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○カネミ油症患者に関する施策の推進に関する基本的な指針

(平成二十四年十一月三十日)

(/厚生労働省/農林水産省/告示第二号)

カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律(平成二十四年法律第八十二号)第八条第一項の規定に基づき、カネミ油症患者に関する施策の推進に関する基本的な指針を次のように策定したので、同条第四項の規定により告示する。

カネミ油症患者に関する施策の推進に関する基本的な指針

カネミ油症(カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律(平成二十四年法律第八十二号。以下「法」という。)第二条第二項に規定する疾患をいう。以下同じ。)については、根治的な治療方法が見つかっていない。

カネミ油症患者(法第二条第三項に規定する者をいう。以下同じ。)のカネミ油症事件(同条第二項に規定する事件をいう。以下同じ。)に係る被害の回復については、原因事業者(同条第四項に規定する者をいう。以下同じ。)であるカネミ倉庫株式会社が、過去の訴訟上の和解等に基づく一時金(以下「一時金」という。)及び医療費(通院のための交通費を含む。以下同じ。)の支払を行っている。また、国は、カネミ油症に関する調査及び研究を推進するため、油症治療研究班(カネミ油症に関する研究、検診、相談等に係る事業を行う研究班をいう。以下同じ。)に対し、研究、検診、相談等に係る事業の実施に要する費用の一部を助成するとともに、「カネミ油症事件に関する措置について」(昭和六十年二月二十二日三大臣(法務大臣、厚生大臣及び農林水産大臣)の確認事項)に基づき、カネミ倉庫株式会社に対し、カネミ油症患者に対する医療費の支払の一助とするため、政府所有米穀の保管の委託を行ってきた。

しかしながら、カネミ油症の症状、治療方法等の研究のため、カネミ油症患者の健康状態等の実態を継続して把握する必要があることや、カネミ油症患者の高齢化に伴う生活面での不安及びカネミ倉庫株式会社による医療費の安定的な支払に対する懸念が指摘されていることなど、今後とも、カネミ油症患者に関する施策のより一層の推進を図る必要があり、そのためには、国、関係地方公共団体、カネミ倉庫株式会社等の関係者が連携して総合的な支援を推進することが必要である。

本指針は、このような現状の下に、国、関係地方公共団体、カネミ倉庫株式会社及び国民が取り組むべき方向性を示すことにより、カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進を図ることを目的として、法第八条第一項の規定に基づき策定するものである。

第一 カネミ油症患者に関する施策の基本的な方向

カネミ油症患者に関する施策は、法第三条に規定する基本理念を踏まえ、次に掲げる基本的な方向に沿って実施することが必要である。

(1) カネミ油症患者がその居住する地域にかかわらず等しくその状態に応じた適切なカネミ油症に係る医療を受けることができるようにするとともに、カネミ油症患者の生活の質の維持向上が図られるようにすること。

(2) カネミ油症に関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進することにより、カネミ油症の診断、治療等に係る技術の向上を図るとともに、その成果を医療機関に普及し、活用し、及び発展させること。

(3) カネミ油症患者及びその家族(以下「カネミ油症患者等」という。)の人権が尊重され、カネミ油症患者等が不当に差別されないように配慮すること。

(4) 原因事業者であるカネミ倉庫株式会社に対し国が行う支援は、カネミ油症患者の生活の質の維持向上に資することを旨として行われること。

第二 原因事業者によるカネミ油症患者に対する医療費の支払その他カネミ油症患者のカネミ油症事件に係る被害の回復の支援に関する事項

カネミ油症事件に係る被害の回復に関して、カネミ倉庫株式会社が負担するカネミ油症患者の医療費については、将来にわたってカネミ倉庫株式会社から安定的に支払われる必要がある。また、一時金については、カネミ倉庫株式会社の経営状況を理由として、その一部しか支払われておらず、今後は、カネミ倉庫株式会社の経営状況を踏まえつつ、カネミ倉庫株式会社が可能な範囲で適切に支払っていくことが望まれる。

このため、カネミ油症事件に係る被害の回復を支援するため、国は、カネミ倉庫株式会社に対して、以下の取組を講ずるものとする。

(1) 今後とも、政府所有米穀の在庫管理の運営状況を随時確認しながら、保管料収入が適切に確保されるよう、カネミ倉庫株式会社が現在保有している倉庫について、最大限有効かつ安定的な活用を図り、カネミ倉庫株式会社から、将来にわたって医療費が確実に支払われるようにする。

(2) カネミ油症患者の生活の質の維持向上に資することを目的として、カネミ倉庫株式会社の支払能力を拡大させるため、カネミ倉庫株式会社による新たな倉庫の活用のための取組を支援するとともに、政府所有米穀の保管の委託数量の拡大等による収入の増加を図り、その結果生じた利益について、一時金の残余等の支払に適切に充てられるようにする。

(3) (1)及び(2)のカネミ油症患者に対する医療費や一時金の残余等の支払が確実に実施されるよう、国は、カネミ倉庫株式会社に対する支援の結果、カネミ油症患者に対する支払が適切に行われているか等について把握するとともに、必要に応じてカネミ倉庫株式会社に対する指導を行う。

第三 カネミ油症患者の健康状態の把握に関する事項

これまで、カネミ油症患者の健康状態を把握し、また、カネミ油症に関する調査及び研究を推進するため、毎年度、油症治療研究班による無料の検診事業を実施してきた。また、平成二十年度には、国において、油症治療研究班の協力を得て、カネミ油症患者の健康状態の実態を把握するための調査(以下「健康実態調査」という。)を実施した。

今後、国は、カネミ油症の特殊性を踏まえ、毎年度、カネミ油症患者の生活状況、症状、治療内容等について把握するための健康実態調査を実施し、検診の結果と併せてカネミ油症患者の症状の推移、治療の状況等の情報を収集し、分析することにより、カネミ油症に関する調査及び研究を更に推進していく。また、健康実態調査の実施に当たっては、調査の円滑な実施を図るため、健康実態調査に協力したカネミ油症患者に対して健康調査支援金を支給し、もって、カネミ油症患者の生活の質の維持向上を図る。なお、カネミ油症患者の高齢化を踏まえ、健康実態調査の調査項目については、カネミ油症患者の負担の軽減にも配慮して設定するとともに、その実施に当たっては、関係都道府県の協力を得て、必要に応じて調査票の記入を介助する等の配慮を行う。

第四 カネミ油症の診断基準の見直し並びに調査及び研究に関する事項

カネミ油症の診断基準については、油症治療研究班による調査及び研究の成果、検診の結果等を踏まえ、昭和四十三年の診断基準の策定以降、これまでに四回の見直しが行われてきた。診断基準については、今後とも、カネミ油症に関する調査及び研究の成果、検診の結果等を踏まえ、最新の科学的な知見に基づいて随時見直しを行っていく必要がある。

なお、法の制定に際し、平成二十四年八月二十八日に参議院厚生労働委員会において行われた附帯決議を踏まえ、国は、カネミ油症事件が発生した当時の同居家族でポリ塩化ビフェニル等が混入した食用油の摂取等を原因とする健康被害を受けた者が、家族内で認定結果が分かれることのないよう、診断基準を拡大する方向で速やかに結論をとりまとめるよう、油症治療研究班に対して要請する。

また、国は、カネミ油症に関する調査及び研究について、カネミ油症事件が発生した昭和四十三年以降、油症治療研究班が実施する研究、検診、相談等に係る事業に対して助成を行ってきた。その結果、カネミ油症に関する調査及び研究について一定の成果は得られているが、カネミ油症の根治的な治療方法が見つかっていないことを踏まえ、ダイオキシン類の生物学的毒性の解明及び症状の緩和並びにダイオキシン類の排泄促進その他の治療方法の開発等のため更なる調査及び研究の推進が必要である。

このため、国は、今後とも、油症治療研究班への助成を行い、カネミ油症に関する調査及び研究の効果的な推進を図る。

第五 カネミ油症に係る医療を提供する体制の確保に関する事項

カネミ油症患者がその状態に応じた適切なカネミ油症に係る医療を受けることができるよう、カネミ倉庫株式会社は、カネミ油症患者の医療費の支払を行っているほか、カネミ油症患者に対して、窓口での利用者負担の支払を要することなく医療を受けることを可能とする油症患者受療券を発行している。油症患者受療券の制度は、医療を提供した医療機関がカネミ倉庫株式会社に対して直接、カネミ油症患者の医療費を請求する仕組みであり、事前に、カネミ倉庫株式会社が制度の対象となる医療機関から同意を得ておく必要がある。

国は、こうしたカネミ倉庫株式会社による取組を支援するため、カネミ油症患者の要望を健康実態調査において把握した上で、関係都道府県と連携して、医療機関と調整し、油症患者受療券の制度の対象となる医療機関数の拡大を図る。また、国とカネミ倉庫株式会社は、制度の対象となる医療機関の一覧を作成し、カネミ油症患者に対して、広くその周知を図る。

第六 カネミ油症の症状、治療等に関する情報の収集及び提供を行う体制の整備並びにカネミ油症患者等に対する相談支援の推進に関する事項

カネミ油症の症状、治療等に関する情報の収集及び提供については、油症治療研究班において、調査及び研究が進められ、その成果が公表されてきたが、カネミ油症患者からは、カネミ油症の症状、治療等に係る知識や理解を有する医師等の医療関係者が不足しているという問題点等が指摘されている。

このため、国は、引き続き、油症治療研究班を通じて、カネミ油症の症状、治療等に関する情報の収集を行うとともに、今後は、油症治療研究班に蓄積される最新の研究成果、医学的知見及び医師の治療の参考となる症例集を、全国の医療機関に対して、インターネット等により速やかに情報提供を行う。

また、カネミ油症患者等に対する相談支援については、現在、油症治療研究班が設けている相談員制度により、カネミ油症患者等の健康相談等に対応しているが、国は、引き続き、こうした取組を支援するとともに、関係都道府県と連携して、カネミ倉庫株式会社による医療費の支払等に関するカネミ油症患者からの相談に対応していく。

第七 その他カネミ油症患者に関する施策に関する重要事項

(1) カネミ油症に関する正しい知識の普及啓発

法第七条の規定に鑑み、カネミ油症患者に関する施策の推進に当たっては、カネミ油症に関する知識が不足していること等により、カネミ油症患者等が不当に差別されることや、それに伴いカネミ油症患者等に精神的な負担が生じることがないよう、国民一人一人が、カネミ油症に関する正しい知識を有することが求められる。

このため、国及び関係地方公共団体は、法の趣旨に基づき、カネミ油症に関する理解が深まるよう、カネミ油症に関する正しい知識の普及啓発に努める。

(2) 関係地方公共団体の取組

関係地方公共団体においては、法の趣旨に基づき、積極的に、国が実施するカネミ油症患者に関する施策の実施に協力するとともに、地域の特性に応じたカネミ油症患者に関する施策の策定及び実施に努める。

(3) 新たな施策の実施

国は、カネミ油症患者が自らの検診の結果を継続的に把握すること及び健康実態調査や検診の後に、希望するカネミ油症患者が健康相談をすることができる体制の充実を図る。

また、漢方薬を用いた臨床研究を含めた更なる調査及び研究の推進や、油症患者受療券の制度の対象となる医療機関数の更なる拡大を図る。

さらに、現在油症治療研究班が設けている相談員制度に加え、新たに相談支援員の設置を進めるとともに、相談員制度における相談員と相談支援員との相互の連携及び相談支援員に対する研修等の実施を通じて、相談に関するネットワークを構築し、カネミ油症患者等に対する相談体制の充実を図る。

(4) 国、カネミ倉庫株式会社及びカネミ油症患者による定期的な協議等

国は、カネミ油症患者の要望及び意見を把握し、施策の効果的な実施を図るため、国、原因事業者であるカネミ倉庫株式会社及びカネミ油症患者の三者から構成される定期的な協議の場を設けるとともに、関係省庁から構成される連絡会議の開催を通じて、情報の共有及び施策の連携を図る。