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○生活保護法第27条の3第1項に規定する調整会議の組織及び運営について

(令和7年3月31日)

(社援保発0331第1号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市生活保護制度主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長通知)

(公印省略)

今般、生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第21号。以下「改正法」という。)による改正後の生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第27条の3において、地域における福祉、就労、教育、住宅その他の被保護者に対する支援に関する業務を行う関係機関など、被保護者に対する支援に関係する者として保護の実施機関が認めたものにより構成される会議の組織について規定され、令和7年4月1日に施行することとされたところである。

ついては、調整会議の組織及び運営に係る留意点等について、下記のとおりまとめたので、十分御了知の上、関係者に周知を図るとともに、その運用に遺漏なきようお願いする。

なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定による技術的助言として行うものであることを申し添える。

1 調整会議の趣旨・概要

(1) 趣旨・概要

保護の実施機関においては、生活保護法に基づき、被保護者の最低限度の生活保障と自立助長に向けた相談援助や自立支援を担っており、関係機関との連携を図りつつ、個々の被保護者の課題に応じてより適切な支援が行われるよう総合調整(コーディネート)する役割も担っている。

特に、多様で複雑な課題を抱える被保護者に対しては、個別の課題に応じた専門的な支援を行う必要があるところ、個々のケースワーカーが問題を抱え込むことなく、他法他施策や関係機関と円滑に連携し、適切に役割分担を図りながら支援に取り組むことが不可欠である。

このような連携を強化していくためには、保護の実施機関と関係機関との間で、双方の役割を確認し、情報共有を適切に行いつつ、支援に取り組めるような環境を整えることが重要である。

こうした考え方の下、法第27条の3第1項において、保護の実施機関は、地域における福祉、就労、教育、住宅その他の被保護者に対する支援に関する業務を行う関係機関、法の規定により各種事業(被保護者就労支援事業等)の委託を受けた者、被保護者に対する支援に関係する団体、当該支援に関係する職務に従事する者その他の被保護者に対する支援に関係する者として保護の実施機関が認めたものにより構成される会議(以下「調整会議」という。)を組織することができることとされたところである。

(2) 組織・運営に当たっての留意点

新たに法第27条の3が規定された主眼は、多様で複雑な課題を抱える被保護者を適切に支援することができるよう、保護の実施機関と調整会議を構成する関係機関(以下「構成機関」という。)との間で、いわば「顔の見える関係」を作り、連携を強化していくことにある。

個々の被保護者に対する支援に関しては、必ずしも「会議体」の開催にとらわれず、随時、当該被保護者の支援に当たり関係し得る構成機関との間で、当該被保護者の個人情報も含めて必要な情報共有を図り、支援について検討を進めるなど、緊密に連携していくことが重要である。

加えて、日頃から保護の実施機関と構成機関との間で互いの業務・状況を理解し、信頼関係を構築しておく観点から、例えば管内の被保護者の状況、各々の機関における事業・支援の実施状況や課題等に関して情報交換を行うような「会議体」を定期的に開催することも有効である。

なお、ケースワーカーにおいては、調整会議を組織した後も被保護者の課題を把握し、誰に対してどのような支援を行うべきかを整理しつつ、専門的支援を担う構成機関と調整するとともに、その後の状況を把握し、状況の変化に応じて適切な支援・サービスにつなげていくという、実質的なコーディネート機能を適切に果たしていく必要がある点に留意が必要である。

また、保護の実施機関が関係機関との間で既に連携強化に向けた取組を実施している場合においては、必ずしも本通知を踏まえた新たな取組を重ねて実施する必要はない。既存の取組について実施状況や課題を整理するとともに、必要に応じて本通知を踏まえた見直しを行うなど、より効果的な取組とする方向で検討いただきたい。

2 調整会議の組織について

(1) 調整会議の目的と所掌事項

ア 調整会議の目的

1(2)に記載のとおり、調整会議は、保護の実施機関と構成機関との間で、いわば「顔の見える関係」を作り、連携を強化していくことを大きな目的として組織するものである。

保護の実施機関においては、「会議体」の開催それ自体が目的化することのないよう留意するとともに、個々のケースワーカーや構成機関の業務負担等にも配慮しつつ、取組を進めることが重要である。

イ 調整会議の所掌事項

法第27条の3第2項において、調整会議は、被保護者に対する自立の助長を図るために必要な情報の交換を行うとともに、被保護者が地域において日常生活及び社会生活を営むのに必要な支援体制に関する検討を行うものとされている。

保護の実施機関においては、ケースワーカーが抱える課題、構成機関との連携状況など、様々な状況を踏まえ、調整会議の所掌事項について検討いただきたい。その際、調整会議を組織する当初の段階では、取り組みやすい内容から着手するとともに、調整会議を運営していく中で、連携強化の必要性を踏まえながら、必要に応じて所掌事項を見直していくといった視点も重要である。

調整会議の所掌事項としては、例えば以下のような内容が想定される。

(ア) 地域における被保護者の支援体制に関する検討

調整会議は、被保護者の支援に関連する取組について、保護の実施機関及び構成機関の相互で情報を交換するとともに、相互の連携体制や新たな課題への対策の検討など、地域における支援体制の強化に向けた検討を行う。

(イ) 個々の被保護者の支援・役割分担に関する検討

調整会議は、多様で複雑な課題を抱える被保護者など個々の被保護者について、支援の検討に必要な情報を共有するとともに、当該被保護者の支援や役割分担の検討を行う。

(ウ) その他調整会議の目的を達成するために必要と認められる事項

調整会議は、保護の実施機関と構成機関との連携強化に向け、保護の実施機関と構成機関との間で協議を行いつつ、必要な取組を行う。

(2) 調整会議の構成機関

調整会議の構成機関としては、自治体の関係部局、法の規定により各種事業の委託を受けた者、福祉施設等、各種相談機関など、例えば以下のような機関が想定される。

保護の実施機関においては、地域の実情に応じて、ケースワーカーにおいて支援が困難と認識している事例や連携強化を希望する関係機関など、様々な状況を踏まえ、構成機関を検討いただきたい。その際、調整会議を組織する当初の段階から、必ずしも多数の関係機関を構成機関とする必要はなく、調整会議を運営していく中で、連携強化の必要性を踏まえながら構成機関を見直していくといった視点も重要である。

【構成機関として想定される機関(一例)】

・自治体の関係部局(高齢者福祉、障害者福祉、精神保健福祉、保健所、児童福祉、保健・健康増進、雇用、住宅、教育等)

・法の規定により各種事業(被保護者就労支援事業、被保護者健康管理支援事業、子どもの進路選択支援事業、被保護者就労準備支援事業、被保護者家計改善支援事業、被保護者地域居住支援事業)の委託を受けた者

・福祉施設等(救護施設等の保護施設、日常生活支援住居施設、女性自立支援施設等)

・各種相談機関等(生活困窮者自立相談支援機関、包括的相談支援事業の実施機関、地域包括支援センター、基幹相談支援センター、精神保健福祉センター、児童相談所、公共職業安定所、障害者就業・生活支援センター、女性相談支援センター、地域生活定着支援センター等)

・その他、被保護者に対する支援に関係する機関等(社会福祉協議会、社会福祉法人、居住支援法人、民生委員・児童委員、介護サービス事業者、障害福祉サービス事業者、精神科医療機関、学校など)

(3) 調整会議に係る要綱の作成等

法第27条の3第7項において、調整会議の組織及び運営に関し必要な事項は、調整会議が定めることとされている。

このため、調整会議の事務局(保護の実施機関)においては、調整会議の組織に先立って、調整会議の目的や所掌事項等の基本的事項について、要綱として文書化しておくことが適当である。要綱の内容は、地域の実情に応じて作成することとして差し支えない。(要綱の例は、別添を参照)

なお、調整会議の事務局(保護の実施機関)においては、関係機関に対し、調整会議の構成機関となることを依頼する際、要綱の内容(調整会議の目的や所掌事項等)や守秘義務、情報の安全管理、個人情報の取扱いについて、あらかじめ説明しておくことが適当である。(4、5参照)

3 調整会議の運営方法について

2(1)アに記載のとおり、調整会議は、保護の実施機関と関係機関との間で、いわば「顔の見える関係」を作り、連携を強化していくことを大きな目的として組織するものであり、保護の実施機関においては、「会議体」の開催それ自体が目的化することのないよう留意するとともに、保護の実施機関や関係機関の業務負担等にも配慮しつつ、取組を進めることが重要である。

保護の実施機関においては、地域の実情に応じて、ケースワーカーにおいて支援が困難と認識している事例や連携強化を希望する構成機関、構成機関との連携状況など、様々な状況を踏まえつつ、まずは取り組みやすい内容や開催頻度を検討し、具体的な取組に着手いただきたい。

調整会議の運営方法としては、例えば以下のような方法が想定される。

(1) 個々の被保護者の支援・役割分担に関する検討

1(2)に記載のとおり、個々の被保護者に対する支援に関しては、必ずしも「会議体」の開催にとらわれることなく、随時、当該被保護者の支援に当たり関係し得る構成機関との間で、当該被保護者の個人情報も含めて必要な情報共有を図り、支援内容について検討を進めるなど、緊密に連携していくことが重要である。

この場合、検討の対象となる被保護者(以下「対象者」という。)について、保護の実施機関において構成機関との連携による支援が必要であると判断した上で、関係し得る構成機関に連携・検討を呼びかけることとなる。その際、個人情報の共有範囲や共有内容は構成機関の中でも必要最小限の範囲内とすべきであること(5(2)参照)等を踏まえ、連携・検討の場への参加を呼びかける必要がある。

また、構成機関においては、当該連携・検討の場において対象者の個人情報を共有する場合には、対象者に対し、あらかじめ、関係し得る構成機関との間で支援の検討に必要な情報を共有する旨、その必要性も含めて丁寧に説明し、同意を得る必要がある。なお、保護開始時等において、他の支援機関に対する情報共有について、対象者から包括的な同意を得ている場合はこの限りでない。また、対象者から同意が得られない場合の取扱いについては、5において整理しているので参照いただきたい。

当該連携・検討の場において検討した支援・役割分担については、複数機関で役割分担しつつ継続的に取り組んでいくこととなるため、明確化の観点から、例えば、支援の目的、役割分担、評価の時期・方法等を記載した支援計画として整理しておくことも考えられる。

また、保護の実施機関においては、当該会議の状況や参集者に共有した対象者の情報等をケース記録等に記録するとともに、当該会議の状況について保護の実施機関内で適切に共有を図り、当該状況を踏まえ、援助方針の見直しの要否に関する検討やケース診断会議への報告を行うなど、適切に対応を行う必要がある。

(2) 定期的な会議体の開催

1(2)に記載のとおり、保護の実施機関と構成機関との連携を強化するためには、日頃から互いの業務・状況を理解し信頼関係を構築しておく観点から、例えば管内の被保護者の状況、各々の機関における事業・支援の実施状況や課題等に関して情報交換を行うような会議体を定期的に開催することも有効と考えられる。

その際、「会議体」の開催それ自体が目的化することのないよう留意するとともに、保護の実施機関や構成機関の業務負担等にも配慮する必要がある。

また、3(3)イに記載のとおり、既に様々な会議体が開催されている際には、他の会議(又はその議事の一部)を調整会議としても活用すること、調整会議と他の会議との合同開催とすること等の運用も効果的・効率的であると考えられる。

さらに、参集者から共有された情報をもとに、相互の連携体制や新たな課題への対策の検討など、地域における支援体制の強化に向けた検討を行うこと、多くの構成機関により組織する場合や、テーマが多岐にわたる場合には、テーマごとに部会を設けるといった工夫も考えられる。

なお、当該会議体において、2(1)に記載する内容(個々の被保護者の支援・役割分担)に関する検討を行うこともあり得る。その際は、個人情報の共有範囲や共有内容は構成機関の中でも必要最小限の範囲内とすべきであること(5(2)参照)等を踏まえ、会議体の参集者が共有範囲として適切であるかどうか確認の上、必要に応じて途中から参集者を絞るといった対応を検討することも重要である。

(3) 他の会議体との関係

ア ケース診断会議

保護の実施機関においては、援助困難ケースに対する援助方針の策定、法第63条の一部返還免除、法第78条の適用、新規開始及び廃止決定等に関し、所長等を含めた組織的な検討・判断を行うため、ケース診断会議が開催されている。

ケース診断会議は、主に保護の実施機関内の検討・判断のために開催する会議である一方、調整会議は、保護の実施機関と構成機関との連携強化に向けて開催する会議であり、基本的には目的を異にするものである。

なお、ケース診断会議において、援助困難ケースに対する援助方針について検討を行い、調整会議において関係機関との連携体制を確保するようつなげることや、調整会議において個別の被保護者の支援について検討を行い、その結果を踏まえてケース診断会議において援助方針を策定するといった連携が考えられる。

イ 地域の様々な会議体

法第27条の3第5項において、調整会議は、当該調整会議が組織されている自治体に、生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に規定する「支援会議」又は社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する「支援会議」が組織されているときは、被保護者に対する支援の円滑な実施のため、これらの会議と相互に連携を図るよう努めるものとされている。

地域には、調整会議、生活困窮者自立支援法に基づく支援会議、社会福祉法に基づく支援会議のほか、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づく要保護児童対策地域協議会、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づく地域ケア会議、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に基づく自立支援協議会など、様々な会議体が存在している。

調整会議と他の会議体との間で、構成機関の多くが共通している場合等においては、例えば、3(2)に記載する「定期的な会議体の開催」に当たり、他の会議体(又はその議事の一部)を調整会議としても活用すること、調整会議と他の会議との合同開催とすること等の運用も効果的・効率的であると考えられる。

なお、こうした運用に当たっては、各々の会議体の目的や役割に相違があること、個人情報の共有範囲は構成機関の中でも必要最小限の範囲内とすべきであること(5(2)参照)等を十分に理解した上で、適切な運営がなされるよう配慮する必要がある。

4 守秘義務について

(1) 守秘義務の趣旨

法第27条の3第6項において、調整会議の事務に従事する者又は従事していた者は、正当な理由がなく、調整会議の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないとされており、これに違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処することとされている(法第85条の2)。

1(2)に記載のとおり、個々の被保護者に対する支援に際し、保護の実施機関と構成機関との間では、当該被保護者の個人情報も含めて必要な情報共有を図り、支援について検討を進めることが重要である。他方で、個人情報を含めた機密性の高い情報が漏洩した場合、被保護者にとって重大な不利益になり得る。

法第27条の3第6項の守秘義務に係る規定は、こうした情報共有が、必要に応じて適正に実施されるよう規定されたものである。

調整会議が、保護の実施機関と構成機関との連携強化という目的を達成するためには、全ての構成機関において、守秘義務の趣旨やルールを十分に理解し、遵守することが不可欠である。調整会議の事務局(保護の実施機関)においては、調整会議の構成機関となることを依頼する際、守秘義務の内容についてあらかじめ説明しておくことが適当である(2(3)参照)。

なお、法第27条の3第6項の「正当な理由」については、調整会議の適正な運営という観点から、調整会議の事務局(保護の実施機関)においてその判断がなされるものと考えるが、一般的には、構成機関による情報提供が、例えば、公営住宅法(昭和26年法律第193号)第34条など他の法令に基づき実施されている場合や、被保護者の生命、身体、財産の保護のために必要がある場合が考えられる。

(2) 情報の安全管理

調整会議で共有された情報の漏洩が生じないよう、調整会議の事務局(保護の実施機関)はもとより、全ての構成機関においても情報管理を確実に行う必要がある。例えば、調整会議で配布された個人情報が記載された書類は、会議終了後その場で廃棄することを原則とするか、あるいは施錠可能な場所で保管し必要な場合に限り取り出して利用するなど、適切な方法により管理することが求められる。

また、調整会議の事務局(保護の実施機関)においては、構成機関の秘密保持義務と情報管理方法を書面化し、構成機関への周知徹底を図るとともに、情報の漏洩等が疑われる場合等には適切な措置を講ずる必要がある。

5 個人情報について

個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」という。)は、「個人情報」の適正な取扱いに関し、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする法律である。

個人情報保護法において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できる情報をいう。これには、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものも含まれる。「個人データ」とは、こうした「個人情報」を容易に検索することができるように体系的にまとめた「個人情報データベース等」を構成する「個人情報」をいう。

個人情報取扱事業者(個人情報データベース等を事業の用に供している者であって国の機関、地方公共団体等を除く。「事業の用に供している」とは一定の目的をもって反復継続して遂行される同種の行為、社会通念上事業と認められるもので、営利、非営利を問わない。)は、あらかじめ本人(家族等に関する情報の場合は当該家族等の各人を含む。)の同意を得た場合、又は本人の同意を得ない場合であっても、個人情報保護法第27条第1項各号に規定する場合は、個人データを第三者に提供することができるとされている。

(1) 調整会議における個人情報の取扱い

調整会議において個人情報を活用することで、他の構成機関が当該被保護者に関して保有している情報と突合し、包括的に当該被保護者の状況を把握した上で、支援の要否や各構成機関の役割分担について検討できるという有用性がある一方、個人の権利利益の保護も重要であるため、個人情報保護法に則った個人情報の適正な取扱いが必要である。

(2) 調整会議が取り扱う個人情報の種類等

調整会議で取り扱う個人情報としては、被保護者の氏名、住所・居所、連絡先等の基礎的な情報のほか、家族の状況、勤務先、収入・支出の概況、就労や社会的な活動への参加の有無、利用しているサービス、精神的・身体的な疾患やそれをうかがわせる症状等が考えられるが、当該被保護者の日常生活自立、社会生活自立及び経済的自立を実現することを目標とした必要な支援を講じるために必要最小限の情報に限定することとする。

こうした情報の中には、被保護者の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、障害の有無、病院等における治療歴、本人を被疑者又は被告人として刑事事件に関する手続きが行われたこと等の要配慮個人情報が提供されることもあり、本人の自立の支援を図るための目的以外に利用された場合には、不当な差別や偏見その他の不利益が生じるおそれがあることから、情報漏えいのないよう留意する必要がある。

(3) 個人データの第三者提供について

調整会議において個人データを共有する場合は、被保護者の同意を得ることが原則である。一方、被保護者の同意が得られない場合であっても、以下アからウまでの全ての要件にあてはまる場合は、個人データの第三者提供制限の例外である個人情報保護法第27条第1項第1号の「法令に基づく場合」に該当するものとして整理している。

ア 本人が支援を求めることができないことに相当の理由があり、同意を得られない場合

例えば、本人に認知症や他の精神的な疾患、高次脳機能障害、知的・発達障害等をうかがわせる症状・兆候等があり(※1)、その認知機能に支障があることが疑われる場合等には、判断能力が不十分であると推察され、自身の状況を客観的に判断できず、本人同意を取得することが困難である可能性があるものと考えられる。この場合であっても、まずは相談窓口を紹介するなどして相談を勧奨することが望ましいが、速やかに介入しなければ生命・身体又は財産に危険が見込まれるような場合の状態であるにも関わらず、通常の判断能力を有する一般人が理解可能な合理的な理由なくこれを拒むような場合には、判断能力が不十分で同意取得が困難なものと考えられる。

また、個人情報の取扱いに関して同意したことによって生ずる結果について、未成年者が判断できる能力を有していないなどの場合は、親権者の同意が必要となるが、親権者が上記のような判断能力が不十分な状態にある場合には、同意を得ることが困難となる場合も考えられる。

このほか、本人が自宅等にひきこもっている場合等(※2)で、判断能力の有無を判断することすら困難であることにより、本人同意の取得が期待しがたいケースも想定される。

※1 必ずしも医師による疾患の確定診断、障害者手帳が交付されていることや成年後見等に関する審判の確定等がある場合でなくとも、その時点における本人の状態からこうした症状・兆候等があると、通常の判断能力を有する一般人が判断した場合も含まれる。

※2 例えば家に人の気配があり本人が在宅していることが明らかなタイミングに複数回訪問してチャイムを鳴らし接触を試みるが、いずれも反応がなく接触が難しい場合など。

イ 速やかに介入しなければ生命、身体又は財産に危険が見込まれるような場合

例えば、以下に掲げる場合であって、その状態が続くことで、本人、その家族又は近隣住民の生命、身体又は財産への危険が及ぶことが想定されるものと、およそ通常一般人の判断能力をもってすれば判断可能である場合である。

・自殺念慮、自傷行為又は他害行為を疑う言動や行動が見られるなど、自傷行為又は他害行為のおそれがある場合

・必要な受診や治療の拒否がある場合や、必要な介護・福祉サービスの利用拒否がある場合

・必要な食事をとることができないことにより健康を害している様子が見られる場合

・著しく不衛生な家屋に居住している場合や、衣類や身体の著しい不衛生の放置がみられる場合

・居住している住居等からの退去日や建物明渡しの強制執行の日が差し迫っているにもかかわらず、転居先が決まっていない場合

・電気・水道・ガス等の未払い又は滞納を原因として供給停止となっている又はその可能性が高い場合

・悪質な訪問販売や本人が望まないサービスの強要など不当な契約を締結させられている場合や、本人の金銭管理能力に課題があり、散財を繰り返すなどによって生活費が不足し生活が脅かされている場合

ウ 構成機関の間で情報共有する必要がある場合

例えば、被保護者の当該事案を把握した構成機関が、当該状況の改善に向けて当該構成機関のみで対応することでは生命・身体又は財産の危険に対処できない場合や、当該構成機関が有する情報だけでは対処方法を検討するために必要な情報が不足しており、他の構成機関の情報と突合する必要がある場合、被保護者に複合的な課題が生じており、複数の構成機関で対応することが必要である場合等であって、調整会議で協議することで生命・身体又は財産の保護に資することが見込まれる場合。

(4) その他

上記は構成機関が個人情報取扱事業者に該当する場合の記載であり、構成機関が行政機関等(個人情報保護法第2条第11項)に該当する場合は、個人情報取扱事業者とは異なる規定(個人情報保護法第5章)が適用されるものである。このほか、個人情報保護法に関する解説については、個人情報の保護に関する法律についての各種ガイドライン・Q&A等を参照すること。

URL https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/#anc_Guide

(別添)

○○○調整会議設置要綱(例)

(設置)

第○条 多様で複雑な課題を抱える被保護者を適切に支援していくため、生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第27条の3第1項の規定に基づき、○○調整会議(以下「調整会議」という。)を設置する。

(所掌事務)

第○条 調整会議は、次に掲げる事項を所掌する。

(1) 地域における被保護者の支援体制に関する検討

(2) 個々の被保護者の支援・役割分担に関する検討体制に関する検討

(3) その他調整会議の目的を達成するために必要と認められる事項

(組織)

第○条 調整会議は、別表に掲げる関係機関に属する者その他の被保護者の支援に関係する者として福祉事務所長が必要と認めるものをもって構成する(以下「構成機関」という。)。

(会長及び副会長)

第○条 調整会議に会長及び副会長を置く。

2 会長は、○○福祉事務所長とし、副会長は、○○福祉課長とする。

3 会長は、調整会議を代表し、会務を総理する。

4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。

(意見の聴取等)

第○条 会長は、第○条に掲げる事項を行うために必要があると認めるときは、構成機関に対し、被保護者に関する資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。

(守秘義務)

第○条 調整会議の事務に従事する者又は従事していた者は、正当な理由がなく、調整会議の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。(法第27条の3第6項、法第85条の2)

(庶務)

第○条 調整会議の庶務は、○○が処理する。

(雑則)

第○条 この要綱に定めるもののほか、調整会議の組織及び運営に関し必要な事項は、調整会議が定める。

附則 この要綱は、令和○年○月○日から施行する。

別表(構成機関)