アクセシビリティ閲覧支援ツール

○薬物相互作用試験に関するガイドラインについて

(令和6年11月27日)

(医薬薬審発1127第2号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)

(公印省略)

近年、優れた新医薬品の研究開発を世界規模で促進し、患者へ迅速に提供するため、承認審査資料の国際的な調和の推進を図ることの必要性が指摘されています。このような要請に応えるため、医薬品規制調和国際会議(以下「ICH」という。)が組織され、品質、安全性及び有効性の各分野で、承認審査資料の国際的な調和の推進を図るための活動が行われているところです。

医薬品の相互作用の検討方法については、「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(平成30年7月23日付け薬生薬審発0723第4号)(以下「国内ガイドライン」という。)において示してきたところです。今般、ICHにおける合意に基づき、別添のとおり「薬物相互作用試験」に関するガイドライン(以下「ICHガイドライン」という。)が取りまとめられましたのでお知らせします。つきましては、貴管下関係業者等に対して周知方御配慮願います。

ICHガイドラインは、医薬品開発における被験薬の薬物相互作用の可能性を評価するための一般的な推奨事項について、国際的に調和された原則を示すことを目的とします。国内ガイドラインと重複する内容についてはICHガイドラインを参照してください。ICHガイドラインの適用範囲は薬物代謝及びトランスポーターを介した薬物の代謝・排泄における相互作用であり、薬物の吸収・分布における相互作用や、薬物相互作用試験の情報に関する添付文書等における情報提供に関する基本となる考え方は、ICHガイドラインの適用範囲外であることから、国内ガイドライン(「2.吸収における薬物相互作用」、「3.組織移行及び体内分布における薬物相互作用」及び「8.薬物相互作用に関する情報提供と注意喚起について基本となる考え方」項)の記載を引き続き参照してください。

なお、本通知の写しについて、別記の団体等宛てに事務連絡しますので、念のため申し添えます。

(別記)

日本製薬団体連合会

日本製薬工業協会

米国研究製薬工業協会在日執行委員会

一般社団法人欧州製薬団体連合会

独立行政法人医薬品医療機器総合機構

[別添]

ICHガイドライン

薬物相互作用試験

M12

ICH M12

薬物相互作用試験

目次

1.緒言

1.1 目的

1.2 背景

1.3 適用範囲

1.4 一般原則

2.In vitro評価

2.1 薬物代謝が関与する相互作用の評価

2.1.1 代謝酵素の基質としての被験薬

2.1.2 CYPの阻害薬としての被験薬

2.1.2.1 可逆的阻害

2.1.2.2 時間依存的阻害

2.1.3 UGTの阻害薬としての被験薬

2.1.4 CYPの誘導薬としての被験薬

2.1.4.1 Basic法(mRNAレベルの変動倍率)

2.1.4.2 Correlation法

2.1.4.3 基本的な速度論モデル

2.1.4.4 誘導に関連する他の留意事項

2.2 トランスポーターが関与する相互作用の評価

2.2.1 トランスポーターの基質としての被験薬

2.2.1.1 データ解析及び解釈

2.2.2 トランスポーターの阻害薬としての被験薬

2.2.3 トランスポーターの誘導薬としての被験薬

2.3 代謝物のDDIの可能性

2.3.1 基質としての代謝物

2.3.2 阻害薬としての代謝物

2.3.3 誘導薬としての代謝物

3.臨床評価

3.1 臨床DDI試験の種類(用語)

3.1.1 スタンドアローン試験及びネステッドDDI試験

3.1.2 指標薬(相互作用薬及び被相互作用薬)を用いた臨床DDI試験

3.1.3 併用が見込まれる薬剤を用いた臨床DDI試験

3.1.4 カクテルアプローチ

3.1.5 バイオマーカーアプローチ

3.2 臨床DDI試験の試験計画及び留意事項

3.2.1 試験デザイン

3.2.1.1 対象被験者及び被験者数

3.2.1.2 用量

3.2.1.3 単回又は反復投与

3.2.1.4 投与経路及び剤型

3.2.1.5 並行比較対クロスオーバー試験

3.2.1.6 投与タイミング

3.2.1.7 DDIに影響を及ぼす併用と他の外的要因

3.2.1.8 試料採取及びデータ収集

3.2.2 ネステッドDDI試験に関する留意事項

3.2.3 CYPを介した相互作用評価に関する留意事項

3.2.3.1 CYPの基質としての被験薬

3.2.3.2 CYPの阻害薬又は誘導薬としての被験薬

3.2.4 UGTを介した相互作用評価に関する留意事項

3.2.4.1 UGTの基質としての被験薬

3.2.4.2 UGTの阻害薬としての被験薬

3.2.4.3 UGTの誘導薬としての被験薬

3.2.5 トランスポーターを介した相互作用評価に関する留意事項

3.2.5.1 トランスポーターの基質としての被験薬

3.2.5.2 トランスポーターの阻害薬としての被験薬

3.2.5.3 トランスポーターの誘導薬としての被験薬

3.2.6 CYP又はトランスポーターのカクテル試験に関する留意事項

3.2.7 バイオマーカーアプローチの留意事項

3.2.7.1 肝OATP1Bの阻害薬としての被験薬

4.その他のトピック

4.1 薬理遺伝学

4.2 生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品、生物起源由来医薬品)のDDI

4.2.1 炎症性サイトカインの関連する機序

4.2.2 抗体薬物複合体

5.臨床DDI試験の結果報告と解釈

5.1 薬物動態データ解析

5.1.1 ノンコンパートメント解析(NCA)

5.1.2 母集団薬物動態解析

5.2 臨床DDI試験の結果報告

5.3 臨床DDI試験の結果解釈

5.3.1 No‐effect Boundariesの決定

5.3.2 DDIの相互作用薬としての被験薬:分類方法

5.3.3 試験結果の外挿

5.3.3.1 複雑なシナリオの外挿

6.リスク評価とマネジメント

7.付録

7.1 用語集

7.2 タンパク結合

7.3 代謝酵素が関与するDDIのin vitro評価

7.3.1 In Vitro評価系

7.3.2 代謝酵素の基質としての被験薬(反応同定)

7.3.2.1 代謝経路の同定

7.3.2.2 代謝酵素の同定

7.3.3 代謝酵素の阻害薬としての被験薬

7.3.4 代謝酵素の誘導薬としての被験薬

7.4 トランスポーターが関与するDDIのin Vitro評価

7.4.1 In vitro評価系

7.4.2 トランスポーターの基質としての被験薬

7.4.3 トランスポーターの阻害薬としての被験薬

7.5 予測モデリング

7.5.1 DDI予測のための静的薬物速度論モデルの利用

7.5.1.1 CYPを介したDDIの相互作用薬としての被験薬の評価

7.5.1.2 CYPを介したDDIの被相互作用薬としての被験薬の評価

7.5.1.3 トランスポーターを介したDDIの可能性の評価

7.5.2 代謝酵素又はトランスポーターを介したDDIを予測するためのPBPKモデルの利用

7.5.2.1 CYPを介したDDI評価におけるPBPKの利用可能性

7.5.2.1.1 モデリングに関する留意事項―CYPを介した相互作用における基質としての被験薬のPBPK評価

7.5.2.1.2 モデリングに関する留意事項―CYPを介した相互作用における相互作用薬としての被験薬のPBPK評価

7.5.2.2 トランスポーターを介したDDI評価のためのPBPKモデルの適用の可能性

7.5.2.2.1 モデリングに関する留意事項―被験薬がトランスポーターの基質となる場合

7.5.2.2.2 モデリングに関する留意事項―被験薬がトランスポーターの阻害薬となる場合

7.6 In Vitro試験における使用可能な薬剤リスト

7.6.1 CYP

7.6.1.1 In Vitro試験でのCYP基質

7.6.1.2 In Vitro試験でのCYPの阻害薬/誘導薬

7.6.2 UGT

7.6.2.1 In Vitro試験でのUGT基質

7.6.2.2 In Vitro試験でのUGT阻害薬

7.6.3 トランスポーター

7.7 臨床DDI試験における使用可能な薬剤リスト

7.7.1 CYP

7.7.1.1 臨床DDI試験におけるCYP基質

7.7.1.2 臨床DDI試験における用いるCYPの阻害薬

7.7.1.3 臨床DDI試験におけるCYPの誘導薬

7.7.2 UGT

7.7.3 トランスポーター

7.7.3.1 臨床DDI試験におけるトランスポーターの基質

7.7.3.2 臨床DDI試験におけるトランスポーターの阻害薬

8.参考文献

1.緒言

1.1 目的

本ガイドラインは、治療薬の開発における代謝酵素又はトランスポーターを介したin vitro及び臨床DDI試験の計画、実施、並びに結果解釈において、一貫したアプローチを促進するための推奨事項を示している。一貫性のあるアプローチは、製薬企業が複数の規制当局の要求を満たすための不確実性を低減し、リソースのより効率的な活用につながるであろう。さらに、このアプローチは、複数の薬剤を併用している患者への有効かつ安全な治療につながるであろう。

1.2 背景

臨床現場では、患者が複数の薬剤を処方されることが多く、そのことが要因となってDDIが生じることがある。特に脆弱な高齢患者や、深刻な又は複数の健康上の問題を抱えている患者は、多くの異なる薬剤を処方される可能性がある(即ち、ポリファーマシー)。DDIの発現は共通の臨床上の問題であり、有害事象のリスクを高め、時には入院に至ることもある。また、一部のDDIは治療効果を低下又は増強させる可能性もある。したがって、被験薬が他の薬剤と相互作用を起こす可能性を考慮することが重要である。

DDIの検討のための各地域のガイドラインは数十年前から存在しており、科学的進歩に応じて更新されてきた。一般に、被験薬の相互作用の可能性を評価するためのアプローチは地域間で類似しているが、調和を図るための取り組みが実施されてはいるものの、いくつかの差異が残されている。本ガイドラインは、in vitro及び臨床におけるDDI評価の推奨事項を調和させることを目的としている。

本ガイドラインは、被験薬のDDIの可能性を評価するための一般的な推奨事項を示している。一般にDDIの評価では、特定の薬物、対象となる患者集団、治療の状況に応じて調整する必要があると考えられる。また、適切に正当化できるのであれば、代替のアプローチも受け入れられるであろう。本ガイドラインは新薬の開発過程に焦点を当てているが、当該薬剤の承認後にDDIの可能性に関する新たな科学的知見が得られた場合には、追加の評価を検討すべきである。

1.3 適用範囲

本ガイドラインの適用範囲は、代謝酵素及びトランスポーターを介した相互作用に焦点を当てた薬物動態学的相互作用に限定されている。一般に、これらの側面は、低分子化合物の開発に適用される。生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品、生物起源由来医薬品)のDDIの評価については、モノクローナル抗体及びADCに焦点を当てて簡潔に取り扱う。In vitro及びin vivo(本ガイドラインでは“臨床”と“in vivo”を互換的に用いている)の両方において、酵素やトランスポーターの阻害又は誘導を介した相互作用をどのように検討するか、また、その結果を適切な治療法の提案にどのように結びつけるかについての考え方に関する推奨事項を提供する。本ガイドラインには、代謝物を介した相互作用への対処方法についての推奨事項も含まれる。また、モデルに基づいたデータ評価とDDI予測の利用についても取り扱っている。

オリゴヌクレオチド、small interfering ribose nucleic acids(si―RNA)、ペプチドのような、他のモダリティの開発及び出現が知られている。しかしながら、これらのモダリティは本ガイドラインの適用範囲外である。該当する場合には、各地域の規制当局のガイドラインを考慮すべきである。

吸収への影響(胃内pHの変化、胃運動の変化、キレート又は複合体の形成)、食事の影響、タンパク結合の置換等、その他の種類の薬物動態学的相互作用は、本ガイドラインの適用範囲外であり、それらは各地域のガイドラインに言及されている可能性がある。同様に、薬力学的相互作用の結果として生じるDDIも本ガイドラインの適用範囲外である。

1.4 一般原則

被験薬がDDIを引き起こす可能性は、医薬品開発の過程で段階的に検討すべきである。被験薬が薬物動態学的相互作用を引き起こす可能性は、被相互作用薬として(他の薬物が被験薬に及ぼす影響)、及び相互作用薬として(被験薬が併用薬に及ぼす影響)の両方の側面で評価すべきである。すべての側面に関しての内容は本ガイドラインにおいて後述する。なお、被相互作用薬として“object”の代わりに“victim”、相互作用薬として“precipitant”の代わりに“perpetrator”の用語が歴史的に用いられていたことに留意されたい。DDIの被相互作用薬は代謝酵素やトランスポーターの基質であるため、本ガイドラインでは“基質”という用語はDDIの被相互作用薬となる可能性のある薬物のことを指す。

被相互作用薬としての被験薬の代謝酵素又はトランスポーターを介したDDIの可能性を評価するには、その薬物の主要な消失経路を明らかにする必要がある。主な消失経路が未変化体として尿中排泄ではない薬物や、非特異的な異化作用によって消失する生物薬品でない薬物の場合、主要な消失経路を特定するためには、臨床マスバランス試験が適切に実施されることが重要である。場合によっては(例、投与量の大部分が糞便中から未変化体として検出される)、絶対的バイオアベイラビリティ試験もまた、主要な消失経路を理解する上で有用となり得る。マスバランス試験のデータを用いて、特定の経路に一次代謝物及び二次代謝物として排泄される投与量に対する割合に基づいて、異なる消失経路の定量的な寄与を推定すべきである。定量的に重要な消失経路については、in vitro及び臨床試験により、これらの経路に関与する主要な酵素及び/又はトランスポーターを同定すべきである。被験薬に影響を及ぼす相互作用を予測できるか否かは、これらの酵素又はトランスポーターを同定できるか否かに依存する。

相互作用薬としての被験薬のDDIの可能性を評価するために、酵素及びトランスポーターに対するその薬物の影響を明らかにする必要がある。この評価は多くの場合、潜在的なDDIメカニズムを解明するためのin vitro試験から開始される。その後、DDIリスクの特定に続いて、メカニズム上の知見に基づいた臨床DDI試験を実施し、その結果に基づき、相互作用薬としての被験薬の臨床における管理方法について適切な注意喚起をすべきである。

DDIの評価結果は、患者を対象とした臨床試験の試験実施計画書において併用薬の使用方法を特徴付ける。臨床試験において、安全性を確保し、併用薬の不必要な制限及び/又は併用薬を必要とする患者の組入れ除外を避けるためには、相互作用の可能性に関する情報を医薬品開発の早期の段階で可能な限り速やかに得るべきである。種々の非臨床試験及び臨床試験の実施タイミングは被験薬の状況や種類によって異なるが、一般的な推奨事項を以下にいくつか示す。予測モデリング(7.5項参照)もDDIの可能性を評価する上で有用である。

・ 代謝酵素の基質となる被験薬に関するin vitroデータは、一般に、患者での臨床試験を開始する前に取得して、代謝の安定性を評価し、被験薬の潜在的な主要代謝経路及び代謝酵素を同定することが推奨される(反応同定試験)。In vitro試験において、代謝酵素の阻害薬又は誘導薬と臨床的に重要な相互作用の可能性が示唆された場合には、患者対象の臨床試験に先立って、追加的な対応(例、臨床DDI試験)が必要となる場合がある。適切な追加対応が行われるまでは、特定の阻害薬及び/又は誘導薬を併用する患者を試験の組入れから除外する等、保守的な管理が必要となる場合がある。

・ トランスポーターの基質となる被験薬に関するin vitroデータを取得すべきか否かは、そのADME(吸収、分布、代謝、排泄)特性に依存する。被験薬の吸収が限定的である場合、又は被験薬が未変化体として顕著に、能動的な肝取り込み、胆汁排泄若しくは能動的な腎排泄を受ける薬物である場合、試験実施計画書における併用薬の制限を避けるために、患者対象の臨床試験の開始前に、関与するトランスポーターをin vitro試験で特定すべきである。

・ 相互作用薬としての被験薬の主要なシトクロムP450(CYP)酵素及びトランスポーターに及ぼす影響に関するin vitroデータは、一般に、患者対象の大規模な試験を開始する前に取得することが推奨される。

・ マスバランス試験の結果は、一般に、第Ⅲ相試験の開始前に取得することが推奨される。マスバランス試験及びin vitro試験の結果に基づき、主要な代謝経路を確認・定量化し、臨床的に重要なDDIのリスクを検討するために、指標薬(強い代謝酵素阻害薬及び誘導薬)を用いた臨床DDI試験を検討すべきである。

・ 顕著な血漿中曝露又は薬理活性を有する代謝物(2.3項参照)の薬物動態学的相互作用の可能性については、未変化体の場合と同様に考慮することが推奨されるが、通常、これらの検討は、代謝物の曝露及び活性に関するより多くの情報が得られる開発後期で完了することができる。

2.In vitro評価

2.1 薬物代謝が関与する相互作用の評価

In vitro試験は、薬物代謝酵素の阻害又は誘導を介して、被験薬がDDIの被相互作用薬又は相互作用薬となるリスクを特定するための重要な最初のステップである。

2.1.1 代謝酵素の基質としての被験薬

通常、被験薬の代謝を担う主要な代謝酵素を同定するためのin vitroスクリーニングは、医薬品開発の早期に実施する。酸化的代謝が重要な場合、関与する代謝酵素の同定にあたっては、通常、被験薬が薬物代謝において最も一般的なCYP分子種(CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A(CYP3A4及びCYP3A5))のin vitro基質となるか否かを、in vitro同定試験により判定することから開始する。これらの主要なCYP分子種によって被験薬が代謝されないことが明らかとなった場合は、他の代謝酵素を検討し得る。これらの他の代謝酵素には以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。

・ CYP2A6、CYP2E1、CYP2J2及びCYP4F2を含む他のCYP分子種、並びにアルコール/アルデヒド脱水素酵素(ADH/ALDH)、アルデヒドオキシダーゼ(AO)、カルボキシルエステラーゼ(CES)、フラビンモノオキシゲナーゼ(FMO)、モノアミンオキシダーゼ(MAO)及びキサンチンオキシダーゼ(XO)を含む他の第Ⅰ相代謝酵素

・ 第Ⅱ相代謝酵素:最も頻繁に評価されるのはUGTであり、薬物や代謝物のグルクロン酸抱合に関与する。次のUGT分子種は、潜在的にin vitroで検討すべき分子種:UGT1A1、1A3、1A4、1A6、1A9、1A10、2B4、2B7、2B10、2B15及び2B17

・ グルタチオンS―転移酵素(GST)、N―アセチル転移酵素(NAT)及び硫酸転移酵素(SULT)を含む他の第Ⅱ相代謝酵素

主要な消失経路に関与する代謝酵素を同定するためのin vitro試験の試験条件の詳細については、7.3.1項及び7.3.2項に示す。

In vitro同定試験、代謝プロファイリング及びマスバランス試験は、一般に、薬物の様々な消失経路を同定かつ定量するために用いられる。全体の消失の25%以上に寄与すると推定される酵素は、一般に、被験薬が基質として相互作用を受けるリスクを定量化するために、臨床での更なる評価が必要である。臨床での評価は、通常、その酵素の指標薬(強い阻害薬)を用いた臨床DDI試験を実施する(3.2.3.1項参照)。一部の酵素については、指標薬(強い阻害薬)を用いた臨床DDI試験の代替として、薬理遺伝学的試験を行うことも可能である(4.1項参照)。また、誘導薬は複数の酵素及び一部のトランスポーターの発現をアップレギュレートすることから(一般的に薬物により誘導されないと考えられているCYP2D6を除く)、DDIのリスクを十分に特徴付けるために、強い誘導薬を用いた臨床DDI試験も一般的には必要である(3.2.3.1項参照)。

2.1.2 CYPの阻害薬としての被験薬

被験薬がCYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3Aを可逆的に阻害及び時間依存的に阻害(TDI)する可能性を評価すべきである。

2.1.2.1 可逆的阻害

可逆的阻害を検討する試験では、通常、Ki(阻害定数)は、非結合形濃度を用いて、実験的に決定するか又はIC50に基づいて推定する(7.3.3項参照)。十分に高い濃度の被験薬を用いて実施した初期の試験において、Ki,u値が以下に示すカットオフ値よりも顕著に高くなることが示唆される場合は、通常、更なるデータを得ることなく臨床における阻害リスクを否定できる。

以下を満たす場合、可逆的な酵素阻害のリスクはin vitroデータに基づいて否定することができる(Basic法)。

Ki,uは非結合形阻害定数

Cmax,uは、最高推奨用量での定常状態における非結合形Cmax

非結合形濃度を算出するために、タンパク結合性の高い薬物(即ち、タンパク結合率が99%超)を含むすべての薬物において、タンパク結合率の測定系の真度及び精度が実証されていれば、実測のfu,p値を利用できる。この実証には、生体試料中薬物濃度分析法及び適切な陽性対照(即ち、関連する血漿タンパクに高い結合性を示す薬物)を含むタンパク結合試験法のバリデーションデータを含めるべきである。1%未満のfu,p値の測定結果の信頼性を示すことが困難な場合は、血漿中の非結合形分率として1%を初期値として用いるべきである(詳細は7.2項参照)。このfu,p値に関する留意点は、代謝酵素及びトランスポーターのin vitro阻害/誘導試験の結果解釈のために、Basic法、静的薬物速度論モデル及び動的モデル(しばしばPBPKモデルと称される)が用いられる状況で適用される。

CYP3Aを阻害する経口投与薬については、以下の場合、消化管におけるCYP3A阻害のリスクを否定できる。

このBasic法により、臨床における阻害リスクを否定できない場合には、in vitro試験の結果を解釈するために、静的薬物速度論モデルやPBPKモデルが利用できる(7.5項参照)。In vitroデータとモデリングによって臨床における阻害リスクを否定できない場合には、指標薬(感度の高い基質)を用いた臨床DDI試験を実施すべきである。

被験薬が、in vitroにおいて低いKi,u値で阻害した代謝酵素の基質を用いた臨床試験で阻害を示さない場合、より大きなKi,u値を示す他の代謝酵素については、臨床における阻害リスクを否定できる。このような推論は、代謝酵素が同じ部位で発現し、同じHLM/肝細胞バッチで阻害の程度が決定されている酵素にのみ行うべきである(rank order approach)(1)。なお、経口投与薬は、肝臓の代謝酵素に加えて消化管の代謝酵素(例、CYP3A)を阻害する可能性がある。そのような場合、他のCYP分子種に関する臨床試験の陰性の結果に基づいて、rank order approachにより全身的なCYP3A阻害が否定できたとしても、消化管におけるCYP3A阻害のリスクを考慮すべきである。また、被験薬の代謝物に阻害作用がある場合、臨床試験を実施する必要があるか否かを判断するためにrank order approachを用いる際には、その寄与も考慮すべきである。

2.1.2.2 時間依存的阻害

In vitro試験(7.3.3項参照)において、被験薬のプレインキュベーションにより酵素阻害の程度が増加することが示された場合、阻害パラメータ(KI及びkinact)を求め、以下の式をTDIのリスク評価のBasic法として用いる(2)。以下の場合にin vitroのデータに基づいて臨床における阻害リスクを否定できる。

kobsは、影響を受ける代謝酵素の(見かけの一次)不活性化速度定数

kdegは、影響を受ける代謝酵素の見かけの一次分解速度定数(表6参照)

KI,uは、最大不活性化の50%の速度をもたらす非結合形の阻害薬濃度

kinactは、最大不活性化速度定数

Cmax,uは、定常状態における阻害薬の非結合形Cmax。fu,pは、1%未満の実測値に信頼性が示せない場合は1%に設定する(2.1.2.1項参照)

注:Cmax,uとKI,uは同じ単位で表す必要がある(例、モル濃度としての単位)

上記で算出された比が1.25以上の場合、in vitro試験の結果を解釈するために、静的薬物速度論モデルやPBPKモデルが利用できる(7.5項参照)。In vitroデータ及びモデリングで臨床における阻害リスクが否定できない場合は、指標薬(感度の高い基質)を用いた臨床DDI試験を実施すべきである。なお、可逆的な阻害薬について前述したrank order approachは、TDIには適用されない。

2.1.3 UGTの阻害薬としての被験薬

代謝酵素の基質とならない薬物であっても、代謝酵素に対する阻害薬となり得ることが知られている。しかしながら、一般的にUGTの阻害を介したDDIの大きさが限定的であること(3)を考慮すると、被験薬のUGT阻害に関する評価はルーチンで必要ない可能性がある。被験薬の主要な消失経路が直接的なグルクロン酸抱合である場合に、その被験薬がin vitroでUGTを阻害するかどうかを検討することが推奨される。検討すべき潜在的なUGT分子種には、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A9、UGT2B7及びUGT2B15がある。評価は、通常、組換えUGT分子種発現系又はHLMと、比較的選択性のある基質を用いて行う(基質の例示一覧は、表8及び7.6.2.1項を参照)(4)。被験薬が、主に直接的なグルクロン酸抱合によって代謝される薬物と併用される場合には、その併用薬の消失に関与するUGT分子種に対する被験薬のin vitroでの潜在的な阻害作用を検討することが推奨される。

UGT分子種の阻害を評価した臨床DDI試験のデータが限られているため、CYPのようなBasic法を用いてDDIリスクを決定するカットオフ値は確立されていない。これは研究が進行中の分野であり、暫定的に、CYPに適用されるものと同じ基準(即ち、Cmax,u/Ki,u<0.02)を考慮するか、正当化された代替案を提案することができる。

2.1.4 CYPの誘導薬としての被験薬

被験薬が核内受容体であるPXR、CAR及びAhR、並びに関連する他の薬物制御経路の活性化を介して代謝酵素を誘導する可能性を評価すべきである。試験に関する技術的な方法については7.3.4項を参照すること。

被験薬が誘導薬としてDDIを引き起こす可能性を評価するためには、少なくとも3例の個別のドナー由来ヒト肝細胞を用いて試験を実施し、酵素誘導の程度をmRNAレベルで測定すべきである。PXR/CAR(CYP3A4、CYP2B6)及びAhR(CYP1A2)を介した誘導のマーカーとして、CYP3A4、CYP2B6及びCYP1A2を必ず含めるべきである。CYP3A4、CYP2C8、CYP2C9及びCYP2C19は、PXRの活性化を介して誘導される。CYP2C8、CYP2C9及びCYP2C19は、一般に、CYP3A4と比べて誘導性が低い。したがって、被験薬がCYP2C8、CYP2C9及びCYP2C19を誘導する可能性については、臨床試験においてCYP3A4を誘導することが示された場合にin vitro及び/又はin vivoで評価する必要がある。感度の高いCYP3A4基質を用いた臨床試験の誘導の結果が陰性であった場合、被験薬とその主要代謝物によるCYP3A阻害の可能性を否定することができれば、被験薬によるCYP2C8、CYP2C9及びCYP2C19の誘導の可能性を否定することができる。In vitro試験においてCYP2C19の誘導を評価する場合、誘導薬に対するmRNAの反応は限定的であることが多いため、被験薬のCYP2C19に対する誘導作用を評価するには、プローブ基質を用いて活性を測定すべきである(7.3.4項参照)。

In vitro誘導試験で得られたmRNAレベルのデータを解釈し、臨床での被験薬の酵素誘導の可能性を評価するために、以下に記載するいくつかの方法を用いることができる。まず、Basic法(mRNAレベルの変動倍率)を用いることが推奨される。そのBasic法で誘導の可能性が示唆された場合、広範囲の被験薬濃度を用いて誘導パラメータ(例、Emax及びEC50)が決定できるならば、より定量的なアプローチ(例、correlation法)を用いて評価を継続する。より定量的なアプローチでは、適格な1つの肝細胞バッチを用いることで十分である。Basic法では、被験薬のin vitroデータのみを用いるが、correlation法では、被験薬の誘導作用を、対象となるCYP分子種について複数の確立された臨床の誘導薬の誘導作用と比較する。

さらに、静的薬物速度論モデル又はPBPKモデルを用いることができる可能性がある(7.5項参照)。In vitroデータ及びモデリングに基づいて誘導のリスクを否定できない場合、対象となるCYP分子種の感度の高い基質を用いた臨床試験を実施すべきである。

2.1.4.1 Basic法(mRNAレベルの変動倍率)

誘導作用の評価は、ドナーごと別々に実施すべきである。mRNA発現レベルを対照(溶媒添加)と比較し、溶媒対照に対する変動倍率を算出する。少なくとも1例のドナー由来肝細胞において、被験薬が以下の両方の基準を満たす場合、in vivoにおける誘導作用の可能性を否定できず、誘導作用の可能性について更なる評価を実施すべきである。

・ CYP分子種のmRNA発現が濃度依存的に増加

・ CYP分子種のmRNA発現の変動倍率が、Cmax,uの50倍未満の濃度(<50×Cmax,u)において2倍以上

陽性対照のmRNA発現の増加が6倍未満の場合において、被験薬によるCYP分子種のmRNAの増加が溶媒対照の2倍未満であるが、陽性対照における反応の20%を超える場合、誘導作用の可能性を否定できない。結論付けられない結果が得られた場合は、更なる評価が推奨される(7.3.4項及びQ&A参照)。

陽性対照の反応に対する割合を算出するには、以下の式を用いる:

2.1.4.2 Correlation法

Correlation法では、被験薬の誘導作用を、対象となるCYP分子種について確立されたin vivoの誘導薬の誘導作用と比較する(5)。被験薬のin vivoおける誘導作用の大きさ(例、誘導薬存在下と非存在下における感度の高い基質のAUC比)は、同じCYP分子種の既知の誘導薬群について、in vivoにおける誘導作用に対して、relative induction score(RIS、下式参照)又はCmax,u/EC50,uをプロットした検量線に基づいて予測される(7.3.4項参照)。予測されたAUC比が0.8より大きい場合、この解析はin vivoにおける誘導リスクを否定できる。

EC50,uは最大効果の50%の効果をもたらす非結合形濃度

Emaxは最大誘導作用

Cmax,uは定常状態における被験薬の非結合形Cmax。fu,pは、1%未満の実測値に信頼性が示せない場合は1%に設定する(2.1.2.1項参照)。

Emax又はEC50は、in vitroでの誘導プロファイルが不完全であること(例、被験薬の溶解性又は細胞毒性によって制限される場合)により、ときに推定が困難なことがある。バリデートされた方法であれば、代替のcorrelationアプローチを用いることができる(6)。

2.1.4.3 基本的な速度論モデル

全身及び消化管における相互作用について、異なる相互作用の過程(可逆的阻害、TDI、誘導)を併せて予測するメカニスティックモデルが提唱されている。このアプローチについては7.5項でさらに言及する。

このアプローチの誘導作用に限定したものを以下に示す。R値が0.8を超える場合、この解析はin vivoにおける誘導リスクを否定できる。

Rは誘導薬の存在下と非存在下におけるCYP分子種の感度の高い基質の推定AUC比

Cmax,uは被験薬の非結合形Cmax。fu,pは、1%未満の実測値に信頼性が示せない場合は1%に設定する(2.1.2.1項参照)。

dは換算係数(7)。キャリブレートされた肝細胞バッチで換算係数が決定していない場合(7.1.4項参照)、値として1を用いる。

上記の方法により被験薬が代謝酵素を誘導する可能性が示唆された場合(上述したカットオフ値、又は各方法について各実験施設で開発したカットオフ値を用いる)、被験薬の酵素誘導の可能性について、指標薬(感度の高い基質)を用いた臨床DDI試験を実施するか又はメカニスティックモデルを用いて、更に検討すべきである(7.5項参照)。

2.1.4.4 誘導に関連する他の留意事項

現在、UGTの誘導を評価するin vitro試験法は十分に確立されていない。被験薬がPXR、CAR等の核内受容体の活性化を介してCYP酵素を誘導することが示された場合、これらの核内受容体を介して調節されるUGTが誘導される可能性が高い。さらに考慮すべき点については、UGTの誘導を介した臨床DDI試験の実施について言及している3.2.4.3項を参照すること。

In vitro誘導試験では、代謝酵素のダウンレギュレーションが認められることもある。しかしながら、この分野の知見は現在のところ非常に限られており、これらの影響のメカニズムは不明である。In vitroで濃度依存的なダウンレギュレーションが認められ(mRNA発現が対照の50%未満)、それが細胞毒性に起因するものではない場合、潜在的な臨床上の影響を判断するために、更なるin vitro又は臨床試験が考慮される。

2.2 トランスポーターが関与する相互作用の評価

2.2.1 トランスポーターの基質としての被験薬

P―gpとBCRPは、消化管に発現する排出トランスポーターであり、薬物の経口バイオアベイラビリティに影響を与える可能性がある。したがって、経口投与される被験薬については、PgpやBCRPの基質となる可能性をin vitroで評価することが多い。P―gpやBCRPは肝臓(P―gp及びBCRP)や腎臓(P―gp)においても発現しているため、胆汁中排泄や腎での能動的な分泌が主な消失経路である被験薬の場合、in vitro試験の実施を検討すべきである。さらに、P―gp及びBCRPを介した輸送を評価することは、被験薬の脳内移行性の評価に有用であると考えられる。

OATP1B1及びOATP1B3は、重要な肝取り込みトランスポーターである。肝代謝又は胆汁中排泄が被験薬の消失の25%以上に寄与する場合、又は被験薬の薬理学的な標的が肝臓にある場合、被験薬がOATP1B1及びOATP1B3の基質となる可能性を検討すべきである。

腎取り込みトランスポーター(OAT1、OAT3、及びOCT2)及び腎排出トランスポーター(MATE1及びMATE2―K)は、薬物の腎臓における能動的な分泌にしばしば関与している。腎臓における能動的な分泌による被験薬のクリアランスが全身クリアランスの25%以上である場合、被験薬がこれらのトランスポーターの基質となる可能性をin vitro試験で検討すべきである。再吸収がない(例、受動的再吸収と受動的分泌の程度が等しく、能動的再吸収がない)と仮定したとき、能動的分泌クリアランスは(CLr-(fu,p×GFR))として計算される。GFRは糸球体ろ過速度、CLrは腎クリアランスである。静脈内投与による薬物動態データが得られない場合は、見かけの全身クリアランスに推定バイオアベイラビリティを乗じて全身クリアランスを算出することができるかもしれない。

上記のトランスポーターに加え、新たな知見が得られ理解度が深くなるにつれ、ケースバイケースで、被験薬が上記以外のトランスポーターの基質となる可能性を検討するin vitro試験の実施を考慮する場合があるかもしれない。例えば、MRP2はP―gpやBCRPと同様の部位に存在する排出トランスポーターである。OATP2B1は肝臓及び腸内に存在し、薬物の吸収に関与する取り込みトランスポーターである。OCT1は薬物の肝臓への取り込みを担う肝トランスポーターである。追加のトランスポーターを評価するか否かの決定には、被験薬の作用部位、受動拡散、吸収や消失経路に関する知見等を考慮する。

2.2.1.1 データ解析及び解釈

被験薬がトランスポーターの基質となる可能性を検討する場合、プローブ基質や阻害薬を使用してトランスポーターの活性が確認されている実験系を用いてin vitro試験を実施すべきである(表10及び表11、並びに7.6.3項を参照)。In vitro試験を実施する際に考慮すべき点の詳細は、7.4.1項及び7.4.2項に記載されている。

取り込み試験については、トランスポーター発現細胞における被験薬の取り込みが、非発現細胞における取り込みと比較して顕著であり(例、非発現細胞の2倍以上)、かつトランスポーターの既知の阻害薬によって50%を超えて阻害される場合、被験薬は検討したトランスポーターの基質とみなせる。

双方向性の輸送試験については、トランスポーター発現細胞において、非発現細胞又は親細胞と比較して、被験薬の顕著な方向性輸送が認められる(例、net efflux ratio(net ER)が2倍以上)、又はCaco―2細胞において被験薬の顕著な方向性輸送が認められ(例、efflux ratio(ER)が2倍以上)、かつそのERがトランスポーターの既知の阻害薬によって50%を超えて阻害される場合、被験薬は検討したトランスポーターの基質とみなせる。

使用した細胞系に関する過去の知見から正当性を示すことができる場合には、2以外のカットオフ値又は陽性対照に対する特定の相対比を代替として用いることができる。また、過去の知見や内部データに基づき、膜小胞系における基準についても提案することができる。

In vitro試験で被験薬がトランスポーターの基質となることが示された場合、臨床試験の実施を検討すべきである。詳細は3.2.5.1項を参照すること。

2.2.2 トランスポーターの阻害薬としての被験薬

被験薬がP―gp、BCRP、OATP1B1、OATP1B3、OAT1、OAT3、OCT2、MATE1及びMATE2―Kの阻害薬となる可能性を検討する試験を実施すべきである。必要に応じて、他のトランスポーターに対する被験薬の阻害の可能性の評価を検討する。追加のトランスポーターを評価するかを決定する際には、一般に併用される薬物がこれらのトランスポーターの基質となるかを考慮する。In vitro試験は、プローブ基質や阻害薬を用いてトランスポーターの活性が確認されている実験系を用いるべきである(詳細は7.6.3項参照)。In vitro試験を実施する際に考慮すべき点については、7.4.1項及び7.4.3項に記載されている。

ヒトにおける被験薬のトランスポーター阻害のリスクは、以下の表1に示すBasic法の基準を用いたin vitroデータに基づいて否定できる。また、トランスポーター阻害に対する代謝物の寄与も考慮すべきである(2.3.2項参照)。

表1:トランスポーターの阻害薬としての推奨比及びカットオフ値

P―gp又はBCRP

IC50,u>0.1×(投与量/250mL)(即ち、(投与量/250mL)/IC50,u<10)経口投与薬の場合

OATP1B1又はOATP1B3

IC50,u>10×Cmax,inlet,u(即ち、Cmax,inlet,u/IC50,u<0.1)

OAT1、OAT3、OCT2

IC50,u>10×Cmax,u(即ち、Cmax,u/IC50,u<0.1)

MATE1/MATE2―K

IC50,u>50×Cmax,u(即ち、Cmax,u/IC50,u<0.02)

Cmax,uは治療用量の定常状態における阻害薬の非結合形Cmax

Ki,uは、基質濃度が競合阻害を仮定するとKmよりもはるかに低い場合にはIC50,uに近づく(8)。

Cmax,inlet,uは、肝臓入り口での阻害薬の推定非結合形Cmax。Cmax,inlet,u=fu,p×(Cmax+(Fa×Fg×ka×投与量)/Qh/RB)(36)。不明であれば、Fa=1、Fg=1、ka=0.1/minをワーストケースの推定値として用いることができる。fu,pが1%未満の実測値に信頼性が示せない場合は、fu,pを1%に設定する(2.1.2.1項参照)。

P―gp又はBCRPの推奨比及びカットオフ値は、経口投与薬に適用される。被験薬が非経口的に投与される場合や、吸収後に生成される代謝物がP―gp又はBCRPを阻害する場合、IC50,u>50×Cmax,u(即ち、Cmax,u/IC50,u<0.02)を用いることができる。

表1のカットオフ値は、主にIC50を用いたin vitroらin vivoへの外挿分析に基づいて決定され、限られた文献データに基づくものである。In vitroからin vivoへの外挿、及びこれらのトランスポーターの既知の阻害薬及び非阻害薬を用いた特定のin vitro評価系のキャリブレーションに基づいて適切性が説明できる場合、他のカットオフ値を提案することが可能である。

上記の検討により、被験薬がトランスポーターを阻害することが示された場合、被験薬が適応となる患者集団で使用される可能性の高い併用薬が、被験薬により阻害されるトランスポーターの既知の基質であるかどうか、また、それらの基質の安全性プロファイルに基づいて、臨床試験の実施を検討すべきである。別の方法として、被験薬の阻害作用は、静的薬物速度論モデル、PBPKモデル又は内因性バイオマーカーを用いて評価することができる。これらのアプローチは、それらの方法の適切性を裏付ける根拠を提出することにより担保されるべきである。

2.2.3 トランスポーターの誘導薬としての被験薬

現在、トランスポーターの誘導を評価するin vitro試験法は十分に確立されていない。PXR、CAR等の核内受容体の活性化を介して、被験薬がCYP分子種を誘導することが確認されている場合、これらの受容体を介して制御されているトランスポーター(P―gp等)が誘導される可能性がある。トランスポーターを介した臨床DDI試験を実施する際に考慮すべき点については、3.2.5項を参照すること。

2.3 代謝物のDDIの可能性

被験薬の代謝物がDDIを引き起こす可能性の評価は、多くの場合、in vitro試験から開始され、一般的には未変化体の場合と同じ方策を用いる。代謝物によるDDIの可能性の評価の必要性は、以下に記述するように、薬理学的活性や血漿中曝露量に基づき検討する。

2.3.1 基質としての代謝物

代謝物の曝露量の変化が、被験薬の有効性又は安全性に臨床的に意味のある影響を及ぼす可能性を示す非臨床又は臨床データが得られている場合(ターゲットへの効果のみならず、オフターゲットへの効果)、代謝物の生成又は消失の変化によるDDIのリスクを検討すべきである。In vivoでの標的への効果に対して、代謝物が未変化体と同等以上に寄与する場合、代謝物の生成及び消失に関与する酵素をin vitroで同定すべきである。代謝物の有効性への寄与は、ヒトにおける代謝物及び未変化体の非結合形曝露量(例、モル単位でのAUC)、薬理学的作用(例、受容体結合親和性、酵素阻害作用)、また可能であれば標的組織への分布に関するデータも考慮して、推定すべきである。活性代謝物の生成及び消失に関与する酵素は、未変化体の消失に関与する酵素の同定と同様に検討すべきである。もし、代謝物の血漿タンパク結合率が高い場合には、タンパク結合測定の真度と精度が確認されていれば、fu,pの実測値を用いることができる(7.2項参照)。同様に、利用可能な非臨床又は臨床データに基づいて、代謝物が実質的な有害事象を引き起こすことが疑われる場合には、その代謝物の生成及び消失に関与する酵素を同定すべきである。未変化体の代謝に関与する代謝酵素の同定と同様に、代謝物の生成及び代謝に関与する酵素の特性解析も主要なCYP分子種から開始し、必要に応じて他の酵素を検討する。

上述の一般原則は、代謝物の薬物動態におけるトランスポーターを介した分布又は消失の関連性を考慮した上で、代謝物が主要なトランスポーターの基質となる可能性の検討にも適用される。

代謝酵素又はトランスポーターの阻害薬又は誘導薬を用いた臨床DDI試験の実施の必要性は、代謝物の生成又は消失における代謝酵素又はトランスポーターの推定寄与率、代謝物の臨床効果に対する寄与、既知であれば代謝物の曝露―反応関係、及び併用の可能性が高い代謝酵素又はトランスポーターに影響を及ぼす薬剤に依存する。

2.3.2 阻害薬としての代謝物

In vitro評価により、未変化体単独では主要なCYP分子種/トランスポーターを阻害しない、又は臨床においてCYP分子種/トランスポーターを阻害することが予想されない場合においても、代謝物が阻害薬としてDDIを引き起こす可能性がある。実用的な基準として、代謝物の総AUC(AUCmetabolite)が未変化体の総AUC(AUCparent)の25%以上で、全身循環中の薬物関連物質の少なくとも10%を占める(即ち、多くの場合放射能データに基づいて、主要な代謝物とみなされる)場合に、代謝物のCYP分子種及びトランスポーターに対する阻害作用を検討することが推奨される。

In vitro評価で未変化体が主要なCYP分子種やトランスポーターを阻害することが示唆され、臨床DDI試験が計画されている場合には、臨床的に意味のある代謝物の曝露が臨床DDI試験で適切に得られない(即ち、試験期間において代謝物が蓄積しない)場合を除き、代謝物の阻害作用は未変化体と共に臨床DDI試験において反映されるため、代謝物の代謝酵素又はトランスポーターの阻害薬となる可能性を検討するin vitro評価は不要となる可能性がある。なお、代謝物のin vitro評価が、DDI試験の結果を解釈する上で有用となり得ることに留意する。

代謝物のin vitroDDI評価の結果に基づいて、臨床DDI試験の実施をするか否かは未変化体と同じアプローチに従って決定する。通常、代謝物が実質的に消化管又は腸管細胞内で形成される場合を除き、消化管のCYP又はトランスポーターの阻害を評価することの重要性は低い。Basic法により、代謝物の臨床におけるDDIの可能性が示唆され、被験薬のDDIリスクを評価するために静的薬物速度論モデル又はPBPKモデルが用いられる場合、代謝物についてもそれらのモデルに組み込むべきである。

2.3.3 誘導薬としての代謝物

代謝物はCYP分子種を誘導する可能性があるが、未変化体を肝細胞とインキュベーションする際に代謝物が生成され得るため、未変化体の誘導作用を検討するin vitro評価は代謝物による誘導も反映している可能性がある。しかしながら、被験薬がプロドラッグである場合や代謝物が主に肝外で生成される場合には、その代謝物が主要な代謝物であり、代謝物の総AUCが未変化体の総AUCの25%以上(AUCmetabolite/AUCparent画像8 (10KB)別ウィンドウが開きます
25%)で、かつ循環血中の薬物関連物質の少なくとも10%を占める場合に、代謝物のCYP分子種に対する誘導作用をin vitroで評価することが推奨される。代謝物のin itro評価の結果に基づき、未変化体と同じアプローチに従い、臨床DDI試験の実施要否を決定する。

3.臨床評価

3.1 臨床DDI試験の種類(用語)

臨床におけるDDIの有無や、DDIが認められた場合の大きさを判断するために実施可能な試験には、複数の種類がある。本項で説明する試験の種類は相互に排他的なものではない。実施する試験の種類を決定する際には、試験の明確な目的を考慮すべきである。

規制当局の意思決定は、通常、DDIの可能性を評価するために特別にデザインされたプロスペクティブな試験を根拠とする。DDIを評価するように計画されていない試験から得られた薬物濃度のレトロスペクティブな評価には、適切な評価を行うのに十分な正確さや精度を有していることはほとんどない。レトロスペクティブな解析を用いて同定又は除外されたDDIは、プロスペクティブな評価を用いて確認する必要があるかもしれない。

臨床DDI試験を実施することなく、in vitro試験での結果をin vivoに当てはめるために、モデリングによる予測手法(静的薬物速度論又はPBPK)を用いることができる場合がある。モデリングアプローチのシナリオ及び最適な検討事項は7.5項に記載されている。

3.1.1 スタンドアローン試験及びネステッドDDI試験

スタンドアローンDDI試験とは、臨床におけるDDIの有無及びDDIの大きさを決定することを主目的とした臨床試験である。また、ネステッドDDI試験は、DDIの評価が主目的ではない患者を対象とした大規模試験(第Ⅱ/Ⅲ相試験等)の一部においてDDIを評価するものである。ネステッドDDI試験はプロスペクティブに計画され、適切にデザインされているものである(詳細は3.2.2項を参照)。

3.1.2 指標薬(相互作用薬及び被相互作用薬)を用いた臨床DDI試験

阻害又は誘導の程度、代謝経路等について薬物動態やDDIの特性がよく理解され予測可能な相互作用薬(阻害薬又は誘導薬)及び被相互作用薬(基質)は、「指標薬」として知られている。これらの薬物を用いて行われる試験の一般的な主目的は、検討対象となる経路におけるDDIの最大の大きさを推定することである。DDIの被相互作用薬として評価される被験薬については、一般に、その被験薬の代謝経路の指標薬(強い阻害薬又は誘導薬)を併用した場合に、最も大きなDDIが生じる。DDIの相互作用薬として評価される被験薬については、一般に、指標薬(感度の高い基質)と併用した場合に最も大きなDDIが生じる。

指標薬を用いた臨床DDI試験の特徴は、通常、その結果を他の薬物との併用において外挿できることである。したがって、指標薬(阻害薬)を用いた試験を実施した後は、その代謝経路に対して同程度の強さの他の阻害薬によるDDIは、一般には、指標薬(阻害薬)と同程度になると考えられる。さらに、指標薬(強い阻害薬)を併用した場合の薬物曝露量の変化が臨床的に重要でないものと結論付けられた場合、追加の検討は行わずに、その特定の代謝経路に対する他のすべての阻害薬についても同様の結論付けができる。指標薬(相互作用薬又は基質)を用いた臨床DDI試験の結果は、被験薬の対象となる集団で一般的に使用される併用薬を用いた臨床DDI試験のデザインにも役立てられる。

指標薬の一覧(CYPに対する各基質、阻害薬又は誘導薬)を7.7.1項に示す。

トランスポーター及びいくつかの代謝経路(例、CYP2B6、UGT)では、指標薬(基質又は相互作用薬)は特定されていない。指標薬(基質又は相互作用薬)が存在しないのは、主に選択性の問題による。しかしながら、指標薬(相互作用薬又は基質)を用いた研究から得られるものと同程度の情報(即ち、特定の経路に起因するDDIの可能性)は重要であることが多い。指標薬(基質及び相互作用薬)は特定されていないが、7.7.2項及び7.7.3項では、臨床DDI試験に有用な薬剤を例示しており、これらの薬剤を用いた臨床DDI試験を実施することにより有益な結果が得られ、それらの薬剤の使用制限を説明できると考えられる。しかしながら、これらの試験結果の外挿は、指標薬を用いた試験結果からの外挿よりもさらに困難で複雑であろう。

3.1.3 併用が見込まれる薬剤を用いた臨床DDI試験

上述の指標薬を用いたDDI試験に加え、被験薬と、被験薬の投与対象患者に投与される可能性の高い薬剤との間でのDDIを検討する試験を実施することが有益である。また、被験薬を他の治療法に上乗せして投与する場合や、固定用量の併用療法の一部として使用する場合にも、これらの試験を考慮する。これらの試験で評価する薬剤を選択する場合には、DDIが起きる可能性の機序を理解(in vitro試験及び指標薬を用いた臨床試験に基づく)し、相対的な併用頻度を考慮すべきである。併用投与される可能性に基づいてDDI評価を考慮すべき他の状況としては、指標薬(基質又は相互作用薬)が一般的に欠如しているトランスポーターやいくつかの代謝酵素(UGT、CYP2B6)を介した経路のDDI評価がある。

併用薬を用いたDDI試験は、被験薬及び/又は併用薬の具体的な用量調節に関する情報を提供したり、有害事象又は効果減弱のモニタリングの必要性を知らせたりすることができる。しかしながら、これらの試験は、多くの場合患者や医療関係者にとって有益にはなるが、その結果を他の薬剤に外挿することは困難な場合がある。

3.1.4 カクテルアプローチ

カクテル試験とは、複数の代謝酵素及び/又はトランスポーターの基質を被験者に同時投与する試験である。カクテル試験は、適切に計画及び実施されれば、複数の代謝酵素及びトランスポーターに対する被験薬の阻害作用又は誘導作用を同時に評価することができる(詳細は3.2.6項を参照)。

3.1.5 バイオマーカーアプローチ

DDIのリスク評価における新たなアプローチとして、薬物代謝及びトランスポーターの基質となる内因性バイオマーカーの導入がある。このアプローチは、被験薬投与前後の血漿及び/又は尿中の内因性バイオマーカーの測定により可能となる。バイオマーカーに基づくアプローチは、臨床試験において内因性バイオマーカーをモニタリングすることにより、特定の経路を介した相互作用薬としてのDDIの可能性を早期に示すことができるかもしれない(詳細は、3.2.7項を参照)。

3.2 臨床DDI試験の試験計画及び留意事項

多くの臨床DDI試験の目的は、相互作用薬の存在下及び非存在下における基質の曝露量比(例、AUC比)を決定することである。この比率を明確に決定するためのプロスペクティブな臨床DDI試験を計画する際には、以下の点に留意することが重要である。

3.2.1 試験デザイン

3.2.1.1 対象被験者及び被験者数

多くの臨床DDI試験は、健康な被験者を対象として実施することができ、当該被験者で得られた結果は、被験薬の投与対象となる患者集団で得られる結果の解釈に繋がると考えられている。しかしながら、安全性の観点から、特定の薬物の試験では健康な被験者を対象とはできない場合がある。被験薬によっては、意図した患者集団を臨床DDI試験の対象とすることで、薬物動態学的エンドポイントに加えて、健康な被験者では検討できない薬力学的エンドポイントを評価できる場合がある。

臨床DDI試験の被験者数は、DDIの大きさとばらつきに関する信頼できる推定値を得るために十分な人数とすべきである(Q&A参照)。

3.2.1.2 用量

最大のDDIを明らかにすることを目的とした臨床DDI試験で用いられる相互作用薬の用量は、DDIを識別する可能性を最大限に高めるように設定する。したがって、一般的には、推奨される臨床使用条件下での相互作用薬の最大用量と最短投与間隔で評価すべきである。

基質が用量比例性のある薬物動態を示す場合には、その用量比例の範囲内のいずれの用量でも試験に使用できる。基質が非線形性の薬物動態を示す場合には、最大のDDIを示す可能性が最も高い治療用量を用いるべきである。安全性が懸念される場合には、治療用量よりも低用量を含め、基質をより低用量で使用できる。

先行するin vitro又は臨床DDIデータに基づき臨床的に重要なDDIが予想される場合、併用投与が予想される薬剤を用いた試験では、基質の薬剤の用量調節を組み込むことで、実臨床で併用投与が可能な用量を特定できる情報が得られる。このような場合は、臨床的に適切な用量の相互作用薬を使用すべきである。

3.2.1.3 単回又は反復投与

臨床DDI試験では、相互作用薬を反復投与することが多い。しかしながら、DDIの可能性が吸収過程にのみ限定される場合(例、消化管P―gp又はBCRPの阻害)、相互作用薬の単回投与により評価することができる。

さらに、単回投与後の相互作用薬の曝露が定常状態での曝露を表す場合で、相互作用薬が潜在的な誘導作用や時間依存的な阻害作用を有しない場合には、臨床DDI試験は相互作用薬の単回投与で評価することができる。単回投与は、蓄積に応じて、治療用量又はより高用量とすることができる。試験を実施する前に、高用量の安全性を十分に理解しておく必要がある。消失半減期の長い基質を用いた試験では、基質の曝露の全時間推移をカバーするために相互作用薬を反復投与する必要があるかもしれない。相互作用薬の投与期間は、阻害薬存在下でその消失半減期が延長する可能性があることを考慮すると、基質のAUCの少なくとも90%をカバーできるよう十分に長く設定すべきである。しかしながら、もし基質の消失半減期が非常に長く、すべてのAUCをカバーできるように相互作用薬を投与することできない場合には、母集団薬物動態解析又はPBPK解析を用いることによって、臨床DDI試験の結果を基質の曝露に対する最大効果に橋渡しすることができる。

相互作用薬の代謝物が長い消失半減期を有する、又は臨床DDI試験で評価される代謝酵素に対して時間依存的な阻害を示す場合には、未変化体の投与期間は、未変化体及び代謝物による酵素阻害が定常状態に達するための十分な期間とすべきである。

誘導薬は、特定の経路を最大限に誘導するために反復投与すべきである。投与期間は、誘導薬の定常状態に達するまでの時間、代謝酵素又はトランスポーターのターンオーバーの時間、及び基質の消失半減期を考慮すべきである。典型的な前投与期間は7~14日間である。

特定の相互作用薬について複数の相互作用の機序が存在する場合、特定の状況(例、OATP1B1の阻害薬としてのrifampinの評価)では単回投与が適切であり、一方で、別の状況(例、CYP3A誘導薬としてのrifampinの評価)では反復投与が適切である。

基質が時間依存性の薬物動態(経時的なクリアランスの変化)を示す場合、基質及び相互作用薬は反復投与して評価すべきである。基質が時間依存性の薬物動態を示さない場合には、基質を単回投与することができ、測定された曝露量の上昇は、定常状態時に外挿できる。

3.2.1.4 投与経路及び剤型

臨床DDI試験で評価される被験薬の投与経路は、通常、臨床使用が予定されている経路とする。臨床使用のために複数の投与経路が開発されている場合には、予想されるDDIの機序と、異なる投与経路での投与後の未変化体及び代謝物の濃度時間プロファイルの類似性に基づいて、臨床DDI試験における投与経路を選択すべきである。

また、DDIには製剤による差異が生じることが報告されている(9、10)。DDIの結果を製剤間で外挿する際には、製剤によって潜在的なDDIが異なる可能性を考慮すべきである。一般に、吸収の速度や程度の比較によってDDIの可能性を製剤間で外挿することができる。

3.2.1.5 並行比較対クロスオーバー試験

クロスオーバー試験(一系列又は無作為化)は、ばらつきを抑えるために並行群間比較試験よりも望ましい。休薬期間は、基質及び相互作用薬の薬物動態、基質の消失半減期への予想される影響、酵素活性がベースラインに戻るまでの期間、又は潜在的な薬力学的作用が投与前の状態に戻るまでの期間(薬力学的作用も評価する場合)に基づいて決定すべきである。状況によっては、追加の期間が有益な場合もある。その状況としては、誘導薬や時間依存的な阻害薬を除去した後に酵素活性が正常に戻るまでの時間を評価する場合、互いに影響し合う可能性のある2つの薬物(各薬物の単独投与及び併用投与)を評価する場合、ある薬物の単回投与及び反復投与の影響を評価する場合が含まれる。

一方の薬物(又は、利用可能であれば主の活性代謝物)の消失半減期が長い場合等、クロスオーバー試験が適用できない場合には、並行群間比較試験が適している。一般に、並行群間比較試験では、クロスオーバー試験よりも多くの被験者数が必要となり、薬物動態に影響を与える可能性の高い内因性要因を考慮して被験者マッチングを行うべきである。

3.2.1.6 投与タイミング

多くの臨床DDI試験では、相互作用薬と基質を同時に投与することができる。しかしながら、相互作用薬が阻害薬と誘導薬の両方になる場合、相互作用薬を投与するタイミングが重要となる。このような場合、相互作用薬の投与タイミング及び薬物動態の試料採取時期はDDI試験の目的を考慮すべきである。指標薬を用いる臨床DDI試験では、最大の誘導効果を確実に同定することができるよう、阻害作用が誘導作用をかき消すことを防ぐため、相互作用薬と基質を時間差で投与することが推奨される。試験の目的が併用投与の評価を行うことであれば、予期される臨床シナリオを用いるべきである。

DDIの大部分が吸収過程又は初回通過時に生じる場合は、(臨床試験又はPBPKにおいて)投与スケジュールをずらして検討することがDDIを緩和させる方策となり得るかどうかを把握することができる。

最適な吸収のために異なる食事条件を必要とする薬物間のDDIを評価する場合、DDIの検出能を最大限に高める(即ち、指標薬を用いる臨床DDI試験として実施する)ため、及び/又は臨床的に重要な関連する条件を反映させる(即ち、併用される可能性がある薬剤を用いたDDI試験)ために、薬物投与のタイミングを調整すべきである。

3.2.1.7 DDIに影響を及ぼす併用と他の外的要因

DDIの大きさのばらつきを抑えるために、臨床DDI試験の中では次の使用を可能な限り避けるべきである。代謝酵素やトランスポーターの発現や機能に影響を与える可能性のある、他の医薬品、食事/栄養補助食品、ハーブサプリメント、タバコ、喫煙、アルコール、食品、果汁等。これらの使用制限は、被験者が試験に参加する十分に前から開始し、試験期間中は継続すべきである。

3.2.1.8 試料採取及びデータ収集

薬物動態評価のための試料採取時期は、基質を単独で投与した場合と相互作用が予想される条件下でのAUC0―inf(単回投与試験の場合)、AUC0―tau(反復投与試験の場合)、及びCmaxを特徴付けるのに十分な時間が必要である。申請される効能・効果に対する薬物動態学的又は薬理学的な関連性に基づき、追加の薬物動態パラメータのデータを収集すべきである(例、Cmin、partial AUC)。単回投与試験における試料採取時期は、DDIによる消失半減期の延長の可能性を考慮し、AUC0―tとAUC0―infの差の平均値が20%未満になるように計画すべきである。採取した試料には、試験結果を解釈するために必要な部分が含まれていなければならず、ほとんどの場合、それは未変化体である。代謝物の濃度は、安全性又は有効性に対するDDIの影響に関する情報が得られる場合や、DDIの機序に関する情報が得られる場合に測定されるべきである。例えば、臨床DDI試験で複数の経路を介して相互作用を起こす可能性のある薬物を評価する場合、代謝物の測定は、相互作用に関与する代謝酵素及び/又はトランスポーターの決定に役立つ可能性がある。被相互作用薬の薬物動態評価のための試料採取に加えて、阻害薬又は誘導薬のための少数の試料をスパースで採取することにより、阻害薬又は誘導薬の血漿中濃度が予想される範囲内であることを確認することができる。加えて、腎トランスポーターが関与するDDIを理解するために、尿試料を採取することができる。

In vitro試験の結果より、全身の薬物曝露では評価できない、もっともらしいDDIの機序が導かれた際には、薬力学的なデータの収集と解析が有益な場合がある。このことが起こり得る一つの可能性としては、トランスポーターの阻害により、特定の臓器や組織への薬物輸送が変化する場合である。このような場合、基質となる薬物の組織分布が変化することによる有効性の変化又は毒性の増加等の臨床的な影響を薬力学的エンドポイントとして測定することができ、DDIの可能性を示すin vitroの根拠が結果解釈の裏付けとなり得る。

3.2.2 ネステッドDDI試験に関する留意事項

ネステッドDDI試験とは、DDI評価が主目的ではない他の臨床試験(第Ⅱ/Ⅲ相試験等)の一部として行われる臨床的なDDIの検討である。しかしながらこの試験は、探索的又は副次的な目的としてDDIを検討するためにプロスペクティブに計画されている。ネステッドDDI試験は、通常、被験薬が被相互作用薬となる可能性を評価するために用いられるが、被験薬が相互作用薬となる可能性を評価するためにも用いられる場合がある。DDIによる薬物曝露の顕著な変化を検出するために臨床試験が適切に計画されていれば、このような分析結果が有益となることがあり、場合によっては結論を導くものとなる。ネステッドDDI試験の利点は、患者集団を対象に実施されるため、想定される臨床環境をより忠実に再現できることである。しかしながら、ネステッドDDI試験の課題としては、試験デザインとデータ収集に細心の注意を払う必要があることが挙げられる。場合によっては、PBPKモデリングがネステッドDDI試験の計画の一助になる(7.5.2項参照)。

ネステッドDDI試験では、臨床試験の全期間にわたって使用される併用薬や試験期間中に患者の状態に応じて追加される併用薬の影響を評価することができる。評価対象となる併用薬を事前に規定すべきである。通常、相互作用が予想される機序的な根拠に基づき併用薬が選択される。また、患者集団における関連性も考慮される。試験デザインでは、機序に基づいて、個々の薬剤を指定することも、グループ分けすることもできる(例、強いCYP3A阻害薬)。しかしながら、グループ分けで評価する場合は、グループ内の異なる薬剤の効果に差異が生じる可能性と、その潜在的なばらつきがデータ解析や結果解釈に及ぼす影響を考慮することが重要である(11)。

シミュレーションは、適切な薬物動態サンプル数を決定し、採取時間の選択を補助するために使用できる。また、検出力分析を行うことで、併用薬が投与されている患者数に応じて、許容可能な精度で検出できる最小の効果の大きさを推定することができる。

解釈可能な結果を得るためには、次のデータを収集することが重要である。薬剤投与のタイミング(被験薬と併用薬)、薬剤の投与量、食事とのタイミング(関連性がある場合)、他の併用薬、及び薬物動態サンプル採取の日時(予定ではなく実際のもの)。また、特に併用薬が誘導作用や時間依存的な阻害作用を有する場合には、相互作用が観察される時期に合わせて併用薬の投与開始日及び中止日を記録することも重要である。

ネステッドDDI試験は、一般的に母集団薬物動態解析を用いて評価されるが、この解析は、頑健で目的に適合するモデルを用いて、十分に確立された科学的方法に従って実施されるべきである。DDI評価における母集団薬物動態解析のためのサンプル採取計画は、試験の実施前に立てておく必要がある。一般に、標準的な解析方法は、併用薬をカテゴリ共変量として含む二値分析である。解析方法を選択する際には、DDI評価に望ましい水準の精度が得られるかを考慮する必要がある。解析方法にかかわらず、すべての仮定条件を記載すべきである。

場合によっては、患者集団における安全性又は有効性の問題等の臨床試験結果を説明するため、又は試験計画時に予想されなかった潜在的なDDIをスクリーニングするために、第Ⅱ/Ⅲ相試験におけるDDIについて事前計画のない解析を実施する。事前にDDI評価が計画されていることを除き、収集されたデータが本項に記載された基準を満たすものであれば、DDIの有無について結論付けることができる。そのデータからDDIの的確な評価ができない状況では、DDIの可能性についてさらに評価すべきである。

3.2.3 CYPを介した相互作用評価に関する留意事項

3.2.3.1 CYPの基質としての被験薬

被験薬を基質として評価する場合、最初の臨床DDI試験では、一般に、指標薬(強い阻害薬及び誘導薬)の被験薬に対する影響を判定する必要がある。特定の代謝酵素に対して強い阻害薬及び誘導薬の指標薬が利用できない場合は、中程度の指標薬を使用できる。これらの阻害薬及び誘導薬の中には、他の代謝及び/又はトランスポーターにも影響を及ぼすものがあるため、プロスペクティブな臨床DDI試験の阻害薬及び誘導薬の指標薬を選択する際には、被験薬に関わるすべての代謝酵素及びトランスポーターを考慮すべきである。また、7.7.1項に記載した基準を踏まえ、CYPの他の強い阻害薬及び誘導薬を用いた試験も適切であると考えられる。被験薬が複数の代謝酵素及び/又はトランスポーターの基質となる場合、代謝物の測定が、試験の結果解釈やDDIの機序解明に有益な場合もある。

強い阻害薬又は誘導薬の指標薬を用いた臨床DDI試験においてDDIが生じないことが示された場合、同じ代謝酵素の他の阻害薬又は誘導薬を用いた追加の臨床DDI試験を実施する必要はない。しかしながら、臨床DDI試験結果が陰性であった場合、in vitroデータに基づき主要な代謝酵素と考えられた代謝酵素が、被験薬の消失に寄与していないことが明らかになる可能性があるため、代替の経路に関する更なる検討を考慮すべきである。

強い阻害薬又は誘導薬の指標薬を用いたDDI試験で、臨床的に重要な相互作用が認められた場合、中程度の阻害薬又は誘導薬の影響を評価することは、被験薬のDDIの可能性を十分に理解するために有用である。評価された中程度の阻害薬及び誘導薬は、想定される患者集団において使用が想定される併用薬となる可能性がある。追加の阻害薬及び誘導薬の影響は臨床DDI試験で評価することが可能で、場合によってはモデリングアプローチにより追加情報を得ることができる(7.5項参照)。強い誘導薬又は阻害薬との併用を避けるべきと予想される場合には、中程度の誘導薬又は阻害薬を用いた臨床DDI試験を最初の試験として実施することが望ましい。

被験薬が、酵素活性が欠損しているpoor metabolizer(PM)が存在する遺伝子多型の酵素によって顕著に代謝を受ける場合、PMと正常な代謝能を有する被験者との間での被験薬の薬物動態パラメータの比較は、その特定の経路に関する臨床DDI試験の代替となり得る(4.1項参照)。

3.2.3.2 CYPの阻害薬又は誘導薬としての被験薬

被験薬がCYPの阻害薬又は誘導薬となる可能性を検討する場合、最初の臨床DDI試験で選択される指標薬(感度の高い基質)は、評価対象となるCYPの活性又は量の変化に高感度に反応するものでなければならない(7.7.1項参照)。基質の中には一つのCYPに特異的でなく、ときにトランスポーターの基質となるものがあるため、利用可能なin vitro及び臨床データに基づき、被験薬の阻害薬/誘導薬の特性を考慮して、最も適切な基質を選択すべきである。また、他のCYPの基質が適切な場合もある。基質となる薬物が複数の代謝酵素で代謝される場合、代謝物を測定することで試験の結果解釈に有用となることがある。

指標薬(感度の高い基質)を用いた最初の臨床DDI試験が陰性であれば、その酵素のより感度の低い基質を用いた試験は不要である。最初の試験で、被験薬が指標薬(感度の高い基質)の代謝を阻害又は誘導すると判断された場合、他の基質(例、関連する併用薬)を用いた更なる評価が有用となり得る。指標薬(感度の高い基質)に対する被験薬の影響の大きさと、同じ代謝酵素の基質である他の薬物との併用の可能性を考慮する必要がある。

被験薬が代謝酵素に対する誘導薬及び阻害薬の両方の役割を担う場合、代謝酵素の機能に対する被験薬の正味の効果は時間依存的になる可能性がある。薬物動態学的エンドポイントの測定タイミングは、経時的な効果の変化と関連性がある場合には、その変化が理解できるように設定すべきである。この理解を達成するには、被験薬の投与期間の中の早い時点と遅い時点で基質の薬物動態を評価すべきである。観察された可逆的な阻害の影響は投与開始時により顕著であり、誘導の影響は投与終了後に最も顕著となる可能性がある。

3.2.4 UGTを介した相互作用評価に関する留意事項

3.2.4.1 UGTの基質としての被験薬

限られた文献上の情報によると、UGTの阻害を介したDDIの大きさ(阻害薬存在下の非存在下に対する基質のAUC比)は、典型的にはCYPの阻害を介したものよりも小さい(3)。主にグルクロン酸抱合によって消失する被験薬の場合、UGT阻害薬を用いた臨床DDI試験は、被験薬の安全性プロファイルと、そのUGT分子種の阻害薬との併用の可能性を考慮して、ケースバイケースで実施すべきである(UGT阻害薬の例については7.7.2項、表16を参照)。UGT基質の中には、他の代謝酵素やトランスポーターの基質となるものがあり、UGT阻害薬がそれらの代謝酵素やトランスポーターに対しても影響を与える場合には、UGT阻害薬とのDDIには他の機序が関与する可能性がある。したがって、UGT基質そのものに加えて、グルクロン酸抱合体の濃度も測定することが有益かもしれない。未変化体に対するグルクロン酸抱合体の相対的な変化から、DDIの根本的な機序を理解することが可能かもしれない。さらに、グルクロン酸抱合体の中には、活性や反応性を有するものがあり、薬物の有効性又は安全性に大きく寄与する場合がある。このような場合には、未変化体の濃度に加えて、グルクロン酸抱合体の濃度も測定すべきである。

特定のUGT分子種(例、UGT1A1、UGT2B7、UGT2B10、UGT2B15及びUGT2B17)の遺伝的変異は、UGTによって代謝される薬物の薬物動態に影響を及ぼすことが報告されている。場合によっては、様々なUGT遺伝子型を持つ被験者の薬物動態データを比較することで、薬物消失におけるUGT代謝の重要性を特定し、UGT阻害薬との間のDDIの程度を推定することが可能である。

さらにUGTは、例えば、PXRアゴニスト(例、中程度又は強いCYP3A誘導薬)によって誘導される可能性がある。主にUGTで代謝される被験薬に対する誘導薬の影響についても、UGT誘導薬との併用の可能性や、被験薬の用量/曝露―反応関係に応じて検討・評価すべきである。

3.2.4.2 UGTの阻害薬としての被験薬

2.1.3項に示したように、一般に、UGT阻害を介したDDIの大きさが限定的であることを考慮すると、被験薬によるUGT阻害のルーチンの評価は必要ない可能性がある。2.1.3項に示すin vitro評価に従い、UGT阻害薬としての被験薬の作用を評価するために臨床DDI試験を実施するか否かを決定する際には、その薬物がUGT分子種の既知の基質(例として、7.7.2項、表15参照)と併用される可能性や、それらの基質の安全性プロファイルも考慮すべきである。

3.2.4.3 UGTの誘導薬としての被験薬

UGTの遺伝子発現についての知見は限定的である。しかしながら、限られた臨床DDI試験の情報によると、一部のUGTはCYP3A4の発現も制御するPXR及び/又はCARのアゴニストによって誘導される可能性がある。UGTはCYP3A4よりも誘導されにくい。したがって、被験薬がin vitro試験でCYP3A4を誘導することが明らかとなって、臨床DDI試験で評価されている場合については、CYP3A4基質に対する被験薬の影響が、UGTに対する潜在的な誘導作用を示す可能性がある。そのような状況において、被験薬が感度の高いCYP3A基質のAUCを50%以上減少させる場合、CYP3A基質の曝露量の変化の大きさ、被験薬とUGT基質との併用の可能性、PXR/CARアゴニストによって調節され得る他の代謝酵素/トランスポーターがUGT基質の薬物動態に関与するか否か、及びそれらのUGT基質の用量又は曝露―反応(有効性)関係等を考慮して、臨床DDI試験の実施を考慮すべきである。CYP3A4誘導薬の中には、その誘導作用がCYP3Aに対する阻害作用によって無効化されるものがあることに注意すべきである。すなわち、そのような薬物は、臨床試験においてCYP3A4を阻害する一方で、UGTに対する誘導作用を示す可能性がある。

3.2.5 トランスポーターを介した相互作用評価に関する留意事項

3.2.5.1 トランスポーターの基質としての被験薬

In vitro試験で被験薬がトランスポーターの基質であることが示された場合、被験薬の受動的透過性、投与経路、吸収及び消失、想定作用部位、安全性プロファイル、用量/曝露―反応(有効性及び安全性)関係、当該トランスポーターの阻害薬又は誘導薬として知られている薬物との併用の可能性等に基づいて、臨床DDI試験を実施するかどうか判断すべきである。表2に示す情報は、in vitroでトランスポーターの基質となる被験薬について、臨床DDI試験の実施を考慮すべき場合の指針になる。

表2:被験薬がトランスポーターの基質となる場合の臨床評価の留意事項

トランスポーター

臨床DDI試験の実施を考慮すべき場合

P―gp及びBCRP

消化管吸収が制限されている場合、又は胆汁排泄/能動的な腎排泄が主要な消失経路である場合

OATP1B1及びOATP1B3

肝(代謝/胆汁)消失が被験薬の主要クリアランス経路(25%以上)である場合、被験薬の作用部位が肝臓にある場合、又は被験薬の特性から肝臓への能動的な取り込みが重要であると考えられる場合

OAT1及びOAT3、OCT2、MATE1及びMATE2―K

被験薬の能動的な腎排泄が顕著な場合(即ち、全身クリアランスの25%以上を占める場合)

トランスポーターを介したDDIの基質として被験薬を評価する場合、選択された相互作用薬は、検討対象のトランスポーターに対する既知の阻害薬であるべきである。トランスポーターを介した各輸送経路の選択的な指標薬(相互作用薬)は一般的に不足しているため、トランスポーターの相互作用薬の選択は、通常、併用の可能性に基づいて行われる(例、臨床的に意味のあるDDI情報を得て、DDIの管理に関する添付文書への注意喚起に反映させるため)。いくつかの例を7.7.3.2項の表19に提示する。

トランスポーターの阻害薬を用いたDDI試験は、DDIの根本的な機序を理解するため、又は予想される最大規模のDDIを決定するために利用できる。In vitro試験で、被験薬が複数のトランスポーターの基質となることが示された場合、複数のトランスポーターを幅広く阻害する薬物を用いて臨床DDI試験を行い、予想される最大規模のDDIを決定することが可能である。例えば、消化管のP―gp及びBCRP、並びに肝臓のOATPを阻害するcyclosporineは、当該臨床DDI試験の阻害薬として使用することができる。このような臨床DDI試験で陰性の結果が得られた場合、阻害の対象となるそれぞれのトランスポーター分子種の基質として、その被験薬を更に別の臨床試験により評価する必要性を排除できる可能性がある。一方で、試験結果が陽性であれば、特定のトランスポーターに対するより選択的な阻害薬を用いた追加の臨床DDI試験を実施し、各トランスポーターの阻害が基質の薬物動態に与える影響を評価することができる。同様の考え方は、トランスポーターと代謝酵素(例、CYP3A及びP―gp)両方の基質となる被験薬にも適用できる。

試験の目的が、基質となる薬物の薬物動態における特定の経路の役割と、その経路に起因するDDIを明らかにすることであれば、より選択性の高い阻害薬を使用すべきである。このような阻害薬を臨床DDI試験に使用することで、トランスポーターを介したDDIの機序を理解することができる。OATP1B1及びBCRPを含む一部のトランスポーターでは、その機能が低下することが知られている遺伝子多型となる遺伝子配列(それぞれSLCO1B1とABCG2)が存在する。遺伝子多型の存在するCYPの基質と同様に、もし機能しない表現型が存在するならば、トランスポーターの遺伝子多型が異なる被験者において、被験薬の薬物動態に対する特定のトランスポーターの相対的な寄与を評価することができる(4.1項参照)。

トランスポーター阻害薬の例示は7.7.3.2項に記載されている。これらの多くは、特定のトランスポーターを阻害するだけでなく、他のトランスポーター及び/又はCYPも阻害する。したがって、ある薬物のトランスポーター阻害試験の結果を他の薬物に外挿することは困難である。試験の結果解釈にあたっては、被験薬の輸送及び代謝経路に関する知見を考慮すべきである。

3.2.5.2 トランスポーターの阻害薬としての被験薬

In vitro試験において被験薬がトランスポーターの阻害薬であることが示された場合、臨床DDI試験を実施すべきかどうかは、併用される可能性の高い薬物とのその安全性を考慮して判断すべきである。被験薬がトランスポーターの阻害薬として作用する可能性を検討する場合には、そのトランスポーターの既知の阻害薬を併用することで薬物動態プロファイルが著しく変化し、かつ併用される可能性の高い基質を用いることが望ましい。臨床DDI試験に使用可能なトランスポーターの基質の例を7.7.3.1項に示す。多くの薬物は複数のトランスポーター及び/又は代謝酵素の基質となるため、被験薬がこれらの経路の阻害薬又は誘導薬でもある場合には、観察された臨床的な相互作用は複数の経路の変動の結果である可能性がある。したがって、これらの試験結果を他の薬物に外挿することは困難である。選択する基質は、被験薬の治療領域とトランスポーターの既知の基質である可能性の高い併用薬によって決定することができる。

場合によっては、薬物輸送の変化が未変化体の血漿中濃度の変化だけでは十分に反映されないこともある。したがって、トランスポーターを発現する臓器への分布の変化を反映した代謝物又は薬力学的マーカーの測定は、相互作用の可能性の解釈に有用と考えられる。

最近の文献では、一部の薬物トランスポーターに対する内因性基質の潜在的な有用性が示されている(3.2.7.1項参照)。被験薬を投与した際の内因性基質の曝露量の変化を評価することにより、その被験薬のトランスポーター阻害薬としての阻害強度に関する情報が得られる可能性がある。

3.2.5.3 トランスポーターの誘導薬としての被験薬

P―gpは、PXR及び/又はCARのアゴニスト等によってCYP3Aとともに制御されるが、CYP3Aよりも誘導性が低いため(12、13)、被験薬がCYP3Aの相互作用を受けやすい基質のAUCを50%以上低下させる場合(即ち、中程度又は強い誘導薬である場合)には、P―gp基質に対する潜在的な誘導作用を評価するために、更なる臨床DDI試験を考慮すべきである。これはケースバイケースの留意点として、被験薬によるCYP3A基質のAUC変化の大きさ、P―gp基質との併用の可能性、PXR及び/又はCARアゴニストによって調節される他の代謝酵素/トランスポーターがP―gp基質の薬物動態に関与するか否か、P―gp基質の用量又は曝露―反応(有効性)関係等の要因を考慮すべきである。なお、CYP3A4誘導薬の中には、その誘導作用がCYP3Aに対する阻害作用によって相殺されるものがある。したがって、それらの薬物は、臨床試験ではCYP3A4を阻害するものの、P―gpに対しては誘導作用を示す可能性がある。また、CYP3Aと同じ経路で制御されている他のトランスポーターに対する被験薬の潜在的な影響を評価するために、臨床DDI試験を実施すべきかどうかを考慮すべきである。

3.2.6 CYP又はトランスポーターのカクテル試験に関する留意事項

カクテル試験は、適切に計画された試験であれば、複数のCYP分子種及びトランスポーターに対する薬物の阻害又は誘導作用を同時に評価することができる。プロスペクティブなDDI試験のすべての要素を含む適切に実施されたカクテル試験の結果は、他の適切に実施されたDDI試験結果と同様に解釈することができる(3.2.1.1~3.2.1.8項参照)。カクテル薬物の選択基準は、(a)基質が個々のCYP分子種やトランスポーターに特異的であること、(b)基質間の相互作用がないことである。これらの基準が満たされていない場合には、特異性の欠如や基質間のDDIを考慮して、得られた試験の結果解釈を行うべきである。なお、基質のマイクロドーズ投与により得られた知見からは、必ずしも治療用量における基質の挙動を外挿できるとは限らないことに留意すべきである。

3.2.7 バイオマーカーアプローチの留意事項

被験薬の相互作用薬としての可能性を評価する代替的な方法は、十分に特徴付けられた内因性基質の曝露量の変化を評価することである。信頼性のある結果解釈となるように、適切なレベルの品質と一貫性を保証するために、十分な分析バリデーションが実施されるべきである。バイオマーカーの報告事例としては、血漿中コプロポルフィリンI(肝OATP1B1/3)、血漿及び尿中N1―メチルニコチンアミド及びN1―メチルアデノシン(腎OCT2、MATE1、MATE2K)、血漿中ピリドキシン酸(腎OAT1/3)、血漿中4β―ヒドロキシコレステロール/コレステロール比及び尿中6β―ヒドロキシコルチゾール/コルチゾール比(CYP3A4)が挙げられるが(14、15、16、17)、これらに限定されるものではない。なお、すべての内因性バイオマーカーが、感度、選択性、特異性、ダイナミックレンジ、プローブ薬の薬物動態パラメータとの相関性、変動性(食事、年齢、運動、日内変動、病態等の要因による)等の観点からバリデートが実施され、特性が評価されているわけではないことに留意する必要がある(18、19)。そのようなデータが利用可能であれば、内因性バイオマーカーに基づくDDI評価の優先順位付け、必要性、デザインに関して、製薬企業と規制当局との協議が可能となる。

3.2.7.1 肝OATP1Bの阻害薬としての被験薬

一例として、最近の文献報告では、肝OATP1B阻害作用の評価のための血漿中コプロポルフィリンI(CPI)の有用性が支持されている。血漿中CPIのモニタリングは、第Ⅰ相単回又は反復投与試験のような、健康被験者を対象とした初期の薬物動態試験に組み込むことができる。被験薬投与前(pre‐dose)に測定された血漿中CPIは、ベースライン時の濃度及びベースライン時のAUC0―t(ベースラインAUC0―t=ベースラインCPI×t)を表す。被験薬投与後のCPIのための連続的な試料採取により、CPIのCmax及びAUCを特徴付けることができる。対象となるメトリックスは、被験薬投与後のCPIのCmax及びAUC0―tのベースラインに対する比である。これらの比が1.25未満であれば、OATP1B阻害を介した臨床におけるDDIの可能性は低いことが示唆される(20)。

4.その他のトピック

4.1 薬理遺伝学

薬物代謝酵素又はトランスポーターをコードする遺伝子の薬理遺伝学的な変異は、薬物の薬物動態に影響を与え、薬物曝露の個体間変動を増大させ、安全性又は有効性に影響を与え、DDIの大きさを変化させる可能性がある。薬効に関連する重要な遺伝子としては、第Ⅰ相代謝酵素(CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6等)及び第Ⅱ相代謝酵素(NAT2、UGT1A1等)をコードする遺伝子や、トランスポーター(BCRP、OATP1B1等)をコードする遺伝子が含まれる。薬物代謝酵素の遺伝子多型は、酵素活性の増加、正常、減少又は欠損をもたらし、それぞれultra‐rapid(UM)、normal又はextensive(NM又はEM(以下、「NM」))、intermediate(IM)、PMとされる。トランスポーターの多型は、膜を通過する薬物の輸送を増減させ得る。これらの薬物代謝酵素及びトランスポーターの遺伝子多型は、被験薬及び/又はその代謝物の全身又は組織内の濃度に影響を及ぼす可能性がある。

本項の適用範囲は、薬理遺伝学がDDI及びDDIの評価に与える影響に限定している。以下の内容は薬物代謝酵素を例として挙げているが、多型のあるトランスポーターにもこの考え方は適用できる。

被験薬が遺伝子多型を有する代謝酵素の基質/阻害薬であり、薬物動態の変化を評価するために指標薬(阻害薬/基質)を用いた臨床DDI試験を実施する場合には、被験者の遺伝子型を事前に把握することが推奨される。最大のDDIを評価するためには、PMを除外することが推奨される。PMを除外しない場合は、表現型の異なる被験者(PM、IM、NM等)を対象に、必要に応じてDDIの影響を別々に評価すべきである。

被験薬が、PMの表現型が明確に定義された酵素(例、CYP2D6、CYP2C19)による代謝を受ける場合、PMにおける曝露はその経路の強い阻害薬による作用を受けた場合と同様であると予想される。PMの表現型を有する被験者とNMの表現型を有する被験者との薬物動態パラメータを比較することで、その経路の強い阻害薬を用いた臨床DDI試験の代替とすることができる。同様に、PMの表現型を有する被験者における曝露量は、強い阻害薬を用いた臨床DDI試験の結果を用いて推定することができる。PMとNMの表現型を有する被験者との間で曝露量に顕著な差がある場合は、特定の酵素の中程度の阻害薬又は誘導薬とのDDIの可能性を評価するために、更なる試験を検討すべきである。

多型遺伝子にコードされる代謝酵素が被験薬の2つの主要な消失経路のうちの1つである場合、もう一方の代謝酵素を阻害することによる相互作用の影響は、多型代謝酵素の表現型によって異なることが予想される。もう一方の代謝酵素を阻害することによる影響を評価する臨床DDI試験では事前に遺伝子型を特定し、NMの被験者以外に多型遺伝子の機能が欠如又は低下している被験者を増やすことで、様々な表現型における相互作用の影響を評価することができる。並行経路の阻害薬を併用すると多型代謝酵素のPM又はIMではDDIの大きさが増大する可能性があるため、薬物の安全性プロファイルに応じて、それらの被験者に異なる用量を投与することを考慮すべきである。PBPKモデリングは、このような検討を補完したり、異なる遺伝子型における相互作用の影響を外挿したりするために有用である(7.5.2項参照)。

レトロスペクティブな薬理遺伝学的解析は、臨床DDI試験における大きなばらつきの理由を解明するのに有用である。多型を有する代謝酵素やトランスポーターの遺伝子型に基づいて試験組入れが行われていない場合には、対象となる代謝酵素やトランスポーターのレトロスペクティブな解析を行うことで、遺伝子型集団間のDDIの大きさの差を特徴付けることができ、一部の被験者で薬物濃度の予期せぬ上昇又は低下が生じた要因を説明することができる。

プロスペクティブ及びレトロスペクティブな薬理遺伝学的解析のためのDNA試料の採取に関するガイダンスは、他の文書に記載されている。特定の薬理遺伝学的変異の頻度は集団によって異なる可能性がある。したがって、薬理遺伝学的解析を実施する際には、被験者の人種/民族性を考慮すべきである。さらに、ヒト由来試料のサンプリング及び分析に関する各地域の規制に従う必要がある。

4.2 生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品、生物起源由来医薬品)のDDI

一般に、薬物動態学的なDDIのリスクは低分子化合物と比べて生物薬品の方が低い。低分子化合物に適用可能なin vitro試験法は、一般的に生物薬品には適用できない。

生物薬品及び低分子化合物又は複数の生物薬品間のDDIの可能性を評価する際には、生物薬品の薬理作用及びクリアランス、更には患者集団における併用薬を考慮して、DDIの可能性の機序を検討すべきである。

オリゴヌクレオチド、si―RNA、修飾リボース核酸及びペプチド等の、新たなモダリティのDDIリスクは、本ガイドラインの適用範囲外である。

4.2.1 炎症性サイトカインの関連する機序

一部の生物薬品は、CYPの発現に間接的な影響を及ぼすことで、低分子化合物の薬物動態に影響を与える可能性がある。炎症性サイトカイン(例、peginterferon)やサイトカインレベルを上昇させる生物薬品は、CYPの発現をダウンレギュレーションすることでCYPの基質の代謝を低下させ、その曝露量を上昇させることがある。薬物治療による結果として生じるサイトカインレベルの上昇は、一過性の場合もあれば持続的な場合もあり、臨床DDI試験の実施の要否及びその試験デザインを決定する場合には、その上昇を考慮すべきである。

一方で、上昇したサイトカインレベルを低下させる生物薬品(例、tumor necrosis factor(TNF)阻害薬)は、炎症環境(例、関節リウマチ)からCYPのダウンレギュレーションを緩和し、それによってCYPの発現量及び活性を増加させ、CYPの基質の曝露量を低下させることがある。

被験薬がサイトカイン又はサイトカイン修飾因子である場合、被験薬がCYPに高い感度を有する基質に及ぼす影響を評価するために、臨床DDI試験の実施要否を検討すべきである。臨床DDI試験の実施要否を判断する際には、炎症負荷が同程度以上の病態における代謝に対する既知の薬物の影響、健康被験者と適応患者における高い感度を有するCYP基質の曝露量の差異、サイトカインレベルに対する薬物の影響の大きさを考慮すべきである。場合によっては、被験薬の使用方法を更に詳しく説明するために、該当する適応集団を対象とした臨床DDI試験を実施すべきである。試験デザイン上の重要な点として、対象患者の疾患の種類と重症度、相互作用薬の用量、投与期間等が挙げられる。

4.2.2 抗体薬物複合体

ADCの場合、抗体部分に結合した低分子化合物部分が遊離した形で放出される可能性がある。そのため、抗体と低分子化合物の両方のDDIの可能性を考慮する必要がある。一般に、低分子化合物部分は、代謝酵素やトランスポーターの阻害作用又は誘導作用の可能性について、本ガイドラインの低分子化合物に関して記載している内容と同様の方法で検討すべきである。しかしながら多くの場合、その低分子化合物部分の全身循環血中濃度は、臨床的な相互作用薬として作用するには非常に低濃度である可能性がある。

低分子化合物の生成、分布及び消失の動態を理解し、ADCの低分子化合物部分の全身への曝露を評価することが重要である。特に、低分子化合物部分の薬物濃度の上昇により安全性が懸念される場合には、低分子化合物部分(ADCとして投与)を基質として評価する必要があるかもしれない。ADCのこうした構成要素の曝露―反応関係を理解することは、臨床DDI試験の実施要否及びその意義を判断する上で重要である。

5.臨床DDI試験の結果報告と解釈

臨床DDI試験の報告書には、DDIの機序、相互作用薬及び基質の薬物動態学的特性の既知の情報に基づき、試験デザイン及びデータ解析方法、並びにし、その適切性を記載すべきである。薬物動態パラメータ(及び関連する場合には薬力学パラメータ)のデータ解析には、評価可能な薬物動態(及び/又は薬力学的)データを有する、試験に組入れられたすべての被験者を含める。被験者が試験から脱落した場合や、投与期間中の血漿中濃度のサンプル採取が不完全であった場合には、その結果が相互作用によるものである可能性を考慮すべきである。必要に応じて、除外した被験者を含めた場合と含めない場合の結果及び脱落例の概要を提示すべきである。

5.1 薬物動態データ解析

5.1.1 ノンコンパートメント解析(NCA)

被験者ごとに、AUC0―inf、AUC0―t、AUC0―tからAUC0―infへの外挿率、Cmax、Cmaxまでの到達時間(Tmax)の各薬物動態パラメータを算出する。反復投与試験の場合は、定常状態でのCmax、Cmin及びAUC0―tauも報告する。また、その他に薬物動態の結果解釈に有用なパラメータとして、クリアランス(CL又は経口クリアランス(CL/F))、消失半減期及び分布容積がある。また、代謝物が測定された場合には、そのパラメータも提示すべきである。NCAは、被験薬が被相互作用薬又は相互作用薬となる可能性の検討を行ったスタンドアローン臨床DDI試験を評価するために利用する。

5.1.2 母集団薬物動態解析

ネステッドDDI試験で収集された薬物動態データは、通常、母集団薬物動態解析により評価する。DDIは、薬物動態モデルにおいて適当であると考えられるすべての構造モデルを構成する要素(クリアランス(CL又はCL/F)、相対的バイオアベイラビリティ、吸収速度等)を用いて評価すべきである。母集団薬物動態解析では、試験デザインと薬物の薬物動態特性に適したAUC、Cmax等の薬物動態パラメータを算出する。反復投与試験の場合は、定常状態でのCmax、Cmin及びAUC0―tauを報告する。

5.2 臨床DDI試験の結果報告

臨床DDI試験の代表的な薬物動態学的エンドポイントには、AUCやCmax、また適用できるならCminのような基質の曝露量変化のパラメータを含めるべきである(5.1.1項参照)。臨床DDI試験における薬物動態の結果は、相互作用薬の存在下及び非存在下におけるそれぞれの薬物動態学的な曝露指標の幾何平均値の比とその90%信頼区間を算出して報告する。クロスオーバー試験における個々の被験者のAUC又はCmax比の範囲等、観察された相互作用のばらつきの指標を報告する。

データの表示方法には複数の方法があり、データと状況に基づいて最も適切な方法を選択することが推奨される。例えば、フォレストプロット等のグラフを用いて表示できる。また、個々の被験者の薬物動態パラメータを併用薬の存在下及び非存在下で比較する際にも、グラフで示すことができる(例、スパゲッティ・プロット又は個々の比率プロット)。No‐effect boundary(5.3.1項参照)を超えて曝露量が上昇した被験者の割合も示すことができる。

臨床DDI試験で薬力学的エンドポイントも評価した場合は、その結果を報告して要約すべきである。

5.3 臨床DDI試験の結果解釈

5.3.1 No‐effect Boundariesの決定

臨床DDI試験の結果は、基質の臨床反応へ影響を及ぼさない曝露範囲(no‐effect boundaries)に基づいて解釈されるべきである。No‐effect boundariesとは、全身曝露量の変化が、臨床的な措置(例、併用投与の回避、用量又は投与スケジュールの調整、追加の治療モニタリング)を必要とするほど重要ではない、と判断できる範囲を意味する。

No‐effect boundariesは、臨床試験の結果から得られた曝露―反応関係と、基質に関する情報(例、安全性データ、最大耐用量)に基づいて設定されることが望ましい。薬物の期待される反応及び好ましくない反応の曝露―反応関係をよく理解し、対象集団における曝露の変動性に対する知見を得ることで、結果解釈が促進される。明確な曝露―反応関係が認められない場合、DDIの臨床における影響を決定する際には、全体的なエビデンスを考慮すべきである。ときには、80~125%の範囲に90%信頼区間が含まれることがno‐effect boundaryの初期設定として提案される。一般に、これは受入れ可能なアプローチであるが、曝露量のわずかな変化が臨床的な影響を及ぼす可能性は低く、多くの薬剤では過度に保守的なアプローチと考えられる。

一般に、相互作用薬の存在/非存在下の間での基質の曝露量の比の点推定値を用いて、相互作用の大きさを表し、用量調節等の介入の必要性を決定できる。相互作用のばらつきについても考慮すべきである。試験に組み入れる被験者数は、相互作用の大きさとばらつきに関する信頼性のある推定値が得られるように十分な数とすべきである(Q&A参照)。

5.3.2 DDIの相互作用薬としての被験薬:分類方法

この分類方法は、臨床DDI試験で評価されていない薬物に対して、DDI試験結果を外挿する際に有用である。

被験薬がCYPの阻害薬である場合、指標薬(感度の高いCYP基質)への影響に基づいて、強い、中程度又は弱い阻害薬にそれぞれ分類される。一般的に、CYPの阻害は以下のように分類される。

・ 強い阻害薬は、指標薬(感度の高いCYP基質)のAUCを5倍以上に上昇させる。

・ 中程度の阻害薬は、指標薬(感度の高いCYP基質)のAUCを2倍以上5倍未満に上昇させる。

・ 弱い阻害薬は、指標薬(感度の高いCYP基質)のAUCを1.25倍以上2倍未満に上昇させる。

被験薬がCYPの誘導薬である場合、指標薬(感度の高いCYP基質)への影響に基づいて、強い、中程度又は弱い誘導薬にそれぞれ分類される。一般的に、CYPの誘導は以下のように分類される。

・ 強い誘導薬は、指標薬(感度の高いCYP基質)のAUCを80%以上減少させる。

・ 中程度の誘導薬は、指標薬(感度の高いCYP基質)のAUCを50%以上80%未満減少させる。

・ 弱い誘導薬は、指標薬(感度の高いCYP基質)のAUCを20%以上50%未満減少させる。

これらの分類は、一般に、被験薬を治療用量範囲/投与法の中で最高臨床用量と最短の投与間隔で投与された場合の影響を表している。一部の阻害薬や誘導薬の作用は用量依存的であることに留意する。

CYPの阻害薬及び誘導薬の分類は、通常、指標薬(感度の高い基質)を用いた臨床DDI試験に基づいて行われるが、指標薬とは異なる感度の高い基質の代謝特性が十分に把握されている場合には、その代替の基質を用いた試験に基づいて被験薬を分類することが可能な場合がある。

現時点で、トランスポーター又は非CYP酵素に関する分類方法は存在しない。DDIの機序には他のトランスポーター及び/又は代謝酵素が関与している可能性があり、CYPと同様の基準で阻害薬を分類することは困難である。さらに、トランスポーター又は非CYP酵素(例、UGTs)を介するDDIの大きさの範囲はCYPよりも限定的である。

5.3.3 試験結果の外挿

併用される可能性のあるすべての組み合わせを臨床評価することは困難である。可能であれば、臨床DDI試験の結果を他の薬物や臨床状況に外挿すべきである。指標薬を用いた臨床DDI試験の結果は、一般に、特定の機序による最大の相互作用を示すものであり、同様の機序による他の相互作用の大きさを予測するのに用いることができる。CYPの阻害薬及び誘導薬の分類方法は、外挿する上での補助となる。例えば、指標薬(強いCYP3A阻害薬)との併用で被験薬の曝露量に影響が認められない場合には、一般に、他の強い、中程度及び弱いCYP3A4阻害薬と被験薬を併用投与しても影響がないと考えることができる。指標薬(強いCYP2D6阻害薬)との投与により被験薬の曝露量が有意に上昇した場合、その結果は他の強いCYP2D6阻害薬に直接外挿することができる。場合によっては、メカニスティックモデル(7.5項参照)を用いて、陽性結果を中程度及び弱い阻害薬に対して外挿できる(7.5項参照)。

トランスポーターに特異的な基質及び阻害薬はなく、代謝酵素との相互の影響の可能性があることから、トランスポーターを介したDDIやトランスポーターと代謝酵素の相互作用を評価した臨床DDI試験の結果を、ある薬物から他の薬物へ外挿することは一般的には困難である。ただし、被験薬と潜在的な併用薬のADME特性が十分に把握されている場合には、トランスポーターを介した他の併用薬とのDDIに外挿できる可能性がある。

5.3.3.1 複雑なシナリオの外挿

多くの臨床DDI試験は、2つの薬物間の相互作用を評価し、単一のトランスポーター又は代謝酵素への影響を検討するものである。しかしながら、特定の薬物に対するDDIは、複数の機序が組み合わせから生じる可能性があり、患者に対して相互作用の可能性がある薬物が2つを超えて併用投与される可能性、また、相互作用の大きさが患者集団によって異なる可能性がある。その結果生じる“複雑なDDIシナリオ”の例を以下に示す。

・ 1つの薬物又は複数の薬物による代謝酵素とトランスポーターの同時阻害

・ 1つの薬物又は複数の薬物による複数のトランスポーターの同時阻害

・ 1つ以上の代謝酵素が関与する薬物の代謝経路の同時阻害及び誘導

・ 薬物を代謝する複数の代謝酵素の阻害薬を使用することによる薬物消失の阻害の増大

・ 遺伝子多型を有する酵素とそれ以外の酵素の両方で代謝される基質がPMに投与されたときの、それ以外の酵素の阻害

・ 薬物の消失臓器(例、肝臓、腎臓)の障害の程度が異なる被験者における代謝酵素/トランスポーター阻害薬の影響

・ 2つの薬物が互いの薬物動態に影響を与える(両者が相互作用薬及び被相互作用薬として作用する)

被験薬の吸収や薬物動態に影響を及ぼす要因が複数あり、更に複数の機序のDDIが存在する場合には、リスク評価や推奨事項の提供のために、機序の組み合わせ及び/又は個々の要因が薬物曝露に及ぼす影響を評価することを考慮すべきである。複雑なDDIシナリオは、関連するin vitro及び臨床試験から得られた知見並びに内因性バイオマーカー情報を統合して評価することができる。予測モデリングは、臨床試験の実施が有益かどうかを判断する、又は臨床試験のデザイン設計に関する情報を得るために用いられることがある。

6.リスク評価とマネジメント

リスク評価により、DDIのマネジメント戦略が示されるべきである(即ち、DDI予防及びリスク最小化戦略)。安全性、有効性又は忍容性に関して、薬物を併用することにより薬物を単独で投与した場合よりも大きな懸念が生じる場合に、DDIは臨床的に問題となる。

一般に、DDIのリスクマネジメント戦略は、結果として基質の薬物濃度がno‐effect boundaryに収まるようにすべきである。リスク評価とリスク最小化戦略の策定では、以下の内容を考慮する。

・ 安全性及び有効性に関する曝露―反応関係

・ 観察されたDDIデータのばらつき(利用可能な場合)

・ 併用薬の予想される併用期間(例、一方又は両方の薬物の急性、短期又は長期使用)

・ 併用薬の予想される投与開始タイミング

・ DDIの機序(例、可逆的又は時間依存的な阻害、誘導、阻害と誘導の両方)

・ モニタリングパラメータの有無(例、血中薬物濃度モニタリング、臨床検査)

・ 被験薬又は併用する相互作用薬の投与中断の判断、いずれかの薬物に対する他の治療選択肢の適用

・ 薬剤の臨床上のベネフィットに対する有害な転帰の臨床的な重要性

上述の内容を考慮した後、DDIマネジメント戦略に以下のようなものが含められる(注意喚起の表現方法には、各地域の規制上の差異がある可能性に留意すること)。

・ 併用禁忌又は併用回避

・ 相互作用を起こす薬剤の一時的な投与中断

・ 一方の薬剤の投与レジメンの変更

・ 薬剤の投与時期の調整(例、被験薬を併用薬と異なる時期に投与する)

・ 特定のモニタリング管理の実施(例、血中薬物濃度モニタリング、臨床検査)

・ 相互作用を起こす薬剤を、相互作用がないと考えられる薬剤へ置き換え

7.付録

7.1 用語集

ADC:抗体薬物複合体

ADME:吸収、分布、代謝、排泄

AUC:濃度―時間曲線下面積

AUC0―inf:無限時間まで外挿したAUC

AUC0―t:0時間から最終定量可能時間までのAUC

AUC0―tau:定常状態における投与間隔ごとのAUC

AUCR:相互作用薬の存在下及び非存在下における基質(被相互作用薬)のAUC比

BCRP:乳癌耐性タンパク

CAR:構成的アンドロスタン受容体

Cmax:投与後の最高濃度

Cmax,u:非結合形のCmax

Cmax,inlet,u:肝臓入り口の推定最大非結合形阻害薬濃度

Cmin:定常状態における投与間隔ごとの最低濃度

CYP:チトクロームP450

DDI:薬物相互作用

EC50:最大効果の50%の効果をもたらす濃度

Emax:最大誘導作用

fm:CYP酵素により代謝される基質の全身クリアランスのうち、阻害/誘導を受ける割合

fu,p:血漿中非結合形分率

HLM:ヒト肝ミクロソーム

IC50:50%阻害濃度

IC50,u:非結合形IC50

指標薬(相互作用薬):ある消失経路の高感度で特異的な基質とともに投与された場合、その経路に一定程度の阻害又は誘導を引き起こし、強力かつ選択的なプロファイルが十分に確立されていることから、スタンドアローンDDI試験での使用が推奨される薬物

指標薬(基質):薬物の消失経路に対する強い阻害薬又は誘導薬を投与した場合に、曝露量の一定の変化を示し、高感度で特異的なプロファイルが十分に確立されていることから、スタンドアローンDDI試験において基質として使用することが推奨されている薬物

被験薬:影響を与える薬物又は影響を受ける薬物として作用する可能性を検討する医薬品又は開発薬

kdeg:影響を受ける代謝酵素の見かけの一次分解速度定数

KI:最大不活性化速度の50%の速度をもたらす阻害定数

KI,u:非結合形のKI

kinact:最大不活性化速度定数

Km:ミカエリス定数

Kobs:見かけの一次不活性化速度定数

MATE:多剤排出輸送体

MRP:多剤耐性関連タンパク

NADPH:還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸

ネステッドDDI試験:DDI評価が主目的ではない臨床試験(例、第2又は3相試験)の一部として実施されるDDI検討

No‐effect boundaries:全身曝露量の変化が、臨床的な措置(例、用量又はスケジュールの調整、追加の臨床モニタリング、使用回避)を必要とするほど重要でないと考えられる範囲

OAT:有機アニオントランスポーター

OATP:有機アニオン輸送ポリペプチド

被相互作用薬:酵素又はトランスポーターの基質

OCT:有機カチオントランスポーター

pAUC(partial AUC):特定の2時点間のAUC

PBPK:生理学的薬物速度論

P―gp:P―糖タンパク質

相互作用薬:酵素又はトランスポーターを誘導又は阻害する薬物

プローブ基質:被験薬の個々の酵素阻害作用又は誘導作用を測定するin vitro試験で使用される薬物。プローブ基質又は特定の代謝物の生成は、評価する酵素に対して選択的であるべきである。

PXR:プレグナンX受容体

スタンドアローンDDI試験:臨床におけるDDIの有無とその大きさを決定することを主目的とした臨床DDI試験

指標薬(相互作用薬及び基質)を用いたDDI試験:指標薬(相互作用薬又は基質)を用いて実施される臨床DDI試験で、検討した経路における被験薬との相互作用の最大の影響を検討することを目的とし、通常、その結果を他の薬剤の併用に外挿できる。

TDI:時間依存的阻害

Tmax:Cmaxの到達時間

t1/2:消失半減期

UGT:ウリジン二リン酸(UDP)グルクロン酸転移酵素

7.2 タンパク結合

被験薬の相互作用薬としてのDDIリスクを予測する上で重要なパラメータは、血漿タンパク結合である。歴史的に、タンパク結合性の高い薬物のタンパク結合率の測定値の不確実さを考慮して、規制当局はfu,p(血漿中非結合形分率)を0.01(即ち、1%)に設定することを推奨してきた。この保守的なアプローチは、DDI予測が偽陰性となることを防ぐために適用されたものである。近年の科学的進歩により、タンパク結合性が高い薬物に関するタンパク結合率の正確かつ精度ある分析法が開発された。タンパク結合試験法を選択する際には、被験薬に対する試験法の適合性を確認することが重要である。次のステップは、タンパク結合試験法の真度及び精度を実証することである。そのような実証には、適切な陽性対照(即ち、関連する血漿タンパク結合に対して高い結合性を示す一連の化合物)で適格性を評価したタンパク結合試験のバリデーションデータを含めるべきである。これらの検討に用いる生体試料分析法は、必要な感度範囲で、適切な真度及び精度(即ち、検量線用標準試料及びQuality Control試料が15%、定量下限が20%)を有するべきである。これらの特徴を有するタンパク結合試験法を用いて、被験薬のタンパク結合率を測定することができる(21)。新たなタンパク結合試験法を確立する場合、高いタンパク結合性を示す一連の化合物について、これまでに確立され、受け入れられている測定原理の異なる別の試験法に照らして、当該試験方法の適格性を確認すべきである(22)。

なお、被験薬のタンパク結合試験には、試験内での性能を保証するために、予め適格性が確認されている陽性対照を必ず含めるべきである。陽性対照のfu,p値については、タンパク結合試験法の適格性確認で以前に報告されたfu,p値の平均値の3倍以内であることを実証しなければならない。

7.3 代謝酵素が関与するDDIのin vitro評価

7.3.1 In Vitro評価系

被験薬の代謝酵素を介したDDIのリスクを評価するために、以下を含む、様々な肝組織のin vitro評価系が使用できる。

・ ミクロソーム系(HLM:CYP及びUGTを含む)、肝ホモジネートを9000gで遠心分離した後の上清(S9:硫酸転移酵素、グルタチオン転移酵素、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ等の細胞質酵素及びミクロソームを含む)、及びサイトゾル(必要に応じて補酵素を添加)。HLMの場合、少なくとも10例のドナーからのプールが推奨される。

・ ヒトCYP分子種及びUGT分子種の組換え発現系。これらの系は、通常、単一の酵素分子種のみが発現する。

・ ヒト肝組織(酵素体系を保持し、第Ⅰ相及び第Ⅱ相薬物代謝酵素をすべて含む新鮮又は凍結保存肝細胞を含む)。代謝酵素同定試験及び阻害試験には、少なくとも5~10例のドナーから採取してプールした肝細胞を使用することが推奨され、誘導試験には通常、少なくとも3例のドナーから採取した個別の肝細胞を用いるべきである。

使用するin vitro評価系は、頑健で再現性のあるものでなければならない。

ミクロソームタンパクの濃度は最小限に抑え、標準化された試験条件(緩衝液の強度、pH等)を使用すべきである。(代謝物生成の初速度において)代謝物が線形的に生成されるインキュベーション時間及び酵素量が推奨される。

代謝酵素同定試験では、各代謝酵素の活性を確認するために、in vitroのプローブ基質を用いて試験系を特徴付けるべきである。一般に、プローブ基質は選択的であること(例、単一の代謝酵素によって主に代謝される)、又はプローブ基質の特定の代謝物が主に単一の代謝酵素から生成されるべきである。プローブ基質の例とそのマーカー反応の一覧を7.6.1.1項の表4に示す。時間依存的阻害又は誘導の試験においては、適切な阻害薬又は誘導薬を陽性対照として含めるべきである(詳細は、7.6.1項を参照)。

代謝酵素の阻害試験では、被験薬がインキュベーション溶液中に存在する代謝酵素によって代謝される場合、阻害パラメータの推定に及ぼす被験薬の代謝(被験薬濃度の低下)の影響を最小限にするために、可能であれば、被験薬よりも顕著に速い代謝速度を持つプローブ基質を用いるべきである。

阻害及び誘導試験(酵素活性を測定する場合)におけるプローブ基質及び/又はその関連代謝物と同様に、代謝酵素同定試験において被験薬とその関連代謝物を定量するためには、頑健な分析法を用いるべきである。医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準(GLP)下での実施は要求されないが、用いた分析方法の詳細を提示すべきである。