添付一覧
○一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)について
(令和7年3月10日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬局医療機器審査管理課、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課通知)
一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」(以下「血行促進用衣」という。)の取扱いについては、「一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の新設に伴う既存品目等の取扱いについて」(令和4年12月14日付け薬生機審発1214第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)、「遠赤外線を輻射する衣類等の取扱いについて」(令和4年12月14日付け薬生監麻発1214第1号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)、「一般社団法人日本医療機器工業会の作成した「家庭用遠赤外線血行促進用衣自主基準」の改正について」(令和6年3月25日付け事務連絡。以下「自主基準」という。)等により示してきたところですが、今般、別添のとおり具体的な運用並びに考え方を取りまとめましたので、血行促進用衣の製造販売届出を行う際には本質疑応答集(Q&A)を参考とするよう、貴管下製造販売業者に対し、改めての周知方よろしくお願いいたします。
(別添)
Q1 血行促進用衣の定義には、「遠赤外線の血行促進作用により疲労や筋肉のこり等の症状改善を行うことを目的とした、衣類形状の器具をいう。」との記載があるが、製造販売届書を提出するにあたり、その「使用目的又は効果」欄には、具体的にどのような記載を行うことが適切であるか。 |
A1
血行促進用衣に係る製造販売届書を提出する場合には、事前に自主基準に基づく項目ごとの評価を行い、その適合性を示す根拠を文書化しておくことが前提となるが、特に「使用目的又は効果」欄の記載に当たっては、自主基準の附属書「家庭用遠赤外線血行促進用衣を用いた血流量の変化に係る評価試験方法」に基づく試験を実施し、定められた基準値を満たしていることを確認するとともに、当該附属書の「10.試験結果の考察」に準拠し、試験で得られたデータをもとに、届出をしようとする製品において、実際に疲労や筋肉のこり等の症状改善に効果があるかどうかを適切に専門家が評価している必要がある。
その上で「使用目的又は効果」欄の記載を行うこととなるが、その記載方法は定義に準じて「遠赤外線の血行促進効果により疲労や筋肉のこり等の症状を改善する」と記載する方法や、遠赤外線の血行促進効果によることを記載した上で「血行促進」「筋肉のこり改善」「疲労の回復、改善」「筋肉の疲れを軽減」等と箇条書きにする方法が考えられる。
Q2 A1で述べられた「疲労の回復」や「筋肉のこりの症状改善」以外に、たとえば適切な臨床評価データ等があれば、「筋肉痛、腰痛、生理痛、神経痛、関節炎等の症状改善や消炎効果」「むくみの改善」「代謝の促進」「運動効率の向上」「冷え性の改善」等の効果を記載することは可能か。 |
A2
自主基準の附属書の「10.試験結果の考察」にも記載されているとおり、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「法」という。)第2条第7項で定める一般医療機器の定義は「副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの」である。
すなわち、一般医療機器(クラスⅠ)とは、人体への影響がごく軽微であるものを対象とする分類であるため、その使用目的や効果においても、使用者への影響はごく限定されたものであることが前提となる。
したがって、血行促進用衣として認められる「使用目的又は効果」の範囲は、A1で記載した内容に制限されるものであり、特定の疾病の治療や、人体の深部への影響を示唆する効果、また体質改善に有効である等の記載は、上記に示した一般医療機器の定義から逸脱する可能性が高いため、血行促進用衣の「使用目的又は効果」としては認められず、「筋肉痛、腰痛、生理痛、神経痛、関節炎等の症状改善や消炎効果」「むくみの改善」「代謝の促進」「運動効率の向上」「冷え性の改善」等の記載を行うことはできない。
また、このような効果等を広告や営業資料等(インターネットへの情報掲載等を含む)に表示して販売行為を行う場合にも、同様に法令違反の疑いが生じることに十分留意すること。
Q3 遠赤外線の技術を利用した衣類等について、「筋肉痛、腰痛、生理痛、神経痛、関節炎等の症状改善や消炎効果」「むくみの改善」「代謝の促進」「運動効率の向上」「冷え性の改善」等の効果を標ぼうして製造販売したい場合にはどうすればよいか。 |
A3
A2で説明したとおり、このような使用目的又は効果を標ぼうする場合には、一般医療機器である血行促進用衣の範囲を逸脱する可能性が高いと考えられる。その場合は、「法令上の位置づけがない新たな医療機器」として承認申請することを前提に、実際にそのような効果があることを示す臨床試験データ等を適切に収集した上で、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が行う「全般相談」を受けること。全般相談については下記を参照されたい。
(https://www.pmda.go.jp/review-services/f2f-pre/consultations/0016.html)
Q4 「遠赤外線を輻射する衣類等の取扱いについて」(令和4年12月14日付け薬生監麻発1214第1号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)によれば、「血行促進といった標ぼうのみをもって医療機器に該当するとは判断しない」とされており、「血行促進以外の医療機器的な使用目的又は効果を標ぼうした場合」は「医療機器に該当する」と明記されている。 当該通知には「医療機器的な使用目的又は効果に該当する広告・標ぼうの一例」として、腰痛・関節痛・炎症等の改善、神経痛・筋肉痛の緩和、疲労物質の蓄積の抑制、冷え性等の体質の改善・変化、むくみの改善等が例示されているが、血行促進用衣でこれらの標ぼうはできないということか。 |
A4
当該通知は、あくまで一般論として、「血行促進」等の標ぼうのみをもって医療機器に該当するとは判断しないことを説明したうえで、医療機器に該当すると考えられる場合の標ぼうを例示したものである。また、当該通知には注意書きで「上記は医療機器的な使用目的又は効果の例示であり、医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」にこれらの使用目的又は効果があることを示すものではない。」と明記されているので、併せて参照されたい。
なお、個別の製品について、これらの使用目的又は効果を標ぼうしたい場合は、A2・A3を参照されたい。
Q5 血行促進用衣の定義には、「上半身用及び下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部および大腿部を被覆する」との記載があり、また自主基準の「3.1.1 該当する製品の範囲」の④には、「衣類形状を有する製品のうち、長袖シャツ/長ズボン/半袖シャツ/半ズボンの形状を有するものだけが該当する」との記載がある。 つまり、長袖シャツ及び長ズボンの場合には、それぞれ上腕部及び大腿部を被覆する条件を満たしているので問題ないが、上半身用の半袖シャツの場合には、想定する使用者において、少なくとも上腕部を被覆できる長さの袖丈が必要であり、また下半身用の半ズボンの場合には、想定される使用者において、少なくとも大腿部を被覆できる長さの股下丈が必要であると理解することで良いか。 |
A5
貴見のとおり。
血行促進用衣として製造販売届書の提出ができるのは、その範囲の製品に限られるものと理解されたい。
Q6 自主基準の「4.原材料」において、「原材料の異なる製品、組成の異なる製品、加工方法(編み方等を含む)の異なる製品は、それぞれ別品目として取り扱う必要があることから、個々に試験等を実施するとともに、「製造販売届書」もそれぞれ別品目として提出すること」とあるが、誤って原材料、組成、加工方法等の異なる製品を同一の製造販売届書に記載して届出していた場合には、製造販売業者はどのような措置を取る必要があるか。 |
A6
原材料の異なるごと、組成の異なるごと、加工方法等の異なるごとに、それぞれの製品を用いて個別に自主基準に基づく試験が適切に実施されていることを確認した上で、製造販売届書の変更手続き及び新規の届出等によって、届出の内容を整備すること。
なお、この場合には、自主基準に基づく試験等を実施していない製品が不注意に届出されることがないよう、十分に留意すること。
Q7 自主基準の「5.3 赤外線放射特性」欄の「附記」において、「今後、公定規格等において遠赤外線衣類に適した赤外線放射特性に係る新たな評価方法が整備された場合には、本基準を改正し、当該試験方法として公定規格等に採用された新たな評価方法を追加するものとする」との記載があるが、当該自主基準における赤外線放射特性に係る試験方法の見直しは、ISO(国際標準化機構)が定めた規格やJIS(日本産業規格)等の公定規格が適切に整備されるまでは行われないものと理解して良いか。 |
A7
貴見のとおり。
医療機器の基準として採用できる試験方法や基準値等は、標準化された公定規格を根拠とすることが基本的な考え方となる。
Q8 自主基準の「13.添付文書」の「(4)使用方法等」において、「使用に際しては肌着等の上に重ねて着用することを意図するものか、あるいは素肌に直接接触させる形で着用することを意図するものか、その具体的な使用方法を明記すること」とあるが、肌着等の上に重ねて着用することも、素肌に直接接触させる形で着用することも、その両方を許容する製品においては、その旨を説明することでよいか。 |
A8
貴見のとおり。
ただし、その場合には、自主基準の附属書に定める「家庭用遠赤外線血行促進用衣を用いた血流量の変化に係る評価試験方法」に準拠した試験の実施において、肌着等の上に重ねて着用したケースと、素肌に直接接触させる形で着用したケースの二とおりの試験を個別に実施するものとし、双方のデータに有意差がなく、双方ともに基準値を満たしていることをあらかじめ試験によって確認し、その根拠データ等を適正に保管しておくことが前提となる。
自主基準の附属書「8.試験の実施」においても、試験の実施時には添付文書に記載された使用方法に従って被験者に試験対象物である衣類を着用させることが求められていることにも留意されたい。
Q9 自主基準の附属書「11.文書及び記録の管理」において、当該製品(血行促進用衣)は基本要件基準に基づく有効性、安全性等への適合性を担保する必要があるとともに、「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(以下「QMS省令」という。)への適合性を確保する必要があり、許可の更新調査や立入調査等の際、調査者の求めに応じて文書や記録等を適切に提示する必要がある旨の記載があるが、具体的にはどのような対応が必要であるか。 |
A9
法第41条第3項の規定により厚生労働大臣が定める「医療機器及び体外診断用医薬品の基準(基本要件基準)」については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のウェブサイトに解説が掲載されているので参考にされたい。
(https://www.pmda.go.jp/files/000240068.pdf)
製造販売業者は、製造販売届書を提出するすべての製品について、この基本要件基準への適合確認を行う必要があり、個々の要求項目ごとに「適用/不適用の別」を明らかにし(第1条から第6条までは全品目が適用、第7条から第18条までは医療機器の特性に応じて適用か不適用かを明確にする)、「適合の方法」(どのような規格基準等をもとに適合確認を行うか)を定め、その規格基準等の詳細を「特定文書」として明らかにし、その規格基準等に基づいて評価や試験等を実施して適合性を確認したことを「適合証拠」として文書化しておくことが求められている。これらの文書、記録等を整備した上で、血行促進用衣の製造販売届書を提出することとなる。
また、QMS省令への適合性の確保については、血行促進用衣は「限定一般医療機器」に該当し、また限定一般医療機器のみを製造販売する製造販売業者は「限定第三種医療機器製造販売業者」となることから、QMS省令において限定一般医療機器に係る製品及び限定第三種医療機器製造販売業者について適用される全ての条項についてその適合性を確保する必要がある。
なお、QMS省令第7条の2に規定される「製品標準書」については、製造販売届書と対応する形で整備されている必要があり、基本要件基準を満たしていることを示す文書や記録、また「自主基準」を満たしていることを示す文書や記録等も含めて、この製品標準書と紐付けされた形で作成・管理されていることが望ましい。
自主基準の附属書「11.文書及び記録の管理」において記載されていることは、これらの活動について要約したものであり、上記の文書や記録は、製造販売業の許可の更新時に行われる都道府県による査察等の際に、提示を求められる場合があることに留意されたい。
Q10 今般、この「質疑応答集(Q&A)」によって具体的に示された考え方に準拠して、既に提出済みの製造販売届書を点検し、記載等の不備や逸脱等が認められた場合には、すみやかに是正のための措置を取ることとしてよいか。 |
A10
貴見のとおり。
提出済みの製造販売届書に対する自主点検のほか、自社で製造販売する血行促進用衣に係る広告や営業資料等(インターネットへの情報掲載等を含む)の内容の確認、またA8で示した他の法令等への適合確認等も含めて自主点検し、不備や逸脱等が認められた場合には、すみやかに是正のための措置を取るよう徹底されたい。
(参考)
一般的名称:家庭用遠赤外線血行促進用衣
定義:遠赤外線の血行促進作用により疲労や筋肉のこり等の症状改善を行うことを目的とした、衣類形状の器具をいう。生地に鉱物等による特殊な加工が施されており、一定程度の遠赤外線を輻射する。上半身用及び下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部および大腿部を被覆する。ただし、パーツ形状は含まないものとする。