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○割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて

(令和6年4月5日)

(基発0405第6号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

[10年保存]

標記については、規制改革実施計画(令和5年6月16日閣議決定)において、「厚生労働省は、在宅勤務をする労働者に使用者から支給される、いわゆる在宅勤務手当について、割増賃金の算定基礎から除外することができる場合を明確化するため、在宅勤務手当のうちどのようなものであれば、合理的・客観的に計算された実費を弁償するもの等として、割増賃金の算定基礎から除外することが可能であるかについて検討し、必要な措置を講ずる。」とされたところである。

今般、当該閣議決定に基づき、いわゆる在宅勤務手当が実費弁償と整理され、割増賃金の基礎となる賃金への算入を要しない場合の取扱いを下記のとおり示すので、了知されたい。

なお、各企業において、いわゆる在宅勤務手当を下記2及び3に照らして実費弁償と整理する上では、下記4のとおり、労働者に支払われる割増賃金額が減少することとなり、労働条件の不利益変更に当たると考えられるため、法令等で定められた手続等を遵守し、労使間で事前に十分な話合い等を行うことが必要であることに留意するべきであることを、念のため申し添える。

1 割増賃金の基礎となる賃金

労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第37条第5項及び労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「則」という。)第21条により、割増賃金の基礎となる賃金に算入しない賃金は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金及び一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金とされている。

在宅勤務をする労働者に使用者から支給されるいわゆる在宅勤務手当については、労働基準関係法令上の定めはなく、企業においては様々な実態がみられるが、一般的には法第37条第5項及び則第21条に規定する賃金に該当しないと考えられるため、当該手当が法第11条に規定する賃金に該当する場合には、割増賃金の基礎となる賃金に算入されることとなること。

一方、各企業において支給される在宅勤務手当が、以下の2及び3に照らして、事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、当該在宅勤務手当については法第11条に規定する賃金に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金への算入は要しないこと。

2 実費弁償の考え方

在宅勤務手当が、事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理されるためには、当該在宅勤務手当は、労働者が実際に負担した費用のうち業務のために使用した金額を特定し、当該金額を精算するものであることが外形上明らかである必要があること。

このため、就業規則等で実費弁償分の計算方法が明示される必要があり、かつ、当該計算方法は在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法である必要があること。

このことから、例えば、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が従業員に対して毎月5,000円を渡切りで支給するもの)等は、実費弁償に該当せず、賃金に該当し、割増賃金の基礎に算入すべきものとなること。

3 実費弁償の計算方法

在宅勤務手当のうち、実費弁償に当たり得るものとしては、事務用品等の購入費用、通信費(電話料金、インターネット接続に係る通信料)、電気料金、レンタルオフィスの利用料金などが考えられるところ、これらが事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理されるために必要な「在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法」としては、以下の方法などが考えられること。

(1) 別添の国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(以下「国税庁FAQ」という。)で示されている計算方法

(2) (1)の一部を簡略化した計算方法

通信費(電話料金、インターネット接続に係る通信料)及び電気料金については、在宅勤務手当の支給対象となる労働者ごとに、手当の支給月からみて直近の過去複数月の各料金の金額及び当該複数月の暦日数並びに在宅勤務をした日数を用いて、業務のために使用した1か月当たりの各料金の額を(1)の例により計算する方法。この場合は、在宅勤務手当の金額を毎月改定する必要はなく、当該金額を実費弁償として一定期間継続して支給することが考えられる。なお、「直近の過去複数月」については、例えば、3か月程度とすることが考えられる。また、「一定期間」については、最大で1年程度とし、「一定期間」経過後に改めて同様の計算方法で在宅勤務手当の金額を改定することが考えられるが、電気料金等は季節による変動も想定されることから、労働者が実際に負担した費用と乖離が生じないよう適切な時期に改定することが望ましい。

ただし、この取扱いは、当該在宅勤務手当があくまで実費弁償として支給されることを前提とするものであることから、2の考え方に照らし、常態として当該在宅勤務手当の額が実費の額を上回っているような場合には、当該上回った額については、賃金として割増賃金の基礎に算入すべきものとなることに留意すること。

(3) 実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法

在宅勤務手当を実費の一部を補足するものとして支給することは、それが実費の額を上回らない限りにおいて、実費弁償になると考えられる。このため、実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定めた上で、当該単価に在宅勤務をした日数を乗じた額を在宅勤務手当として支給することは、実費弁償に該当するものとして差し支えない。

「実費の額を上回らないよう1日当たりの単価をあらかじめ合理的・客観的に定め」る方法として、通信費及び電気料金については、例えば、次のアからウまでの手順で定める方法が考えられる。

ア 当該企業の一定数の労働者について、国税庁FAQ問6から問8までの例により、1か月当たりの「業務のために使用した基本使用料や通信料等」「業務のために使用した基本料金や電気使用料」をそれぞれ計算する。

イ アの計算により得られた額を、当該労働者が当該1か月間に在宅勤務をした日数で除し、1日当たりの単価を計算する。

ウ 一定数の労働者についてそれぞれ得られた1日当たりの単価のうち、最も額が低いものを、当該企業における在宅勤務手当の1日当たりの単価として定める。

なお、アの「一定数」については、当該単価を合理的・客観的に定めたと説明できる程度の人数を確保することが望ましい。また、例えば、「一定数の労働者」を当該単価の額が高くなるよう恣意的に選んだ上で当該単価を定めることは、当該単価を合理的・客観的に定めるものとは認められず、当該単価を基に支給された在宅勤務手当も、実費弁償には該当しないこと。

4 その他

既に割増賃金の基礎に算入している在宅勤務手当(実費弁償に該当するもの)を2及び3に照らして割増賃金の基礎に算入しないこととする場合、労働者に支払われる割増賃金額が減少することとなり、労働条件の不利益変更に当たると考えられるため、法令等で定められた手続等を遵守し、労使間で事前に十分な話合い等を行うことが必要であることに留意すること。

別添

[在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)]

令和3年1月

(令和3年5月31日更新)

国税庁

(注) この質疑事例は、令和3年4月1日現在の法令等に基づいて作成しています。

《目次》

1 在宅勤務手当

〔問1〕 企業が従業員に在宅勤務手当を支給した場合は、従業員の給与として課税する必要はありますか。

2 在宅勤務に係る事務用品等の支給

〔問2〕 在宅勤務を開始するに当たって、企業が従業員に事務用品等(パソコン等)を支給した場合は、従業員の給与として課税する必要はありますか。

3 在宅勤務に係る環境整備に関する物品の支給〔令和3年5月31日追加〕

〔問3〕 在宅勤務を開始するに当たって、企業が従業員に環境整備に関する物品等(従業員の自宅に設置する間仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機等)を支給した場合は、従業員の給与として課税する必要はありますか。

4 在宅勤務に係る消耗品等の購入費用の支給〔令和3年5月31日追加〕

〔問4〕 当社では、在宅勤務の際に、従業員が負担した消耗品等(マスク、石鹸、消毒液、消毒用ペーパー、手袋等)の購入費用を従業員に支給する予定ですが、このような費用の支給については、従業員の給与として課税する必要はありますか。

5 業務使用部分の精算方法

〔問5〕 在宅勤務に通常必要な費用を精算する方法による場合は、従業員に対する給与として課税する必要がないとのことですが、その方法とはどのようなものですか。

6 通信費に係る業務使用部分の計算方法

〔問6〕 従業員が負担した通信費について、在宅勤務に要した部分を支給する場合、業務のために使用した部分はどのように計算すればよいですか。

7 通信費の業務使用部分の計算例

〔問7〕 企業が、従業員に対して、次のとおり従業員本人が所有するスマートフォンに係る料金4,800円(令和2年9月分)を支給し、上記【問6】により業務使用部分の計算をすることとした場合の課税関係について教えてください。

8 電気料金に係る業務使用部分の計算方法

〔問8〕 従業員が負担した電気料金について、在宅勤務に要した部分を支給する場合、業務のために使用した部分はどのように計算すればよいですか。

9 レンタルオフィス

〔問9〕 当社では、自宅に在宅勤務をするスペースがない従業員に対して、自宅近くのレンタルオフィス等で在宅勤務をすることを認めています。このレンタルオフィス代等を従業員が立替払いし、そのレンタルオフィス代等に係る領収証等の提出を受けてその代金の精算をした場合、その精算をした金額について従業員に対する給与として課税する必要はありますか。

10 新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる場合のホテルの利用料等〔令和3年5月31日追加〕

〔問10〕 当社では、新型コロナウイルス感染症に関する感染予防対策として、感染が疑われる従業員に対して、ホテル等で勤務をすることを認めています。この場合、従業員が負担したホテル等の利用料やホテル等までの交通費等を従業員に支給する予定ですが、このような費用の支給については、従業員に対する給与として課税する必要はありますか。

11 室内消毒の外部への委託費用やPCR検査費用等〔令和3年5月31日追加〕

〔問11〕 当社では、新型コロナウイルス感染症に関する感染予防対策として、従業員が負担した在宅勤務を行う自宅のスペースの消毒に係る外部業者への委託費用やPCR検査費用等を従業員に支給する予定ですが、この費用の支給については、従業員に対する給与として課税する必要はありますか。

12 在宅勤務者に対する食券の支給①(食券以外の食事の支給がない場合)〔令和3年4月30日追加〕

〔問12〕 当社では、在宅勤務で業務を行う従業員の昼食の補助として、一定の条件を付した食券を従業員に支給したいと考えていますが、この食券の支給に関して、従業員の給与として課税する必要はありますか。

13 在宅勤務者に対する食券の支給②(食券以外の食事の支給がある場合)〔令和3年4月30日追加〕

〔問13〕 当社では、在宅勤務を導入することとし、従業員に対して、その在宅勤務の際の昼食に利用するため、一定の条件を付した食券を支給するとともに、出勤した際には、業者から購入した弁当を支給することを考えています。この食券及び弁当の支給に関して、従業員の給与として課税する必要はありますか。

1 在宅勤務手当

〔問1〕 企業が従業員に在宅勤務手当を支給した場合は、従業員の給与として課税する必要はありますか。

〔答〕

在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません(【問5】参照)。

なお、企業が従業員に在宅勤務手当(従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が従業員に対して毎月5,000円を渡切りで支給するもの))を支給した場合は、従業員に対する給与として課税する必要があります。

2 在宅勤務に係る事務用品等の支給

〔問2〕 在宅勤務を開始するに当たって、企業が従業員に事務用品等(パソコン等)を支給した場合は、従業員の給与として課税する必要はありますか。

〔答〕

企業が所有する事務用品等を従業員に貸与する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありませんが、企業が従業員に事務用品等を支給した場合(事務用品等の所有権が従業員に移転する場合)には、従業員に対する現物給与として課税する必要があります(従業員が立替払いにより事務用品等を購入する場合は、【問5】①参照)。

上記の「貸与」については、例えば、企業が従業員に専ら業務に使用する目的で事務用品等を「支給」という形で配付し、その配付を受けた事務用品等を従業員が自由に処分できず、業務に使用しなくなったときは返却を要する場合も、「貸与」とみて差し支えありません。

3 在宅勤務に係る環境整備に関する物品の支給〔令和3年5月31日追加〕

〔問3〕 在宅勤務を開始するに当たって、企業が従業員に環境整備に関する物品等(従業員の自宅に設置する間仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機等)を支給した場合は、従業員の給与として課税する必要はありますか。

〔答〕

従業員の在宅勤務の環境整備のために企業が所有する物品等を従業員に貸与する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありませんが、企業が従業員に環境整備に係る物品等を支給した場合(その物品等の所有権が従業員に移転する場合)には、従業員に対する現物給与として課税する必要があります(従業員が立替払いにより物品等を購入する場合は、【問5】①参照)。

上記の「貸与」については、例えば、企業が従業員に専ら業務に使用する目的で物品等を「支給」という形で配付し、その配付を受けた物品等を従業員が自由に処分できず、業務に使用しなくなったときは返却を要する場合も、「貸与」とみて差し支えありません。

4 在宅勤務に係る消耗品等の購入費用の支給〔令和3年5月31日追加〕

〔問4〕 当社では、在宅勤務の際に、従業員が負担した消耗品等(マスク、石鹸、消毒液、消毒用ペーパー、手袋等)の購入費用を従業員に支給する予定ですが、このような費用の支給については、従業員の給与として課税する必要はありますか。

〔答〕

在宅勤務のために通常必要な費用(例えば、勤務時に使用する通常必要なマスク等の消耗品費)について、その費用を精算する方法(【問5】①参照)により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません(企業がマスク等を直接配付する場合も同様です。)。

ただし、在宅勤務のために通常必要な費用以外の費用(例えば、勤務とは関係なく使用するマスク等の消耗品費)について支給するものや、従業員の家族など従業員以外の者を対象に支給するもの、予め支給した金銭について業務のために通常必要な費用として使用しなかった場合でもその金銭を企業に返還する必要がないものは、従業員に対する給与として課税する必要があります。

5 業務使用部分の精算方法

〔問5〕 在宅勤務に通常必要な費用を精算する方法による場合は、従業員に対する給与として課税する必要がないとのことですが、その方法とはどのようなものですか。

〔答〕

在宅勤務手当としてではなく、企業が在宅勤務に通常必要な費用を精算する方法により従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません。

この方法としては、次の方法が考えられます。

① 従業員へ貸与する事務用品や環境整備に関する物品等の購入(注1)

イ 企業が従業員に対して、在宅勤務に通常必要な費用として金銭を仮払いした後、従業員が業務のために使用する事務用品や環境整備に関する物品等を購入し、その領収証等を企業に提出してその購入費用を精算(仮払金額が購入費用を超過する場合には、その超過部分を企業に返還(注2))する方法

ロ 従業員が業務のために使用する事務用品や環境整備に関する物品等を立替払いにより購入した後、その購入に係る領収証等を企業に提出してその購入費用を精算(購入費用を企業から受領)する方法

② 通信費・電気料金

イ 企業が従業員に対して、在宅勤務に通常必要な費用として金銭を仮払いした後、従業員が家事部分を含めて負担した通信費や電気料金について、業務のために使用した部分を合理的に計算し(【問6】、【問7】及び【問8】参照)、その計算した金額を企業に報告してその精算をする(仮払金額が業務に使用した部分の金額を超過する場合、その超過部分を企業に返還する(注2))方法

ロ 従業員が家事部分を含めて負担した通信費や電気料金について、業務のために使用した部分を合理的に計算し(【問6】、【問7】及び【問8】参照)、その計算した金額を企業に報告してその精算をする(業務のために使用した部分の金額を受領する)方法

(注)

1 ①の事務用品や環境整備に関する物品等については、企業がその所有権を有し従業員に貸与するものを前提としています。事務用品や環境整備に関する物品等を従業員に貸与するのではなく支給する場合(事務用品や環境整備に関する物品等の所有権が従業員に移転する場合)には、従業員に対する現物給与として課税する必要があります(【問2】参照)。

2 企業が従業員に支給した金銭のうち、購入費用や業務に使用した部分の金額を超過した部分を従業員が企業に返還しなかったとしても、その購入費用や業務に使用した部分の金額については従業員に対する給与として課税する必要はありませんが、その超過部分は従業員に対する給与として課税する必要があります。

6 通信費に係る業務使用部分の計算方法

〔問6〕 従業員が負担した通信費について、在宅勤務に要した部分を支給する場合、業務のために使用した部分はどのように計算すればよいですか。

〔答〕

○ 電話料金

イ 通話料

通話料(下記ロの基本使用料を除きます。)については、通話明細書等により業務のための通話に係る料金が確認できますので、その金額を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はありません。

なお、業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員については、通話明細書等による業務のための通話に係る料金に代えて、例えば、次の【算式】により算出したものを、業務のための通話に係る料金として差し支えありません。

(注) 業務のための通話を頻繁に行う業務とは、例えば、営業担当や出張サポート担当など、顧客や取引先等と電話で連絡を取り合う機会が多い業務として企業が認めるものをいいます。

ロ 基本使用料

基本使用料などについては、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。

例えば、次の【算式】により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。

○ インターネット接続に係る通信料

基本使用料やデータ通信料などについては、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。

例えば、次の【算式】により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。

(注) 従業員本人が所有するスマートフォンの本体の購入代金や業務のために使用したと認められないオプション代等(本体の補償料や音楽・動画などのサブスクリプションの利用料等)を企業が負担した場合には、その負担した金額は従業員に対する給与として課税する必要があります。

【算式】

業務のために使用した基本使用料や通信料等=従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2

※ 上記算式の「1/2」については、1日の内、睡眠時間を除いた時間の全てにおいて均等に基本使用料や通信料が生じていると仮定し、次のとおり算出しています。

① 1日:24時間

② 平均睡眠時間:8時間(「平成28年社会生活基本調査」(総務省統計局)で示されている7時間40分を切上げ)

③ 法定労働時間:8時間

④ 1日の内、睡眠時間を除いた時間に占める労働時間の割合:③÷(①-②)=8時間/(24時間-8時間)=1/2

【例】

従業員が9月に在宅勤務を20日間行い、1か月に基本使用料や通信料1万円を負担した場合の業務のために使用した部分の計算方法。

10,000円×20日(在宅勤務日数)/30日(9月の日数)×1/2=3,334円(1円未満切上げ)

(注) 上記の算式によらずに、より精緻な方法で業務のために使用した基本使用料や通信料の金額を算出し、その金額を企業が従業員に支給している場合についても、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。

7 通信費の業務使用部分の計算例

〔問7〕 企業が、従業員に対して、次のとおり従業員本人が所有するスマートフォンに係る料金4,800円(令和2年9月分)を支給し、上記【問6】により業務使用部分の計算をすることとした場合の課税関係について教えてください。

・ 基本使用料:3,000円(3GBまで無料)

・ データ通信料:1,000円(3GB超過分)

・ 業務使用に係る通話料(通話明細書より):800円

・ 在宅勤務日数:15日

※ 上記金額は全て消費税等込みの価格。

〔答〕

ご質問の場合、次のとおり、基本使用料とデータ通信料のうち業務のために使用した部分の金額を除いた金額3,000円について、従業員に対する給与として課税する必要があります。

① 通話明細書より確認した業務使用に係る通話料(800円)については、課税する必要はありません。

② 基本使用料やデータ通信料については、次の算式により算出した金額(3,000円)を、従業員に対する給与として課税する必要があります。

業務のために使用した通信費=4,000円(従業員が負担した1か月の通信費)×15日/30日(その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月(9月)の日数)×1/2=1,000円(1円未満切上げ)

給与として課税すべき金額=4,000円-1,000円=3,000円

8 電気料金に係る業務使用部分の計算方法

〔問8〕 従業員が負担した電気料金について、在宅勤務に要した部分を支給する場合、業務のために使用した部分はどのように計算すればよいですか。

〔答〕

基本料金や電気使用料については、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。

例えば、次の【算式】により算出したものを従業員に支給した場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。

【算式】

業務のために使用した基本料金や電気使用料=従業員が負担した1か月の基本料金や電気使用料×業務のために使用した部屋の床面積/自宅の床面積×その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2

※ 上記算式の「1/2」については、【問6】参照。

(注) 上記の算式によらずに、より精緻な方法で業務のために使用した基本料金や電気使用料の金額を算出し、その金額を企業が従業員に支給している場合についても、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えありません。

9 レンタルオフィス

〔問9〕 当社では、自宅に在宅勤務をするスペースがない従業員に対して、自宅近くのレンタルオフィス等で在宅勤務をすることを認めています。このレンタルオフィス代等を従業員が立替払いし、そのレンタルオフィス代等に係る領収証等の提出を受けてその代金の精算をした場合、その精算をした金額について従業員に対する給与として課税する必要はありますか。

〔答〕

従業員が、勤務時間内に自宅近くのレンタルオフィス等を利用して在宅勤務を行った場合、①従業員が在宅勤務に通常必要な費用としてレンタルオフィス代等を立替払いし、かつ、②業務のために利用したものとして領収書等を企業に提出してその代金が精算されているものについては、従業員に対する給与として課税する必要はありません(企業が従業員に金銭を仮払いし、従業員がレンタルオフィス代等に係る領収証等を企業に提出し精算した場合も同じです。)。

10 新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる場合のホテルの利用料等〔令和3年5月31日追加〕

〔問10〕 当社では、新型コロナウイルス感染症に関する感染予防対策として、感染が疑われる従業員に対して、ホテル等で勤務をすることを認めています。この場合、従業員が負担したホテル等の利用料やホテル等までの交通費等を従業員に支給する予定ですが、このような費用の支給については、従業員に対する給与として課税する必要はありますか。

〔答〕

ご質問のように、職場以外の場所で勤務することを企業が認めている場合のその勤務に係る通常必要な利用料、交通費など業務のために通常必要な費用について、その費用を精算する方法(【問5】①参照)又は企業の旅費規程等に基づいて、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません(企業がホテル等に利用料等を直接支払う場合も同様です。)。

ただし、業務のために通常必要な費用以外の費用について支給するもの(例えば、従業員が自己の判断によりホテル等に宿泊した場合の利用料など)や、予め支給した金銭について業務のために通常必要な費用として使用しなかった場合でもその金銭を企業に返還する必要がないものは、従業員に対する給与として課税する必要があります。

11 室内消毒の外部への委託費用やPCR検査費用等〔令和3年5月31日追加〕

〔問11〕 当社では、新型コロナウイルス感染症に関する感染予防対策として、従業員が負担した在宅勤務を行う自宅のスペースの消毒に係る外部業者への委託費用やPCR検査費用等を従業員に支給する予定ですが、この費用の支給については、従業員に対する給与として課税する必要はありますか。

〔答〕

ご質問のように、在宅勤務に関連して業務スペースを消毒する必要がある場合の費用や企業の業務命令により受けたPCR検査費用など業務のために通常必要な費用について、その費用を精算する方法(【問5】①参照)により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません(企業が委託先等に費用を直接支払う場合も同様です。)。

ただし、従業員が自己の判断により支出した消毒費用やPCR検査費用など業務のために通常必要な費用以外の費用や、予め支給した金銭について業務のために通常必要な費用として使用しなかった場合でもその金銭を企業に返還する必要がないものは、従業員に対する給与として課税する必要があります。

12 在宅勤務者に対する食券の支給①(食券以外の食事の支給がない場合)〔令和3年4月30日追加〕

〔問12〕 当社では、在宅勤務で業務を行う従業員の昼食の補助として、次の条件の下、従業員に食券(電子的なものを含みます。)を支給したいと考えています。

この食券の支給に関して、従業員の給与として課税する必要はありますか。

なお、当社では、この食券の支給以外に、従業員に対して食事を支給することはありません。

① 毎月7,560円分の食券を従業員に交付するが、その際、従業員はその半額の3,780円を当社に支払う。

② 食券の利用は、従業員が在宅勤務を行う日において、当社が契約した特定の飲食店での飲食又は飲食料品の購入(持帰り)でのみ利用可能(勤務日以外の利用や、アルコール類、飲食料品以外のものへの利用は不可)とする。

③ 食券の利用は、当社の従業員本人の食事代のみについて利用可能であり、従業員の親族等に係る食事代への利用は不可とする。また、食券を他人へ譲渡することを禁止する。

④ 食券の利用は、1回2,500円までとする。また、実際に要した食事代金が、食券の額面に満たない場合であっても、釣銭を受け取ることはできない。

⑤ 毎月交付された食券の未使用分については、翌月以降に繰り越して使用することができる。また、食券の利用可能期間は、交付日から1年とする。

〔答〕

企業が従業員に食事の支給(注1)をする場合に、その従業員から実際に徴収している対価の額がその食事の価額の50%相当額以上であり、かつ、企業の負担額(食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額)が月額3,500円(消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)の額を除きます。)を超えないときは、その従業員が食事の支給により受ける経済的利益はないものと取り扱うこととしています(所得税基本通達36―38の2)。

ご質問の場合、従業員からその食券の額面金額7,560円の50%相当額を徴収しており、消費税等の額を除いた企業の負担額は月額3,500円を超えていない(注2)ため、上記の要件を満たしています。

また、②から⑤までの条件が満たされれば、その食券の支給は食事そのものを支給した場合と同視することができるものと考えられます(注3)

このため、ご質問の食券の支給については、従業員に対する給与として課税する必要はありません。

(注)

1 「食事の支給」とは、企業が従業員に対して、契約業者から購入した弁当を提供することや、社員食堂で食事を提供すること等をいいます。

一方、「食費の補助」(現金支給)については、給与とみなされ、所得税の課税対象となります。

2 食券の利用に係る「消費税等の額を除いた企業の負担額」の計算においては、軽減税率(8%)の適用があったときの食券の利用と、標準税率(10%)の適用があったときの食券の利用とに区分して計算する必要があります。

ご質問のケースにおいては、食券の利用に当たって、次のように全て軽減税率(8%)が適用されると仮定した場合、消費税等の額を除いた企業の負担額は3,500円となるため、標準税率(10%)の適用があったとしても、その負担額は3,500円よりも少ない金額が算出されることになります。

(7,560円《食券の額面金額》-3,780円《従業員の支払額》)×100/108=3,500円

3 上記の所得税基本通達36―38の2の取扱いは、日々の昼食等に対する補助を目的とするものであるため、食券の未使用分を繰り越して、一度に多額の食事をするためにその食券を利用する場合には、同取扱いの趣旨に反するものと考えられます。

このため、④の条件のように、1回の食券の利用について、一般的な昼食等としての相当額の範囲を逸脱しない限度額を設定することや、⑤の条件のように、食券の利用可能期間を設定することが、同取扱いの趣旨に合うものと考えられます。

13 在宅勤務者に対する食券の支給②(食券以外の食事の支給がある場合)〔令和3年4月30日追加〕

〔問13〕 当社では、在宅勤務を導入することとし、従業員に対する昼食の補助として、従業員が在宅勤務を行う日には、上記【問12】の②から⑤までの条件を満たす食券(電子的なものを含みます。)をその従業員に支給することとし、その従業員が出勤する日には、契約業者から購入する弁当をその従業員に支給することとしました。

また、従業員に対して、食券及び弁当を支給した場合には、従業員は、それぞれの価額の半額を当社に支払うこととします。

例えば、ある月において、一の従業員に対して、次のとおり食券及び弁当を支給した場合、従業員に対する給与として課税する必要はありますか。






食券・弁当の価額

従業員の支払額


食券(在宅勤務日)

5,000円

2,500円

弁当(出勤日)

2,500円

1,250円


〔答〕

企業が従業員に食事の支給(注1)をする場合に、その従業員から実際に徴収している対価の額がその食事の価額の50%相当額以上であり、かつ、企業の負担額(食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額)が月額3,500円(消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)の額を除きます。)を超えないときは、その従業員が食事の支給により受ける経済的利益はないものと取り扱うこととしています(所得税基本通達36―38の2)。

ご質問の場合、従業員からは、食券の額面金額及び弁当の価額の50%相当額以上を徴収しており、また、消費税等の額を除いた企業の負担額は月額3,500円を超えていない(注2)ため、上記の要件を満たしています。

また、【問12】の②から⑤までの条件が満たされれば、その食券の支給は食事そのものを支給した場合と同視することができるものと考えられます(注3)

このため、ご質問の食券及び弁当の支給については、従業員に対する給与として課税する必要はありません。

なお、消費税等の額を除いた企業の負担額が月額3,500円を超えた場合には、その月中に支給した食券及び弁当に係る企業の負担額の全額について、従業員に対する給与として課税する必要があります。

(注)

1 「食事の支給」とは、企業が従業員に対して、契約業者から購入した弁当を提供することや、社員食堂で食事を提供すること等をいいます。

一方、「食費の補助」(現金支給)については、給与とみなされ、所得税の課税対象となります。

2 食券の利用に係る「消費税等の額を除いた企業の負担額」の計算においては、軽減税率(8%)の適用があったときの食券の利用と、標準税率(10%)の適用があったときの食券の利用とに区分して計算する必要があります。

ご質問のケースにおいては、食券の利用に当たって、次のように全て軽減税率(8%)が適用されると仮定した場合、消費税等の額を除いた企業の負担額は3,470円となるため、標準税率(10%)の適用があったとしても、その負担額は3,500円よりも少ない金額が算出されることになります。

イ 食券に係る企業の負担額(消費税等の額を除いた金額の計算)

(5,000円《食券の金額》-2,500円《従業員の支払額》)×100/108=2,314.814…円

ロ 弁当に係る企業の負担額(消費税等の額を除いた金額の計算)

(2,500円《弁当の価額》-1,250円《従業員の支払額》)×100/108=1,157.407…円

ハ 企業の負担額(イ+ロ)

2,314.814…円+1,157.407…円=3,472.222…円

→3,470円(10円未満の端数切捨て)

3 上記の所得税基本通達36―38の2の取扱いは、日々の昼食等に対する補助を目的とするものであるため、食券の未使用分を繰り越して、一度に多額の食事をするためにその食券を利用する場合には、同取扱いの趣旨に反するものと考えられます。

このため、【問12】の④の条件のように、1回の食券の利用について、一般的な昼食等としての相当額の範囲を逸脱しない限度額を設定することや、【問12】の⑤の条件のように、食券の利用可能期間を設定することが、同取扱いの趣旨に合うものと考えられます。