道府県知事又は保健所設置市等の長が行う業務とされているが、その体制の確保に当たっては、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症の発生及びまん延時に積極的疫学調査等も担う保健所のみでは対応が困難な場合において、地方公共団体内における役割分担や、消防機関との連携、民間事業者等への業務委託等を図ることが重要である。

二 国における感染症の患者の移送のための体制の確保の方策

国は、新感染症の所見がある者の移送については、都道府県等に積極的に協力することが重要である。また、感染症の特性に応じた移送に係る考え方等を示し、都道府県等が円滑に移送体制を構築できるように支援することが重要である。

三 都道府県等における感染症の患者の移送のための体制の確保の方策

1 感染症の患者の移送について、平時から地方公共団体内で連携し、役割分担、人員体制の整備を図ることが重要である。

2 都道府県連携協議会等を通じ、消防機関と連携し、感染症の患者の病状を踏まえた移送の対象及び感染症の特性を踏まえた安全な移送体制の確保について、地域の救急搬送体制の確保の観点にも十分留意して役割分担を協議し、協定を締結しておくことが重要である。

3 一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症の発生に備え、移送に必要な車両の確保、民間移送機関や民間救急等との役割分担をあらかじめ決めておくことが望ましい。また、高齢者施設等に入所しており配慮を必要とする方の移送については高齢者施設等の関係団体等とも連携し、移送の際の留意事項を含めて協議することが重要である。

4 都道府県等の区域を越えた移送が必要な緊急時における対応方法について、あらかじめ協議をすること。

5 一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者又は疑似症患者並びに新感染症の所見がある者若しくは当該新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由がある者の発生に備え、平時から、関係者を含めた移送訓練や演習等を定期的に計画し、実施することが望ましい。

四 関係各機関及び関係団体との連携

法第二十一条(法第二十六条第一項又は第二項において準用する場合を含む。)又は法第四十七条の規定による移送を行うに当たり、保健所等との協定に基づき消防機関と連携する場合には、第十二の三の4の入院調整体制の構築等により、円滑な移送が行われるよう努めること。また、平時から消防機関に対して医療機関の受入体制の情報を共有する枠組みの整備が重要である。

さらに、消防機関が傷病者を搬送した後、当該傷病者が、法第十二条第一項第一号等に規定する患者等であると医療機関が判断した場合には、医療機関から消防機関に対して、当該感染症等に関し適切に情報等を提供することが重要である。

五 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において移送のための体制確保について定めるに当たっては、一から四までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 移送に係る人員体制に係る事項

2 消防機関との役割分担及び連携並びに民間事業者等への業務委託に係る事項

3 新興感染症発生時の移送体制に係る事項

第八 感染症に係る医療のための医薬品の研究開発の推進に関する事項

一 感染症に係る医療のための医薬品の研究開発の推進に関する考え方

1 ワクチンや抗菌薬等(以下「ワクチン等」という。)の感染症に係る医薬品は、感染症の予防や感染症の患者に対する良質な医療を提供する上で不可欠なものである。特にワクチンの接種は、感染症の予防に最も有効な手段の一つであるが、その一方で、現在においても、ワクチン等の有効な医薬品が未だに開発されていない感染症が数多く存在するのも現実である。

2 国は、平時より国立感染症研究所及び国立研究開発法人国立国際医療研究センターを中心とした感染症に関する医薬品等の治験及び研究開発に協力可能な感染症指定医療機関等のネットワークを構築し、感染症の発生時にネットワークにおいて新興再興感染症データバンク事業(REBIND)などを活用して、迅速な開発が可能となるようにしていくこととする。

3 感染症に係る医薬品の研究開発は、国と民間が相互に連携を図って進めていくことが効果的であり、国としても、その役割に応じて積極的に取り組んでいくこととする。

4 このため、国においては、国立感染症研究所及び国立研究開発法人国立国際医療研究センター等において、感染症に係る必要な医薬品に関する研究開発を推進していくとともに、民間においてもこのような医薬品の研究開発が適切に推進されるよう支援していくことが必要である。

二 国における研究開発の推進

国においては、資金力や技術力の面で民間では研究開発が困難なワクチン等の医薬品において、国が自ら研究を行うため、国立感染症研究所等の国立試験研究機関や国立病院等の治験受託機関の機能強化を図るとともに、海外の研究機関及び民間との連携を進める。

また、民間においてもこのような研究開発が適切に推進されるよう、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第七十七条の二に基づく希少疾病用医薬品指定制度、各種研究事業等の施策を着実に推進するほか、民間がこのような研究開発に取り組みやすい環境の整備に配慮することが必要である。

なお、これらの研究開発に当たっては、研究開発に係るワクチン等の副反応の減少等、安全性の向上に特に配慮されるようにする必要がある。

三 民間における研究開発の推進

ワクチン等の医薬品の研究開発は、感染症の予防及びそのまん延防止に資するものであるとの観点から、製薬企業等においても、その能力に応じて推進されることが望ましい。

四 関係各機関及び関係団体との連携

ワクチン等の医薬品の開発は、基礎研究から臨床的な研究まで広範囲な知見が必要となるものであり、国の関係機関及び関係団体との間において十分な連携が図られることが重要である。また、国等は感染症に関する医薬品の研究開発に協力可能な医療機関のネットワークに参加できる方策を講ずることが重要である。民間企業等からの相談に対し医療機関を紹介できる体制の確保等、基盤を整備し、医薬品の研究を推進することが重要である。

五 その他ワクチン等の供給に関する留意点

新型インフルエンザ等感染症などの感染症の汎流行時等のように当該感染症の予防及びまん延の防止に必要なワクチン等の需要がその供給を著しく上回ることが予想される場合には、適切な供給が確保されるよう努める必要がある。

具体的には、新型インフルエンザが我が国において発生した場合を想定して、出現が予測される新型インフルエンザウイルスに対応するワクチン株の準備並びに必要なワクチンの生産及び供給が安全かつ迅速に行われるための体制を整備することが重要である。

そのため、インフルエンザワクチンの製造販売業者は、新型インフルエンザを想定したワクチン開発を行うよう努める必要がある。

国は、ワクチン等の需要がその供給を著しく上回ることが予想される場合、ワクチンの製剤化、非臨床試験及び臨床試験について、開発の支援を行うとともに、医薬品医療機器等法に基づく承認のための審査を迅速に行わせるよう配慮する。

また、国内での発生が極めて少ない感染症に係る医薬品について、外国における臨床試験の成績の活用等により医薬品医療機器等法に基づく承認のための審査を優先的に行わせるほか、緊急時において外国でその有効性及び安全性が確保された医薬品の使用以外にそのまん延防止のため適当な方法がない場合には、健康危機管理の観点から、医薬品医療機器等法に基づく特例承認や緊急承認を与えることを含め、外国でその有効性及び安全性が確保された医薬品の供給が迅速に行われるよう配慮する。

第九 感染症に係る医療を提供する体制の確保その他感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するための措置に必要なものとして厚生労働省令で定める体制の確保に係る目標に関する事項

一 厚生労働省令で定める体制の確保に係る基本的な考え方

新興感染症においては、入院及び発熱患者に対応する医療機関の確保や、地方衛生研究所等、保健所及び民間検査機関等における検査体制や入院患者の重症度等の把握体制の整備を迅速に行うことが重要となる。また、迅速に適切な対応を行うためには、平時より患者の検体等の迅速かつ効率的な収集体制の整備、医療機関での個人防護具の備蓄や、感染症に対応できる人材の育成と確保も併せて重要となる。加えて、後方支援を行う医療機関や感染拡大防止のための宿泊施設(法第四十四条の三第二項(法第四十四条の九第一項の規定に基づく政令によって準用される場合を含む。)又は法第五十条の二第二項に規定する宿泊施設をいう。以下同じ。)の確保も想定する必要がある。

このため、体制の確保に当たり対象とする感染症は、法に定める新興感染症を基本とする。予防計画等の策定に当たっては、感染症に関する国内外の最新の知見を踏まえつつ、一定の想定を置くこととするが、まずはこれまでの対応の教訓を生かすことができる新型コロナウイルス感染症への対応を念頭に取り組む。

なお、実際に発生及びまん延した感染症が、事前の想定とは大きく異なる事態となった場合は、その感染症の特性に合わせて協定の内容を見直すなど、実際の状況に応じた機動的な対応を行う。「事前の想定とは大きく異なる事態」の判断については、新型コロナウイルス感染症への対応(流行株の変異等の都度、国の方針を提示)を参考に、国として、国内外の最新の知見や、現場の状況を把握しながら、適切に判断し、周知していく。

国内での新興感染症発生早期(新興感染症発生から法に基づく厚生労働大臣による発生の公表前まで)の段階は、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関の感染症病床を中心に対応することとし、国は、その対応により得られた知見を含む国内外の最新の知見等について、随時、収集及び医療機関等への周知を行いながら、対応を行う。

新興感染症発生の公表後の流行初期の一定期間(三箇月を基本として必要最小限の期間を想定)には、まずは発生の公表前から対応の実績のある当該感染症指定医療機関が、流行初期医療確保措置の対象となる医療措置協定に基づく対応も含め、引き続き対応を行うとともに、各都道府県知事による判断に基づき当該感染症指定医療機関以外の流行初期医療確保措置の対象となる医療措置協定を締結した医療機関も中心に対応していく。その際、国は感染症指定医療機関の対応に基づく対応の方法も含めた国内外の最新の知見等を、随時、収集、更新及び周知するとともに、法第五十三条の十六第一項に規定する感染症対策物資等の確保に努めることが重要である。当該一定期間の経過後は、当該医療機関に加え、当該医療機関以外の医療措置協定を締結した医療機関のうち、公的医療機関等(公的医療機関等以外の医療機関のうち新興感染症に対応することができる医療機関を含む。)も中心となった対応とし、その後三箇月程度を目途に、順次速やかに、医療措置協定を締結した全ての医療機関で対応していく。新興感染症の特性や当該感染症への対応方法を含めた最新の知見の収集状況、法第五十三条の十六第一項に規定する感染症対策物資等の確保の状況等が事前の想定とは大きく異なる場合は、国において当該場合に該当する旨及びその程度その他新興感染症に関係する状況の判断を行い、国の判断を踏まえ、機動的に新興感染症への対応を行うことが重要である。

新型コロナウイルス感染症対応では、国から各都道府県に対し、感染状況に応じ段階的に対応する考え方を通知で示したうえで、各都道府県それぞれで、感染状況に応じた対応の段階を設定し、当該段階ごとに必要な病床数等を確保する計画を立て、病床の確保等を行った。新興感染症対応においても、基本的に、発生の公表後の流行初期の一定期間(三箇月を基本として必要最小限の期間を想定)経過後から、新型コロナウイルス感染症対応と同様の考え方に沿って対応していくことが想定される。

法に基づく医療措置協定を締結すること等により、平時から、流行時に対応できる体制を確保することが重要であり、都道府県が策定する予防計画においては、次の事項について数値目標を定めること。なお、保健所設置市等が策定する予防計画においては、次の7、9及び10の事項について数値目標を定めること。また、保健所設置市等が必要と判断する場合には、次の8の事項について数値目標を定められるものとする。

1 法第三十六条の二第一項の規定による通知(同項第一号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)又は法第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(同号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)に基づき新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者を入院させるための病床数

2 法第三十六条の二第一項の規定による通知(同項第二号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)又は法第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(同号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)に基づく新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の疑似症患者若しくは当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者又は新感染症にかかっていると疑われる者若しくは当該新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者の診療を行う医療機関数

3 法第三十六条の二第一項の規定による通知(同項第三号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)又は法第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(同号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)に基づく宿泊施設若しくは居宅若しくはこれに相当する場所における法第四十四条の三の二第一項(法第四十四条の九第一項の規定に基づく政令によって準用される場合を含む。)又は法第五十条の三第一項の厚生労働省令で定める医療を提供する医療機関等の数

4 1から3までに掲げる措置を講ずる医療機関に代わって新興感染症の感染症患者以外の患者に対し、医療を提供する医療機関数

5 法第三十六条の二第一項の規定による通知(同項第五号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)又は法第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(同号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。)に基づく感染症医療担当従事者等の確保数

6 法第三十六条の三第一項に規定する医療措置協定(同項第二号に掲げる事項をその内容に含むものに限る。)に基づく法第五十三条の十六第一項に規定する個人防護具の備蓄を十分に行う医療機関の数

7 新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者若しくは当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者若しくは新感染症の所見がある者若しくは当該新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者の検体又は当該感染症の病原体の検査の実施能力及び地方衛生研究所等における検査機器の数

8 法第三十六条の六第一項に規定する検査等措置協定(同項第一号ロに掲げる措置をその内容に含むものに限る。)に基づく宿泊施設の確保居室数

9 感染症医療担当従事者等及び保健所の職員その他感染症の予防に関する人材の研修及び訓練の回数

10 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間における感染症の予防に関する保健所の業務を行う人員及び地域保健法第二十一条第一項に規定する者であって必要な研修を受けたものの確保数

二 厚生労働省令で定める体制の確保に係る国における方策

国は、都道府県等が適切な目標を設定できるよう、都道府県等の予防計画の策定に係るガイドライン等を策定すること。

三 厚生労働省令で定める体制の確保に係る都道府県等における方策

都道府県等は、国が策定するガイドライン等を参考に、予防計画における数値目標を定めること。

また、都道府県連携協議会等において、予防計画に基づく取組状況を毎年報告し、数値目標の達成状況等について進捗確認を行うことで、平時より感染症の発生及びまん延を防止していくための取組を関係者が一体となってPDCAサイクルに基づく改善を図り、実施状況について検証すること。

四 関係各機関及び関係団体との連携

都道府県等は、数値目標の達成状況を含む予防計画の実施状況及びその実施に有用な情報を、都道府県連携協議会の構成員に共有し、連携の緊密化を図ること。

第十 宿泊施設の確保に関する事項

一 宿泊施設の確保に関する事項の基本的な考え方

新興感染症が発生した場合には、重症者を優先する医療体制へ移行することも想定される。都道府県等は、自宅療養者等の家庭内感染等や医療体制のひっ迫を防ぐ等の観点から、新興感染症の特性や、感染力その他当該感染症の発生及びまん延の状況を考慮しつつ、宿泊施設の体制を整備できるよう、地域の実情に応じて、都道府県連携協議会等を活用し、関係者や関係機関と協議の上、平時から計画的な準備を行うことが重要である。

二 国における宿泊施設の確保に関する事項の方策

国は、感染症の特性等に応じた、宿泊療養施設の確保に係るマニュアル等を作成し、都道府県等に宿泊療養に係る考え方を情報提供することで、都道府県等が円滑に宿泊施設を立ち上げられるよう支援することが重要である。

三 都道府県等における宿泊施設の確保に関する事項の方策

都道府県等は、民間宿泊業者等と感染症の発生及びまん延時の宿泊療養の実施に関する検査等措置協定を締結すること等により、平時から宿泊施設の確保を行うとともに、感染症発生初期に民間宿泊業者の協力を得られないことが見込まれる場合は、公的施設の活用を併せて検討する。

四 関係各機関及び関係団体との連携

都道府県等は、検査等措置協定を締結する宿泊施設等との円滑な連携を図るために、地域の実情に応じて、都道府県連携協議会等を活用することが望ましい。

五 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において宿泊施設の確保に関する事項について定めるに当たっては、一から四までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 検査等措置協定を締結する宿泊施設等の確保の方法に係る事項

2 宿泊施設の確保に係る都道府県と保健所設置市等の役割分担に係る事項

第十一 新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備に関する事項

一 新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備の基本的な考え方

新型インフルエンザ等感染症又は新感染症の外出自粛対象者(外出自粛に係る法の規定が適用される指定感染症にあっては、当該感染症の外出自粛対象者。以下「外出自粛対象者」という。)については、体調悪化時等に、適切な医療に繋げることができる健康観察の体制を整備することが重要である。また、外出自粛により生活上必要な物品等の物資の入手が困難になることから、当該対象者について生活上の支援を行うことが重要である。

また、外出自粛対象者が高齢者施設等や障害者施設等において過ごす場合は、施設内で感染がまん延しないような環境を構築することが求められる。

二 国における新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備の方策

国は、自宅療養に係るマニュアル等を作成し、都道府県等が行う外出自粛対象者の療養生活の環境整備を支援することが重要である。

三 都道府県等における新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備の方策

1 都道府県等は、医療機関、医師会、薬剤師会、看護協会や民間事業者への委託等や市町村(保健所設置市等を除く。以下この第十一において同じ。)の協力を活用しつつ外出自粛対象者の健康観察の体制を確保することが重要である。

2 都道府県等は、第十で設置した宿泊施設の運営に係る体制確保の方策を平時から検討し、宿泊施設運営業務マニュアル等を整備しておくことが必要である。また、感染症の発生及びまん延時には、医療体制の状況を踏まえつつ、迅速に職員、資機材等を確保する等、円滑な宿泊施設の運営体制の構築及び実施を図る。

3 都道府県等は、外出自粛対象者が外出しなくとも生活できるようにするため、市町村の協力や民間事業者への委託を活用しつつ、食料品等の生活必需品等を支給するなどの支援を行うとともに、自宅療養時においても、薬物療法を適切に受けられるように必要な医薬品を支給できる体制を確保すること。また、介護保険の居宅サービスや障害福祉サービス等を受けている場合には、介護サービス事業者や障害福祉サービス事業者等との連携も重要である。

4 都道府県等は、健康観察や生活支援等を効率的に行うため、ICTを積極的に活用することが重要である。

5 都道府県等は、高齢者施設等や障害者施設等において、医療措置協定を締結した医療機関と連携し、必要に応じてゾーニング等の感染対策の助言を行うことができる体制を平時から確保しておき、新興感染症の発生及びまん延時において施設内における感染のまん延を防止することが重要である。

四 関係各機関及び関係団体との連携

1 都道府県等は、外出自粛対象者の健康観察や生活支援等に当たっては、積極的に市町村と連携し、必要な範囲で患者情報の提供を行うこと。なお、市町村の協力を得る場合は、都道府県連携協議会等を活用し、あらかじめ情報提供の具体的な内容や役割分担、費用負担のあり方について、協議しておくことが重要である。

2 都道府県等は、外出自粛対象者の健康観察や生活支援等の実施に当たっては、第二種協定指定医療機関や地域の医師会、薬剤師会、看護協会又は民間事業者に委託することなどについても検討することが重要である。

3 都道府県等は、福祉ニーズのある外出自粛対象者が適切な支援を受けられるよう、都道府県連携協議会等を通じて、介護サービス事業者、障害福祉サービス事業者等と連携を深めることが重要である。

五 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備に関する事項について定めるに当たっては、一から四までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 外出自粛対象者の健康観察を行う人員体制に係る事項

2 外出自粛対象者の健康観察や生活支援等における市町村並びに関係機関及び関係団体との連携に係る事項

3 宿泊施設の運営に関する人員体制に係る事項

第十二 感染症の予防又はまん延防止のための総合調整・指示の方針に関する事項

一 法第四十四条の五第一項(法第四十四条の八において準用する場合を含む。)、第五十一条の四第一項若しくは第六十三条の三第一項の規定による総合調整又は法第五十一条の五第一項、第六十三条の二若しくは第六十三条の四の規定による指示の方針の基本的な考え方

1 法第六十三条の三第一項において、都道府県知事は、平時から新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に至るまで、感染症の発生及びまん延を防止するため必要がある場合、感染症対策全般について、保健所設置市等の長、市町村長及び関係機関に対して総合調整を行うこととされている。また、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、国民の生死に直結する緊急性を有する入院勧告又は入院措置を実施するために必要な場合に限り、都道府県知事は保健所設置市等の長への指示を行うことが適当である。

2 感染症対策の実施については、基本的に都道府県が主体となって総合調整を行うが、感染症の専門家や保健師等の派遣、患者の移送等について、複数の都道府県や医療機関等に対して広域的な総合調整を行う必要がある場合は、厚生労働大臣が都道府県知事、保健所設置市等の長、医療機関等に対して総合調整を行う。また、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため緊急の必要がある場合等において、厚生労働大臣が都道府県知事又は保健所設置市等の長に対して指示を行う。

二 国における法第四十四条の五第一項(法第四十四条の八において準用する場合を含む。)若しくは第五十一条の四第一項の規定による総合調整又は法第五十一条の五第一項若しくは第六十三条の二の規定による指示の方針

1 国による総合調整は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間であって都道府県の区域を越えた感染症の予防に関する人材の確保、患者の移送その他感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときに、都道府県知事や保健所設置市等の長、医療機関その他の関係者に対して行使できるものとする。

2 また、都道府県知事又は保健所設置市等の長が他の都道府県知事や保健所設置市等の長、医療機関その他の関係者の必要な協力を求めることも考えられるため、都道府県知事又は保健所設置市等の長から総合調整についての要請があった場合で、国が総合調整の必要があると判断した場合は、当該要請に応諾し総合調整を行うこととする。

3 厚生労働大臣が総合調整を行うために必要があると認めるときは、都道府県又は医療機関その他の関係者に対し、報告又は資料の提供を求めるものとする。

4 法に基づく厚生労働大臣の総合調整と特措法に基づく政府対策本部長の総合調整とで、措置の内容に齟齬が生じることを防ぐため、厚生労働大臣が総合調整を行う必要が生じた場合は、特措法第十八条第一項に規定する基本的対処方針との整合性の確保を図る。

さらに、積極的疫学調査の実施や患者の移送といった複数の都道府県の間で連携して対応することが必要な事項等について緊急に必要がある場合、国が都道府県等の間の事務を調整し、事務の実施を含めた指示を行う。

三 都道府県における法第六十三条の三第一項の規定による総合調整又は法第六十三条の四の規定による指示の方針

1 都道府県知事による総合調整は、平時であっても感染症対策に当たり必要がある場合に実行できることとし、保健所設置市等の長、市町村長の他、医療機関や感染症試験研究等機関といった民間機関も対象とする。新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間における総合調整・指示の発動場面・要件等については、平時から関係者に共有することが重要である。なお、必要がある場合に限り、保健所設置市等の長は都道府県知事に対して総合調整を要請することが適当である。

2 都道府県知事は、総合調整を行うために必要があると認めるときは、保健所設置市等の長や他の関係機関等に対し、報告又は資料の提供を求めることが適当である。

3 都道府県知事による指示は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間の際、国民の生死に直結する緊急性を有する入院勧告や入院措置を実施するために必要な場合に限り、保健所設置市等の長に対してのみ行うことができることに留意する必要がある。

4 都道府県においては、確保した病床に円滑に患者が入院できるようにするため、都道府県連携協議会等を活用し、保健所や医療機関、高齢者施設等との連携強化を図り、保健所設置市等に対する平時からの体制整備等に係る総合調整権限や、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間の指示権限を適切に行使しながら、円滑な入院調整体制の構築、実施を図る。

四 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において感染症の予防又はまん延防止のための総合調整・指示の方針に関する事項について定めるに当たっては、一から三までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 都道府県知事による総合調整・指示に係る事項

2 都道府県知事による総合調整に係る関係機関等との情報共有に係る事項

第十三 法第五十三条の十六第一項に規定する感染症対策物資等の確保に関する事項

一 法第五十三条の十六第一項に規定する感染症対策物資等の確保に関する基本的な考え方

医薬品や個人防護具等の感染症対策物資等については、感染症の予防及び感染症の患者に対する診療において欠かせないものである。

特に新型インフルエンザ等感染症等の全国的かつ急速なまん延が想定される感染症が発生した際には、感染症対策物資等の急速な利用が見込まれるため、平時から感染症対策物資等が不足しないよう対策等を構築することが重要である。

二 法第五十三条の十六第一項に規定する感染症対策物資等の確保に関する方策

1 国は、国内において現に感染症対策物資等の供給が不足している場合や今後供給が不足する蓋然性が高い場合において、当該物資等の生産・輸入を促進することが必要であると認めるときは、当該物資等の生産・輸入業者に対し、生産・輸入の促進を要請する。本要請に当たっては、実効性を担保するために、あらかじめ事業を所管する省庁と協議の上で要請を行うことが必要である。

2 国は、1の要請に当たって、事業者に対し生産、輸入、販売、貸付等の状況について報告を求め、感染症対策物資等の需給状況を把握することが重要である。

3 国及び都道府県等は、新興感染症の汎流行時に、個人防護具等の供給及び流通を適確に行うため、個人防護具等の備蓄又は確保に努める。

三 関係機関及び関係団体との連携

国は、二の1及び2に掲げる事項について、平時から事業者団体や事業を所管する省庁間で情報共有し、感染症対策物資等の不足が生じている場合又は生じる蓋然性が高まった場合において、法に基づく要請等を円滑に行うことができるよう取り組むことが重要である。

第十四 感染症に関する啓発及び知識の普及並びに感染症の患者等の人権の尊重に関する事項

一 感染症に関する啓発及び知識の普及並びに感染症の患者等の人権の尊重に関する基本的な考え方

国及び地方公共団体においては適切な情報の公表、正しい知識の普及等を行うことが、医師等においては患者等への十分な説明と同意に基づいた医療を提供することが、国民においては感染症について正しい知識を持ち、自らが予防するとともに、患者等が差別を受けることがないよう配慮していくことが重要である。さらに、国及び地方公共団体は、感染症のまん延の防止のための措置を行うに当たっては、人権を尊重することが必要である。

二 国における感染症に関する啓発及び知識の普及並びに感染症の患者等の人権の尊重に関する方策

1 国は、診療、就学、就業、交通機関の利用等の場面において、患者等への差別や偏見の排除、予防についての正しい知識の定着等のため、パンフレット等の作成、キャンペーンや各種研修の実施、教材の作成、感染症にかかった児童生徒等の再登校、感染症の患者の円滑な職場参加のための取組等の必要な施策を講じる。例えば、感染症に関する啓発及び知識の普及を図っていく上で、学校や職場を活用することが効果的かつ効率的であるため、関係省庁である厚生労働省及び文部科学省が連携を図りながら、必要な施策を講ずることが重要である。特に、学校教育の場における感染症や予防接種に関する正しい知識の普及が求められる。

2 国は患者に関する情報の流出防止のため、関係職員に対する研修、医療機関に対する注意喚起等を講ずる。

3 国は特に総合的に予防のための施策を推進する必要がある感染症について、指針を作成した上で、これらの周知を図ることとする。また、これらの指針については、定期的に見直すこととする。

三 地方公共団体における感染症に関する啓発及び知識の普及並びに感染症の患者等の人権の尊重に関する方策

地方公共団体は、診療、就学、就業、交通機関の利用等の場面において、患者等への差別や偏見の排除等のため、国に準じた施策を講ずるとともに、相談機能の充実等住民に身近なサービスを充実することが重要である。特に、保健所は、地域における感染症対策の中核的機関として、感染症についての情報提供、相談等のリスクコミュニケーションを行うことが重要である。また、都道府県連携協議会等で議論を行う際には、患者の人権を考慮して感染症対策の議論を行うことが重要である。

四 感染症に関する啓発及び知識の普及並びに感染症の患者等の人権の尊重に関するその他の方策

1 患者等のプライバシーを保護するため、国及び都道府県等は、医師が都道府県知事等へ感染症患者に関する届出を行った場合には、状況に応じて、患者等へ当該届出の事実等を通知するように努めるよう徹底を図ることが重要である。

2 報道機関においては、常時、的確な情報を提供することが重要であるが、個人情報に注意を払い、感染症に関し、誤った情報や不適当な報道がなされたときには、速やかにその訂正がなされるように、国及び都道府県等は、報道機関との連携を平常時から密接に行う等の体制整備を図ることが重要である。

五 関係各機関との連携

国の行政機関間、国及び地方公共団体間、地方公共団体間等における密接な連携のため、定期会議の開催等が行われることが重要である。

六 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において地域の実情に即した知識の普及及び感染症の患者等の人権の尊重のための施策に関する事項について定めるに当たっては、一から五までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 患者等への差別や偏見の排除及び感染症についての正しい知識の普及に関する事項

2 患者情報の流出防止等のための具体的方策に関する事項

3 感染症に関する啓発及び知識の普及並びに感染症の患者等の人権の尊重のための都道府県等における関係部局の連携方策に関する事項

4 国、他の都道府県等、医師会等の医療関係団体、報道機関等の関係各機関との連携方策に関する事項

第十五 感染症の予防に関する人材の養成及び資質の向上に関する事項

一 人材の養成及び資質の向上に関する基本的な考え方

現在、国内において感染者が減少している感染症に関する知見を十分有する者が少なくなっている一方で、新たな感染症対策に対応できる知見を有する医療現場で患者の治療に当たる感染症の医療専門職の他にも、介護施設等でクラスターが発生した場合に適切な感染拡大防止対策を行うための感染管理の専門家、感染症の疫学情報を分析する専門家、そして行政の中においても感染症対策の政策立案を担う人材など多様な人材が改めて必要となっていることを踏まえ、国及び都道府県等は、これら必要とされる感染症に関する人材の確保のため、感染症に関する幅広い知識や研究成果の医療現場への普及等の役割を担うことができる人材の養成を行う必要がある。また、大学医学部をはじめとする、医師等の医療関係職種の養成課程や大学院等においても、感染症に関する教育を更に充実させていくことが求められる。

二 国における感染症に関する人材の養成及び資質の向上

1 都道府県、保健所及び地方衛生研究所等の職員等の資質の向上・維持のため及び感染症指定医療機関の医師等をはじめとした一般の医療機関の臨床医の感染症に関する知識の向上のため、国立保健医療科学院、国立感染症研究所、国立研究開発法人国立国際医療研究センター等において、感染症に関する講習会を行うとともに、感染症に関する研修のため、関係学会等が実施するセミナーや海外にこれらの者を派遣するといった取組を行っていく必要がある。また、国は感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラムや実地疫学専門家養成コース(FETP―J)、国際感染症危機管理対応人材育成・派遣事業等により、危機管理の基本的知見を有する感染症専門家を継続的に育成していくことが重要である。

2 国は、関係団体や関係学会との密接な連携を図りつつ、感染症の医療に関して専門的知識を有する医師等の養成に資する施策を講ずることが重要である。

3 国は、効果的かつ効率的に人材の養成を行うために、感染症に関し既に行われている研修その他に係る課程に検討を加え、その結果を踏まえ必要があると認める場合には、必要な措置を講ずることが重要である。

4 国は、地域保健法第二十一条第一項に規定する者(以下「IHEAT要員」という。)に係る研修及び訓練等の実施により、都道府県等がIHEAT要員を活用するための基盤を整備することが求められる。

5 国は、感染症対応について、最新の科学的知見に基づいた適切な知識を医療従事者が習得することを目的として、医療機関向けの講習会の実施や全ての医療従事者向けの動画配信を行うほか、看護職員の養成研修等について取組の充実を図る。

6 厚生労働大臣は、医療法に基づき、都道府県知事の求めに応じて、災害が発生した区域やそのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、若しくはそのおそれがある区域に派遣される災害・感染症医療の確保に係る業務に従事する者(DMAT・DPAT等)の研修を実施し、その登録を進めることが重要である。

三 都道府県等における感染症に関する人材の養成及び資質の向上

都道府県知事等は、国立保健医療科学院、国立感染症研究所等で実施される感染症対策・感染症検査等に関する研修会や実地疫学専門家養成コース(FETP―J)等に保健所及び地方衛生研究所職員等を積極的に派遣するとともに、都道府県等が感染症に関する講習会等を開催すること等により保健所の職員等に対する研修の充実を図ることが重要である。さらに、これらにより感染症に関する知識を習得した者を地方衛生研究所等や保健所等において活用等を行うことが重要である。

加えて、都道府県等はIHEAT要員の確保や研修、IHEAT要員との連絡体制の整備やIHEAT要員及びその所属機関との連携の強化などを通じて、IHEAT要員による支援体制を確保することが重要である。

保健所においては、平時から、IHEAT要員への実践的な訓練の実施やIHEAT要員の支援を受けるための体制を整備するなどIHEAT要員の活用を想定した準備を行うことが重要である。

四 医療機関等における感染症に関する人材の養成及び資質の向上

第一種協定指定医療機関及び第二種協定指定医療機関を含む感染症指定医療機関においては、感染症対応を行う医療従事者等の新興感染症の発生を想定した必要な研修・訓練を実施すること又は国、都道府県等若しくは医療機関が実施する当該研修・訓練に医療従事者を参加させることにより、体制強化を図ることが重要である。また、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間においては、感染症医療担当従事者等を他の医療機関、宿泊施設及び高齢者施設等に派遣できるように平時から研修や訓練を実施しておくことが重要である。

五 医師会等における感染症に関する人材の養成及び資質の向上

医師会等の医療関係団体においては、会員等に対して感染症に関する情報提供及び研修を行うことが重要である。

六 関係各機関及び関係団体との連携

国及び都道府県等は、各関係機関及び関係団体が行う研修へ職員を積極的に参加させるとともに、その人材の活用等に努めることが重要である。

七 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において地域の実情に即した人材の養成及び資質の向上に関する事項を定めるに当たっては、一から五までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 国及び都道府県が行う研修への保健所等の職員の参加に係る計画に関する事項

2 研修を終了した保健所職員の保健所等における活用に係る計画に関する事項

3 都道府県等による訓練の実施に関する事項

4 IHEAT要員、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間に派遣される人材の養成・登録・管理・資質向上に関する事項

5 人材の養成及び資質の向上に係る感染症指定医療機関及び医師会をはじめとする関係各機関及び団体との連携のための方策に関する事項

第十六 感染症の予防に関する保健所の体制の確保に関する事項

一 感染症の予防に関する保健所の体制の確保に関する基本的な考え方

1 保健所は地域の感染症対策の中核的機関として、地域保健法に基づき厚生労働大臣が策定する基本指針とも整合性をとりながら、必要な情報の収集、分析、対応策の企画立案・実施、リスクコミュニケーション等を行う機関であるとともに、感染症の感染拡大時にも健康づくり等地域保健対策も継続できることが重要である。また、平時より有事に備えた体制を構築し、有事の際には速やかに体制を切り替えることができる仕組みが必要である。

2 都道府県等は、都道府県連携協議会等を活用しながら関係機関及び関係団体と連携するとともに、各地方公共団体の保健衛生部門等における役割分担を明確化することが重要である。

3 感染症発生時に迅速に対応できるよう、感染症に関する情報が、責任者に対して迅速かつ適切に伝達され、一元的に管理される体制を構築することが重要である。あわせて、外部人材の活用も含めた必要な人員の確保、受入体制の整備、必要な機器及び機材の整備、物品の備蓄等を通じて健康危機発生時に備えて、各保健所の平時からの計画的な体制整備が必要である。また、業務の一元化、外部委託、ICT活用も視野にいれて体制を検討することが重要である。

二 国における感染症の予防に関する保健所の体制の確保に関する方策

1 国は、健康危機における保健所の体制を確保するため、各保健所が健康危機対処計画を策定できるようガイドライン等を作成し、都道府県等を支援する。

2 国は、都道府県の区域を越えた応援派遣の仕組みを整備し、有事の際に都道府県等が円滑に応援派遣等の仕組みを活用できるようにすることが重要である。

三 都道府県等における感染症の予防に関する保健所の体制の確保

1 都道府県等は、都道府県連携協議会等を活用し、地方公共団体間の役割分担や連携内容を平時から調整する。感染症のまん延が長期間継続することも考慮し、必要となる保健所の人員数を想定し、感染症発生時においてその体制を迅速に切り替えることができるようにすることが重要である。

2 都道府県等は広域的な感染症のまん延の防止の観点から、感染経路の特定、濃厚接触者の把握等に係る積極的疫学調査等の専門的業務を十分に実施するために、感染症の拡大を想定し、保健所における人員体制や設備等を整備することが重要である。体制の整備に当たっては、必要な機器及び機材の整備、物品の備蓄を始め、業務の外部委託や都道府県における一元的な実施、ICTの活用などを通じた業務の効率化を積極的に進めるとともに、IHEAT要員や市町村等からの応援体制を含めた人員体制、受入体制の構築(応援派遣要請のタイミングの想定も含む。)や、住民及び職員等の精神保健福祉対策等が重要である。

3 都道府県等は、地域の健康危機管理体制を確保するため、保健所に保健所長を補佐する統括保健師等の総合的なマネジメントを担う保健師を配置することが重要である。

四 関係機関及び関係団体との連携

1 都道府県等は、都道府県連携協議会等を活用し、市町村、学術機関、消防機関などの関係機関、専門職能団体等と保健所業務に係る内容について連携することが重要である。

2 保健所は、感染症発生時における連携体制を確保するため、平時から地方公共団体の本庁部門や地方衛生研究所等と協議し役割分担を確認するとともに、管内の市町村と協議し、感染症発生時における協力について検討することが重要である。

五 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において感染症の予防に関する保健所の体制の確保に関する事項を定めるに当たっては、一から四までの事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 保健所の人員体制に係る事項

2 感染症対応における保健所業務と体制に係る事項

3 応援派遣やその受入れに係る事項

4 保健所業務に係る保健所と関係機関等との連携に係る事項

第十七 特定病原体等を適正に取り扱う体制の確保に関する事項

一 特定病原体等の適正な取扱いに関する基本的な考え方

特定病原体等の適正な取扱いについては、国内における病原体等の試験研究、検査等の状況、国際的な病原体等の安全管理の状況その他の特定病原体等の適正な取扱いに関する国内外の動向を踏まえつつ行われなければならない。

二 特定病原体等の適正な取扱いのための施策

1 一種病原体等については、厚生労働大臣において、一種病原体等を所持し、試験研究を行う国等の施設を的確に指定するとともに、当該施設における一種病原体等の管理が適切に実施されていることを常に把握しておくことが重要である。

2 二種病原体等については、厚生労働大臣において、二種病原体等の所持及び輸入の許可を行うに当たり、当該所持又は輸入の目的を踏まえ、欠格条項に該当していないこと又は許可の基準に適合していることを厳格に審査し、確認するとともに、当該許可の申請を通じて把握する情報を適切に整理し、保管することが重要である。

3 三種病原体等については、厚生労働大臣において、三種病原体等の所持又は輸入の届出を通じて把握する情報を適切に整理し、保管することが重要である。

4 厚生労働大臣は、特定病原体等の所持施設が、施設の基準、保管等の基準を遵守していることを適宜確認するとともに、これらの基準に適合していないと認めるときは、必要に応じて関係機関に連絡するとともに、改善命令その他の特定病原体等による感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するために必要な監督を行う必要がある。

5 国においては、特定病原体等を所持する都道府県等の研究機関、大学の研究機関等に対して、特定病原体等の適切な取扱い等に関する情報を積極的に提供することが重要である。このため、厚生労働大臣は、各研究機関等を所管する関係省庁と連携して、特定病原体等の適切な取扱い等に関する周知を行うべきである。

6 国は、特定病原体等の適正な取扱いのための措置を的確に実施できるよう人員等の体制確保に努める必要がある。

三 関係各機関との連携

1 厚生労働大臣においては、法第五十六条の三十八第四項に規定する警察庁長官、海上保安庁長官又は消防庁長官への連絡を確実に行うほか、盗取、所在不明等の事故時や、地震、火災その他の災害時において特定病原体等による感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するために関係機関との緊密な連携を図ることが重要である。

2 特定病原体等の盗取等を防止するため、厚生労働省において保管される情報のみならず、関係各機関の間において共有される情報も含め、平素からその管理の徹底を図る必要がある。

3 事故、災害等が発生した場合においては、関係各機関と連携を取りつつ、必要に応じて関係者からの報告や関係施設への立入りを行う等により、迅速かつ的確に対応することが重要である。

4 特定病原体等が不正に輸入されることを防止するため、厚生労働省においては、税関等の関係各機関と十分な連携を図ることが重要である。

第十八 緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止、病原体等の検査の実施並びに医療の提供のための施策(国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡体制の確保を含む。)に関する事項

一 緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止並びに医療の提供のための施策

1 一類感染症、二類感染症又は新感染症の患者の発生又はそのまん延のおそれが生じた場合には、都道府県は、予防計画において、当該感染症の患者が発生した場合の具体的な医療提供体制や移送の方法等について必要な計画を定め、公表することとする。

2 国及び都道府県は、感染症の患者の発生を予防し、又はそのまん延を防止するために緊急の必要があると認めるときには、感染症の患者の病状、数その他感染症の発生及びまん延の状況を勘案して、当該感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するために必要な措置を定め、医師その他の医療関係者に対し、当該措置の実施に対する必要な協力を求め、迅速かつ的確な対策が講じられるようにすることとする。

3 国は、感染症の患者の発生を予防し、又はそのまん延を防止するために緊急の必要があると認めるときには、都道府県等に対してこの法律により行われる事務について必要な指示を行い、迅速かつ的確な対策が講じられるようにすることとする。

4 国は、国民の生命及び身体を保護するために緊急の必要があると認めるときには、都道府県等に対して、感染症に関する試験研究又は検査を行っている機関の職員の派遣その他特定病原体等による感染症の発生の予防又はまん延の防止のために必要な協力を要請し、迅速かつ的確な対策が講じられるようにすることとする。

5 新感染症の患者の発生や生物兵器を用いたテロリストによる攻撃が想定される場合など、地方公共団体に十分な知見が集積されていない状況で感染症対策が必要とされる場合には、国は、関係する地方公共団体に職員や専門家を派遣する等の支援を行うものとする。

二 緊急時における国と地方公共団体との連絡体制

1 都道府県知事等は、法第十二条第三項に規定する国への報告等を確実に行うとともに、特に新感染症への対応を行う場合その他感染症への対応について緊急と認める場合にあっては、国との緊密な連携を図ることが重要である。

2 検疫所において、一類感染症の患者等を発見した場合には、当該者等に対し検疫法に規定する措置をとるほか、関係都道府県知事等に幅広く情報提供を行うとともに、当該都道府県知事等と連携し、同行者等の追跡調査その他の必要と認める措置を行うものとする。

3 緊急時における国から都道府県等への連絡については、関係する都道府県等に対して迅速かつ確実に連絡が行われる方法により行うこととする。

4 緊急時においては、国は都道府県等に対して感染症の患者の発生の状況や医学的な知見など都道府県等が対策を講じる上で有益な情報を可能な限り提供するとともに、都道府県等は当該地域における患者の発生状況(患者と疑われる者に関する情報を含む。)等についてできるだけ詳細な情報を国に提供することにより緊密な連携をとることが重要である。

三 緊急時における地方公共団体相互間の連絡体制

1 関係地方公共団体は、緊密な連絡を保ち、感染症の発生状況、緊急度等を勘案し必要に応じて、相互に応援職員、専門家の派遣等を行うことが重要である。また、都道府県等から消防機関に対して、感染症に関する情報等を適切に連絡することが重要である。

2 都道府県等から関係市町村に対して、医師等からの届出に基づいて必要な情報を提供することとするとともに、都道府県知事と保健所を設置する市及び特別区との緊急時における連絡体制を整備しておくことが重要である。

3 複数の市町村にわたり感染症が発生した場合であって緊急を要するときは、都道府県は、都道府県内の統一的な対応方針を提示する等の、市町村間の連絡調整を行う等の指導的役割を果たす必要がある。

4 複数の都道府県等にわたり感染症が発生した場合又はそのおそれがある場合には、関係する都道府県等で構成される対策連絡協議会を設置する等の連絡体制の強化に努めるべきである。

四 国及び地方公共団体と関係団体との連絡体制

国及び地方公共団体は、それぞれ医師会等の医療関係団体等と緊密な連携を図ることが重要である。

五 緊急時における情報提供

緊急時においては、国が国民に対して感染症の患者の発生の状況や医学的知見など国民が感染予防等の対策を講じる上で有益な情報を、パニック防止という観点も考慮しつつ、可能な限り提供することが重要である。この場合には、情報提供媒体を複数設定し、理解しやすい内容で情報提供を行うものとする。

六 予防計画を策定するに当たっての留意点

予防計画において緊急時における国との連携及び地方公共団体相互間の連絡体制の確保に関する事項を定めるに当たっては、一から五までに定める事項を踏まえるとともに、特に、次に掲げる事項について規定することが望ましい。

1 国又は他の地方公共団体から派遣された職員や専門家の受入れに関する事項

2 感染症のまん延を防止するため必要な情報の収集、分析及び公表に関する事項

3 緊急時における初動措置の実施体制の確立に関する事項

第十九 その他感染症の予防の推進に関する重要事項

一 施設内感染の防止

病院、診療所、老人福祉施設等において感染症が発生し又はまん延しないよう、都道府県等にあっては、最新の医学的知見等を踏まえた施設内感染に関する情報をこれらの施設の開設者又は管理者に適切に提供することが重要である。また、これらの施設の開設者及び管理者にあっては、提供された感染症に関する情報に基づき、必要な措置を講ずるとともに、普段より施設内の患者及び職員の健康管理を進めることにより、感染症が早期発見されるように努めることが重要である。さらに、医療機関においては、院内感染対策委員会等を中心に院内感染の防止に努めることが重要であり、実際に取ったこれらの措置等に関する情報について、その都道府県等や他の施設に提供することにより、その共有化を図ることが望ましい。

また、都道府県等は、施設内感染に関する情報や研究の成果及び講習会・研修に関する情報を、医師会等の関係団体等の協力を得つつ、病院、診療所、老人福祉施設等の現場の関係者に普及し、活用を促していくことが重要である。

二 災害防疫

災害発生時の感染症の発生の予防及びまん延の防止の措置は、生活環境が悪化し、被災者の病原体に対する抵抗力が低下する等の悪条件下に行われるものであるため、都道府県知事等は、迅速かつ的確に所要の措置を講じ、感染症の発生及びまん延の防止に努めることが重要である。その際、各都道府県等においては、保健所等を拠点として、迅速な医療機関の確保、防疫活動、保健活動等を実施することが重要である。

三 検疫所の機能強化

感染症対策における検疫の重要性に鑑み、国立感染症研究所との連携を含め、検疫所の機能強化のために必要な施策を講ずることとする。

四 動物由来感染症対策

1 感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する措置については、厚生労働省及び農林水産省は連携して、感染症の発生状況等を考慮して、輸入禁止地域(法第五十四条第一号に規定する地域をいう。)を設定するとともに、輸入が可能な地域から持ち込まれるものであっても法第五十五条が規定するところにより安全性が確保されるための一定の条件に適合するものについてのみ輸入を認める。

2 感染症を人に感染させるおそれがある動物(法第五十四条の規定により輸入が禁止されているものを除く。)又はその死体を輸入しようとする場合にも、法第五十六条の二の規定に基づき届出書の提出及び感染症にかかっていない旨又はかかっている疑いが無い旨等を記載した輸出国政府機関の発行する衛生証明書又はその写しの添付を求める。

3 国及び都道府県等は、動物由来感染症に対する必要な措置等が速やかに行えるよう、獣医師等に対し、法第十三条に規定する届出や狂犬病予防法(昭和二十五年法律第二百四十七号)に規定する届出の義務について周知を行うとともに、ワンヘルス・アプローチ(人間及び動物の健康並びに環境に関する分野横断的な課題に対し、関係者が連携してその解決に向けて取り組むことをいう。)に基づき、保健所等と関係機関及び医師会、獣医師会などの関係団体等との情報交換を行うこと等により連携を図って、国民への情報提供を進めることが重要である。

4 ペット等の動物を飼育する者は、3により国民に提供された情報等により動物由来感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めることが重要である。

5 国及び都道府県等は、積極的疫学調査の一環として動物の病原体保有状況調査(動物由来感染症の病原体の動物における保有の状況に係る調査をいう。)により広く情報を収集することが重要であるため、保健所、地方衛生研究所、動物等取扱業者の指導を行う機関等が連携を図りながら調査に必要な体制について構築していくことが重要である。

6 動物由来感染症の予防及びまん延の防止の対策については、感染症の病原体を媒介するおそれのある動物に対する対策や、動物等取扱業者への指導、獣医師との連携等が必要であることから、都道府県等の感染症対策部門において、ペット等の動物に関する施策を担当する部門と適切に連携をとりながら対策を講じていくことが重要である。

五 国際保健規則への対応

国際保健規則(世界保健機関において千九百六十九年に採択された国際保健規則をいう。以下同じ。)は、世界の交通に対する阻害は最小限に抑えつつ、対象疾患について必要な措置を講ずることにより疾病の国際的伝播を防止することを目的として定めているものである。我が国も、国際社会の一員として、国際保健規則の趣旨に沿った対策のための体制を構築し、地球規模の対策に積極的に参加することが重要である。さらに、国際保健規則において新たな基準等が定められた場合は、必要に応じて、その基準等と国内の体制との整合を図るため、速やかに所要の措置を講ずることとする。

六 世界保健機関との連携等国際協力

1 国はマラリアをはじめとする寄生虫対策について、世界保健機関等と連携しながら、国際的な取組を積極的に行っていくことが重要である。

2 国は政府開発援助による二国間協力事業により、途上国の感染症対策のための人材の養成や研究の推進を図るとともに、これらの国との研究協力の構築や情報の共有に努めることが重要である。

七 外国人に対する適用

法は、国内に居住し又は滞在する外国人についても同様に適用されるため、保健所等の窓口に我が国の感染症対策を外国語で説明したパンフレットを備えておく等の取組を行うことが重要である。

八 薬剤耐性対策

1 国は、薬剤耐性対策アクションプランに基づき、専門機関や都道府県等と連携し、薬剤耐性対策を推進する必要がある。

2 都道府県等は、医療機関において、薬剤耐性の対策及び抗菌薬の適正使用が行われるよう、適切な方策を講じることが重要である。

改正文 (平成一二年一二月二八日厚生省告示第六二三号) 抄

平成十三年一月六日から適用する。

改正文 (平成一五年一二月一九日厚生労働省告示第四三八号) 抄

公布の日から適用する。

改正文 (平成一七年三月三一日厚生労働省告示第一五八号) 抄

平成十七年四月一日から適用する。

改正文 (平成一九年三月三〇日厚生労働省告示第七一号) 抄

平成十九年四月一日から適用する。

改正文 (平成二二年三月三一日厚生労働省告示第一三九号) 抄

平成二十二年四月一日から適用する。

改正文 (平成二三年五月二日厚生労働省告示第一五二号) 抄

平成二十三年五月二日から適用する。

改正文 (平成二六年一一月二一日厚生労働省告示第四三九号) 抄

薬事法等の一部を改正する法律の施行の日(平成二十六年十一月二十五日)から適用する。

改正文 (平成二七年三月三一日厚生労働省告示第一九三号) 抄

平成二十七年四月一日から適用する。

改正文 (令和三年二月三日厚生労働省告示第三五号) 抄

令和三年二月十三日から適用する。

附 則 (令和五年五月二六日厚生労働省告示第二〇二号) 抄

この告示は、令和六年四月一日から適用する。