添付一覧
○「災害薬事コーディネーター活動要領」について
(令和7年3月10日)
(医薬総発0310第2号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局総務課長通知)
平素より、薬務行政に御理解・御協力をいただき、厚く御礼申し上げます。
厚生労働省では、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(令和5年3月31日付け医政地発第0331第14号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知。令和5年6月29日付け最終改正)において、災害薬事コーディネーターが担う役割をお示ししているところです。
今般、厚生労働科学研究費補助金事業(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)による「薬剤師・薬局における災害時等対応についての調査研究」(研究代表者:江川孝 福岡大学薬学部教授)において、保健医療福祉調整本部等におけるコーディネート体制を担う災害薬事コーディネーターの活動要領案が作成されました。
当該活動要領案を参考に、厚生労働省は、「災害薬事コーディネーターの活動要領」を取りまとめ、「厚生科学審議会健康危機管理部会」で報告したところです。
貴職におかれては、当該活動要領について御了知いただくとともに、関係機関、関係団体並びに災害薬事コーディネーターに対する周知方をお願いいたします。
別添
災害薬事コーディネーター活動要領
令和7年3月10日
第1 概要
1 背景
我が国は、これまで、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震等を踏まえ、災害時における医療体制を整備してきた。まず、阪神・淡路大震災を契機に、「災害拠点病院の整備」、「災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)の養成」、「広域災害・救急医療情報システム(Emergency Medical Information System:EMIS)の整備」、「災害医療に係る保健所機能の強化」、「搬送機関との連携」等に取り組んできた。
その後、東日本大震災の経験から、「災害医療等のあり方に関する検討会報告書」(平成23年10月)を踏まえ、厚生労働省は「災害時における医療体制の充実強化について」(平成24年3月21日付け医政発0321第2号厚生労働省医政局長通知)を発出し、各都道府県に対し、医療チームの派遣調整等のコーディネート機能を十分に発揮できる体制の整備を求めるとともに、平成26年度より災害医療コーディネーターの養成を開始した。
また、小児・周産期医療と災害医療との連携の必要性が指摘されたことから、平成26・27年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「東日本大震災の課題からみた今後の災害医療体制のあり方に関する研究」(研究代表者:小井土雄一)において、災害医療コーディネーターと連携して小児・周産期医療に関する情報収集、関係機関との調整等を担う災害時小児周産期リエゾンを活用した体制について検討が行われた。さらに、「少子化社会対策大綱」(平成27年3月20日閣議決定)においては、地方自治体が、乳幼児、妊産婦等の要配慮者に十分配慮した防災知識の普及、訓練の実施、物資の備蓄等を行うとともに、災害から子供を守るための関係機関の連携の強化を図ることを促進することとした。これらを踏まえ、厚生労働省は、平成28年度より災害時小児周産期リエゾンの養成を開始した。
平成28年熊本地震に係る初動対応検証チームにより取りまとめられた「平成28年熊本地震に係る初動対応の検証レポート」(平成28年7月)や令和3年度厚生労働科学研究の「災害発生時の分野横断的かつ長期的ケアマネジメント体制構築に資する研究」において、被災地に派遣される医療チームや保健師チーム等を全体としてマネジメントする機能を構築する必要があることや、保健医療のみでは福祉分野の対応ができず、保健・医療・福祉の連携が需要であるとされたことを踏まえ、厚生労働省は「大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の整備について」(令和4年7月22日付け科発0722第2号・医政発0722第1号・健発0722第1号・薬生発0722第1号・社援発0722第2号・老発0722第1号厚生労働省大臣官房厚生科学課長、医政局長、健康局長、医薬・生活衛生局長、社会・援護局長及び老健局長連名通知)を発出し、各都道府県に大規模災害時の保健医療福祉活動の総合調整を行う保健医療福祉調整本部を設置することとしたとともに、保健医療福祉調整本部の構成員として災害薬事コーディネーターが含まれることが示された。
さらに、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(令和5年3月31日付け医政地発0331第14号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知。令和5年6月29日最終改正。)を発出し、災害薬事コーディネーターについて、災害時に、都道府県並びに保健所及び市町村が行う保健医療活動における薬事に関する課題解決のため、都道府県が設置する保健医療福祉調整本部並びに保健所及び市町村における保健医療福祉活動の調整等を担う本部において、被災地の医薬品等や薬剤師及び薬事・衛生面に関する情報の把握やマッチング等を行うことを目的として、都道府県において任命された薬剤師と示された。
本要領は、このような経緯を踏まえ、大規模災害時に、被災地域において適切に保健医療福祉活動の総合調整が行われるよう、災害薬事コーディネーターの運用、活動内容等について定めるものである。
2 本要領の位置付け
本要領は、防災基本計画及び厚生労働省防災業務計画に基づき、指定行政機関や都道府県等がその防災業務計画や地域防災計画(地方公共団体間の災害時相互応援協定を含む。)等において、災害薬事コーディネーターの運用計画等について記載する際及び都道府県の医療計画等において、災害薬事コーディネーターの整備、運用等の災害時の医療に係る項目を記載する際の指針となるものである。
なお、本要領は、災害薬事コーディネーターの運用、活動内容等の基本的な事項について定めるものであり、都道府県等の自発的な活動を制限するものではない。
3 用語の定義
(1) 保健医療福祉調整本部
災害時に、被災都道府県に設置され、保健医療活動チームの派遣調整、保健医療福祉活動に関する情報の連携、整理、分析等の保健医療福祉活動の総合調整を行う本部をいう。(「大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の整備について」(令和4年7月22日付け科発0722第2号・医政発0722第1号・健発0722第1号・薬生発0722第1号・社援発0722第1号・老発0722第1号厚生労働省大臣官房厚生科学課長、医政局長、健康局長、医薬・生活衛生局長、社会・援護局長及び老健局長連名通知))
(2) 災害医療コーディネーター
災害時に、都道府県並びに保健所及び市町村が保健医療活動の総合調整等を適切かつ円滑に行えるよう、保健医療福祉調整本部並びに保健所及び市町村における保健医療活動の調整等を担う本部(以下「保健医療福祉調整本部等」という。)において、被災地の保健医療ニーズの把握、保健医療活動チームの派遣調整等に係る助言及びを行うことを目的として、都道府県により任命された者をいう。
都道府県の保健医療福祉調整本部に配置される者を都道府県災害医療コーディネーター、保健所又は市町村における保健医療活動の調整等を担う本部に配置される者を地域災害医療コーディネーターと呼称する。(以下、特別の記載がない限り、「災害医療コーディネーター」とは「都道府県災害医療コーディネーター」及び「地域災害医療コーディネーター」のいずれも該当するものとする。)
(3) 災害時小児周産期リエゾン
災害時に、都道府県が小児・周産期医療に係る保健医療活動の総合調整を適切かつ円滑に行えるよう、保健医療福祉調整本部において、被災地の保健医療ニーズの把握、保健医療活動チームの派遣調整等に係る助言及び支援を行う都道府県災害医療コーディネーターをサポートすることを目的として、都道府県により任命された者をいう。
(4) 保健医療福祉活動チーム
災害派遣医療チーム(DMAT)、災害派遣精神医療チーム(DPAT)、日本医師会災害医療チーム(JMAT)、日本赤十字社の救護班、独立行政法人国立病院機構の医療班、全日本病院医療支援班AMAT)、日本災害歯科支援チーム(JDAT)、薬剤師チーム、看護師チーム(被災都道府県以外の都道府県、市町村、日本看護協会等の関係団体や医療機関から派遣された看護職員を含む)、保健師チーム、管理栄養士チーム、日本栄養士会災害支援チーム(JDA―DAT)、日本災害リハビリテーション支援チーム(JRAT)その他の災害医療に係る保健医療福祉活動を行うチーム(被災都道府県以外の都道府県から派遣されたチームを含む。)をいう。
(5) 災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)
災害の発生直後の急性期(概ね48時間以内)に活動が開始できる機動性を持った、専門的な研修・訓練を受けた医療チームをいう。DMAT事務局、DMAT都道府県調整本部、DMAT活動拠点本部等における活動、広域医療搬送、地域医療搬送、病院支援、現場活動等を主な活動とする。また、各本部における業務のサポート、病院支援、情報収集等のロジスティクスも行う。
(6) ロジスティクス
保健医療福祉活動に関わる通信、移動手段、医薬品、生活手段等を確保することをいう。保健医療福祉活動に必要な連絡、調整、情報収集の業務等も含む。
(7) 災害時健康危機管理支援チーム(Disaster Health Emergency Assistance Team:DHEAT)
災害が発生した際に、被災都道府県の保健医療福祉調整本部及び被災都道府県等の保健所が行う、被災地方公共団体の保健医療行政の指揮調整機能等を応援するため、専門的な研修・訓練を受けた都道府県等の職員により構成する応援派遣チームをいう。(「災害時健康危機管理支援チーム活動要領について」(平成30年3月20日付け健健発0320第1号厚生労働省健康局健康課長通知。令和6年10月24日最終改正。))
(8) 地域防災計画
災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第40条の規定に基づき、都道府県防災会議において防災基本計画に基づき作成される、当該都道府県の地域に係る防災に関する計画をいう。
(9) 広域災害・救急医療情報システム(Emergency Medical Information System:EMIS)
全国の災害医療に係る情報を共有し、災害時に、被災地域における迅速かつ適切な医療及び救護に関わる各種情報の集約及び提供を行うものをいう。
(10) 地域医療搬送
被災地内外を問わず、都道府県、市町村及び病院が、各防災関係機関の協力を得て、ヘリコプター、救急車等により患者を搬送する医療搬送(県境を越えるものも含む。)であり、広域医療搬送以外のものをいう。
災害現場から被災地域内の医療機関への搬送、被災地域内の医療機関から近隣地域への搬送、被災地域内の医療機関から航空搬送拠点臨時医療施設(Staging Care Unit:SCU)への搬送及び被災地域外のSCUから医療機関への搬送を含む。
(11) 広域医療搬送
国が各機関の協力の下、自衛隊機等の航空機を用いて対象患者を被災地内の航空搬送拠点から被災地外の航空搬送拠点まで航空搬送する医療搬送をいう。
被災地域及び被災地域外の民間や自衛隊の空港等に航空搬送拠点を設置して行う。
4 災害薬事コーディネーターとは
災害薬事コーディネーターとは、災害時に、都道府県並びに保健所及び市町村が行う保健医療活動における薬事に関する課題解決のため、都道府県が設置する保健医療福祉調整本部並びに保健所及び市町村における保健医療活動の調整等を担う本部において、被災地の医薬品等や薬剤師及び薬事・衛生面に関する情報の把握やマッチング等を行うことを目的として、都道府県において任命された薬剤師をいう。
都道府県の保健医療福祉調整本部に配置される者を都道府県災害薬事コーディネーター、保健所又は市町村における保健医療福祉活動の調整等を担う本部に配置される薬剤師を地域災害薬事コーディネーターと呼称する。(以下、特別の記載がない限り、「災害薬事コーディネーター」とは「都道府県災害薬事コーディネーター」及び「地域災害薬事コーディネーター」のいずれも該当するものとする。)
災害薬事コーディネーターは、平常時から当該都道府県における薬事・衛生提供体制に精通しており、専門的な研修を受け、災害対応を担う関係機関等と連携を構築している者が望ましい。
5 運用の基本方針
(1) 厚生労働省は、平常時に、災害薬事コーディネーターの活動要領を策定するとともに、都道府県が実施する災害薬事コーディネーターの知識や技能の向上を目的とした研修を支援する。
(2) 厚生労働省は、都道府県による、災害薬事コーディネーターの運用を含む災害時の医療提供体制の整備等について、必要な助言及び支援を行う。
(3) 都道府県は、平常時に、災害薬事コーディネーターの運用計画の策定、災害薬事コーディネーター及び災害薬事コーディネーターの所属する職能団体等(以下「災害薬事コーディネーター所属先」という。)との協定の締結等を行い、災害時に、災害薬事コーディネーターの助言及び支援を受けて保健医療福祉活動の総合調整を行う。
(4) 都道府県は、災害薬事コーディネーターの知識や技能の向上を目的とした研修を実施する。
(5) 都道府県は、災害薬事コーディネーターの活動について、その労務管理の観点等から、災害の規模等に応じて交代要員を確保し、継続的な対応が可能となるよう配慮する。
(6) 災害薬事コーディネーターの活動は、都道府県と災害薬事コーディネーターとの間及び都道府県と災害薬事コーディネーター所属先との間で平常時に締結された協定、都道府県が策定する災害薬事コーディネーターの運用計画等に基づくものである。
(7) 災害薬事コーディネーターの活動は、都道府県の招集に基づくものである。
(8) 災害薬事コーディネーター所属先は、平常時に、災害薬事コーディネーターが災害に関する研修、訓練等に参加できるよう協力し、災害時に、都道府県との協定に基づき災害薬事コーディネーターを派遣する。
第2 平常時の準備
1 運用に係る計画の策定
(1) 厚生労働省は、災害薬事コーディネーターの業務等について厚生労働省防災業務計画に明示する。
(2) 都道府県は、災害薬事コーディネーターの運用計画を策定するとともに、災害薬事コーディネーターの業務等について地域防災計画に明示する。
(3) 都道府県は、災害薬事コーディネーターの運用計画を策定するに当たり、各都道府県の地域防災会議、災害医療に関する協議会等において検討を行う。
(4) 災害薬事コーディネーターの運用計画には、災害薬事コーディネーターの任命状況等を踏まえ、招集基準、招集及び配置の方法、保健医療福祉調整本部における活動等について明記することが望ましい。
2 任命及び協定
(1) 都道府県は、災害薬事コーディネーターを任命し、その活動内容や身分保障等について協定を締結する。協定の締結に当たっては、災害薬事コーディネーターに地方公務員としての身分を付与することが望ましい。
(2) 都道府県と災害薬事コーディネーターとの協定は、以下の事項を含むものとする。
ア 災害発生時の招集の方法(招集基準、自主参集基準、招集場所等を含む。)
イ 業務(活動場所等を含む。)
ウ 活動費用、事故等への補償
エ 任期、身分の取扱
(3) 都道府県は、任命した災害薬事コーディネーターの一覧を作成する。
(4) 都道府県は、災害薬事コーディネーターの任命に当たり、災害薬事コーディネーター所属先とも十分な協議を行い、必要な事項について災害薬事コーディネーター所属先とも協定を締結する。
(5) 都道府県と災害薬事コーディネーター所属先との協定は、以下の事項を含むものとする。
ア 災害発生時の招集の方法
イ 活動費用、事故等への補償
ウ 任期、身分の取扱
(6) 災害薬事コーディネーターが所属する職能団体は、自職能団体の業務継続計画、災害対策マニュアル等を策定するに当たり、災害薬事コーディネーターを派遣することについて留意する。
(7) 災害薬事コーディネーターは、都道府県との協定を締結した後に、所属先の変更等が生じた場合は、速やかに都道府県へ届け出る。
3 災害薬事コーディネーターの業務
(1) 災害薬事コーディネーターは、当該都道府県の平常時における医療提供体制等を踏まえ、災害時における医薬品等や薬剤師及び薬事・衛生面に関する情報の把握やマッチング等について、都道府県に対して、平常時から助言を行う。具体的には、平常時に開催される災害医療対策会議等の会議に出席するほか、都道府県の地域防災計画及び医療計画の改定等に当たり、助言を行う。
(2) 災害薬事コーディネーターは、都道府県が関係学会、関係団体又は関係業者(医薬品、医療機器、衛生材料等を含む。)との連携を構築する際にも、助言を行う。
4 研修、訓練等の実施
(1) 厚生労働省は、災害薬事コーディネーターの養成並びに災害薬事コーディネーターの知識及び技能の向上を目的として、都道府県が実施する災害薬事コーディネーター養成研修事業等の実施を支援する。
(2) 都道府県は、各都道府県が実施する研修、訓練等を通じて、災害薬事コーディネーターの養成並びに災害薬事コーディネーターの知識及び技能の向上に努める。
(3) 都道府県は、災害に関する研修、訓練(訓練の企画及び検証を含む。)に当たり、災害薬事コーディネーター所属先に対して、災害薬事コーディネーターの派遣を要請する。
(4) 災害薬事コーディネーターが所属する職能団体は、都道府県からの派遣要請を受けた場合、災害薬事コーディネーターが災害に関する研修、訓練(訓練の企画及び検証を含む。)等に参加できるよう協力する。
(5) 災害薬事コーディネーターは、都道府県が実施する災害に関する研修、訓練(訓練の企画及び検証を含む。)に参加するとともに、円滑な実施に協力する。
5 EMIS等の活用のための準備
(1) 厚生労働省は、都道府県に対し、災害薬事コーディネーターが共同で使用するためのEMISの機関コード及びパスワードを付与する。
(2) 都道府県は、災害薬事コーディネーターに対し、災害薬事コーディネーターが共同で使用するために厚生労働省から付与されたEMISの機関コード及びパスワードを付与する。
(3) 都道府県は、災害薬事コーディネーターに対し、EMISの入力方法等について十分把握できるよう、研修の機会を設ける。
(4) 災害薬事・衛生に関連する学会等は、災害薬事コーディネーターが、災害薬事・衛生に関する災害情報システムについて理解し、災害時に利用できるよう、必要に応じて協力する。
第3 災害時の活動
1 災害薬事コーディネーターの招集、配置、運用
(1) 被災都道府県は、招集基準に基づき、災害薬事コーディネーターの招集を行い、必要に応じて、災害薬事コーディネーターが所属する職能団体に対し、災害薬事コーディネーターの派遣要請を行う。
(2) 被災都道府県は、都道府県災害対策本部の下に、災害時の保健医療福祉活動の総合調整を行うための保健医療福祉調整本部を設置し、保健医療福祉調整本部に災害薬事コーディネーターを配置する。
(3) 非被災都道府県は、被災都道府県からの患者の受入れ等の支援を行うに当たり、必要に応じて非被災都道府県の薬務主管課等に災害薬事コーディネーターを配置する。
(4) 被災都道府県は、災害薬事コーディネーターの健康管理に留意し、災害薬事コーディネーターが業務を交代できる体制を確保する。
(5) 被災都道府県は、災害薬事コーディネーターが他の災害薬事コーディネーターへ業務を引き継ぐに当たり、引き継ぎに十分な期間を確保し、保健医療福祉調整本部の活動が円滑に継続されるよう努める。
(6) 被災都道府県は、保健医療福祉調整本部において適宜会議を行うこと等を通じて、災害薬事コーディネーターの活動状況等について把握し、災害薬事コーディネーターの活動縮小及び活動終了についても検討する。この際、必要に応じて保健所、市町村、薬局、医療機関その他の関係機関と協議を行う。
2 災害薬事コーディネーターの業務
(1) 組織体制の構築に係る業務
① 保健医療福祉調整本部の組織体制の構築に係る業務
ア 災害薬事コーディネーターは、保健医療福祉調整本部において、薬務主管課、医務主管課、保健衛生主管課、精神保健主管課等の関係課及び保健所の職員等の関係者が相互に連携して行う、当該保健医療福祉調整本部に係る業務について、災害医療コーディネーター、災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び支援を行う。
イ 災害薬事コーディネーターは、被災都道府県が、保健医療福祉調整本部に参画することが望ましいと考えられる関係者や、連絡及び情報連携を円滑に行うために、保健医療福祉調整本部内に担当者を配置することが望ましい保健医療福祉活動に係る関係機関等について検討するに当たり、災害医療コーディネーター、災害時小児周産期リエゾンとともに、助言を行う。
② 保健所又は市町村における保健医療福祉活動の調整を担う本部の組織体制の構築に係る業務
災害薬事コーディネーターは、被災都道府県が、保健医療福祉活動の調整等を担う本部を設置することが望ましい保健所又は市町村について検討するに当たり、災害医療コーディネーター、災害時小児周産期リエゾンとともに、助言を行う。
(2) 被災情報等の収集、分析、対応策の立案に係る業務
① 保健医療福祉調整本部において収集すべき情報
ア 被災都道府県及び圏域ごとの医療機関、薬局、医薬品卸売販売業者、救護所、避難所等(以下「医療機関等」という。)の被災状況及び復旧状況
イ 被災都道府県及び圏域ごとの医療機関等における保健医療福祉ニーズ等
(ア) 支援を要する患者等の状況(在宅での人工呼吸器、衛生材料等の使用状況を含む。)
(イ) 災害時に新たに必要となった保健医療福祉ニーズ等(ライフライン、医薬品、医療機器、医療ガス、衛生材料等を含む。)
ウ 保健医療福祉活動チームの活動状況
エ その他保健医療福祉活動を効率的・効果的に行うために必要な情報(調剤、医薬品の供給が可能な災害対応医薬品供給車両(モバイルファーマシー)、避難所の環境衛生等の情報を含む。)
② 情報の収集に係る業務
ア 災害薬事コーディネーターは、保健医療福祉調整本部が、保健所、市町村、保健医療福祉活動チーム、災害時健康危機管理支援チームその他の保健医療福祉活動に係る関係機関(以下「保健医療福祉活動チーム等」という。)から情報を収集するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
イ 災害薬事コーディネーターは、保健医療福祉調整本部が、医療機関等の被災状況及び復旧状況、保健医療福祉活動チームの活動状況等についてEMIS等から情報を収集するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、必要な情報や優先して収集すべき情報等について助言を行い、情報の収集に必要な人員の確保に係る助言及び調整の支援を行う。
③ 情報の分析と対応策の立案に係る業務
ア 災害薬事コーディネーターは、被災都道府県及び圏域ごとの保健医療ニーズと支援体制の状況について、整理又は分析するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
イ 災害薬事コーディネーターは、保健医療福祉調整本部において収集した情報及びその分析結果等を踏まえた対応策等を検討するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
(3) 保健医療福祉活動チームの派遣等の人的支援及び物的支援の調整に係る業務
① 被災都道府県における受援の調整に係る業務
ア 災害薬事コーディネーターは、派遣を要請する保健医療福祉活動チームの具体的なチーム内容、チーム数、配置先等に係る計画について検討するに当たり、保健医療福祉調整本部における活動の初期から、中長期的視点に立って、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
イ 災害薬事コーディネーターは、活動している保健医療福祉活動チームの再配置の要否等について検討するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
ウ 災害薬事コーディネーターは、他の都道府県、関係学会、関係団体又は関係業者に対して要請する具体的な人的支援及び物的支援に係る計画を検討するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
エ 災害薬事コーディネーターは、保健医療福祉調整本部において、時間の経過に伴う保健医療福祉ニーズの変化等について保健医療福祉活動チーム等と情報共有を行うに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
オ 災害薬事コーディネーターは、被災地域における医療機関等の復旧状況を踏まえ、保健医療福祉活動チームの段階的な活動縮小及び活動終了について検討するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
② 人的支援及び物的支援を行う都道府県における支援の調整に係る業務
人的支援及び物的支援を行う都道府県(以下「支援元都道府県」という。)の災害薬事コーディネーターは、当該支援元都道府県が被災都道府県に対して、保健医療福祉活動チームの派遣等の人的支援及び物的支援を行うに当たり、当該支援元都道府県の要請に応じて、助言及び調整の支援を行う。
(4) 患者・医薬品等の搬送の調整に係る業務
① 被災都道府県における患者・医薬品等の搬送の調整に係る業務
ア 災害薬事コーディネーターは、患者等の搬送について、地域医療搬送や広域医療搬送の要否、緊急度、搬送先、搬送手段等の情報を収集又は整理するに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
イ 災害薬事コーディネーターは、被災都道府県外へ患者・医薬品等を搬送するに当たり、必要に応じて搬送先都道府県の災害薬事コーディネーター等と連携を図る。
ウ 災害薬事コーディネーターは、搬送手段の確保に当たり、航空運用調整班、DMAT都道府県調整本部(ドクターヘリ調整部を含む。)、厚生労働省、消防機関、搬送手段を保持する他の保健医療福祉活動チームその他の保健医療福祉活動に係る関係機関と連携できるよう、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言及び調整の支援を行う。
② 搬送先都道府県における患者・医薬品等の受入れの調整に係る業務
搬送先都道府県の災害薬事コーディネーターは、当該搬送先都道府県が被災都道府県から患者・医薬品等の受入れを行うに当たり、当該搬送先都道府県の要請に応じて、助言及び調整の支援を行う。
(5) 記録の作成及び保存並びに共有に係る業務
① 災害薬事コーディネーターは、保健医療福祉調整本部において、保健医療福祉活動に係る情報について、時間経過に沿った記録の作成及び保存並びにEMIS等を用いた共有を行うに当たり、災害医療コーディネーターや災害時小児周産期リエゾンとともに、助言を行い、これらの作業に必要な人員の確保に係る助言及び調整の支援を行う。
② 災害薬事コーディネーターは、自身の活動について、時間経過に沿った記録を作成及び保存し、保健医療福祉調整本部に報告する。
3 災害薬事コーディネーターの活動の終了
(1) 被災都道府県は、当該都道府県における薬事・衛生提供体制等の確保に係る業務を、当該都道府県の職員等により実施することが可能と判断する時点を一つの目安として、災害薬事コーディネーターの活動の終了を決定する。
(2) 被災都道府県は、災害薬事コーディネーターの活動と災害医療コーディネーター又は災害時小児周産期リエゾンの活動を同時に終了させる必要はなく、それぞれの役割を踏まえて、適切な時期に活動の終了を決定する。
第4 費用の支弁と補償
1 都道府県は、災害薬事コーディネーターとの事前の協定に基づいた費用支弁を行う。
2 都道府県からの招集又は都道府県により予め策定された自主参集基準に基づかない災害薬事コーディネーターの参集について、費用支弁は原則として行わない。