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○労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について

(令和7年5月20日)

(基発0520第6号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和7年厚生労働省令第57号。以下「改正省令」という。)については、令和7年4月15日に公布され、同年6月1日から施行することとされたところである。その改正の趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。

第1 改正の趣旨

職場における熱中症による労働災害は、近年の気候変動の影響から、夏期において気温の高い日が続く中、ここ数年は増加傾向にあり、令和6年における休業4日以上の死傷災害は、1,195人と調査開始以来最多となっている。特に、死亡災害については、3年連続で30人以上となっており、労働災害による死亡者数全体の約4%を占める状況にあるなど、その対策が重要となっている。熱中症による死亡災害の原因の多くは、初期症状の放置、対応の遅れによることから、熱中症の重症化を防止し、死亡災害に至らせないよう、熱中症による健康障害の疑いがある者の早期発見や重篤化を防ぐために事業者が講ずべき措置等について、新たな規定を設けるものである。

第2 改正省令の概要

1 事業者が熱中症による健康障害を防止するために講ずるべき体制整備と関係作業者への周知

事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者が当該作業に従事する他の者に熱中症が生じた疑いがあることを発見した場合にその旨を報告させる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならないこととしたこと。

2 事業者が熱中症による健康障害を防止するために講ずるべき措置の実施手順の作成と関係作業者への周知

事業者は、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体冷却、必要に応じての医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその手順を周知させなければならないとしたこと。

第3 細部事項

1 改正省令関係

(1) 共通事項

ア 「熱中症」とは、高温多湿な環境下において、体内の水分や塩分(ナトリウム等)バランスが崩れる、体温の調整機能が破綻する等して、発症する障害の総称であること。

イ 「暑熱な場所」とは、湿球黒球温度(WBGT)が28度以上又は気温が31度以上の場所をいい、必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含む趣旨であること。

また、「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、上記の場所において、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業をいうこと。

なお、非定常作業、臨時の作業等であっても上記の条件を満たすことが見込まれる場合は対象となること。

ウ 暑熱な場所に該当するか否かは、原則として作業が行われる場所で湿球黒球温度又は気温を実測することにより判断する必要があるが、例えば、通風のよい屋外作業について、天気予報(スマートフォン等のアプリケーションによるものを含む。)、環境省の運営する熱中症予防情報サイト等の活用によって判断可能な場合には、これらを用いても差し支えないこと。

なお、熱中症を生ずるおそれのある作業に該当しない場合であっても、作業強度や着衣の状況によっては、熱中症のリスクが高まることから、事業者は、改正省令に準じた対応を行うよう努めること。

エ 「当該作業に従事する者」(以下「作業者」という。)とは、労働者だけでなく、労働者と同一の場所において当該作業に従事する労働者以外の者を含むものであること。

オ 熱中症の症状の重篤化を防止するためには、熱中症が生じた疑いのある者について、早期の作業離脱や身体冷却、必要に応じ、医師の診察等を受けさせるための医療機関への搬送を迅速かつ的確に行うことが重要である。

このため、これらの措置が迅速かつ円滑に実施されるよう、①熱中症の自覚症状を有する作業者や熱中症が生じた疑いのある作業者を発見した者がその旨を報告するための体制を事業場ごとにあらかじめ整備しておくこと、②熱中症の自覚症状を有する作業者や熱中症が生じた疑いのある作業者への対応に関し、事業場の緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先並びに必要な措置の内容及び手順を事業場ごとにあらかじめ作成しておくこと、③当該体制や手順等について作業者へ周知することを事業者に義務付けるものであること。

なお、作業者に熱中症が生じたことが疑われる場合には、WBGT値や作業時間等にかかわらず、作成した手順を踏まえ、適切に対処することが重要であること。ただし、状況によっては、あらかじめ作成した手順どおりに措置を講ずることが難しい場合も考えられることから、このような場合は、熱中症の症状の重篤化を防ぐ観点から、何らかの合理的な措置を講じることが望ましい。

カ 改正により新設される労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第612条の2は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。第4の2(1)において「安衛法」という。)第22条に基づくものであり、個々の事業者に対し、措置義務が課されるものであること。

また、建設現場にみられるような混在作業であって、同一の作業場で複数の事業者が作業を行う場合は、当該作業場に関わる元方事業者及び関係請負人の事業者のいずれにも措置義務が生ずるものであること。この場合の作業者に対する周知の方法として、各事業者が共同して1つの緊急連絡先を定め、これを作業者の見やすい場所に掲示することや、メールでの送付、文書の配布等が考えられること。

なお、上記のような複数事業者が混在して作業を行う状況において当該措置が行われていなかった場合には、元方事業者のみに違反が生ずる訳ではなく、当該作業場に関わる全ての事業者に同条違反が生ずるものであること。

キ 作業者の不調を発見するのは熱中症を生ずるおそれのある作業以外の作業に従事する者であることも想定されるため、熱中症を生ずるおそれのある作業が行われる場所で熱中症を生ずるおそれのある作業以外の作業を行う者も含め広く緊急連絡先等を周知することが望ましいこと。

(2) 報告体制の整備(第612条の2第1項(新設)関係)

ア 「報告をさせる体制の整備」には、熱中症を生ずるおそれのある作業が行われる作業場の責任者等報告を受ける者の連絡先及び当該者への連絡方法を定め、かつ明示することにより、作業者が熱中症を生ずるおそれのある作業を行っている間、随時報告を受けることができる状態を保つことが含まれるものであること。また、作業者から電話等による報告を受けるだけでなく、積極的に熱中症が生じた疑いのある作業者を早期に発見する観点から推奨される方法として、責任者等による作業場所の巡視、2人以上の作業者が作業中に互いの健康状態を確認するバディ制の採用、ウェアラブルデバイスを用いた作業者の熱中症のリスク管理、責任者・労働者双方向での定期連絡やこれらの措置の組合せなどが挙げられること。ただし、ウェアラブルデバイスによる管理については、必ずしも当該機器を着用した者の状態を正確に把握することができるわけではないため、他の方法と組み合わせる等により、リスク管理の精度を高めることが望ましいこと。

イ 「報告をさせる体制の整備」は「熱中症を生ずるおそれのある作業」が行われることが想定される作業日の作業開始前までに行っておく必要があるが、夏季の屋外作業のように、一定期間、暑熱環境下で作業を行うことが明らかな場合は、十分な余裕をもって体制を整え、当該作業に従事することが見込まれる者に周知しておくよう努めること。

なお、当該作業が、同一の従事者によって一定期間に連続して行われることが想定され、既に体制の整備及びその周知が講じられている場合には、当該措置を作業日ごとに重ねて実施する必要はないこと。

ウ 「周知」は、報告先等が作業者に確実に伝わることが必要である。その方法には、事業場の見やすい箇所への掲示、メールの送付、文書の配布のほか、朝礼における伝達等口頭によることがあり、原則いずれでも差し支えないが、伝達内容が複雑である場合など口頭だけでは確実に伝わることが担保されない場合や、朝礼に参加しない者がいる場合なども想定されるため、必要に応じて、複数の手段を組み合わせて行うこと。なお、熱中症の症状が疑われる場合の報告先については、必要に応じて、別添1(掲示例)を参考にされたいこと。

また、現場で周知した結果の記録の保存までは法令では求めていないが、労働基準監督署による確認に際しては、事業者として適切に対応することが求められること。

(3) 手順等の作成(第612条の2第2項(新設)関係)

ア 手順等の作成の時期等については、(2)イと同様であること。

イ 手順等の「周知」の方法については、(1)カ及び(2)ウと同様であること。

ウ 「身体の冷却」としては、作業着を脱がせて水をかけること、アイスバスに入れること、十分に涼しい休憩所に避難させること、ミストファンを当てること等の被災者を体外から冷却する措置のほか、アイススラリー(流動性の氷状飲料)を摂取させる等の被災者を体内から冷却する措置が挙げられること。この間、容態が急変する場合があることから、熱中症を生じたおそれがある作業者を一人きりにすることなく、他の作業者等が見守ることが重要であること。

エ 「熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順等」は熱中症の重篤化を防止する観点から、事業場の体制や作業実態を踏まえて合理的に実施可能な内容とする必要があること。

手順等の作成に当たっては、必要に応じて、別添2(手順例)を参考にされたいが、必ずしもこれらによらず、作業場所及び作業内容の実態を踏まえて、事業場独自の手順等を定めて差し支えないこと。

なお、別添2の手順例①は、令和3年4月20日付け基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」により従前から示しているものであり、同手順例②は新たに示すものであるが、判断に迷う場合には、放置したり、措置を躊躇して先送りにせず、#7119等を活用するなど専門機関や医療機関に相談し、速やかに専門家の指示を仰ぐことが望ましいこと。

オ 「熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順」等については、あらかじめ、事業場における緊急連絡網、搬送先となる医療機関の連絡先(当該医療機関の所在地を含む。)を定めた場合には、これらも含めて手順例等に記載することが望ましいこと。

カ 熱中症については、帰宅後も含め、時間が経ってから症状が悪化することがある。このため、事業場における回復の判断は慎重に行うことが重要である。回復後の体調急変等により症状が悪化する場合は、直ちに医療機関を受診する必要があるため、その旨を回復後の作業者に十分理解させるとともに、体調急変時の連絡体制や対応(具合が悪くなったら本人や家族が救急搬送を要請する、事業者側から様子を伺うための連絡を取る等)を、事業場の実態を踏まえて、あらかじめ定めておくことが重要であること。

2 関係条文の解釈

(1) 安衛則第606条の「暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるもの」には、屋内作業場であって、改正安衛則第612条の2第1項に定める「熱中症を生ずるおそれのある作業」(第3の1(1)イの作業をいう。)が行われるものが含まれること。

(2) 安衛則第614条の「著しく暑熱、又は多湿の作業場」において休憩設備を設ける場合には、直射日光を遮る、冷房設備を設置する、ミストファンを使用する等により、休憩設備の内部の温湿度を低下させる措置を講ずることが望ましいこと。

(3) 熱中症を生ずるおそれのある作業が行われる場合には、安衛法第59条第1項に基づく雇入れ時等の安全衛生教育及び同法第60条に基づく職長等に対する安全衛生教育において、教育すべき事項とされている事故時等や異常時における措置には、今回の改正内容も含め、熱中症が疑われる者に対する応急措置が含まれるため、これらの教育の実施に当たっては留意する必要があること。

3 関係通達の改正について

(1) 令和3年4月20日付け基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」を別紙1のとおり改正し、令和7年6月1日から適用すること。

(2) 平成26年10月20日付け基発1020第2号「除染等業務、特定線量下業務及び事故由来廃棄物等処分業務における安全衛生対策の推進について」の記の1(1)のウ中、「平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」」とあるのを「令和3年4月20日付け基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」」に改め、本日から適用すること。

(3) 平成27年8月26日付け基発0826第1号「「東京電力福島第一原子力発電所における安全衛生管理対策のためのガイドライン」の策定について」の別添1及び別紙2を別紙2のとおり改正し、令和7年6月1日から適用すること。

第4 施行期日

改正省令は、令和7年6月1日から施行することとしたこと。

別添1

事業場における報告先の掲示例

別添2

手順例①

熱中症による健康障害発生時の対応計画

手順例②

熱中症による健康障害発生時の対応計画

[別紙1]

○職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について

(令和3年4月20日)

(基発0420第3号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

改正 令和3年7月26日基発0726第2号

同 7年5月20日基発0520第7号

(公印省略)

職場における熱中症の予防については、平成17年7月29日付け基安発第0729001号「熱中症の予防対策におけるWBGTの活用について」及び平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」に基づき対策を推進してきたところであるが、熱中症による休業4日以上の業務上疾病者数は依然として高止まりしており、死亡に至る事例も後を絶たない状況にある。

今般、日本産業規格JIS Z 8504が約20年ぶりに改正され、WBGT基準値、着衣補正値等に関する改正が行われたこと等により、別紙のとおり、職場における熱中症予防基本対策要綱を定め、熱中症予防対策の一層の推進を図ることとしたところである。

ついては、関係事業場等において本要綱の内容が適切な安全衛生管理体制のもと、適切に実施されるよう指導等に遺漏なきを期されたい。

また、関係団体等に対して別添のとおり通知しているので、併せて了知されたい。

なお、本通達をもって、平成17年7月29日付け基安発第0729001号及び平成21年6月19日付け基発第0619001号通達は廃止する。

(別紙)

職場における熱中症予防基本対策要綱

第1 WBGT値(暑さ指数)の活用

1 WBGT値等

WBGT(Wet―Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位:℃))の値は、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数(式①又は②により算出)であり、作業場所に、WBGT指数計を設置する等により、WBGT値を求めることが望ましいこと。特に、熱中症予防情報サイト等により、事前にWBGT値が表1―1のWBGT基準値(以下「WBGT基準値」という。)を超えることが予想される場合は、WBGT値を作業中に測定するよう努めること。

ア 日射がない場合

WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度 式①

イ 日射がある場合

WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×気温(乾球温度) 式②

また、WBGT値の測定が行われていない場合においても、気温(乾球温度)及び相対湿度を熱ストレスの評価を行う際の参考にすること。

2 WBGT値に係る留意事項

表1―2に掲げる衣類を着用して作業を行う場合にあっては、式①又は②により算出されたWBGT値に、それぞれ表1―2に掲げる着衣補正値を加える必要があること。

また、WBGT基準値は、健康な労働(作業)者を基準に、ばく露されてもほとんどの者が有害な影響を受けないレベルに相当するものとして設定されていることに留意すること。

3 WBGT基準値に基づく評価等

把握したWBGT値が、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、冷房等により当該作業場所のWBGT値の低減を図ること、身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業に変更すること、WBGT基準値より低いWBGT値である作業場所での作業に変更すること等の熱中症予防対策を作業の状況等に応じて実施するよう努めること。それでもなお、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合には、第2の熱中症予防対策の徹底を図り、熱中症の発症リスクの低減を図ること。ただし、WBGT基準値を超えない場合であっても、WBGT基準値が前提としている条件に当てはまらないとき又は着衣補正値を考慮したWBGT基準値を算出することができないときは、WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある場合と同様に、第2の熱中症予防対策の徹底を図らなければならない場合があることに留意すること。

上記のほか、熱中症の発症リスクがあるときは、必要に応じて第2の熱中症予防対策を実施することが望ましいこと。

第2 熱中症予防対策

1 作業環境管理

(1) WBGT値の低減等

次に掲げる措置を講ずること等により当該作業場所のWBGT値の低減に努めること。

ア WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある作業場所(以下単に「高温多湿作業場所」という。)においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けること。

イ 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けること。

ウ 高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設けること。また、屋内の高温多湿作業場所における当該設備は、除湿機能があることが望ましいこと。

なお、通風が悪い高温多湿作業場所での散水については、散水後の湿度の上昇に注意すること。

(2) 休憩場所の整備等

労働者の休憩場所の整備等について、次に掲げる措置を講ずるよう努めること。

ア 高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所を設けること。また、当該休憩場所は、足を伸ばして横になれる広さを確保すること。

イ 高温多湿作業場所又はその近隣に氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備を設けること。

ウ 水分及び塩分の補給を定期的かつ容易に行えるよう高温多湿作業場所に飲料水などの備付け等を行うこと。

2 作業管理

(1) 作業時間の短縮等

作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮すること、身体作業強度(代謝率レベル)が高い作業を避けること、作業場所を変更すること等の熱中症予防対策を、作業の状況等に応じて実施するよう努めること。

(2) 暑熱順化

高温多湿作業場所において労働者を作業に従事させる場合には、暑熱順化(熱に慣れ当該環境に適応すること)の有無が、熱中症の発症リスクに大きく影響することを踏まえ、計画的に、暑熱順化期間を設けることが望ましいこと。特に、梅雨から夏季になる時期において、気温等が急に上昇した高温多湿作業場所で作業を行う場合、新たに当該作業を行う場合、又は、長期間、当該作業場所での作業から離れ、その後再び当該作業を行う場合等においては、通常、労働者は暑熱順化していないことに留意が必要であること。

(3) 水分及び塩分の摂取

自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあること等に留意の上、自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を指導するとともに、労働者の水分及び塩分の摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視における確認等により、定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図ること。特に、加齢や疾患によって脱水状態であっても自覚症状に乏しい場合があることに留意すること。

なお、塩分等の摂取が制限される疾患を有する労働者については、主治医、産業医等に相談させること。

(4) 服装等

熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。また、これらの機能を持つ身体を冷却する服の着用も望ましいこと。

なお、直射日光下では通気性の良い帽子等を着用させること。

(5) 作業中の巡視

定期的な水分及び塩分の摂取に係る確認を行うとともに、労働者の健康状態を確認し、熱中症を疑わせる兆候が表れた場合において速やかに作業の中断その他必要な措置を講ずること等を目的に、高温多湿作業場所での作業中は巡視を頻繁に行うこと。

(6) 連絡体制の整備

湿球黒球温度(WBGT)が28度以上又は気温が31度以上の場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業(以下5において単に「熱中症を生ずるおそれのある作業」という。)を行わせるときは、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第612条の2第1項に基づき、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状がある場合や、当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨を報告させるための体制を整備し、関係者に周知すること。

報告体制の整備については、作業者から電話等による報告を受けることや(5)の巡視のほか、2人以上の労働者が同時に作業を行うことにより互いの健康状態を確認させるバディ制の採用、ウェアラブルデバイスを用いた労働者の熱中症のリスク管理等があげられること。ただし、ウェアラブルデバイスによる管理については、必ずしも当該機器を着用した者の状態を正確に把握することができるわけではないため、他の方法と組み合わせること等により、リスク管理の精度を高めることが望ましいこと。

3 健康管理

(1) 健康診断結果に基づく対応等

労働安全衛生規則第43条、第44条及び第45条の規定に基づく健康診断の項目には、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全等の熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患と密接に関係した血糖検査、尿検査、血圧の測定、既往歴の調査等が含まれていること及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の4及び第66条の5の規定に基づき、異常所見があると診断された場合には医師等の意見を聴き、当該意見を勘案して、必要があると認めるときは、事業者は、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずることが義務付けられていることに留意の上、これらの徹底を図ること。

また、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患の治療中等の労働者については、事業者は、高温多湿作業場所における作業の可否、当該作業を行う場合の留意事項等について産業医、主治医等の意見を勘案して、必要に応じて、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずること。

(2) 日常の健康管理等

高温多湿作業場所で作業を行う労働者については、睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることに留意の上、日常の健康管理について指導を行うとともに、必要に応じ健康相談を行うこと。これを含め、労働安全衛生法第69条の規定に基づき健康の保持増進のための措置を講ずるよう努めること。

さらに、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患の治療中等である場合は、熱中症を予防するための対応が必要であることを労働者に対して教示するとともに、労働者が主治医等から熱中症を予防するための対応が必要とされた場合又は労働者が熱中症を予防するための対応が必要となる可能性があると判断した場合は、事業者に申し出るよう指導すること。

(3) 労働者の健康状態の確認

作業開始前に労働者の健康状態を確認すること。

作業中は巡視を頻繁に行い、声をかける等して労働者の健康状態を確認すること。

また、複数の労働者による作業においては、労働者にお互いの健康状態について留意させること。

(4) 身体の状況の確認

休憩場所等に体温計、体重計等を備え、必要に応じて、体温、体重その他の身体の状況を確認できるようにすることが望ましいこと。

4 労働衛生教育

労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、適切な作業管理、労働者自身による健康管理等が重要であることから、作業を管理する者及び労働者に対して、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行うこと。

(1) 熱中症の症状

(2) 熱中症の予防方法

(3) 緊急時の救急処置

(4) 熱中症の事例

なお、(2)の事項には、1から4までの熱中症予防対策が含まれること。

5 救急処置

熱中症を生ずるおそれのある作業を行わせるときは、労働安全衛生規則第612条の2第2項に基づき、熱中症の悪化の防止に必要な以下の措置の内容及びその実施手順をあらかじめ定め、関係者へ周知しなければならないこと。

(1) 緊急連絡網の作成及び周知

労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、労働者の熱中症の発症に備え、あらかじめ、病院、診療所等の所在地及び連絡先を把握するとともに、緊急連絡網を作成し、関係者に周知すること。

(2) 救急措置

熱中症を疑わせる症状が現われた場合は、救急処置として涼しい場所で身体を冷やし、水分及び塩分の摂取等を行うこと。また、必要に応じ、救急隊を要請し、又は医師の診察を受けさせること。

(解説)

本解説は、職場における熱中症予防対策を推進する上での留意事項を解説したものである。

1 熱中症について

熱中症は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウム等)のバランスが崩れる、体温の調整機能が破綻する等して、発症する障害の総称であり、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温等の症状が現れる。

2 WBGT値(暑さ指数)の活用について

(1) WBGT値の測定方法等は、日本産業規格JIS Z 8504を参考にすること。

(2) 日射及び発熱体がなく、かつ、温度と湿度が一様な、気流の弱い室内作業環境であって、WBGT指数計等によるWBGT値の実測が行われていない場合には、日本生気象学会が作成した「日常生活における熱中症予防指針」における「図3.室内を対象とした気温と相対湿度からWBGTを簡易的に推定する図(室内用のWBGT簡易推定図)」等が熱ストレス評価を行う際の参考になること。

3 作業管理について

(1) 暑熱順化の例としては、次に掲げる事項等があること。

ア 作業を行う者が暑熱順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすること。

イ 熱へのばく露が中断すると4日後には暑熱順化の顕著な喪失が始まり3~4週間後には完全に失われること。

(2) 作業中における定期的な水分及び塩分の摂取については、身体作業強度等に応じて必要な摂取量等は異なるが、作業場所のWBGT値がWBGT基準値を超える場合には、少なくとも、0.1~0.2%の食塩水、ナトリウム40~80mg/100mlのスポーツドリンク又は経口補水液等を、20~30分ごとにカップ1~2杯程度を摂取することが望ましいこと。

4 健康管理について

(1) 糖尿病については、血糖値が高い場合に尿に糖が漏れ出すことにより尿で失う水分が増加し脱水状態を生じやすくなること、高血圧症及び心疾患については、水分及び塩分を尿中に出す作用のある薬を内服する場合に脱水状態を生じやすくなること、腎不全については、塩分摂取を制限される場合に塩分不足になりやすいこと、精神・神経関係の疾患については、自律神経に影響のある薬(パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等)を内服する場合に発汗及び体温調整が阻害されやすくなること、広範囲の皮膚疾患については、発汗が不十分となる場合があること等から、これらの疾患等については熱中症の発症に影響を与えるおそれがあること。

(2) 感冒等による発熱、下痢等による脱水等は、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあること。また、皮下脂肪の厚い者も熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、留意が必要であること。

(3) 心機能が正常な労働者については1分間の心拍数が数分間継続して180から年齢を引いた値を超える場合、作業強度のピークの1分後の心拍数が120を超える場合、休憩中等の体温が作業開始前の体温に戻らない場合、作業開始前より1.5%を超えて体重が減少している場合、急激で激しい疲労感、悪心、めまい、意識喪失等の症状が発現した場合等は、熱へのばく露を止めることが必要とされている兆候であること。

5 救急処置について

熱中症を疑わせる具体的な症状については表2の「熱中症の症状と分類」を、具体的な救急処置については図1及び図2の「熱中症の救急処置(現場での応急処置)」を参考に事業場の実態に即したものとすること。

表1―1 身体作業強度等に応じたWBGT基準値

区分

身体作業強度(代謝率レベル)の例

WBGT基準値

暑熱順化者のWBGT基準値℃

暑熱非順化者のWBGT基準値℃

0 安静

安静、楽な座位

33

32

1 低代謝率

軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記);手及び腕の作業(小さいペンチツール、点検、組立て又は軽い材料の区分け);腕及び脚の作業(通常の状態での乗り物の運転、フットスイッチ及びペダルの操作)。立位でドリル作業(小さい部品);フライス盤(小さい部品);コイル巻き;小さい電機子巻き;小さい力で駆動する機械;2.5km/h以下での平たん(坦)な場所での歩き。

30

29

2 中程度代謝率

継続的な手及び腕の作業[くぎ(釘)打ち、盛土];腕及び脚の作業(トラックのオフロード運転、トラクター及び建設車両);腕と胴体の作業(空気圧ハンマーでの作業、トラクター組立て、しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、草むしり、除草、果物及び野菜の収穫);軽量な荷車及び手押し車を押したり引いたりする;2.5km/h~5.5km/hでの平たんな場所での歩き;鍛造

28

26

3 高代謝率

強度の腕及び胴体の作業;重量物の運搬;ショベル作業;ハンマー作業;のこぎり作業;硬い木へのかんな掛け又はのみ作業;草刈り;掘る;5.5km/h~7km/hでの平たんな場所での歩き。

重量物の荷車及び手押し車を押したり引いたりする;鋳物を削る;コンクリートブロックを積む。

26

23

4 極高代謝率

最大速度の速さでのとても激しい活動;おの(斧)を振るう;激しくシャベルを使ったり掘ったりする;階段を昇る;平たんな場所で走る;7km/h以上で平たんな場所を歩く。

25

20

注1 日本産業規格JIS Z 8504(熱環境の人間工学―WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価―暑熱環境)附属書A「WBGT熱ストレス指数の基準値」を基に、同表に示す代謝率レベルを具体的な例に置き換えて作成したもの。

注2 暑熱順化者とは、「評価期間の少なくとも1週間以前から同様の全労働期間、高温作業条件(又は類似若しくはそれ以上の極端な条件)にばく露された人」をいう。

表1―2 衣類の組合せによりWBGT値に加えるべき着衣補正値(℃―WBGT)

組合せ

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WBGT値に加えるべき着衣補正値(℃―WBGT)

作業服

織物製作業服で、基準となる組合せ着衣である。

0

つなぎ服

表面加工された綿を含む織物製

0

単層のポリオレフィン不織布製つなぎ服

ポリエチレンから特殊な方法で製造される布地

2

単層のSMS不織布製のつなぎ服

SMSはポリプロピレンから不織布を製造する汎用的な手法である。

0

織物の衣服を二重に着用した場合

通常、作業服の上につなぎ服を着た状態。

3

つなぎ服の上に長袖ロング丈の不透湿性エプロンを着用した場合

巻付型エプロンの形状は化学薬剤の漏れから身体の前面及び側面を保護するように設計されている。

4

フードなしの単層の不透湿つなぎ服

実際の効果は環境湿度に影響され、多くの場合、影響はもっと小さくなる。

10

フードつき単層の不透湿つなぎ服

実際の効果は環境湿度に影響され、多くの場合、影響はもっと小さくなる。

11

服の上に着たフードなし不透湿性のつなぎ服

12

フード

着衣組合せの種類やフードの素材を問わず、フード付きの着衣を着用する場合。フードなしの組合せ着衣の着衣補正値に加算される。

+1

注記1 透湿抵抗が高い衣服では、相対湿度に依存する。着衣補正値は起こりうる最も高い値を示す。

注記2 SMSはスパンボンド―メルトブローン―スパンボンドの3層構造からなる不織布である。

注記3 ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ならびにその共重合体などの総称である。

表2 熱中症の症状と分類

図1:熱中症による健康障害発生時の対応計画

図2:熱中症による健康障害発生時の対応計画

[別紙2]

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