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○地域保健対策の推進に関する基本的な指針

(平成六年十二月一日)

(厚生省告示第三百七十四号)

地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第四条第一項の規定に基づき、地域保健対策の推進に関する基本的な指針を次のように策定したので、同条第四項の規定により告示する。

地域保健対策の推進に関する基本的な指針

少子高齢化の更なる進展や人口の減少といった人口構造の変化に加え、単独世帯や共働き世帯の増加など住民の生活スタイルも大きく変化するとともに、がん、循環器疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患等の非感染性疾患(NCD)の増加、新興・再興感染症の感染拡大をはじめとする健康危機に関する事案の変容など地域保健を取り巻く状況は、大きく変化している。

一方、地方公共団体間において地域保健に係る役割の見直しが行われる中、地域保健の役割は多様化しており、行政を主体とした取組だけでは、今後、更に高度化、多様化していく国民のニーズに応えていくことが困難な状況となっている。

また、保健事業の効果的な実施や高齢化社会に対応した地域包括ケアシステムの構築、社会保障を維持・充実するため支え合う社会の回復が求められている。

さらに、新型コロナウイルス感染症の全国的な感染拡大に伴う対応に当たっては、保健所において業務負担が増大し、地方衛生研究所等において感染初期の段階における検査体制が十分でなかったなどの課題が指摘された。これらの課題は、新興・再興感染症の感染拡大以外の健康危機やこれらが複合的に発生した場合への対応にも通じるものであり、これらの課題を克服し、保健所や地方衛生研究所等が健康危機に対応すると同時に地域保健対策の拠点としての機能を発揮できるよう、必要な体制強化に向けた取組を着実に推進することが必要である。

こうした状況の変化に的確に対応するため、都道府県及び市町村(特別区を含む。第二の一の2及び3を除き、以下同じ。)において、地域保健対策を推進するための中核としての保健所、市町村保健センター、地方衛生研究所等を相互に機能させ、医療、介護、福祉等に係る関係機関との連携や、地域に根ざした信頼や社会規範、ネットワークといった社会関係資本等(以下「ソーシャルキャピタル」という。)を活用した住民との協働による地域保健基盤を構築し、地域住民の健康の保持及び増進並びに地域住民が安心して暮らせる地域社会の実現を目指した地域保健対策を総合的に推進することが必要である。

この指針は、地域保健体系の下で、市町村、都道府県、国等が取り組むべき方向を示すことにより、地域保健対策の円滑な実施及び総合的な推進を図ることを目的とする。

第一 地域保健対策の推進の基本的な方向

一 地域における地域保健対策の推進

1 自助及び共助の支援の推進

少子高齢化の更なる進展等の社会状況の変化を踏まえ、住民の自助努力に対する支援を充実するとともに、共助の精神で活動する住民に対し、ソーシャルキャピタルを活用した支援を行うことを通じて、多様化、高度化する住民のニーズに応えたサービスを提供する必要がある。都道府県及び市町村は、地域保健対策を講ずる上で重要な社会資源について十分に調査し、ソーシャルキャピタルの核となる人材の育成に努めるとともに、学校、企業等に係るソーシャルキャピタルの積極的な活用を図る必要がある。

2 住民の多様なニーズに対応したきめ細かなサービスの提供

住民の価値観、ライフスタイル及びニーズは極めて多様化しており、画一的に提供されるサービスから、多様なニーズ等に応じたきめ細かなサービスへ転換することが求められる。

このため、住民が保健サービスに関する相談を必要とする場合には、個人のプライバシーの保護に配慮しつつ適時適切に相談に応じることが可能な体制を整備するとともに、個々の住民のニーズに的確に対応したサービスが提供されるよう、保健サービスの質的かつ量的な確保、保健サービスを提供する拠点の整備及び人材の確保等の体制の総合的な整備を推進することが必要である。

また、保健サービスの提供に当たっては、種類、時間帯、実施場所等に関し、個人による一定の選択を可能にするよう配慮するとともに、これらの保健サービスの提供に関連する情報を適切に住民に提供する必要がある。

併せて、民間サービスの活用を進めるため、保健サービスの質を確保しながら振興策等を検討することが求められる。

3 地域の特性をいかした保健と福祉の健康なまちづくり

住民に身近で利用頻度の高い保健サービス及び福祉サービスは、最も基礎的な自治体である市町村が、地域の特性を十分に発揮しつつ、住民のニーズを踏まえた上で、一体的に実施できる体制を整備することが必要である。

これに加え、市町村は、地域保健を取り巻く状況の変化を踏まえ、行政サービスの充実だけでなく、学校、企業等の地域の幅広い主体との連携を進め、住民との協働による健康なまちづくりを推進し、全ての住民が健康づくりに取り組むことができる環境を整備することが求められる。

また、都道府県及び国は、市町村がその役割を十分に果たすことができる条件を整備することが必要である。

4 医療、介護、福祉等の関連施策との連携強化

住民のニーズの変化に的確に対応するためには、地域における保健、医療、介護、福祉等とそれぞれの施策間での連携及びその体制の構築が重要である。

このため、市町村は、住民に身近な保健サービスを介護サービス又は福祉サービスと一体的に提供できる体制の整備に努める。都道府県及び保健所(都道府県が設置する保健所に限る。)は、広域的な観点から都道府県管内の現状を踏まえた急性期、回復期及び維持期における医療機関間の連携、医療サービスと介護サービス及び福祉サービス間の連携による地域包括ケアシステムの強化に努めることが必要である。

また、医療機関間の連携体制の構築においては、多くの医療機関等が関係するため、保健所が積極的に関与し、地域の医師会等との連携や協力の下、公平・公正な立場からの調整機能を発揮することが望まれる。

なお、保健所は、所管区域内の健康課題等の把握、評価、分析及び公表を行い、都道府県が設置する保健所にあっては所管区域内の市町村と情報の共有を図るとともに、当該市町村と重層的な連携の下、地域保健対策を推進するほか、介護及び福祉等の施策との調整についても積極的な役割を果たす必要がある。

5 快適で安心できる生活環境の確保

地域住民の健康の保持及び増進を図るためには、住民の生活の基盤となる快適で安心できる生活環境を確保することが重要である。

このため、都道府県、国等は、食中毒等に係る情報共有体制の強化や食品衛生監視員等の資質向上等を通じた保健所の機能強化に努めるとともに、食品衛生協会、生活衛生同業組合等関係団体に対する指導又は助言に努めることにより、営業者の自主的な衛生管理等を通じた食品安全、生活衛生等の施策の推進を図り、消費者及び住民に対するサービス並びに食品の安全性等に係る健康危機の発生時に地域住民が状況を的確に認識した上で行動ができるよう、適切に情報を提供し、地域住民や関係者との相互の情報及び意見の交換(以下「リスクコミュニケーション」という。)を進めることが必要である。

二 地域における健康危機管理体制の確保

1 健康危機管理体制の確保

都道府県及び市町村は、地域において発生し得る健康危機に対して、迅速かつ適切な危機管理を行えるよう、当該健康危機の際に生じ得る地域住民への精神的な影響も考慮した上で、地域における健康危機管理体制を構築する必要がある。

このため、都道府県及び市町村は、本庁及び保健所等における健康危機管理に関する事務分担が不明確であること又は本庁と保健所の持つ機能が不均衡であることがないよう、それぞれの保健衛生部門の役割分担をあらかじめ明確にするほか、健康危機に関する情報が、健康危機管理体制の管理責任者に対して迅速かつ適切に伝達され、当該管理責任者の下で一元的に管理される体制を構築するとともに、管理責任者から都道府県及び市町村の保健衛生部門に対する指示が迅速かつ適切に伝達される必要がある。また、他の地方公共団体を含む関係機関及び関係団体との連携及び調整も図る必要がある。なお、健康危機管理体制の管理責任者は、地域の保健医療に精通しているという観点から保健所長が望ましい。

併せて、健康危機発生時に備えた研修や訓練の実施、健康危機に対する迅速かつ適切な危機管理を行うことができる人材の育成、外部人材の活用も含めた必要な人材の確保、当該危機管理に必要な機器及び機材の整備、物品の備蓄等を通じて、平時から健康危機発生時に備えて計画的な体制整備を行う必要がある。

保健所や地方衛生研究所等においては、健康危機が発生した場合に、地域における健康づくりなどの地域住民に必要な地域保健対策全般の業務についても適切に実施できるよう、外部委託や一元化、ICTの導入などを積極的に推進することで、効果的・効率的に地域保健対策を推進する必要がある。

なお、ICTの導入などの際には、関連するシステム間の互換性に留意することが必要である。

都道府県、政令市(地域保健法施行令(昭和二十三年政令第七十七号。以下「令」という。)第一条に規定する市をいう。以下同じ。)及び特別区は、都道府県単位の広域的な健康危機管理の対応について定めた手引書や政令市及び特別区における区域全体に係る健康危機管理の対応について定めた手引書を作成するとともに、これらの手引書、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「感染症法」という。)に基づく予防計画、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号。以下「特措法」という。)に基づく都道府県行動計画及び市町村行動計画等を踏まえ、各保健所及び地方衛生研究所等において健康危機対処計画を策定する必要がある。

なお、特措法に基づく都道府県行動計画及び市町村行動計画等を踏まえ、保健所及び地方衛生研究所等において手引書や業務マニュアル等が既に作成されている場合には、これらの見直しにより、健康危機対処計画として差し支えない。

また、政令市及び特別区においては、政令市及び特別区における区域全体に係る健康危機管理の対応について定めた手引書を保健所の健康危機対処計画と一体的に作成して差し支えない。

政令市及び特別区を除く市町村(以下「保健所設置市等以外の市町村」という。)は、健康危機発生時に、当該保健所設置市等以外の市町村を管轄する保健所と協力して生活環境の整備や、地域住民への情報提供、知識の普及等の業務を実施できるよう必要な準備を行う必要がある。

また、保健所設置市等以外の市町村は、健康危機管理の対応について定めた手引書を作成する必要がある。当該手引書は、当該保健所設置市等以外の市町村を管轄する保健所の協力を得ながら、当該保健所が策定する健康危機対処計画を踏まえ、作成する必要がある。

2 大規模災害への備え

都道府県及び市町村は、大規模災害時に十分に保健活動を実施することができない状況を想定し、他の地方公共団体や国とも連携して、大規模災害時の情報収集、医療機関との連携を含む保健活動の全体調整、保健活動への支援及び人材の受入れ等に関する体制を構築する必要がある。

3 広域的な感染症のまん延への備え

(一) 基本的な考え方

感染症のまん延時においても、地域における健康づくりなどの地域住民に必要な地域保健対策が継続して実施できるよう、都道府県、政令市及び特別区は、必要な体制を整備するとともに、関係する地方公共団体間における役割分担を明確化し、密接に連携する必要がある。

保健所については地域における感染症対策の中核的機関として、また、地方衛生研究所等については都道府県、政令市及び特別区における感染症対策においても科学的かつ技術的に中核となる機関として、それぞれの役割が十分に果たされるよう、これらの機能強化をはじめとした取組を行う必要がある。

(二) 国における取組

国は、都道府県の区域を越えた応援職員の派遣の仕組みの整備、応援職員の人材育成支援などを通じて都道府県、政令市及び特別区の取組を支援する必要がある。感染症発生時には、全国の人員体制の状況を迅速に把握し、自治体間の応援職員派遣の調整等の支援を行う必要がある。また、国内の新たな感染症に係る知見を収集・分析し、関係する地方公共団体等に迅速に提供する必要がある。

(三) 広域の地方公共団体たる都道府県における取組

都道府県は、感染症のまん延のおそれがあるときには市町村の区域を越えた対応が求められることから、感染症法に基づく都道府県連携協議会を活用し、自治体間の役割分担や連携内容を平時から調整する必要がある。また、感染症対応が可能な専門職を含む人材の確保、国及び地方公共団体等からの人材の送り出し及び受入れ等に関する体制を構築するとともに、都道府県域内の保健所、地方衛生研究所等の人材育成を支援する必要がある。感染症のまん延の際には、情報集約、自治体間調整、業務の一元化等の対応により、政令市及び特別区を支援する必要がある。

感染症のまん延の際においては、国、他の都道府県、管内の政令市及び特別区等と連携して、感染経路、濃厚接触者等に係る情報収集、医療機関及び福祉サービス機関等との連携を含む保健活動の全体調整、保健活動への支援などを行う必要がある。

(四) 保健所を設置する都道府県、政令市及び特別区における取組

都道府県、政令市及び特別区は、広域的な感染症のまん延の防止の観点から、感染経路の特定、濃厚接触者の把握等に係る積極的疫学調査、病原体の収集及び分析等の専門的業務を十分に実施するために、感染症のまん延を想定し、各保健所や地方衛生研究所等における人員体制や設備等を整備する必要がある。

また、感染症のまん延の際、迅速にまん延時の体制に移行し、対策が実行できるよう、感染症法に基づく予防計画を策定する際には、保健所体制や検査体制に留意する必要がある。

また、感染症のまん延に備え、国や都道府県の研修等を積極的に活用しつつ、保健所や地方衛生研究所等の人材育成に努めるとともに、保健所や地方衛生研究所等を含め、感染症のまん延を想定した実践型訓練を実施する必要がある。

さらに、感染症法に基づく都道府県連携協議会や地域保健医療協議会等を活用し平時から保健所、地方衛生研究所等の職員のみならず、管内の保健所設置市等以外の市町村、教育機関、学術機関、消防本部、検疫所などの関係機関、医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の専門職能団体等と意見交換や必要な調整等を通じ、連携を強化する必要がある。

さらに、広域的な感染症のまん延の防止の観点から、都道府県、政令市及び特別区は、各管轄地域内での感染経路の特定、濃厚接触者の把握等に係る疫学調査等による感染状況に係る情報の共有に努める必要がある。

4 地域住民への情報提供、知識の普及等

国、都道府県及び市町村は、リスクコミュニケーションを実施するよう努める必要がある。

市町村は、住民に最も身近な地方公共団体として、住民に対する健康被害予防のための情報の提供に大きな役割を担うものとする。

市町村は、必要に応じて、地域組織・ボランティアの協力を得て、平時より、リスクコミュニケーションの円滑化を図るものとする。

また、国、都道府県及び市町村は、広域的な感染症対策等を実施するに当たっては、患者及び医療従事者並びにこれらの者の家族等の人権が尊重され、及び何人も差別的取扱い等を受けることのないようにするため、差別的取扱い等の実態の把握、相談支援、広報その他の啓発活動を行うものとする。

三 科学的根拠に基づいた地域保健の推進

1 科学的根拠に基づく地域保健対策に関する計画の策定と実施

国、都道府県及び市町村は、地域の健康課題について、住民の健康を阻害する要因を科学的に明らかにするとともに、疫学的な手法等を用いて地域保健対策の評価等の調査研究を行うことにより、科学的根拠に基づく地域保健対策に関する計画の策定など地域保健対策の企画及びその実施に努める必要がある。

また、健康づくりに関する計画、がん対策に関する計画、母子保健に関する計画、健康危機管理に関する計画等の地域保健対策に関する計画(2において「計画」という。)について、地域において共通する課題や目標を共有し推進することが望ましい。

2 計画の評価と公表の推進

国、都道府県及び市町村は、地域保健に関して、それぞれが共通して活用可能な標準化された情報の収集、分析及び評価を行い、その結果を計画に反映させるとともに、関係者や地域住民に広く公表することを通じて、地域の健康課題とその解決に向けた目標の共有化を図り、地域保健対策を一体的に推進することが重要である。なお、保健所及び地方衛生研究所は、技術的中核機関として、情報の収集、分析及び評価を行い、積極的にその機能を果たす必要がある。

四 国民の健康づくりの推進

健康増進法(平成十四年法律第百三号)に基づき、国民の健康づくりを推進するため、国及び地方公共団体は、教育活動や広報活動を通じた健康の増進に関する知識の普及、情報の収集、整理、分析及び提供、研究の推進並びに健康の増進に係る人材の養成及び資質の向上を図るとともに、健康増進事業実施者その他の関係者に対し、必要な技術的助言を与えるよう努めることが必要である。さらに、都道府県は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(平成二十四年厚生労働省告示第四百三十号。第一の七において「基本方針」という。)を勘案して、都道府県健康増進計画を定め、市町村は、基本方針及び都道府県健康増進計画を勘案して市町村健康増進計画を定めるよう努めることが必要である。また、健康づくりの推進に当たっては、医療保険者、医療機関、薬局、地域包括支援センター、教育関係機関、マスメディア、企業、ボランティア団体等から構成される中核的な推進組織が、市町村保健センター、保健所を中心として、都道府県健康増進計画及び市町村健康増進計画に即して、これらの健康増進計画の目標を達成するための行動計画を設定し、各機関及び団体等の取組をそれぞれ補完し合う等職種間で連携を図ることにより、地域の健康課題の解決に向けた効果的な取組が図られることが望ましい。また、母子保健分野については、母子保健における国民運動計画において設定された課題を達成するため、国及び地方公共団体は、関係者、関係機関及び関係団体が寄与し得る取組の内容を明確にして、その活動を推進することが必要である。

第二 保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項

保健所は、地域保健に関する広域的、専門的かつ技術的拠点としての機能を強化するほか、地域の医師会の協力の下に医療機関との連携を図ること等により、また、市町村は、住民に身近で利用頻度の高い保健、福祉サービスを一体的に実施するため、市町村保健センター等の体制の整備を積極的に推進すること等により、ライフサイクルを通して一貫した保健、医療、福祉サービスを提供することが重要である。

このため、市町村、都道府県及び国は、次のような取組を行うことが必要である。

一 保健所

1 保健所の整備

保健所の地域保健における広域的、専門的かつ技術的拠点としての機能を強化するため、次のような考え方に基づき、地域の特性を踏まえつつ規模の拡大並びに施設及び設備の充実を図ること。

(一) 都道府県の設置する保健所

(1) 都道府県の設置する保健所の所管区域は、保健医療に係る施策と社会福祉に係る施策との有機的な連携を図るため、二次医療圏(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第二項第十四号に規定する区域をいう。以下同じ。)又は介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百十八条第二項に規定する区域とおおむね一致した区域とすることを原則として定めることが必要であること。ただし、現行の二次医療圏が必ずしも保健サービスを提供する体制の確保を図る趣旨で設定されていないことから、二次医療圏の人口又は面積が平均的な二次医療圏の人口又は面積を著しく超える場合には地域の特性を踏まえつつ複数の保健所を設置できることを考慮すること。

(2) 保健所の集約化により、食品安全及び生活衛生関係事業者等に対するサービスの提供に遺漏がないよう、例えば、移動衛生相談、関係団体の協力による相談等の地域の特性に応じたサービスを行うこと。

(二) 政令市及び特別区の設置する保健所

(1) 政令指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下同じ。)は、地域の特性を踏まえつつ、保健所が、従来おおむね行政区単位に設置されてきたことに配慮しながら、都道府県の設置する保健所との均衡及び保健所政令市(令第一条第三号の市をいう。以下同じ。)の人口要件を勘案し、住民が受けることができるサービスの公平性が確保されるように保健所を設置することが望ましいこと。

(2) 政令指定都市を除く政令市及び特別区は、都道府県の設置する保健所との均衡及び保健所政令市の人口要件を勘案し、地域の特性を踏まえつつ、保健所を設置することが望ましいこと。

(3) 保健所の設置及び運営を円滑に遂行できる人口規模を備えた市が保健サービスを一元的に実施することは望ましいことから、人口二十万以上の市は、保健所政令市への移行を検討すること。

(4) 人口二十万未満の現行の政令市は、引き続きその業務の一層の推進を図ること。

2 保健所の運営

(一) 都道府県の設置する保健所

都道府県の設置する保健所(以下この(一)において「保健所」という。)は、次のような地域保健の広域的、専門的かつ技術的拠点としての機能を強化すること。

(1) 健康なまちづくりの推進

ア 市町村による保健サービス及び福祉サービスを一体的に提供するとともに、ソーシャルキャピタルを広域的に醸成し、その活用を図ること。また、学校、企業等の関係機関との幅広い連携を図ることにより、健康なまちづくりを推進すること。

イ 地域の健康課題を把握し、医療機関間の連携に係る調整、都道府県による医療サービスと市町村による保健サービス及び福祉サービスとの連携に係る調整を行うことにより、地域において保健、医療、福祉に関するサービスが包括的に提供されるよう市町村や関係機関等と重層的な連携体制を構築すること。

(2) 専門的かつ技術的業務の推進

ア 地域保健対策に関する専門的かつ技術的な業務について機能を強化するとともに、地域保健対策への地域住民のニーズの把握に努めた上で、専門的な立場から企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行うとともに市町村への積極的な支援に努めること。

イ 精神保健、難病対策、エイズ対策等の保健サービスの実施に当たっては、市町村の福祉部局等との十分な連携及び協力を図ること。

ウ 食品安全、生活衛生、医事、薬事等における監視及び指導、検査業務等の専門的かつ技術的な業務について、地域住民の快適で安心できる生活環境の確保を図るという観点を重視し、監視及び指導の計画的な実施、検査の精度管理の徹底等、一層の効率化及び高度化を図ることにより、食品等の広域的監視及び検査を行う専門的かつ技術的拠点としての機能を強化すること。

(3) 情報の収集、整理及び活用の推進

ア 所管区域に係る保健、医療、福祉に関する情報を幅広く収集、管理、分析及び評価するとともに、関係法令を踏まえつつ、関係機関及び地域住民に対して、これらを積極的に提供すること。

イ 市町村、地域の医師会等と協力しつつ、住民からの相談に総合的に対応できる情報ネットワークを構築すること。

ウ このため、情報部門の機能強化を図ること。

(4) 調査及び研究等の推進

ア 各地域が抱える課題に即し、地域住民の生活に密着した調査及び研究や先駆的又は模範的な調査及び研究を積極的に推進することが重要である。

このため、調査疫学部門の機能強化を図ること。

イ 国は、保健所における情報の収集、整理及び活用並びに調査及び研究を推進するため、技術的及び財政的援助に努めること。

(5) 市町村に対する援助及び市町村相互間の連絡調整の推進

ア 保健所に配置されている医師を始めとする専門技術職員は、市町村の求めに応じて、専門的かつ技術的な指導及び支援並びに市町村保健センター等の運営に関する協力を積極的に行うこと。

イ 市町村職員等に対する現任訓練を含めた研修等を積極的に推進することが重要である。

このため、研修部門の機能強化を図ること。

(6) 企画及び調整の機能の強化

ア 都道府県の医療計画、介護保険事業支援計画、がん対策推進計画、健康増進計画、老人福祉計画、障害者計画等の計画策定に関与するとともに、各種の地域保健サービスを広域的・専門的立場から評価し、これを将来の施策に反映させ、その結果の公表等を通じて所管区域内の市町村の施策の改善を行うほか、地域における在宅サービス、障害者福祉等の保健、医療、福祉のシステムの構築、医療機関の機能分担と連携、医薬分業等医療提供体制の整備、ソーシャルキャピタルを活用した健康づくりの支援、食品安全及び生活衛生に係るサービスの提供及び(1)から(7)までに掲げる課題について企画及び調整を推進すること。

イ このため、保健所の新たな役割を十分に担うことのできる人材の確保等を含め、企画及び調整の部門の機能強化を図ること。

(二) 政令市及び特別区の設置する保健所

政令市及び特別区の設置する保健所は、市町村保健センター等の保健活動の拠点及び福祉部局との間の情報交換等による有機的な連携の下に、(一)の(1)に掲げる健康なまちづくりの推進、(一)の(2)に掲げる専門的かつ技術的業務の推進、(一)の(3)に掲げる情報の収集、整理及び活用の推進、(一)の(4)に掲げる調査及び研究等の推進並びに(一)の(6)に掲げる企画及び調整の機能の強化に努めること。

また、政令市及び特別区の設置する保健所を地域保健医療に対する総合的な企画機能を有する中核機関として位置付け、地域住民のニーズに合致した施策を展開できるようにすることが望ましいこと。

3 地域における健康危機管理の拠点としての体制・機能

(1) 保健所は、地域における健康危機管理の拠点として、必要な情報の収集、分析、対応策の企画立案・実施、リスクコミュニケーションを行う機関であり、健康危機発生時においては健康危機への対応のみならず、健康づくりなどの地域住民に不可欠な保健施策を提供し続けることが必要であることを踏まえ、平時から健康危機に備えた準備を計画的に推進すること。また、複合的に健康危機が発生した場合においても対応できるよう必要な体制強化に向けた取組を着実に推進すること。

(2) 健康危機の発生に備え、保健所は、地域の保健医療の管理機関として、平時から、法令に基づく監視業務等を行うことにより、健康危機の発生の防止に努めるほか、広域災害・救急医療情報システム等を活用し、地域医療とりわけ救急医療の量的及び質的な提供状況を把握し、評価するとともに、地域の医師会及び消防機関等の救急医療に係る関係機関と調整を行うことにより、地域における医療提供体制の確保に努め、また、保健衛生部門、警察等の関係機関及びボランティアを含む関係団体と調整することにより、これらとの連携が確保された健康危機管理体制の整備に努めること。感染症については、国立感染症研究所、地方衛生研究所等の研究機関と連携の上、検査の精度管理に努めるとともに、感染情報の管理等のためのシステムを活用し、最新の科学的知見に基づく情報管理を推進すること。

(3) 健康危機の発生時に専門技術職員による調査業務その他の保健活動が迅速かつ適切に行われるよう、平時から健康危機の発生時における全庁的な人員配置及び職員の業務分担、外部からの応援職員を円滑に受け入れるための体制を検討するとともに、職員等に対し研修等を必要に応じて実施すること。

(4) 地域の健康危機管理体制を確保するため、保健所に保健所長を補佐する統括保健師等の総合的なマネジメントを担う保健師を配置すること。

(5) 平時から管内の市町村、関係教育機関及び医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の専門職能団体等の地域保健に係る知見を有する人材が所属する機関との連携を図ること。

(6) 健康危機管理に関する住民の意識を高めるため、リスクコミュニケーションに努めること。なお、地域の保健医療情報の集約機関として、保健所の対応が可能となるよう、休日及び夜間を含め適切な対応を行う体制の整備を図ること。

(7) 健康危機発生時において、保健所は、広域災害・救急医療情報システム等を活用し、患者の診療情報等の患者の生命に係る情報の収集及び提供、健康被害者に対する適切な医療の確保のための支援措置等を図ること。また、管内の市町村に対して法令に基づき、健康危機管理を適切に行うこと。

(8) 健康危機発生後において、保健所は、保健医療福祉に係る関係機関等と調整の上、健康危機発生に当たっての管理の体制並びに保健医療福祉の対応及び結果に関し、科学的根拠に基づく評価を行い、公表するとともに、都道府県が作成する医療計画及び障害者計画等の改定に当たって、その成果を将来の施策として反映させることが必要であること。なお、健康危機による被害者及び健康危機管理の業務に従事する者に対する精神保健福祉対策等を人権の尊重等に配慮しつつ、推進すること。

(9) 健康危機管理に係る体制の整備に当たり、平時から感染症のまん延等に備えた準備を計画的に進めるため、都道府県単位の広域的な健康危機管理の対応について定めた手引書や政令市及び特別区における区域全体に係る健康危機管理の対応について定めた手引書、感染症法に基づく予防計画、特措法に基づく都道府県行動計画及び市町村行動計画等を踏まえ、健康危機対処計画を策定すること。

また、その体制が保健所内の組織全般の運営に及ぼす影響の程度や健康危機への対応に要する期間等の諸般の事情を考慮するとともに、地域保健対策の推進に支障を来すことがないよう配慮の上、必要に応じて都道府県や国とも調整の上、健康危機管理に係る業務以外の既存の業務の縮小や当該業務の実施の順延等を検討すること。

二 市町村保健センター

1 市町村保健センターの整備

(一) 身近で利用頻度の高い保健サービスが市町村において一元的に提供されることを踏まえ、各市町村は、適切に市町村保健センター等の保健活動の拠点を整備すること。

(二) 国は、市町村保健センターの設置及び改築等の財政的援助に努めること。

(三) 町村は、単独で市町村保健センター等を整備することが困難な場合には、地域住民に対する保健サービスが十分に提供できるよう配慮しながら、共同で市町村保健センター等を整備することを考慮すること。

(四) 都市部においては、都市の特性をいかしつつ人口規模に応じた市町村保健センター等の設置を考慮すること。

(五) 国民健康保険健康管理センター、老人福祉センター、地域包括支援センター等の類似施設が整備されている市町村は、これらの施設の充実を図ることにより、住民に身近で利用頻度の高い保健サービスを総合的に実施するという役割を十分に発揮できるようにすること。

2 市町村保健センターの運営

(一) 市町村は、健康相談、保健指導及び健康診査等の地域保健に関する計画を策定すること等により、市町村保健センター等において住民のニーズに応じた計画的な事業の実施を図るとともに、保健所等の関係機関による施策評価を参考として業務の改善に努めること。

(二) 市町村は、市町村保健センター等の運営に当たっては、保健、医療、福祉の連携を図るため、地域包括支援センターを始めとする社会福祉施設等との連携及び協力体制の確立、市町村保健センター等における総合相談窓口の設置、在宅福祉サービスを担う施設との複合的整備、保健師とホームヘルパーに共通の活動拠点としての運営等により、保健と福祉の総合的な機能を備えること。

(三) 市町村は、市町村保健センター等の運営に当たっては、保健所からの専門的かつ技術的な援助及び協力を積極的に求めるとともに、地域のNPO、民間団体等に係るソーシャルキャピタルを活用した事業の展開に努めること。また、市町村健康づくり推進協議会の活用、検討協議会の設置等により、医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、栄養士会等の専門職能団体、地域の医療機関、学校及び企業等との十分な連携及び協力を図ること。なお、当該市町村健康づくり推進協議会及び検討協議会の運営に当たっては、地域のNPO、民間団体等に係るソーシャルキャピタルの核である人材の参画も得て、地域の健康課題を共有しながら地域保健対策を一体的に推進することが望ましいこと。

(四) 市町村は、精神障害者の社会復帰対策、認知症高齢者対策、歯科保健対策等のうち、身近で利用頻度の高い保健サービスは、市町村保健センター等において、保健所の協力の下に実施することが望ましいこと。特に、精神障害者の障害者支援施設等の利用に係る調整及び精神障害者保健福祉手帳の交付申請の受理の事務等を市町村において行うこととなっていることから、精神障害者の社会復帰対策を、保健所、精神保健福祉センター、福祉事務所、医療機関、障害者支援施設等との連携及び協力の下に実施すること。

(五) 政令市は、保健所と市町村保健センター等との密接な連携を図り、効率的かつ効果的な保健サービスの提供を可能にする体制を整備すること。

第三 地域保健に関する調査及び研究並びに試験及び検査に関する基本的事項

地域の特性に即した地域保健対策を効果的に推進し、地域における健康危機管理能力を高めるためには、科学的な知見を踏まえることが重要である。

このため、国並びに都道府県、政令市及び特別区は次のような取組を行うことが必要である。

一 基本的な考え方

都道府県、政令市及び特別区は、地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第二十六条の規定に基づき、地域において専門的な調査及び研究並びに試験及び検査等のために必要な地方衛生研究所等の設置や人材の確保・育成等の体制の整備、近隣の他の地方公共団体との連携の確保等の必要な措置を講じなければならないこと。

保健所は、快適で安心できる生活の実現に資するため、地域の抱える課題に即した、先駆的又は模範的な調査及び研究並びに試験及び検査等を推進すること。

地方衛生研究所等は、保健所等と連携しながら、地域における科学的かつ技術的に中核となる機関として、その専門性を活用した地域保健に関する調査及び研究並びに試験及び検査等を推進すること。

都道府県及び政令指定都市は、関係部局、保健所、地方衛生研究所等の行政機関等による検討協議会を設置し、計画的に調査、研究等を実施するために必要な企画及び調整を行うこと。

国は、国立感染症研究所を含む国立試験研究機関等において、全国的規模で行うことが適当である又は高度の専門性が要求される調査及び研究を推進するとともに、国立感染症研究所を含む国立試験研究機関と地方衛生研究所等との連携体制を構築すること等により、地方衛生研究所等に対する技術的支援を行うこと。

国立感染症研究所を含む国立試験研究機関、地方衛生研究所等における地域保健に関する調査及び研究については、新たな政策課題を認識した上で、その課題設定及び分析評価を行うとともに、検査精度及び検査件数等の規模の双方の要請を満たすものとすること。

調査及び研究の成果等は、関係法令を踏まえつつ、関係機関及び国民に対して、積極的に提供すること。

二 地域保健法第二十六条に規定する業務

地域保健法第二十六条に規定する業務のうち、試験及び検査については、健康危機への対処に不可欠な機能であることから、人口規模や財政規模を勘案し、都道府県及び政令指定都市にあっては、地方衛生研究所等の設置等により自ら体制を整備することが求められること。

一方、調査及び研究、地域保健に関する情報の収集・整理・活用並びに地域保健に関する関係者に対する研修指導については、小規模な地方公共団体では実施が困難な場合もあることから、都道府県単位でこれらの機能を有する地方衛生研究所等の設置等を求め、当該都道府県内の地方衛生研究所等の関係機関に対してこれらの機能を提供することが求められること。

また、都道府県、政令市及び特別区は、平時から、関係部局、保健所、地方衛生研究所等の関係機関間の連携が図られるようにするとともに、管内の保健所設置市等以外の市町村、関係教育機関及び医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の専門職能団体等の地域保健に係る知見を有する人材が所属する機関及び民間の検査機関との連携を図ること。

三 地方衛生研究所等の機能強化

地方衛生研究所等は、病原体や毒劇物についての迅速な検査及び疫学調査の機能の強化を図るため、施設及び機器の整備・メンテナンス、検査の精度管理の向上、感染症情報の管理等のためのシステムの活用、調査及び研究の充実並びに研修の実施等による人材の育成、救命救急センター、他の地方衛生研究所等、国立感染症研究所を含む国立試験研究機関等との連携体制の構築、休日及び夜間において適切な対応を行う体制の整備等を図ること。

地方衛生研究所等は、健康危機管理においても科学的かつ技術的に中核となる機関として、調査及び研究並びに試験及び検査を通じて、都道府県、政令市及び特別区の本庁や保健所等に対し情報提供を行うとともにリスクコミュニケーションを行うこと。

また、地方衛生研究所等を有する都道府県、政令市及び特別区は、地方衛生研究所等の計画的な人員の確保や配置を行うとともに、地方衛生研究所等は、国立感染症研究所を含む国立試験研究機関との連携や他の地方衛生研究所等とのネットワークの活用を通じて、継続的な人材育成を行うこと。

地方衛生研究所等は、広域的な感染症のまん延の際、民間検査体制が十分に整うまでの間の必要な検査を実施するとともに、国立感染症研究所との連携や他の地方衛生研究所等とのネットワークを活用した国内の新たな感染症に係る知見の収集、国立感染症研究所への地域の状況等の情報提供、地域の変異株の状況の分析、都道府県、政令市及び特別区の本庁や保健所等への情報提供、民間の検査機関等における検査等に対する技術支援等の実施などを通じサーベイランス機能を発揮することが求められること。

これらを踏まえ、地方衛生研究所等は、平時から健康危機に備えた準備を計画的に進めるため、都道府県単位の広域的な健康危機管理の対応について定めた手引書や政令市及び特別区における区域全体に係る健康危機管理の対応について定めた手引書、感染症法に基づく予防計画、特措法に基づく都道府県行動計画及び市町村行動計画等を踏まえ、健康危機対処計画を策定すること。

第四 地域保健対策に係る人材の確保及び資質の向上並びに人材確保支援計画の策定に関する基本的事項

地域保健対策に係る多くの職種に渡る専門技術職員の養成、確保及び知識又は技術の向上に資する研修の充実を図るため、市町村、都道府県及び国は、次のような取組を行うことが必要である。

一 人材の確保

1 都道府県、政令市及び特別区は、地域における健康危機管理体制の充実等の観点から、保健所における医師の配置に当たっては、専任の保健所長を置くように努める等の所管区域の状況に応じた適切な措置を講じるように努めること。なお、医師である専任の保健所長の確保が著しく困難である場合には、保健所長の職責の重要性に鑑み、臨時的な措置として、令第四条第二項各号のいずれにも該当する医師でない地域保健法第五条第一項に規定する地方公共団体の長の補助機関である職員を保健所長として配置するように努めること。

2 国、都道府県及び市町村は、地域における健康危機管理体制の充実等の観点から、健康危機の発生に際して、保健所における必要な調査、住民からの相談への対応その他の専門的な業務を行うことのできる保健師等の専門技術職員の継続的な確保を図ること。

また、都道府県、政令市及び特別区は、健康危機管理を含めた地域保健施策の推進のために本庁に統括保健師を配置するとともに、地域の健康危機管理体制を確保するため、保健所に保健所長を補佐する統括保健師等の総合的なマネジメントを担う保健師を配置すること。保健所設置市等以外の市町村は、健康危機管理を含めた地域保健施策の推進のために統括保健師を配置すること。

また、健康危機への対応を含む地域保健対策の推進においては、統括保健師等が連携して組織横断的なマネジメント体制の充実を図ること。

3 都道府県及び市町村は、健康危機の発生時には全庁的な危機管理体制が組めるよう平時から準備を行い、地域保健対策の推進に支障を来すことがないように配慮すること。

4 都道府県は、事業の将来的な見通しの下に、精神保健福祉士を含む令第五条に規定する職員の継続的な確保に努め、地域保健対策の推進に支障を来すことがないように配慮すること。

5 市町村は、事業の将来的な見通しの下に、保健師、管理栄養士等の地域保健対策に従事する専門技術職員の計画的な確保を推進することにより、保健事業の充実及び保健事業と介護保険事業等との有機的な連携その他の地域保健対策の推進に支障を来すことがないように配慮すること。

また、市町村は、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、助産師、看護師、准看護師、管理栄養士、栄養士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、言語聴覚士等の地域における人的資源を最大限に活用すること。

このため、地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の支援を得ること。

さらに、行政職員の育成のみならず、地域においてソーシャルキャピタルの核となる人材の発掘及び育成を行うとともに、学校、企業等との仲立ちとなる人材の確保についても計画的に取り組むこと。

6 国は、専門技術職員の養成に努めるとともに、業務内容、業務量等を勘案した保健師の活動の指標を情報として提供する等の支援を行うこと。

また、健康なまちづくりの全国的な推進のため、地方公共団体等が行うソーシャルキャピタルの核となる人材の育成に係る支援に努めること。

二 人材の資質の向上

1 都道府県及び市町村は、職員に対する現任教育(研修及び自己啓発の奨励、地域保健対策に係る部門以外の部門への人事異動その他の手段による教育をいう。以下同じ。)について各地方公共団体が策定した人材育成指針に基づき、企画及び調整を一元的に行う体制を整備することが望ましいこと。なお、ここでいう研修には執務を通じての研修を含む。

2 都道府県及び市町村は、地域保健に関わる医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、臨床検査技師、管理栄養士、栄養士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、社会福祉士、精神保健福祉士、言語聴覚士等に対して、次に掲げる現任教育に関する事項を効果的かつ効率的に実施すること。なお、実施に際しては必要に応じ関係部局と連携すること。

(一) 次に掲げる事項に関する研修及び自己啓発の奨励

(1) 専門分野及び行政運営に関する事項

(2) 保健、医療、福祉の連携を促進するための職種横断的な事項

(3) 保健、医療、福祉に係る各種サービスの総合的な調整に関する事項

(4) 健康危機発生時における迅速かつ適切な対応を行うための危機管理等に関する事項

(二) 人材育成を目的とした地域保健対策に係る部門以外の部門への人事異動、保健所と市町村との間の人事交流、研究機関等への派遣等の推進

3 都道府県は、市町村の求めに応じ、都道府県及び市町村の職員の研修課程を定め、保健所、地方衛生研究所等との間の職員研修上の役割分担を行って、現任訓練を含めた市町村職員に対する体系的な専門分野に関する研修を計画的に推進するとともに、保健所職員が市町村に対する技術的援助を円滑に行うことを可能とするための研修、保健所の企画及び調整機能を強化するための研修並びに教育機関又は研究機関と連携した研修の推進に努めること。

4 都道府県は、保健所において、市町村等の求めに応じ、市町村職員及び保健、医療、福祉サービスに従事する者に対する研修を実施するとともに、町村職員が研修を受ける際には、当該町村の事業が円滑に実施されるように必要に応じて支援すること。

5 国は、国立感染症研究所を含む国立試験研究機関における養成訓練を始め、総合的な企画及び調整の能力の養成並びに指導者としての資質の向上に重点を置いた研修の充実を図るとともに、効果的かつ効率的な教育方法の開発及び普及を行い、市町村及び都道府県に対する技術的及び財政的援助に努めること。

三 健康危機に備えた人材の確保と資質の向上

1 健康危機に備えた人材の確保と資質の向上

都道府県、政令市及び特別区は、広域的な健康危機の発生の際、必要に応じ、他の地方公共団体等の関係機関及び地域の公衆衛生の実務に係る専門知識を有する人材や公衆衛生に係る専門資格を有する人材に対して、応援職員として保健所等への派遣等への協力を求めること。このため、平時から、応援職員の受入体制を整備するとともに、地域の関係教育機関及び医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の専門職能団体等との連携強化に努めること。

また、都道府県、政令市及び特別区は、広域的な健康危機の発生の際、応援職員としての派遣等への協力を求める人材に対して、健康危機発生時における迅速かつ適切な対応を行うための危機管理等に関する実践的な訓練を含む研修を定期的に実施すること。各保健所においても実践的な訓練を実施すること。併せて、都道府県は、政令市及び特別区単位や保健所単位で実施するこれらの研修や訓練を支援すること。

都道府県、政令市及び特別区は、地域の実情に合わせて、保健所設置市等以外の市町村とも連携し、健康危機の発生の際の保健所設置市等以外の市町村の職員による応援派遣について取り決めることが望ましいこと。感染症対応に係る取り決めを行うに当たっては、感染症法に基づく都道府県連携協議会を活用することが望ましいこと。

国は、都道府県、政令市及び特別区における応援職員の受入体制の整備や関係教育機関及び専門職能団体等との連携強化等の取組を支援するとともに、応援職員として派遣される人材に対して専門性の高い研修を実施するなど、都道府県、政令市及び特別区で実施する研修や訓練を支援すること。

2 大規模災害に備えた人材の確保と資質の向上

(一) DHEATによる支援

国は、被災都道府県から応援派遣の調整の依頼を受けた際、他の都道府県及び政令指定都市と調整し、保健医療福祉調整本部及び保健所の指揮調整機能等への支援を行う都道府県等の職員を中心として編成される災害時健康危機管理支援チーム(以下「DHEAT」という。)が派遣されるよう調整に係る支援をすること。

また、国は、DHEATを構成する者に対する研修を推進すること。

都道府県は、DHEATによる応援派遣の受入れが円滑に機能するよう、活動に必要な機器及び機材等の準備、受入れに係る庁内調整会議の開催等の受入体制の整備を平時から推進すること。

都道府県、政令市及び特別区は、DHEATによる応援派遣が可能となるよう、必要な体制の整備等の取組を推進するとともに、DHEATを構成する者の養成、資質の維持及び向上を図るための継続的な研修・訓練を実施すること。

(二) 保健師等の応援派遣

国は、災害時に避難所等において保健活動を行う保健師、公衆衛生医師、管理栄養士等(以下この(二)において「保健師等」という。)を確保できるよう、被災市区町村を管轄する都道府県以外の都道府県から、保健師等を被災市区町村へ応援派遣する調整を行うこと。

また、国は、応援派遣される保健師等の人材育成を図るため、マニュアル等を策定するとともに研修を推進すること。

都道府県は、管内市町村に対して、応援派遣される保健師等の受入体制の整備のための必要な支援を行うとともに、応援職員となる保健師等に対する継続的な研修・訓練を計画的に実施すること。

都道府県は、被災した場合に必要に応じて、厚生労働省に対して、被災した市区町村において被災者の健康の維持等に係る災害対応活動に必要な保健師等の派遣調整を要請するとともに、被災した都道府県以外の都道府県及び当該都道府県内に所在する市町村は応援職員を被災した都道府県へ派遣すること。

市町村は、都道府県の支援を受けて、応援派遣される保健師等の受入体制を整備するとともに、所属する保健師等を応援職員として派遣できるよう必要な取組を推進すること。

3 広域的な感染症のまん延に備えた人材の確保と資質の向上

(一) IHEAT要員による支援

国は、地域保健法第二十一条第一項に規定する者(以下「IHEAT要員」という。)に係るシステムの整備や研修の実施等により、都道府県、政令市及び特別区がIHEAT要員を活用するための基盤を整備すること。

都道府県は、政令市及び特別区におけるIHEAT要員による支援体制を確保するため、IHEAT要員の確保や研修、IHEAT要員の要請時の運用等について必要な支援を行うこと。

都道府県、政令市及び特別区は、IHEAT要員の確保や研修、IHEAT要員との連絡体制の整備やIHEAT要員及びその所属機関との連携の強化などを通じて、IHEAT要員による支援体制を確保すること。

保健所においては、平時から、IHEAT要員への実践的な訓練の実施やIHEAT要員の支援を受けるための体制を整備するなどIHEAT要員の活用を想定した準備を行うこと。

国、都道府県、政令市及び特別区は、地域保健法第二十二条の規定に基づき、IHEAT要員に対し、研修等の実施が求められること。

(二) 自治体間の職員の応援派遣

国は、感染症法の厚生労働大臣による総合調整の規定等に基づき、都道府県から応援派遣の調整の依頼を受けた際、他の都道府県と調整し、保健師等の地方公共団体の職員が保健所等の業務の負担が増大した地方公共団体に派遣されるよう調整すること。

四 人材確保支援計画の策定

1 人材確保支援計画の策定についての基本的考え方

(一) 市町村は、地域保健対策の円滑な実施を図るため、自ら責任を持って、住民に身近で利用頻度の高い保健サービスに必要な人材の確保及び資質の向上を図ることが原則である。しかしながら、町村が必要な対策を講じても地域の特性によりなお必要な人材を確保できない場合には、都道府県は、特にその人材の確保又は資質の向上を支援する必要がある町村について、町村の申出に基づき人材確保支援計画を策定するとともに、これに基づき人材の確保又は資質の向上に資する事業を推進すること。

(二) 国は、都道府県の行う人材確保支援計画において定められた事業が円滑に実施されるよう、別に定める要件に従い必要な財政的援助を行うとともに、助言、指導その他の援助の実施に努めること。

(三) (一)及び(二)に掲げる措置により、各町村は、十分な保健サービス及び保健、医療、福祉の連携の下で最適なサービスを総合的に提供するための調整を行うことのできる保健師、栄養相談等を行う管理栄養士その他必要な職員の適切な配置を行うことが望ましいこと。

2 人材確保支援計画の策定及びこれに基づく事業の実施に当たっての留意事項

都道府県は、人材確保支援計画の策定及びこれに基づく事業については、特定町村との十分な意思疎通及び共通の課題を抱える特定町村における当該事業の一体的な推進を図るほか、地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、獣医師会、看護協会、栄養士会等の専門職能団体及び医療機関との連携又は協力体制を確立すること等により、広域的な健康危機発生時における連携又は協力体制の基盤形成も含め、地域の特性に即し、効果的に実施するよう留意すること。

第五 社会福祉等の関連施策との連携に関する基本的事項

一 保健、医療、福祉の連携の下で最適なサービスを総合的に提供するための調整の機能の充実

人口の高齢化、疾病構造の変化、ノーマライゼーションの意識の高まり等に伴い、住民のニーズが保健、医療、福祉を通じた総合的なものとなる中で、個々の住民にとつて最適なサービスの種類、程度及び提供主体について判断し、適切なサービスを総合的に提供することが重要である。

このため、市町村及び都道府県は、次のような取組を行うことが必要である。

1 市町村においては、相談からサービスの提供までに至る体系的な体制の整備及び職員に対する研修の充実を図ること。また、支援を必要とする住民をより早く把握し、適時かつ適切な情報の提供、関係機関の紹介及び調整等を行う総合相談窓口を市町村保健センター等に設置するとともに、高齢者の保健、福祉サービスに関する相談、連絡調整等を行う地域包括支援センターの整備を推進すること。さらに、地域の医師会の協力の下に、かかりつけ医との連携及び協力体制を確立すること。

2 都道府県は、保健所において、精神障害及び難病等の専門的かつ広域的に対応することが望ましい問題を持つ住民に対して、保健、医療、福祉の連携の下で最適なサービスを提供するための総合調整機能を果たすとともに、市町村の求めに応じて、専門的及び技術的支援を行うこと。

二 包括的な保健、医療、福祉のシステムの構築

住民のニーズに応じた適切なサービスを提供するため、地域における包括的な保健、医療、福祉のシステムの構築が重要である。

このため、市町村、都道府県、国及び保健、医療、福祉サービスを提供する施設は、次のような取組を行うことが必要である。

1 市町村においては、市町村保健センター等の保健活動の拠点、保健所、福祉事務所等の行政機関及び地域包括支援センター、医療機関、薬局、社会福祉施設、介護老人保健施設、訪問看護ステーション等の施設を結ぶ地域の特性に応じたネットワークを整備すること。

2 二次医療圏においては、保健、医療、福祉のシステムの構築に必要な社会資源がおおむね確保されていることから、保健所等は、これらを有効に活用したシステムの構築を図るための検討協議会を設置すること。

また、保健所運営協議会又は地域保健医療協議会が設置されている場合には、これらとの一体的な運営を図り、二次医療圏内の地域保健全般に渡る事項を幅広い見地から協議すること。

3 市町村は保健、福祉サービスの有機的な連携を推進する観点から、都道府県は市町村に対する保健、福祉サービスを通じた一元的な助言、援助等を円滑に行う観点から、それぞれ、地域の特性に応じた組織の在り方について検討すること。

4 都道府県及び国は、相談窓口の一元化、保健師とホームヘルパーに共通の活動拠点の設置、関連施設の合築、連絡調整会議の設置、保健部局と福祉部局及び介護保険部局間の人事交流の促進、組織の再編成等のうち、保健、医療、福祉のシステムの構築に関する市町村及び都道府県の先駆的な取組について、事例の紹介又は情報の提供を行う等により支援すること。

三 次世代育成支援対策の総合的かつ計画的な推進

都道府県及び市町村は、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備を図るため、保健部局、福祉部局等の関係部局間の連携を十分に図りつつ、次世代育成支援対策を総合的かつ計画的に推進すること。

四 高齢者対策及び介護保険制度の円滑な実施のための取組

住民のニーズに応じ、適切に高齢者対策を実施し、及び介護保険に係るサービス等を提供するため、高齢者対策に係る取組及び介護保険制度の円滑な実施のための取組が重要である。

このため、市町村、都道府県等は、次のような取組を行うことが必要である。

1 市町村においては、保健部局と高齢者対策に係る取組及び介護保険制度との連携を密にとり、健康増進事業と介護保険事業とを有機的かつ連続的に運用すること。

また、高齢者の生涯を通じた健康づくり対策、要介護状態等にならないための介護予防対策及び自立支援対策を強化し、介護等を必要とする高齢者を早期に発見するとともに、必要な介護サービスを一体的に提供する地域包括ケアシステムづくりを推進すること。

2 都道府県においては、保健部局と関連部局、関係機関及び関係団体とが十分に連携するとともに、市町村に対して、都道府県内の保健、医療、福祉サービスに関する情報を提供すること。

3 都道府県は、保健所において、市町村が高齢者対策に係る取組及び介護保険制度を円滑に実施することができるように、市町村が行う介護保険事業計画の推進、サービス資源等についての市町村間の広域的調整及び開発等に対して支援を行うこと。

4 政令市及び特別区は、市町村として担うべき役割に加え、都道府県が設置する保健所の担うべき役割のうち保健医療福祉情報の収集、分析及び提供等の役割も担うこと。

五 精神障害者施策の総合的な取組

1 精神障害者に係る保健、医療、福祉等関連施策の総合的かつ計画的な取組を促進すること。

2 都道府県及び市町村並びに保健所は、精神障害者ができる限り地域で生活できるようにするため、居宅生活支援事業の普及を図るとともに、ケアマネジメントの手法の活用の推進を検討すること。特に、条件が整えば退院可能とされる者の退院及び社会復帰を目指すため、必要なサービスの整備及び資源の開発を行い、地域の保健、医療、福祉関係機関の連携を進めること。

3 都道府県及び市町村並びに保健所は、精神障害者及び家族のニーズに対応した多様な相談体制及び支援体制を構築するとともに、当事者自身による相互支援活動等を支援すること。

4 都道府県及び市町村並びに保健所は、精神疾患及び精神障害者への正しい理解の普及を推進するとともに地域住民の精神的健康の保持増進を推進すること。

六 児童虐待防止対策に関する取組

近年の児童虐待に関する問題の深刻化に伴い、保健所、市町村保健センター等においても、児童相談所と十分な連携を取りつつ、以下のような取組を行うことが必要である。

1 母子保健活動や地域の医療機関等との連携を通じて、妊産婦及び親子の健康問題、家族の状況に係る問題等に関連した虐待発生のハイリスク要因を見逃さないよう努め、こうした要因がある場合、保健師の家庭訪問等による積極的な支援を実施すること。また、関係機関による会議等において積極的な役割を果たすとともに、地域組織活動の育成及び支援を行い、児童虐待の発生予防に向けた取組を行うこと。

2 保健所、市町村保健センター等の職員が児童虐待が行われている疑いがある家庭を発見した場合については、児童虐待への対応の中核機関である児童相談所又は福祉事務所への通告を行った上で、市町村及び保健所は、当該事例への援助について関係機関との連携及び協力を組織的に推進すること。

第六 その他地域保健対策の推進に関する重要事項

一 国民の健康づくり及びがん対策等の推進

都道府県及び市町村並びに保健所は、健康増進法に基づき、国民の健康づくりを推進するとともに、がん対策基本法(平成十八年法律第九十八号)、肝炎対策基本法(平成二十一年法律第九十七号)及び歯科口腔保健の推進に関する法律(平成二十三年法律第九十五号)に基づき、がん対策、肝炎対策及び歯科口くう保健の推進に関し、次のような取組を行うことが必要である。

1 都道府県は、地域における健康の増進に関する情報の収集を行うとともに、都道府県健康増進計画の策定及び市町村健康増進計画の策定に対する支援を行う等の地域診断の情報源となる健康指標の収集及び分析を行うこと。

保健所は、管内における関係機関、関係団体等の連携を推進するための中核機関としての役割を担うとともに、健康の増進に関する情報の収集、分析及び提供並びに市町村に対する技術的支援や二次医療圏に合わせた計画策定等を通じ、管内の健康づくりの取組の拠点としての役割を担うこと。

市町村は、健康増進事業等の実施主体として、市町村健康増進計画を関係機関及び関係団体並びに住民の参画を得て主体的に策定し、推進するよう努めること。その際、当該市町村をその所管区域内に含む保健所と連携を図ること。また、市町村健康増進計画の推進に当たっては、市町村の内部部局のみならず、保健衛生、精神保健、労働衛生、福祉、環境、都市計画等の各部門の外部機関との連携及び協力を強化すること。

これらを行う場合、都道府県、保健所、市町村の保健衛生部局、医療機関、学校、教育委員会、医療保険者、地域産業保健センター等の産業保健関係機関や、地域の健康づくりに関係するNPO等に係るソーシャルキャピタルの活用及び協力を強化すること。

2 地域のがん対策の推進に関し、都道府県及び市町村は、都道府県の策定する都道府県がん対策推進計画に基づき、がんの予防及び早期発見の推進、がん医療の均てん化の促進、研究の推進等のために必要な施策を講じること。

都道府県及び保健所は、健康増進法に基づき市町村が実施するがん検診が科学的根拠に基づいたものとなるよう市町村との連携を強化するとともに、地域がん登録の推進により地域のがん対策の現状を把握し、医療機関間の連携や在宅医療・介護サービスとの連携を進めるため、地域の関係機関との連携を推進すること。

3 地域の肝炎対策の推進に関し、都道府県及び市町村は、肝炎の予防及び早期発見の推進、肝炎医療の均てん化の促進、研究の推進等のために必要な施策を講じること。

都道府県は、市町村等が実施する肝炎ウイルス検査について、関係機関と連携し、広報を強化するとともに、肝炎診療ネットワークの構築等の地域における肝炎医療を提供する体制を確保すること。

4 地域の歯科口腔保健の推進に関し、都道府県は、関係機関等と連携し、地域の状況に応じた歯科口腔保健の基本的事項を策定するよう努めること。

また、都道府県及び市町村は、保健所と連携して、歯科口腔保健に関する知識の普及啓発、定期的に歯科検診(健康診査及び健康診断を含む。以下この4において同じ。)を受けること等の勧奨、障害者等が定期的に歯科検診や保健指導を受けるための施策、歯科疾患の予防のための措置、口腔の健康に関する調査及び研究の推進等に関する施策を講じるとともに、都道府県、政令市及び特別区は、口腔保健支援センターを設け、歯科医療等業務に従事する者等に対する情報提供、研修の実施その他の支援を行うこと。

二 生活衛生対策

1 都道府県、政令市及び特別区は、生活衛生同業組合が理容業、美容業、クリーニング業、飲食店営業等の分野の衛生及び経営に関する課題を共有して、地域社会における公衆衛生の向上を図る役割を有していることを踏まえ、新規営業者等に対して生活衛生同業組合についての適切な情報提供を行う等、その機能や組織の活性化を図ること。

また、生活衛生関係営業については、地方公共団体間で監視指導状況に大きな格差が生じている現状があり、監視指導の目標を設定する等、住民が安心できる体制の確保を図ること。

2 都道府県、政令市及び特別区は、生活衛生対策の中で特に、公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)に規定する浴場業及び旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)に規定する旅館業の営業者並びに建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和四十五年法律第二十号)に規定する特定建築物の維持管理権原者に対し、水質を汚染する病原生物(レジオネラ属菌等)に関する知識の普及、啓発を行うとともに、施設の種別に応じ、病原生物の増殖を抑制するための具体的方法を指導すること。また、病院、社会福祉施設等の特定建築物以外の建築物についても、その維持管理権原者に対し、病原生物に関する知識の普及、啓発に努めるとともに、維持管理に関する相談等に応じ、必要な指導等を行うこと。

さらに、住宅や建築物における室内空気汚染等による健康影響、いわゆるシックハウス症候群について、知識の普及、啓発を行うとともに、地域住民からの相談等に応じ、必要な指導等を行うこと。

三 食品安全対策

1 都道府県、政令市及び特別区並びに保健所は、第二の一の2の(一)の(2)ウ及び(二)に掲げるところにより監視指導に係る業務を推進するほか、教育活動や広報活動を通じた食品安全に関する正しい知識の普及、インターネットを利用した電子会議の実施等を通じた食中毒等に関する情報の収集、整理、分析、提供及び共有、研究の推進、食品安全に関する検査能力の向上、食品安全の向上に関わる人材の養成及び資質の向上並びに国、他の都道府県等及び農林水産部局等関係部局との相互連携に努めるとともに、リスクコミュニケーションの促進を図るため、積極的に施策の実施状況を公表し、住民からの意見聴取及び施策への反映に努めること。

2 都道府県、政令市及び特別区並びに保健所は、第二の一の3に掲げるところにより健康危機管理機能を強化するとともに、近年広域化している食中毒等飲食に起因する事故に対して、食中毒調査支援システム等を活用し、国、他の都道府県等及び関係部局と連携を図り、必要に応じて実地調査を行う疫学の専門家等の支援も得ながら、原因究明、被害拡大防止、再発防止対策等の一連の措置を迅速かつ的確に行うことができるよう体制を整備すること。

四 地域保健、学校保健及び産業保健の連携

住民が地域又は職域を問わず、生涯を通じて共通の基盤に立った保健サービスを受けられるようにするためには、地域保健、学校保健及び産業保健の連携が重要である。また、健康寿命の延伸等を図るためには、地域における生涯を通じた健康づくりに対する継続的な支援が必要である。そのためには、保健所及び市町村が中心となり、個人の年齢、就業先などにより異なる保健事業者間の連携を図り、次のような事項を行うことにより、継続的な健康管理の支援が可能となるような体制整備を図っていくことが必要である。

1 地域保健と産業保健の連携を推進するため、保健所、市町村等が、医療機関等、健康保険組合、労働基準監督署、地域産業保健センター、事業者団体、商工会等の関係団体等から構成する連携推進協議会を設置し、組織間の連携を推進すること。

2 保健所及び市町村は、学校、地域の学校医等との連携を図る場である学校保健委員会やより広域的な協議の場に可能な限り参画し、学校等との連携体制の強化に努めること。

3 地域保健対策に関する計画の策定に当たっては、学校保健及び産業保健との連携を図りつつ、整合性のとれた目標、行動計画を立て、それに基づき保健活動を推進すること。

4 健康教育や健康相談等の保健事業及び施設や保健従事者への研修会などに関する情報を共有するとともに、相互活用等の効率的な実施に配慮すること。

五 地域住民との連携及び協力

地域住民の多様なニーズにきめ細かく対応するため、公的サービスの提供とあいまって、ソーシャルキャピタルを活用し、住民参画型の地域のボランティア等の活動や地域の企業による活動が積極的に展開されることが重要である。

このため、市町村、都道府県及び国は、啓発活動等を通じた地域保健活動に対する住民の理解及び参画の促進並びに保健所、市町村保健センター等において連携又は協力に努めること等により、これらの活動の支援に努めること。

また、ソーシャルキャピタルは、健康危機が生じた場合に地域住民の心の支え合い等に有効に機能することから、市町村、都道府県及び国は、健康づくり活動や行事等の機会を通じて、ソーシャルキャピタルを醸成していく取組を推進することが必要である。

改正文 (平成一二年一二月二八日厚生省告示第六一五号) 抄

平成十三年一月六日から適用する。

改正文 (平成二〇年三月三一日厚生労働省告示第一八四号) 抄

平成二十年四月一日から適用する。

改正文 (平成二四年三月三〇日厚生労働省告示第二〇二号) 抄

平成二十四年四月一日から適用する。

改正文 (平成二七年三月二七日厚生労働省告示第一八五号) 抄

平成二十七年四月一日から適用する。

改正文 (令和五年三月二七日厚生労働省告示第八六号) 抄

令和五年四月一日から適用する。