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○医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の質疑応答集(Q&A)について

(令和6年7月1日)

(事務連絡)

(各都道府県衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課通知)

医薬品の治験を実施する際の一般的な留意事項については、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28号。以下「医薬品GCP省令」という。)に規定するとともに、「「「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて」の改正について」(令和5年12月26日付け医薬薬審発1226第4号厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)及び「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の質疑応答集(Q&A)について」(令和5年9月28日厚生労働省医薬局医薬品審査管理課事務連絡。以下「令和5年事務連絡」という。)により示してきたところです。また、自ら治験を実施する者による医薬品の治験については、自ら治験を実施する者による治験の推進と運用の効率化を目的として「自ら治験を実施する者による医薬品の臨床試験の実施に関するQ&Aについて」(平成17年10月25日厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡。以下「平成17年事務連絡」という。)及び「自ら治験を実施する者による医薬品の治験の実施に関する質疑応答集(Q&A)について」(令和2年12月9日厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課事務連絡。以下「令和2年事務連絡」という。)により示してきたところです。

今般、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)における臨床試験の実施に関する相談等を踏まえ、医薬品GCP省令の効率的な実施に関する事例について令和5年事務連絡別添のQ&Aに追加等を行うとともに、医薬品の治験の実施に関する質疑応答集(Q&A)の利便を向上するため、平成17年事務連絡及び令和2年事務連絡を令和5年事務連絡に含めることとしましたので、貴管内関係業者に対して周知いただきますよう御配慮願います。

なお、Q&Aの内容は、PMDAにおける相談事例の蓄積状況、技術的な進歩及び海外の規制状況等の変化等を踏まえて、適宜見直すこととしておりますのでご留意ください。

また、本事務連絡の発出に伴い、平成17年事務連絡、令和2年事務連絡及び令和5年事務連絡は廃止します。

本事務連絡の写しについて、別記の関係団体、PMDAおよび各地方厚生局宛てに発出しますので、念のため申し添えます。

別記

日本製薬団体連合会

日本製薬工業協会

米国研究製薬工業協会在日技術委員会

一般社団法人欧州製薬団体連合会

公益社団法人日本医師会

公益社団法人日本歯科医師会

一般社団法人日本病院薬剤師会

公益社団法人日本看護協会

一般社団法人日本CRO協会

日本SMO協会

公益社団法人全国自治体病院協議会

一般社団法人日本病院会

公益社団法人全日本病院協会

一般社団法人日本医療法人協会

公益社団法人日本精神科病院協会

総務省自治行政局公務員部福利課

文部科学省高等教育局医学教育課

防衛省人事教育局衛生官付

日本郵政株式会社事業部門病院管理部

健康保険組合連合会 国家公務員共済組合連合会

一般財団法人船員保険会

公益社団法人全国国民健康保険診療施設協議会

全国厚生農業協同組合連合会

日本赤十字社

独立行政法人労働者健康安全機構

独立行政法人国立病院機構

独立行政法人地域医療機能推進機構

独立行政法人医薬品医療機器総合機構

各地方厚生局

(別添)

令和6年7月1日改訂

(下線部分が主な改訂箇所)

医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の質疑応答集(Q&A)

目次

(1) 治験薬、治験使用薬に関する事項

(2) IRBに関する事項

(3) 記録の保存に関する事項

(4) 被験者の同意に関する事項

(5) その他

(6) 自ら治験を実施する者

※ 本質疑応答集においては、次のとおり略語を用いるものとする。

「薬機法」

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)

「医薬品GCP省令」

医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)

「医薬品GCPガイダンス」

「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて(平成24年12月28日付け薬食審査発1228第7号厚生労働省医薬食品局審査管課長通知)

「治験薬GMP」

治験薬の製造管理及び品質管理基準及び治験薬の製造施設の構造設備基準(平成9年3月31日付薬発第480号)

「機構」

独立行政法人医薬品医療機器総合機構

「ICH E3ガイドライン」

治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドラインについて(平成8年5月1日付薬審第335号厚生省薬務局審査課長通知)

「治験薬GMP通知」

治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について(平成20年7月9日付け薬食発第0709002号厚生労働省医薬食品局長通知)

「治験責任医師等」

治験責任医師又は治験分担医師

「IRB」

治験審査委員会

(1) 治験薬、治験使用薬に関する事項

Q1

医薬品GCP省令第16条第2項のただし書きにおいて「被験者、治験責任医師等若しくは治験協力者が被験薬及び対照薬を識別できない状態にしていない治験薬を用いる治験を実施する場合にあっては、この限りでない。」とあるが、非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合は、医薬品GCP省令第16条第2項のただし書きの適用を受け、使用する治験薬に医薬品GCP省令第16条第2項各号に掲げる事項が記載されていてもよいか。

A1

貴見のとおり。なお、非盲検試験以外にも、評価者盲検で実施する二重盲検試験、単盲検試験又は二重盲検期間から継続して実施する非盲検期間のある試験で、被験者又は実施医療機関担当者(治験薬管理者を含む。)においてどの薬剤であるか識別できる状態にある治験薬を用いる場合には、当該治験薬について医薬品GCP省令第16条第2項のただし書きの考え方を準用することも差し支えない。評価者盲検で実施する二重盲検試験等の盲検性を維持する必要がある試験については、盲検性を適切に確保する必要があることに留意すること。

Q2

医薬品GCP省令第16条第1項では治験薬の容器又は被包に記載すべき事項が定められているが、非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合、再包装せずに市販されている医薬品の表示の上に、医薬品GCP第16条第1項各号に掲げる事項を記載したラベルを貼付し、実施医療機関に交付することでよいか。

A2

貴見のとおり。治験依頼者は非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合、再包装せずに市販されている医薬品の表示の上に、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項を記載したラベルを貼付し、実施医療機関に治験薬を交付することでよい。

Q3

非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合であっても、その容器又は被包には、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項を記載することが必要である。しかし、治験薬の品質確保等の観点から上記事項を記載することが困難な場合であり、かつ市販薬との取り違えを防止するような対策等を講じることができる場合には、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項の記載について、容器又は被包に記載せず、治験薬を梱包する外箱にのみ記載の上で交付することでよいか。

A3

貴見のとおり。治験薬の品質確保等の観点から医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項を記載することが困難な場合であり、かつ市販薬との取り違えを防止するような対策等を講じることができる場合であれば、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項の記載については、容器又は被包に記載せず、治験薬を梱包する外箱にのみ記載の上で交付することでよい。

容器又は被包への記載が困難な場合の事例としては、次の場合が考えられる。

・ 使用直前まで治験薬を梱包する外箱を開封できない製剤(無菌製剤又は吸湿性を有する製剤等)である場合

・ ラベルの貼り替え等により製剤としての付加機能を阻害する恐れがある製剤(針刺し防止機能のある注射製剤等)である場合

・ ラベルの貼り替え等を実施することで作業者のリスクを上げる危険性がある製剤(放射性医薬品等)である場合

・ 包装形態がラベルの貼り替えが困難な形状の製剤である場合

・ 極低温下又は冷凍下での保管が必要である場合

・ 開封により品質確保に影響する場合

・ 治験薬の継続的な供給や治験の継続に影響を及ぼす場合

Q4

治験実施計画書に規定する治験薬(被験薬及び対照薬)ではない治験使用薬(併用薬、レスキュー薬、前投与薬等)については、実施医療機関が在庫として保管する医薬品を使用してもよいか。

A4

貴見のとおり。治験実施計画書に規定された治験薬(被験薬及び対照薬)ではない治験使用薬(併用薬、レスキュー薬、前投与薬等)については、実施医療機関が在庫として保管する医薬品を使用してもよい。この場合、治験依頼者が品質上及び管理上問題ないと判断しており、かつ実施医療機関の合意のもと治験使用薬の適切な管理が保証されている必要があることに留意すること。

ただし、被験薬及び対照薬については、医薬品GCP省令第17条第1項の規定により、既に市販されている医薬品であっても、治験依頼者が治験薬として交付する必要がある。

Q5

治験実施計画書に規定する治験薬(被験薬及び対照薬)ではない治験使用薬(併用薬、レスキュー薬、前投与薬等)については、実施医療機関が院外処方を希望し、治験依頼者が院外処方を行うことが品質上及び管理上の懸念がないと判断して院外処方をすることについて了承している場合には、実施医療機関が処方箋を発行し調剤薬局の在庫から交付してもよいか。

A5

貴見のとおり。この場合において、実施医療機関は調剤薬局との間で医薬品GCP省令第39条の2による契約を締結する必要はないが、院外処方する場合の手順を定めるとともに、治験薬以外の治験使用薬が調剤薬局から被験者に対して確実に交付されていることを確認すること。また、治験依頼者や実施医療機関は、調剤薬局における治験薬以外の治験使用薬の管理状況を確認する必要はない。なお、当該薬剤費用は、実施医療機関が院外処方する場合であっても、治験依頼者が負担することが原則にはなるが、当該薬剤費用を被験者が支払うことについて、説明文書に記載した上で、被験者に対して文書により適切に説明し、文書により同意が得られていれば、この限りではない。

Q6

治験実施中に、治験依頼者(又は治験国内管理人)の名称又はその住所が変更になった場合、既に製造済みの治験薬の容器又は被包に記載される医薬品GCP省令第16条第1項第2号に掲げる事項(治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所)を変更しなくてもよいか。

A6

治験実施中に、治験依頼者又は治験国内管理人の名称又はその住所が変更になった場合には、変更後遅滞なく、治験薬の容器又は被包に記載される医薬品GCP省令第16条第1項第2号に掲げる事項(治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所)を記載する必要がある。

なお、再包装せずに治験薬の容器又は被包に、変更後の治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所を記載したラベルを貼付することでも差し支えがないが、治験薬の品質確保等の観点から、上記事項を記載することが困難である場合(A3の事例参照。)には、変更前の治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所を記載した治験薬を使用することもできる。この場合においては、変更に関する内容を治験依頼者又は治験国内管理人から実施医療機関に対して連絡するとともに、実施医療機関との合意を得ること。当該経緯及び理由については文書等に記録した上で、実施医療機関における適正使用、適切な管理が行えるよう、治験依頼者又は治験国内管理人の責任の下、必要な措置を講ずること。

Q7

実施医療機関と運搬業者との間で医薬品GCP省令第39条の2に基づく契約が締結されていれば、治験使用薬を実施医療機関から被験者に配送することができるとされているが、当該契約については、運搬業者が医薬品GCP省令第39条の2に掲げる事項を含む約款を作成し、実施医療機関がその約款の内容を確認し依頼する形で実施してもよいか。

A7

貴見のとおり。医薬品GCP省令第39条の2の各号に掲げる事項が約款に含まれていることを確認することをもって、同省令第39条の2の契約に相当するものとみなすことができる。実施医療機関は、医薬品GCP省令第39条の2に掲げる事項を含む約款の写しを保存しておくこと。

Q8

治験使用薬を実施医療機関から被験者に配送する際、被験者本人が運搬業者から直接受け取ることができる場所であれば、送付先として指定してもよいか。

A8

貴見のとおり。治験使用薬を実施医療機関から被験者に配送する際、被験者本人が対面で運搬業者から直接受け取ることができる場所(例えば、被験者の勤務先、かかりつけ医療機関、近隣の調剤薬局、その他本人が指定した場所)であれば、送付先として指定することができる。ただし、受取時に対面で本人確認が必要であるため、例えば送付先として駅前等に設置されたボックスや自宅の宅配ボックス等を指定することはできない。なお、被験者本人が治験使用薬を受け取る場所に係る事項であることから、受け取り場所(かかりつけ医療機関等)との間に医薬品GCP省令第39条の2に基づく契約は締結する必要はない。

Q9

実施医療機関は、被験者がやむを得ない事情により実施医療機関に来院できない等により治験使用薬を直接受け取れない場合、当該被験者から合意が得られていれば、代わりに来院した被験者の家族(被験者の親権を行う者、後見人その他これらに準じる者を含む。)に対し、治験使用薬を交付してもよいか。

A9

実施医療機関は、治験責任医師等の責任の下、被験者から合意が得られている場合に限り、当該試験の内容(治験使用薬の性質、投与経路及び投与期間等)や被験者の状態等を考慮の上、被験者の代わりに来院した家族に治験使用薬を交付することができる。その際、治験責任医師等は、被験者が家族から治験使用薬等を適切な時期に確実に受け取ることが可能であることを家族の署名やその他の可能な手段で確認すること。また、治験責任医師等は、治験使用薬の交付等の経緯や対応の記録を作成し保存すること。

Q10

実施医療機関は、治験依頼者から交付された治験使用薬の管理に関する手順書において報告不要と規定された範囲の温度逸脱であれば、逸脱記録のみ作成し保管することで、治験依頼者に報告しなくてもよいか。

A10

貴見のとおり。取扱いが明確に記載されていない場合、治験使用薬の使用可否を含め、速やかに治験依頼者に報告し、対応を協議し、その逸脱記録を作成すること。

Q11

実施医療機関は、治験依頼者から交付された治験使用薬を別の実施医療機関に送付してもよいか。

A11

実施医療機関が他の実施医療機関に治験使用薬を送付することは認められない。供給量が限定的であって不足した場合に追加生産及び追加供給が難しい治験使用薬である場合等、やむを得ない場合には、治験依頼者の責任の下、既に交付した治験使用薬を治験依頼者が適切な方法で回収し、その品質を担保した上で、別の実施医療機関へ交付することは可能である。この場合においては、治験依頼者の責任の下、治験使用薬の品質に影響を与えずに移動させる手順、移動させた治験使用薬の品質に影響がなかったことを確認する手順等をあらかじめ定め、当該手順に従って交付すること。また、回収及び交付の記録を作成するとともに、治験依頼者は、治験使用薬の施設間の移動が必要となった経緯及び理由に関する記録を作成すること。

(2) IRBに関する事項

Q12

IRBは対面形式で行われた場合と同等の質で審議が可能であり、かつ、会議の開催要件、方法、運営等の必要な手順を手順書に定めていれば、オンライン形式又はオンライン形式と対面形式を組み合わせた方法により開催してもよいか。

A12

貴見のとおり。なお、通常は対面形式で開催する場合であっても、パンデミック等の影響により対面形式による審議が困難となる事態を想定し、あらかじめオンライン形式又はオンライン形式と対面形式を組み合わせた方法でも開催できるよう手順を定めておくことが望ましい。

Q13

医薬品GCP省令第27条第1項において、外部IRBに審議を依頼することが認められているが、全ての実施医療機関が同一のIRBに審議を依頼することは可能か。

A13

可能である。

(3) 記録の保存に関する事項

Q14

治験協力者等が一時的に作成した記録(治験協力者や看護師のメモ、評価用チェックリスト、投与記録、自動計器の伝票等)について、ワークシートへ必要な情報を転記した後であれば、廃棄してもよいか。

A14

治験協力者等が一時的に作成した記録(治験協力者や看護師のメモ、評価用チェックリスト、投与記録、自動計器の伝票等)は原資料である。正確な複写であることが検証によって保証された複写物又は転写物として取扱う場合(A15参照)を除き、廃棄することは認められない。

実施医療機関は、全ての原資料を保管することが求められているため、他の原資料に転記し、正確に転記できていることを確認した場合であっても廃棄せず、定められた期間保管すること。また、モニタリング、監査及び規制当局による調査の際に提示すること。

Q15

医薬品GCP省令において規定されている原資料には「正確な複写であることが検証によって保証された複写物又は転写物」が含まれるが、複写物を元の文書の代わりとして置き換えて、元の文書を廃棄してよいか。

A15

貴見のとおり。元の文書は感熱紙等の長期の保存に適さない記録に限らない。また、複写物は電磁的記録であっても差し支えない。ただし、元の文書を廃棄する場合には、当該複写物は「保証付き複写」の要件を満たすこと。「保証付き複写」とは、使用媒体によらず、元の記録からの複写物で、元の記録の背景、内容及び構成を説明するデータを含め、同一の情報を有することが保証された(すなわち、日付入り署名が記入された又はバリデートされた過程により作成された)ものをいう。また、当該複写物の真正性、保存性、見読性についても考慮すること。

Q16

カラーの紙媒体の原資料について、その保証付き複写を作成して電磁的記録として保存する場合、白黒で保存してもよいか。

A16

原則として、カラーの紙媒体の原資料については白黒ではなく、カラーで保存すること。やむを得ず白黒で電磁的記録として保存する場合は、内容の変更(情報の欠落)がなく、保証付き複写の要件を満たすことをあらかじめ確認すること。

Q17

治験関連文書は、電磁的記録としてクラウド等システムに保存することが可能であり、その留意事項は「治験関連文書における電磁的記録の活用に関する基本的考え方」(平成25年7月1日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡)に示されている。これについて、電磁的記録を保存するクラウド等システムから、何らかの理由により電磁的記録を退避させ、当該資料がクラウド等システムに保存される資料と相違ないことを保証する手続きをとっていれば、その退避させた電磁的記録を保存することでよいか。

A17

治験関連文書の電磁的記録を保存するクラウド等システムには、個々の文書にデジタル署名を行い保存するシステム並びに各種文書及び監査証跡を紐づけ保存するシステムが存在する。後者のシステムからの退避方法としては、同様の機能をもった新しいクラウド等システムに対して、見読性を保持しながら監査証跡と各種文書を移行させる方法と、DVD等のメディアに対して監査証跡と各種文書を紐づけつつ出力しシステムを介さなくても見読性を確保できるように留意しながら移行させる方法がある。いずれの方法であっても、退避に関する手順書を作成の上、その手順に従って退避するとともに、退避後にシステムから全ての電磁的記録が漏れなく出力されており、事実経過を検証するために必要な情報(監査証跡等)とともに移行し、真正性、見読性、保存性が確保できるのであれば、退避された電磁的記録を保存することでよい。

ただし、前者の方法で退避する場合には、旧システムと新システムの管理者・ベンダーが連携し、十分にバリデーションを行うことが重要であり、電磁的記録の正確な移行が保証されていることを確認すること。また、後者の方法で退避する場合には、それぞれの情報を紐づけながら、事実経過が検証できるように退避されていることを確認すること。

なお、クラウド等システムからのデータの退避については、クラウド等システムの利用者の都合だけでなく、当該システムを運営・管理するベンダーが事業を廃止するなど事業者の都合で必要となる場合もある。そのため、クラウド等システムを選定するにあたっては、本Q&Aを参考にデータが当該システムから適切に退避できるようになっているかをあらかじめ確認しておくこと。

Q18

治験依頼者が準備した電子データ処理システムを用いる治験において、何らかの理由により電子データ処理システム(旧システム)を使用することが困難になり、別の電子データ処理システム(新システム)を使用する場合、旧システムの全てのデータ(利用者の管理権限に関するデータ、収集対象データ、監査証跡等を含む)が新システムに対して漏れなく移行でき、真正性、見読性、保存性が確保できるのであれば、旧システムを廃棄してもよいか。

A18

移行又は退避後の旧システムのデータの真正性、見読性及び保存性が確保できれば、旧システムを廃棄することはできるが、確保できなければ、旧システムのデータの信頼性を確保できなくなる可能性を踏まえて慎重に判断する必要がある。

なお、新システムに移行又は別の電子媒体への退避については、次のいずれかの方法により、旧システムの全てのデータ(利用者の管理権限に関するデータ、収集対象データ、監査証跡等を含む)を漏れなく実施すること。

① 旧システムから新システムに全てのデータを移行させる方法

② 旧システムの最終データのみを新システムに移行し、旧システムの他のデータを別の電子媒体に退避する方法。この場合においては、新システム内の最終データと別の電子媒体に退避させたデータ(監査証跡等)を紐づけるようにすること。

③ 旧システムの全てのデータを別の電子媒体に保存する方法。この場合においては、電子媒体に退避させたデータ内で、最終データと監査証跡を紐づけるようにすること。

いずれの方法においても、旧システム及び新システムが有するデータの内容に関する記録、データ移行手順に関する記録、適切に移行されたことを説明できる記録等を作成すること。

(4) 被験者の同意に関する事項

Q19

「治験及び製造販売後臨床試験における電磁的方法を用いた説明及び同意に関する留意点について」(令和5年3月30日付け薬生薬審発0330第6号・薬生機審発0330第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長・医療機器審査管理課長連名通知)に従い、ビデオ通話等を用いた説明及び同意の手続きを行う場合、説明を行った治験責任医師等及び被験者となるべき者が同意文書に記載すべき日付は、情報通信システムが発行するタイムスタンプに替えることでよいか。

A19

説明を行った治験責任医師等及び被験者となるべき者による日付の記載に替えて、情報通信システムが発行するタイムスタンプを用いることは差し支えない。治験責任医師等は、情報通信システムから出力されるタイムスタンプの日付が、説明を行った治験責任医師等及び被験者となるべき者等が同意文書に記載すべき日付になっていることを保証すること。

Q20

説明文書を改訂した際に、治験使用薬の投与が終了した観察期間中の被験者、最終観察日の来院のみを控えた被験者、既に治験が完了している被験者等がいる場合、どの被験者から再同意を取得する必要があるか。

A20

治験責任医師は、治験に継続して参加するかどうかについて被験者の意思に影響を与えるものと認める情報により説明文書を改訂した場合には、治験継続中の全ての被験者(治験使用薬の投与が終了して観察期間中の被験者、最終観察日の来院のみを控えた被験者等を含む。)から再同意を取得する必要がある。また、治験に継続して参加するかどうかについて被験者の意思に影響を与えるものと認める情報により説明文書を改訂すると判断した場合には、IRBにおける説明文書の改訂に関する承認がなされる前であっても、これらの被験者が来院等した際には当該情報を提供したうえで、治験に継続して参加するかどうかを確認し、文書により記録すること。

なお、治験責任医師が当該改訂内容を踏まえ継続の意思に影響を与えることはないと判断できる被験者に対しては当該改訂に関する情報の提供、治験継続意思の確認及び再同意の取得をする必要がないが、その判断した理由等について記録を残すこと。また、当該判断について、被験者毎に再同意の要否の判断が異なる場合は、説明文書の改訂時にIRBから意見を聴くことが望ましい。

一方、治験実施計画書に規定される来院(観察期間を含む。)が完了している被験者への再同意は必須ではないが、改訂内容が当該被験者にも影響があると治験責任医師が判断した場合には、当該被験者にも改訂内容を説明するよう努めること。

(5) その他

Q21

パンデミック等の影響により、実施中の治験において治験使用薬を被験者宅に速やかに配送する必要があるが、事前に実施医療機関と運搬業者との間で医薬品GCP省令第39条の2に基づく委受託契約を締結することが難しい場合には、治験依頼者が選定・契約する運搬業者を利用し、実施医療機関から被験者宅に配送してもよいか。

A21

パンデミック等の緊急事態に限定した対応として、実施医療機関と治験依頼者で協議し、至急の対応を要する場合は可能である。ただし、治験使用薬の品質管理や被験者の個人情報等の取扱いを含めた業務内容を適切に取り決め、被験者宅への治験使用薬の配送業務に係る責任の所在は実施医療機関にあることを両者で合意している旨の記録を残した上で実施すること。その場合においても、事後的に実施医療機関と運搬業者との間で医薬品GCP省令第39条の2に基づく委受託契約を締結するとともに、経緯及び対応の記録を作成し保存すること。

Q22

パンデミック等の影響により、実施医療機関へのモニタリング担当者の訪問が制限され、モニタリング計画のとおりにオンサイトモニタリングを実施できない場合、モニタリング計画を変更することは可能か。

A22

モニタリング計画に基づくオンサイトモニタリングが困難な場合は、リスク評価を行った上で、中央モニタリングを含め、代替となるモニタリング手法を検討し、その結果を踏まえてモニタリング計画等を見直し、変更した方法について文書化することは可能である。ただし、オンサイトモニタリングができない理由及びその対応の記録を作成し保存すること。なお、パンデミック等の影響によりオンサイトモニタリングの実施が困難となる事態を想定し、あらかじめ代替となるモニタリング手法を規定しておくことが望ましい。

Q23

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月(令和5年3月一部改訂)厚生労働省)において、「治験や臨床試験等を経ていない安全性の確立されていない医療を提供するべきでない」とあるが、治験をオンラインでの診療で行ってはならないのか。

A23

治験は当該指針の対象として想定されておらず、治験実施計画書にあらかじめ規定している場合は、オンラインによる診療や服薬指導を実施して差し支えない。ただし、治験実施計画書を作成する際、一般にオンラインでは対面に比べて得られる患者の心身の状態に関する情報が限定されること等に留意し、慎重に判断すること。治験実施計画書においてオンラインの実施が許容されている場合であっても、被験者の状態等を考慮の上、被験者保護の観点から、治験責任医師等がオンラインの実施の可否を判断すること。

Q24

治験依頼者が準備した電子データ処理システムを用いる治験において、治験責任医師等が治験依頼者から交付された本人認証のための管理権限(ID及びパスワード)を失念する可能性を踏まえ、自らに提供された管理権限を他の担当者に提供し、管理させることが可能か。

A24

本人認証のための管理権限については、他の担当者に利用又は管理させることはできない。なお、他の担当者が当該管理権限を利用又は管理していた場合には、当該システムを用いた治験データの信頼性を担保することが困難になるので留意すること。

Q25

治験依頼者が準備した電子データ処理システムを用いる場合、当該システムの利用許可者に対して、管理権限をメールにより交付することでもよいか。

A25

治験依頼者は、治験依頼者の責任の下で、電子データ処理システムの管理権限をメールにより交付することができる。また、そのメールアドレスを記録で残すこと。なお、利用許可者以外の者にメール送付した場合には、当該システムを用いた治験データの信頼性を担保することが困難になるため、管理権限をメールにより交付する場合には、利用許可者以外の者が確認できるグループメールの利用は避け、利用許可者の所属機関や公的機関が発行する利用許可者本人しか確認できないメールアドレスに交付すること。これら以外の機関が発行したメールアドレスに交付する場合であっても、利用権限を交付する前に、利用許可者本人のみが確認でき普段から使用しているメールアドレスであるかを本人に確認し、その確認した記録を残すこと。

Q26

治験依頼者がモニタリングを行う際に、実施医療機関がクラウド等システムにアップロードした原資料の電磁的記録を参照してSDVを実施することは可能か。

A26

可能である。ただし、必要な原資料の全てがアップロードされない可能性、原資料の電磁的記録を作成してからSDVが実施されるまでに原資料の追加又は修正が行われる可能性等を踏まえ、適切なモニタリングの方法を検討すること。

なお、治験依頼者は、モニタリングの実施に当たって、オンサイトモニタリング又は中央モニタリング等を含めた柔軟な方法が許容されている。また、モニタリングの方法に関しては、治験依頼者と実施医療機関とで協議し、決定することが必要である。実施医療機関が中央モニタリング及び治験依頼者のクラウドシステムを利用したリモートSDV等を受け入れる際の原資料の提示方法については、セキュリティの確保及び個人情報の保護を含め、実施医療機関が検討する必要がある。

Q27

実施医療機関は、医薬品GCP省令第39条の2の規定により、治験の実施に係る業務の一部を委託することができるが、委託先との間の契約を電磁的方法により締結することは可能か。

A27

医薬品GCP省令第39条の2の規定に基づく実施医療機関と委託先との間の契約は、医薬品GCP省令第12条第2項から第5項までの規定を準用して電磁的記録として締結することが可能である。ただし、実施医療機関又は委託先から電磁的方法による契約を締結しない旨の申出があったときは、その限りではない。

(6) 自ら治験を実施する者による医薬品の治験に関する事項

Q28

治験薬の治験における品質の確保については、医薬品GCP省令第26条の2、第26条の3及び医薬品GCPガイダンスにおいて、治験薬GMP通知への準拠を求められているが、国内未承認で欧米既承認の医薬品を被験薬とする治験において、自ら治験を実施する者が自身の責任において、製薬企業から当該被験薬の品質及び安定性に係る証明書等を入手することならびに使用ロットの回収及び製造方法の変更等の情報を随時入手できる体制を整えることにより、当該被験薬の品質が確保できる場合には、治験薬GMP通知への準拠と同等とみなし、当該被験薬を当該製薬企業以外の者(海外の卸、薬局等)から調達することは可能か。

A28

可能であるが、医薬品GCP省令第26条の6、第48条及び医薬品GCPガイダンスをはじめ、治験に係る他の規定等から逸脱することのないようにすること。

なお、原則として、自ら治験を実施する者は、治験薬を製造する製薬企業の協力を得て、当該製薬企業から直接治験薬の提供を受けることが望ましい。

Q29

国内未承認で欧米既承認の医薬品を被験薬として治験を行う場合であって、欧米での治験において使用された当該被験薬の治験薬概要書を入手した場合、自ら治験を実施しようとする者は、当該治験薬概要書の要約を日本語で作成するとともに、欧米での治験において使用された当該被験薬の治験薬概要書の全文を、当該要約に英文のままで添付することによって自ら治験を実施しようとする者が作成する治験薬概要書としてよいか。

A29

医薬品GCP省令第15条の5第2項により最新の情報を概要書に加える必要があるので、海外の最新の非臨床及び臨床成績を日本語でまとめたものも当該要約に添付した上で、当該治験を行うことの適否についての審査ならびに当該治験の準備、実施及び管理が適切に行われる限りにおいては、差し支えない。欧米の治験に使用された概要書の作成時期等によっては、治験を適正に行うための重要な情報が不足していることに留意が必要である。

なお、当該治験の計画が薬機法第80条の2第3項後段の規定による調査の対象となるものについては、事務処理の円滑化の観点から、治験届の提出前に十分余裕をもって機構に相談されたい。

Q30

欧米で既承認である医薬品を被験薬とする治験において、自ら治験を実施する者が自身の責任において、当該医薬品の添付文書を、医薬品GCP省令第26条の2及び医薬品GCPガイダンスにより求められている治験薬の保存条件、使用期限、溶解液及び溶解方法並びに注入器具等の取り扱い方法を説明する文書として適切であると判断する場合は、当該添付文書を説明文書として使用してよいか。

A30

当該添付文書が日本語に翻訳され、かつ治験の実施に支障をきたすことがない限りにおいては、差し支えない。

Q31

医薬品GCP省令第15条の7、第26条の7、第26条の9及び医薬品GCPガイダンスにおいて、モニタリング又は監査を治験実施医療機関と同一医療機関に属する者が行う場合は、当該同一医療機関内に属する者をモニター又は監査担当者とすることは可能か。

A31

可能であるが、以下の点に留意すること。治験の準備、実施及び管理に従事しない者がモニタリング又は監査を行い、モニタリングと監査の兼務はしないこと。また、各治験実施医療機関の組織体制等を考慮し、モニター又は監査担当者が独立、中立かつ公平にモニタリング又は監査を実施できる要件を確保すること。上記の要件を確保できない場合は、当該同一医療機関以外の者をモニター又は監査担当者として指定すること。

Q32

医薬品GCP省令第26条の7第3項及び医薬品GCPガイダンスにおける、「『他の方法により十分にモニタリングを実施することができる場合』とは、例えば、多施設共同治験において治験の方法(評価項目等を含む。)が簡単であるが、参加実施医療機関の数及び地域的分布が大規模であるような治験において、治験責任医師等又は治験協力者等の会合及びそれらの人々に対する訓練や詳細な手順書の提供、統計学的にコントロールされた方法でのデータの抽出と検証、治験責任医師等との電話、ファックス等による連絡等の手段を併用することにより、治験の実施状況を調査し把握することが可能かつ適当である例外的な場合」の記載は、セントラルモニタリングを行う場合の要件として理解してよいか。

A32

よい。また、セントラルモニタリング等、通常の治験におけるモニタリングの方法と異なる方法でモニタリングを実施する場合には、事前に機構に個別に相談すること。

Q33

医薬品GCP省令第15条の7及び医薬品GCPガイダンスにおいて、自ら治験を実施しようとする者はモニタリングに関する手順書の内容にモニターを選定するための手続きを記載することが求められている。また、医薬品GCP省令第26条の7第1項においては、「自ら治験を実施する者は、モニタリングに関する手順書を作成し、IRBの意見を踏まえて、当該手順書に従って、モニタリングを実施させなければならない。」と記載されている。モニターの指名は治験届出前に行う必要があるという解釈でよいか。

A33

よい。なお、モニタリングに関する手順書には、モニターの要件を含むモニターを選定(指名)するための手続を記載する必要があり、モニターの指名は当該手順書に従って行うことから、モニターの指名記録を当該手順書とは別に、別途作成することは可能である(医薬品GCPガイダンス第15条の7解説の5「※これらの事項に係る記録をいう」参照)。

Q34

医薬品GCP省令第26条の11及び医薬品GCPガイダンスにおいて、総括報告書はICH E3ガイドラインに従って作成することが求められているが、治験依頼者が作成するものほど大部でなくてもよいか。また、総括報告書の作成作業を外部機関に委託することは可能か。

A34

ICH E3ガイドラインにおいて記載が求められている項目をすべて総括報告書に記載していれば問題ないと考える。なお、自ら治験を実施する者の監督下において、総括報告書の作成作業を外部機関に委託することは可能である。

Q35

自ら治験を実施する者が個々の治験の形態等に応じて複数の必須文書の合理化を行うことは可能か。

A35

可能である。平成16年10月18日付厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用における必須文書の構成について」において、合理化の例が示されているので参照すること。

Q36

医薬品GCPガイダンス第26条の2第7項について、「自ら治験を実施する者は、規制当局に治験計画の届出が受理されるまで、治験薬の提供を受けてはならない。」とある。自ら治験を実施する者の管理する倉庫への入庫は、計画の届出が受理後でなければならないか。

A36

実施医療機関への入庫は、治験計画の受理後でなければならない。ただし、治験薬を保管する場所が実施医療機関の外であれば、治験薬の提供には当たらない。

Q37

医薬品GCP省令第26条の2及び3の治験薬の管理及び品質の確保について、既に市販されている医薬品を治験薬として使用する際に、治験薬の被包(又はラベル)の変更(又は貼り替え)はどのように取り扱うべきか。

A37

既に市販されている医薬品を治験薬として使用する際には、当該医薬品の物性・特性に応じた適切な構造設備、手順等について、科学的観点からリスクベースで検討し、治験薬提供者と治験薬の品質確保に関して文書等で取決めた上で表示の変更を行わせること。

Q38

医薬品GCP省令第26条の8第2項及び第26条の9第3項について、多施設共同治験の場合、モニター又は監査担当者は、一つの実施医療機関を対象としたモニタリング報告書又は監査報告書を、他の実施医療機関の全ての自ら治験を実施する者及び全ての実施医療機関の長に提出する必要はあるか。

A38

一つの実施医療機関を対象としたモニタリング報告書及び監査報告書については、他の自ら治験を実施する者及び他の実施医療機関の長に提出する必要はない。

なお、当該モニタリング報告書及び当該監査報告書の内容並びにそれらに対するIRBの意見のうち、当該治験に係る重要な事項については、他の全ての自ら治験を実施する者及び他の全ての実施医療機関の長に情報を共有すること。

Q39

医薬品GCP省令第26条の8第2項及び第26条の9第3項について、モニター又は監査担当者は、モニタリング報告書又は監査報告書の原本を自ら治験を実施する者に提出し、実施医療機関の長にはその写しを提出することでよいか。

A39

自ら治験を実施する者、実施医療機関の長等の合意があらかじめ得られている場合であって、自ら治験を実施する者及び実施医療機関の長を連名で宛先として作成する場合であれば、一方を正本(原本)、もう一方を副本(正本の写し)とすることでも差し支えない。ただし、この場合においては、そうした取扱いについて手順書等であらかじめ定めておくこと。

Q40

医薬品GCP省令第31条第4項について、多施設共同治験において、治験調整医師を置く場合、治験調整医師の業務に関する監査報告書は、全ての実施医療機関においてIRBの審査を受ける必要はあるか。治験調整医師が所属する実施医療機関のIRBの審査のみを受ければ良いか。

A40

治験調整医師の業務に関する監査報告書については、治験調整医師が所属する実施医療機関のIRBのみで審査をすることで良い。また、治験調整医師が当該医師主導治験を実施している実施医療機関のいずれにも所属していない場合においては、いずれかの実施医療機関のIRBで審査をすることで良い。

ただし、自ら治験を実施する者は、治験の実施に当たり、治験調整医師への業務委嘱書、監査に関する計画書及び業務に関する手順書等の文書を適切に作成し、当該監査報告書の提出先及び審議を依頼するIRBの選定手順等の取扱いについて、あらかじめ明確にしておくこと。また、それらの文書については、全ての実施医療機関のIRBに提出され、当該監査報告書の取扱いを含めて審議されていることが必要である。

なお、当該監査報告書の内容及び当該監査報告書に対するIRBの意見のうち、当該治験に係る重要な事項については、他の全ての自ら治験を実施する者及び他の全ての実施医療機関の長に情報を共有すること。

Q41

医師主導治験では、実施医療機関の長が医薬品GCP省令第26条の8に規定されるモニタリング報告書または医薬品GCP省令第26条の9第3項に規定される監査報告書を入手した場合には、IRBに意見を聴くことを求められている。実施医療機関の長は、IRBへの治験の終了報告後に報告書を提出された場合、IRBに意見を聴くことを省略してもよいか。

A41

IRBに対する医師主導治験のモニタリング報告書または監査報告書に関する意見聴取は、モニタリング及び監査が適切に実施されたことを確認するために実施されているものであるため、治験の終了報告後であっても、省略することはできない。

Q42

医薬品GCP省令第26条の12について、多施設共同治験の場合、治験調整医師の調整業務で発生した文書を全ての自ら治験を実施する者が保存する必要があるか。治験調整医師に記録保存業務を委託することは可能か。

A42

各自ら治験を実施する者の責任の下、調整業務において発生した文書の所在が明確にされていれば、治験調整医師に記録保存業務を委託することが可能である。ただし、監査担当者又は規制当局の求めに応じて、速やかに治験調整医師の調整業務で発生した文書を提示できる管理体制を構築している必要がある。

Q43

医薬品GCPガイダンス第26条の8第2項解説の3について、モニタリング報告書に関して行った点検とフォローアップを文書化する業務には、誰を指名することが適切か。

A43

自ら治験を実施する者が、治験の実施体制を考慮して判断すべきである。例えば、モニタリングを実施したモニターとは別のモニタリング業務の責任者等が想定される。なお、当該業務を行う者については、あらかじめモニタリングに関する手順書等により定めておくこと。

Q44

既に市販されている医薬品を治験使用薬として使用する場合においても、自ら治験を実施する者は、これらの医薬品が被疑薬となった場合、治験副作用等報告をする必要があるか。

A44

必要がある。ただし、自ら治験を実施する者が行う治験以外で発生した治験副作用等報告、外国措置報告及び研究報告について、当該報告に係る情報を知った時点で、既に治験使用薬の製造販売業者等によって規制当局へ報告されている場合又は報告予定日の連絡を受けるなど法令で定められた期間内に規制当局へ報告される予定であることが確認できた場合は、重複する報告を省略して差し支えない。その場合、両者の間で適切に情報を共有するとともに、あらかじめ治験届の備考欄に「「自ら治験を実施した者による治験副作用等報告について」(令和2年8月31日付け薬生薬審発0831第13号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)1.(1)に該当するものについて、その報告を省略する。」と記載すること。