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○「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」等の一部改正について

(令和7年3月31日)

(医薬薬審発0331第7号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)

(公印省略)

医療用医薬品の申請に際し添付すべき生物学的同等性に関する資料のうち、医療用後発医薬品の局所皮膚適用製剤の新規承認申請に係るものについては、「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」(平成18年11月24日付け薬食審査発第1124004号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)の別紙4「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」及び「局所皮膚適用製剤の剤形追加のための生物学的同等性試験ガイドラインについて」(平成18年11月24日付け薬食審査発第1124001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)の別添において示しているところです。

今般、「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」及び「局所皮膚適用製剤の剤形追加のための生物学的同等性試験ガイドライン」をそれぞれ改正し、別紙1、2のとおりとしましたので、貴管下関係事業者に対し周知方よろしくお願いいたします。

1 改正を行ったガイドライン

(1) 局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン

(2) 局所皮膚適用製剤の剤形追加のための生物学的同等性試験ガイドライン

2 適用時期

1に掲げるガイドラインについて、令和7年3月31日以降に行われる医療用後発医薬品の承認申請に適用すること。ただし、令和8年3月31日までに行われる医療用後発医薬品の承認申請については、なお、従前の例によることができること。

別紙1

(別添)

局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン

目次

第1章.緒言

第2章.用語

第3章.試験

Ⅰ.標準製剤と試験製剤

Ⅱ.生物学的同等性の許容域

Ⅲ.生物学的同等性試験

1.皮膚薬物動態学的試験

1) 予試験

2) 本試験

3) 統計処理

2.薬理学的試験

1) 蒼白化反応の測定

2) 製剤適用時間と蒼白化反応の観察継続時間

3) ステロイド応答性被験者の選択

4) 本試験

5) 統計処理

3.残存量試験

1) 予試験

2) 本試験

3) 統計処理

4.薬物動態学的試験

1) 製剤適用時間

2) 本試験

3) 統計処理

5.臨床試験

6.In vitro効力試験

7.動物試験

Ⅳ.曝露量試験

第4章.生物学的同等性試験結果の記載事項

付録1 モデル式をあてはめて角層全体に分布している薬物濃度を推定する方法

付録2 製剤適用時間をEmaxモデルに従って決定する方法

第1章.緒言

本ガイドラインは,令和2年3月19日薬生薬審発0319第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知(別紙1「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」)において対象とされる医薬品であり,かつ,適用されることにより有効成分が全身循環血流へ到達して治療効果を発揮することが期待されない局所の疾患に用いられる皮膚適用製剤(以後,局所皮膚適用製剤と略す)について,生物学的同等性試験の実施方法の原則を示したものである.

第2章.用語

本ガイドラインで使用する用語の意味を以下に示す.

バイオアベイラビリティ:未変化体又は活性代謝物が作用部位に到達する速度と量.

生物学的に同等な製剤:バイオアベイラビリティが同等である製剤.

治療学的に同等な製剤:治療効果が同等である製剤.

先発医薬品:新医薬品として承認を与えられた医薬品又はそれに準じる医薬品.

後発医薬品:先発医薬品と同一の有効成分を同一含量含む同一剤形の製剤であり,用法用量が同一である医薬品.局所皮膚適用製剤では,単位面積当たりの皮膚に適用される薬物量が同一である製剤を後発医薬品とする.シート状の製剤では,先発医薬品と面積が同一の製剤であり,液状又は半固形状の製剤では,単位質量当たりの含量が先発医薬品と同一の製剤である.軟膏剤,クリーム剤,ゲル剤,パップ剤,テープ剤,ローション剤,外用エアゾール剤,ポンプスプレー剤,外用散剤,リニメント剤は各々異なる剤形として取り扱う.

治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品:免疫抑制剤,作用強度の強いステロイド剤,レチノイド,抗がん剤,クロラムフェニコール等の作用が強い医薬品,その他の安全性確保の観点から治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品.

曝露量:全身循環血流に到達した薬物量.

第3章.試験

Ⅰ.標準製剤と試験製剤

原則として,先発医薬品の3ロットについて,in vitro放出試験を行い,中間の放出性を示すロットの製剤を標準製剤とする.In vitro放出試験には,製剤及び薬物の特性に応じて,パドルオーバーディスク法,拡散セル法など,先発医薬品のロット間における放出速度の差を適切に評価できる方法を用いる.試験は32±0.5℃で実施し,試験液には,水又は水-アルコール混液等を用いる.製剤と試験液を隔てる膜を用いる場合には,膜透過が律速とならない膜を用いる.繰り返し数は6以上とする.In vitro放出試験が不適切な場合には,それに代わる製剤の特性に応じた適当な物理化学的試験を行い,中間の特性を示したロットの製剤を標準製剤とする.

後発医薬品の試験製剤は,実生産ロットと同じスケールで製造された製剤であることが望ましいが,実生産ロットの1/10以上の大きさのロットの製剤でもよい.有効成分が溶解している均一な溶液製剤では,ロットの大きさはこれより小さくてもよい.なお,実生産ロットと生物学的同等性試験に用いるロットの製法は同じで,両者の品質及びバイオアベイラビリティは共に同等であるものとする.

標準製剤の含量又は力価はなるべく表示量に近いものを用いる.又,試験製剤と標準製剤の間の含量又は力価の差は表示量の5%以内であることが望ましい.

Ⅱ.生物学的同等性の許容域

生物学的同等性の許容域は,同等性評価パラメータが対数正規分布するとみなせる場合には,試験製剤と標準製剤のパラメータの母平均の比で表すとき,治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品では0.80~1.25,それ以外の医薬品では0.70~1.43である.同等性評価パラメータが正規分布するとみなせる場合には,試験製剤と標準製剤のパラメータの母平均の差を標準製剤の母平均に対する比として表すとき,治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品では-0.20~+0.20,それ以外の医薬品では-0.30~+0.30である.効力試験又は臨床試験で評価を行う場合には,医薬品の特性に応じて適切な許容域を設定する.

Ⅲ.生物学的同等性試験

本節では,局所皮膚適用製剤の代表的な生物学的同等性の評価方法として,1.皮膚薬物動態学的試験,2.薬理学的試験,3.残存量試験,4.薬物動態学的試験,5.臨床試験,6.in vitro効力試験,及び,7.動物試験を示す.局所皮膚適用製剤の生物学的同等性の評価に当たっては,薬物及び製剤の特性に応じて最適の試験法を採用する.上述する試験法以外で適切なものがあれば,それを採用しても差し支えない.

液状又は半固形状の製剤のうち,治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品においては,患者を対象に,薬理効果又は臨床効果を指標として,統計学的に同等性を評価する検証的な臨床試験を基本とする.ただし,標準製剤と添加剤の種類が同じで,添加剤の量と製剤学的な特性(粘度,エマルジョン構造,粒度分布,pH,密度等)が同等な試験製剤で,in vitro試験(放出試験及び透過試験)で同等である場合には,上記以外の特性が有効性・安全性に影響を与える可能性を考慮した上で,皮膚薬物動態学的試験により生物学的同等性を保証できる場合もある.治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品に該当しない液状又は半固形状の製剤においては,標準製剤と試験製剤間の剤形区分が同じで基剤の性状も同じ場合は,生物学的同等性の評価法として有効成分の特性に合わせて皮膚薬物動態学的試験を選択することができる.このとき同じ基剤の性状とは,油性,水性,乳剤性(W/O型,O/W型)などが同じであることをいう.標準製剤と試験製剤間の剤形区分が異なる場合,又は同じ剤形区分で基剤の性状が異なる場合には,生物学的同等性評価において,患者を対象に,薬理効果又は臨床効果を指標とした臨床試験の実施が必要である.

試験の実施方法,分析法,並びに,サンプル保存中及び分析操作中の薬物の安定性などについては,十分にバリデーションしておく.以下にヒト試験を行う際の一般的な留意事項を示す.

○ 臨床試験を除き,原則として,試験に適した健康な皮膚の状態にある志願者を被験者とする.試験に適した健康な皮膚の状態とは,一般的に,以下の状態を示す.

・湿疹・皮膚炎,色素異常等の皮膚疾患がないこと.

・傷,傷跡がないこと.

・日焼けによる炎症がないこと.

・アトピー性皮膚炎等の既往歴がないこと.

・薬物過敏症の既往歴がないこと.

・適用予定部位に何ら異常が認められないこと.

○ 製剤の適用部位は,背部,胸部,前腕部など適切な部位を選択する.

○ 試験開始前には,皮膚の物理的な損傷,もしくは界面活性剤や薬品などの化学的刺激による損傷は避ける.通常の環境を維持し,界面活性剤で洗浄を行った後は皮膚表面を常態に戻すために,充分な時間(通常2時間)放置する.

○ 用法に明示してある場合を除いて,製剤適用部位に密封型の覆いをしてはならない.試験に当たって,必要ならば製剤適用部位を非密封型の器具で保護してもよい.

○ 精確な測定が行えるように,用法用量の範囲で適切な薬物適用量,製剤適用時間,適用面積で試験を行う.生物学的同等性を評価するために最適の製剤適用時間は,薬物や製剤の特性及び試験法毎に異なるので,必要な場合には予試験を行って製剤適用時間を決定する.

生物学的同等性試験のために製剤を塗布又は貼付している時間を製剤適用時間と呼ぶ.製剤適用時間は,用法・用量に定めている,製剤を患部に塗布又は貼付している時間と必ずしも一致しないことがある.

○ 試験のばらつきを考慮して,例数を決める.ばらつきが大きいことが予想される場合には,同一製剤について,同一被験者内で複数の観察箇所(複数の製剤適用部位)を設け,平均値を求める方法も有効である.ばらつきの大きさを予測するために,以下の事項についても検討しておく.

・角層剥離や蒼白化反応の視覚的方法による判定などにおける測定者内,測定者間の再現性

・測定値の被験者間変動,被験者内の適用部位間の変動

・薬物抽出法や分析法によるばらつき

○ 適用部位による偏りの影響を排除するために,比較を行う組み合わせ(例えば,標準製剤と試験製剤,被験者選択用適用部位(後述)など)毎に,適用部位はランダムに割り付ける.

○ 薬物のバイオアベイラビリティは日内変動(サーカディアンリズム)の影響を受ける可能性があり,又,皮膚の状態は周囲の環境の影響を受けやすいので,一定の環境及び製剤適用条件で試験を行うようにする.

○ 局所皮膚適用製剤の試験は操作手順が複雑なので,製剤の適用方法,製剤適用時間終了時における製剤の除去法,試料の回収方法,薬理反応などの測定又は皮膚剥離などの手順,分析法の手順などについて,詳細な標準操作手順書(SOP)を作成しておく.

1.皮膚薬物動態学的試験

この試験は,定常状態において角層内に存在する薬物量から生物学的同等性を評価する方法である.皮膚に適用された製剤では,通常,薬物は製剤から適用部位の角層へ分布し,角層を通過した後に生きた表皮細胞層へ到達する.そのために,粘着性のテープで薬物適用部位の角層を剥がし,角層に存在する薬物を定量することにより,薬物の皮膚へのバイオアベイラビリティを評価することができる.本方法は,作用部位が角層内又は角層より深部にある薬物を含有する製剤に適用できる.1回の塗布で角層を傷つける薬物には,本方法は適さない.

1回の操作によって粘着テープで剥離される単位面積あたりの角層の量(層数)は,被験者内,被験者間,角層剥離操作者間で変動する.従って,剥離操作の回数を規定しても,被験者によって角層全体の厚さに対して剥離された角層の厚さ,すなわち,角層の回収率は異なり,これが,皮膚薬物動態学的試験により生物学的同等性を評価する上で検出力を低下させる大きな要因となる.薬物の回収量を回収した角層の質量で補正し平均角層内薬物濃度で評価することにより,あるいは付録1に示す方法で,回収された角層を角層の厚さLで規準化し角層全体の薬物濃度を計算することにより,検出力が上がる可能性もある.

液状又は半固形状の製剤において,皮膚薬物動態学的試験によって生物学的同等性を適切に評価し得るのは,原則として,試験製剤が標準製剤と同一の剤形区分であり,かつ基剤の性状が同じ場合である.基剤の性状の類似性については,油性,水性,乳剤性(W/O型,O/W型)などが一致していること等に基づき判断する.

試験の実施にあたっては,製剤の適用,ふき取り,角層剥離などの各手順を,試験製剤と標準製剤で同一の方法によって行う.更に,バイアスを排除するため,製剤の適用を実施する者と,ふき取り及び角層剥離を実施する者は別の者を充てることとし,製剤の適用に関する情報が,ふき取り及び角層剥離を実施する者に共有されないよう盲検化する.

1) 予試験

本試験に先立ち,次のような事項について,予め検討しておく.

a.十分な分析感度を得るために,適切な薬物適用量,製剤適用時間,適用面積及び皮膚剥離面積を決定する.液状又は半固形状の製剤を用いる場合,製剤の適用量は,原則として,固体(半固形)の場合は1~5mg/cm2,液体の場合は最高10μL/cm2までの範囲とする.

b.角層を剥離する部位の皮膚上に製剤が残存する場合は,適切に除去する方法(ふき取る等)を設定する.液状又は半固形状の製剤を用いる場合,除去方法の適切性は,適用直後に製剤を除去し,角層を剥離することで回収される薬物量(1回目及び2回目の操作によって剥離された角層試料中のものを含む)が,塗布した薬物量の10%未満であること等によって確認する.

c.粘着テープからの薬物の抽出法・分析法を確立し,それらのバリデーションを行う.

d.定常状態に達する時間を検討する.本試験における製剤適用時間は,角層中の薬物濃度が定常状態に達する時間又はそれより長い時間とする.

e.ばらつきに関する予試験の結果から,繰り返し数を決定する.繰り返しは,定常状態に達する時間を超える数時点(製剤適用時間は極端に大きく変化させない),又は,同一の製剤適用時間での数箇所のいずれでもよい.

f.付録1に従い,経表皮水分喪失量(TEWL)を測定してモデル式を用いて角層上に分布している薬物量を推定する場合には,TEWLの測定は被験者の状態や環境の影響を受けやすいので,測定条件を検討し,一定の条件で測定する.

2) 本試験

本試験の手順は以下のとおりである.被験者数及び被験者一人当たりの試験製剤及び標準製剤の適用部位数は,ばらつきに関する予試験の結果から決定する.

a.試験製剤1~数箇所,標準製剤1~数箇所を適切に割り付け,必要ならば測定の妨げとならないようにマークを付けておく.

b.試験及び標準製剤を適用する.

c.予め設定された時間に製剤を除去する.通常,2回分の操作によって剥離された角層試料は,単に薬物が付着した層であって吸収された層とは見なさず,生物学的同等性の評価については,3回目以降の操作によって剥離された角層試料中の薬物量をもとに行う.なお,液状又は半固形状の製剤を用いる場合には,皮膚上に残存している製剤を,1)予試験のbにて設定した適当な方法でふき取る.このとき,1回目及び2回目の2回分の操作によって剥離された角層試料についても破棄をせず,製剤のふき取りが適切に行われていることを確認する目的で,3回目以降の操作によって剥離された角層試料とは切り分けて分析する.

d.角層を粘着テープで剥離する.

モデル式によらない場合:

粘着テープを用いて角層を10回~20回の一定回数,又は,例えばTEWLが50g/m2hとなる時点まで剥離する.テープ剥離物は,同一の分析用回収容器に入れる.

付録1に示したモデル式を用いて角層内薬物濃度を推定する場合:

角層を予め質量を測定してある粘着テープで剥離する.粘着テープの質量を測定し,個別の分析用回収容器に入れる.上記の操作を20回繰り返すか,又は,角層が約80%除去される時点まで繰り返す.角層の厚さLを算出するために,製剤を適用していない部位の角層を1回又は2回剥離するたびにTEWLを測定する.

e.分析用回収容器内の薬物量を定量する.モデル式によらない場合には,角層からの薬物回収量あるいは平均角層内薬物濃度(薬物全回収量の実測値を回収した全角層の質量で除す)を求める.モデル式を用いて角層内薬物濃度を推定する場合には,付録1に示した式を用いて角層内薬物濃度を計算する.

f.同一被験者内で同一製剤について適用部位が複数存在する場合には,被験者ごとに各製剤の平均値を求め,それらを各被験者の測定値とする.

3) 統計処理

同等性評価パラメータは,定常状態における薬物回収量,平均角層内薬物濃度,又は,角層内薬物濃度とする.データは原則として対数変換する.標準製剤と試験製剤の同等性評価パラメータの平均値の差の90%信頼区間を,パラメトリックな手法で計算する.

2.薬理学的試験

局所皮膚適用製剤を適用することにより生じる薬理学的反応を測定して,生物学的同等性を評価する方法である.臨床効果又は皮膚からの薬物のバイオアベイラビリティと相関のある薬理学的反応を対象とする.

コルチコステロイドの場合には遅延性の血管収縮作用により皮膚が蒼白化し,薬物適用部位からの薬物の吸収量に応じた強度の白斑が生じる.蒼白化反応と臨床効果との間には,高度の相関性が認められており,コルチコステロイドでは,蒼白化反応の強度を指標にして生物学的同等性を評価できる.但し,作用の弱いコルチコステロイドでは蒼白化反応が弱く,蒼白化反応を指標にできないことがある.以下に蒼白化反応によるコルチコステロイドの評価方法を示す.

1) 蒼白化反応の測定

蒼白化反応の測定には,視覚的方法と色差計を用いる方法がある.

視覚的方法では,製剤を適用した部分の色と,適用していない周辺部分の色との差を,4段階又は5段階にスコア化し,熟練した測定者が蒼白化の程度を判定する.通常,複数の測定者が独立に蒼白化の程度を測定し,平均スコアを評価に用いる.蒼白化反応を視覚的方法で測定する場合には,判定の偏りを可能な限り避けるために,測定者に対して,(又,可能ならば被験者に対しても,)すべての観察部位(試験製剤適用部位,標準製剤適用部位,試験と同時に応答性被験者を選択する際には被験者選択用適用部位)を盲験化する.

色差計を用いる場合には,蒼白化の程度を,例えばハンター式表色系(Lab)あるいはJⅠS Z 8729による表色系(Lab)などで色差として表す.色差計による測定では,通常,色の変化は製剤適用部位の測定値を,ベースライン(製剤適用1時間前から適用するまでの間の皮膚の色調の平均値)の測定値及び各測定時点での製剤非適用部位の測定値で補正するが,ベースラインのみで補正することもある.

2) 製剤適用時間と蒼白化反応の観察継続時間

十分な測定感度を得るために,適切な薬物適用量,製剤適用時間,適用面積を決定する.蒼白化反応で生物学的同等性を評価する場合の製剤適用時間は,Emax(最大薬理効果)モデルにおけるEmaxの半分の効果を与える時間T50とする.Emaxモデルを用いて製剤適用時間T50を求める詳細な方法は,付録2に示した.

蒼白化反応の観察は,蒼白化反応が消失するまで経時的に継続する.予試験において,観察を継続する時間,及び,観察時点(通常5点程度)を検討しておく.

3) ステロイド応答性被験者の選択

生物学的同等性の評価に当たっては,ステロイド応答性の被験者のデータを用いる.

ステロイド応答性被験者の選択は次のように行う.2つの製剤適用時間T1及びT2を,T50/n,T50×nにより決定する.nには2又は3を代入する.T1適用後の測定値をAUEC1,T2適用後の測定値をAUEC2とするとき,AUEC2/AUEC1>1.25となる被験者をコルチコステロイド応答性被験者とする.

ステロイド応答性の被験者を本試験の前に予め選択しておくことが望ましいが,本試験終了後にステロイド応答性被験者のデータのみを採用するのでも差し支えない.後者の場合には,試験に必要な例数よりも多く被験者を参加させる必要がある.

4) 本試験

本試験の手順は以下のとおりである.被験者数及び被験者一人当たりの試験製剤及び標準製剤の適用部位数は,ばらつきに関する予試験の結果から決定する.

a.試験製剤1~数箇所,標準製剤1~数箇所,製剤非適用部位2箇所を割り付け,必要ならば測定の妨げとならないようにマークを付けておく.コルチコステロイド応答性被験者のデータを本試験終了後に選択する場合には,ステロイド応答性被験者選択用適用部位(製剤適用時間T1,T2に相当)各1~数箇所も割り付けて,必要ならばマークを付けておく.

b.色差計で蒼白化反応を測定する場合には,製剤を塗布する前にベースラインを測定しておく.

c.製剤を適用する.コルチコステロイド応答性被験者のデータを本試験終了後に選択する場合で,視覚的方法で蒼白化反応を測定するのであれば,製剤の除去時間が同時になるように,ステロイド応答性被験者選択用適用部位への製剤の適用開始時間を工夫する.

d.定められた時間に製剤を除去し,皮膚上に軟膏やクリームなどが残存している場合には適当な方法でふき取る.

e.a.で定めた観察個所の蒼白化反応を経時的に測定する.色差計で蒼白化反応を測定する場合は,測定値をベースライン(及び製剤非適用部位の値)で補正する.

f.各被験者毎に,処理部位の皮膚蒼白化反応のAUECを計算する.同一の処理について被験者内で複数の観察部位がある場合には,平均値をその被験者のその処理のAUECとする.予めコルチコステロイド応答性被験者が選択されていない場合には,コルチコステロイド非応答性被験者のデータは棄却する.

5) 統計処理

同等性評価パラメータはAUECとする.

色差計を用いて蒼白化反応を評価する場合に,AUECが負の値となるときには,データの対数変換は行わない.標準製剤と試験製剤の同等性評価パラメータの平均値の差の90%信頼区間を,パラメトリックな手法で計算する.

視覚的方法で蒼白化反応を評価するときには,標準製剤と試験製剤の同等性評価パラメータの平均値の差の90%信頼区間を,ノンパラメトリックな方法又はパラメトリックな方法で計算する.パラメトリックな方法を用いる場合にはデータは原則的に対数変換する.

3.残存量試験

皮膚に適用された後の製剤中に残存する薬物量から,皮膚に分布した薬物量を推定する方法である.局所皮膚適用製剤では,製剤中に含有される薬物量に比較し皮膚へ分布する薬物量はわずかである.そのため,少量の分布量における製剤間の差を,大量に残存する薬物量から正確に評価することは難しいが,精度よく求めることができれば有用な方法である.

1) 予試験

本試験に先立ち,次のような事柄について,予め検討しておく.

a.必要ならば適切な薬物適用量,適用面積の検討を行う.

b.テープ剤やパップ剤等においては,必要に応じて,皮膚に適用する試験製剤及び標準製剤の質量と薬物含量との関係を調べておく.

c.製剤からの薬物の抽出法・分析法及び皮膚上に残存する過剰な薬剤をふき取るために用いた脱脂綿や洗浄液からの薬物の抽出法・分析法を確立し,それぞれバリデーションを十分に行う.

2) 本試験

製剤適用時間は用法に従うか,又は,角層中の薬物濃度が定常状態にあるとみなせる一定時間までとする.

本試験の手順は以下のとおりである.被験者数及び被験者一人当たりの試験製剤及び標準製剤の適用部位数は,ばらつきに関する予試験の結果から決定する.

a.試験製剤1~数箇所,標準製剤1~数箇所,それぞれの製剤の対照部位を1~数箇所を適切に割り付け,必要ならば測定の妨げとならないようにマークを付けておく.

b.皮膚に適用する製剤の質量を測定する.

c.製剤を適用する.

d.対照部位については,製剤適用後直ちに製剤を除去し,軟膏やクリームなどで皮膚上に残った過剰な薬剤を脱脂綿等でふき取る.製剤,薬剤ふき取りに用いた脱脂綿等,覆いや保護器具を用いた場合にはこれに付着した薬物などを,それぞれ定められた分析用回収容器に入れる.

e.設定された製剤適用時間tに製剤を除去し,軟膏やクリームで皮膚上に残った過剰な薬剤を脱脂綿等でふき取る.製剤,薬剤ふき取りに用いた脱脂綿等,覆いや保護器具を用いた場合にはこれに付着した薬物などを,定められた各分析用回収容器に回収する.

f.各部位毎に,各分析用回収容器に回収された薬物量を合わせたものを,その部位からの薬物回収量とする.

g.同一被験者内で同一製剤の適用部位又は対照部位が複数存在する場合には,それらの平均値をその被験者のその製剤又は対照の測定値とする.

h.「対照部位からの薬物回収量」から「tにおける薬物回収量」を差し引いた量を,薬物が製剤から皮膚へ分布した量とする.

3) 統計処理

同等性評価パラメータは,薬物が製剤から皮膚へ分布した量とする.

データは原則的に対数変換する.標準製剤と試験製剤の同等性評価パラメータの平均値の差の90%信頼区間を,パラメトリックな手法で計算する.

4.薬物動態学的試験

製剤を適用した後の薬物の血中濃度を測定し,薬物動態パラメータから生物学的同等性を評価する方法である.薬物の作用部位が角層内又は角層より下部あるいはその両方にあり,薬効又は作用部位濃度と,薬物動態が良い相関を示す場合には有用な方法である.

1) 製剤適用時間

必要ならば適切な薬物適用量,適用面積の検討を行う.本試験における製剤適用時間は用法に従うか,又は,血中濃度が定常状態に達する一定時間又はそれより長い時間とする.

2) 本試験

令和2年3月19日薬生薬審発0319第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知の別紙1「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」に従って試験を実施する.

3) 統計処理

同等性評価パラメータは後発医薬品ガイドラインに従って得たAUC,又は,定常状態における血中濃度とする.データは原則的に対数変換する.標準製剤と試験製剤の同等性評価パラメータの平均値の差の90%信頼区間を,パラメトリックな手法で計算する.

5.臨床試験

薬理効果又は臨床効果を指標として生物学的同等性を評価する方法である.薬物に応じて治療効果に関連する適切な項目を選択する.統計的に同等性を評価し得る被験者数で試験を行う.

統計学的な同等性評価を要する場合,薬物毎に適切な同等性の許容域を設定し,標準製剤と試験製剤の薬理効果又は臨床効果の同等性を判定する.

6.In vitro効力試験

In vitro効力試験は,in vitroにおける効力を指標として生物学的同等性を評価する方法である.作用部位が皮膚表面にあるか又は患部が表面に表れている場合に使用する殺菌・消毒剤などで,薬効を発揮するために薬物が角層を透過する必要がない場合には,適当なin vitro試験で製剤の効力の同等性を評価してもよい.なお,ここで述べるin vitro効力試験には,in vitro放出試験は含まれない.

薬物毎に適切な同等性の許容域を設定し,標準製剤と試験製剤の効力の同等性を判定する.

7.動物試験

製剤を適用することにより動物の皮膚表面に生じる薬理学的反応を指標として生物学的同等性を評価する方法である.薬物の作用部位が皮膚表面にあり,例えば,止血剤,殺菌・消毒剤,創傷治癒促進剤などで,薬効を発揮するために薬物が角層を透過する必要がないときには,製剤の効力を評価できる適当な動物試験で製剤の同等性を評価してもよい.

薬物毎に適切な同等性の許容域を設定し,標準製剤と試験製剤の効力の同等性を判定する.

Ⅳ.曝露量試験

正常皮膚に比べ病態皮膚では薬物透過性の亢進しているケースが多いと考えられ,この場合薬物が全身循環血流に到達したために生じる副作用が懸念される.曝露量試験は,バリア機能が低下し皮膚透過性が亢進した皮膚での曝露量を見積もる方法である.治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品については,塗布部分の角層を完全剥離したヒト又は動物の皮膚を対象にして,第3章,Ⅲ.に示す4の薬物動態学的試験,又は,3の残存量試験に準じて試験を行い,試験製剤の全身循環血流に到達する薬物量(曝露量)が先発医薬品と同程度又は許容される程度であることを確認する.なお,検証的な臨床試験にて,患者を対象とした全身性の安全性(原則、AUCt及びCmax)を確認する場合には,この限りではない。

第4章.生物学的同等性試験結果の記載事項

令和2年3月19日薬生薬審発0319第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知の別紙1「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」に準じて記載する.

以上

付録1 モデル式をあてはめて角層全体に分布している薬物濃度を推定する方法

角層の厚さの推定方法

体内の水分は角層の中を次式に示すFickの法則に従い拡散し,蒸発する.皮膚の表面から蒸発する水分量を経表皮水分喪失量(TEWL)という.

TEWL=(KwDwΔC/L) (1)

ここで,KWは水の角層-表皮細胞間分配係数,DWは水の角層内での拡散定数,ΔCは角層の最深部と最表部との間の水の濃度差,Lは角層の厚さである.角層剥離で厚さx分だけ除去された後のTEWLは次式で表される

(2)式の逆数をとると

ここで,γ=KW・ΔCである.(3)式に従い,角層の密度が1g/cm3で剥離面積を一定とみなすと,剥離された角層の累積質量を厚さxに変換することができ,これをx軸にプロットし,y軸に1/TEWLxをプロットする.x軸の切片からLが求まる.

薬物の拡散定数,分配係数,及び,角層上の薬物濃度の推定方法

製剤から皮膚へ分布した薬物の角層内の拡散はFickの第2法則を用いて次の式で表される.

ここで,Cxは深さxにおける薬物濃度,Cvehは製剤中の薬物濃度,Dは角層中の薬物の拡散定数,Kは薬物の角層-製剤間分配係数,tは製剤適用時間である.式(4)に従って,テープに回収された薬物濃度(薬物量/角層の質量)をxに対してプロットし,最小二乗法により薬物の拡散定数D及び分配係数Kを求める.

上記で求めたL,D,KをFickの第2法則の式を積分した次式に代入して,角層全体の薬物濃度Aを計算する.

製剤適用時間が十分大きいときには,(5)式は

A=(KCveh/2) (6)

で表され,製剤中の薬物濃度が一定のとき角層全体の薬物濃度Aは薬物の角層-製剤間分配係数に依存する.

付録2 製剤適用時間をEmaxモデルに従って決定する方法

Emaxモデル((7)式)では,横軸に投与量(D),縦軸に薬物投与に伴う応答強度(E)をプロットすることにより,モデル中のパラメータED50(Emaxの半分の効果を与える投与量)及びEmax(最大薬理効果)を求めることができる.

局所皮膚適用製剤では皮膚へ適用した製剤中に含まれる薬物の全量が皮膚に移行するわけではないので,実際に皮膚に移行した量を投与量として横軸にプロットする必要がある.製剤適用直後及び薬物の放出が終了する付近を除いては,実際に皮膚に分布した薬物量は適用量が一定の下では製剤適用時間に比例するので,Emaxモデルを局所皮膚適用製剤に適用する際には,横軸に製剤適用時間Tをプロットする.製剤適用時間T50は,Emax(最大薬理効果)モデルにおけるEmaxの半分の効果を与える製剤適用時間である.具体的には,標準製剤を用いて製剤適用時間(T)を変えて,製剤除去後の蒼白化の強度-時間曲線下面積(AUEC)を求め,横軸にTを縦軸にAUECをプロットする.このプロットに(8)式をあてはめ,適当な非線形最小二乗法のソフトウエアを用いてT50を求める.なお,AUEC0及びAUECmaxは,それぞれ,ベースラインの蒼白化の強度及び最大蒼白化強度である.パラメータを求めるときには,個々の被験者の値を求める必要はなく,平均値をプロットするのでよい.

別紙2

(別添)

局所皮膚適用製剤の剤形追加のための生物学的同等性試験ガイドライン

目次

第1章.緒言

第2章.用語

第3章.生物学的同等性試験

第4章.生物学的同等性試験結果の記載事項

第1章.緒言

本ガイドラインは,既承認の局所皮膚適用製剤と有効成分及び効能・効果は同一で,用法・用量が既承認の範囲内にある剤形が異なる製剤を追加(以下,「剤形追加」という)する場合の生物学的同等性試験の実施方法の原則を示すものである.本ガイドラインは,剤形追加される局所皮膚適用製剤と先発医薬品との間の生物学的同等性を保証することを目的としている.局所皮膚適用製剤では,軟膏剤,クリーム剤,ゲル剤,パップ剤,テープ剤,ローション剤,外用エアゾール剤,ポンプスプレー剤,外用散剤,リニメント剤は各々異なる剤形として取り扱う.また,必要に応じて,基剤の性状や製剤特性の差異を考慮する.

なお,適用されることにより有効成分が全身循環血流へ到達して治療効果を発揮することが期待される製剤は原則的には本ガイドラインの適用の対象とはならない.

第2章.用語

局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドラインに準じる.

第3章.試験

Ⅰ.標準製剤と試験製剤

標準製剤は,原則として,先発医薬品の3ロットについて,in vitro放出試験を行い,中間の放出性を示すロットの製剤とする.In vitro放出試験には,製剤及び薬物の特性に応じて,パドルオーバーディスク法,拡散セル法など先発医薬品のロット間における放出速度の差を適切に評価できる方法を用いる.試験は32±0.5℃で実施し,試験液には,水又は水-アルコール混液等を用いる.製剤と試験液を隔てる膜を用いる場合には,膜透過が律速とならない膜を用いる.繰り返し数は6以上とする.In vitro放出試験が不適切な場合には,それに代わる製剤の特性に応じた適当な物理化学的試験を行い,中間の特性を示したロットの製剤を標準製剤とする.標準製剤の含量又は力価はなるべく表示量に近いものを用いる.また,試験製剤と標準製剤の間の含量又は力価の差は表示量の5%以内であることが望ましい.

試験製剤は,剤形追加しようとする製剤であって,実生産におけるロットサイズで製造された,又はその1/10以上の大きさのロットサイズで製造されたものを用いる.有効成分が溶解している均一な溶液製剤では,ロットの大きさはこれより小さくてもよい.なお,実生産ロットと同等性試験に用いるロットの製法は同じで,両者の品質及びバイオアベイラビリティは共に同等であるものとする.

Ⅱ.生物学的同等性試験

局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドラインに準じる.

第4章.生物学的同等性試験結果の記載事項

令和2年3月19日薬生薬審発0319第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知の別添「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」に準じて記載する.