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○N―ニトロソアトモキセチンが検出されたアトモキセチン塩酸塩製剤の使用による健康影響評価の結果等について
(令和6年8月30日)
(事務連絡)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬局医薬安全対策課、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課通知)
アトモキセチン塩酸塩製剤については、ニトロソアミン類に分類される化学物質(N―ニトロソアトモキセチン)が検出されたことを受け、国内の製造販売業者のうち、日医工株式会社が、管理値を上回るN―ニトロソアトモキセチンが検出された原薬を使用した製剤ロットの自主回収を行っております。
今般、過去にこれらの製剤を服用された方々における健康への影響について評価を行い、令和6年度第5回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会において審議いたしましたので、本件について患者から相談を受けた場合等の参考とされたく、貴管下医療機関及び薬局に対する周知方お願いいたします。
記
1.N―ニトロソアトモキセチンについて
N―ニトロソアトモキセチンは、アトモキセチン塩酸塩製剤の原薬の精製及び粉砕工程において、アトモキセチンと空気中の窒素酸化物が反応することにより生成すると考えられています。
日医工株式会社の製造販売するアトモキセチン塩酸塩製剤(以下「本剤」という。)で使用された原薬について、1日許容摂取量(100ng)※1に基づき設定された管理値を上回るN―ニトロソアトモキセチンが検出されており、管理値を上回る原薬が使用された製剤ロットの自主回収が行われています。なお、現在は、リスク低減措置が講じられ、本剤の製造に使用される原薬は、N―ニトロソアトモキセチンが管理値以下となるよう、製造販売業者により管理されています。
※1 N―ニトロソアトモキセチンの1日許容摂取量については、発がん性に関する直接の毒性データがないことから、類似化合物の毒性データに基づき、100ng/日と推定されたものです。詳細は、令和6年度第5回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料(資料3―1~3―2)を参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42464.html
2.本剤の使用による健康影響評価について
N―ニトロソアトモキセチンを含む原薬から製造された本剤の使用による理論上の発がんリスクについて、本剤120mg(アトモキセチンとして)を一生涯(70年間)毎日服用した場合の理論上の発がんリスクは、およそ139,000人に1人が、その曝露により過剰にがんを発症する程度のリスクに相当すると評価されています※2。
※2 発がんリスクの評価は、以下の前提で行っています。
・ 1日使用量については、本剤の用法及び用量が「通常、18歳以上の患者には、アトモキセチンとして1日40mgより開始し、その後1日80mgまで増量した後、1日80~120mgで維持する。ただし、1日80mgまでの増量は1週間以上、その後の増量は2週間以上の間隔をあけて行うこととし、いずれの投与量においても1日1回又は1日2回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日量は120mgを超えないこと。」であるため、120mgと設定した。
・ 本剤のN―ニトロソアトモキセチン含量については、原薬中のN―ニトロソアトモキセチン含量と同一と仮定し、また、本剤は長期間の投与が想定され、単一の製剤ロットの使用は想定されないことから、原薬ロット間の含量のばらつきはあるものの、原薬ロットの分析結果の平均値(523ppb)を用いることとした。
3.本剤を使用している方等への対応について
医療機関等に対しては、患者の自己の判断のみにより本剤の服用を中止しないよう説明していただきたいことを周知方お願いいたします。
参考資料:
○令和6年度第5回医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料3―1、3―2
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001295370.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001295061.pdf
以上