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○医療用医薬品の供給不足に伴う日本薬局方改正の迅速審議について
(令和6年8月1日)
(医薬薬審発0801第1号)
(各関係団体の長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)
(公印省略)
日本薬局方(以下「日局」という。)は、我が国の医薬品の性状及び品質の適正を図るため、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条第1項の規定に基づき、厚生労働大臣が定めた公的な規格基準書です。一方で、その規格及び試験方法が海外薬局方と異なることにより、海外で製造された原薬が日局の規格に適合せず、医薬品の安定供給に支障を来す事例が報告されています。
今般、上記の状況を踏まえ、安定供給に支障が生じている又はそのおそれがある医療用医薬品については、下記のとおり、他の品目に優先して日局改正のための審議を行うこととし、必要な改正要望提出の手続き等を定めましたので、貴管下関係業者等に周知いただきますよう御配慮願います。
記
第1 目的
日局に適合する原薬の調達が困難であることが原因で、安定供給に支障が生じている又はそのおそれがある医療用医薬品であって、同一成分の欧米薬局方の規格及び試験方法を迅速に日局に採用することで、製造所・製造方法等を変更することなく、医薬品の有効性・安全性に影響を与えることのない範囲の品質(以下「品質等」という。)を確保しながら、安定供給を維持すること。
第2 考え方
海外の製造所で製造された原薬を輸入して、医療用医薬品を製造する場合、海外の製造所では海外薬局方の規格及び試験方法に基づいて原薬の品質が管理されていることが多く、それらが日局の規格及び試験方法と異なる場合には、ロット毎に日局で定められた試験を実施し、日局に適合する原薬のみを我が国に輸入するということが行われる結果、安定供給に懸念が生じている場合がある。そこで、安定供給に懸念があり、かつ、製造所・製造方法等を変更する必要がなく、品質等を確保することが可能な場合には、規格及び試験方法の国際整合を図るための日局改正の審議を迅速に行うことで、安定供給の確保を行うこととする(以下「迅速審議」という。)。
参照する海外薬局方は、PDG(Pharmacopoeial Discussion Group:薬局方調和国際会議)を通じて、30年以上に亘り日局との国際調和活動が行われ、また、多くの国において参照薬局方として共通の品質規格に採用されるなど、日局と並ぶ品質規格書である欧米薬局方(EP又はUSP)とする。
迅速審議を行うこととした場合、他の品目に優先して日局改正の検討を行い、5年ごとの大改正又は追補改正に盛り込むこととするが、安定供給の観点から特に必要な場合には、臨時の一部改正も行うこととする。
第3 満たすべき条件
1.我が国において、安定供給に支障が生じている又はそのおそれがある医療用医薬品であり、日局原薬の調達困難がその原因であること(令和6年3月28日付け医政産情企発0328第1号・感予発0328第1号・医薬血発0328第1号「医療用医薬品の供給不足に係る報告について(依頼)」に基づく供給不安報告又は供給状況報告を厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課に提出し、同一成分の他製品も同様の懸念があること)。
2.承認書の変更が不要なものであること。当面の間、迅速審議が可能な対象に絞って当該運用を実施するため、欧米薬局方(EP又はUSP)と整合させるために、日局の一部の規格及び試験方法のみの改正を行うものを対象とするとともに、承認書の製造所、製造方法及び規格及び試験方法(「日局のとおり」)に変更の必要がないものを対象とする。
3.日局と該当する欧米薬局方(EP又はUSP)の規格及び試験方法の相違の程度が、品質等に影響をもたらさないものと考えられること。
<品質等に影響をもたらさないものと考えられる事例>
・含量規格が同等であること(仕込み量等の変更が想定されない。)
・不純物管理が同等であること(確認試験・純度試験の基準は同等以上。例えば、赤外吸収スペクトルの相違において、欧米薬局方(EP又はUSP)では相違のある吸収帯の原因物質が特定された上で、当該吸収帯が適用除外とされている等。)
第4 手続きの流れ
1.厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課に、第3の1に示す供給不安報告又は供給状況報告を提出する。
2.厚生労働省医薬局医薬品審査管理課に日局改正要望を提出する。
(1) 通常の日局の改正要望に代わり、迅速審議を求める改正要望として、以下の資料を添付すること。
ア 改正要望書(供給不足の懸念があり、供給不安報告又は供給状況報告を提出済みである旨の説明を含む)
イ 原案総括表(様式1)
ウ 日局改正案(様式3) 改正要望項目だけでなく当該品目の医薬品各条全文
エ 改正の根拠となる資料
(ア) 日局と欧米薬局方(EP又はUSP)の相違点についての説明(様式5)
(イ) 日局の規格及び試験方法に基づいてこれまでに実施された試験結果(日局の規格への適否確認を行った際に、適合しないロットの割合が分かる資料を含む)
(ウ) 欧米薬局方(EP又はUSP)の規格及び試験方法に基づいて実施された試験結果(バリデーションデータを含む)
(エ) 日局と該当する欧米薬局方(EP又はUSP)の規格及び試験方法の相違の程度が、医薬品の品質等に影響をもたらさないものと考えられる根拠の説明資料(例:欧米薬局方(EP又はUSP)適合原薬が、これまで海外にて品質、安全性等に問題なく広く利用されていることが分かる説明資料)
(オ) 現在の原薬の在庫状況及び消尽見込みが分かる資料
※必要な資料及び様式は以下のwebページを参照すること。
https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/standards-development/jp/0007.html
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/youshikiDownload/gyoumuSelDispList/14
(2) 厚生労働省医薬局医薬品審査管理課局方係宛に電子メールにより提出すること。なお、タイトルは「迅速審議改正要望(原薬名)」とすること。
提出先メールアドレス:jp-jinsoku@mhlw.go.jp
第5 留意点
1.本通知は承認書の変更が不要なものを対象とするが、日局の改正に伴い試験方法等に変更があることから、当該原薬に係る試験を実施する製造所においては試験検査に係る手順書等を適切に変更すること。
2.その他
改正を検討する中で、追加資料の提出を求める場合がある。
提出された要望は、順次、検討を開始するが、検討や告示改正には時間を要するため、必ずしも要望者が希望する時期に改正が行われるとは限らない。
改正要望の内容によっては、同一成分の他品目を製造販売する他社への影響を考慮する必要がある場合がある(試験方法を変更する場合等)ため、改正要望の提出に当たっては、可能な限り、当該他社との調整を行うこと。