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○人体に直接使用される忌避剤の忌避効果持続時間の表示について

(令和6年12月11日)

(医薬薬審発1211第7号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)

(公印省略)

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第2条第1項に規定する医薬品及び同条第2項に規定する医薬部外品のうち、衛生害虫の防除を目的とする薬剤については、防除用医薬品及び防除用医薬部外品(以下「防除用医薬品等」という。)として取り扱っているところです。また、防除用医薬品等のうち、ディートを有効成分として30%(原液中濃度)含有する忌避剤及びイカリジンを有効成分として15%(原液中濃度)含有する忌避剤については、「防除用医薬品及び防除用医薬部外品の製造販売承認申請に係る手続きについて」(平成28年6月15日付け薬生審査発0615第1号厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知。以下「平成28年課長通知」という。)により、該当する製剤について新たに製造販売承認を取得するために、法第14条第1項の規定に基づく製造販売承認申請(以下単に「製造販売承認申請」という。)を行う場合は、使用上の注意に忌避効果の持続時間を記載することとしています。

今般、日本家庭用殺虫剤工業会が令和6年12月11日付けで別紙のとおり「人体用忌避剤の持続時間表示に係る自主基準」(以下「自主基準」という。)を策定したことを踏まえ、今後、感染症媒介蚊の忌避を目的として人体に直接使用される忌避剤の忌避効果持続時間に関して、下記のとおり取り扱うこととしましたので、御了知の上、自主基準と併せて貴管下関係業者に周知をよろしく御配慮願います。

1.対象製剤

防除用医薬品等のうち感染症媒介蚊の忌避を目的として人体に直接使用する忌避剤

2.表示内容

直接の容器又は被包に次の事項を記載すること。

(1) 手のひらでむらなく塗り広げること。

(2) 1回の使用による忌避効果の持続時間。

(3) 経過時間や使用時の使用者の発汗等の状況を踏まえた塗りなおしの注意喚起。

3.製造販売承認申請等に係る手続

(1) 上記1の対象製剤であって、新たに製造販売承認申請を行うもの

新たに製造販売承認申請を行う場合は、「用法及び用量」欄に効果持続時間等を記載すること。なお、自主基準「4.効果持続時間の設定」で示されているマトリックスに基づき効果持続時間を設定する場合は、「備考」欄に「人体用忌避剤の持続時間表示に係る自主基準のマトリックスによる」旨を記載すること。

(2) 上記1の対象製剤であって、既に製造販売承認を取得しているもの

ア 既に製造販売承認を取得している製剤について、自主基準「4.効果持続時間の設定」で示されているマトリックスに基づき効果持続時間を設定する場合は、法第14条第15項の規定に基づく承認事項の一部変更承認申請(以下「一変申請」という。)において、「用法及び用量」欄に持続時間等を記載するとともに、「備考」欄に「人体用忌避剤の持続時間表示に係る自主基準のマトリックスによる」旨を記載すること。

イ 自主基準の別添「人体用忌避剤の持続時間表示に係る試験法」に基づき効果持続時間を設定する場合は、一変申請において、「用法及び用量」欄に持続時間等を記載すること。

ウ アの場合において一変申請が行われる場合、エに示す期間に申請を受け付けたものに限り、迅速に処理を行うこととするが、この場合において持続時間に関する事項以外を変更することはできないこと。迅速審査を希望する場合は、一変申請の申請書の右肩に「持(「持」に○(マル)を付ける)」の表示を朱書きすること。ただし、「申請書等のオンライン提出に係る取扱い等について」(令和5年3月22日付け薬生薬審発0322第1号・薬生機審発0322第2号・薬生安発0322第1号・薬生監麻発0322第2号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、医療機器審査管理課長、医薬安全対策課長及び監視指導・麻薬対策課長連名通知)に基づきオンライン提出する場合は、「持(「持」に○(マル)をつける)」の記載は不要とする。また、当該申請書にあっては、「備考」欄に「令和6年12月11日付け医薬薬審発1211第7号「人体に直接使用される忌避剤の忌避効果持続時間の表示について」による申請」と記載し、「フレキシブルディスク申請等の取扱い等について」(令和4年2月16日付け薬生薬審発0216第1号・薬生機審発0216第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、医療機器審査管理課長連名通知)別添のフレキシブルディスク等記載要領63の(13)備考2のbに規定する優先審査欄に優先審査コード「19127」を記載すること。

エ 迅速審査を行う申請期間については、次のとおりとする。

第1期:令和7年1月6日から令和7年1月31日まで(必着)

第2期:令和7年6月2日から令和7年6月30日まで(必着)

第3期:令和7年9月1日から令和7年9月30日まで(必着)

(3) 申請区分については、次のとおりである。なお、申請区分は一般用医薬品又は医薬部外品になるが、手数料は防除用医薬品区分又は防除用医薬部外品区分となる。

・一般用医薬品

①マトリックスに基づく場合は「区分(8)(その他の一般用医薬品)」

②マトリックスに基づかない場合は「区分(5)―4(一般用(要指導)新用量医薬品)」

・医薬部外品

①マトリックスに基づく場合は「区分(4)(類似医薬部外品)」

②マトリックスに基づく場合であって、持続時間等も含めて同一の承認前例がある申請であるときは「区分(5)―1(同一医薬部外品)」

③マトリックスに基づかない場合は「区分(2)―5(新用法医薬部外品)」

4.その他の留意事項等について

(1) 既に製造販売承認を取得している忌避剤については、当面の間、従前のとおりとすることができるが、適切な機会を捉えて本通知3(2)に基づく対応を行うこと。

(2) 平成28年課長通知の対象としている製剤については、使用上の注意に忌避効果の持続時間を記載することとしているが、適切な機会を捉えて本通知3(2)に準じて対応すること。

(3) 一変申請に伴う、直接の容器又は被包及び外部の容器又は被包並びに添付文書の表示の切替えは、一部変更承認後に速やかに行うこと。

[別紙]

人体用忌避剤の持続時間表示に係る自主基準

2024年12月11日

日本家庭用殺虫剤工業会

1.はじめに

本自主基準は、人体用忌避剤の蚊成虫に対する忌避効果の持続時間を設定し製品に表示する際の業界の統一ルールを定めたものである。国内では、さまざまな人体用忌避剤が販売されているが、その持続時間の表示にあたっては、各社で異なった試験方法により独自にデータを取得し標榜している。今回、厚生労働省からすべての人体用忌避剤への持続時間の表示が求められ、業界としても製品情報を正しく消費者に伝える必要があることから、自主基準を設定し運用することにした。

2.自主基準策定の背景と目的

人体に直接処理して、感染症を媒介する蚊等の刺咬性害虫による被害を抑える人体用忌避剤は、厚生労働省の製造販売承認が必要な防除用医薬品及び防除用医薬部外品である。その用法用量は、適量を肌等に処理する、となっており、経過時間や使用者の発汗等の状況を踏まえて適宜使用することになっている。

平成26年8月にヒトスジシマカによるデング熱の国内感染が確認され、平成27年にはシマカ類によるジカウイルス感染症が中南米を中心に流行し国内への侵入が危惧された。このことを受けて、平成28年6月15日に厚生労働省から忌避剤の製造販売承認申請の取扱いに関する課長通知(薬生審査発0615第1号)が発出され、ディートを有効成分として30%含有する忌避剤及びイカリジンを有効成分として15%含有する忌避剤について迅速審査による取扱いが定められた。

本通知において、忌避効果の持続時間は申請書の使用上の注意として記載すべき事項とされた。加えて、既存製品で標榜している持続時間が各社により異なることから、試験方法を統一した上で、製品に表示するよう厚生労働省から指導を受けた。

日本家庭用殺虫剤工業会では、厚生労働省からの指導を踏まえて、適切に忌避効果の持続時間が製品表示に反映されるよう運用方法について定め、今回、自主基準として発行することとした。

3.適用範囲

本自主基準は、蚊を忌避させるため、人の皮膚に直接使用することを目的とした、エアゾール、液剤、クリーム、ジェル、ウェットティッシュ等の製品に適用する。

4.効果持続時間の設定

効果持続時間は、下記のマトリックスに基づいて表示できるほか、別添『人体用忌避剤の持続時間表示に係る試験法』(以下、本試験法)により求めた試験結果に基づいて表示することができる。後者に関しては、2試験機関*1以上において客観的な評価を行い、製造販売承認の審査で試験結果の妥当性が認められた上で、承認内容に基づいて表示することができる。この場合の効果持続時間は、2試験機関で得られた試験結果の平均値から小数点以下を切り捨てた値に±1時間の幅を持たせて表示する。尚、効果持続時間は実際に2試験機関で得られた試験結果を超えないものとする。*2

ディート濃度

効果持続時間

イカリジン濃度

効果持続時間

5%以上10%未満

1~3時間

5%

6時間まで

10%、12%

3~5時間

15%

6~8時間

30%

5~8時間



*1 外部試験機関としては、日本環境衛生センターにて本試験が実施できることを確認しているが、試験結果の妥当性に関しては製剤の承認審査において判断される。

*2 効果持続時間の記載の仕方

(例1) 2試験機関で得られた試験結果が9時間と8時間の場合

平均値8.5時間から小数点以下を切り捨てた値8時間に±1時間の幅を持たせて、製品へは「7~9時間」と記載する。

(例2) 2試験機関で得られた試験結果が9時間と9時間の場合

平均値9時間に±1時間の幅を持たせると「8~10時間」となるが、「効果持続時間は実際に2試験機関で得られた試験結果を超えないものとする」ことから、製品へは「8~9時間」と記載する。

5.製品への表示方法

① 手のひらでむらなく塗り広げること、② 1回使用による忌避効果の持続時間、③ 経過時間や使用時の使用者の発汗等の状況を踏まえた塗りなおしの注意喚起、という3つのポイントを押さえることを必須として、承認申請書の【用法及び用量】の記載に基づき表示する。

(承認申請書記載例)

本品を適量噴霧(又は塗布)した後、手のひらでむらなく塗り広げる。本品の1回使用による忌避効果の持続時間は、概ね○~○時間である。持続時間を目安に、経過時間や使用時の使用者の発汗等の状況を踏まえて、適宜、本品を再度使用する(ウエットティッシュの場合は、「手のひらで」は省略できる)。

以上

別添

人体用忌避剤の持続時間表示に係る試験法

1.試験の概要

蚊を放飼したケージに、忌避剤を処理していない右手と処理した左手を順番に入れ、各々の手に飛来して係留する蚊の数を比較し忌避率を求める。同様にして、同じ手を用いて経時的に忌避率を求め90%以上の忌避効果が持続する時間を得る。この結果より忌避剤の持続時間を設定する。

2.定義

係留とは、蚊が人を吸血するために、体温、臭い物質を感知して人体の皮膚上に停まる行為を指す。

3.試験の準備

3.1 試験に用いる蚊

3.1.1 種

試験には研究室で継代飼育しているウイルスフリーのヒトスジシマカ(Aedes albopictus)を用いる。

3.1.2 齢、性別

試験には雌雄混合で1週間以上飼育された1~3週齢(羽化後概ね5日齢以上)の未吸血の雌成虫を用いる。供試虫の齢を記録しておく。

3.1.3 蚊の調整

試験に用いる蚊は、飼育ケージに手を近づけた時に吸血行動を取る個体群を用いる。蚊の捕集は吸虫管を用い、麻酔は使用しないことが望ましい。麻酔を行った場合は、十分に麻酔から覚めた状態で供試する。

3.2 試験検体

試験検体は製剤を使用する。ただし、エアゾールは噴射ガスを除いた原液、ウェットティッシュは有効成分の吸着による影響がないことを確認して含浸液を用いる。

3.3 試験ケージ

ケージのサイズは異なる場合もあるが、通常は25×25×25cmまたは30×30×30cmの金属ケージを用いる。ケージは底面以外はメッシュ網(18~30メッシュ)で構成され、被験者の手を差し込むスリーブ開口部を設ける。

3.4 蚊の密度

25×25×25cmまたは30×30×30cmのケージに20~60頭を目安に雌成虫を投入する。無処理の前腕をケージに差し込み1分間の係留数が10頭以上であることを確認する。10頭を下回る場合は新たな蚊を投入する。新たな蚊を投入しても係留数が10頭を下回る場合は被験者または試験蚊集団として採用しない。

3.5 試験条件

試験中は室温23~29℃前後、湿度40~80%RHに維持し、被験者は持続時間の試験が終了するまで同温湿度条件下で発汗が増すような活動は避け、処理部位に対して、こすれたり、触れたり、濡れたりする行為を避ける。

3.6 適用部位と準備

手の甲の部分を使用する。試験前に処理区及び無処理区の適用部位を無香料の石鹸で洗浄し、清潔なタオルで拭いて水分を除く。洗浄した後、1時間以上経ってから試験を開始する。試験期間中はハンドクリームや香水、タバコ等、試験に影響を与えそうなものを使用したり身に着けたりしない。

3.7 被験者のリスク

前もって被験者には、試験内容と刺咬等の想定されるリスクを十分に説明し、必ず同意を取ること。試験責任者は被験者の体調等に配慮し、問題がある場合は、被験者から外したり、試験を中止する措置を取る。試験中は係留した蚊はすばやく振り落とすなど被験者が蚊に刺されないように、十分な配慮をする。被験者に試験への参加を強要しない。

4.試験の手順

① 被験者1人に対して忌避試験用ケージを1つ用意し、中に供試虫を入れる。

② 被験者の皮膚表面積を合わせるため、試験検体を片方の手の甲に、ジェル、クリームの場合は1g/600cm2、エアゾール、ウェットティッシュ、液剤の場合は1mL/600cm2の割合で均一に塗布した後に、甲の部分を約5×5cmの大きさに切り取ったラテックス製の手袋(パウダーフリー)をはめ処理区とする。手袋脱着の際は塗布部分に触れないように気を付ける。もう片方の薬剤を処理しない手も同様の手袋をはめ無処理区とする。

③ 無処理、処理の順に手をケージに入れ、所定時間(5分間)の係留数を数える。なお、係留条件としては、しっかり着地した個体のみとし、瞬間的に脚が触れた個体については、係留個体としてカウントしない。供試虫が係留した際には速やかに払いのける。この操作を異なる被験者3名で実施しその平均忌避率を求める。

④ 係留数から次式を用いて忌避率を算出する。

忌避率(%)=(1-処理区の係留数/無処理区の係留数)×100

⑤ 残効性を評価する場合は、所定時間間隔で実施する。90%以上の忌避率が得られる持続時間を求める。

以上