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○医薬品に含まれるニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンスについて

(令和6年6月18日)

(/医薬薬審発0618第1号/医薬安発0618第1号/医薬監麻発0618第1号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長、厚生労働省医薬局医薬安全対策課長、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長通知)

(公印省略)

今般、令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)による「ニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンスの策定のための研究」(研究代表研究者:本間正充国立医薬品食品衛生研究所長)において、医薬品へのニトロソアミン類の混入に対し、Carcinogenic Potency Categorization Approachに基づく発がん性リスク評価などの毒性学的観点から情報提供すべき項目の検討を行い、情報提供すべき項目の類型化と関係機関との連携方法等について整理したガイダンスが別添のとおり作成されたので、貴管下関係業者に対して周知願います。

また、製造販売業者に対し、本ガイダンスを踏まえた適切な対応について指導いただきますようお願いいたします。

[別添]

医薬品に含まれるニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンス

第1 基本的事項

1 目的

医薬品へのニトロソアミン類の混入について、製造販売業者から医療現場等へのコミュニケーションに係るガイダンスを示すことにより、医療現場等へ迅速かつ適切な情報提供を行うことができる体制を製造販売業者が確保し、もって保健衛生の向上を図ることを目的とする。

2 適用範囲等

(1) 本ガイダンスは、全ての医薬品の製造販売業者を対象とする。

(2) 本ガイダンスは、「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」(令和3年10月8日付け薬生薬審発1008第1号、薬生安発1008第1号、薬生監麻発1008第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、医薬安全対策課長及び監視指導・麻薬対策課長連名通知)において自主点検の対象とされる医薬品を対象とする。

(3) 本ガイダンスにおいては、「ニトロソアミン類」とは、ニトロソ基がアミンに結合した化学構造を有する一群の化合物を表すものとする。

3 本ガイダンス制定の背景

2018年、バルサルタン製剤から発がんリスクが懸念されるN―ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出され、その後も、国内外において医薬品からニトロソアミン類が検出され、一部の製品が自主回収されている。これまでにニトロソアミン類の混入に係るリスクコミュニケーションについては、発がんリスクを算出するための毒性データが存在しないことが課題であり、国内外において体系的な手法は確立していなかった。

厚生労働省においては、個別に薬事審議会において健康影響評価を行い、医療現場におけるリスクコミュニケーションに資する情報の整理を行ってきたが、2023年7月に欧州医薬品庁(EMA)が、ニトロソアミン類の化合物特性から発がんリスクの高さを区分し、迅速かつ簡便なリスク評価を可能とするCarcinogenic Potency Categorization Approach (CPCA)を公表し1)、本邦でもリスク評価手法としてCPCAが利用可能となった2)。このように、リスクコミュニケーションに関して体系立てて整理することが可能となったため、本ガイダンスを制定するに至った。

4 本ガイダンスの位置付け

本ガイダンスは、現時点での知見に基づき、限度値を超える医薬品へのニトロソアミン類の混入について、製造販売業者が医療現場等へ情報提供する際に考慮すべき事項等を示したものである。ただし、個々の医薬品の状況によっては更なる対応が必要となる場合があることに留意すること。なお、今後の新たな情報等に基づき、ガイダンスの改訂等が行われる場合がある。

第2 ニトロソアミン類の混入発生時の関係機関への報告・連携

限度値を超えるニトロソアミン類の混入が判明した際は、製造販売業者から厚生労働省へ報告を行い、厚生労働省との措置内容の協議・合意が得られた後に、速やかに医療機関等への情報提供を開始すること。関係機関との報告・連携については、以下の点に留意すること。

1 厚生労働省

報告は医薬局監視指導・麻薬対策課へ行うこと。報告に当たっては、「「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」に関する質疑応答集(Q&A)について」(令和4年12月22日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課、医薬安全対策課及び監視指導・麻薬対策課連名事務連絡)を参考にすること。なお、知事承認品目については、都道府県の薬務主管課へも併せて報告すること。

2 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)

PMDAはホームページ上で、ニトロソアミン類について、関連通知や回収状況等を体系的にまとめて公開している。製造販売業者からの案内文書についてもホームページに掲載することとしているため、情報提供文書の確定後速やかにPMDA安全性情報・企画管理部 リスクコミュニケーション推進課に掲載を依頼すること。

3 医療機関等

厚生労働省への報告及び措置内容の確定後、医療機関への情報提供文書を第3に従って作成すること。ただし、当該医薬品の臨床的位置付け及び代替品の有無等により影響が大きいと考えられる措置内容については、医療機関への情報提供文書の他に、プレスリリース、患者向け説明資料及びコールセンターの設置を検討すること。

4 関連学会等

当該医薬品が対象とする疾患の関連学会等に対しても情報提供を行い、医療関係者への周知に関する協力を相談することが望ましい。

第3 医療機関等へ情報提供すべき項目

情報提供文書には、以下の項目を含めること。なお、文書作成にあたっては、付属文書にて示すお知らせ文書モデルを参考にしてもよい。ただし、あくまで一例であり、個々の品目の状況に応じて適切な情報提供内容は異なることに留意すること。

また、参考文献や引用文献がある場合には、文書に情報を盛り込むことが望ましい。

1 情報提供の背景

ニトロソアミン類の一般的事項の説明に加え、不純物混入による健康リスクに関する説明を含めること。

2 検出されたニトロソアミン類の名称

和名に加えて英名を含めること。

3 想定される健康への影響

(1) 検出されたニトロソアミン類の変異原性・発がん性の有無(不明を含む)

(2) 検出されたニトロソアミン類の1日許容摂取量(AI:acceptable intake))AIは原則として以下のいずれかにより設定すること。

① 当該ニトロソアミン類の発がん試験データから算出した化合物特異的AI

② CPCAによって設定したカテゴリAI

③ 当該ニトロソアミン類の構造類似化合物を用いたリードアクロスにより、構造類似化合物の発がん試験データから算出した化合物特異的AI

④ その他ガイダンス、通知に示された方法により設定されたAI(in vitro,in vivo変異原性試験の陰性結果を踏まえて緩和的に設定されたAI等)

(3) 検出されたニトロソアミン類の測定結果がAIを超えていたかどうか

記載例1:「理論上の発がんリスクは、およそ○万人に1人が過剰にがんを発症する程度のリスクに相当」

記載例2:「今回検出された値はこの許容摂取量と比べて最大○倍高い」

4 当該製剤に対する措置

(1) 製品の出荷の継続の可否(回収の有無)とその理由

(2) 過去に服用した患者のリスク

(3) 現在服用している患者の処方の中断・継続に関する推奨事項

(4) 今後の供給の見通し

上記のリスク評価については、最新の知見により変わりうるため、最新の知見を踏まえてリスク評価及び当該製剤に対する措置に変更があった場合は、迅速に情報提供を行うこと。

参考文献

1) European Medicines Agency Science Medicines Health, EMA/409815/2020, Questions and answers for marketing authorisation holders/applicants on the CHMP Opinion for the Article 5(3) of Regulation (EC) No 726/2004 referral on nitrosamine impurities in human medicinal products

2) 「「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」に関する質疑応答集(Q&A)について」の一部改正について(令和5年8月4日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課、医薬安全対策課及び監視指導・麻薬対策課連名事務連絡)

[付属文書]

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