○年次報告に係る変更手続導入に向けた試行的実施について
(令和7年2月13日)
(医薬薬審発0213第5号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)
(公印省略)
医薬品の承認申請書における製造方法の記載方法等については、「改正薬事法に基づく医薬品等の製造販売承認申請書記載事項に関する指針について」(平成17年2月10日薬食審査発第0210001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)において示してきたところですが、医薬品製造販売承認事項の軽微な変更に係る届出(以下「軽微変更届出」という。)については、軽微な変更をした後30日以内に行わなければならないこととしています。
今般、国際整合等の観点から、品質に与える影響が比較的小さいものについて、承認事項の変更の都度、軽微変更届出を行うことなく年に1度の報告に代えることができる手続(以下「年次報告」という。)の導入に向け、試行的な取組を実施することとしました。その具体的な手続等について下記のとおり定めましたので、御了知の上、貴管内関係事業者に対して周知方御協力よろしくお願いいたします。また、本通知の写しについて、別記の関係団体等宛てに発出するので、念のため申し添えます。
なお、本取組の利用は任意であり、利用を希望しない場合、承認申請書の記載については従前のとおりとすることで差し支えありません。
記
1 概要
年次報告は、医療用医薬品について、製品品質に対するリスクへの十分な理解に基づき、企業の医薬品品質システム(以下「PQS」という。)のもとで、承認後変更のマネジメントを、より予測可能かつ効率的な形で行えるようにするための枠組みの一つである。本通知に基づく試行的実施は、品質に与える影響が比較的小さいため1年に1度の報告とする事項(以下「年次報告事項」という。)を承認事項とは別に承認申請書の附属文書に記載することで行うこととする。
2 年次報告の対象となる事項
年次報告の対象となる事項としては、承認申請書の「製造方法欄」のうち、既に軽微変更届出事項として承認書に記載している一部のパラメータが挙げられること。このほか、「規格及び試験方法」(別紙規格を含む。)や「成分及び分量又は本質」のテキスト欄、表示・保管のみを行う製造所の追加のうち現在軽微変更届出で行っているもの、外部試験検査機関の追加のうち現在軽微変更届出で行っているものなどが対象となり得る。個別品目において、具体的にどの部分が年次報告事項となるかは、企業のPQSの状況を適宜踏まえながら、個別に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)の審査・相談の中で妥当性が判断され決定される。このほか、厚生労働省が通知等により承認書の記載の変更を指示する際に、年次報告事項を設定している品目は年次報告時に対応することで良いとする場合がある。
3 試行的実施の流れ
(1) 試行的実施における承認申請書等の記載方法
承認申請書において、年次報告事項の項目を【年次報告○】と記載し、年次報告事項とする内容を報告事項ごとに附属文書に記載する。
例えば、製造方法欄については、別表に掲げる区分に応じて、原材料、製造方法、工程パラメータ及び年次報告事項について、それぞれ承認申請書又は附属文書に記載する。なお、「医薬品の製造方法の記載方法及び変更手続について」(令和6年9月30日医薬薬審0930第7号厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)の別添において提示した、Step番号、工程名、パラメータ名、パラメータの値又は範囲、変更区分の別等を示す一覧表を示した別紙を添付する方法による記載方法を活用しつつ、年次報告事項を明らかにする。また、工程パラメータの変更区分は、総合的な品質管理戦略を考慮した、工程パラメータの変更に伴う製品品質に対する潜在的リスクの評価に基づいて製品ごとに判断されるため、本記載例における年次報告対象に選別されたパラメータはあくまで例示であることに留意するとともに、年次報告を行う旨を「電磁的記録媒体を利用した申請等の取扱い等の詳細について(通知)」(令和5年12月26日付け医薬薬審発1226第1号、医薬機審発1226第3号厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長、医療機器審査管理課長連名通知)別添の電磁的記録媒体記録要領(以下「記録要領」という。)63の(13)備考2のkに規定するその他備考欄に記載する。
(2) PMDAへの相談
年次報告事項を設定して医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請(以下、「一部変更承認申請」という。)をしようとする場合、承認申請書及び附属文書の記載方法の形式を整理するため、PMDAに事前面談を申し込むこと。また、製剤など、特定の工程に対して年次報告制度を導入する場合なども、その背景や妥当性を含めて事前面談で整理すること。
なお、新たに製造販売承認申請する医薬品で年次報告事項を設定する場合は、審査の過程で確認を受けること。
(3) 承認申請
① 一部変更承認申請の場合
既承認の医薬品について年次報告事項を設定する場合は、現行の一部変更申請の区分より適切なものを選択し、申請すること。また、記録要領63の(13)備考2のbに規定する優先審査欄に優先審査コード「19128」を記載すること。
② 新規承認申請の場合
新たに製造販売承認申請する医薬品について年次報告事項を設定する場合にも、「① 一部変更承認申請の場合」と同様に、優先審査欄に優先審査コード「19128」を記載すること。
(4) 年次報告
年次報告事項の設定に係る一部変更承認又は年次報告事項を含む製造販売承認の日から起算して、原則として1年毎に、以下の事項を報告すること。
なお、グローバル開発品目などで我が国における承認品目の品質に係るライフサイクル管理を諸外国と同期する必要があるなどの場合は、年次報告の報告日は年次報告に係る一部変更承認又は年次報告事項を含む製造販売承認の日から起算して1年より短い間隔で年次報告を行うなど、製造販売業者において任意に設定することが可能である。ただし、同一品目に対して年次報告に係る一部変更承認が複数回行われた場合など、同一品目に対して複数の起算日が生じ得る場合には、それらのうちいずれか一つを起算日として、当該品目の次回の年次報告の報告日とすること。また年次報告事項に変更がなかった場合については、変更がなかった旨を報告すること。
① 年次報告事項の設定に係る一部変更承認の日、年次報告事項を含む製造販売承認の日又は前回の年次報告の起算日から報告日までに実施した変更事項一覧(本通知の別紙参照)。
② 各変更事項に対して変更するに至った妥当性を示す根拠データ(年次報告の内容に係るもので、製法変更などに伴ってデータが存在する場合に限る。また、年次報告事項に関係しない情報は記載しないこと)
試行的実施においては、年次報告の確認は、当該医療用医薬品が「医薬品の承認申請について」(平成26年11月21日付け薬食発1121第2号厚生労働省医薬食品局長通知)の別表2―(1)の(10の3)その他の医薬品(再審査期間中でないもの)であるか否かにかかわらず、PMDAが実施する医薬品軽微変更届事前確認相談において行うこととするため、当該相談において①及び②に係る資料を提出すること。また申し込みの際には一般的な医薬品軽微変更届事前確認相談と異なるプロセスで相談を実施する部分があるため、今後発出する事務連絡を確認すること。なお、その場合の年次報告の報告日とは、相談の申込日とする。
相談後、報告事項については結果に応じて適切な薬事手続を行い、承認書等に反映すること。
4 その他
(1) 年次報告事項として承認申請書の附属文書に記載した箇所については、承認書の記載内容そのものではないため、変更後に随時軽微変更届出を行わなくても違法性を問われるものではないこと。ただし、年次報告を必ず実施するよう留意すること。
(2) 年次報告事項以外に軽微変更届出がなされた事項については、従来、次の一部変更承認時に確認することとしているが、年次報告事項を設定している品目については、年次報告の確認のタイミングで妥当性を確認するものであること。
(3) 年次報告事項を含む品目について、GMP適合性調査を受ける際には、調査の際に、年次報告制度の対象となる事項について、適切な医薬品品質に関するライフサイクルマネジメントを行っていることを説明できるようにしておくこと。
(4) 年次報告制度が施行される場合には、改めて軽微変更届出等による承認事項の変更手続きが必要になる可能性があるので留意すること。
(5) 本通知に基づく試行的実施については、「中等度変更事項に係る変更手続の導入の試行について」(令和6年9月27日医薬薬審発0927第4号厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)に基づく試行と同時に実施することは可能であること。
(6) 試行的実施の実施結果を確認するため、PMDAから変更の製造管理の実施状況を問い合わせる可能性があるので、その際には協力願いたいこと。
(7) 試行的実施において、品質・製造管理に疑義を生じた場合には、遅滞なくPMDAに相談すること。
(8) 年次報告とすることができる具体的事例については、試行的実施を踏まえて、今後、通知等により示す予定であること。
(別表)
(別紙)
(別記)
日本製薬団体連合会
日本製薬工業協会
米国研究製薬工業協会在日執行委員会
一般社団法人欧州製薬団体連合会
独立行政法人医薬品医療機器総合機構