添付一覧
経過営業日数 |
所要自己資本率(K)(パーセント) |
五日以上十五日以内 |
八 |
十六日以上三十日以内 |
五十 |
三十一日以上四十五日以内 |
七十五 |
四十六日以上 |
百 |
2 内部格付手法採用金庫は、非同時決済取引に係るエクスポージャーの取扱いについて、当該非同時決済取引の相手方に対して有価証券等の引渡し又は資金の支払を行った場合であって、反対取引の決済が行われていないときは、次に定めるところに従うものとする。
一 有価証券等の引渡し又は資金の支払を行った日から、反対取引の約定決済日の四営業日後までの期間は、当該非同時決済取引の約定額をEADとし、取引の相手方の種類に応じ、第百二十七条又は第百三十六条の規定により算出された額を信用リスク・アセットの額とする。
二 反対取引の約定決済日の五営業日以後は、当該非同時決済取引の約定額(当該非同時決済取引の再構築コストが零を上回る場合には当該約定額及び再構築コストの合計額)に千二百五十パーセントのリスク・ウェイトを乗じて得た額を信用リスク・アセットの額とする。
3 内部格付手法採用金庫は、前項第一号の場合において、同号の規定にかかわらず、非同時決済取引に係るエクスポージャーについて次の各号に定める取扱いを行うことができる。
一 当該非同時決済取引の相手方に内部格付が付与されていない場合において、適格格付機関が付与する格付に対応するPDを用いること。
二 当該非同時決済取引の約定額に第二十七条から第三十八条までに規定するリスク・ウェイトを乗じて得た額を信用リスク・アセットの額とすること。
三 非同時決済取引に係るエクスポージャーの合計額が重要でないと認められる場合において、当該非同時決済取引の全てについて、約定額に百パーセントのリスク・ウェイトを乗じて得た額を信用リスク・アセットの額とすること。
4 先進的内部格付手法採用金庫は、前項第一号の場合において、第百三十一条又は第百三十九条の規定にかかわらず、当該非同時決済取引に係るエクスポージャーのLGDを四十五パーセントとすることができる。
5 第一項の経過営業日数又は第二項の約定決済日以後の営業日数のうち、外部の決済システム全体の全体的な障害に起因するものがある場合、内部格付手法採用金庫は、その日数を第一項の経過営業日数又は第二項の約定決済日以後の営業日数から除くことができる。
(平二五金庁厚労告一・令六金庁厚労告一・一部改正)
第九款 その他資産等
(その他資産等の取扱い)
第百五十四条 第二十六条の規定は、内部格付手法の信用リスク・アセットの額の算出について準用する。
2 第百二十七条から前条まで及び前項のいずれにも該当しない資産の信用リスク・アセットの額は、各エクスポージャーの額(EADをいう。)に百パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とする。
(平二五金庁厚労告一・一部改正)
(重要な出資のエクスポージャー)
第百五十四条の二 第百二十七条から前条までの規定にかかわらず、対象出資のうち重要な出資に係る十五パーセント基準額を上回る部分に係るエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に千二百五十パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とする。
2 前項の場合において、対象出資のうち同項の規定により千二百五十パーセントのリスク・ウェイトが適用される額に対応する部分以外の部分の額の合計額が重要な出資に係る六十パーセント基準額を上回るときは、その上回る部分に係るエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に千二百五十パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とする。
(平二五金庁厚労告一・追加、平三一金庁厚労告二・一部改正)
(他の金融機関等の対象資本等調達手段に係るエクスポージャー)
第百五十四条の三 第百二十七条から前条までの規定にかかわらず、他の金融機関等の対象資本等調達手段のうち、対象普通出資等及びその他外部TLAC関連調達手段に該当するもの以外のものに係るエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に二百五十パーセント(第四十七条第三項に規定する投機的な非上場株式に対する投資に係るエクスポージャーにあっては、四百パーセント)のリスク・ウェイトを乗じた額とする。
2 内部格付手法採用金庫が労働金庫である場合にあっては、第百二十七条から前条までの規定にかかわらず、他の金融機関等の対象資本調達手段のうち労働金庫連合会の対象普通出資等であって第二条又は第十一条の算式におけるコア資本に係る調整項目の額に算入されなかった部分に係るエクスポージャーの信用リスク・アセットの額については、当該エクスポージャーの額の合計額のうち少数出資に係る十パーセント基準額に相当する部分に係るエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に百パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とし、それ以外の部分に係るエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に二百五十パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とする。
(平二五金庁厚労告一・追加、平三一金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(特定項目のうち調整項目に算入されない部分に係るエクスポージャー)
第百五十四条の四 第百二十七条から前条までの規定にかかわらず、特定項目のうち第二条又は第十一条の算式におけるコア資本に係る調整項目の額に算入されなかった部分に係るエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に二百五十パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とする。
(平二五金庁厚労告一・追加、平三一金庁厚労告二・一部改正)
(その他外部TLAC関連調達手段に係るエクスポージャー)
第百五十四条の四の二 第百二十七条から前条までの規定にかかわらず、総株主等の議決権の百分の十を超える議決権を保有している他の金融機関等に係るその他外部TLAC関連調達手段に関するエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に二百五十パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とする。
2 第百二十七条から前条までの規定にかかわらず、総株主等の議決権の百分の十を超える議決権を保有していない他の金融機関等に係るその他外部TLAC関連調達手段のうち、その他外部TLAC関連調達手段に係る五パーセント基準額(第二条に規定する連結自己資本比率を算出する場合にあっては同条の算式における自己資本の額に五パーセントを乗じて得た額をいい、第十一条に規定する単体自己資本比率を算出する場合にあっては同条の算式における自己資本の額に五パーセントを乗じて得た額をいう。)を上回る部分に関するエクスポージャーの信用リスク・アセットの額は、当該エクスポージャーの額(EADをいう。)に百五十パーセントのリスク・ウェイトを乗じた額とする。
(平三一金庁厚労告二・追加、令六金庁厚労告一・一部改正)
(損益又は評価差額がその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等の項目として計上される資産の信用リスク・アセットの額の算出)
第百五十四条の五 損益又は評価差額がその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等の項目として計上される資産の信用リスク・アセットの額の算出に当たっては、時価による評価替え又は再評価を行わない場合の額を用いるものとする。
(平二五金庁厚労告一・追加、令六金庁厚労告一・一部改正)
(内部取引によるヘッジ効果の反映)
第百五十四条の六 第九十七条の二、第九十八条第二項、第九十九条から第百二条まで及び第百四条から第百六条までの規定は、内部格付手法採用金庫について準用する。この場合において、これらの規定中「標準的手法採用金庫」とあるのは「内部格付手法採用金庫」と、第九十七条の二第二項中「第五十条第一項」とあるのは「第百三十二条第七項又は第百四十条第五項において準用する第五十条第一項」と読み替えるものとする。
(令六金庁厚労告一・追加)
第四節 最低要件
第一款 内部格付制度の設計
第一目 内部格付制度
(内部格付制度)
第百五十五条 内部格付手法採用金庫は、信用リスクの評価、エクスポージャーに対する内部格付の付与並びにPD、LGD及びEADの推計(先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーのLGD及びEADの推計については先進的内部格付手法採用金庫に限る。)を行う方法、手続、統制、データの収集及び情報システム(以下「内部格付制度」と総称する。)を設けるものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、各資産区分の中の特定の業種又は市場ごとに異なる内部格付制度を設けることができる。
3 内部格付手法採用金庫は、前項に基づき複数の内部格付制度を設ける場合には、各債務者を当該債務者のリスクを判定するのに最もふさわしい内部格付制度に割り当てるための基準を作成し、当該基準を記載した書類を整備するものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、第二項に基づき複数の内部格付制度を設ける場合には、自己資本比率を向上させるために、債務者を内部格付制度に対して恣意的に割り当てないものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(事業法人等向けエクスポージャーの内部格付制度)
第百五十六条 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについて債務者格付と案件格付からなる内部格付制度を設けるものとする。ただし、内部格付手法採用金庫は、特定貸付債権についてスロッティング・クライテリアを適用している場合には、当該特定貸付債権については期待損失率に応じた内部格付制度を用いることができる。
2 債務者格付は、次に掲げる性質の全てを有するものとする。
一 債務者のPDに対応するものであること。
二 同一の債務者に対する複数の事業法人等向けエクスポージャーを有する場合は、これらに対して同一の債務者格付が付与されること。ただし、次のイ又はロに掲げる場合は、この限りでない。
イ トランスファー・リスクを考慮し、債務者の所在地国の通貨建て又はそれ以外の通貨建てであるかに応じて異なる債務者格付を付与する場合
ロ 当該エクスポージャーに関連する保証が、債務者格付において勘案されている場合
3 内部格付手法採用金庫は、信用リスク管理指針に次に掲げる性質の全てを満たすような事業法人等向けエクスポージャーの債務者格付に関する規定を記載するものとする。
一 個々の債務者格付の意味するリスクの水準に鑑み、各債務者格付の関係が明確に規定されていること。
二 債務者格付は、当該債務者格付が下がるごとにリスクの水準が高くなるよう規定されているものであること。
三 各債務者格付のリスクの水準は、当該債務者格付に対応する債務者の典型的なデフォルト確率及び当該信用リスクの水準を判断するために設けられている基準により規定されていること。
4 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについてLGDに対応した案件格付を設けるものとする。ただし、基礎的内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーの案件格付を設けるに当たっては、債務者及び取引に特有の要素を勘案することができる。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーの内部格付制度)
第百五十七条 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーについて債務者及びエクスポージャーに係る取引のリスクに基づく、これらの特性を考慮した内部格付制度を設けるものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、次に掲げる要件を満たすように、リテール向けエクスポージャーを各プールに割り当てるものとする。
一 当該割当てによって、リスクが適切に区分されること。
二 各プールが十分に類似性を持ったエクスポージャーによって構成されること。
三 当該割当てによって、プールごとに、損失の特性を正確かつ継続的に推計することが可能になること。
3 内部格付手法採用金庫は、前項に掲げる各プールへの割当てに当たっては、次の各号に掲げる要素その他のリスク特性を考慮するものとする。
一 債務者のリスク特性
二 取引のリスク特性(共同担保条項がある場合は、これを必ず考慮するものとする。)
三 エクスポージャーの延滞状況
4 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーについてプールごとに、PD、LGD及びEADを推計するものとする。ただし、複数のプールのPD、LGD又はEADの推計値が同一となることを妨げない。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第二目 格付の構造
(事業法人等向けエクスポージャーの格付の構造)
第百五十八条 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーを各債務者格付及び案件格付に過度に集中することのないよう適切に分布させるものとする。ただし、当該債務者格付に対応するPDの範囲及び当該債務者格付が付与される債務者のデフォルト・リスクが当該範囲に収まることが、十分な実証されたデータにより裏付けられている場合は、この限りでない。
2 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについて、少なくともデフォルトしていないエクスポージャーについて七以上の債務者格付を、デフォルトしたエクスポージャーについて一以上の債務者格付を設けるものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、各債務者格付の定義を規定するに当たっては、当該債務者格付を付与される債務者に典型的なリスクの水準及び当該格付に相当する信用リスクの程度を判断するために使用する基準を設けるものとする。
4 先進的内部格付手法採用金庫は、LGDが大きく異なるエクスポージャーに対して同一の案件格付を付与することのないよう、十分な数の案件格付を設けるものとする。
5 先進的内部格付手法採用金庫が案件格付の定義付けに用いる基準は、実証されたデータに基づくものとする。
6 前各項の規定にかかわらず、特定貸付債権についてスロッティング・クライテリアを利用している内部格付手法採用金庫は、デフォルトしていない債権について四以上の格付を、デフォルトした債権について一以上の格付を設けるものとする。
(平一九金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーの格付の構造)
第百五十九条 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーをプールに割り当てるに当たり、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
一 各プールのPD、LGD及びEADが定量化されていること。
二 各プールのエクスポージャーの数は、プールの単位でのPD、LGD及びEADの定量化及び検証を可能とする程度であること。
三 複数のプールを比較した場合、各プールに割り当てられている債務者及びエクスポージャーが適切であること。
四 エクスポージャーは、一のプールに不当に集中していないこと。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第三目 格付の基準
(格付の基準)
第百六十条 内部格付手法採用金庫は、エクスポージャーに対して格付の体系の中の各格付を付与し、又はエクスポージャーをプールに割り当てるために、明確な格付及びプールの定義、手続及び基準を設けるものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、事業部門、各部署及び地理的位置にかかわらず、同様のリスクを有する債務者及びエクスポージャーに対して一貫して同一の格付を付与し、又は同一のプールに割り当てることを可能とするように、同一の格付及び同一のプールの定義及び基準を十分に詳細に規定するものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、債務者及びエクスポージャーの種類により異なる格付の基準及びプールへの割当ての基準並びに格付の付与及びプールへの割当ての手続を適用する場合には、不整合な点がないか監視するとともに、一貫性を向上するよう適時に格付基準を変更するものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、独立した機能を有する内部の監査部署その他の第三者が格付の付与を理解し、格付を付与する手続の再現を通して当該格付の付与及びプールへの割当てが適切であることを評価することができる程度に、格付及びプールの定義及び基準を明確かつ詳細に規定するものとする。
5 格付の付与及びプールへの割当ての基準は、内部格付手法採用金庫の信用供与の基準並びに問題の生じた債務者及びエクスポージャーの取扱方針と一貫したものとする。
(平一九金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(情報の利用)
第百六十一条 内部格付手法採用金庫は、エクスポージャーに対して債務者格付及び案件格付を付与し、又はエクスポージャーをプールに割り当てる場合には、入手可能であり、かつ、重要な関連する最新の情報を全て考慮に入れるものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、保有する情報量が少ない場合には、債務者格付及び案件格付の付与又はプールへの割当てを、より保守的に行うものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、エクスポージャーに対して格付を付与し、又はエクスポージャーをプールに割り当てる際の主要な要素として外部信用評価機関又はそれに類する機関(第百八十九条第三項第三号において「外部信用評価機関等」という。)が付与する格付(第百七十六条第二項第三号及び第百八十九条において「外部格付」という。)を用いる場合は、それ以外の関連する情報も考慮に入れるものとする。
(平三一金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(特定貸付債権の取扱い)
第百六十二条 内部格付手法採用金庫は、特定貸付債権にスロッティング・クライテリアを用いる場合には、当該特定貸付債権に対して、この節に定める最低要件に合致した自金庫の基準、格付の体系及び手続に基づき格付を付与するものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、前項に掲げる格付を第百二十七条第四項及び第六項に定める区分に紐付けるものとする。
(平二五金庁厚労告一・令六金庁厚労告一・一部改正)
(格付の基準と格付付与手続の見直し等)
第百六十三条 内部格付手法採用金庫は、現在の自金庫の資産全体の構成と外部の状況に対して格付及びプールの基準並びに格付の付与及びプールへの割当ての手続が十分に適用可能であるかどうかを判断するために、当該基準及び当該手続を定期的に見直すものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第四目 債務者格付等の格付付与時の評価対象期間
(格付付与及びプールへの割当てにおける評価対象期間)
第百六十四条 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーに対する債務者格付及びリテール向けエクスポージャーのプールへの割当てについて、一年以上にわたる期間を評価の対象とするものとする。
(平一九金庁厚労告二・平二五金庁厚労告一・令六金庁厚労告一・一部改正)
(格付付与及びプールへの割当てにおける評価方法)
第百六十四条の二 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーに対する債務者格付の付与及びリテール向けエクスポージャーのプールへの割当てに当たって、経済状況の悪化又は予期せぬ事態の発生にもかかわらず、債務者が契約に従って債務を履行する能力及び意思を評価するものとする。
2 前項に規定する評価に当たって、内部格付手法採用金庫は、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
一 評価において考慮する経済状況の範囲に、次に掲げる経済状況が含まれていること。
イ 現在の経済状況
ロ 債務者の属する業種別又は地域別の景気循環において発生し得る経済状況
二 格付及びプールの遷移が、次に掲げる変化のいずれかに起因して行われるよう設計されていること。
イ エクスポージャー又は債務者における固有の変化
ロ エクスポージャー又は債務者が属する事業環境における固有の変化
ハ 景気循環の中で生じ得る変化
三 債務者が高いレバレッジをかけている場合又は当該債務者の保有資産が特定取引等に係る資産である場合には、ストレスがかかった状況におけるボラティリティに基づく原資産のパフォーマンスに係る評価を反映したものであること。
四 将来の事象及び将来の事象が特定の債務者の財務状況に及ぼす影響を予測することが困難なことに鑑み、将来に関する予測情報が保守的に評価されていること。
五 入手可能な将来に関する情報が限定的である場合には、より保守的に分析が行われること。
(令六金庁厚労告一・追加)
第五目 モデルの利用
(モデルの利用)
第百六十五条 内部格付手法採用金庫は、債務者格付若しくは案件格付の付与又はPD、LGD及びEADの推計に統計的モデルその他の機械的な手法(以下「モデル」という。)を用いる場合には、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
一 モデル及び入力値は、次に掲げる全ての性質を有するものであること。
イ モデルの予測能力が高く、モデルの利用の結果、所要自己資本の額が不当に軽減されるものでないこと。
ロ モデルの入力値となる変数が結果に対する合理的な予測変数であること。
ハ モデルの出力値につき、これを適用する債務者及びエクスポージャーの額の観点で重大な偏りが認められないこと。
二 統計的なデフォルト又は損失を推計するモデルへ入力するデータについて、正確性、完全性及び適切性の評価その他の審査手続を実施していること。
三 モデルの構築に用いられたデータは、当該内部格付手法採用金庫の実際の債務者又はエクスポージャーの母集団を代表するものであること。
四 モデルを人的判断と組み合わせて用いている場合は、次に掲げる要件の全てを満たすものであること。
イ 人的判断は、モデルにおいて考慮されていない全ての関連する重要な情報を網羅したものであること。
ロ 人的判断とモデルによる予測結果をどのように組み合わせるかについて書面による指針が作成されていること。
五 モデルに基づく格付の付与について人による見直しの手続が設けられており、かつ、当該手続が当該モデルの既知の脆弱性に起因する誤りの発見及び防止に焦点を置いたものであって、かつ、モデルの機能の継続的な向上を促すものであること。
六 モデルの運用実績及び安定性の評価、モデルとモデルの前提となっている状況の関連性の見直し、実績値とモデルの予測値の対照その他のモデルの検証が定期的に行われること。
(平一九金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
第六目 内部格付制度に関する書類
(内部格付制度及び運用に関する書類の作成)
第百六十六条 内部格付手法採用金庫は、信用リスク管理指針に内部格付制度の設計及び運用について詳細に記載するものとする。
2 前項に掲げる信用リスク管理指針は、内部格付手法採用金庫がこの節(第七款から第九款までを除く。)に掲げる最低要件を遵守していることを証明するものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、信用リスク管理指針に次に掲げる事項その他の事項を記載するものとする。
一 ポートフォリオの分類
二 格付及びプールの基準並びに当該基準を選択した合理的理由(当該基準並びに当該基準に基づく格付の付与及びプールへの割当ての手続によって、リスクに応じた適切な格付が付与され、プールに割り当てられる蓋然性が高いことを示す分析を提供するもの)
三 格付の付与及びプールへの割当てを行う部署、格付の付与及びプールへの割当ての例外事項の定義並びに例外を承認する権限のある部署その他の格付の付与及びプールへの割当てに関する組織(格付の付与及びプールへの割当ての手続並びに内部統制の仕組みに関する記載を含む。)
四 格付の付与及びプールへの割当ての見直しの頻度並びに手続並びに格付の付与及びプールへの割当ての手続に対する理事会又は理事会の下部機関である会議体(以下「理事会等」という。)及び担当理事(信用リスク管理について業務執行権限を授権されたものをいう。第百七十七条において同じ。)による監督
五 格付の付与及びプールへの割当ての手続の主要な変更点の履歴
六 内部格付手法採用金庫で使用されるデフォルト及び損失の具体的な定義並びに当該定義と第百八十一条、第百八十二条及び第百九十一条に定める定義の整合性
(平一九金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(モデルに関する追加事項の記載)
第百六十七条 内部格付手法採用金庫は、格付の付与及びプールへの割当ての手続においてモデルを使用している場合には、信用リスク管理指針に次に掲げる事項を記載するものとする。
一 モデルの概要(格付、債務者、エクスポージャー又はプールに推計値を割り当てる際の理論、前提又は数学的及び実証的裏付け並びにモデルを作成するために用いられるデータ・ソースに関する詳細な概要)
二 モデルの作成に用いた評価対象期間及び標本以外のデータによるテストその他のモデルを検証するための厳格な統計的な手続
三 モデルが有効に機能しないと想定される状況
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第二款 内部格付制度の運用
第一目 格付の対象
(事業法人等向けエクスポージャーに対する格付の付与)
第百六十八条 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについては、当該エクスポージャーの債務者及び保証人又はプロテクション提供者(当該保証人又はプロテクション提供者による保証又はクレジット・デリバティブにつき信用リスク削減効果を勘案する場合に限る。)に対して債務者格付を付与し、かつ、審査手続において案件の特性に応じて当該エクスポージャーを案件格付と関連付けるものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーの債務者に債務者格付を付与する場合には、事業体等単位で個別に付与するものとする。ただし、内部格付手法採用金庫が当該事業体等の親法人等、子法人等及び関連法人等の一部又は全部に同一の債務者格付を付与する方針を定めている場合であって、当該方針に従い一括して同一の債務者格付を付与しているときは、この限りでない。
3 内部格付手法採用金庫が第五十二条第一項の承認を受けている場合には、個別誤方向リスクを特定する方法を定めるものとする。
(平一九金庁厚労告二・平二五金庁厚労告一・令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーのプールへの割当て)
第百六十九条 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーについては、各エクスポージャーを信用供与の審査手続においてプールに割り当てるものとする。
2 前項におけるプールへの割当てにおいて、保証又はクレジット・デリバティブによる信用リスク削減効果を勘案している場合は、前項に掲げる割当ての他に、保証又はクレジット・デリバティブがないと仮定した場合のプールへの割当て並びにそれに基づくPD、LGD及びEADの推計を行うものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第二目 格付付与手続の健全性の維持
(事業法人等向けエクスポージャーに対する格付付与手続の健全性の維持)
第百七十条 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについては一年に一回以上、リスクの高い債務者や問題のあるエクスポージャーについてはより頻繁に、債務者格付及び案件格付を見直すものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーの債務者又はエクスポージャーについて重要な情報が判明した場合には、速やかに債務者格付又は案件格付を見直すものとする。
3 最終的な格付の付与及び前二項に掲げる格付の見直しは、信用供与によって直接利益を受けることがない立場にある者が行うか又はその者の承諾を得るものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについて、PDに影響する債務者の特性並びにLGD及びEADに影響する案件の特性に関する重要な情報を収集し、債務者格付及び案件格付を更新する有効な手続を設けるものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーのプールへの割当ての手続の健全性の維持)
第百七十一条 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーについて、年一回以上の割合で各プールの損失特性及び延滞状況を見直すものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、各リテール向けエクスポージャーが継続的に適切なプールに割り当てられていることを確認するために、当該プールに属するリテール向けエクスポージャーの代表的な標本の調査その他の方法により、年一回以上各プール内の個々の債務者の状況を見直すものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第三目 格付の書換え
(格付の書換え)
第百七十二条 内部格付手法採用金庫は、人的判断に基づく内部格付制度の運用を行っている場合には、次に掲げる事項その他の格付及び推計値の変更に係る事項について明確な規定を設けるものとする。
一 変更の方法
二 変更可能な範囲
三 変更の責任者
2 内部格付手法採用金庫は、モデルに基づく内部格付制度の運用を行っている場合には、次に掲げる事項を監視するための手続及びガイドラインを設けるものとする。
一 人的判断によるモデルに基づく格付付与又は推計結果の変更
二 モデルに用いる変数の除外
三 モデルの入力値の変更
3 前項に掲げるガイドラインは、格付付与又は推計結果の変更に関する責任者を特定するものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、格付及び推計値について変更を行った場合には、当該変更ごとに変更後の実績を記録するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第四目 データの維持管理
(事業法人等向けエクスポージャーに関するデータの維持管理)
第百七十三条 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについて次に掲げる情報を保存するものとする。
一 債務者及び保証人に初めて債務者格付を付与した日以降の、債務者格付を付与した日、当該債務者格付の付与に用いた方法及び主要なデータ、格付付与の責任者、推計に使用したモデルその他の債務者及び保証人に関する債務者格付の履歴に係る情報
二 デフォルトした債務者及びエクスポージャーの特定並びにデフォルトが発生した時期及びその状況に係る情報
三 格付に対応したPD、PDの実績値及び格付の推移に係るデータ
2 先進的内部格付手法採用金庫は、先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーについて次に掲げる情報を保存するものとする。
一 各エクスポージャーに対するLGD及びEADの推計値に関するデータの完全な履歴、当該推計に使用した主要なデータ並びに格付付与の責任者及び推計に使用したモデルに係る情報
二 デフォルトしたエクスポージャーに関するLGD及びEADの推計値及び実績値
三 保証又はクレジット・デリバティブの効果を勘案する前及び勘案した後の当該エクスポージャーのLGDに関するデータ(保証又はクレジット・デリバティブの信用リスク削減効果をLGDの推計において勘案している場合に限る。)
四 回収額、担保、残余財産の分配又は保証その他の回収方法、回収に要した期間、回収費用その他のデフォルトした各エクスポージャーの損失又は回収に係るデータ
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーに関するデータの維持管理)
第百七十四条 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーについて次に掲げる情報を保存するものとする。
一 債務者及びエクスポージャーの特性に関するデータその他のエクスポージャーをプールに割り当てる過程で用いたデータ
二 延滞に関するデータ
三 プールに対応するPD、LGD及びEADの推計値に関するデータ
四 デフォルトしたエクスポージャーが、デフォルトする前一年間にわたって割り当てられていたプールに関するデータ並びにLGD及びEADの実績値
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第五目 ストレス・テスト
(自己資本の充実度を評価するためのストレス・テスト)
第百七十五条 内部格付手法採用金庫は、自己資本の充実度を評価するために適切なストレス・テストを実施するものとする。
2 前項に掲げるストレス・テストは、経済状況の悪化、市場環境の悪化及び流動性の悪化その他の内部格付手法採用金庫の信用リスクに係るエクスポージャーに好ましくない効果を与える事態の発生又は経済状況の将来変化を識別するものであって、こうした好ましくない変化に対する内部格付手法採用金庫の対応能力の評価を含むものとする。
(平一九金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(信用リスクのストレス・テスト)
第百七十六条 内部格付手法採用金庫は、特定の条件が信用リスクに対する所要自己資本の額に及ぼす影響を評価するために、自金庫のエクスポージャーの大部分を占めるポートフォリオについて、少なくとも緩やかな景気後退シナリオの効果を考慮した有意義かつ適度に保守的な信用リスクのストレス・テストを定期的に実施するものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、前項に定めるストレス・テストを実施するに当たっては、次に掲げる要件を満たすものとする。
一 内部のデータにより、少なくともいくつかのエクスポージャーについて格付の遷移を予測すること。
二 信用環境のわずかな劣化が自金庫の格付に及ぼす影響を考慮することにより、信用環境がより悪化した場合に生じうる影響について情報を得ること。
三 自金庫の格付を外部格付の区分に大まかに紐付けする方法その他の方法により外部格付の格付推移実績を考慮すること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第三款 内部統制
(理事会等の関与)
第百七十七条 内部格付手法採用金庫は、内部統制について次に掲げる基準を満たすものとする。
一 格付付与手続(事業法人等向けエクスポージャーに対する格付付与及びリテール向けエクスポージャーのプールへの割当て並びに各エクスポージャーのPD、LGD及びEADの推計に関する一連の手続を総称していう。以下この款において同じ。)に関する全ての重要事項は、理事会等及び担当理事の承認を得ていること。
二 担当理事が当該内部格付手法採用金庫の内部格付制度の概要について理解しており、関連する報告書を細部にわたって理解していること。
三 担当理事が内部格付制度の運用に重大な影響を与えるような既存の方針の重要な変更及び例外について理事会等に報告していること。
四 担当理事が内部格付制度の設計及び運用を十分に理解しており、かつ、既存の過程と実務の重要な相違点について承認していること。
五 担当理事が内部格付制度の適切な運用を継続的に確保していること。
六 担当理事が次条第一項に定める信用リスク管理部署の担当者と格付付与手続の実績、改善すべき分野及び既に認識している問題点の改善状況を検討するため定期的に会合を行っていること。
七 理事会等又は担当理事に対する報告書において格付が不可欠な役割を果たしており、かつ、格付別の特性、格付の遷移、各格付に関連する変数の推計値、PD(先進的内部格付手法採用金庫の場合はPD、LGD及びEAD)の推計値と実績値との比較その他の格付に関する重要な事項が理事会等又は担当理事に対して報告されていること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(信用リスク管理部署)
第百七十八条 内部格付手法採用金庫は、内部格付制度の設計又は選択、実施及び実績について責任を負い、独立して信用リスクを管理する部署(以下「信用リスク管理部署」という。)を設けるものとする。
2 信用リスク管理部署は、与信部門及び与信業務の担当者から機能的に独立したものとする。
3 信用リスク管理部署は、次に掲げる事項について責任を負うものとする。
一 内部格付制度の検証及び運用の監視
二 当該内部格付手法採用金庫の内部格付制度の概要についての報告書の作成及び分析(デフォルトした時期及びデフォルトする前一年間の格付及びプール別のデフォルトに関するデータ、格付の遷移の分析、格付及びプールの主要な基準の傾向の監視を含む。)
三 格付及びプールの定義が各部門及び各地域にわたって一貫して適用されていることを確認する手続(債務者又はエクスポージャーごとに異なる格付基準及び手続を適用することを妨げない。)
四 格付付与手続の変更に関する審査及び当該変更に係る書類の作成(変更の理由を含む。)
五 格付及びプールの基準がリスクを正確に予測しているか否かを評価するために行われる当該基準の見直し
六 格付付与手続、格付及びプールの基準又は各格付若しくはプールに関連する変数の変更に関する書類の作成及び備置き
4 信用リスク管理部署は、格付付与手続で使用するモデルの開発、選択、実施及び検証に積極的に参画するものとする。
5 信用リスク管理部署は、前項に掲げるモデルについて管理及び監督並びに当該モデルの継続的な見直し及び変更について責任を負うものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(監査)
第百七十九条 独立した機能を有する内部の監査部署は、年一回以上の割合で信用リスク管理部署の管理状況、PD、LGD及びEADの推計値、該当する全ての最低要件の遵守状況等、内部格付制度及びその運用状況を見直し、その結果に関する監査報告書を作成するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第四款 格付の利用
(格付の利用)
第百八十条 格付並びにPD及びLGDは、内部格付手法採用金庫の与信審査、リスク管理、内部の資本配賦及び内部統制において、重要な役割を果たすものとする。
2 自己資本比率の算出のために使用するPD又はLGDと与信審査、リスク管理、内部の資本配賦及び内部統制のために用いる推計値が相違する場合には、内部格付手法採用金庫は、信用リスク管理指針に当該相違点及びその理由を記載するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第五款 リスクの定量化
第一目 デフォルト
(デフォルトの定義)
第百八十一条 この章においてデフォルトとは、債務者について次に掲げる事由(以下「デフォルト事由」という。)が生ずることをいう。
一 内部格付手法採用金庫が、債務者に対するエクスポージャーを金融再生法施行規則第四条第二項に規定する「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」、同条第三項に規定する「危険債権」又は同条第四項に規定する「要管理債権」に該当するものと査定する事由が生ずること。ただし、リテール向けエクスポージャーについては、同項に規定する「三月以上延滞債権」に該当する事由が生じた場合であっても、元金又は利息の支払が約定日の翌日を起算日として延滞している期間が、六月を超えない範囲で信用リスク管理指針に記載された一定の日数を超えないときは、除くものとする。
二 内部格付手法採用金庫が、当該債務者に対するエクスポージャーについて、重大な経済的損失を伴う売却を行うこと。
三 当該債務者に対する当座貸越については、約定の限度額(設定されていない場合は零とみなす。)を超過した日又は現時点の貸越額より低い限度額を通知した日の翌日を起算日として三月以上当該限度額を超過すること。
2 一のエクスポージャーについてデフォルト事由が生じた場合、当該エクスポージャーの債務者に対する他のエクスポージャーについてもデフォルト事由が生じたものとする。ただし、リテール向けエクスポージャーについては、この限りでない。
3 デフォルト事由が生じたエクスポージャーについて、デフォルト事由が解消されたと認められる場合には、内部格付手法採用金庫は、当該エクスポージャーに対してデフォルトしていない債権としての債務者格付を付与し、先進的内部格付手法採用金庫は、LGD及びEADを推計するものとする。
4 前項のエクスポージャーについて再度デフォルト事由が生じた場合は、内部格付手法採用金庫は、新たにデフォルト事由が生じたものとして扱うものとする。
5 第一項の規定にかかわらず、内部格付手法採用金庫は、次の各号に掲げる延滞の月数の長さの区分に応じ、当該各号に定める日数をデフォルト事由の判定に用いることができる。
一 三月 九十日
二 六月 百八十日
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(延滞日数の見直し等)
第百八十二条 内部格付手法採用金庫は、エクスポージャーの延滞日数の見直し並びに既存の債務に関する返済の猶予、繰延べ、契約内容の更改及び借換えの承認その他の延滞日数の計算に関する事項(以下この条において「延滞日数の見直し等」という。)について、次に掲げる事項を含む、明確かつ書面に記載された方針を有しているものとする。
一 延滞日数の見直し等の承認を行う権限を有する者及び報告に関する要件
二 延滞日数の見直し等に必要な最短の信用供与の期間
三 返済期限の見直し等が可能な延滞の程度
四 エクスポージャーごとの返済期限見直しの回数の上限
五 債務者の返済能力の再評価
2 内部格付手法採用金庫は、前項に掲げる方針を一貫して長期にわたって利用するものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、延滞日数の見直し等を行ったエクスポージャーを金庫の内部のリスク管理においてデフォルトしたエクスポージャーと同様に取り扱っている場合には、当該エクスポージャーを内部格付手法の適用上デフォルトしたエクスポージャーとして取り扱うものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(当座貸越)
第百八十三条 内部格付手法採用金庫は、当座貸越の供与の対象となる者の信用度を評価するための厳格な基準を設けるものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第二目 推計の対象と共通要件等
(推計の対象)
第百八十四条 内部格付手法採用金庫は、別段の定めのある場合を除き、事業法人等向けエクスポージャーについて第三目の定めに従って各債務者格付に対応するPDを、第三目から第六目までの規定によりリテール向けエクスポージャーについて各プールに対応するPD、LGD及びEADを推計するものとする。
2 先進的内部格付手法採用金庫は、別段の定めのある場合を除き、先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーについて第四目及び第五目の規定によりLGD並びに第六目の規定によりEADを推計するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(デフォルトの定義の参照)
第百八十五条 内部格付手法採用金庫は、デフォルト事由に基づき、内部格付手法の対象となる資産区分ごとにデフォルト事由の発生を記録し、PD並びに(関連があれば)LGD及びEADの推計を行うものとする。ただし、次に掲げる要件を満たす場合は、デフォルト事由と異なる定義に基づく内部データ及び外部データを用いることができる。
一 第百八十九条又は第百九十条の定めに従っていること。
二 内部データ及び外部データに対して、デフォルト事由を用いた場合とほぼ同等の結果となるようにデータに適切な調整を行っていること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(推計の共通要件)
第百八十六条 内部格付手法採用金庫は、PD、LGD及びEADを推計するに当たり、推計に関連する全ての重要かつ入手可能なデータ、情報及び手法を用いるものとする。ただし、内部データ及び外部データ(プールされたデータを含む。)の利用は、当該データに基づく推計値が長期的な実績を表している場合に限る。
2 内部格付手法採用金庫は、格付の付与及びプールの評価対象期間中において信用供与実務及び回収の手続に変更があった場合には、当該変更を考慮に入れるものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、技術的進歩及び新規データその他の情報を利用することが可能になり次第速やかに推計においてそれらを勘案するものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、実績値及び実証的な根拠に基づいてPD、LGD及びEADを推計するものとする。
5 内部格付手法採用金庫は、一年に一回以上の頻度でPD、LGD及びEADの推計値を見直すものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(データの抽出に関する要件)
第百八十七条 推計に用いるデータによって代表されるエクスポージャーの母集団、データが抽出された時の信用供与基準及びその他の重要な特性は、内部格付手法採用金庫のエクスポージャー全体のそれとほぼ同様であるか、少なくとも類するものとする。
2 データの前提となっている経済的条件又は市場環境は、現在及び予見可能な将来の経済的条件又は市場環境に対応したものとする。
3 抽出標本中のエクスポージャーの数及び定量化に用いるデータの期間は、当該推計が正確かつ頑健なものであると内部格付手法採用金庫が信頼するに足りる程度とする。
4 推計に用いる手法は、抽出標本以外のデータによるテストで良好な成績を収めたものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(推計の誤差に応じた保守的な修正)
第百八十八条 内部格付手法採用金庫は、予測される推計に誤差が生ずることを考慮してPD、LGD及びEADの推計値を保守的に修正するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第三目 PDの推計
(事業法人等向けエクスポージャーのPD)
第百八十九条 内部格付手法採用金庫は、次の各号に掲げる手法又はこれに類するその他の長期の経験に合致した情報及び手法を一以上用いるものとする。この場合において、内部格付手法採用金庫は、債務者の数に基づく単純平均で計算された一年間のデフォルト確率の平均により、各格付のPDを推計するものとし、エクスポージャーの額の加重平均によるPDの推計は行わないものとする。
一 事業法人等向けエクスポージャーの債務者格付に対応する長期平均PDを推計するに当たって、デフォルトの実績に関する内部データから推計する手法
二 内部格付と外部格付を紐付け、外部格付に対応したPDを格付に割り当てることによりPDを推計する手法(以下この条において「マッピング」という。)
三 債務者格付に属する個々の債務者のデフォルト確率の推計値をモデルに基づいて算出し、当該推計値の単純平均をPDとする手法
2 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーの債務者格付のPDを推計するに当たって、デフォルトの実績に関する内部データからPDを推計する手法を用いる場合には、次に掲げる要件を満たすものとする。
一 内部格付手法採用金庫は、信用供与の基準並びにデータ生成時の内部格付制度及び現在の内部格付制度の相違点を反映し、信用リスク管理指針に当該反映方法に関する分析を記載するものとする。
二 内部格付手法採用金庫は、入手可能なデータが限定されている場合又は信用供与の基準若しくは内部格付制度が変更された場合には、PDの推計を保守的に修正するものとする。
三 内部格付手法採用金庫が複数の金融機関でプールしたデータを使用する場合には、プールにデータを提供する他の金融機関の内部格付制度及び基準が、当該内部格付手法採用金庫の内部格付制度及び基準と著しく乖離するものでないものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーの債務者格付のPDを推計するに当たって、マッピングを用いる場合には、次に掲げる要件を満たすものとする。
一 マッピングは、内部格付及び外部格付の基準の比較並びに共通の債務者に対する内部格付及び外部格付の比較に基づくものであること。
二 マッピングの手法又は定量化に用いるデータは、偏ったものではなく、一貫性に欠けるものでないこと。
三 定量化に用いるデータの基礎となる外部信用評価機関等の基準は、債務者のリスクに対するものであって、エクスポージャーに係る特性を勘案するものではないこと。
四 信用リスク管理指針に内部格付の基準及び外部格付の基準においてデフォルトとして扱われる事由に関する比較及び分析並びにマッピングの基準が記載されていること。
4 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーのPDを推計するに当たって、五年以上の観測期間にわたる外部データ、内部データ又は複数の金融機関でプールしたデータを一以上利用するものとする。
5 内部格付手法採用金庫は、前項に掲げるデータの利用に当たって、最も長い観測期間にわたるデータをその対象に含めるものとし、かつ、当該データには代表的な好景気に当たる年度及び不景気に当たる年度を含めるものとする。ただし、PDを推計するに当たって関連性が低いもの又は重要でないものについては、この限りでない。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーのPD等)
第百九十条 内部格付手法採用金庫は、プールのPD、LGD及びEADを推計するに当たって、内部データを一次的な情報源とするものとする。ただし、全ての関連する重要なデータ・ソースに照らし、内部格付手法採用金庫がエクスポージャーを各プールに割り当てる基準と外部のデータ提供者が用いている基準及び内部データの構成と外部のデータの構成の間に、強い関連性がある場合には、内部格付手法採用金庫は、外部のデータ又はモデルを推計に用いることができる。
2 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーの長期平均PDを推計するに当たって、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
一 五年以上の観測期間にわたる外部データ、内部データ又は複数の金融機関でプールしたデータを一以上利用すること。
二 前号に規定するデータには、当該内部格付手法採用金庫のポートフォリオに関連する景気循環期の代表的な好景気に当たる年度及び不景気に当たる年度を含むものとする。
三 一年間のデフォルト確率の平均に基づくこと。
3 内部格付手法採用金庫は、前項第一号及び第二号に規定するデータの利用に当たって、最も長い観測期間にわたるデータであって、関連性のあるものについては、その対象に含めるものとする。この場合において、PDを推計するに当たって関連性が低い観測期間のデータについては、関連性の高い観測期間のデータと同等に扱うことを要しない。
4 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーのPD及びLGDを推計するに当たって、次の各号に掲げる推計値の区分に応じ、当該各号に定める影響を考慮し、保守的な修正を加えるものとする。
一 PD 債権に係る貸付が行われた時点又は取引を開始した時点からの経過年数の影響
二 LGD デフォルトが発生した時点からの経過年数の影響
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第四目 LGDの推計
(損失の定義)
第百九十一条 内部格付手法採用金庫は、LGDを推計するに当たり、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
一 推計に用いる定義は、経済的損失であること。
二 前号に掲げる経済的損失を計測する場合は、回収までの期間に応じた重要な割引の効果(重要でない場合は除く。)、回収のための重要な直接的及び間接的な費用、その他の関連する要素が考慮されていること。
三 当該内部格付手法採用金庫の回収に関する能力が勘案されていること。ただし、回収率に及ぼす影響について実証的な裏付けが十分でない場合には、内部格付手法採用金庫は、回収の能力に基づくLGDの調整を保守的に行うものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(LGDの推計)
第百九十二条 内部格付手法採用金庫は、LGDを推計するに当たっては、LGDが次に掲げる性質の全てを満たす景気後退期を勘案したものとなるように、エクスポージャーごとに推計するものとする。
一 当該エクスポージャーの種類のデータ・ソース内で生じた全てのデフォルト債権に伴う平均的な経済的損失に基づいて計算した長期平均デフォルト時損失率(以下この項において「長期平均デフォルト時損失率」という。)を下回るものでないこと。
二 信用リスクに伴う損失率が長期の平均的な損失率を上回る期間において、当該エクスポージャーのデフォルト時損失率が長期平均デフォルト時損失率を上回る可能性を考慮に入れたものであること。
2 内部格付手法採用金庫は、LGDの推計に当たり、債務者のリスクと担保又は担保提供者のリスクの相関を考慮し、顕著な正の相関がある場合には、保守的に取り扱うものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、原債務と担保との表示通貨が異なる場合には、LGDの推計に当たり、これを保守的に考慮するものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、LGDの推計に当たり、担保について推定される市場価値のみならず、回収の実績値を基礎とするものとする。
5 内部格付手法採用金庫は、LGDの推計に当たり、担保による信用リスク削減効果を勘案する場合には、標準的手法で必要となる基準ともおおむね合致するような、担保管理、運用手続、法的確実性及びリスク管理手続に関する内部基準を作るものとする。
6 内部格付手法採用金庫は、デフォルトしたエクスポージャーについては、経済状況及び当該エクスポージャーの状態に鑑みて当該エクスポージャーに生じ得る期待損失(ELdefault)を推計するものとする。ただし、第百三十一条及び第百三十九条に定めるLGDの自金庫推計値の下限を下回らないものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(事業法人等向けエクスポージャーのLGD推計に係る最低所要観測期間)
第百九十三条 先進的内部格付手法採用金庫は、先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーのLGDを推計するに当たって、七年以上の観測期間にわたる外部データ、内部データ又は複数の金融機関でプールしたデータを一以上利用するものとする。
2 先進的内部格付手法採用金庫は、前項に定める観測期間にわたるデータが複数ある場合には、最も長い観測期間にわたるデータを利用するものとする。ただし、LGDを推計するに当たって関連性が低いものについては、この限りでない。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーのLGD推計に係る最低所要観測期間)
第百九十四条 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーのLGDを推計するに当たり、五年以上の観測期間にわたる外部データ、内部データ又は複数の金融機関でプールしたデータを一以上利用するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第五目 保証及びクレジット・デリバティブに関する最低要件
(保証による信用リスク削減効果の勘案)
第百九十五条 先進的内部格付手法採用金庫は、先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーについて保証を信用リスク削減手法として用いる場合には、当該先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーのPD又はLGDのいずれかを調整することができる。ただし、調整後のリスク・ウェイトは保証人に対する直接のエクスポージャーに適用されるリスク・ウェイトを下回らないものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーについて保証を信用リスク削減手法として用いる場合には、当該リテール向けエクスポージャーのPD又はLGDのいずれかを調整することができる。ただし、当該調整後のリスク・ウェイトは保証人に対する直接のエクスポージャーに適用されるリスク・ウェイトを下回らないものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、前二項の調整方法について、それぞれいずれか一を選択し、継続的に用いるものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、規制上の最低所要自己資本を算定する上で、債務者のデフォルト事由と保証人のデフォルト事由との相関関係が不完全であることを想定して信用リスク削減効果を勘案しないものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(保証人に対する債務者格付等の付与)
第百九十六条 先進的内部格付手法採用金庫は、前条第一項に従って先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーについて保証を信用リスク削減手法として用いる場合には、次に掲げる要件を満たすものとする。
一 保証を信用リスク削減手法として用いる日以降から保証人に対して継続的に債務者格付を付与すること。
二 保証人の状況、債務履行能力及びその意思の定期的な監視その他の債務者格付の付与に関する最低要件を満たすこと。
三 保証がないと仮定した場合における債務者の情報及び保証人に関する全ての関連性のある情報を保有すること。
2 内部格付手法採用金庫は、前条第二項に従ってリテール向けエクスポージャーについて保証を信用リスク削減手法として用いる場合には、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
一 保証による信用リスク削減効果を勘案する日から継続的にプールへの割当てにおいて当該保証を信用リスク削減手法として用いること。
二 保証人の状況、債務履行能力、その意思の定期的な監視その他のPD推計及び債務者格付の付与又はプールの割当てに関する最低要件を満たすこと。
三 保証がないと仮定した場合における債務者の情報及び保証人に関する全ての関連性のある情報を保有すること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(適格保証)
第百九十七条 内部格付手法採用金庫は、第百九十五条第一項及び第二項に基づき、保証を信用リスク削減手法として用いる場合には、当該手法に基づく信用リスク・アセットの額の算出で用いる保証人の種類について特定された基準を設けるものとする。
2 内部格付手法採用金庫が、第百九十五条第一項及び第二項に基づき、保証を信用リスク削減手法として用いる場合には、当該保証は、次に掲げる性質の全てを有するものとする。
一 当該保証について契約書が作成されていること。
二 保証人の側からは一方的な解約が不可能であること。
三 保証人の債務が(保証の額及び趣旨の範囲内で)完全に履行されるまで有効であること。
四 保証人の資産の所在地において、当該保証人に対する強制執行が可能であること。
3 内部格付手法採用金庫は、保証が第九十三条第六号の条件を満たしていない場合には、信用リスク削減手法として用いないものとする。ただし、保証が付されたエクスポージャーが次の各号のいずれかに該当する場合において、債権回収完了後に残存する損失のみが保証されているときは、被保証部分について第百九十五条第一項及び第二項の規定により保証を信用リスク削減手法として用いることができる。
一 自金庫推計LGDを適用する先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャー
二 内部格付手法を適用するリテール向けエクスポージャー
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(調整に関する基準)
第百九十八条 第百九十五条第一項又は第二項に基づき信用リスク削減効果を勘案する場合には、内部格付手法採用金庫は、次に掲げる性質の全てを満たす明確な基準を設けるものとする。
一 信頼に足るものであり、かつ、理解しやすいものであること。
二 保証債務を履行する保証人の能力及び意思を勘案したものとなっていること。
三 予想される支払のタイミング及び保証に基づく債務を履行する保証人の能力が、債務者の返済能力とどの程度の相関を有するかを勘案したものであること。
四 保証と被保証債権の通貨の不一致及びその他これに類する事由により債務者に残存するリスクの度合いを考慮したものであること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(クレジット・デリバティブについての取扱い)
第百九十九条 第百九十五条から前条までの規定は、シングルネームのクレジット・デリバティブについて準用する。この場合において、「保証」とあるのは「クレジット・デリバティブ」と、「保証人」とあるのは「プロテクション提供者」と、「被保証債権」とあるのは「原債権」と読み替えるものとする。
2 第九十三条から第九十六条までの規定は、内部格付手法採用金庫がクレジット・デリバティブによる信用リスク削減効果を勘案する場合に準用する。この場合において、「標準的手法採用金庫」とあるのは「内部格付手法採用金庫」と読み替えるものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、シングルネームのクレジット・デリバティブによる信用リスク削減効果を勘案する場合には、次に掲げる性質の全てを満たす基準を設けるものとする。
一 クレジット・デリバティブによる信用リスク削減効果を勘案する場合をプロテクションの参照債務が原債権と同一である場合に限定していること。ただし、原債権に係る支払義務の不履行(免責額の定めを設けることを妨げない。)が発生した場合に、金庫がクレジット・デリバティブに基づく支払を受けることができ、かつ、第九十五条第五号に定める法的に有効なクロス・デフォルト条項等を設けている場合は、この限りでない。
二 クレジット・デリバティブによる信用リスク削減効果の勘案方法は、決済その他の仕組み(支払の程度及び当該支払に要する期間に係る規定を含む。)に起因するリスクを保守的に考慮したものであること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第六目 EADの推計
(EADの推計方法)
第二百条 内部格付手法採用金庫は、オン・バランスシート項目に係るEADの推計を行うに当たり、現在において実行済の信用供与の額を下回る値を用いないものとする。ただし、第百三十二条第二項並びに第百四十条第六項及び第七項の規定により信用リスク削減手法の効果を勘案する場合は、この限りでない。
2 内部格付手法採用金庫は、オフ・バランスシート項目に係るEADの推計を行うに当たり、エクスポージャーの種類ごとに次に掲げる要件の全てを満たす手続を設けるものとする。
一 デフォルト事由発生前及びデフォルト事由発生後に債務者が追加的引出行為を行う可能性を勘案すること。ただし、デフォルト事由発生後に債務者が追加的引出行為を行う可能性については、クレジット・カードその他の将来の不確実な引出を伴うリテール向けエクスポージャーのLGD推計において、デフォルト事由発生後の追加引出の実績又は見込みを勘案している場合は、この限りでない。
二 オフ・バランスシート項目のEADの推計方法がエクスポージャーの種類によって異なる場合、エクスポージャーの種類の区分が明確になされていること。
3 内部格付手法採用金庫は、EADを推計するに当たり、EADが次に掲げる性質の全てを満たすものとなるように、エクスポージャーごとに推計するものとする。
一 類似のエクスポージャー及び債務者についての長期的なデフォルト加重平均であること。
二 推計に伴う誤差の可能性を考慮に入れて、保守的な修正を行ったものであること。
三 デフォルトの頻度とEADの大きさの間に正の相関関係が合理的に予測できる場合は、より保守的な修正を行ったものであること。
四 景気循環の中でEADの推計値の変動が激しいエクスポージャーについては、景気の下降期に対して適切なEADの推計値の方が長期的な平均値よりも保守的な場合は、景気の下降期に対して適切なものであること。
4 内部格付手法採用金庫は、EADを推計するに当たり、次に掲げる性質の全てを満たすEADを推計する基準を設けるものとする。
一 信頼に足るものであり、かつ、理解しやすいものであること。
二 当該内部格付手法採用金庫が信頼性のある内部分析に基づき、EADに大きな影響を与えると考えられる要因を勘案するものであること。
三 当該内部格付手法採用金庫は、前号に掲げる要因がEADの推計値に与える影響を分析できること。
5 内部格付手法採用金庫は、EADの推計の対象となる全ての種類のエクスポージャーについて、新しい重要な情報が明らかになった場合及び少なくとも年一回、EADの推計値を見直すものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(監視)
第二百一条 内部格付手法採用金庫は、EADの推計の対象となるエクスポージャーについて、次に掲げる事項その他の残高の監視及び支払に関する方針について相当な注意を払うものとする。
一 誓約条項違反又はテクニカル・デフォルト事由等の支払不履行に至らない債務不履行事由が生じた場合において、追加的な引出を停止する能力及び意思を有すること。
二 エクスポージャーの額、コミットメントに対する現在の実行残高、債務者別の残高及び格付別残高の変化を日次で監視するための、適切なシステムと手続を具備すること。
(平一九金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(EADの推計に係る参照データ)
第二百一条の二 内部格付手法採用金庫は、EADデータベース(EADの自金庫推計値を算出する際に参照するデータをいう。次条及び第二百一条の四において同じ。)に、観測起点日(対象となるエクスポージャーのデフォルト事由が生じた日として管理する日をいう。)から十二月間にわたる過去における債務者及びエクスポージャーの特性を反映するものとする。
(令六金庁厚労告一・追加)
(エクスポージャーに係るEADの推計)
第二百一条の三 内部格付手法採用金庫は、エクスポージャーに係るEADの推計において、当該エクスポージャーの債務者、取引及び内部管理の特性を十分に反映するものとし、かつ、当該エクスポージャーとは異なる特性を有するエクスポージャーの影響を十分に排除したEADデータベースに基づくものとする。
(令六金庁厚労告一・追加)
(EADの推計値の安定性の確保)
第二百一条の四 内部格付手法採用金庫は、EADの推計において信用供与枠の未引出額に乗じる掛目の自金庫推計値を用いる場合には、当該自金庫推計値の推計に用いるEADデータベースに含まれる僅少な信用供与枠の未引出額に起因して、不適切なEADの推計値が算出され得る可能性を考慮に入れるものとする。
(令六金庁厚労告一・追加)
(EADの参照データの上限)
第二百一条の五 EADの参照データは、想定元本額又は債権の約定の限度額を上限としてはならず、未収利息、他の支払額及び限度超過額を含めるものとする。
(令六金庁厚労告一・追加)
(事業法人等向けエクスポージャーのEAD推計に係る最低所要観測期間等)
第二百二条 先進的内部格付手法採用金庫は、先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーのEADの推計に当たって、七年以上の観測期間にわたる外部データ、内部データ又は複数の金融機関でプールしたデータを一以上利用するものとする。
2 先進的内部格付手法採用金庫は、前項に掲げるデータの利用に当たって、最も長い観測期間にわたるデータをその対象に含めるものとする。ただし、EADを推計するに当たって関連性が低いものについてはこの限りでない。
3 先進的内部格付手法採用金庫は、EADを推計するに当たり、デフォルトした件数の加重平均を用いるものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(リテール向けエクスポージャーのEAD推計に係る最低所要観測期間等)
第二百三条 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーのEADの推計に当たって、五年以上の観測期間にわたる外部データ、内部データ又は複数の金融機関でプールしたデータを一以上利用するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第七目 購入債権のPD、LGD及びELdilutionの推計
(購入債権のリスクの定量化の特則)
第二百四条 内部格付手法採用金庫は、購入債権のうち購入リテール向けエクスポージャー及びトップ・ダウン・アプローチを用いる適格購入事業法人等向けエクスポージャーについては、第百五十七条、第百五十九条から第百六十一条まで、第百六十三条、第百六十九条、第百七十一条、第百七十二条及び第百七十四条に掲げる要件を満たすことを要しない。
第二百五条 内部格付手法採用金庫は、ELdilutionを推計するものとする。ただし、購入債権の譲渡人が購入債権に係る希薄化リスクの全部を保証している場合は、この限りでない。
2 内部格付手法採用金庫は、適格購入事業法人等向けエクスポージャーについて、トップ・ダウン・アプローチを用いてPD若しくはLGD(PD及びLGDについてはELを用いて推計する場合を含む。以下この目において同じ。)を推計する場合又はELdilutionを推計する場合及び購入リテール向けエクスポージャーについてPD、LGD又はELdilutionを推計する場合には、適格購入事業法人等向けエクスポージャー又は購入リテール向けエクスポージャーの属するプールと類似のプールについて当該内部格付手法採用金庫が有するデータ又は購入債権の譲渡人若しくは外部から提供されるデータその他全ての入手可能な購入債権の質に関する情報を勘案するものとする。
3 内部格付手法採用金庫は、購入債権の譲渡人から提供されるデータが、当該購入債権の譲渡契約で定める当該購入債権の種類、額、契約期間中の債権の質その他の点に合致しているか否かを確認し、合致していない場合には、当該購入債権に関連するより多くの情報を取得し、これを勘案するものとする。
4 第百九十条の規定は、ELdilutionの推計に準用する。この場合において、「PD」及び「PD、LGD及びEAD」とあるのは「ELdilution」と読み替えるものとする。
(平一九金庁厚労告二・令六金庁厚労告一・一部改正)
(購入事業法人等向けエクスポージャーのリスクの定量化の特則)
第二百六条 内部格付手法採用金庫は、購入リテール向けエクスポージャー及びトップ・ダウン・アプローチを用いる適格購入事業法人等向けエクスポージャーのデフォルト・リスク相当部分のPD、LGD(トップ・ダウン・アプローチを用いる適格購入事業法人等向けエクスポージャーについては、先進的内部格付手法採用金庫の場合に限る。)及びELdilutionを正確に、かつ、一貫して推計するに足りる程度に当該エクスポージャーを均質なプールに割り当てるものとする。
2 内部格付手法採用金庫は、適格購入事業法人等向けエクスポージャーのリスクを定量化する場合には、第百九十五条の規定(第百九十九条により準用される場合を含む。)にかかわらず、PD及びLGDの推計において譲渡人又は第三者による保証又は補償を考慮しないものとする。
3 適格購入事業法人等向けエクスポージャーについてトップ・ダウン・アプローチを用いる場合は、第百九十条の規定を適格購入事業法人等向けエクスポージャーのPDの推計について、第百九十四条の規定を適格購入事業法人等向けエクスポージャーのLGDの推計について、それぞれ準用する。この場合において、「リテール向けエクスポージャー」とあるのは「適格購入事業法人等向けエクスポージャー」と読み替えるものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(購入リテール向けエクスポージャーのリスクの定量化の特則)
第二百七条 内部格付手法採用金庫は、第百九十条第一項(第二百五条第四項及び前条第三項により準用される場合を含む。)の規定にかかわらず、購入リテール向けエクスポージャー及びトップ・ダウン・アプローチを用いる適格購入事業法人等向けエクスポージャーのPD、LGD及びELdilutionの推計において、外部データ及び内部の参照用データ(当該エクスポージャーの属するプールに類似する当該内部格付手法採用金庫が保有するエクスポージャーのプールに関するデータをいう。)を一次的な情報源として利用することができる。
(トップ・ダウン・アプローチ等の最低要件)
第二百八条 内部格付手法採用金庫は、購入事業法人等向けエクスポージャーについてトップ・ダウン・アプローチを用いてPD、LGD及びEADを推計する場合、ELdilutionを推計する場合並びに購入リテール向けエクスポージャーについてPD、LGD、EAD及びELdilutionを推計する場合には、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
一 法的枠組みに関する基準を満たしていること。
二 購入債権の質並びに購入債権の譲渡人及びサービサー(委託又は再委託に基づき、購入債権の管理、購入債権の債務者に対する購入債権の請求及び回収金の受領事務を受託したものをいう。以下この条において同じ。)の財務状態について監視しており、かつ、監視に関する基準を満たしていること。
三 購入債権の購入に係る契約上、購入債権の譲渡人の業況又は購入債権の質の悪化の早期発見及び生じうる問題状況に対して予防的な措置をとることを可能にするシステム及び手続が設けられており、ワークアウトのシステムに関する基準を満たしていること。
四 担保、購入債権の債権者から債務者への信用供与の上限及び回収された資金の管理に関する明確かつ有効な基準が設けられていること。
五 全ての主要な金庫内の指針及び手続の遵守に関する基準を満たしていること。
2 前項の規定にかかわらず、購入リテール向けエクスポージャーのうち、第百五十七条、第百五十九条から第百六十一条まで、第百六十三条、第百六十九条、第百七十一条、第百七十二条及び第百七十四条に掲げる要件を満たしており、希薄化リスク相当部分が重要でないと判断されるものであって、前条の規定を適用しない場合は、前項第三号及び第五号の要件を満たすことを要しない。
3 第一項第一号の「法的枠組みに関する基準」とは、次に掲げるものをいう。
一 エクスポージャーに係る取引の仕組上、購入債権の譲渡人又はサービサーの業況の悪化又は倒産その他の予測可能な全ての状況において、内部格付手法採用金庫が購入債権の元利払い等について法的に有効な権利を有しており、かつ、当該元利払い等を監督していること。
二 購入債権の債務者が購入債権の譲渡人又はサービサーに対して直接に支払を行っている場合は、当該支払資金が約定の条件に従って購入債権の譲渡人又はサービサーから譲受人である内部格付手法採用金庫に送金されていることを当該内部格付手法採用金庫が定期的に確認していること。
三 購入債権の譲渡人の破産、会社更生手続又は民事再生手続において裁判所により、当該購入債権が破産財団、更生会社又は民事再生手続に服する購入債権の譲渡人の財産に属するものであって、当該購入債権に対する譲受人の権利は破産、会社更生手続又は民事再生手続に服する担保権であると判断されることにはならず、かつ、当該購入債権の譲渡は破産法(平成十六年法律第七十五号)、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)及び会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)上の否認又は民法(明治二十九年法律第八十九号)上の詐害行為取消権の対象とならないと考えられること。
4 第一項第二号の「監視に関する基準」とは、次に掲げるものをいう。
一 内部格付手法採用金庫が、購入債権の質及び購入債権の譲渡人又はサービサーの財務状態の相関を査定しており、かつ、購入債権の譲渡人又はサービサーに対する債務者格付の付与その他の不測事態への対応策及び手続を設けていること。
二 内部格付手法採用金庫が、購入債権の譲渡人とサービサーの適格性を判定するための明確かつ有効な指針及び手続を設けており、当該内部格付手法採用金庫又はその受託者が、購入債権の譲渡人又はサービサーから送付される報告書の正確性の検証、詐欺的行為及び運営上の欠陥の調査、購入債権の譲渡人の信用供与の基準並びにサービサーの回収に関する指針及び手続を確認するために、購入債権の譲渡人及びサービサーについて定期的な査定を行っており、かつ、当該査定の結果を書面に詳細に記録していること。
三 内部格付手法採用金庫が、購入債権の譲渡人が設定する債務者への信用供与の上限を超過した信用供与の有無、購入債権の譲渡人による支払の遅延、信用力の低い債権及び悪質な支払猶予の履歴、支払条件、相殺されうる額その他の購入債権のプールの特性について評価できること。
四 内部格付手法採用金庫が、特定又は全ての購入債権のプールにおける総額ベースで一債務者に対する信用供与の集中を監視する有効な指針及び手続を設けていること。ただし、第二項に規定する購入リテール向けエクスポージャーについては、この限りでない。
五 内部格付手法採用金庫が、サービサーから購入債権の債務の繰延べ及び当該債権の希薄化に関する詳細な報告書を適時に受領しており、購入債権に関する当該内部格付手法採用金庫の適格基準及び信用供与の基準に適合していることを確認し、かつ、購入債権の譲渡人の売却条件及び希薄化を監視し確認することができること。
5 第一項第三号の「ワークアウトのシステムに関する基準」とは、次に掲げるものをいう。
一 内部格付手法採用金庫が、誓約条項、信用供与の基準、信用供与の集中制限、早期償還条項、その他の当該購入債権の購入に関する契約の条項及び利率並びに購入債権の適格性を定める金庫内の指針の順守状況を監視するために、明確かつ有効な指針、手続及び情報システムを設けており、かつ、当該情報システム上誓約条項違反及び権利放棄並びに既存の指針及び手続の例外的な取扱いを記録していること。
二 当該内部格付手法採用金庫が、購入債権について不適切な信用供与が行われることを防止するために、過剰な信用供与の発見、承認、監視及び是正のための明確かつ有効な指針、手続及び情報システムを設けていること。
三 リボルビング型取引における早期解約条項その他の誓約条項、誓約条項違反に対する対応策並びに法的手続の開始及び信用力が低下したエクスポージャーの処理に関する明確かつ有効な指針及び手続の制定その他の財務状態の劣化した購入債権の譲渡人若しくはサービサー又は購入債権プールの質が劣化した場合の取扱いに関する明確かつ有効な指針を設けていること。
6 第一項第四号の「担保、購入債権の債権者から債務者への信用供与の上限及び回収された資金の管理に関する明確かつ有効な基準」は、次に掲げる性質の全てを満たすものとする。
一 利率、適格となる担保、必要書類、信用供与の集中制限、回収金の取扱いその他の債権購入に関する全ての主要な事項が書面で定められており、かつ、当該主要事項を定めるに当たって、購入債権の譲渡人又はサービサーの財務状態、リスクの集中、購入債権の質及び購入債権の譲渡人の顧客基盤の傾向その他全ての関連する重要な要素が考慮されていること。
二 内部管理上、信用供与の対象が、特定の担保、サービサーによる証明書、請求書明細又は船荷関連書類等の書面が付されたものに限定されていること。
7 第一項第五号の「全ての主要な金庫内の指針及び手続の遵守に関する基準」とは、次に掲げる事項並びにその他全ての主要な指針及び手続に係る遵守状況を評価するための実効的な内部手続が設けられていることをいう。
一 購入債権の購入がプログラムに基づく場合は、当該プログラムにおける全ての重要な段階における定期的な内部査定又は外部査定
二 購入債権の譲渡人及びサービサーを評価する担当者と債務者を評価する担当者との間並びに購入債権の譲渡人及びサービサーに対する内部評価の担当者と外部評価の担当者との間が分離独立していることの確認
三 バック・オフィスに対する評価(担当者の資格、経験、人的構成の適切性及び支援システムに重点を置いたもの)
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第六款 内部格付制度及び推計値の検証
(検証)
第二百九条 内部格付手法採用金庫は、内部格付制度及びその運用、PD、LGD及びEADの推計値の正確性並びにその一貫性を検証する頑健な制度を設けるものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(バック・テスティング)
第二百十条 内部格付手法採用金庫は、事業法人等向けエクスポージャーについて債務者格付ごとに年一回以上の割合で定期的にPDの推計値と実績値を比較し、PDの推計値と実績値の乖離の度合いが当該格付について想定された範囲内にあることを検証するものとする。
2 先進的内部格付手法採用金庫は、先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーについて年一回以上の頻度で定期的にLGDの推計値と実績値を比較し、LGDの推計値と実績値の乖離の度合いが当該エクスポージャーに付与された案件格付又は当該エクスポージャーについて想定された範囲内にあることを検証するものとする。
3 先進的内部格付手法採用金庫は、先進的内部格付手法を適用できる事業法人等向けエクスポージャーについてエクスポージャーごとに年一回以上の割合で定期的にEADの推計値と実績値を比較し、EADの推計値と実績値の乖離の度合いが当該エクスポージャーについて想定された範囲内にあることを検証するものとする。
4 内部格付手法採用金庫は、リテール向けエクスポージャーについてプールごとに年一回以上の割合で定期的にPD、LGD及びEADの推計値とそれぞれの実績値を比較し、それぞれのPD、LGD及びEADの推計値と実績値の乖離の度合いが当該プールについて想定された範囲内にあることを検証するものとする。
5 前各項に掲げる比較及び検証は、次に掲げる条件の全てを満たすものとする。
一 可能な限り長期にわたる過去のデータが使用されていること。
二 比較に用いられる方法及びデータを明確に記載した書類が整備されていること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(外部データによる内部格付制度の検証)
第二百十一条 内部格付手法採用金庫は、前条に掲げる検証の手法以外の定量的な検証の手法及び関連する外部のデータ・ソースとの比較を行うものとする。
2 前項に掲げる検証の手法は、次に掲げる性質の全てを満たすものとする。
一 分析に用いるデータが、分析の対象となるポートフォリオに対して適切であり、定期的に更新され、かつ、関連する観測期間にわたるものであること。
二 長期の実績データに基づくものであること。
三 景気循環による構造的な影響を受けないものであること。
四 検証手法、データ・ソース又は対象期間の変更に関する書類が整備されていること。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
(推計値の是正)
第二百十二条 内部格付手法採用金庫は、PD、LGD又はEADの推計値と実績値が著しく乖離し、推計値の妥当性が疑われる状況について明確な基準を設けるものとする。
2 前項に掲げる基準を設けるに当たっては、内部格付手法採用金庫は、事業環境の変化その他デフォルトの実績率の構造的な変動要因を考慮に入れるものとする。
3 PD、LGD又はEADの実績値が推計値を上回る状況が続く場合は、内部格付手法採用金庫は、PD、LGD又はEADの実績値を反映するように、推計方法及び推計値を修正するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第七款 開示
(開示)
第二百十三条 内部格付手法採用金庫は、金融庁長官及び厚生労働大臣が別に定める事項を開示するものとする。
(令六金庁厚労告一・一部改正)
第八款 内部格付手法採用のための自己資本比率
(内部格付手法を用いるための追加的条件)
第二百十四条 内部格付手法を用いる金庫については、内部格付手法を用いるために十分と認められる自己資本比率を維持していることを、当該手法の採用及び継続使用の条件とする。
(平二五金庁厚労告一・一部改正)
第九款 法的に有効な相対ネッティング契約下にあるレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引に対するエクスポージャー変動額推計モデルの使用
(令六金庁厚労告一・全改)
(エクスポージャー変動額推計モデルの使用の承認等)
第二百十五条 内部格付手法採用金庫は、金融庁長官及び厚生労働大臣の承認を受けた場合又は内部モデル方式採用金庫である場合には、法的に有効な相対ネッティング契約下にある複数のレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引について、エクスポージャー変動額推計モデル(法的に有効な相対ネッティング契約下にある複数のレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引について、債券の価格のボラティリティと相関を勘案し、バリュー・アット・リスクと同様の方法を用いてエクスポージャー変動額(複数のレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引におけるネッティング後のエクスポージャーの変動額をいう。以下この款において同じ。)を推計するモデルをいう。以下同じ。)を使用して信用リスク削減手法適用後エクスポージャー額を算出することができる。ただし、エクスポージャー変動額推計モデルを使用する場合には、金融庁長官及び厚生労働大臣による承認の取消しがあった場合を除き、これを継続して使用するものとする。
2 第七十八条の規定は、エクスポージャー変動額推計モデルを使用する内部格付手法採用金庫について準用する。この場合において、同条中「標準的手法採用金庫」とあるのは、「内部格付手法採用金庫」と読み替えるものとする。
(令六金庁厚労告一・全改)
(内部モデル方式採用金庫におけるエクスポージャー変動額推計モデル使用に係る届出)
第二百十六条 内部格付手法を採用した場合の内部モデル方式採用金庫は、エクスポージャー変動額推計モデルを使用する場合には、あらかじめ、その旨及びその内容を記載した届出書を金融庁長官及び厚生労働大臣に提出するものとする。
2 内部モデル方式採用金庫である内部格付手法採用金庫は、前項に規定する届出書に変更があったとき、又はやむを得ない理由によりエクスポージャー変動額推計モデルの利用を中止するときは、遅滞なく、その旨及びその内容を記載した変更届出書を金融庁長官及び厚生労働大臣に提出するものとする。
(令六金庁厚労告一・全改)
(承認申請書の提出)
第二百十七条 第二百十五条第一項の承認を受けようとする内部格付手法採用金庫は、次に掲げる事項を記載した承認申請書を金融庁長官及び厚生労働大臣に提出するものとする。
一 名称
二 自己資本比率を把握し管理する責任者の氏名及び役職名
2 前項の承認申請書には、次に掲げる書類を添付するものとする。
一 理由書
二 前項第二号に規定する責任者の履歴書
三 エクスポージャー変動額推計モデル及びその運用が承認の基準に適合していることを示す書類
四 その他参考となるべき事項を記載した書類
(令六金庁厚労告一・全改)
(エクスポージャー変動額推計モデルの承認の基準)
第二百十八条 金融庁長官及び厚生労働大臣は、第二百十五条第一項の規定に基づき、エクスポージャー変動額推計モデルの使用を承認するときは、定性的基準及び定量的基準に適合するかどうかを審査するものとする。
2 前項の「定性的基準」とは、次に掲げるものをいう。
一 エクスポージャー変動額推計モデルの承認に先立って一定期間にわたるモニタリング及び実際の取引データを利用したテストが実施されていること。
二 エクスポージャー変動額の管理の過程の設計及び運営に責任を負う部署(以下「エクスポージャー変動額の管理部署」という。)が、信用リスク削減手法適用後エクスポージャー額を算出する対象となる取引に関わる部署から独立して設置されていること。
三 エクスポージャー変動額を管理するシステムにおいて、エクスポージャー変動額推計モデルを用いる内部格付手法採用金庫が保有する重要なリスクが網羅的に把握され、かつ、可能な限り考慮されていること。
四 フロント・オフィス部門のみならず、リスク管理部門及び内部監査を行う部門並びに必要に応じてバック・オフィス部門において、高度なモデルの使用に習熟した人員が十分に確保されていること。
五 エクスポージャー変動額に係るストレス・テスト(エクスポージャー変動額推計モデルについて、将来の価格変動に関する仮定を上回る価格変動が生じた場合におけるエクスポージャー変動額に関する分析を行うことをいう。)が定期的に実施されていること。
六 前号のストレス・テストが第二百四十六条の十の九に規定する内部モデル方式に係るストレス・テストの要件と同等であること。
七 エクスポージャー変動額の管理部署によるエクスポージャー変動額に係るレポVaRモデルバック・テスティング(第二百四十六条の九の三第三項第七号に規定するバック・テスティングによりエクスポージャー変動額推計モデルの正確性の検定を行うことをいう。)が実施されていること。
八 エクスポージャー変動額推計モデルを用いる場合は、エクスポージャー変動額推計モデルに係るリスク理論損益(エクスポージャー変動額推計モデルに関連するフロント・オフィス部門が用いるリスク管理モデルにより計算される損益をいう。)とエクスポージャー変動額推計モデルに係る仮想損益とを比較することにより、当該エクスポージャー変動額推計モデルの頑健性を説明できること。
九 エクスポージャー変動額推計のモデル検証部署(エクスポージャー変動額推計モデルの設計・運用を行う部署から独立し、十分な能力を有する者が属する部署又は機能をいう。次号において同じ。)は、エクスポージャー変動額推計モデルに用いる全てのモデルについて、承認時及びその後一年に一回以上の頻度で検証すること。この場合において、当該検証は次に掲げる事項を含むものとする。
イ エクスポージャー変動額推計モデルの全ての過程が適切であって、リスクを過小評価していないことを証明する検証(モデルが仮定する分布及び時価評価モデルの適切性の検証を含む。)が行われていること。
ロ モデルの検証には、仮想的なポートフォリオを用いた検証(市場の構造的な変更又はポートフォリオ構成の大きな変化(以下この号において「構造的特性」という。)によって、モデルの正確性が失われる可能性を把握する検証をいう。)が含まれ、かつ、当該仮想的なポートフォリオを用いて、発生可能性のある構造的特性をエクスポージャー変動額推計モデルで説明可能であるかどうかが確認されていること。
ハ ロの仮想的なポートフォリオを用いた検証において、代理変数を使用する場合は、次に掲げる事項が確保されていること。
(1) 代理変数を用いるリスク・ファクターが保守的な結果を算出することを確認すること。
(2) 重要なベーシス・リスク(第二百四十六条の十の七第二項第四号ロに規定するベーシス・リスクをいう。)が十分に反映されていること。
(3) 分散化されていないポートフォリオで生ずる可能性がある集中リスクが反映されていること。
十 エクスポージャー変動額推計のモデル検証部署は、第五号に規定するエクスポージャー変動額に係るストレス・テストの結果、第七号に規定するエクスポージャー変動額に係るレポVaRモデルバック・テスティングの結果、第八号に規定するエクスポージャー変動額推計モデルの頑健性、前号に規定するモデルの検証の結果及び取引相手方の信用リスクの管理状況を定期的に理事会等に報告すること。
十一 理事会等は、レポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引に係る取引相手方の信用リスクの管理に積極的に関与し、適切な経営資源を投入すること。
十二 エクスポージャー変動額の管理者は、各トレーダーのポジションの削減を指示する権限を有すること。
十三 エクスポージャー変動額の計測の正確性を示す記録が保存されていること。
十四 エクスポージャー変動額推計モデルの運営に関する内部の方針、管理及び手続を記載した書類が作成され、それらが遵守されるための手段が講じられていること。
十五 エクスポージャー変動額の計測過程について原則として一年に一回以上の頻度で内部監査が行われること。
3 第一項の「定量的基準」とは、次に掲げるものをいう。
一 エクスポージャー変動額の推計のための信頼水準が、片側九十九パーセントであること。
二 取引対象資産の保有期間(エクスポージャー変動額の推計値を算出する際に、当該取引対象資産を保有すると仮定する期間をいう。以下この款において同じ。)が、次のイ又はロに掲げる取引の区分に応じ、当該イ又はロに定める営業日以上であること。
イ レポ形式の取引のうち担保額調整に服しているもの 五営業日
ロ イに掲げる取引以外の取引 十営業日
三 エクスポージャー変動額の推計に用いるヒストリカル・データの観測期間が、一年以上であること。
四 エクスポージャー変動額の推計に用いるヒストリカル・データをその各数値に掛目を乗じて使用する場合は、各数値を計測した日から算出基準日までの期間の長さにその掛目を乗じて得たものの平均が、六月以上であること。
五 エクスポージャー変動額の推計に用いるヒストリカル・データが三月に一回以上の頻度で更新され、推計が行われていること。ただし、市場価格に大きな変動がみられた場合には、当該変動を反映するための更新及び推計が行われるものとする。
4 推計の対象となる取引で用いられる債券の流動性に鑑みて必要と認められる場合は、保有期間を前項第二号に規定する営業日よりも長い期間とするものとする。
5 前二項の規定にかかわらず、算出基準日を含む四半期の前の直近の連続する二の四半期の間に最低保有期間を超える清算期間を要する場合が三回以上生じたネッティング・セットは、次の連続する二の四半期の間は、当該最低保有期間に二十営業日を適用するものとする。
(令六金庁厚労告一・全改)
(計算方法)
第二百十九条 内部格付手法採用金庫は、エクスポージャー変動額推計モデルを用いる場合には、法的に有効な相対ネッティング契約下にある複数のレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引について、信用リスク削減手法適用後のエクスポージャー額を次の算式により算出するものとする。
E*=(ΣE-ΣC)+(算出基準日の前営業日におけるエクスポージャー変動額推計モデルによるエクスポージャー変動額の推計値)
E*は、当該複数のレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引の信用リスク削減手法適用後エクスポージャー額(ただし、零を下回らない値とする。)
ΣEは、当該複数のレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引のエクスポージャーの額の合計額
ΣCは、当該複数のレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引の担保の額の合計額
(令六金庁厚労告一・全改)
(変更に係る届出)
第二百二十条 第二百十五条第一項の承認を受けた内部格付手法採用金庫は、次の各号のいずれかに該当する場合には、遅滞なく、その旨及びその内容を記載した届出書を金融庁長官及び厚生労働大臣に提出するものとする。
一 承認申請書の記載事項に変更があった場合
二 承認申請書の添付書類の記載事項に重要な変更があった場合
三 第二百十八条に規定する承認の基準を満たさない事由が生じた場合
2 前項第三号に規定する場合において、内部格付手法採用金庫は、当該事由を改善する旨の計画を記載した書面又は承認の基準を満たさないことが当該内部格付手法採用金庫のリスクの観点から重要でない旨の説明を記載した書面を速やかに提出するものとする。
3 第一項第三号に規定する場合において、内部格付手法採用金庫は、前項の書面に記載する事項について金融庁長官及び厚生労働大臣の承認を得るまでの間は、エクスポージャー変動額推計モデルに代えて第七十九条に定めるところによりレポ形式の取引及び信用取引その他これに類する海外の取引に係るエクスポージャーを算出するものとする。
(令六金庁厚労告一・全改)
(承認の取消し)
第二百二十一条 金融庁長官及び厚生労働大臣は、前条第一項各号に掲げる場合又は内部格付手法採用金庫が同条第二項に定める提出義務を怠った場合において、エクスポージャー変動額推計モデルを継続して使用させることが不適当と判断したときは、当該内部格付手法採用金庫について第二百十五条第一項の承認を取り消すことができる。
(令六金庁厚労告一・全改)
第六章 証券化エクスポージャーの取扱い
第一節 総則
(証券化エクスポージャーの信用リスク・アセット)
第二百二十二条 第四章及び前章の規定にかかわらず、証券化エクスポージャーの信用リスク・アセットの計算は、この章の定めるところによる。ただし、前章の規定のうち、第百十五条、第百十八条及び第百十九条の規定は、内部格付手法採用金庫が次節第二款第二目に規定する内部格付手法準拠方式を用いてリスク・ウェイトを算出する証券化エクスポージャーに係る第二百三十条第一項のKIRB及び同条第八項に掲げる算式のKIRBを算出するに当たって行う内部格付手法による裏付資産の所要自己資本の額の算出について準用する。
(平三一金庁厚労告二・一部改正)
(原資産の信用リスク・アセット)
第二百二十三条 金庫は、資産譲渡型証券化取引のオリジネーターである場合であって、次に掲げる条件のいずれかを満たさないときは、原資産に係る信用リスク・アセットの額を算出するものとする。
一 原資産に係る主要な信用リスクが第三者に移転されていること。
二 当該金庫が原資産に対して有効な支配権を有しておらず、金庫の倒産手続等においても当該金庫又は当該金庫の債権者の支配権が及ばないように、原資産が法的に金庫から隔離されており、かつ、かかる状態について適切な弁護士等(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)の規定による弁護士又は外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(昭和六十一年法律第六十六号)第二条第三号に規定する外国弁護士をいう。以下同じ。)による意見書を具備していること。この場合において、次のイ又はロの要件を満たすときは、有効な支配権を有しているものとみなす。
イ 当該金庫が譲受人に対して当該原資産の買戻権を有していること。ただし、買戻権の行使が第六号に該当するクリーンアップ・コールである場合は、この限りでない。
ロ 当該金庫が当該原資産に係る信用リスクを負担していること。ただし、前号に反しない限度での劣後部分の保有は妨げられない。
三 当該証券化取引における証券化エクスポージャーに係る投資家の権利は、原資産の譲渡人である当該金庫に対する請求権を含むものでないこと。
四 原資産の譲受人が証券化目的導管体であって、かつ、当該証券化目的導管体の出資持分を有する者が、当該出資持分について任意に質権を設定し、又は譲渡する権利を有すること。
五 原資産の譲渡契約において次のイからハまでに掲げる条項のいずれかが含まれるものでないこと。