添付一覧
○令和6年度農薬危害防止運動の実施について
(令和6年4月25日)
(/医薬発0425第3号/6消安第685号/環水大管発第2404255号/)
(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生労働省医薬局長、農林水産省消費・安全局長、環境省水・大気環境局長通知)
(公印省略)
農薬危害防止運動は、これまで農薬の安全かつ適正な使用及び保管管理の徹底に大きな役割を果たしてきており、その実施について従来、格別の御配慮をいただいているところである。
また、農薬の飛散低減、住宅地等を含む周辺環境への影響を防ぐための対策等を含めた農薬の適正使用に係る指導についても、御協力いただいているところである。
しかしながら、農薬の使用に当たっては、依然として、①適切な防護装備を着用していなかった事例、②土壌くん蒸剤施用後の作業管理が十分でなかった事例、③住宅地周辺や学校等公共施設での農薬使用に際しての周辺住民や施設利用者への周知や配慮の不徹底等であった事例、④農薬の不適切な管理による誤飲事例が確認されている。
また、農薬の使用が原因と疑われる蜜蜂のへい死が確認されるため、養蜂関係者と農薬使用者、農業団体等が情報交換等を通じて連携を密に行うよう、引き続き指導を行っていく必要がある。
さらに、平成30年12月1日に改正農薬取締法が施行され、再評価制度の導入等により、最新の科学的知見に基づき評価された安全な農薬の確保・供給を図ることとしているが、生産現場で農薬の安全性を向上させるためには、安全な農薬の確保・供給だけではなく、農薬使用者が農薬の適正使用等に努めていくことが重要である。改正農薬取締法では、「農薬使用者は、農薬の使用に当たっては、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努める(一部抜粋)」ことが新たに規定されたところであり、国や都道府県においても、こうした農薬使用者による農薬の適正使用に資する自発的な知識・理解の向上が図られるよう、必要な知識の普及、農薬の使用に関する情報提供を行っていく必要がある。
以上のような状況に鑑み、本年度においても、国及び地方公共団体の緊密な連携の下、関係諸団体の協力を得て、別紙のとおり農薬危害防止運動実施要綱を定め、全国的に農薬の安全かつ適正な使用を推進することとしたので、貴職におかれても農薬の安全かつ適正な使用の推進について、特段の御配慮及び御協力をお願いする。
別紙
農薬危害防止運動実施要綱
目次
第1 趣旨
第2 名称
第3 実施期間
第4 実施主体
第5 運動のテーマ及び重点指導項目
1 運動のテーマ
2 重点指導項目
第6 実施事項
1 農薬及びその取扱いに関する正しい知識の普及啓発
(1) 広報誌等による普及啓発
(2) 啓発資料の配布や情報配信、講習会等を通じた普及啓発
(3) 周知・指導が行き届きにくい農薬使用者への普及啓発
(4) 医療機関等に対する農薬中毒発生時の対応についての情報提供等
2 運動中に実施した活動や取組に係る検証の実施
3 農薬使用者、農薬販売者等の関係者への指導等
別添:指導等における留意事項
1 農薬による事故を防止するための指導等
(1) 農薬使用時の事故防止対策の周知
(2) 農薬の保管管理及び適正処理に関する指導
(3) 農薬使用者の健康管理
(4) 事故情報の把握
2 農薬の適正使用等についての指導等
(1) 農薬使用基準の遵守及び使用履歴の記帳の徹底
(2) 販売及び使用が禁止されている農薬の取扱いに関する指導
(3) 無登録農薬の疑いがある資材の使用に関する指導
(4) その他の留意事項
3 農薬の適正販売についての指導等
(1) 農薬販売者に対する指導
(2) 販売禁止農薬の自主回収への協力に関する指導
(3) 無登録農薬の疑いがある資材の販売に関する指導
(4) インターネットを利用した農薬の販売に対する指導
(5) 農薬として使用できない除草剤の販売に対する指導
4 有用生物や水質への影響低減のための関係者の連携
(1) 蜜蜂の被害防止対策
(2) 水域の生活環境動植物の被害及び水質汚濁の防止対策
別表:農薬登録における誤認しやすい農作物の例
別記1:農薬による事故の主な原因等及びその防止のための注意事項
別記2:農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策
別記3:毒劇物たる農薬の適正販売強化対策
第1 趣旨
農薬の安全かつ適正な使用及び保管管理の徹底は、農産物の安全確保及び農業生産の安定のみならず、国民の健康の保護及び生活環境の保全の観点からも極めて重要である。
このため、従来、農薬取締法(昭和23年法律第82号)及び毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)に基づく取締り等を行うとともに、食品衛生法(昭和22年法律第233号)に基づく残留基準に対してきめ細やかに対応するため、農薬の飛散低減対策を含めた農薬の適正使用並びに地域及び関係部局間の連携協力体制の強化等に努めてきたところである。
しかしながら、農薬の使用に伴う使用者、周辺住民、家畜、周辺環境等に対する被害の発生事例や、農薬の不適正な使用により農作物から食品衛生法に基づく残留基準を超えて農薬成分が検出される事例が依然として確認される状況にある。
また、学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹並びに住宅地に近接する農地(市民農園や家庭菜園を含む。)及び森林等において農薬を使用するときは、農薬の飛散を原因とする住民、子ども等の健康被害が生じないよう、飛散防止対策の一層の徹底を図ることが必要である。
加えて、農薬登録を受けることなく、農薬としての効能効果をうたっている資材や、成分からみて農薬に該当する資材が販売及び使用される事例も確認され、引き続きそのような資材の販売及び使用を根絶するための周知・指導の強化を図っていく必要がある。
農薬取締法において、「農薬使用者は、農薬の使用に当たっては、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努める(一部抜粋)」とされており、農薬の適正使用等に関する必要な知識の普及、農薬の使用に関する情報提供等を通じて農薬使用者の自発的な知識・理解の向上や適正使用を図っていく必要がある。
以上を踏まえ、農薬取締法ほか関係法令に基づき遵守すべき事項について周知徹底するとともに、農薬及びその取扱いに関する正しい知識を広く普及させることにより、農薬の適正販売、安全かつ適正な使用及び保管管理並びに使用現場における周辺への配慮を徹底し、もって、農薬の不適正な取扱いやそれに伴う事故等を未然に防止することを目的として、農薬危害防止のための運動を実施する。
第2 名称
農薬危害防止運動(以下「運動」という。)
第3 実施期間
原則として、令和6年6月1日から同年8月31日までの3か月間とする。
なお、各地域においては、農薬の使用実態等地域の実情を考慮して、適切な時期に取り組むこととする。
第4 実施主体
国、都道府県、保健所設置市及び特別区とする。
このうち、国にあっては、地方農政局等の職員を活用し、都道府県、保健所設置市及び特別区と連携の上、地域に密着した農薬の適正使用等についての指導を行うものとする。
都道府県、保健所設置市及び特別区にあっては、地域の特性を活かした運動方針、重点事項等を掲げた実施要領を作成し、関係機関及び関係団体が一体となって協力体制を整備するとともに、農業者、防除業者等農薬を使用する者(以下「農薬使用者」という。)、毒物劇物取扱者、農薬販売者及び地域住民の意見を採り入れ、運動の活発化を図るとともに、取組の効果の検証に努めるものとする。
国は、各都道府県等での取組を検証し、優良な取組事例、取組内容の工夫等を全国レベルで共有することにより、農薬の適正使用に係る指導を充実させるとともに、次年度以降の運動の実効性をなお一層高めるよう努めるものとする。
第5 運動のテーマ及び重点指導項目
全国の関係者が一体となって運動に取り組むことを目的として、昨年度までの農薬の適正使用に係る指導の過程等において明らかになった地域の課題を踏まえ、下記のテーマ及び重点指導項目を設定し、運動を展開する。
1 運動のテーマ
農薬をラベルの表示事項に従って使用することで、事故・被害等が防止され、農作物等の安全が確保されることを改めて注意喚起する必要があること、周辺住民や農作物等への飛散防止対策、住宅地等における農薬の適正使用等に十分な配慮がなされているとは言えない場面が依然として見られること等を踏まえ、令和6年度の運動のテーマは、昨年度に引き続き「守ろう 農薬ラベル、確かめよう 周囲の状況」とする。
2 重点指導項目
「別添:指導等における留意事項」のうち、以下の項目については、近年継続して農薬の使用に伴う事故・被害等が発生していることから、重点的に指導すること。
① 適切な防護装備の着用の徹底(別添の1の(1)のア)
② 土壌くん蒸剤を使用した後の適切な管理の徹底(別添の1の(1)のウ)
③ 住宅地等で農薬を使用する際の周辺への配慮及び飛散防止対策の徹底(別添の1の(1)のエ)
④ 誤飲を防ぐため、施錠された場所に保管するなど、保管管理の徹底(別添の1の(2)のア)
第6 実施事項
1 農薬及びその取扱いに関する正しい知識の普及啓発
(1) 広報誌等による普及啓発
報道機関に記事掲載の依頼を行うとともに、広報誌、ポスター、インターネット、SNS等の多様な広報手段を用いて、本運動並びに農薬及び農薬使用に関する正しい知識の普及啓発を行うこと。
(2) 啓発資料の配布や情報配信、講習会等を通じた普及啓発
農薬使用者のほか、毒物劇物取扱者、農薬販売者、さらには地方公共団体の施設管理部局等、施設内の植栽管理のために病害虫防除を委託する可能性のある者等を対象として、「別添:指導等における留意事項」を参考に、農薬の安全かつ適正な使用及び保管管理、農薬の適正販売、農薬による危害の防止対策、事故発生時の応急処置、関係法令等に関する啓発資料の配布又は電子メール若しくはSNS等を活用した情報配信、講習会の実施等により、農薬の取扱いに関する正しい知識の普及を図ること。
その際、農薬の安全かつ適正な使用や保管管理、中毒時の応急処置、地域の医療機関情報等について解説した資料により、理解の増進に努めること。
(3) 周知・指導が行き届きにくい農薬使用者への普及啓発
講習会等の開催や巡回による周知・指導が行き届きにくい農産物直売所に出荷する農薬使用者に対して周知・指導の徹底が図られるよう、農産物直売所の管理者に対して、直売所に出荷する農薬使用者を対象に農薬の適正使用に関する注意喚起を行うことや集荷の際に農薬の使用履歴に基づき農薬の使用状況を確認するよう普及啓発を図ること。
また、無人マルチローターを利用して農薬散布を実施する場合、地上での散布に比べて高濃度の農薬を使用する可能性があるため、農薬の適正使用に関して十分理解しておくことが必要である。このため、無人マルチローターの関係団体、メーカー、販売店、教習施設等に対して、無人マルチローターを用いる農薬使用者への、普及啓発資料の配付や講習会参加の呼びかけを要請すること。
(4) 医療機関等に対する農薬中毒発生時の対応についての情報提供等
医療機関等に対して、農薬の中毒時の症状及びその応急処置等について解説した資料を配布し、万が一、事故が発生した場合の処置体制について万全を期するよう努めること。
2 運動中に実施した活動や取組に係る検証の実施
農薬による危害の防止、農薬の適正使用等に係る指導、普及啓発のために実施した活動、重点指導項目として位置付けた事項への取組状況等について、実施の効果や成果を検証し、次回以降の運動の実効性を高めるよう努めること。
3 農薬使用者、農薬販売者等の関係者への指導等
農薬による危害を防止するとともに、農薬の適正な使用や販売を推進するため、また、有用生物や水質への影響を低減するために、農薬使用者、農薬販売者等の関係者に対して、別添に掲げる事項について指導等を徹底すること。
別添:指導等における留意事項
1 農薬による事故を防止するための指導等
(1) 農薬使用時の事故防止対策の周知
農薬使用の際の不注意等に起因する事故を未然に防止するため、農薬使用者、病害虫防除の責任者及び農薬使用委託者を対象として、遵守すべき関係法令及び別記1「農薬による事故の主な原因等及びその防止のための注意事項」の周知徹底を図ること。
その際には、特に以下の事項について指導を徹底すること。
ア 農薬使用に当たっての防護装備着用の徹底
農薬の調製、散布及び防除器具の洗浄を行うときは、農薬の容器に表示された使用上の注意事項等に従い、農薬用マスク、保護メガネ等の防護装備を着用するよう指導を徹底すること。
イ 混用に関する注意事項の厳守の徹底
やむを得ず、使用の段階で農薬と他の農薬等(肥料等を含む)を混用して使用する、いわゆる現地混用を行う場合において、ラベルに他の農薬等との混用に関する注意事項が表示されているときは、当該注意事項を厳守するとともに、生産者団体が発行する「農薬混用事例集」等を参考とし、これまでに知見のない組合せで現地混用を行わないよう指導すること。
ウ 土壌くん蒸剤の使用に当たっての安全確保の徹底
被覆を要する土壌くん蒸剤(クロルピクリン剤)については、依然として、農薬使用者が適切に被覆を行わなかったこと等を主な原因とする事故が毎年報告されていることから、その適正な取扱いに関する以下の事項について、周知・指導を徹底すること。
① 被覆を要する土壌くん蒸剤は、刺激性があり、正しく使用しないと、揮散して、周辺住民等や農薬使用者に被害を及ぼすことがあること。
② 被覆を要する土壌くん蒸剤を使用する場合は、農薬の容器に表示された使用上の注意事項等に従い、吸収缶付き防護マスク等の防護装備の着用、施用後直ちに被覆を完全に行うこと等の安全確保を徹底すること。
ビニールハウス等の施設での栽培においては、施設内であっても施用直後に被覆を完全に行い、臭気が残っている期間は施設内に人が立ち入らないようにすること。
③ 使用場所や周辺の状況に十分配慮して防除を行うこと。特に、住宅、学校、保育所、病院、公園その他の人が居住し、滞在し、又は頻繁に訪れる施設周辺においては、被覆を要する土壌くん蒸剤の使用以外の防除方法を検討すること。
やむを得ず、被覆を要する土壌くん蒸剤を使用する場合は、農薬の揮散によって周辺住民等に健康被害が生じないよう、被覆資材として、厚めのもの(0.03mm以上)や難透過性のものを使用するとともに、周辺住民等への説明や事前周知等による被害防止対策を講ずること。
特に砂地のほ場や高温期においては、難透過性フィルムによる被覆を要する土壌くん蒸剤の揮散防止効果が顕著であることが確認されているので、指導に当たって参考にすること。(「クロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤の適正使用について」(平成18年11月30日付け18消安第8846号農林水産省消費・安全局長通知)、「被覆を要する土壌くん蒸剤の適正な取扱いの徹底について」(令和2年3月11日付け元消安第5645号農林水産省消費・安全局長通知)、「被覆を要する土壌くん蒸剤の使用実態等に基づく適正な取扱いの徹底について」(令和2年7月15日付け2消安第1758号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)及び「被覆を要する土壌くん蒸剤の適正な取扱いの再徹底について」(令和6年2月14日付け5消安第6645号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)並びに農林水産省ウェブページ「被覆を必要とする農薬の使用時におけるリスク低減に関する研究」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/regulatory_science/shuryo_list.html)参照)
エ 住宅地等における農薬使用に当たっての必要な措置の徹底
ほ場のみならず、学校、保育所、病院、公園、保健所等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅地に近接する場所において農薬を使用する農薬使用者等に対し、農薬の飛散が周辺住民や子供等に健康被害を及ぼすことがないよう、以下に掲げる事項を始めとする対策が示されている「住宅地等における農薬使用について」(平成25年4月26日付け25消安第175号・環水大土発第1304261号農林水産省消費・安全局長、環境省水・大気環境局長通知)を周知し、その事項の遵守を徹底すること。
① 農業生産場面
住宅地等の周辺ほ場(市民農園や家庭菜園を含む。)において農薬を散布する場合は、飛散の少ない剤型の選択や飛散低減ノズルの使用、周りに影響が少ない天候や時間帯の選択等、農薬の飛散を防止するための必要な措置を講ずるとともに、事前に、農薬を散布する日時、使用農薬の種類等を記した書面・看板等により、周辺住民に対し十分な時間の余裕をもって幅広く周知すること。
② 公園、街路樹等一般場面
学校、保育所、病院、公園、保健所等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅地に近接する森林等、人が居住し、滞在し、又は頻繁に訪れる土地又は施設の植栽における病害虫防除等に当たっては、「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」(平成22年5月環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室:https://www.env.go.jp/water/dojo/noyaku/hisan_risk/manual1_kanri.html)も参考としつつ、病害虫の発生や被害の有無にかかわらず定期的に農薬を散布することをやめ、日常的な観測によって病害虫被害や雑草の発生を早期に発見し、被害を受けた部分のせん定や捕殺、機械除草等の物理的防除により対応するよう最大限努めること。やむを得ず農薬を使用する場合にも、誘殺、塗布、樹幹注入等散布以外の方法を十分に検討し、散布する場合でも最小限の部位及び区域にとどめ、飛散防止対策をとる等、農薬の選択及び使用方法を十分に検討し、事前に農薬使用の目的、農薬を散布する日時、使用農薬の種類及び農薬使用者等の連絡先等を記した書面、看板等により周辺住民、施設利用者等への周知を行うこと。また、立入制限範囲の設定等により、農薬散布時や散布直後に農薬使用者以外の者が散布区域内に立ち入らないよう措置を講ずること。
平成29年度には、公立小学校において児童が授業を受けている時間帯に、敷地内樹木の害虫駆除を目的として農薬が散布され、それにより体調不良を訴えた児童が病院に搬送される事案が発生した。このような被害を防ぐために、特に、学校では、万が一にも児童・生徒が農薬を浴びることがないよう、学校の施設管理者及び作業を受託する防除業者等に対し、児童・生徒が在学し授業を受けている日・時間帯には農薬散布を実施しないなど、散布日・時間帯に最大限配慮するよう指導すること。
さらに、農薬使用者等だけでなく、国及び地方公共団体の施設管理部局、集合住宅の管理業者等、施設内や住宅地周辺の植栽管理のために病害虫防除を委託する可能性がある者に対し、啓発資料等を活用した積極的な情報提供により、本通知に記載されている指導内容の周知を徹底すること。
(「「住宅地等における農薬使用について」の再周知・指導の徹底について」(平成29年10月25日付け29消安第3974号・環水大土発第1710251号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室長通知)参照)
また、農薬の飛散防止のため、フェロモントラップ(捕虫器)の使用は有効であるが、野鳥を誤って捕獲しないよう十分注意をし、使用時期終了後は速やかに取り外しを行う等、適切に管理すること。
(「公園、街路樹等の害虫防除に係るフェロモントラップ(捕虫器)の使用に当たっての注意喚起について」(平成30年2月9日付け環水大土発第1802091号環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室長通知)参照)
オ 有人・無人航空機による農薬散布に当たっての留意事項の遵守
有人ヘリコプター、無人ヘリコプター又は無人マルチローターなどの有人・無人航空機を用いて農薬を散布する場合は、関係法令を遵守するとともに、以下の通知を参照し、安全かつ適正な農薬散布を徹底すること。
○ 有人ヘリコプター:
・「農林水産航空事業の実施について」(平成13年10月25日付け13生産第4543号農林水産事務次官依命通知)
・「農林水産航空事業実施ガイドライン」(平成16年4月20日付け16消安第484号農林水産省消費・安全局長通知)
○ 無人ヘリコプター:
・「無人ヘリコプターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」(令和元年7月30日付け元消安第1388号農林水産省消費・安全局長通知)
○ 無人マルチローター:
・「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」(令和元年7月30日付け元消安第1388号農林水産省消費・安全局長通知)
これらの通知において共通する留意点は、以下のとおりである。
① 有人・無人航空機のいずれであっても、事前に、散布する日時、散布する農薬の種類等について、周辺住民等への周知を行い、散布を実施する際には、散布区域内及びその周辺における危害防止に万全を期すとともに、作業関係者の安全を十分に確保すること。
② 無人航空機を用いて農薬を散布する場合は、安全かつ適正な農薬散布の実施のため、以下の事項に留意すること。
1) 実施区域周辺の地理的状況(住宅地、公共施設、水道水源又は蜂、蚕、魚介類の養殖場等に近接しているかなど)、耕作状況(収穫時期の近い農作物や有機農業が行われているほ場が近接しているかなど)等の作業環境を十分に勘案し、実施区域及び実施除外区域の設定、散布薬剤の種類及び剤型の選定(粒剤、微粒剤等の飛散の少ない剤型)等の空中散布の計画について検討を行うこと。
2) 実施区域周辺に学校、病院等の公共施設、家屋、蜜蜂の巣箱、有機農業が行われているほ場等がある場合には、危被害防止対策の一つとして、当該施設の管理者及び利用者並びに居住者、養蜂家、有機農業に取り組む農家等に対し、農薬を散布しようとする日時、農薬使用の目的、使用農薬の種類及び実施主体の連絡先を十分な時間的余裕を持って情報提供し、必要に応じて日時を調整すること。
3) 実施区域周辺において人の往来が想定される場合、作業中の実施区域内への進入を防止するため、告知、表示等により空中散布の実施について情報提供を行うなどの必要な措置を講ずること。
4) 農薬の飛散等による危被害を防ぐため、架線等の危険箇所、実施除外区域、飛行経路及び操縦者、補助者等の経路をあらかじめ実地確認し、必要に応じて危険箇所及び実施除外区域を明示しておくこと。
5) あらかじめ機体等メーカーが作成した取扱説明書等により、機体及び散布装置に関する機能及び性能について理解しておくこと。
6) 機体等メーカーが取扱説明書等に記載した散布方法(飛行速度、飛行高度、飛行間隔及び最大風速)を参考に散布を行うこと(取扱説明書等に散布方法の記載がない場合は、上記のガイドラインに記載された散布方法を参考に実施すること)。
7) 農薬の飛散により危被害を与える可能性が高い場合には、状況に応じて、無風又は風が弱い天候の日や時間帯の選択、使用農薬の種類の変更、飛散が少ない剤型の農薬の選択等の対応を検討するなど、農薬が飛散しないよう細心の注意を払うこと。
8) 農薬暴露を回避するため、操縦者、補助者等は、防護装備を着用すること。
(2) 農薬の保管管理及び適正処理に関する指導
農薬の誤飲・誤食による中毒事故の発生その他農薬による危害や悪用を防止するため、農薬使用者に対し、関係法令等及び別記1に基づく対策の徹底を図るよう指導すること。
(参照:農林水産省ホームページ「農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況について」https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tekisei/accident.html)
その際には、特に以下の事項について指導を徹底する。
ア 農薬やその希釈液、残渣等はペットボトル、ガラス瓶等の飲食品の空容器等へ移し替えたりせず、施錠のされた場所に保管する等、保管管理を徹底すること。また、誤って移し替えてしまうことのないよう、これらの空容器等は農薬保管庫等の近くに置かないこと。万が一、容器の破損等により他の容器へ移し替えざるを得ない場合には、飲食品の容器は使用せず、内容物が農薬であることを明記した上で使用するなど、農薬の誤飲を防止するための適切な対応策を講じること。
(「農薬の誤飲を防止するための取組について」(平成23年5月16日付け23消安第1114号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
イ 使用しなくなった農薬については、関係法令等を遵守し、廃棄物処理業者へ依頼すること等により適正に処理すること。
ウ 毒劇物(毒物及び劇物取締法第2条第1項の毒物及び同条第2項の劇物をいう。以下同じ。)たる農薬が飛散し、漏れ、流れ出し、染み出し、又は地下に染み込んだ場合において、保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは、直ちに、その旨を保健所、警察署又は消防機関に届け出るとともに、保健衛生上の危害を防止するために必要な応急の措置を講じること。また、毒劇物たる農薬が盗難にあい、又は紛失したときは、直ちに、その旨を警察署に届け出ること。
(3) 農薬使用者の健康管理
農薬使用者に対し、その健康の管理に十分留意させるとともに、特に病害虫の共同防除に従事する者等、長時間にわたって防除作業を行う者に対しては、作業の前後に、必要に応じて健康診断を受診するよう指導すること。
(4) 事故情報の把握
今後の事故防止対策に反映させるため、医療機関等との連携を密にし、医療機関等に対し、事故内容等の速やかな報告を依頼する等農薬による事故の状況を的確に把握すること。
2 農薬の適正使用等についての指導等
(1) 農薬使用基準の遵守及び使用履歴の記帳の徹底
農薬による危害の防止及び農作物の安全確保のため、農薬使用者に対し、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)を踏まえ、適用農作物、使用量、希釈倍数、使用時期及び使用回数等の農薬使用基準、適用病害虫の範囲及び使用方法、被害防止方法、使用上の注意事項並びに最終有効年月の遵守を徹底するよう指導すること。農薬の適正使用の更なる推進を図るため、現地調査等による農薬の使用実態の把握に努めること。
令和2年度には、農業者による農薬の不適正使用の結果、当該農作物を摂食した場合に健康に悪影響を及ぼすおそれがある事案が発生したことから、このような事案の発生を防ぐために、農薬の適正使用と併せて、農薬の使用状況に問題が無いか確認するため、使用履歴の記帳を徹底するよう指導すること。(「農薬適正使用の徹底について」(平成22年12月15日付け22消安第7478号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)及び「農薬の不適正使用により健康に悪影響を及ぼすおそれがある事案の発生及び農薬の適正使用に係る指導の徹底について」(令和2年12月24日付け2消安第4308号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
農産物直売所においては、農産物直売所の管理者に対して、直売所に出荷する農薬使用者を対象に農薬の適正使用に関する注意喚起を行うことや集荷の際に農薬の使用履歴に基づき農薬の使用状況を確認するよう指導を行うこと。(「農産物直売所で販売される農産物に関する農薬の適正使用及び使用履歴の確認の徹底について」(令和5年12月19日付け5消安第5483号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
また、別記2「農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策」について、地方公共団体の関係部局、関係機関、農業協同組合、農産物直売所、青果市場、農薬販売店等と協力しつつ、効果的に指導を行うこと。
加えて、GAP(農業生産工程管理)の実施が、農薬の適正使用に関しても有効な手段であることに鑑み、農業者に対しては、「国際水準GAPガイドライン」(令和4年3月8日付け3農産第3417号農林水産省農産局長通知)やGAP認証の取得にあたって求められる農薬の適正使用に関連する事項等を参考として、具体的な取組を行うよう、積極的に指導を行うこと。
指導の際には、特に、以下の事項について留意する。
ア 適用のない作物に誤って農薬を使用することのないよう、必ず使用前にラベルを確認すること。同じ科に属する作物であっても形状や栽培形態が異なったり、名称や形状が似ていても異なる作物であれば、使用できる農薬や使用方法が異なる場合があることに注意すること。誤認しやすい農作物については別表を参考にし、特に留意すること。
イ 散布した農薬がその対象の作物とは別の作物に付着・残留することのないよう、当該別の作物に農薬が飛散することを防止する対策を徹底するとともに、農薬の使用前後には防除器具を点検し、十分に洗浄されているか確認すること。特に、日本農林規格等に関する法律(昭和25年法律第175号)に基づく有機農産物の認証を受けようとする農家の生産ほ場周辺で作業する場合には、当該生産ほ場への農薬の飛散等に十分注意すること。
(「農薬の使用基準の遵守及び飛散防止対策の徹底について」(平成23年9月5日付け23消安第3034号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、植物防疫課長通知)及び「農薬飛散対策技術マニュアル」(平成22年3月農林水産省消費・安全局植物防疫課)参照)
ウ 作物群登録のある農薬を使用する際には、農薬に対する感受性が作物によって異なることがあり、これによって薬害の程度も異なるため、作物群に属する作物に初めて使用する場合は、事前に小面積に使用し、薬害の有無を十分に確認してから使用すること。
エ 最終有効年月を過ぎた農薬は、その品質が保証されないため農薬の効果が十分でないだけでなく、使用基準や残留農薬基準値が変更されている場合があり、使用した農産物が残留農薬基準値を超過する可能性もあることから、使用しないようにすること。
オ 平成23年度には水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準の設定の審議に当たり、基準値案と水道事業者が実施した水道原水の水質調査の結果等とを照らし合わせた結果、水稲用除草剤において、基準値案を上回る濃度の農薬成分が河川から検出された事例が見られた。これは、十分な止水期間をとらずに水田内の水を排水路に流してしまったことがその一因と推察されたことから、水田において農薬を使用する場合は、注意事項に記載された止水期間を遵守し、適切な水管理や畦畔整備の措置を講じること。
(「水田において使用される農薬における止水期間の遵守の徹底等について」(平成23年10月12日付け23消安第3601号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
(2) 販売及び使用が禁止されている農薬の取扱いに関する指導
農薬使用者に対し、販売及び使用が禁止されている農薬について、農林水産省のホームページ(https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kinsi/)等において提供する情報を確認した上で、これらの農薬が自宅の倉庫等で発見された場合は、使用したり、他人に譲渡したりせず、関係法令を遵守して適正に処理するよう指導すること。
なお、平成22年4月1日に販売禁止農薬に追加されたケルセン又はジコホールを含む農薬及び平成24年4月1日に販売禁止農薬に追加されたベンゾエピン又はエンドスルファンを含む農薬については、農薬製造者が自主回収を行っているため、回収を受け付けている農業協同組合及び販売店に持参するよう指導すること。
(毒物及び劇物取締法、消防法(昭和23年法律第186号)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)及び「販売禁止農薬等の回収について」(平成23年12月13日付け23消安第4597号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
(3) 無登録農薬の疑いがある資材の使用に関する指導
農薬登録番号等、農薬取締法第16条に規定する表示がないのに、農薬としての効能効果をうたい、又は病害虫の防除効果がある資材は、無登録農薬の疑いがあり、その資材を使用することは、農薬取締法第24条に違反する可能性があるため、農薬使用者に対し、このような資材を使用しないよう指導すること。
また、このような資材に係る情報については、都道府県若しくは地方農政局の農薬指導部局又は農林水産省ホームページ内の「農薬目安箱」(https://www.contactus.maff.go.jp/j/form/syouan/nouyaku/160730_1.html)に提供するよう指導すること。
(「無登録農薬であると疑われる資材に係る製造者、販売者等への指導について」(平成19年11月22日付け19消安第10394号農林水産省消費・安全局長通知)参照)
(4) その他の留意事項
ア 医療や畜産の分野での薬剤耐性菌対策について、世界的に関心が高まっており、我が国では、令和5年4月、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023―2027)」(国際的に脅威となる感染症対策の強化のための国際連携等関係閣僚会議)が取りまとめられたところである。農作物等の防除における抗菌剤(殺菌剤)の使用に関しては、農作物等の病害虫防除の分野での薬剤耐性菌の発達も重要な課題であるところ、同一系統の薬剤の連続散布を避け、病害虫の発生状況に応じた計画的かつ必要な範囲での使用が重要であることに留意すること。
イ ヨウ化メチル剤を栗の収穫後のくん蒸に使用する際は、気密度等の確認を受けた施設でのみ作業を行うとともに、保護具を着用し、くん蒸終了後には十分な換気を行う等、安全なくん蒸を行うよう指導すること。
ウ 不要となった農薬やその希釈液等の水路や河川等への投棄により、生活環境動植物に甚大な被害を与えることのないよう、不要となった農薬は、関係法令を遵守して適正に処分するよう指導すること。また、希釈液は必要な量だけを正確に調製し、万が一余った際は、関係法令を遵守して適正に処分するよう指導すること。
エ 農薬を製造し、又は加工(小分けを含む。以下同じ。)する者は、農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければ、これを製造し若しくは加工し、又は輸入してはならないことから、登録を受けていない者が製造し、又は加工した農薬を使用しないよう指導すること。また、不要となった農薬を小分けして販売(譲渡を含む)しないよう指導すること。
3 農薬の適正販売についての指導等
(1) 農薬販売者に対する指導
農薬の販売に当たっては、都道府県知事への届出が、毒劇物たる農薬の販売に当たっては、当該届出に加えて都道府県知事等への登録が、それぞれ義務付けられているので、当該届出等を行うことなく農薬の販売を行わないよう指導すること。なお、農薬を販売する者は、業を営む者以外の個人も含むことに十分留意すること。
また、販売者に対し、帳簿を備え付け、これに農薬の種類別に、その譲受数量及び譲渡数量(水質汚濁性農薬に該当する農薬については、その譲受数量及び譲渡先別譲渡数量)を記載し、最終の記載の日から3年間保存するよう指導すること。
さらに、毒劇物たる農薬の販売業者に対しては、別記3「毒劇物たる農薬の適正販売強化対策」を周知徹底し、その販売及び授与に当たっては、譲受人の身元並びに毒劇物の使用目的及び使用量が適切であることを十分確認するとともに、一般消費者への販売及び授与を自粛するよう引き続き指導すること。
(「毒物及び劇物の適正な販売等の徹底について」(平成17年11月14日付け薬食審査発第11114001号・薬食監麻発第1114001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)参照)
(2) 販売禁止農薬の自主回収への協力に関する指導
農薬販売者に対し、農薬製造者が自主回収を行っている農薬(2の(2)参照)についての農薬使用者への周知に努めるとともに、農薬使用者から農薬の返品の申出があった場合は、これを受け付けて農薬製造者に送付するよう指導すること。
(3) 無登録農薬の疑いがある資材の販売に関する指導
農薬の登録を受けていない者が製造し若しくは加工し、又は輸入した農薬を販売しないよう指導すること。
また、農薬登録番号等、農薬取締法第16条に規定する表示がないのに、農薬としての効能効果をうたい、又は病害虫の防除効果がある資材は、無登録農薬の疑いがあり、その資材を販売することは、農薬取締法第18条第1項に違反する可能性があるため、農薬販売者に対し、このような資材を販売しないよう指導すること。
このような資材に係る情報については、都道府県若しくは地方農政局の農薬指導部局又は農林水産省ホームページ内の「農薬目安箱」(https://www.contactus.maff.go.jp/j/form/syouan/nouyaku/160730_1.html)に提供するよう指導すること。
(「無登録農薬であると疑われる資材に係る製造者、販売者等への指導について」(平成19年11月22日付け19消安第10394号農林水産省消費・安全局長通知)参照)
(4) インターネットを利用した農薬の販売に対する指導
インターネットによる通信販売やオークション等の普及に伴い、農薬についても、販売の届出を行うことなく農薬を販売したり、小分けした農薬を販売したりする不適切な事例が確認されている。このため、国から、インターネットによる通信販売やオークション等を主催している者に対し、農薬を販売する場合は届出が必要であること、小分けした農薬を販売してはならないこと等を利用者に周知するよう働き掛けを行っているところであり、地方公共団体においても、農薬販売者の届出に関するホームページに掲載する等、様々なメディアを通じて幅広く周知すること。
さらに、毒劇物たる農薬については、その販売及び授与に当たっては、譲受人の身元並びに毒劇物の使用目的及び使用量が適切なものであるかを十分確認するとともに、一般消費者への販売及び授与を自粛するよう指導すること。
(「インターネットのフリーマーケットサイト等における農薬の販売について(依頼)」(令和5年5月10日付け5消安第917号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知)参照)
(5) 農薬として使用できない除草剤の販売に対する指導
農薬取締法に基づく登録を受けていない農薬を、農作物等を害する病害虫又は雑草の防除のために使用することは禁止されており、農薬に該当しない除草剤(農薬取締法第22条第1項に規定する「農薬以外の薬剤であって除草に用いられる薬剤」をいう。以下同じ。)を農作物等の栽培・管理に使用することはできない。一方、近年、ドラッグストアやいわゆる100円ショップ等において、農薬に該当しない除草剤が多く販売されるようになっており、また、インターネットを通じた販売・購入も容易になっている。さらに、農薬に該当しない除草剤の容器・包装や販売所における「非農耕地専用」という表示が、当該除草剤の購入者に、農耕地でなければ使用できる(例:公園、緑地等であれば植栽管理に用いることができる)との誤解を与える事例が確認されている。
このため、農薬に該当しない除草剤の販売に当たっては、国から関係者に対し、特に、以下の事項について周知していることに留意すること。また、以下の留意事項に沿っていないと疑われる販売事案を把握した際には、農林水産省に連絡すること。
ア 容器又は包装に、農薬として使用することができない旨を表示すること。
イ 販売所ごとに、公衆の見やすい場所にも、農薬として使用することができない旨を表示すること。
ウ 農薬と誤解して購入されないよう、商品の陳列に十分注意すること。
エ 農耕地以外の場所であっても、農作物等の栽培・管理に使用することができない旨の周知に努めること。
オ インターネットで販売する場合には、対面での説明ができないことに鑑み、販売サイトにおいて、判読しやすい文字サイズにより農薬として使用できない旨を記載するなど、分かりやすい情報提供に努めること。
(「農薬として使用することができない除草剤の販売等について」(平成31年3月28日付け薬生薬審発0328第8号・30消安第6268号・2019製化管第32号・環保企発第1903287号・環水大土発第1903281号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、経済産業省製造産業局化学物質管理課長、環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課化学物質審査室長、環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室長通知)参照)
4 有用生物や水質への影響低減のための関係者の連携
(1) 蜜蜂の被害防止対策
農薬による蜜蜂の被害を軽減するため、都道府県の農薬指導部局は畜産部局と連携し、被害の把握及び防止のため、以下の取組の実施に努めること。
ア 蜜蜂の被害に関する認識の共有
畜産部局及び農薬指導部局は、その所属又は関係する普及指導員や病害虫防除所の職員、農薬使用者、養蜂家、農業団体、養蜂組合等関係者に対し、以下の事項を周知すること。
① 被害の発生は、水稲のカメムシ防除の時期に多いこと。
② 水田に飛来した蜜蜂が、水稲のカメムシ防除に使用される殺虫剤に直接暴露すれば、被害が発生する可能性が高いこと。
③ 被害を軽減させるためには、例えば、以下の対策を実施することが有効であること。
・ 農薬使用者と養蜂家の間の情報共有
・ 巣箱の設置場所の工夫・退避
・ 巣箱を日陰に設置するほか、水飲み場の確保等により巣箱内の温度の上昇を抑制するなど、蜜蜂に影響がない状況下での巣箱の網掛け
・ 農薬の使用の工夫(粒剤を使用する、蜜蜂の活動の盛んな時間の使用を避ける等)
イ 情報共有の更なる徹底
農薬指導部局及び畜産部局は、農薬使用者と養蜂家間の情報共有の更なる徹底を図るため、以下の情報を得た上で、関係先に伝達すること。
① 蜂場の情報関係
1) 畜産部局は、養蜂組合等の協力を得て、蜂場の情報(蜂場の場所、巣箱の設置期間等)を農薬指導部局及び農業団体等に伝えること。
なお、情報共有の推進に当たっては、関連情報を厳格に管理するとともに、被害の軽減目的のみに使用することについて、養蜂家の理解を得ること。
2) 農薬指導部局は、農業団体等の協力を得て、1)で得た情報を蜂場の周辺の水稲農家等に伝えること。
② 水稲の防除に係る情報関係
1) 農薬指導部局は、農業団体等の協力を得て、蜂場が設置される可能性のある場所の周辺(蜜蜂の飛翔範囲を考慮すれば、通常、蜂場から半径約2kmの範囲)の水稲のカメムシ防除の時期*等の情報を、畜産部局及び養蜂組合等にできる限り速やかに伝えること(情報は、有人ヘリコプターによる農薬散布の事業計画、無人ヘリコプターの空中散布計画や地域の農業団体が作成する防除暦、地域の実情に応じた無人マルチローターの使用者からの自主的な情報提供等から得ること)。
* 開花期直前~開花期後2週間程度。地域ごとの防除実態、その年のカメムシの発生状況等により異なる。
2) 畜産部局は、養蜂組合等の協力を得て、1)で得た情報をできる限り速やかに養蜂家に伝えること。
③ 水稲以外の作物の防除に係る情報関係
1) 農薬指導部局は、水稲が栽培されていない地域等でも被害事例の報告があったことを踏まえ、農業団体等の協力を得て、蜂場が設置される可能性のある場所の周辺で栽培される水稲以外の作物に関する防除の時期等の情報を畜産部局及び養蜂組合等に伝えること。
2) 畜産部局は、養蜂組合等の協力を得て、1)で得た情報を養蜂家に伝えること。
ウ 被害軽減のための対策の推進
農薬指導部局及び畜産部局は、農薬による蜜蜂の被害を軽減させるために、ア及びイの取組のほか、農業団体や養蜂組合等と相談しつつ、地域の実態に合わせて協議会を設けるなどして、以下の対策を推進すること。
① 養蜂組合等の協力を得て、養蜂家に対し、以下の指導を行うこと。
・ 蜜蜂がカメムシ防除を始めとした農薬に暴露する確率が高い場所(水田で囲まれた場所や周辺に水稲以外の花粉源が少ない場所)に巣箱を設置することは控えること。
・ カメムシ防除を始めとした農薬の散布時、巣箱を農薬が散布される圃場の周辺から退避させること。
・ 農薬が散布されている間、巣箱を日陰に設置するほか、水飲み場の確保等により巣箱内の温度の上昇を抑制するなど、蜜蜂に影響がない状況下での巣箱の網掛けを検討すること。
・ 日頃から巣箱の移動手段を検討するとともに、退避場所における新たな蜜源を確保するなどの取組に努めること。
② 農業団体等の協力を得て、農薬使用農家に対し、以下の指導を行うこと。
・ 使用する農薬のラベルに「被害防止方法」、「農薬の使用上の注意事項」及び「使用時期」として記載されている事項等を遵守するとともに、適時適切な防除を心がけること。
・ 農薬の散布は、蜜蜂の活動が最も盛んな時間帯(午前8時~12時まで)を避けること。
・ 蜜蜂が暴露しにくい形態(粒剤等)の殺虫剤を使用すること。
・ 害虫の発生源になる圃場周辺等の雑草管理については、これまでも栽培管理の一環として実施されてきたところであるが、蜜蜂の開花雑草への訪花を防ぐためにも、農薬を使用する圃場の畦畔や園地の下草等の雑草管理を徹底すること。
③ 前年度被害が生じた場所や同一の場所で複数回の被害が発生している地域においては、行政、養蜂組合、農業団体等の関係者が協議する場を設けるなどにより、原因究明とそれに基づく更なる被害軽減対策の推進等を徹底すること。
④ 以上のほか、養蜂家と連携しながら、巣箱の移動手段の提供や共同の退避場所の確保及び餌場の少ない夏季の蜜源確保等、地域の実態を考慮した取組を検討し、必要に応じて実施すること。
(「みつばちへの危害防止に係る関係機関の連携の強化等について」(平成17年9月12日付け17消安第5679号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、植物防疫課長、生産局畜産部畜産振興課長通知)、「花粉交配用みつばちの安定確保に向けた取組の推進について」(平成21年7月24日付け21消安第4359号農林水産省消費・安全局長、生産局長通知)、「蜜蜂の被害事例に関する調査・報告について」(平成25年5月30日付け25消安第785号農林水産省消費・安全局長通知)、「令和5年度の蜜蜂被害軽減対策の推進について」(令和5年6月26日付け5消安第1874号・5生畜第821号農林水産省消費・安全局農産安全管理課長、生産局畜産部畜産振興課長連名通知)参照)
(2) 水域の生活環境動植物の被害及び水質汚濁の防止対策
水域の生活環境動植物の被害防止、河川、水道水源等の公共用水域の水質汚濁の防止等環境の保全を図るため、水道事業者等関係機関が実施する水質検査結果を踏まえて、農薬を使用する場所の周辺の公共用水域の水及び底質の調査等を必要に応じて行い、それらの結果を活用して農薬使用者等を指導すること。
また、特定の農薬を地域で集中して使用する場合、その農薬に感受性の高い生物種に著しい被害が生じることが懸念されることから、できるだけ集中させず、多様な農薬を組み合わせて使用するよう指導に努めること。
さらに、ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁及び生活環境動植物への被害を未然に防止するため、関係部局間の連絡を密にし、ゴルフ場からの排出水に含まれる農薬の残留実態の把握に努めつつ、ゴルフ場関係者への指導・助言に努めること。
(「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止及び水域の生活環境動植物の被害防止に係る指導指針について」(令和2年3月27日付け環水大土発第2003271号環境省水・大気環境局長通知)参照)
別表:農薬登録における誤認しやすい農作物の例
1 |
だいず |
えだまめ |
||
2 |
いんげんまめ |
さやいんげん |
||
3 |
キャベツ |
メキャベツ |
||
4 |
ブロッコリー |
茎ブロッコリー |
||
5 |
しょうが |
葉しょうが |
||
6 |
しょうが |
うこん |
||
7 |
たまねぎ |
葉たまねぎ |
||
8 |
レタス |
非結球レタス |
||
9 |
トマト |
ミニトマト |
||
10 |
ピーマン |
ししとう |
||
11 |
だいこん |
はつかだいこん |
||
12 |
しそ |
しそ(花穂) |
||
13 |
やまのいも |
やまのいも(むかご) |
||
14 |
さくら |
食用さくら(葉) |
||
15 |
てんさい |
かえんさい |
||
16 |
メロン |
漬物用メロン |
||
17 |
すいか |
漬物用すいか |
||
18 |
とうもろこし(子実) |
未成熟とうもろこし |
ヤングコーン |
|
19 |
しゅんぎく |
きく |
食用ぎく |
|
20 |
ねぎ |
わけぎ |
あさつき |
|
21 |
にんにく |
にんにく(花茎) |
葉にんにく |
別記1
農薬による事故の主な原因等及びその防止のための注意事項
【人に対する事故】
1 農薬散布前
(1) 原因
① 農薬用マスク、保護メガネ等の防護装備の不備、防除器具等の点検不備によるもの(ア、イ)
② 通行人や近隣の住民への配慮が十分でなかったことによるもの(ウ、エ)
③ 強アルカリ性の農薬と酸性肥料を混用したため、有毒ガスが発生したことによるもの(オ)
④ 散布作業前日に飲酒または睡眠不足があったことによるもの、その他病中病後など体調の万全でない状態で散布作業に従事したことによるもの(カ、キ)
(2) 防止対策
ア 農薬の調製又は散布を行うときは、農薬用マスク、保護メガネ等防護装備を着用し、かつ、慎重に取り扱う。
イ 散布に当たっては、事前に防除器具等の十分な点検整備を行う。
ウ 農薬を散布するときは、散布前に周辺住民等の関係者に連絡し、必要に応じ立札を立て注意喚起を行うなど、子供や散布に関係のない者が作業現場に近づかないよう配慮する。
エ 農薬散布区域の近隣に学校、通学路等がある場合には、当該学校や子供の保護者等への周知を図り、散布の時間帯に最大限配慮する。
オ 強アルカリ性の農薬は、ラベルに記載されている「酸性肥料等との混用は絶対にしないこと」の注意事項を遵守する。
カ 散布作業前日には、飲酒を控え、十分な睡眠をとる。
キ 体調の優れない、または著しく疲労しているときは、散布作業に従事しない。
2 農薬散布中
(1) 原因
① 通行人や近隣の住民への配慮が十分でなかったことによるもの(ア)
② 学校に児童・生徒がいる日・時間帯に農薬散布が実施されたことによるもの(イ)
③ 強風時の散布により周辺の者が農薬に暴露したり、風上に向かっての散布等により散布作業者自身が農薬に暴露したことによるもの(ウ、エ)
④ 土壌くん蒸剤の使用に当たって、直ちに被覆をしない、十分な被覆を行わなかったなど適切な揮散防止措置を講じなかったことによるもの(オ)
⑤ 炎天下で長時間散布作業に従事したことによるもの(カ)
⑥ 散布の途中に農薬が付着した手で飲食・喫煙したことによるもの(キ)
(2) 防止対策
ア 居住者、通行人等に被害を及ぼさないよう、散布時の風向きに十分注意する。
イ 学校敷地への農薬散布は、児童・生徒が在学し授業を受けている日・時間帯に実施しない。
ウ 周辺への飛散を防ぐため、強風時における散布は控える。
エ 風上に向かっての散布、水稲の病害虫防除の際の動力散粉機(多孔ホース噴頭)の中持ち等はやめ、農薬を浴びることのないように十分に注意する。
オ クロルピクリン剤等土壌くん蒸剤の使用に当たっては、まず、他の防除方法がないか検討する。やむを得ず使用する場合は、揮散した薬剤が周辺に影響を与えないよう風向き等に十分注意するとともに、処理後直ちに被覆資材として、厚めのもの(0.03mm以上)や難透過性のものを用いて、被覆を完全に行う。
カ 炎天下での長時間の散布作業は避け、朝夕の涼しい時間を選び、2~3時間ごとに交替して行う。
キ 散布作業の合間には飲食・喫煙をしない。
3 農薬散布後
(1) 原因
① 通行人や近隣の住民への配慮が十分でなかったことによるもの(ア)
② 土壌くん蒸中のほ場管理が不適切であったことによるもの(イ)
③ 散布作業後に飲酒又は睡眠不足があったことによるもの(ウ)
(2) 防止対策
ア 公園、校庭等に農薬を散布した後は、少なくとも当日は散布区域に縄囲いや立札を立てる等により、関係者以外の者の立入りを防ぐ。
イ 土壌くん蒸中は、適正な材質、厚さの資材による被覆状態を維持するとともに、ほ場に立て札を立てる等により、関係者以外の者の立入りを防ぐ。
ウ 散布作業後には、飲酒を控え、十分な睡眠をとる。
4 保管、廃棄
(1) 原因
① 農薬をペットボトルやガラス瓶などの飲食品の空容器等に移し替えていた、保管庫に施錠をしていなかった等、保管管理が不適切だったため、高齢者、認知症を発症している方、子供等が誤飲したことによるもの(ア~エ)
② 使用残農薬を不注意に廃棄したり、不要になった農薬を放置したりしたことによるもの(オ、カ)
③ 農薬が残っている容器が適切に処分されなかったことによるもの(オ、カ)
(2) 防止対策
ア 毒物又は劇物に該当する農薬のみならず、全ての農薬について、安全な場所に施錠して保管する等農薬の保管管理には十分注意する。また、散布や調製のため保管庫等から農薬を持ち出した際には、子供や作業に関係のない者が誤って手にすることのないよう、農薬から目を放さず、作業終了後は速やかに保管庫等に戻す。
イ 農薬やその希釈液、残渣等をペットボトルやガラス瓶などの飲食品の空容器等へ移し替えしない。
ウ 農薬やその希釈液、残渣等をペットボトルやガラス瓶などの飲食品の空容器等に誤って移し替えてしまうことのないよう、これらの空容器等は保管庫等の近くに置かない。
エ 万が一、容器の破損等により他の容器に移し替えざるを得ない場合には、飲食品の容器は使用せず、内容物が農薬であることを明記した上で使用するなど、農薬の誤飲を防止するための適切な対応を講じる。
オ 農薬は計画的に購入・使用し、使い切るよう努める。
カ 不要になった農薬や空容器、空袋は、関係法令を遵守し、廃棄物処理業者に処理を依頼する等により適正に処理する。
5 その他農薬使用者のための一般的注意事項
ア 農薬ラベルの記載をよく読み、記載されている希釈倍数等の使用基準やマスク等防護装備等に関する注意事項を遵守する。
イ 散布作業後は、手足だけでなく、全身を石けんでよく洗うとともに、洗眼し、衣服を取り替える。
ウ 農薬の散布によってめまいや頭痛が生じ、又は気分が少しでも悪くなった場合には、医師の診断を受ける。
エ 初めて使用する農薬などで、使用に関し不明な点がある場合は、病害虫防除所等に相談する。
【周囲の農作物、家畜等への被害】
(1) 被害の状況
① 周辺に飛散した除草剤により農作物が変色・枯死したもの(ア~オ)
② 農薬散布を行った地域やその周辺に置かれた巣箱で蜜蜂のへい死が発生したもの(カ~ケ)
③ 本来、害虫駆除の目的で使用する農薬を、作物を害する野生生物の駆除目的で食品に塗布して畑に置いていたため、散歩中のペットが誤食したことによるもの(コ)
④ 不要になった農薬を河川に投棄したため、魚がへい死したもの(サ)
(2) 防止対策
ア 飛散が少ないと考えられる剤型(粒剤、微粒剤等)を選択する。
イ 飛散低減ノズルを使用する。
ウ ほ場の外側から内側に向かって散布するなど、ノズルの向きに注意する。
エ 適正な散布圧力、散布量で散布を行う。
オ 薬剤が周囲のほ場に飛散しないよう、風速や風向きに注意する。
カ 蜜蜂に被害を及ぼさないよう、耕種農家は、巣箱の位置や設置時期に関する情報の提供を受けて、事前に農薬使用の情報提供を行い、巣箱の退避や巣門を閉じる等の対策が講じられるよう促す。
キ 使用する農薬のラベルに、「被害防止方法」、「農薬の使用上の注意事項」及び「使用時期」として記載されている事項等を遵守する。
ク 水稲農家は養蜂家と協力し、地域の実態に応じて、蜜蜂の活動が盛んな時間帯(午前8時~12時)における農薬の散布を避ける、蜜蜂が暴露しにくい形態(粒剤の田面散布)の殺虫剤を使用するなどの対策を実施する。
ケ 養蜂が行われている地区では、蜜蜂の巣箱及びその周辺に飛散しないよう注意する。
コ 本来の目的や使用方法以外で農薬を使用しない。
サ 不要になった農薬やその希釈液等は、河川や水路等に投棄せず、適正に処分する。
別記2
農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策
1 適用のない作物への使用、飛散等
(1) 原因
① 使用する農薬の適用のない作物に当該農薬と同一の有効成分を含む他の農薬が使用できるため、当該農薬についても、当該作物に使用できると誤解したもの(ア)
② 使用する農薬の適用のない作物と名前や形状の類似した適用農作物があるため、当該適用のない作物にも当該農薬が使用できると誤解したもの(イ)
③ 防除器具の洗浄が不十分であったため、別の農作物に使用した農薬が混入し、適用のない作物から当該農薬が検出されることとなったもの(ウ)
④ 別の農作物の育苗箱に使用した農薬がこぼれた土壌で当該農薬の適用のない作物を栽培したため、当該適用のない作物から当該農薬が検出されることになったもの(エ)
⑤ 農薬を散布したほ場の近隣のほ場で栽培していた別の農作物から飛散により付着した農薬が検出されたもの(オ~ケ)
⑥ 複数の農作物を混植していたため、散布対象以外の農作物にも農薬が散布されたもの(コ)
⑦ 最終有効年月を過ぎた農薬を使用した結果、農薬購入時から使用するまでの間に使用基準及び残留農薬基準値が変更されていたため、残留農薬基準値を超過して農薬成分が検出されることとなったもの(サ)
(2) 防止対策
ア 農薬は製剤ごとに使用できる農作物が異なるため、農薬の使用前にラベルを確認する。
イ 名前や形状の類似した農作物に使用できる農薬であっても、対象とする農作物に使用できるとは限らないため、農薬の使用前にラベルの適用農作物名を確認する。
ウ 農薬の使用前後に防除器具を点検し、十分に洗浄されているか確認する。
エ 育苗箱に農薬を使用する際は、あらかじめその下にビニールシートを敷いておくなど、農薬が周囲にこぼれ落ちないように注意する。
オ 飛散が少ないと考えられる剤型(粒剤、微粒剤等)を選択する。
カ 飛散低減ノズルを使用する。
キ ほ場の外側から内側に向かって散布するなど、ノズルの向きに注意する。
ク 適正な散布圧力、散布量で散布を行う。
ケ 農薬が周囲のほ場に飛散しないよう、風速や風向きに注意する。
コ 混植園における農薬の使用に当たっては、散布対象以外の農作物にも農薬が飛散することを考慮して、混植している全ての作物に使用できる農薬を選択する。
サ 最終有効年月を過ぎた農薬を使用しない。
2 使用時期、回数、希釈倍数等の誤り
(1) 原因
① 使用する農薬に対する慣れによる使用時期及び使用回数等使用基準の確認不足によるもの(ア)
② 農薬の効果不足に対する不安のため、規定された希釈倍数より濃い濃度で使用したことによるもの(イ)
③ 農薬を使用してから農作物を収穫するまでの日数が長く設定されている農薬について、その使用からの経過日数の確認不足によるもの(ウ、エ)
④ 同一の有効成分を含む複数の農薬の使用によるもの(オ)
(2) 防止対策
ア 日頃から使用している農薬であっても、農薬の使用前にラベルをその都度確認する。
イ 農薬の使用量や希釈倍数は、効果が確認された使用方法が定められていることを認識し、農薬の使用前にラベルにより必ず確認する。
ウ 使用時期と農作物の収穫予定日までの日数が確保されるか、農薬の使用前にラベルを逐一確認する。また、同じ農作物であっても早生や晩生など収穫時期が異なる品種を混植している場合は、それぞれの収穫予定日を確認した上で農薬を使用する。
エ 農作物を収穫する前に、農薬の使用記録により農薬を使用してから農作物を収穫するまでの日数が農薬のラベルどおり確保されているかを確認する。
オ 同一の有効成分を含む農薬の使用には注意するとともに、使用記録簿には有効成分ごとの使用回数を記載し、農薬の使用前に使用記録簿とラベルにより使用回数を確認する。
3 環境への流出
(1) 原因
使用した農薬がほ場外に流出し、又は使用した残りの農薬、若しくは農薬が残っている容器が適切に処分されなかったことにより、周囲の水域の生活環境動植物に被害を与え、又は河川等に流出したもの(ア、イ)
(2) 防止対策
ア 水田において農薬を使用するときは、止水に関する注意事項を遵守し、止水期間中の農薬の流出を防止するために水管理や畦畔整備等の必要な措置を講じることにより、水田周辺の養魚池における淡水魚又は沿岸養殖魚介類の被害、河川、水道水源等の汚染の防止等環境の保全に万全を期する。
イ 不要になった農薬や空容器、空袋は、関係法令を遵守し、廃棄物処理業者に処理を依頼する等により適正に処理する。
別記3
毒劇物たる農薬の適正販売強化対策
1 毒劇物たる農薬の悪用等の不適切な使用等の要因
(1) 当該農薬の譲受人である農家等が、毒物及び劇物取締法の知識が不足している場合もあるため、毒劇物を安易に他人に譲渡してしまうことが考えられる。
(2) 購入後の保管管理が適正に行われておらず、農薬以外の用途で用いられること、譲受人以外が容易に持ち出してしまうことが考えられる。
(3) 当該農薬をペットボトルや水筒等の通常飲食に使用する容器に移し替えてしまい、誤飲・誤食事故を起こしてしまうことが考えられる。
2 毒劇物たる農薬の適正販売強化対策
(1) 特に、毒物劇物営業者以外の者に対して毒劇物たる農薬の販売をするに当たっては、販売業の登録を受けることなく毒劇物を販売し、又は授与することは毒物及び劇物取締法で禁止されていることを譲受人に伝える。
(2) 毒劇物の廃棄に当たっては、関係法令に従った廃棄を行う必要があることを譲受人に伝える。
(3) 毒劇物たる農薬は、毒劇物の指定がない農薬とは別の場所に保管し、施錠をするなど適正な保管管理が行われるよう譲受人に伝える。
(4) 毒劇物たる農薬を、飲食物の容器として通常使用される物に移し替えることは、毒物及び劇物取締法で禁止されていることを譲受人に伝える。
(5) 毒物及び劇物取締法第14条(毒物又は劇物の譲渡手続)及び第15条(毒物又は劇物の交付の制限等)の規定を遵守するとともに、身分証明書等により譲受人の身元及び使用量が適切なものであるかについて、十分確認を行う。
(6) 譲受人の言動等から安全かつ適正な取扱いに不安があると認められる者には交付しない。