添付一覧
温度(℃) |
密度(g/cm3) |
温度(℃) |
密度(g/cm3) |
温度(℃) |
密度(g/cm3) |
温度(℃) |
密度(g/cm3) |
0 |
0.99984 |
10 |
0.99970 |
20 |
0.99820 |
30 |
0.99565 |
1 |
0.99990 |
11 |
0.99961 |
21 |
0.99799 |
31 |
0.99534 |
2 |
0.99994 |
12 |
0.99950 |
22 |
0.99777 |
32 |
0.99503 |
3 |
0.99996 |
13 |
0.99938 |
23 |
0.99754 |
33 |
0.99470 |
4 |
0.99997 |
14 |
0.99924 |
24 |
0.99730 |
34 |
0.99437 |
5 |
0.99996 |
15 |
0.99910 |
25 |
0.99704 |
35 |
0.99403 |
6 |
0.99994 |
16 |
0.99894 |
26 |
0.99678 |
36 |
0.99368 |
7 |
0.99990 |
17 |
0.99877 |
27 |
0.99651 |
37 |
0.99333 |
8 |
0.99985 |
18 |
0.99860 |
28 |
0.99623 |
38 |
0.99297 |
9 |
0.99978 |
19 |
0.99841 |
29 |
0.99594 |
39 |
0.99259 |
G03500
39.微生物限度試験法
微生物限度試験法は、試料中に存在する増殖能力を有する特定の微生物の定性試験及び定量試験に用いる。本試験法には、生菌数試験、真菌数試験、大腸菌群試験、大腸菌試験及びサルモネラ試験が含まれる。試験を行うに当たっては、外部からの微生物汚染が起こらないように、細心の注意を払う必要がある。また、被検試料が抗菌作用を示し、試験結果に影響を及ぼすような場合には、希釈、ろ過、中和又は不活化等の手段により可能な限りその影響を除去しなければならない。それぞれの原料又は製品の任意に選択した異なる数か所から採取したものを混和して試料とし、次に示す試験法により試験を行う。本試験を行うに当たっては、効果的な精度管理を確保するとともにバイオハザード防止に十分留意する。
1.生菌数試験
本試験は、好気的条件において増殖し得る中温性の細菌及び真菌を測定する試験である。本試験では、低温菌、高温菌、好塩菌、嫌気性菌、特殊な成分を増殖に要求する菌等は、大量に存在していても集落を形成しないことがある。なお、ここに示した方法と同等以上の検出感度及び精度を有する場合は、自動化した方法等の代替法の適用も可能である。
試料液の調製
別に規定するもののほか、次の方法による。ただし、試料の性質によっては、規定された量よりも大量の緩衝液等で分散させたり、異なる量の試料を使用しなければならない場合がある。必要に応じてブレンダー等で均一に分散させることも可能である。適当な界面活性剤(例えば、0.1w/v%ポリソルベート80)を加えて乳化させてもよい。この場合、45℃以下の温度であれば加温して乳化させてもよい。ただし、30分間以上試料を加温してはならない。試料液は、pH6~8に調整し、調製後1時間以内に使用しなければならない。
第1法 試料10gをリン酸緩衝液、0.1%ペプトン水又はペプトン食塩緩衝液90mLと混合し、均一に分散させ、試料液とする。
第2法 試料1.0gをリン酸緩衝液、0.1%ペプトン水又はペプトン食塩緩衝液100mLと混合し、均一に分散させ、試料液とする。
第3法 試料1.0g以上を量り、9倍量又は100倍量のリン酸緩衝液、0.1%ペプトン水又はペプトン食塩緩衝液と混合し、均一に分散させ、試料液とする。また、これらの試料液で試験法の適合性が得られない場合には、試料1.0gをリン酸緩衝液、0.1%ペプトン水又はペプトン食塩緩衝液で200倍以上に希釈して適当な濃度としたものを試料液とするか、又は、下記の操作法の(2)メンブランフィルター法等を用い、試験法の適合性を考慮して試験する。
操作法
別に規定するもののほか、次の(1)の方法を用いる。
なお、試料中の抗菌性物質除去のためろ過が必要な場合には、別に規定するもののほか、下記の(2)に従ってろ過後洗浄したメンブランフィルターを標準寒天培地の表面に置き、(1)の培養条件により試験を行う。
(1) 寒天平板混釈法
本試験法では、直径9~10cmのペトリ皿を、一希釈段階につきそれぞれ2枚以上使用する。1mLの試料液又は試料液を希釈した液を無菌的にペトリ皿に分注する。これにあらかじめ45℃以下に保温した標準寒天培地15~20mLを加えて混和する。寒天の固化後、35±1℃で48±2時間培養する。出現集落数を計測し、試料1g当たりの生菌数を算出する。多数の集落が出現するときは、一平板当たりの出現集落数が25~250の平板から得られる計測結果を用いて生菌数を算出する。
(2) メンブランフィルター法
本試験法は、試料に抗菌性物質が含まれる場合にこれをろ過することにより除去して試験する方法である。メンブランフィルターは、孔径0.45μm以下の適当な材質のものを使用する。メンブランフィルターの直径は、約50mmのものが望ましいが、異なる直径のものも使用できる。メンブランフィルター、フィルター装置、培地等は全て十分に滅菌されていなければならない。通例、20mLの試料液を量り、2枚のメンブランフィルターでそれぞれ10mLずつろ過する。必要に応じて試料液を希釈してもよい。菌濃度が高い場合には、1枚のメンブランフィルター当たりの出現集落数が10~100となるように希釈することが望ましい。試料液をろ過した後、各メンブランフィルターは、リン酸緩衝液、0.1%ペプトン水、ペプトン食塩緩衝液等を洗浄液として用い、3回以上ろ過洗浄する。1回のろ過洗浄に使用する洗浄液の量は、約100mLとするが、メンブランフィルターの直径が約50mmではない場合には、大きさに従って洗浄液の量を調整する。脂質を含む試料の場合には、洗浄液にポリソルベート80等を添加してもよい。
培地の性能及び試験法の適合性
(1) 試験菌液の調製
Escherichia coli(NBRC 3972、ATCC 8739又はNCIMB 8545)、Bacillus subtilis(NBRC 3134、ATCC 6633又はNCIMB 8054)、Staphylococcus aureus subsp. aureus(NBRC 13276、ATCC 6538又はNCIMB 9518)、Candida albicans(NBRC 1594又はATCC 10231)及びAspergillus brasiliensis(NBRC 9455又はATCC 16404)又はこれらと同等と考えられる菌株を使用する。細菌は、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地又は標準寒天培地を用い、35±1℃で18~24時間、C.albicansはソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地、サブロー・ブドウ糖液体培地、サブロー・ブドウ糖寒天培地又はジクロラン・グリセリン寒天培地を用い、25±1℃で2~3日間、A.brasiliensisはサブロー・ブドウ糖寒天培地、ポテト・デキストロース寒天培地又はジクロラン・グリセリン寒天培地を用い、25±1℃で5~7日間、又は良好な胞子形成が認められるまで培養する。
培養した菌をそれぞれをペプトン食塩緩衝液又はリン酸緩衝液で希釈し、適切な濃度の試験菌液を調製する。A.brasiliensisの胞子を懸濁する場合には、希釈液にポリソルベート80を0.05%加えても良い。調製した菌液は2時間以内又は冷蔵保存した場合には24時間以内に使用する。また、B.subtilis及びA.brasiliensisは、安定な胞子液を使用してもよい。
(2) 培地の性能試験
試験に使用する培地は、操作法の項に従い、試料液の代わりに、1mL当たりの出現集落数が100以下となるように調製した試験菌液1mLを加えて混和し、35±1℃、46時間以内で培養するとき、十分な増殖及び接種菌数の回収が認められなければならない。
(3) 試験法の適合性
試験法の適合性の確認は、以下の方法により行う。また、試験結果に影響を及ぼすような製品の原料、製造工程又は成分組成の変更があった場合には、再度、適合性を確認する。
一平板当たりの接種菌の出現集落数が100以下となるように、試験菌液を試料液及び対照にそれぞれ加える。接種する試験菌液の量は試料液量の1%を超えてはならない。対照には、試料液の調製に用いたリン酸緩衝液、0.1%ペプトン水又はペプトン食塩緩衝液を用いる。
試験菌株ごとに、操作法の項に従って試験を行い、35±1℃、46時間以内で培養後、菌数を測定する。試料液から回収された菌数と対照から回収された菌数とを比較する。試料存在下での菌数が対照の菌数の1/2~2倍以内にない場合、希釈、ろ過、中和、不活化等の手段によって可能な限りその影響を除去しなければならない。ただし、希釈、ろ過、中和、不活化等の手段によっても、上記の基準に満たない場合には、微生物の発育とその規格値に見合った最も低い濃度、及び基準に最も近くなる試験条件で試料の試験を行う。
2.真菌(酵母及びカビ)数試験
本試験は、好気的条件において増殖し得る中温性の真菌を測定する試験である。なお、ここに示した方法と同等以上の検出感度及び精度を有する場合には、自動化した方法等の代替法の適用も可能である。
試料液の調製
別に規定するもののほか、1.生菌数試験の試料液の調製の項に従って調製する。
操作法
本試験法では、直径9~10cmのペトリ皿を、一希釈段階につき、それぞれ2枚以上使用する。1mLの試料液又は試料液を希釈した液を無菌的にペトリ皿に分注する。これにあらかじめ45℃以下に保温したジクロラン・グリセリン寒天培地15~20mLを加えて混和する。寒天の固化後、25±1℃で5~7日間培養する。信頼性の高い集落数の計測値が得られたと判断される場合に限り、5日間培養後の計測値を用いてもよい。出現集落数を計測し、試料1g当たりの真菌数を算出する。多数の集落が出現するときは、一平板当たりの出現集落数が10~150の平板から得られる計測結果を用いて真菌数を算出する。
なお、試料中の抗菌性物質除去のためろ過が必要な場合には、別に規定するもののほか、1.生菌数試験の操作法(2)に従ってろ過後洗浄したメンブランフィルターをジクロラン・グリセリン寒天培地の表面に置き、本操作法の培養条件により試験を行う。
培地の性能及び試験法の適合性
(1) 試験菌液の調製
Candida albicans(NBRC 1594又はATCC 10231)及びAspergillus brasiliensis(NBRC 9455又はATCC 16404)又はこれらと同等と考えられる菌株を使用する。各試験菌液は、1.生菌数試験の培地の性能及び試験法の適合性(1)に従って調製する。
(2) 培地の性能試験
試験に使用する培地は、操作法の項に従い、試料液の代わりに、1mL当たりの出現集落数が100以下となるように調製した試験菌液1mLを加えて混和し、25±1℃、5日間以内で培養するとき、十分な増殖及び接種菌数の回収が認められなければならない。
(3) 試験法の適合性
1.生菌数試験の培地の性能及び試験法の適合性(3)に準じて行う。ただし、培養は25±1℃、5日間以内で行う。
3.大腸菌群及び大腸菌試験
本試験は、大腸菌群(Coliforms)及び大腸菌(Escherichia coli)を測定する試験である。本試験で検出の目的とする大腸菌群及び大腸菌は、最終製品だけではなく、原料、製造工程の中間体等における微生物汚染を評価する場合に重要であり、それらの中に存在することは好ましくない。
以下、本試験法を用いる場合において、例えば、「大腸菌群は認めない。」とあるのは、大腸菌群の確認試験を行うとき、大腸菌群が陰性であることを示し、「大腸菌は認めない。」とあるのは、大腸菌の確認試験を行うとき、大腸菌が陰性であることを示す。
前培養液の調製
別に規定するもののほか、次の方法による。ただし、試料の性質によっては、規定された量よりも大量の液体培地で分散させても差し支えない。必要に応じてブレンダー等で均一に分散させることも可能である。試料と混合した培地のpHは6~8に調整し、混合後1時間以内に培養しなければならない。
なお、試料中の抗菌性物質除去のためろ過が必要な場合には、別に規定するもののほか、1.生菌数試験の操作法(2)に従ってろ過後洗浄したメンブランフィルターをラウリル硫酸ブイヨン培地に入れ、pHを6~8に調整し、35±1℃で48±2時間培養したものを前培養液とする。
第1法 1.生菌数試験の試料液の調製の第1法に従って調製した試料液10mLをラウリル硫酸ブイヨン培地90mLと混合し、35±1℃で48±2時間培養したものを前培養液とする。
第2法 試料1.0gをラウリル硫酸ブイヨン培地100mLと混合して均一に分散させ、35±1℃で48±2時間培養したものを前培養液とする。
第3法 1.生菌数試験の試料液の調製の第1法に従って調製した試料液10mLをラウリル硫酸ブイヨン培地90mLと混合し、35±1℃で48±2時間培養したものを前培養液とする。なお、試料の量に限りがある(すなわち、1000g未満の)場合には、試料の量の1%(ただし、1.0g以上)を量り、9倍量のリン酸緩衝液、0.1%ペプトン水又はペプトン食塩緩衝液と混合して均一に分散させ、試料液とする。この液10mLをラウリル硫酸ブイヨン培地90mLと混合して均一に分散させ、35±1℃で48±2時間培養したものを前培養液とする。また、これらの前培養液で試験法の適合性が得られない場合には、試料0.20gをラウリル硫酸ブイヨン培地100mLと混合して均一に分散させ、35±1℃で48±2時間培養したものを前培養液とし、この操作を5回行って得られた前培養液それぞれにつき試験を行うか、又はメンブランフィルター法等を用い、試験法の適合性を考慮して試験する。
操作法
(1) 大腸菌群の確認試験
前培養液を軽く振った後、1白金耳量をとってBGLB培地に接種し、35±1℃で48±2時間培養する。培養後、ガス発生の有無を確認する。ガスの発生を認めない場合には、大腸菌群陰性と判定する。ガスの発生を認めた場合には、標準寒天平板培地に塗抹し、35±1℃で18~24時間培養した後、発育した集落についてグラム染色性を確認し、グラム陰性無芽胞桿菌である場合には、大腸菌群陽性と判定する。
(2) 大腸菌の確認試験
前培養液を軽く振った後、1白金耳量をとってEC培地に接種し、44.5±0.2℃又は45.5±0.2℃で24±2時間培養する。培養後、ガス及び濁りの発生の有無を確認し、ガス及び濁りの発生を認めない場合には、更に48±2時間まで培養を継続して再度判定する。再判定の結果、ガス及び濁りの発生を認めない場合には、大腸菌陰性とする。ガス又は濁りの発生を認めた場合には、その試験管から1白金耳量をEMB寒天培地上に塗抹し、35±1℃で18~24時間培養する。EMB寒天培地上で中心部が暗色(金属光沢の有無は問わない。)の集落が観察されない場合には、大腸菌陰性と判定する。EMB寒天培地上で大腸菌が疑われる集落については、2個以上をそれぞれ標準寒天斜面培地に移植し、35±1℃で18~24時間培養した後、グラム染色性を確認する。また、ラウリル硫酸ブイヨン培地に接種し、35±1℃で48±2時間培養した後、ガス発生の有無を確認する。グラム陽性の場合又はガスの発生を認めない場合には、大腸菌陰性とする。ガスの発生を認めたグラム陰性菌についてIMViC試験(インドール産生試験、メチルレッド反応試験、フォーゲス・プロスカウエル試験及びクエン酸利用試験)を行い、試験結果のパターンが「++--」である菌を大腸菌と判定する。また、IMViC試験の代わりに、大腸菌迅速同定用キットを用いてもよい。
培地の性能及び試験法の適合性
(1) 試験菌液の調製
Escherichia coli(NBRC 3972、ATCC 8739又はNCIMB 8545)又はこれらと同等と考えられる菌株を使用する。試験菌液は、1.生菌数試験の培地の性能及び試験法の適合性(1)に従い、1mL当たりの出現集落数が1000以下となるように調製する。
(2) 培地の性能試験
試験に使用する培地は、上記の操作法に従い、試料液又は試料の代わりに、試験菌液0.1mLを加え、規定された最短培養期間で培養するとき、十分な増殖及び接種菌の回収が認められなければならない。このとき、BGLB培地及びラウリル硫酸ブイヨン培地では、ガスの発生が認められなければならない。
(3) 試験法の適合性
試験法の適合性の確認は、以下の方法により行う。また、試験結果に影響を及ぼすような製品の原料、製造工程又は成分組成の変更があった場合には、再度、適合性を確認する。
試料液又は試料を混合したラウリル硫酸ブイヨン培地及び対照に、試験菌液0.1mLをそれぞれ接種し、上記の前培養液の調製に準じて前培養を行う。接種する試験菌液の量は試料液量の1%を超えてはならない。対照には、ラウリル硫酸ブイヨン培地に試料液の調製に用いたリン酸緩衝液、0.1%ペプトン水又はペプトン食塩緩衝液を混合したもの又はラウリル硫酸ブイヨン培地を用いる。
操作法の項に従って、規定された最短培養期間で試験する。試料の存在下において、対照と同様な試験菌の十分な発育が認められない場合、希釈、ろ過、中和、不活化等の手段によって可能な限りその影響を除去しなければならない。ただし、希釈、ろ過、中和、不活化等の手段によっても、上記の基準に満たない場合には、微生物の発育とその規格値に見合った最も低い濃度及び基準に最も近くなる試験条件により試料の試験を行う。
4.サルモネラ試験
本試験は、サルモネラ(Salmonella)を測定する試験である。本試験で検出の目的とするサルモネラは、最終製品だけではなく、原料、製造工程の中間体等における微生物汚染を評価する場合に重要であり、それらの中に存在することは好ましくない。
以下、本試験法を用いる場合において、例えば、「サルモネラは認めない。」とあるのは、サルモネラが陰性であることを示す。
前培養液の調製
別に規定するもののほか、次の方法による。ただし、試料の性質によっては、規定された量よりも大量の液体培地で分散させても差し支えない。必要に応じてブレンダー等で均一に分散させることも可能である。試料と混合した培地のpHは6~8に調整し、混合後1時間以内に培養しなければならない。
なお、試料中の抗菌性物質除去のためにろ過が必要な場合には、別に規定するもののほか、1.生菌数試験の操作法(2)に従ってろ過後洗浄したメンブランフィルターを乳糖ブイヨン培地に入れ、pHを6~8に調整し、35±1℃で24±2時間培養したものを前培養液とする。
第1法 試料25gを乳糖ブイヨン培地225mLと混合して均一に分散させ、35±1℃で24±2時間培養したものを前培養液とする。
第2法 試料25gを乳糖ブイヨン培地225mLと混合して均一に分散させ、35±1℃で24±2時間培養したものを前培養液とする。なお、試料の量に限りがある(すなわち、2500g未満の)場合には、試料の量の1%(ただし、1.0g以上)を量り、9倍量の乳糖ブイヨン培地(ただし、100mL以上)と混合して均一に分散させ、35±1℃で24±2時間培養したものを前培養液とする。また、これらの前培養液で試験法の適合性が得られない場合には、試料0.20gを乳糖ブイヨン培地100mLと混合して均一に分散させ、35±1℃で24±2時間培養したものを前培養液とし、この操作を5回行って得られた前培養液それぞれにつき試験を行うか、又はメンブランフィルター法等を用い、試験法の適合性を考慮して試験する。
操作法
(1) サルモネラ集落の確認
前培養液を軽く振った後、0.1mLをラパポート・バシリアジス液体培地10mLに接種し、42±0.2℃で24±2時間培養する。また、前培養液1mLをテトラチオネート液体培地10mLに接種し、試料の菌量が多い場合には43±0.2℃、試料の菌量が少ない場合には35±2℃でそれぞれ24±2時間培養する。培養後、それぞれの液体培地から亜硫酸ビスマス寒天培地、XLD寒天培地及びヘクトエン・エンテリック寒天培地上に塗抹し、35±2℃で24±2時間培養する。それぞれの寒天培地上の定型的集落(下表参照)又はサルモネラが疑われる集落の有無を確認する。定型的集落又はサルモネラが疑われる集落が認められない場合には、非定型的集落(下表参照)の有無を確認する。亜硫酸ビスマス寒天培地で24±2時間培養しても定型的集落又はサルモネラが疑われる集落が認められない場合には、更に24±2時間追加培養する。いずれの培地上においても集落が認められない場合には、サルモネラ陰性と判定する。
定型的又は非定型的なサルモネラ集落の形態学的特徴
選択培地 |
定型的集落の特徴 |
非定型的集落の特徴 |
亜硫酸ビスマス 寒天培地 |
褐色、灰色、又は黒色を呈し、金属光沢が見られる場合がある。周辺の培地は、初めは通常褐色であるが、培養が進むと黒色になり、いわゆるハローを形成することがある。菌株によっては緑色を呈するが、周辺の培地が暗色になることはないか、又はほとんどない。 |
|
XLD 寒天培地 |
桃色を呈し、中央部が黒色又は黒色でない場合がある。 多くは中央に大きな光沢のある黒色部分を有するか、又は黒色に見えることがある。 |
黄色を呈し、中央部が黒色又は黒色でない場合がある。 |
ヘクトエン・エンテリック 寒天培地 |
青緑~青色を呈し、中央部は黒色又は黒色でない場合がある。 多くは中央に大きな光沢のある黒色部分を有するか、又は黒色に見えることがある。 |
黄色を呈し、中央部が黒色又は黒色でない場合がある。 |
(2) 寒天半斜面培地による確認
定型的集落又はサルモネラが疑われる集落を2個以上釣菌し、それぞれTSI寒天培地及びLIA培地の高層部と斜面に接種し、35±1℃で24±2時間培養する。また、亜硫酸ビスマス寒天培地で合計48±2時間培養、又はXLD寒天培地若しくはヘクトエン・エンテリック寒天培地で24±2時間培養しても、定型的集落又はサルモネラが疑われる集落が認められない場合は、2個以上の非定型集落を釣菌し、それぞれTSI寒天培地及びLIA培地の高層部と斜面に接種し、35±1℃で24±2時間培養する。TSI寒天培地では、サルモネラが存在する場合、高層部は酸性(黄色)反応、斜面部はアルカリ(赤色)反応が認められ、硫化水素は産生される場合とされない場合がある。LIA培地では、サルモネラが存在する場合、試験管の高層部でアルカリ(紫色)反応が認められる。試験管の高層部が明らかに黄色になった場合に限り酸性(陰性)反応とみなす。ほとんどのサルモネラはLIA培地で硫化水素を産生する。
サルモネラの可能性がある結果が得られた場合には、キット使用を含む、更に詳細な生化学的試験と血清学的試験を併用することで、サルモネラの同定、型別試験を行うことが望ましい。
培地の性能及び試験法の適合性
(1) 試験菌液の調製
Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium(ATCC 14028)若しくはSalmonella enterica subsp. enterica serovar Abony(NBRC 100797又はNCTC 6017)又はこれらと同等と考えられる菌株を使用する。試験菌液は、1.生菌数試験、培地の性能及び試験法の適合性の(1)に従い、1mL当たりの出現集落数が1000以下となるように調製する。
(2) 培地の性能試験
試験に使用する各培地は、操作法の項に従い、試料の代わりに、試験菌液0.1mLを加え、規定された最短培養期間で培養するとき、十分な増殖及び接種菌の回収が認められなければならない。
(3) 試験法の適合性
試験法の適合性の確認は、以下の方法により行う。また、試験結果に影響を及ぼすような製品の原料、製造工程又は成分組成の変更があった場合には、再度、適合性を確認する。
試料を混合した乳糖ブイヨン培地及び対照に、試験菌液0.1mLをそれぞれ接種する。接種する試験菌液の量は培地量の1%を超えてはならない。対照には、乳糖ブイヨン培地を用いる。
操作法の項に準じて試験を行い、規定された最短培養期間で試験する。試料の存在下において、対照と同様な試験菌の十分な発育が認められない場合、希釈、ろ過、中和、不活化等の手段によって可能な限りその影響を除去しなければならない。ただし、希釈、ろ過、中和、不活化等の手段によっても、上記の基準に満たない場合には、微生物の発育とその規格値に見合った最も低い濃度、及び基準に最も近くなる試験条件で試料の試験を行う。
5.緩衝液と培地
微生物限度試験用の緩衝液及び培地は次のものを用いる。他の培地でも、類似の栄養成分を含み、試験対象となる微生物に対して類似の選択性及び増殖性を持つものは使用して差し支えない。緩衝液及び培地に配合する試薬・試液は、微生物限度試験に適したものを用いる。また、以下の調製法において高圧蒸気滅菌を行う場合には、あらかじめ、混和した成分を、必要に応じて加熱又は煮沸をし、均一に分散又は溶解しておく。
(1) 緩衝液
(i) リン酸緩衝液
リン酸二水素カリウム34gを水約500mLに溶かす。水酸化ナトリウム試液(1mol/L)約175mLを加え、pH7.1~7.3に調整し、水を加えて1000mLとし、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌後、冷所で保存する。用時、この液を水で800倍に希釈し、121℃で15~20分間滅菌して用いる。
(ii) ペプトン食塩緩衝液
ペプトン 1.0g
リン酸二水素カリウム 3.6g
リン酸水素二ナトリウム二水和物 7.2g
塩化ナトリウム 4.3g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは6.9~7.1とする。
(iii) 0.1%ペプトン水
ペプトン 1.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。
(2) 培地
(i) 標準寒天培地
トリプトン 5.0g
酵母エキス 2.5g
D(+)―グルコース 1.0g
寒天 15.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは6.8~7.2とする。
(ii) ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地
ペプトン(カゼイン製) 17.0g
ペプトン(ダイズ製) 3.0g
D(+)―グルコース 2.5g
リン酸水素二カリウム 2.5g
塩化ナトリウム 5.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは7.1~7.5とする。
(iii) ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地
ペプトン(カゼイン製) 15.0g
ペプトン(ダイズ製) 5.0g
塩化ナトリウム 5.0g
寒天 15.0g
水 1000mL
全成分を混和し、1分間煮沸する。121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは7.1~7.5とする。
(iv) サブロー・ブドウ糖液体培地
ペプトン 10.0g
D(+)―グルコース 20.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは5.4~5.8とする。
(v) サブロー・ブドウ糖寒天培地
ペプトン 10.0g
D(+)―グルコース 40.0g
寒天 15.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは5.4~5.8とする。
(vi) ジクロラン・グリセリン寒天培地
ペプトン 5.0g
D(+)―グルコース 10.0g
リン酸二水素カリウム 1.0g
硫酸マグネシウム七水和物 0.5g
ジクロラン 2.0mg
クロラムフェニコール 0.10g
寒天 15.0g
水 1000mL
全成分を混和し、グリセリン220gを添加し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは5.4~5.8とする。
(vii) ポテト・デキストロース寒天培地
ジャガイモ浸出液 200mL
D(+)―グルコース 20.0g
寒天 20.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは5.4~5.8とする。
(viii) ラウリル硫酸ブイヨン培地
トリプトース又はトリプチケース 20.0g
ラクトース 5.0g
リン酸水素二カリウム 2.75g
リン酸二水素カリウム 2.75g
塩化ナトリウム 5.0g
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。ガス発生の確認に用いる場合には発酵管を入れて滅菌する。滅菌後のpHは6.6~7.0とする。
(ix) BGLB培地
ペプトン 10.0g
ラクトース 10.0g
乾燥ウシ胆汁 20.0g
ブリリアントグリーン 13.3mg
水 1000mL
全成分を混和し、発酵管を入れて121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは7.0~7.4とする。
(x) EC培地
トリプトース又はトリプチケース 20.0g
ラクトース 5.0g
胆汁酸塩 1.5g
リン酸水素二カリウム 4.0g
リン酸二水素カリウム 1.5g
塩化ナトリウム 5.0g
水 1000mL
全成分を混和し、発酵管を入れて121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは6.7~7.1とする。
(xi) EMB寒天培地
ペプトン 10.0g
ラクトース 10.0g
リン酸水素二カリウム 2.0g
エオシンY 0.40g
メチレンブルー 65mg
寒天 15.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。50℃に冷却後、十分に混和してペトリ皿に分注し、平板を作製する。滅菌後のpHは6.9~7.3とする。
(xii) 乳糖ブイヨン培地
ペプトン 5.0g
肉エキス 3.0g
ラクトース 5.0g
水 1000mL
全成分を混和し、121℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは6.7~7.1とする。
(xiii) ラパポート・バシリアジス液体培地
トリプトン 5.0g
リン酸二水素カリウム 1.6g
塩化ナトリウム 8.0g
水 1000mL
全成分を混和した液に、塩化マグネシウム六水和物400g及び水1000mLを混合した溶液並びにマラカイトグリーンシュウ酸塩400mg及び水100mLを混合した溶液をそれぞれ100mL及び10mL加えて混和し、115℃で15分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは5.3~5.7とする。
(xiv) テトラチオネート液体培地
ポリペプトン 5.0g
胆汁酸塩 1.0g
炭酸カルシウム 10.0g
チオ硫酸ナトリウム五水和物 30.0g
水 1000mL
全成分を混和し、沸騰するまで加熱して均一な懸濁液とした後、45℃以下に冷却する。高圧蒸気滅菌をしてはならない。懸濁液のpHは8.2~8.6とする。
使用当日に、水20mLにヨウ化カリウム5g及びヨウ素6gを溶かした液を加える。さらに、ブリリアントグリーン0.1g及び水100mLを混合して滅菌した溶液10mLを加え、混和する。その後は培地に熱を加えてはならない。
(xv) 亜硫酸ビスマス寒天培地
ポリペプトン又はペプトン 10.0g
肉エキス 5.0g
D(+)―グルコース 5.0g
リン酸水素二ナトリウム 4.0g
硫酸鉄(Ⅱ) 0.3g
亜硫酸ビスマス・インジケーター 8.0g
ブリリアントグリーン 25mg
寒天 20.0g
水 1000mL
全成分を混和し、煮沸して均一な懸濁液とした後、50℃に冷却する。高圧蒸気滅菌をしてはならない。この液のpHは7.5~7.9とする。冷却後、十分に混和してペトリ皿に分注し、平板を作製する。
(xvi) XLD寒天培地
酵母エキス 3.0g
L―リシン 5.0g
D―キシロース 3.75g
スクロース 7.5g
ラクトース 7.5g
デオキシコール酸ナトリウム 2.5g
クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウム 0.8g
チオ硫酸ナトリウム 6.8g
塩化ナトリウム 5.0g
フェノールレッド 80mg
寒天 15.0g
水 1000mL
全成分を混和し、沸騰するまで加熱して溶かす。高圧蒸気滅菌をしてはならない。過剰な加熱は避ける。溶解後のpHは7.2~7.6とする。50℃に冷却した後、十分に混和してペトリ皿に分注し、平板を作製する。
(xvii) ヘクトエン・エンテリック寒天培地
ペプトン 12.0g
酵母エキス 3.0g
スクロース 12.0g
ラクトース 12.0g
胆汁酸塩 9.0g
クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウム 1.5g
チオ硫酸ナトリウム 5.0g
酸性フクシン 0.1g
サリシン 2.0g
塩化ナトリウム 5.0g
ブロモチモールブルー 64mg
寒天 13.5g
水 1000mL
全成分を混和し、沸騰するまで加熱して溶かす(1分以上煮沸しない)。過剰な加熱は避ける。溶解後のpHは7.4~7.8とする。50℃に冷却した後、十分に混和してペトリ皿に分注し、平板を作製する。
(xviii) TSI寒天培地
ポリペプトン 20.0g
D(+)―グルコース 1.0g
スクロース 10.0g
ラクトース 10.0g
硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ)六水和物 0.2g
チオ硫酸ナトリウム 0.2g
塩化ナトリウム 5.0g
フェノールレッド 25mg
寒天 13.0g
水 1000mL
全成分を混和し、試験管に分注して118℃で15~20分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは7.1~7.5とする。半斜面培地として使用する。なお、上記の組み合わせに加えて、肉エキス及び酵母エキス各3.0gを含むものを使用しても差し支えない。ただし、この場合の高圧蒸気滅菌温度は121℃とする。
(xix) LIA培地
ペプトン 5.0g
酵母エキス 3.0g
D(+)―グルコース 1.0g
L―リシン塩酸塩 10.0g
クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウム 0.5g
チオ硫酸ナトリウム 40mg
ブロモクレゾールパープル 20mg
寒天 12.5g
水 1000mL
全成分を混和し、試験管に分注して121℃で12~15分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後のpHは6.5~6.9とする。半斜面培地として使用する。
G03600
40.ヒ素試験法
ヒ素試験法は、添加物中に混在するヒ素の限度試験である。
以下、本試験法を用いる場合において、例えば、「Asとして3μg/g以下(0.50g、第1法、標準色 ヒ素標準液3.0mL、装置B)」とあるのは、本品0.50gを量って試料とし、第1法により検液を調製し、標準色の調製にヒ素標準液3.0mLを用い、装置Bを用いる方法により試験を行うとき、ヒ素が、Asとして3μg/g以下であることを示す。
装置B
概略は、図1による。
図1
A:発生瓶(肩までの容量約70mL)
B:排気管
C:ガラス管(内径5.6mm、吸収管に入れる部分は先端を内径1mmに引き伸ばす。)
D:吸収管(内径10mm)
E:小孔
F:ガラス繊維(約0.2g)
G:5mLの標線
H及びJ:ゴム栓
L:40mLの標線
Bに約30mmの高さにFを詰め、酢酸鉛(Ⅱ)試液及び水の等容量混液で均等に潤した後、下端から弱く吸引して、過量の液を除く。これをHの中心に垂直に差し込み、Bの下部のEは下にわずかに突き出るようにしてAに付ける。Bの上端にはCを垂直に固定したJを付ける。Cの排気管側の下端は、Jの下端と同一平面とする。
装置C
概略は、図2による。
A:定量ポンプ
B1及びB2:ミクシングジョイント
C:反応管
D:圧力計
E:流量計
F:気液セパレータ
図2
操作法
(1) 検液の調製
別に規定するもののほか、次の方法による。
第1法 別に規定する量の試料を量り、水5mLを加え、必要な場合には、加温して溶かし、検液とする。
第2法 別に規定する量の試料を量り、水5mL及び硫酸1mLを加える。ただし、無機酸の場合には、硫酸を加えない。これに亜硫酸水10mLを加え、小ビーカーに入れ、水浴上で加熱して約2mLとなるまで蒸発し、水を加えて5mLとし、検液とする。
第3法 別に規定する量の試料を量り、白金製、石英製又は磁製のるつぼに入れ、硝酸マグネシウム六水和物・エタノール(95)溶液(1→50)10mLを加え、エタノールに点火して燃焼させた後、徐々に加熱して炭化し、電気炉に入れて450~550℃で灰化する。なお炭化物が残るときは、少量の硝酸マグネシウム六水和物・エタノール(95)溶液(1→50)で潤し、同様の操作を繰り返し、灰化する。冷後、残留物に塩酸3mLを加え、水浴上で加熱して溶かし、検液とする。
第4法 別に規定する量の試料を量り、白金製、石英製又は磁製のるつぼに入れ、硝酸マグネシウム六水和物・エタノール(95)溶液(1→10)10mLを加え、エタノールに点火して燃焼させた後、徐々に加熱して炭化し、電気炉に入れて450~550℃で灰化する。なお炭化物が残るときは、少量の硝酸マグネシウム六水和物・エタノール(95)溶液(1→50)で潤し、同様の操作を繰り返し、灰化する。冷後、残留物に塩酸3mLを加え、水浴上で加熱して溶かし、検液とする。
第5法 別に規定する量の試料を量り、白金製、石英製又は磁製のるつぼに入れ、硝酸マグネシウム六水和物・エタノール(95)溶液(1→10)10mLを加え、エタノールに点火して燃焼させた後、徐々に加熱して炭化し、電気炉に入れて450~550℃で灰化する。なお炭化物が残るときは、少量の硝酸マグネシウム六水和物・エタノール(95)溶液(1→10)で潤し、同様の操作を繰り返し、灰化する。冷後、残留物に塩酸3mLを加え、水浴上で加熱して溶かし、検液とする。なお残留物が塩酸に溶けない場合には、水10mLを加えて懸濁する。冷後、定量分析用ろ紙(5種C)を用いてろ過する。容器内の残留物は温湯3mLずつを用いて2回洗い、先のろ紙を用いてろ過した後、ろ紙及びろ紙上の残留物を水5mLで洗い、検液とする。
(2) 試験
別に規定するもののほか、次の方法による。
(i) 装置Bを用いる方法 検液を発生瓶に入れ、ブロモフェノールブルー試液1滴を加え、アンモニア水、アンモニア試液又は塩酸(1→4)で中和し、塩酸(1→2)5mL及びヨウ化カリウム試液5mLを加え、2~3分間放置した後、塩化スズ(Ⅱ)試液(酸性)5mLを加えて室温で10分間放置する。次に、水を加えて40mLとし、ヒ素分析用亜鉛2gを加え、直ちにB及びCを連結したHを発生瓶に付ける。Cの細管部の端は、あらかじめヒ化水素吸収液5mLを入れたDの底に達するように入れておく。次に、Aは25℃の水中に肩まで浸し、1時間放置する。Dを外し、必要な場合には、ピリジンを加えて5mLとし、吸収液の色を観察するとき、この色は、次の標準色より濃くない。
標準色の調製は、検液の試験と同時に行う。別に規定するもののほか、別に規定する量のヒ素標準液を正確に量り、発生瓶に入れ、塩酸(1→2)5mL及びヨウ化カリウム試液5mLを加えて2~3分間放置した後、塩化スズ(Ⅱ)試液(酸性)5mLを加え、室温で10分間放置する。以下、検液と同様に操作して得た吸収液の呈色を標準色とする。
(ii) 装置Cを用いる方法 別に規定するもののほか、検液及び成分規格・保存基準各条に規定する方法で調製した比較液4mLに塩酸1mL及びヨウ化カリウム溶液(1→10)1mLを加え、70℃の水浴中で4分間加温した後、水を加えて20mLとする。装置にアルゴンを流しながら、これらの溶液、適当な濃度の塩酸試液(1~6mol/L)及びテトラヒドロホウ酸ナトリウム試液を、Aを用いてそれぞれ1~10mL/分の適当な流量で連続的に装置内に導入して順々に混合させ、ヒ化水素を発生させる。なお、ヨウ化カリウム溶液(1→10)をAで連続的に装置内に導入する方式にあっては、検液及び比較液を直接、又は水で適当な濃度に希釈後、これらの溶液、適当な濃度の塩酸試液(1~6mol/L)、ヨウ化カリウム溶液(1→10)及びテトラヒドロホウ酸ナトリウム試液を、上と同様な操作で装置に導入して順々に混合させ、ヒ化水素を発生させる。発生したヒ化水素と廃液をFで分離した後、ヒ化水素を含む気体を加熱吸収セルを取り付けた原子吸光度測定装置に導入し、波長193.7nmにおける吸光度を測定するとき、検液の吸光度は、比較液の吸光度より大きくない。
操作上の注意
(1) 試験に用いる器具・試薬及び試液は、ヒ素を含まないか、又はほとんど含まないものを用い、必要な場合には、空試験を行う。
(2) 装置Cを用いる場合は、装置により検液及び比較液に加える塩酸、ヨウ化カリウム溶液の量や濃度は異なり、装置に導入する検液及び比較液、塩酸、テトラヒドロホウ酸ナトリウム試液及びヨウ化カリウム溶液の流量や濃度が異なる場合もある。
G03700
41.沸点測定法及び蒸留試験法
沸点測定及び蒸留試験は、別に規定するもののほか、次の第1法又は第2法による。
沸点は、別に規定するもののほか、最初の留液5滴を留出したときを最低とし、蒸留フラスコ中の液が少なくなり、十分な蒸発量が得られなくなる直前の温度を最高とする。
また、蒸留試験は、規定の温度範囲の留分の容量を量るものである。
以下、本試験法を用いる場合において、例えば、「55.5~57.0℃(第1法)」とあるのは、本品は、沸点測定法及び蒸留試験法中の第1法により測定するとき、その沸点が55.5~57.0℃であることを示す。また、「64~70℃で95vol%以上を留出する。(第2法)」とあるのは、本品は、沸点測定法及び蒸留試験法中の第2法により測定するとき、64~70℃で95vol%以上を留出することを示す。
第1法
この方法は、規定の温度範囲が5℃未満のときの液体の沸点の測定及び蒸留試験に用いられる。
装置
概略は、次の図による。
A:硬質ガラス製蒸留フラスコ(容量50~60mL)
B:浸線付温度計(棒状)
C:浸線
D:栓
E:冷却器
F:アダプター
G:メスシリンダー(25mL、0.1mLの目盛りのあるもの)
ガラス器具類は、よく乾燥したものを用いる。Bは、CがDの下端にくるように、また、水銀球の上端が留出口の中央部にくるように付け、AにEを連結し、EにはFを接続し、Fの先端は、受器のGの口にわずかに空気が流通するようにして差し込む。
Aには沸騰石又は毛細管を入れ、Aを覆う高さの風よけを付け、適当な熱源を用いてAを加熱する。ただし、直火で加熱するときは、Aをセラミックス板(150mm×150mmの金網に厚さ6mmのセラミックスを固着し、中央部に直径30mmの円形の穴を開けたもの)の穴に乗せて加熱する。
操作法
あらかじめ液温を測定した試料25mLをGを用いて量り、Aに入れ、Gは洗わずにそのまま受器として用いる。装置が整ったならば、Eに水を通し、Aを加熱し、約10分で留出を始め、別に規定するもののほか、測定温度200℃未満のものは1分間4~5mL、200℃以上のものは1分間3~4mLの留出速度で蒸留し、留液の温度を最初の試料の液温と等しくし、留分の容量を量る。
80℃以下で蒸留し始める液では、あらかじめ試料を10~15℃に冷却してその容量を量り、蒸留中はGの上部から25mm以下を氷冷する。
気圧に対する温度の補正は、0.36kPaにつき0.1℃とし、気圧101kPa未満のときはこれを加え、101kPaを超えるときはこれを減じる。
第2法
この方法は、規定の温度範囲が5℃以上のときの液体の沸点の測定及び蒸留試験に用いられる。
装置
第1法と同様の装置を用いる。ただし、Aは容量200mL、首の内径18~24mmで内径5~6mmの留出管が付いているものを用いる。また、直火で加熱するときに用いるセラミックス板は、中央部に直径50mmの円形の穴を開けたものとする。
また、受器に用いるGは、100mLで、1mLの目盛りのあるものとする。
操作法
あらかじめ液温を測定した試料100mLを1mLの目盛りのあるGを用いて量り、第1法と同様に操作する。
G03900
42.融点測定法
融点とは、次の第1法又は第2法により測定するとき、固体がその温度又は温度の範囲内で完全に融解する温度をいう。比較的純度が高く、粉末状に試料を調製できる物質の融点は第1法により、水に不溶性で粉末にしにくい物質の融点は第2法により測定する。
測定は、別に規定するもののほか、第1法により行う。
第1法
通例、粉末にしやすいものに適用する。
装置
概略は、次の図による。
A:加熱容器(硬質ガラス製)
B:浴液(常温における動粘度50~100mm2/sの澄明なシリコーン油を用いる。)
C:テフロン製蓋
D:浸線付温度計(棒状、融点が50℃未満のときは1号、40℃以上100℃未満のときは2号、90℃以上150℃未満のときは3号、140℃以上200℃未満のときは4号、190℃以上250℃未満のときは5号、240℃以上320℃未満のときは6号を用いる。)
E:温度計固定ばね
F:浴液量加減用小孔
G:コイルスプリング
H:毛細管(内径0.8~1.2mm、長さ120mm、壁の厚さ0.2~0.3mmで一端を閉じた硬質ガラス製のものを用いる。)
J:テフロン製蓋固定ばね
操作法
試料を微細な粉末とし、別に規定するもののほか、デシケーターで約24時間乾燥する。また、成分規格・保存基準各条において乾燥物とある場合には、それぞれの成分規格・保存基準各条において規定する乾燥減量の条件で乾燥したものを用いる。
この試料をHに入れ、閉じた一端を下にしてガラス板又は陶板上に立てた約70cmのガラス管の内部に落とし、はずませて固く詰め、厚さ2.5~3.5mmの層となるようにする。成分規格・保存基準各条等に「(封管中)」とあるのは、開いている方の一端を閉じることを示し、「(減圧封管中)」とあるのは、開いている方の一端から、減圧(0.67kPa以下)にしながら開いている方の一端を弱く加熱して閉じることを示す。
Bを加熱して予想される融点の約10℃下の温度まで徐々に上げ、Dの浸線を浴液のメニスカスに合わせ、試料を入れたHをGに差し込み、試料を詰めた部分がDの水銀球の中央にくるようにする。次に1分間に約3℃上昇するように加熱して温度を上げ、予想される融点より約5℃低い温度から1分間に1℃上昇するように加熱を続ける。
Hの内壁と試料との接触部にわずかに浸潤又は崩壊を認めたときの温度を融解し始めの温度とし、試料が完全に融解して透明となったときの温度を融解し終わりの温度とし、当該温度を融点とする。
第2法
脂肪、脂肪酸、パラフィン、ろう等のような粉末にしにくいものに適用する。
操作法
試料をできるだけ低温で融解し、これを、泡が入らないようにして毛細管(第1法で規定したものと同様なもので、両端を開いたもの)中に吸い上げて約10mmの高さとする。この毛細管から試料が流出しないように保ち、10℃以下で約24時間放置するか、少なくとも2時間氷冷した後、試料の位置が水銀球の中央外側になるようにゴム輪で温度計に取り付け、これを水を入れたビーカーに入れ、試料の上端を水面下約10mmの位置に保つ。水を絶えずかき混ぜながら加温し、予想される融点より約5℃低い温度に達した後は、2分間に1℃ずつ上昇するように加熱する。H中で試料が浮上するときの温度を融点とする。
G04000
43.誘導結合プラズマ発光分光分析法及び誘導結合プラズマ質量分析法
誘導結合プラズマ発光分光分析法及び誘導結合プラズマ質量分析法は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を励起源又はイオン源として利用する元素分析法である。
ICPは、高周波誘導結合法により得られるアルゴンプラズマの高温の熱エネルギーを有する励起源である。このプラズマ中に検液を噴霧導入すると、検液中に含有される原子が励起され、このとき生じる原子発光スペクトルの波長及び強度を測定して、元素の同定や定量分析を行う方法をICP発光分光分析法という。ICPは良い励起源であると同時に良いイオン化源でもあることから、検出器として質量分析計を用い、ICPによりイオン化された元素をm/z値ごとに分離してイオンのピーク強度を測定することにより、定性分析及び定量分析を行う方法をICP質量分析法という。
原子に外部から高エネルギーを与えると、最外殻電子が軌道遷移を起こし、励起状態になる。この励起状態の原子は、基底状態に戻る際に励起によって得られたエネルギーを光として放出する。このとき発生する光は、各元素に固有の振動数ν又は波長λを持っており、hをプランクの定数、cを光速度とすれば、そのエネルギーΔEは、次式により表される。
ΔE=hν=hc/λ
最外殻電子の軌道遷移のエネルギー準位と放出エネルギーの組合せは、多数あることから、通常、一つの元素からの発光線は強弱合わせると数多く存在する。しかし、紫外・可視領域にあって、元素の定性・定量分析に必要な検出感度を有する発光線は限定される。原子発光スペクトルは、各元素に固有の振動数又は波長を有することから、分光器を通して検出されるこのスペクトルの波長を解析することにより、検液中に含まれる各元素を同定することができる。また、このスペクトル線の強度から、検液中の各元素の定量分析を行うことができる。この原理を利用したのが、ICP発光分光分析法である。
ICP質量分析法は、原子吸光光度法やICP発光分光分析法等の光学的な分析法に代わる元素分析法である。プラズマによって元素をイオン化させた後、m/z値により分離、計測するという本法は、ICP発光分光分析法に比べ、高感度、同位体分析ができる等の特長を持つ。
ICP発光分光分析法及びICP質量分析法は、食品添加物原体又は製剤中の無機不純物又は共存元素に対する特異的な微量分析法として優れており、アルカリ・アルカリ土類金属、重金属類だけでなく、食品添加物の安全性を確保するために適切な管理が必要とされる多くの元素の定性・定量分析が可能である。また、多数の元素の同時分析が可能なことから、無機元素のプロファイル分析を行い、およその濃度を知ることにより、食品添加物原体等の品質確保を図ることができる。
装置
(1) ICP発光分光分析計の装置構成
ICP発光分光分析計は、励起源部、試料導入部、発光部、分光部、測光部及びデータ処理部で構成される。励起源部は、発光部に電気エネルギーを供給・制御するための高周波電源、制御回路及びガス供給部からなる。試料導入部は、検液を発光部に導入する部分で、検液を霧化するネブライザーや噴霧室(スプレーチャンバー)等から構成される。
発光部は、検液中の元素を原子化・励起・発光させるための部分で、トーチや高周波誘導コイル等からなる。トーチは、三重管構造をしており、中心の管から検液が導入される。プラズマの生成及び検液を搬送するためのガスとしてアルゴンガスを用いる。発光部から放射される光の観測方式には、プラズマの側面の光を観測する横方向観測方式及びプラズマの中心の光を観測する軸方向観測方式がある。分光部は、発光部から放射された光をスペクトル線に分離するための部分で、集光系や回折格子等の光学素子からなる。分光器には、波長走査形分光器(モノクロメーター)と波長固定型の同時測定形分光器(ポリクロメーター)がある。なお、190nm以下の真空紫外領域のスペクトル線を測定する場合、分光器内は、真空排気を行うか、アルゴンガス又は窒素ガスにより、空気を置換する必要がある。
測光部は、入射した光をその強度に応じた電気信号に変換する部分で、検出器及び信号処理系からなる。検出器としては、光電子増倍管又は半導体検出器が用いられる。
データ処理部は、データ処理を行い、検量線、測定結果等を表示する。
(2) ICP質量分析計の装置構成
ICP質量分析計は、励起源部、試料導入部、イオン化部、インターフェース部、イオンレンズ部、質量分離部、イオン検出部及びデータ処理部で構成される。
励起源部、試料導入部及びイオン化部は、それぞれICP発光分光分析計における励起源部、試料導入部及び発光部と同一の構造である。
インターフェース部は、大気圧下でプラズマにより生成されたイオンを高真空の質量分離部に導入するための境界部分でサンプリングコーン及びスキマーコーンより構成される。
イオンレンズ部は、インターフェース部を介して導入されたイオンを収束させ、効率良く質量分離部に導くための部分である。
質量分離部は、多くの装置で四重極型の質量分析計が採用されている。なお、コリジョン・リアクションセルと呼ばれる室(セル)を真空内の質量分離部の前に配置し、水素、ヘリウム、アンモニア又はメタン等のガスを導入することにより、後述の多原子イオン類による干渉を抑制できる。
イオン検出部は、検出器内に到達したイオンを、増倍管により増幅した後、電気信号に変換し、データ処理部で、得られた電気信号をデータとして処理し、検量線や測定結果等を表示する。
試料の前処理
食品添加物原体等の有機物を試料とする場合は、通例、乾式灰化法又は湿式分解法により有機物を灰化又は分解した後、残留物を少量の硝酸又は塩酸に溶かして検液を調製する。別に、難分解性試料の場合、密閉式の加圧容器中、マイクロ波分解装置を用いて分解することもできる。少量の有機溶媒を含む液体試料は、前処理なしで装置に導入することができるが、有機溶媒中の炭素がトーチやインターフェース部に沈着することを防ぐため、助燃ガスとして酸素を導入する方法もある。
ICP発光分光分析計の操作
アルゴンガスを所定の流量に設定し、高周波電源を入れ、プラズマを生成する。プラズマの状態が安定していることを確認した後、成分規格・保存基準各条に規定された方法で調製した検液や標準液等を導入し、定められた分析線における発光強度を測定する。また、確認試験を行う場合、分析対象元素について、定められた複数の分析線が含まれる波長範囲で発光スペクトルを測定する。
(1) 分光器の性能評価
波長校正は、各装置に特有な方法があることから、それぞれに指示された方法・手順に従って、適切に実施する必要がある。
波長分解能は、通例、特定元素の分析線スペクトルの半値幅が一定値(nm)以下として規定される。低波長側から高波長側まで、通例、ヒ素As(193.696nm)、マンガンMn(257.610nm)、銅Cu(324.754nm)及びバリウムBa(455.403nm)の発光線が選択される。
(2) 操作条件の最適化
操作条件は、通例、次による。
装置は、15~30分の暖機運転により、プラズマの状態を安定させた後、操作条件の最適化を図る。通例、高周波出力は0.8~1.4kW、アルゴンガスの流量は、冷却ガス(プラズマガス)10~18L/分、補助ガス0~2L/分、キャリヤーガス0.5~2L/分とする。プラズマの測定位置は、横方向観測方式の場合、誘導コイルの上端より10~25mmの範囲であり、溶液の吸い上げ量は0.5~2mL/分とする。一方、軸方向観測装置の場合は、測定される発光強度の最大値が得られるように光軸の調整を行う。また、積分時間は、測定される発光強度の安定性を考慮し、1~数十秒の範囲内で設定する。
(3) 干渉とその抑制又は補正
ICP発光分光分析法における干渉とは、測定に際して、共存成分又はマトリックスが測定結果に影響を与えることの総称である。種々の干渉を大別すると、物理干渉やイオン化干渉等の非分光干渉と分光干渉があるが、適切な抑制法又は補正法の適用により、その影響を排除又は軽減することができる。
物理干渉とは、検液と検量線用標準液の粘性、密度、表面張力等の物理的性状が異なる場合、発光部への検液の噴霧効率に差異が生じることから、測定結果がその影響を受けることをいう。この種の干渉の影響を排除又は軽減するためには、干渉の生じない程度まで検液を希釈すること、検液と検量線用標準液の液性とをできるだけ一致させること(マトリックスマッチング法)のほか、定量法として内標準法(強度比法)又は標準添加法の適用もその有力な補正法となる。
イオン化干渉とは、検液中に高濃度の共存元素が存在する場合、それらの元素のイオン化により発生する電子により、プラズマ内の電子密度が増加し、イオン化率が変化することによる影響を指す。イオン化干渉に対する抑制法又は補正法は、基本的には物理干渉の場合と同様である。別に、光の観測方式、観測高さ、高周波出力、キャリヤーガス流量等の選択及び調節により、イオン化干渉の少ない測定条件を確保することができる。
分光干渉とは、分析対象元素の分析線に種々の発光線や連続スペクトルが重なり、分析結果に影響を及ぼすことを指す。この干渉を回避するためには、分光干渉を受けない別の分析線を選択する必要があるが、適当な分析線が得られない場合、分光干渉補正を行う必要がある。なお、有機物試料の前処理が不十分な場合、検液中の炭素に起因する分子バンドスペクトル(CO、CH、CN等)が分析対象元素の分析線に近接し、干渉することがある。
ICP質量分析計の操作
プラズマの状態が安定していることを確認した後、装置の最適化を行い、システムの適合性を確認する。成分規格・保存基準各条に規定された方法で調製した検液や標準液等を導入し、定められたm/z値における信号強度を測定する。また、確認試験を行う場合、分析対象元素について、定められたm/z値の範囲で、マススペクトルを測定する。
(1) 質量分析計の性能評価
質量分析計の性能評価項目として、質量真度と質量分解能がある。質量真度は、操作条件の最適化用の標準液を用いて標準となる元素のm/z値と質量分離部の質量軸を一致させることにより調整する。四重極型質量分析計の場合には、±0.2以内であることが望ましい。質量分解能は、測定ピークの10%の高さにおけるピーク幅が0.9以下であることが望ましい。
(2) 操作条件の最適化
純度試験又は定量法を行うときは、あらかじめ次に規定する感度、バックグラウンド、並びに酸化物イオン及び二価イオンの生成比の最適化を行い、装置の稼働性能が適切であることを確認しておく。操作条件の最適化の実施に際しては、通常、適切な濃度に調整した、7Li、9Be、59Co、89Y、115In、140Ce、205Tl、209Bi等の環境中から汚染し難い、低質量数、中質量数及び高質量数を代表する元素の標準液を用いる。
感度は、積分時間1秒当たりのイオンカウント数(cps)で判定する。純度試験又は定量法を行うときは、低質量数、中質量数及び高質量数において、各元素濃度1μg/L(ppb)当たり数万cps程度あることが望ましい。
バックグラウンドは、天然には存在しない元素のm/z値、例えばm/zが4、8又は220等で測定した場合、10cps以下であることが望ましい。
酸化物イオン及び二価イオンの生成比は、140Ce等の溶液を用い、それぞれの酸化物イオン(140Ceの場合140Ce16O+、m/z 156)、二価イオン(140Ce2+、m/z 70)及び一価イオン(140Ce+、m/z 140)のカウント数を測定し、酸化物イオン及び二価イオンのカウント数を一価イオンのカウント数で除して求める。酸化イオン生成比、すなわち140Ce16O+/140Ce+が0.03以下、及び二価イオン生成比、すなわち140Ce2+/140Ce+が0.05以下となることが望ましい。
(3) 干渉とその抑制又は補正