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○移動式クレーン構造規格

(平成七年十二月二十六日)

(労働省告示第百三十五号)

労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第三十七条第二項及び第四十二条の規定に基づき、移動式クレーン構造規格を次のように定める。

移動式クレーン構造規格

目次

第一章 構造部分等

第一節 材料(第一条・第二条)

第二節 基準等

第一款 構造部分の基準(第二条の二)

第二款 許容応力設計法

第一目 許容応力の値(第三条―第六条)

第二目 荷重(第七条―第九条)

第三目 強度(第十条)

第三款 限界状態設計法

第一目 設計限界応力の値(第十条の二―第十条の四)

第二目 荷重(第十条の五―第十条の七)

第三目 強度(第十条の八)

第三節 安全性等(第十一条―第十六条)

第二章 機械部分

第一節 ブレーキ等(第十七条―第十九条)

第二節 ドラム等(第二十条―第二十三条)

第三節 安全装置等(第二十四条―第三十四条)

第四節 操作部分等(第三十五条―第三十七条)

第三章 加工(第三十八条―第四十条)

第四章 ワイヤロープ及びつりチェーン(第四十一条・第四十二条)

第五章 雑則(第四十三条―第四十五条)

附則

第一章 構造部分等

第一節 材料

(材料)

第一条 移動式クレーン(労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第十二条第一項第四号に掲げる移動式クレーン及び同令第十三条第三項第十五号に掲げる移動式クレーンをいう。以下同じ。)の構造部分(移動式クレーンのうち、運転室、囲い、覆いその他移動式クレーンの荷をつり上げるための支持部分以外の部分、機械部分及びワイヤロープを除いた部分をいう。以下同じ。)の材料は、次に掲げる日本産業規格に適合した鋼材又はこれらと同等以上の化学成分及び機械的性質を有する鋼材でなければならない。ただし、厚生労働省労働基準局長が認めた場合には、この限りでない。

一 日本産業規格G三一〇一(一般構造用圧延鋼材)に定めるSS四〇〇

二 日本産業規格G三一〇六(溶接構造用圧延鋼材)

三 日本産業規格G三一一四(溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)

四 日本産業規格G三一二八(溶接構造用高降伏点鋼板)

五 日本産業規格G三一三六(建築構造用圧延鋼材)

六 日本産業規格G三四四四(一般構造用炭素鋼鋼管)に定めるSTK四〇〇、STK四九〇又はSTK五四〇

七 日本産業規格G三四四五(機械構造用炭素鋼鋼管)に定める一三種、一八種、一九種又は二〇種

八 日本産業規格G三四六六(一般構造用角形鋼管)

(平一二労告一二〇・平一五厚労告四〇〇・平三〇厚労告三三・令元厚労告四八・一部改正)

(鋼材に係る計算に使用する定数)

第二条 前条本文の鋼材に係る計算に使用する定数は、次の表の上欄に掲げる定数の種類に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる値とする。

定数の種類

縦弾性係数(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

二〇六、〇〇〇

横弾性係数(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

七九、〇〇〇

ポアソン比

〇・三

線膨張係数

〇・〇〇〇〇一二

比重

七・八五

第二節 基準等

(平三〇厚労告三三・改称)

第一款 構造部分の基準

(平三〇厚労告三三・追加)

(構造部分の基準)

第二条の二 第一条本文の鋼材により構成される移動式クレーンの構造部分(以下「構造部分」という。)については、次款に規定する許容応力設計法の基準又は第三款に規定する限界状態設計法の基準に適合するものでなければならない。

(平三〇厚労告三三・追加)

第二款 許容応力設計法

(平三〇厚労告三三・款名追加)

第一目 許容応力の値

(平三〇厚労告三三・目名追加)

(鋼材に係る許容応力の値)

第三条 第一条本文の鋼材に係る許容応力設計法の計算に使用する許容引張応力の値、許容圧縮応力の値、許容曲げ応力の値、許容せん断応力の値及び許容支え圧応力の値は、それぞれ次の式により計算して得た値とする。

σta=σa

σca=σa/1.15

σbat=σa

σbac=σa/1.15

τ=σa/√3

σda=1.42σa

(これらの式において、σa、σta、σca、σbat、σbac、τ及びσdaは、それぞれ次の値を表すものとする。

σa 鋼材に係る次に掲げる値のうちいずれか小さい値

イ 降伏点又は耐力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)の値を一・五で除して得た値

ロ 引張強さ(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)の値を一・八で除して得た値

σta 許容引張応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

σca 許容圧縮応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

σbat 引張応力の生ずる側における許容曲げ応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

σbac 圧縮応力の生ずる側における許容曲げ応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

τ 許容せん断応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

σda 許容支え圧応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル))

2 第一条本文の鋼材に係る許容応力設計法の計算に使用する許容座屈応力の値は、次の式により計算して得た値とする。

λ<20の場合

σk=σca

20≦λ≦200の場合

σk=(1/ω)σca

(これらの式において、λ、σk、σca及びωは、それぞれ次の値を表すものとする。

λ 有効細長比

σk 許容座屈応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

σca 許容圧縮応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

ω 座屈係数(別表に定める座屈係数又は厚生労働省労働基準局長が認めた計算の方法により計算して得た値をいう。))

(平一二労告一二〇・平三〇厚労告三三・一部改正)

(溶接部に係る許容応力の値)

第四条 構造部分の溶接部に係る許容応力設計法の計算に使用する許容応力(許容支え圧応力及び許容座屈応力を除く。)の値は、前条第一項の規定にかかわらず、同項に規定するそれぞれの値(溶接加工の方法がすみ肉溶接である場合には、許容せん断応力の値)に、次の表の上欄に掲げる溶接加工の方法及び同表の中欄に掲げる鋼材の種類に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる係数を乗じて得た値とする。

溶接加工の方法

鋼材の種類

係数

許容引張応力に係るもの

許容圧縮応力に係るもの

許容曲げ応力に係るもの

許容せん断応力に係るもの

突合せ溶接

A

〇・八四〇

〇・九四五

〇・八四〇

〇・八四〇

B

〇・八〇〇

〇・九〇〇

〇・八〇〇

〇・八〇〇

すみ肉溶接

A

〇・八四〇

〇・八四〇

〇・八四〇

B

〇・八〇〇

〇・八〇〇

〇・八〇〇

備考 この表において、Aは日本産業規格G三一〇六(溶接構造用圧延鋼材)、日本産業規格G三一一四(溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材)、日本産業規格G三一二八(溶接構造用高降伏点鋼板)、日本産業規格G三一三六(建築構造用圧延鋼材)に定めるSN四〇〇B、SN四〇〇C、SN四九〇B若しくはSN四九〇C、日本産業規格G三四四四(一般構造用炭素鋼鋼管)に定めるSTK四九〇、日本産業規格G三四四五(機械構造用炭素鋼鋼管)に定める一八種又は日本産業規格G三四六六(一般構造用角形鋼管)に定めるSTKR四九〇に適合する鋼材を、Bはこれらの鋼材以外の鋼材を表すものとする。

2 前項の規定にかかわらず、放射線試験を行う場合において、構造部分の溶接部(溶接加工の方法が突合せ溶接である場合に限る。)が次に掲げるところに該当するときは、当該溶接部に係る許容応力設計法の計算に使用する許容応力(許容引張応力、許容圧縮応力及び許容曲げ応力に限る。)の値は、前条第一項に規定する値とすることができる。

一 日本産業規格Z三一〇四(鋼溶接継手の放射線透過試験方法)(以下この条において「規格」という。)に規定する第三種のきずがないこと。

二 規格に規定する第一種及び第四種のきず又は第二種のきずのいずれかがある場合には、当該きずに係る規格に規定するきず点数又はきず長さがそれぞれ規格に規定する第一種及び第四種の二類の許容限度を表す値又は第二種の二類の許容限度を表す値以下であること。

三 規格に規定する第一種及び第四種のきず並びに第二種のきずが混在する場合には、当該きずに係る規格に規定するきず点数及びきず長さがそれぞれ規格に規定する第一種及び第四種の二類の許容限度を表す値及び第二種の二類の許容限度を表す値の二分の一以下であること。

3 前項の放射線試験は、次に定めるところによるものでなければならない。

一 規格に定めるところに従い構造部分の溶接部の全長の二十パーセント以上の長さについて行うこと。

二 構造部分の溶接部は、その余盛りが母材の表面と同一の面まで削られていること。ただし、余盛りの中央における高さが、次の表の上欄に掲げる母材の厚さに応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる高さ以下である場合には、この限りでない。

母材の厚さ(単位 ミリメートル)

高さ(単位 ミリメートル)

一二以下

一・五

一二を超え二五以下

二・五

二五を超えるもの

三・〇

(平三〇厚労告三三・令元厚労告四八・一部改正)

(許容応力の値の特例)

第五条 第一条ただし書の規定により厚生労働省労働基準局長が使用することを認めた材料及び当該材料により構成される構造部分の溶接部に係る許容応力設計法の計算に使用する許容応力の値は、当該材料の化学成分及び機械的性質を考慮して厚生労働省労働基準局長が定めるものとする。

(平一二労告一二〇・平三〇厚労告三三・一部改正)

(許容応力の値の割増し)

第六条 第三条及び第四条に規定する許容応力の値及び前条の規定により厚生労働省労働基準局長が定める許容応力の値は、第十条第一項第二号の荷重の組合せによる計算においては、十五パーセントを限度として割り増した値とすることができる。

(平一二労告一二〇・一部改正)

第二目 荷重

(平三〇厚労告三三・目名追加)

(計算に使用する荷重の種類)

第七条 構造部分にかかる荷重のうち許容応力設計法の計算に使用する荷重は、次に掲げるとおりとする。

一 垂直動荷重

二 垂直静荷重

三 水平動荷重

四 風荷重

(平三〇厚労告三三・一部改正)

(水平動荷重)

第八条 前条第三号の水平動荷重の値は、移動式クレーンの水平に移動する部分の質量に重力加速度の値の五パーセントに相当する値を乗じて得た値に相当する荷重及び定格荷重に重力加速度の値の五パーセントに相当する値を乗じて得た値に相当する荷重が同一の水平方向に同時に作用するものとして計算して得た値とする。

(風荷重)

第九条 第七条第四号の風荷重の値は、次の式により計算して得た値とする。ただし、厚生労働省労働基準局長が認めた場合には、この限りでない。

W=qCA

(この式において、W、q、C及びAは、それぞれ次の値を表すものとする。

W 風荷重(単位 ニュートン)

q 速度圧(単位 ニュートン毎平方メートル)

C 風力係数

A 受圧面積(単位 平方メートル))

2 前項の速度圧の値は、次の式により計算して得た値とする。

q=834√h

(この式において、q及びhは、それぞれ次の値を表すものとする。

q 速度圧(単位 ニュートン毎平方メートル)

h 移動式クレーンの風を受ける面の地上(浮きクレーンにあっては、水面)からの高さ(単位 メートル)(高さが十六メートル未満の場合には、十六))

3 第一項の風力係数は、移動式クレーンの風を受ける面に関して風洞試験を行って得た値又は次の表の上欄に掲げる移動式クレーンの風を受ける面の区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる値とする。

移動式クレーンの風を受ける面の区分

平面トラス(鋼管製の平面トラスを除く。)により構成される面

W1が〇・一未満のもの

二・〇

W1が〇・一以上〇・三未満のもの

一・八

W1が〇・三以上〇・九未満のもの

一・六

W1が〇・九以上のもの

二・〇

平板により構成される面

W2が五未満のもの

一・二

W2が五以上一〇未満のもの

一・三

W2が一〇以上一五未満のもの

一・四

W2が一五以上二五未満のもの

一・六

W2が二五以上五〇未満のもの

一・七

W2が五〇以上一〇〇未満のもの

一・八

W2が一〇〇以上のもの

一・九

円筒の面及び鋼管製の平面トラスにより構成される面

W3が三未満のもの

一・二

W3が三以上のもの

〇・七

備考 この表において、W1、W2及びW3は、それぞれ次の値を表すものとする。

W1 充実率(移動式クレーンの風を受ける面の見付面積を当該風を受ける面の面積で除して得た値)

W2 移動式クレーンの風を受ける面の長手方向の長さを当該風を受ける面の幅で除して得た値

W3 円筒又は鋼管の外径(単位 メートル)に前項に規定する速度圧の値(単位 ニュートン毎平方メートル)の平方根を乗じて得た値

4 第一項の受圧面積は、移動式クレーンの風を受ける面の風の方向に直角な面に対する投影面積(以下この項において「投影面積」という。)とする。この場合において、移動式クレーンの風を受ける面が風の方向に対して二面以上重なっているときは、風の方向に対して第一の面の投影面積に、風の方向に対して第二以降の面(以下この項において「第二以降の面」という。)のうち風の方向に対して前方にある面と重なっている部分の投影面積に次の図に示す低減率を乗じて得た面積及び第二以降の面のうち風の方向に対して前方にある面と重なっていない部分の投影面積を加えた面積とする。

備考 この図において、b、h、φ及びηは、それぞれ次の値を表すものとする。

b 相対する移動式クレーンの風を受ける面に係るけたの間隔

h 相対する移動式クレーンの風を受ける面に係るけたのうち風の方向に対して前方にあるけたの高さ

φ 相対する移動式クレーンの風を受ける面に係るけたのうち風の方向に対して前方にあるけたの移動式クレーンの風を受ける面に係る充実率(平面トラスにより構成される面については前項の表の備考において規定するW1とし、平板により構成される面及び円筒の面については1とする。)

η 低減率

(平一二労告一二〇・一部改正)

第三目 強度

(平三〇厚労告三三・目名追加)

(強度計算に係る荷重の組合せ)

第十条 許容応力設計法を用いる場合にあっては、構造部分を構成する部材の断面に生ずる応力の値は、次に掲げる荷重の組合せによる計算において、それぞれ第一目に規定する許容応力の値を超えてはならない。

一 動荷重係数を乗じた垂直動荷重及び静荷重係数を乗じた垂直静荷重の組合せ

二 動荷重係数を乗じた垂直動荷重、静荷重係数を乗じた垂直静荷重、水平動荷重及び風荷重の組合せ

2 前項の動荷重係数及び静荷重係数は、それぞれ、一・二五及び一・一とする。

3 第一項に規定する応力の値は、同項各号に掲げる荷重の組合せにおいて、当該構造部分の強度に関し最も不利となる場合におけるそれぞれの荷重によって計算するものとする。

(平三〇厚労告三三・一部改正)

第三款 限界状態設計法

(平三〇厚労告三三・追加)

第一目 設計限界応力の値

(平三〇厚労告三三・追加)

(鋼材に係る設計限界応力の値)

第十条の二 第一条本文の鋼材に係る限界状態設計法の計算に使用する設計限界垂直応力の値、設計限界せん断応力の値及び設計限界支え圧応力の値は、それぞれ次の式により計算して得た値とする。

fσr=fy/γR

(これらの式において、fy、γR、fσr、fτr、fdr及びαは、それぞれ次の値を表すものとする。

fy 鋼材の降伏点又は耐力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

γR 材料の特性、荷重の種類及び接合部の形状に応じて定まる合成抵抗係数で、日本産業規格B八八二九(クレーン―鋼構造部分の性能照査)に定める値

fσr 設計限界垂直応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

fτr 設計限界せん断応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

fdr 設計限界支え圧応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

α 1(ピン接合部の設計限界支え圧応力の値を計算する場合であって、ピン材料の降伏点又は耐力が構造部材の降伏点又は耐力よりも小さい場合には、ピン材料の降伏点又は耐力を構造部材の降伏点又は耐力で除した値))

2 第一条本文の鋼材に係る限界状態設計法の計算に使用する設計限界座屈応力の値は、次の式により計算して得た値とする。

(この式において、fk、κ、及びfyは、それぞれ次の値を表すものとする。

fk 設計限界座屈応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

κ 有効細長比及び断面形状に応じて定まる低減係数で、日本産業規格B八八二九(クレーン―鋼構造部分の性能照査)に定める値

fy 鋼材の降伏点又は耐力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル))

(平三〇厚労告三三・追加、令元厚労告四八・一部改正)

(溶接部に係る設計限界応力の値)

第十条の三 構造部分の溶接部に係る限界状態設計法の計算に使用する設計限界応力(設計限界支え圧応力及び設計限界座屈応力を除く。)の値は、前条第一項の規定にかかわらず、次の式により計算して得た値とする。

fu≦fuwの場合

fu>fuwの場合

(これらの式において、fu、fuw、fw、αw及びfyは、それぞれ次の値を表すものとする。

fu 鋼材の引張強さ(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

fuw 溶接材料の引張強さ(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

fw 溶接部の設計限界応力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル)

αw 溶接材料の種類、応力の方向、溶接継手の形態、応力の種類及び鋼材の降伏点又は耐力の値に応じて定まる係数で、日本産業規格B八八二九(クレーン―鋼構造部分の性能照査)に定める値

fy 溶接部に使用する鋼材の降伏点又は耐力(単位 ニュートン毎平方ミリメートル))

(平三〇厚労告三三・追加、令元厚労告四八・一部改正)

(設計限界応力の値の特例)

第十条の四 第五条の規定は、限界状態設計法の計算に使用する設計限界応力の値について準用する。

(平三〇厚労告三三・追加)

第二目 荷重

(平三〇厚労告三三・追加)

(計算に使用する荷重の種類)

第十条の五 構造部分にかかる荷重のうち限界状態設計法の計算に使用する荷重は、次に掲げるとおりとする。

一 次に掲げる定常荷重

イ 移動式クレーンの質量による荷重

ロ 定格総荷重

ハ 平たんでない場所の走行による荷重

ニ 駆動による荷重

二 非定常荷重のうち作業中の風荷重

三 次に掲げる特殊荷重

イ 地上に置かれた荷のつり上げによる荷重

ロ 休止時の風荷重

ハ 試験荷重

ニ 非常停止による荷重

(平三〇厚労告三三・追加)

(風荷重)

第十条の六 第九条の規定は、前条第二号の非定常荷重のうち作業中の風荷重について準用する。この場合において、第九条第一項中「第七条第四号の風荷重」とあるのは、「第十条の五第二号の非定常荷重のうち作業中の風荷重」と読み替えるものとする。

2 第九条の規定は、前条第三号ロの休止時の風荷重について準用する。この場合において、第九条第一項中「第七条第四号の風荷重」とあるのは「第十条の五第三号ロの休止時の風荷重」と、同条第二項中「画像7 (20KB)別ウィンドウが開きます

」とあるのは「画像8 (20KB)別ウィンドウが開きます
」と読み替えるものとする。

(平三〇厚労告三三・追加)

(試験荷重)

第十条の七 第十条の五第三号ハの試験荷重の値は、定格総荷重に一・二五を乗じた値とする。

(平三〇厚労告三三・追加)

第三目 強度

(平三〇厚労告三三・追加)

(強度計算に係る荷重の組合せ)

第十条の八 限界状態設計法を用いる場合にあっては、構造部分を構成する部材の断面に生ずる応力の値は、次に掲げる荷重又は荷重の組合せによる計算において、それぞれ第一目に規定する設計限界応力の値を超えてはならない。

一 移動式クレーンの質量による荷重、定格総荷重及び駆動による荷重の組合せ

二 平たんでない場所の走行による荷重

三 移動式クレーンの質量による荷重、定格総荷重及び駆動による荷重並びに作業中の風荷重の組合せ

四 平たんでない場所の走行による荷重及び作業中の風荷重の組合せ

五 移動式クレーンの質量による荷重及び地上に置かれた荷のつり上げによる荷重の組合せ

六 移動式クレーンの質量による荷重、定格総荷重及び休止時の風荷重の組合せ

七 移動式クレーンの質量による荷重、駆動による荷重、作業中の風荷重及び試験荷重の組合せ

八 移動式クレーンの質量による荷重、定格総荷重及び非常停止による荷重の組合せ

2 前項各号の荷重又は荷重の組合せによる計算においては、それぞれの荷重に日本産業規格B八八三三―二(クレーン―荷重及び荷重の組合せに関する設計原則―第二部:移動式クレーン)に定める部分荷重係数及び動的影響係数を乗じるものとする。

3 第一項に規定する応力の値は、同項各号に掲げる荷重の組合せにおいて、当該構造部分の強度に関し最も不利となる場合におけるそれぞれの荷重によって計算するものとする。

4 第一項の規定にかかわらず、移動式クレーンの設計の基準とする負荷条件に応じて、負荷されることが想定されない荷重又は荷重の組合せについては、省略することができる。

(平三〇厚労告三三・追加、令元厚労告四八・一部改正)

第三節 安全性等

(平三〇厚労告三三・節名追加)

(疲れ強さに対する安全性)

第十一条 構造部分は、疲れ強さに対する安全性が確認されたものでなければならない。

(剛性の保持)

第十二条 構造部分は、壁面座屈、著しい変形等が生じないように剛性が保持されているものでなければならない。

(後方安定度)

第十三条 移動式クレーン(クローラクレーン及び浮きクレーンを除く。)は、次の各号に掲げるジブの長手方向の中心線を含む鉛直面と当該移動式クレーンの走行方向との状態に応じて、当該ジブが向けられている側のすべての転倒支点にかかる荷重の値の合計値がそれぞれ当該各号に定める値以上である後方安定度を有するものでなければならない。

一 直角である場合 当該移動式クレーンの質量に重力加速度の値の十五パーセントに相当する値を乗じて得た値

二 平行である場合 当該移動式クレーンの質量に重力加速度の値の十五パーセントに相当する値を乗じて得た値に平均輸距を軸距で除して得た値を乗じて得た値

2 クローラクレーンは、ジブが向けられている側のすべての転倒支点にかかる荷重の値の合計値が、当該クローラクレーンの質量に重力加速度の値の十五パーセントに相当する値を乗じて得た値以上である後方安定度を有するものでなければならない。

3 前二項に規定する後方安定度は、移動式クレーンが次の状態にあるものとして計算するものとする。

一 後方安定度に影響がある質量は、移動式クレーンの後方安定に関し最も不利となる状態にあること。

二 荷をつっていない状態にあること。

三 水平かつ堅固な面の上にあること。

四 アウトリガーを有する移動式クレーンにあっては、当該アウトリガーを使用しない状態にあること。ただし、自動的にアウトリガーの張出幅を検出して、後方安定度を確保することができるよう旋回角度又はジブの傾斜角を制限する安全装置を備えている移動式クレーンにあっては、当該アウトリガーを使用した状態とすることができる。

五 拡幅式のクローラを有するクローラクレーンにあっては、当該クローラを張り出さない状態にあること。ただし、クローラを最大限に張り出していない状態で定格荷重を有しないクローラクレーン及び自動的にクローラの張出幅を検出して、後方安定度を確保することができるよう旋回角度又はジブの傾斜角を制限する安全装置を備えているクローラクレーンにあっては、当該クローラを張り出した状態とすることができる。

(前方安定度)

第十四条 移動式クレーン(浮きクレーンを除く。)は、安定限界総荷重の値が、定格総荷重に一・二五を乗じた値にジブの質量のうち先端部等価質量に〇・一を乗じた値を加えた値以上である前方安定度を有するものでなければならない。

2 前項に規定する前方安定度は、移動式クレーンが次の状態にあるものとして計算するものとする。

一 前方安定度に影響がある質量は、移動式クレーンの前方安定に関し最も不利となる状態にあること。

二 水平かつ堅固な面の上にあること。

(平三〇厚労告三三・全改)

(浮きクレーンの安定度)

第十五条 浮きクレーンは、静穏な水面で定格荷重に相当する荷重をつった状態において、転倒端における乾げん(上甲板から水面までの垂直距離をいう。)が〇・三メートル以上となるものでなければならない。

(左右の安定度)

第十六条 移動式クレーン(クローラクレーンを除く。)は、次の状態において、水平かつ堅固な面の上で三十度まで傾けても転倒しない左右の安定度を有するものでなければならない。

一 無負荷状態(燃料、潤滑油、冷却水等の全量を搭載し、かつ、運転に必要な設備、装置等を取り付けた状態をいう。以下同じ。)にあること。

二 ジブが走行時の姿勢として定められた状態にあること。

2 前項に規定する左右の安定度は、計算によって算定することができる。

第二章 機械部分

第一節 ブレーキ等

(下部走行体のブレーキ等)

第十七条 移動式クレーンを走行させるために原動機、動力伝達装置、ブレーキ、操縦装置その他の装置は、次に定めるところによるものでなければならない。

一 使用の目的に適応した必要な強度を有すること。

二 著しい損傷、摩耗、変形又は腐食がないこと。

第十八条 移動式クレーンは、その走行を制動し、及び停止の状態を保持するために必要な独立に作用する二系統以上のブレーキを備えるものでなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、クローラクレーン、被けん引式の移動式クレーン又は走行するための動力として水圧若しくは油圧を用いる移動式クレーンで当該水圧回路中若しくは油圧回路中にブレーキバルブを備えるものにあっては、走行を制動するために必要なブレーキを備えないことができる。

3 第一項のブレーキのうち走行を制動するために必要なブレーキは、次の表の上欄に掲げる移動式クレーンの最高走行速度に応じて、それぞれ、同表の中欄に掲げる制動初速度において同表の下欄に掲げる停止距離以内で当該移動式クレーンを停止させることができる性能を有するものでなければならない。

最高走行速度(単位 キロメートル毎時)

制動初速度(単位 キロメートル毎時)

停止距離(単位 メートル)

移動式クレーンの総質量が二〇トン未満の場合

移動式クレーンの総質量が二〇トン以上の場合

八〇以上

五〇

二二

三五以上八〇未満

三五

一四

二〇

二〇以上三五未満

二〇

二〇未満

その最高走行速度

備考 移動式クレーンの総質量とは、移動式クレーンの無負荷状態における質量と五十五キログラムに乗車定員を乗じて得た質量とを加えた質量をいう。

4 第一項のブレーキのうち停止の状態を保持するために必要なブレーキは、五分の一のこう配の床面で無負荷状態の移動式クレーンの停止の状態を保持することができる性能を有するものでなければならない。

(つり上げ装置等のブレーキ)

第十九条 つり上げ装置、起伏装置及び伸縮装置は、荷又はジブの降下を制動するために必要なブレーキを備えるものでなければならない。ただし、水圧シリンダ、油圧シリンダ又は蒸気圧シリンダを用いるつり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置については、この限りでない。

2 前項のブレーキは、次に定めるところによるものでなければならない。

一 制動トルクの値(つり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置に二以上のブレーキが備えられている場合には、それぞれのブレーキの制動トルクの値を合計した値)は、移動式クレーンに定格荷重に相当する荷重の荷をつった場合における当該移動式クレーンのつり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置のトルクの値(当該トルクの値が二以上ある場合にあっては、それらの値のうち最大の値)の一・五倍以上であること。

二 人力によるものにあっては、次に定めるところによること。

イ ストロークの値は、足踏み式のものにあっては三十センチメートル以下、手動式のものにあっては六十センチメートル以下であること。

ロ 足踏み式のものにあっては三百ニュートン以下、手動式のものにあっては二百ニュートン以下の力量で作動するものであること。

ハ 歯止め装置又は止め金を備えているものであること。

三 人力によるもの以外のものにあっては、移動式クレーンの動力(走行のための動力を除く。)が遮断された場合に自動的に作動するものであること。

3 前項第一号のつり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置のトルクの値は、つり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置の抵抗がないものとして計算するものとする。ただし、当該つり上げ装置、起伏装置又は伸縮装置に七十五パーセント以下の効率のウォーム・ウォーム歯車機構が用いられている場合には、当該歯車機構の抵抗により生ずるトルクの値の二分の一のトルクに相当する抵抗があるものとして計算することができる。

第二節 ドラム等

(ドラム等の直径)

第二十条 ワイヤロープにより荷のつり上げ又はジブの起伏若しくは伸縮の作動をする装置(以下この節において「つり上げ装置等」という。)のドラムのピッチ円の直径と当該ドラムに巻き込まれるワイヤロープの直径との比の値、つり上げ装置等のシーブのピッチ円の直径と当該シーブを通るワイヤロープの直径との比の値又はつり上げ装置等のエコライザシーブのピッチ円の直径と当該エコライザシーブを通るワイヤロープの直径との比の値は、次の表の上欄に掲げるワイヤロープの種類及び同表の中欄に掲げるドラム等の区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上でなければならない。ただし、つり上げ装置等に備えられる過負荷を防止するための装置のシーブのピッチ円の直径と当該シーブを通るワイヤロープの直径との比の値は五以上とすることができる。

ワイヤロープの種類

ドラム等の区分

一グループのワイヤロープ

二グループのワイヤロープ

三グループのワイヤロープ

巻上げ用ワイヤロープ及びジブの起伏用ワイヤロープ

ドラム

一六

二〇

二五

シーブ

一六

二〇

二五

ジブの伸縮用ワイヤロープ

ドラム

一四

一八

二二・四

シーブ

一六

二〇

二五

全てのワイヤロープ

エコライザシーブ

一〇

一二・五

一六

備考 この表において、一グループのワイヤロープ、二グループのワイヤロープ及び三グループのワイヤロープは、それぞれ次のワイヤロープを表すものとする。

一グループのワイヤロープ 六ストランド又は八ストランドの平行よりのワイヤロープ及び三十七本線六よりのワイヤロープでステンレス製以外のもの

二グループのワイヤロープ 三ストランド、四ストランド又は多層ストランドのワイヤロープ及び六ストランド(三十七本線六よりのワイヤロープを除く。)又は八ストランドの交差よりのワイヤロープでステンレス製以外のもの並びに六ストランド又は八ストランドの平行よりのワイヤロープ及び三十七本線六よりのワイヤロープでステンレス製のもの

三グループのワイヤロープ 一グループのワイヤロープ及び二グループのワイヤロープ以外のワイヤロープ