添付一覧
○ベランタマブ マホドチン(遺伝子組換え)製剤の使用にあたっての留意事項について
(令和7年5月19日)
(/医薬薬審発0519第2号/医薬安発0519第1号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長・厚生労働省医薬局医薬安全対策課長通知)
(公印省略)
ベランタマブ マホドチン(遺伝子組換え)製剤(販売名:ブーレンレップ点滴静注用100mg、以下「本剤」という。)については、本日、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を「効能又は効果」として、承認されたところです。
本剤は視力低下等の眼障害が高頻度に認められることから、その使用にあたっては、特に下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関に対する周知をお願いします。
なお、本通知の写しについて、別記の関係団体宛てに連絡するので、念のため申し添えます。
記
1.本剤の適正使用について
(1) 本剤については、以下の条件が付されている。
【承認条件】(電子化された添付文書抜粋)
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
(2) 眼障害に関する「警告」、「用法及び用量に関連する注意」、「重要な基本的注意」、「特定の背景を有する患者に関する注意」は以下のとおりであるので、特段の留意をお願いしたい。なお、その他の使用上の注意については、電子化された添付文書を参照されたい。
【警告】(電子化された添付文書抜粋)
・本剤の投与は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例のみに行うこと。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。
・視力低下等の眼障害が高頻度に認められている。点状表層角膜症等があらわれ、角膜潰瘍等、重篤な眼障害へ進行した症例が報告されている。眼科医との連携の下で使用し、本剤の投与開始前に眼科医による診察を実施すること。また、本剤の投与開始前も含め本剤の初回から4回目までの各投与前は必ず、その後の投与期間中は必要に応じて、眼科医による視力検査及び細隙灯顕微鏡検査を含む眼科検査を実施し、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うとともに、眼科医による評価を行うこと。
【用法及び用量に関連する注意】(電子化された添付文書抜粋)
・本剤と併用する抗悪性腫瘍剤の投与に際しては、「臨床成績」の項の内容を熟知し、投与すること。
・ボルテゾミブ及びデキサメタゾン併用投与の場合、併用投与終了後も本剤単独投与を継続すること。
・本剤の投与により副作用が発現した場合には、下表を参考に、本剤を休薬・減量・中止すること。
表1 減量する場合の投与量
減量段階 |
ボルテゾミブ及びデキサメタゾン併用投与 |
ポマリドミド及びデキサメタゾン併用投与 |
通常投与量 |
2.5mg/kgを3週間間隔で投与する。 |
初回は2.5mg/kg、2回目以降は1.9mg/kgを4週間間隔で投与する。 |
1段階減量 |
1.9mg/kgを3週間間隔で投与する。 |
1.9mg/kgを8週間間隔で投与する。 |
2段階減量 |
非該当 |
1.4mg/kgを8週間間隔で投与する。 |
表2 副作用に対する休薬、減量及び中止基準
副作用 |
重症度注1) |
処置 |
角膜検査所見及び視力変化注2) |
Grade 1: 角膜検査所見 軽度注3)の点状表層角膜症(症状の有無にかかわらずベースラインから悪化した場合) 最高矯正視力の変化 表3のGrade 1を参照 |
投与を継続する。 |
Grade 2: 角膜検査所見 中等度注3)の点状表層角膜症、斑点状小嚢胞様沈着、周辺部上皮下混濁、又は新たな周辺部角膜実質混濁 最高矯正視力の変化 表3のGrade 2を参照 |
角膜検査所見及び最高矯正視力の両方がGrade 1以下に回復するまで休薬し、回復後、1段階減量し投与を再開する注4)。 |
|
Grade 3: 角膜検査所見 重度注3)の点状表層角膜症、びまん性小嚢胞様沈着(角膜中心部を含む)、中心部の上皮下混濁又は新たな中心部実質混濁 最高矯正視力の変化 表3のGrade 3を参照 |
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Grade 4: 角膜検査所見角膜上皮欠損 最高矯正視力の変化 表3のGrade 4を参照 |
投与中止を考慮する。 投与を継続する場合注5)には、角膜検査所見及び最高矯正視力の両方がGrade 1以下に回復するまで休薬する。 ・ ボルテゾミブ及びデキサメタゾン併用投与の場合には、回復後、1段階減量し投与を再開できる。 ・ ポマリドミド及びデキサメタゾン併用投与の場合には、回復後、2段階減量し投与を再開できる。 適切な処置を行った後、回復せず症状が悪化する場合は、投与を中止する。 |
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血小板減少 |
Grade 3 |
出血を伴わない場合: ・ 2.5mg/kgの場合、1.9mg/kgに減量し投与を継続する注6)。 ・ 1.9mg/kg以下の用量の場合、同じ用量で投与を継続する注6)。 出血を伴う場合: ・ Grade 2以下に回復するまで休薬する。 ・ 2.5mg/kgの場合、回復後、1.9mg/kgで投与を再開する。 ・ 1.9mg/kg以下の用量の場合、回復後、休薬前の用量で投与を再開する。 |
Grade 4 |
Grade 3以下に回復するまで休薬し、回復後出血を伴わない場合にのみ、投与の再開を考慮する: ・ 2.5mg/kgの場合、1.9mg/kgで投与を再開する。 ・ 1.9mg/kg以下の用量の場合、休薬前の用量で投与を再開する。 ・ 血小板数減少が多発性骨髄腫に関連すると考えられ、出血を伴っておらず輸血により25,000/μLまで回復する場合、休薬前の用量で投与を再開できる。 |
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Infusion reaction |
Grade 2 |
投与を中断し、適切な処置を行う。症状がGrade 1以下に回復した後、症状発現時の半分以下の投与速度で投与を再開する。 投与再開時及び次回以降の投与時には、予防薬の投与を考慮すること。 |
Grade 3 |
投与を中断し、適切な処置を行う。症状がGrade 1以下に回復した後、症状発現時の1/4~1/8の投与速度で投与を再開する。 投与再開時には、予防薬の投与を考慮すること。 次回以降の投与時には予防薬の投与を行うこと。 |
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Grade 4 |
投与を中止する。 |
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その他の副作用 |
Grade 3 |
Grade 1以下に回復するまで休薬する。 ・ 2.5mg/kgの場合、回復後、1.9mg/kgで投与を再開する。 ・ 1.9mg/kg以下の用量の場合、回復後、休薬前の用量で投与を再開する。 |
Grade 4 |
投与中止を考慮する。投与を継続する場合には、Grade 1以下に回復するまで休薬する。 ・ 2.5mg/kgの場合、回復後、1.9mg/kgで投与を再開する。 ・ 1.9mg/kg以下の用量の場合、回復後、休薬前の用量で投与を再開する。 |
注1) 角膜検査所見及び視力変化以外の副作用は、GradeはCTCAE Version 5.0に準じる。
注2) 左右の眼で検査結果が異なることがあるため、左右の眼の最も重症度の高い角膜検査所見又は視力変化に基づき重症度を判定すること。
注3) 点状表層角膜症の重症度の判定については、製造販売業者が提供する関連資材等を参照すること。
注4) ポマリドミド及びデキサメタゾン併用投与について、2回目の投与前に副作用が発現した場合には、2回目以降は1.9mg/kgを4週間間隔で投与する。
注5) 継続の必要性は、患者の状態を踏まえ、慎重に判断すること。また、継続後の眼科管理を適切に実施すること。
注6) ボルテゾミブ及びデキサメタゾン併用投与については、血小板数減少がGrade 2以下に回復した場合、通常投与量に戻すことができる。
表3 眼障害による最高矯正視力の変化の重症度
ベースラインの最高矯正視力 |
Grade 1 |
Grade 2 |
Grade 3 |
Grade 4 |
1.5 |
1.2 |
0.8~1.0 |
0.1~0.7 |
0.1未満 |
1.2 |
1.0 |
0.6~0.9 |
0.1~0.5 |
0.1未満 |
1.0 |
0.8~0.9 |
0.5~0.7 |
0.1~0.4 |
0.1未満 |
0.9 |
0.6~0.8 |
0.4~0.5 |
0.1~0.3 |
0.1未満 |
0.8 |
0.6~0.7 |
0.4~0.5 |
0.1~0.3 |
0.1未満 |
0.7 |
0.5~0.6 |
0.3~0.4 |
0.1~0.2 |
0.1未満 |
0.6 |
0.5 |
0.3~0.4 |
0.1~0.2 |
0.1未満 |
0.5 |
0.4 |
0.3 |
0.1~0.2 |
0.1未満 |
0.4 |
0.3 |
0.2 |
0.1 |
0.1未満 |
0.3 |
― |
0.2 |
0.1 |
0.1未満 |
0.2 |
― |
0.1 |
― |
0.1未満 |
・本剤の初回投与から4回目までは必ず、その後は必要に応じて本剤の各投与前に眼科検査結果(角膜検査所見及び視力変化)を確認し、眼症状も踏まえて、重症度の判定及び用量の決定を行うこと。左右の眼で検査結果が異なることがあるため、左右の眼の最も重症度の高い角膜検査所見又は視力変化に基づき重症度を判定すること。視力変化が認められた場合は、本剤投与との関連性を明らかにすること。角膜検査所見及び視力変化により本剤の減量を行った場合は、再度増量しないこと。
【重要な基本的注意】(電子化された添付文書抜粋)
・眼障害があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、以下の事項に注意すること。
・本剤の投与開始前に眼科医による診察を実施すること。本剤の初回から4回目までの各投与前は必ず、その後の投与期間中は必要に応じて、眼科医による視力検査及び細隙灯顕微鏡検査を含む眼科検査を実施し、患者の状態を十分に観察すること。2回目の投与から休薬又は減量を要する場合や、長期の休薬を要する場合があるため、「7.用法及び用量に関連する注意」の項を参考に対処すること。
・眼の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導し、眼科医による評価を行うこと。
・ドライアイ等の眼症状を軽減するため、本剤投与中は防腐剤を含まない人工涙液を1日4回以上投与するよう患者を指導すること。
・本剤投与中はコンタクトレンズの装着を避けるよう患者を指導すること。
・本剤の投与により視力低下につながる霧視等の眼障害が高頻度に認められているため、自動車の運転や機械の操作等を行う際に注意するよう患者を指導すること。
【特定の背景を有する患者に関する注意】(電子化された添付文書抜粋)
・合併症・既往歴等のある患者
・角膜上皮疾患(軽度の点状角膜症を除く)を合併している患者
・眼障害の発現又は増悪リスクが高まるおそれがある。なお、臨床試験において、当該患者は除外された。
【重大な副作用】(電子化された添付文書抜粋)
・眼障害
・視力低下(90.2%)、角膜検査所見(角膜症等)(86.6%)、霧視(69.2%)、羞明(43.8%)、視力障害(11.5%)、角膜潰瘍(1.2%)等があらわれることがある。特に、角膜上皮欠損や角膜潰瘍(感染性角膜炎及び潰瘍性角膜炎を含む)が疑われる眼症状があらわれた場合には、速やかに患者を眼科に受診させ、適切な処置を行うこと。
別記
公益社団法人 日本医師会
一般社団法人 日本癌治療学会
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
一般社団法人 日本血液学会
公益社団法人 日本薬剤師会
一般社団法人 日本病院薬剤師会
グラクソ・スミスクライン株式会社
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
各地方厚生局