添付一覧
○墜落制止用器具に係る質疑応答集の改訂について
(令和5年12月20日)
(基安安発1220第2号)
(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)
(契印省略)
墜落制止用器具については、質疑が多数寄せられていることから、平成30年11月20日付け基安安発1120第1号により質疑応答集を作成し、令和元年8月27日付け基安安発0827第1号により改定したところであるが、今般別添のとおり改訂したので、業務に活用されたい。
おって、別添と同様の内容の質疑応答集を、厚生労働省のウェブページにも掲載予定であるので了知されたい。
別添
墜落制止用器具に係る質疑応答集
令和5年12月
厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課
目次
1 墜落制止用器具の定義
2 施行日及び経過措置
3 墜落制止用器具の選択
4 特別教育の対象作業
5 特別教育の科目の省略
6 特別教育の実施者
7 特別教育の記録
8 その他
(注記)
旧規格:「安全帯の規格」(平成14年厚生労働省告示第38号)
新規格:「墜落制止用器具の規格」(平成31年厚生労働省告示第11号)
1 墜落制止用器具の定義
【質問1―1】 安全帯と墜落制止用器具はどう違うのか。 |
(答)
「墜落制止用器具」には、従来の「安全帯」に含まれていたワークポジショニング(身体を作業箇所に保持すること)用の器具である旧規格のU字つり用胴ベルト型安全帯(以下「U字つり用胴ベルト」といいます。)は含まれません。
なお、法令用語としては「墜落制止用器具」となりますが、建設現場等において従来の呼称である「安全帯」、「一本つり胴ベルト型安全帯」、「ハーネス型安全帯」といった用語を使用することは差し支えありません。
2 施行日及び経過措置
【質問2―1】 施行日(2019年2月1日)以降、一本つりの胴ベルト型は高さ6.75メートルを超える箇所で使用できなくなるのか。経過措置はないのか。 |
(答)
胴ベルト型墜落制止用器具(いわゆる、新規格に適合する胴ベルト)は使用できません。
経過措置により、2019年8月1日以前に製造された安全帯(胴ベルト型(一本つり、U字つり)、ハーネス型のいずれも含む。)であって、旧規格に適合しているものについては、要求性能墜落制止用器具とみなされていましたが、経過措置期間は2022年1月1日をもって終了しました。
【質問2―2】 施行日(2019年2月1日)以降、U字つり用胴ベルトは使用できなくなるのか。経過措置はないのか。 |
(答)
U字つり用胴ベルトについては、ワークポジショニング用の器具として使用することは差し支えありませんが、施行日(2019年2月1日)以降、墜落制止用器具には該当しませんので、高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合、墜落制止用器具(フルハーネス型又は一本つり胴ベルト型(高さ6.75メートルを超える箇所ではフルハーネス型))との併用が必要になります。
経過措置により、2019年8月1日以前に製造された安全帯(胴ベルト型(一本つり、U字つり)、ハーネス型のいずれも含む。)であって、旧規格に適合しているものについては、要求性能墜落制止用器具とみなされていましたが、経過措置期間は2022年1月1日をもって終了しました。
3 墜落制止用器具の選択
【質問3―1】 高さ6.75メートルを超える箇所での作業と、高さ6.75メートル以下の箇所での作業が混在するとき、常時フルハーネス型を使ってもよいか。 |
(答)
問題ありません。
フルハーネス型は高さによる使用制限はなく、「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日付け基発0622第2号)「第4 墜落制止用器具の選定」の「1 基本的な考え方」においても、「墜落制止用器具は、フルハーネス型を原則とすること」とされています。
さらに、取付設備の高さや作業者の体重に応じたショックアブソーバのタイプとランヤードの長さ(ロック付き巻取り器を備えるものを含む。)を適切に選択することも必要です。
【質問3―2】 今回の法令改正によって、墜落制止用器具を使用しなければならない作業はどのように変わったのか。 |
(答)
2019年2月1日施行の法令改正に伴い、墜落制止用器具(安全帯)の使用義務の範囲が変更されたわけではありません。これまで「安全帯」の使用を義務付けていた作業について、「安全帯」に代わり「要求性能墜落制止用器具」の使用が義務付けられることとなったものです。
【質問3―3】 外国で製造されたフルハーネス型や一本つり胴ベルト型は使用できるのか。 |
(答)
新規格に適合しているものについては使用可能です。
新規格に適合していないものについても使用できる場合がありますが、新規格に適合するものと同等以上の性能又は効力を有していることにつき、厚生労働省労働基準局長の認定を受け、新規格第10条に基づく適用除外に該当する必要があります。新規格のどの部分に適合せず、またその部分が新規格と同等以上の性能又は効力を有していることを確認の上、お近くの都道府県労働局にご相談ください。
4 特別教育の対象作業
【質問4―1】 高さ2メートル以上の箇所でフルハーネス型を使っている人は、全員、特別教育を行わなければならないのか。 |
(答)
法令で特別教育が義務付けられるのは、「高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス型墜落制止用器具を用いて行う作業に係る業務」に限られます。
したがって、作業床が設けられている箇所においての作業、胴ベルト型墜落制止用器具を用いて行う作業については、特別教育は義務づけられません。
なお、旧規格に適合しているフルハーネス型安全帯を使用して、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて作業を行う場合においても、特別教育は必要です。
【質問4―2】 特別教育を受けた者でなければフルハーネス型の使用はできないのか。 |
(答)
特別教育を受講されていない方であっても、作業床が設けられた箇所での作業ではフルハーネス型を使用できます。
特別教育の対象作業(【質問4―1】参照)と、フルハーネス型の使用義務がある作業(高さ6.75メートルを超える高さ)は、条件が異なります。
【質問4―3】 高所作業車を用いた作業についても、特別教育を行わなければならないのか。 |
(答)
高所作業車のバスケット内での作業であれば、通常、作業床があると認められるため、特別教育は義務付けられません。
なお、高所作業車(作業床が接地面に対し垂直方向にのみ上昇し又は下降する構造のものを除く。)のバスケット内で作業する場合であっても、高さが6.75メートルを超える箇所で作業を行う場合には、フルハーネス型墜落制止用器具等の使用が義務付けられます。
【質問4―4】 「作業床」とはどのようなものか。 |
(答)
法令上具体的な定義はありませんが、一般的には、足場の作業床、機械の点検台など作業のために設けられた床を指します。また、ビルの屋上、橋梁の床板など、水平で平面的な広がりを持った建築物の一部分であって、通常その上で労働者が作業することが予定されているものについても作業床となると考えられます。
具体的な判断は、所轄の労働基準監督署にご相談ください。
【質問4―5】 身を乗り出す作業、手すりがない場所や開口部での作業について、特別教育が必要か。 |
(答)
一般的に、作業床上での作業であれば特別教育は義務付けられません。具体的な判断は、所轄の労働基準監督署にご相談ください。
なお、高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆い等を設けること又は労働者に墜落制止用器具を使用させること等が義務づけられます。
【質問4―6】 高さ2メートル以上の箇所で作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス型墜落制止用器具を着用して通行や昇降をするだけの場合、特別教育は必要か。 |
(答)
「通行」や「昇降」をするだけの場合、特別教育は必要ありません。
【質問4―7】 「通行」「昇降」の定義はあるか。工事の進捗確認、点検なども「通行」「昇降」に含まれるか。 |
(答)
法令上の定義はありませんが、一般的に、「通行」とは、通っていくという意味、「昇降」とは、昇ったり降りたりするという意味であり、それ以外の行為(工事の進捗確認、現場巡視、点検など)は、「通行」や「昇降」にはあたりません。
ただし、昇降を主たる目的として、昇降しながら昇降用の設備(はしご等)の健全性等を確認するような場合は「昇降」に含まれます。
5 特別教育の科目の省略
【質問5―1】 特別教育は、施行日(2019年2月1日)までに、労働者全員が受けなければならなかったのか。未受講者は早急な受講が必要か。科目の省略はないのか。 |
(答)
一般には、必ずしも全員ではなく、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス型墜落制止用器具を用いて行う作業に係る業務に就く者は、2019年2月1日までに特別教育を受講している必要があり、未受講者は受講が必要です。ただし、一定の経験のある者については、以下のとおり、一部の科目の省略が可能です。(平成30年6月22日付け基発0622第1号)
① 施行日(2019年2月1日)時点において、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところでフルハーネス型墜落制止用器具を用いて行う作業に6月以上従事した経験を有する者は、「作業に関する知識」、「墜落制止用器具(フルハーネス型のものに限る。以下同じ。)に関する知識」、「墜落制止用器具の使用方法等」の科目を省略できます。
② 施行日(2019年2月1日)時点において、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところで胴ベルト型を用いて行う作業に6月以上従事した経験を有する者は、「作業に関する知識」の科目を省略できます。
③ 足場の組立て等特別教育受講者又はロープ高所作業特別教育受講者は、「労働災害の防止に関する知識」の科目を省略できます。
なお、施行日(2019年2月1日)より前に、改正省令による特別教育の科目の全部又は一部について受講した者については、当該受講した科目を施行日以降に再度受講する必要はありません。
<参考:特別教育について(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第36条第41号、安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第24条)>
<学科教育>
科目 |
範囲 |
時間 |
作業に関する知識 |
①作業に用いる設備の種類、構造及び取扱い方法 ②作業に用いる設備の点検及び整備の方法 ③作業の方法 |
1時間 |
墜落制止用器具(フルハーネス型のものに限る。以下同じ。)に関する知識 |
①墜落制止用器具のフルハーネス及びランヤードの種類及び構造 ②墜落制止用器具のフルハーネスの装着の方法 ③墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法及び選定方法 ④墜落制止用器具の点検及び整備の方法 ⑤墜落制止用器具の関連器具の使用方法 |
2時間 |
労働災害の防止に関する知識 |
①墜落による労働災害の防止のための措置 ②落下物による危険防止のための措置 ③感電防止のための措置 ④保護帽の使用方法及び保守点検の方法 ⑤事故発生時の措置 ⑥その他作業に伴う災害及びその防止方法 |
1時間 |
関係法令 |
労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令及び労働安全衛生規則中の関係条項 |
0.5時間 |
<実技教育>
科目 |
範囲 |
時間 |
墜落制止用器具の使用方法等 |
①墜落制止用器具のフルハーネスの装着の方法 ②墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法 ③墜落による労働災害防止のための措置 ④墜落制止用器具の点検及び整備の方法 |
1.5時間 |
【質問5―2】 「足場の組立て等作業主任者技能講習」の修了者は、特別教育の科目を省略できるか。また、「とび技能士」などは特別教育の一部省略はできないのか。 |
(答)
特別教育の一部省略の条件等は【質問5―1】(答)のとおりですので、「足場の組立て等作業主任者技能講習の修了」や「とび技能士」をもって特別教育の一部の科目の省略はできません。【質問5―1】(答)の要件に該当するかどうかで判断してください。
【質問5―3】 科目省略の要件に、「6月以上従事した経験」とあるが、この経験は胴ベルト型又はフルハーネス型を用いた作業であれば、どのような作業でもよいのか。 |
(答)
高さが2メートル以上の箇所で作業床を設けることが困難なところにおける作業であれば、作業内容に限定はありませんが、「6月以上従事した経験」に該当するためには、継続的にその作業に就いていた経験を有する必要があります。
【質問5―4】 「6月以上従事した経験」の証明に、定められた基準はあるのか。 |
(答)
一般的には、当該労働者を雇用する(していた)事業者が証明することになると思われます。
証明に関して、法令で定められた基準・様式等はありません。
6 特別教育の実施者
【質問6―1】 特別教育は、外部の教育機関で受講しなければならないのか。 |
(答)
法令では、事業者に、特別教育の実施を義務付けておりますので、事業者が自ら特別教育を実施するのは、当然、差し支えありません。
【質問6―2】 特別教育の講師要件はあるのか。 |
(答)
特別の資格要件はありませんが、特別教育の科目について十分な知識、経験を有する者でなければなりません。(昭和48年3月19日付け基発第145号)
7 特別教育の記録
【質問7―1】 特別教育の修了証や書類の保存義務はあるのか。 |
(答)
事業者は、特別教育を行ったときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成し、これらを3年間保存しなければなりません。
【質問7―2】 修了証の様式はあるのか。 |
(答)
ありません。
修了証は特別教育の実施者が自主的に発行しているものです。
8 その他
【質問8―1】 高さを算定する場合の基準点は地上となるか。屋根や足場は基準点となるか。 |
(答)
原則として地上(GL)を基準としますが、十分な広さを持つコンクリート床面の上方で高所作業を行う場合など、さらにそこから墜落することが想定できない場合などについては、その高さを基準点とすることができます。
また、マンホールに入る作業など、地下での作業においては、作業場所から墜落し得る地点までの高さが作業時の高さとなります。
具体的な判断は、所轄の労働基準監督署にご相談ください。
【質問8―2】 「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日付け基発0622第2号別添)の第6の1では、墜落制止用器具の定期点検を行うこととされている。 ① 具体的にはどのような点検方法で点検をする必要があるのか。 ② ウェブカメラ等のデジタル機器を用いて、点検者が現場から離れた場所で定期点検を行うことは可能か。 ③ 点検結果や管理上必要な事項を記録した管理台帳等は紙面で保管する必要があるか。 |
(答)
① ベルト、金具類、ランヤードの摩耗、劣化などについては、各製品の取扱説明書に記載の廃棄基準を基に目視等により行ってください。ただし、フックの作動、バックルの着脱及び巻取り器の機能については、点検実施者の手によって実際の着用を想定した動作確認を実施してください。
② 金具類のさび、変形の有無等目視のみで確認できる点検事項については、明らかにさびや変形等が生じてないことがウェブカメラ等のデジタル機器で判断できる場合には、当該機器を用いて定期点検を行うこととして差し支えありません。
ただし、フックの作動、バックルの着脱及び巻取り器の機能等、実際の着用を想定した動作確認が必要となる事項については、現場での点検が必要です。
③ 管理台帳等は、紙面に限らず、電子媒体として管理・保存することとして差し支えありません。
【質問8―3】 「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日付け基発0622第2号別添)の第6の1では、墜落制止用器具の定期点検を行うこととされており、定期点検の間隔は半年を超えないことが記載されているが、どのような使用状態であっても、定期点検の間隔は半年であればよいのか。 |
(答)
ガイドラインでは、代表的な使用状態の場合について定期点検の間隔は半年を超えないことを記載していますが、職種、使用頻度等よって望ましい定期点検の間隔は異なります。事業者の責任で、実情に応じて点検頻度を設定してください。
なお、定期点検の時期に墜落制止用器具を使用していない場合は、次回当該器具を使用する際に定期点検を行うことで差し支えありません。