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○新規化学物質のうち、高分子化合物であって、これによる環境の汚染が生じて人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれがないものに関する基準
(平成二十一年十二月二十八日)
(/厚生労働省/経済産業省/環境省/告示第二号)
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号)第三条第一項第六号の規定に基づき、新規化学物質のうち、高分子化合物であって、これによる環境の汚染が生じて人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれがないものに関する基準を次のとおり定め、平成二十二年四月一日から施行する。
新規化学物質のうち、高分子化合物であって、これによる環境の汚染が生じて人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれがないものに関する基準
第1 高分子化合物とは、次の1及び2に該当するものとする。
1 1種類以上の単量体単位の連鎖により生成する分子の集合から構成され、3連鎖以上の分子の合計重量が全体の50%以上を占め、かつ、同一分子量の分子の合計重量が全体の50%未満であること。
2 数平均分子量が1,000以上であること。
第2 新規化学物質のうち、高分子化合物であって、これによる環境の汚染が生じて人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれがないものとは、以下の1又は2に該当する化学物質をいうものとする。
1 次に掲げるすべての要件を満たす高分子化合物
(1) 物理化学的安定性試験において、次の安定性の基準に該当すること。
ア 試験液のいずれのpHにおいても、試験前後で1%を超える溶存有機炭素濃度(以下「DOC」という。)の変化(DOCの変化による判断が適切でない場合は、2%を超える被験物質の重量の変化)がないこと。
イ 試験液のいずれのpHにおいても、試験前後でIRスペクトルの変化がないこと。
ウ 試験液のいずれのpHにおいても、試験前後で被験物質の分子量の変化がないこと。
(2) 酸・アルカリに対する溶解性試験において、試験前後で1%を超えるDOCの変化(DOCの変化による判断が適切でない場合は、2%を超える被験物質の重量の変化)がないこと又は基本骨格部分が陽イオン性を示さないこと。
(3) 水及び有機溶媒に対する溶解性試験において、水に対して試験前後で1%を超えるDOCの変化(DOCの変化による判断が適切でない場合は、2%を超える被験物質の重量の変化)がなく、かつ有機溶媒に対して試験前後で2%を超える被験物質の重量の変化がないこと。
(4) 化学構造中にナトリウム、マグネシウム、カリウム又はカルシウム以外の金属を含まないこと。
2 1(1)、(2)及び(4)並びに次の(1)から(3)までに掲げるすべての要件を満たす高分子化合物
(1) 1(3)に該当せず、分子量1,000未満の成分の含有が1%以下であり、かつ、生体内への高蓄積性を示唆する知見がないこと。
(2) 化学構造中にヒ素又はセレンを含まないこと。
(3) 次のア又はイに該当すること。
ア 数平均分子量が10,000以上であること。
イ アに該当しないもののうち、高分子化合物を構成する単量体が既存化学物質等であり、かつ、化学構造中に炭素間二重結合、炭素間三重結合、炭素窒素間二重結合、炭素窒素間三重結合、アジリジル基、アミノ基、エポキシ基、スルホン酸基、ヒドラジノ基、フェノール性水酸基又はフルオロ基を含まないこと。
第3 基準に該当するかどうかの評価については、以下の試験方法によることとする。
1 用語
試験方法において使用する用語は、日本産業規格(JIS K 0211(分析化学用語(基礎部門))、JIS K 0215(分析化学用語(分析機器部門))、JIS K 7252(プラスチック―サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方)、JIS Z 8801(試験用ふるい)等)による。
2 被験物質の調製
平均分子量が最も小さいものを被験物質とする。ただし、合成時に溶媒に溶解又は分散している場合には、化学物質の性質を変えずに溶媒から高分子化合物を単離して被験物質とすること。
3 試験方法
(1) 物理化学的安定性及び酸・アルカリに対する溶解性試験法
ア 被験物質の粒度 60メッシュから80メッシュまでを目安とすること。
イ 試験液のpHとその調製 経済協力開発機構(OECD)における試験法ガイドライン(OECD理事会決定[C(81)30最終別添1])111「pHの関数としての加水分解」に採用されているpH4.0及び9.0とする。ただし、pH4.0については、TG111に規定されていない無機溶媒を使用してもよいが、試験前後でpHが維持できていることを確認すること。
ウ 試験温度 40±2℃
エ 光 室内光
オ 空気 試験液をかくはんすることにより空気との接触を図ること。
カ 試験期間 2週間とすること。
キ 被験物質の試験濃度 1,000mg/Lとすること。ただし、被験物質の性質により試験が困難な場合には試験濃度を100mg/Lから10,000mg/Lまでの範囲において変更することができる。
ク 連数(繰り返し) 2連
ケ 分析 試験開始時及び終了時にDOC、IRスペクトル及び分子量分布について分析し、化学的変化の有無を調べ、加水分解が可能な側鎖が存在する場合には、直接分析等を行い、物理化学的安定性を確認すること。ただし、被験物質が無機高分子化合物である場合や、pH4.0においてTG111に採用されている緩衝液を使用する等、DOCの分析が適切でない場合には、重量について分析する。なお、やむを得ない理由がある場合は、この限りでない。
(2) 水及び有機溶媒に対する溶解性試験法
ア 試験溶媒
(ア) 水
(イ) テトラヒドロフラン(以下「THF」という。)及びジメチルホルムアミド(以下「DMF」という。)
(注1) n―オクタノール及びn―ヘプタン(脂肪への親和性の指標)への溶解性は、THF及びDMFへの溶解性から確認することができる。
(注2) DMFに代えて、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」という。)又は1―メチル―2―ピロリドン(以下「NMP」という。)を使用することができる。
イ 試験温度 35℃から40℃までとすること。
ウ 試験時間 1時間かくはんすること。
エ 平衡 25±2℃にて24時間平衡状態を保つこと。
オ 被験物質の試験濃度 2,000mg/L
カ 粒度 60メッシュから80メッシュまでを目安とすること。
キ 連数(繰り返し) 2連
ク かくはん 溶媒との接触を図るため、緩やかに常時かくはん又は振とうを行うものとすること。
ケ 分析
(ア) 水については、DOCを分析する。ただし、水についてDOCを分析することが適切でない場合には、試験液をフィルターでろ過した後、残試料を恒量化して重量変化を調べる。膨潤や容器への付着等の被験物質の性質によりろ過法が使用できない場合には、他の方法により残試料と試験液を分離することができる。残試料の重量分析が困難な場合には、分離した試験液を乾固して溶解した分の重量分析を行うことができる。
(イ) THF及びDMFについては、試験液をフィルターでろ過した後、残試料を恒量化して重量変化を調べる。膨潤や容器への付着等の被験物質の性質によりろ過法が使用できない場合には、他の方法により残試料と試験液を分離することができる。残試料の重量分析が困難な場合には、分離した試験液を乾固して溶解した分の重量分析を行うことができる。
コ 溶解性の判断
不溶については、原則として水及び2種類の有機溶媒に対して不溶であることを確認すること。また、水及び2種類の有機溶媒のうち1種に溶解したと判断される場合は、少なくとも水に対する溶解性データを備えること。
(3) 分子量分布の測定法
(2)コにおいて溶解したと判断される場合には、サイズ排除クロマトグラフィー(以下「SEC」という。)法等によることとし、次の点に留意すること。
ア 溶離液
溶離液は次のいずれかの汎用の溶離液とする。被験物質が汎用の溶離液に溶解しない場合には、可能な限り(イ)の特殊な溶離液についても検討する。日本産業規格(JIS K 7252)に定める温度で溶解しない場合はo―ジクロロベンゼン(以下「ODCB」という。)、トルエン、DMF又は水を用いて加熱溶解試験を行うことができる。
(ア) 汎用の溶離液 THF、クロロホルム、ジクロロメタン、DMF、水(緩衝液も含む)等
(イ) 特殊な溶離液 1,1,1,3,3,3―ヘキサフルオロ―2―プロパノール(HFIP)、1,2,4―トリクロロベンゼン(TCB)、ODCB、トルエン、1,2―ジクロロエタン、NMP、m―クレゾール、ベンゼン、DMSO、テトラクロロエチレン、2―クロロフェノール、トリフルオロエタノール等
イ 分子量換算方法 被験物質に応じて次の方法から選択すること。
(ア) 単分散分子量標準試料を用いる方法(標準試料として、ポリエチレンオキサイド、ポリスチレン等を用いること。)
(イ) 多分散分子量標準試料を用いる方法 数平均、重量平均又はZ平均分子量が絶対法(膜浸透圧法、光散乱法、超遠心法等)で測定されたもののうち1~2種を用いること。
(ウ) 伸長鎖長による方法
(エ) 流体力学的容積による方法
(オ) SEC―粘度検出器法
(カ) SEC―LS法
ウ 安定性 ベースラインが直線的であること。
エ 検出器応答感度 応答感度の分子量依存性がないこと(依存性がある場合は補正する。)。
オ 分離 高分子化合物のピークに他のピーク(添加物、溶媒中の不純物等)が重ならないようにすること。ただし、ピークの分離が技術的に困難な場合であって、単量体及びオリゴマーを含む全分子量領域に相当する点までを分子量の計算範囲とするときは、この限りでない。この場合において、ピークが明確に添加物又は溶媒中の不純物等によるものと識別できる場合は、当該ピークを除外して計算することができる。
カ 低分子領域のベースラインの引き方 ベースラインの安定性がよい2枚のチャートについて計算し、平均値を求めること。
キ データ処理 SEC法及びその他の測定方法により得られたデータから数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分散度(Mw/Mn)及び分子量1,000未満成分の含有率を求めること。
改正文 (平成三〇年三月六日/厚生労働省/経済産業省/環境省/告示第一号) 抄
平成三十年四月一日から施行する。
改正文 (令和元年七月一日/厚生労働省/経済産業省/環境省/告示第一号) 抄
不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行の日(令和元年七月一日)から施行する。