アクセシビリティ閲覧支援ツール

○「生活保護費国庫負担金の精算に係る適正な返還金等の債権管理について」の一部改正について(通知)

(令和6年3月29日)

(社援保発0329第4号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長通知)

(公印省略)

今般、「生活保護費国庫負担金の精算に係る適正な返還金等の債権管理について」(平成22年10月6日社援保発1006第1号当職通知)の一部を別紙の新旧対照表のとおり改正するので、ご了知の上、保護の実施に遺漏のないよう御配慮願います。

別添

画像2 (98KB)別ウィンドウが開きます

画像3 (94KB)別ウィンドウが開きます

画像4 (121KB)別ウィンドウが開きます

画像5 (53KB)別ウィンドウが開きます

画像6 (36KB)別ウィンドウが開きます

○生活保護費国庫負担金の精算に係る適正な返還金等の債権管理について

(平成22年10月6日)

(社援保発1006第1号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長通知)

標記については、「生活保護費国庫負担金の適正な精算について」(平成17年9月29日社援保発第0929001号当職通知)及び「現業員等による生活保護費の詐取等の不正防止等について」(平成21年3月9日社援保発第0309001号当職通知)により、適正な返還金等の調定額の計上について周知するとともに、調定後の債権管理については、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下同じ。)等を遵守し適正な処理を行い、生活保護費国庫負担金の適正な精算について周知しているところである。

今般、会計検査院の平成26年度決算検査報告において、一部の実施機関において債権管理体制が不十分であったとの指摘がなされており、返還金等の債権の管理及び返還金等に係る負担金の算定が適切に行われるよう、是正改善措置が求められたところである。

生活保護費はその全額が公費で賄われているものであり、その返還金等の債権に係る不納欠損額は国庫負担の算定対象となっていることから、返還金等の債権を適正に管理し、その回収に努め生活保護費等国庫負担金の適切な精算を行うことは、制度の公平性を確保し、生活保護行政を適正に運営するうえで極めて重要である。

特に、返還金等の債権について、督促や納付指導等の適切な債権管理を行うことなく、時効の完成を以て不納欠損とすることは認められず、国庫負担金の精算対象外となることに加え、事業実績報告書に事実と異なる記載をしていた場合は返還を求めることとなるため、各実施機関においては十分に留意のうえ、条例・規則等に即した債権管理体制を整備すること。

ついては、下記事項に留意のうえ、生活保護行政の適正な運営に資するよう、貴管内実施機関に周知徹底願いたい。

なお、本通知の施行に伴い、「生活保護費国庫負担金の適正な精算について」(平成17年9月29日社援保発第0929001号当職通知)は廃止する。

1 国庫負担金の精算について

(1) 生活保護費については、「生活保護費等の国庫負担について」(平成26年3月24日厚生労働省発社援0324第2号事務次官通知。以下「交付要綱」という。)で示されているとおり、平成26年度より、生活保護費等国庫負担金を生活扶助費等国庫負担金、医療扶助費等国庫負担金、介護扶助費等国庫負担金(以下「各負担金」という。)に分割し予算計上している。そのため、交付決定や交付額の確定等についても各負担金別に行う必要があることから、各自治体においては、下記(2)から(5)における国庫負担金の精算事務も各負担金別に適切に行うこと。

(2) 生活保護費等国庫負担金の精算は、生活保護法施行令(昭和25年政令第148号。以下「施行令」という。)第10条及び交付要綱において、厚生労働大臣の定める基準に従って市町村又は都道府県が生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第70条又は法第71条の規定により支弁した費用の額から、法第63条の規定による返還金、法第76条の2の規定により支払を受けた損害賠償金及び法第77条又は法第78条の規定による徴収金並びに生活保護のためのその他の収入(以下「返還金等」という。)の額を控除した額に4分の3を乗じて得た額を国庫負担金の交付額とすることとしていることに留意し、適切な処理を行うこと。

なお、返還金等の額は、地方自治法第231条の規定により返還金等として調定した額から、返還金等について同法第236条の規定により消滅した債権の額及び同法第240条の規定により徴収停止又は免除した債権の額を控除した額とすること。

(3) 返還金等に不納欠損として計上した債権については、適切に納入の指導や時効の更新措置等を行った結果やむを得ない事由により不納欠損の処理が行われたものかなど、適切な処理を経ているか十分に確認するとともに、適切な債権管理等が行われていたかを確認するため、平成27年度以降の事業実績報告書の提出にあたっては、別添の不納欠損調書を提出すること。また、各都道府県・指定都市本庁においては、各実施機関の生活保護費等国庫負担金の精算が適切に行われているか等、事業実績報告書及び不納欠損調書の審査、確認を十分行うこと。

なお、当該不納欠損にかかる挙証資料等については、少なくとも確定後5年間は保存すること。

(4) 法第78条第1項から第3項までの規定に基づく加算金については、交付要綱により、国の負担及び補助の算出に当たって、各年度において支弁等した費用から控除しないこととしているところであり、貴管内実施機関に対して改めて周知すること。

(5) 法第76条の2の規定に基づく損害賠償に係る取扱いについては、「生活保護制度における第三者行為求償事務について」(平成26年4月18日社援発第354号厚生労働省社会・援護局長通知)において示されているところであり、第三者行為を原因とする負傷等に対する医療扶助等がなされた場合は、これに係る費用を把握し、過失割合等を考慮したうえで損害賠償請求額を決定するとともに、加害者又は損害保険会社等に対し速やかに通知すること。

また、損害賠償請求額が確定した際は速やかに納入処理を行うとともに、加害者等が全額を一括で返還できない場合は、本通知2―(4)及び(5)に基づき必要な処理を行うこと。

2 返還金等の債権管理について

生活保護に係る返還金等については、各負担金別に適切に債権を管理すること。また、法第78条の2により徴収した保護金品は、すみやかに当該債権への納入処理を行うとともに、債権管理台帳等に記載すること。

各実施機関においては、返還金等の債権管理等について、下記の(1)から(5)までの事項及び各自治体の債権管理条例等を踏まえた要綱・マニュアル等を整備するとともに、当該規定等に基づき返還金等の債権の特徴に応じた適時適切な債権管理を行うこと。

都道府県・指定都市本庁においては、要綱・マニュアル等を整備することなどによる債権管理体制の整備について各実施機関に指導・助言するほか、施行事務監査での確認及び事業実績報告書の審査を十分に行い、納入指導や時効の更新措置等の必要な手続きを行わずに時効(5年)の完成により不納欠損として返還金等に計上されることで、結果として国庫負担金が過大に交付されることのないよう留意すること。

(1) 保護担当と経理担当との事務の分離等について

返還金等の債権管理においては、被保護者等の生活状況を把握している保護担当と返還金等の収納を行っている経理担当との連携が不可欠であるが、連携に当たり納入指導を行う保護担当と現金出納を行う経理担当の事務の分離に努めること。

なお、返還金等の詐取等の未然(再発)防止のための相互牽制等の内部統制を十分機能させる体制を確立するとともに、所長等幹部職員は、当該機能が十分発揮されているか定期的に確認するなど組織的に対応を行うこと。

(2) 現金出納について

返還金等の現金は、出納事務の発令を受けた者以外の者は取り扱うことはできないが、現業員が返還金等を被保護者から預かり詐取した事案が発生しており、経理担当との事務の分離が重要であることから、原則として自治体の収納機関に収納させ、現業員等が返還金等を預かることを禁止すること。

また、福祉事務所の金庫に返還金等を不適切に保管していたことにより詐取されたという事案もあったことを踏まえ、返還金等は速やかに自治体の収納機関に収納することとし、福祉事務所の金庫に返還金等を保管しないこと。

(3) 債権管理台帳等の整備について

返還金等を確実に回収するためには、債権についての記録及び管理が重要である。債権管理台帳等、各債権の時効や実施した措置等を一覧性のある台帳等で記録・保存し、原則、経理担当において債権管理の進行状況を常に管理できるよう必要な体制を整備すること。

なお、保護廃止後、文書保存年限を経過したことによりケース記録票等を廃棄する際、債権管理に必要な全ての書類等を債権管理台帳等に移管及び転記したうえで廃棄するよう留意すること。

(4) 調定について

債権が発生した場合は、原則として債権額の全額を速やかに調定(一括調定)することが基本であるが、明らかに全額を一括で返還できない場合は、一括調定後に地方自治法施行令(昭和22年政令第16号。以下同じ。)の規定に基づき「履行延期の特約」を行うことより、分割して調定することができる。この場合、分割調定についても債権管理台帳等に翌年度以降の調定分も含めた債権全額について適正に記録・管理すること。また、法第78条の2に基づき、被保護者からの申し出があり、かつ保護の実施機関が当該被保護者の生活の維持に支障がないと認めたときは、保護金品を交付する際に当該申出に係る徴収金を徴収することができるので、併せて検討すること。

(5) 督促等について

① 債権の履行延期の特約を行った場合には、その旨を各負担金別に債権管理台帳等に記録し、地方自治法施行令に則り適正に管理すること。なお、普通地方公共団体の長は、債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期の特約又は処分をした債権について、当初の履行期限(当初の履行期限後に履行延期の特約又は処分をした場合は、最初に履行延期の特約又は処分をした日)から10年を経過した後において、なお、債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができる見込みがないと認められるときは、地方自治法施行令に基づき当該債権等を免除することができる。ただしこれは、催告や定期的な納付指導等の適時適切な債権管理を行うことを前提とした取扱いである点に留意されたい。

② 債権の履行期限までに履行しない債務者に対しては、地方自治法施行令に則り期限を指定して督促すること。督促しても納付されない場合は、訪問や福祉事務所への呼び出し等を行い債務を履行するよう催告を行うとともに、定期的な納付指導等を併せて行い、その経過を債権管理台帳等に記録すること。

③ 資力があるにもかかわらず、督促をした後、相当の期間を経過してもなお履行されない場合は、訴訟手続による履行請求を検討すること。

④ 法に基づく返還金等の債権に係る時効は5年とされているので、督促状の送付、一部納付の実施等による債務の承認など時効の更新に必要な措置を適切に行うこと。特に、1つの債権について複数の各負担金から返還する場合、当該各負担金にかかる債権ごとに時効の更新の措置を行う等、適切な管理を行うこと。

※ 被保護者に対する費用返還及び費用徴収の決定に当たっては、「生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて(平成24年7月23日社援保発0723第1号当職通知)に十分留意すること。

⑤ 時効の更新手続については、被保護者だけでなく、被保護者であった債務者や債務者が死亡した場合の相続人及び法定受遺者に対しても実施すること。

債務者が死亡した際には、すみやかに法定相続人及び法定受遺者の存否や居住地等について調査を行うとともに、死亡した債務者の債務内容及び金額等をあらかじめ伝えたうえですみやかに相続の意思を確認すること。なお、遺留金品が存在していた場合は、併せてその金額等を伝えること。

相続人が債務を承認する場合は、当該相続人から債務確認書を徴したうえで納付の通知を行い、債権管理台帳等に記載すること。

債務者の居住地が不明となった場合は、すみやかに住民基本台帳の情報等をもとに調査を行い、督促や納付指導等を行うこと。なお、管外への転出が判明した場合は必要に応じて転出先の自治体へ照会し、居住地等を確認したうえで督促や納付指導等を行うこと。

上記調査及び時効の更新の措置等を講じた場合は、債権管理台帳等に必ず記載し、適切に管理すること。必要な措置を行わないまま時効となり、結果として不納欠損とすることは適切な処理とは認められないことから、このような事例における不納欠損の場合には、国庫負担金精算の対象外となるので留意されたい。

(参考)

債権管理の流れ(標準的な例)

(注1) 「法」は地方自治法、「令」は地方自治法施行令を指す。

(注2) 「※」は履行延期の特約後に資力が発生した場合の流れ。

〔参考資料〕平成18年3月2日「生活保護関係全国係長会議資料」より抜粋

(国庫負担金の清算方法について)

① 生活保護負担金の計算式

[(自治体の支出した保護費-返還金等の額(※))×3/4=国庫負担額]

(※) 返還金等の額=調定額(注1)-不納欠損額(注2)

(注1) 「調定額」とは、地方自治法第231条に定める手続きを行った額。

(注2) 「不納欠損額」とは地方自治法第236条の規定により消滅した債権及び同法第240条の規定により徴収停止又は免除した債権の額。

② 債権が発生した場合は速やかに、債権額の全額を調定することが基本である。

しかし、明らかに全額を一括で返還できない場合は、地方自治法施行令第171条の6の規定に基づき、「履行延期の特約」を行うことにより、分割して調定することができることとなっている。この場合は、国庫負担金の清算にあたっては、その年度に調定した額のみを計上することとなる。

(例) 100万円の債権を一括で返還することが不可能な場合

毎月1万円返還することとする処理(履行延期の特約)

毎月、1万円を調定

1万円×12月=12万円

国庫負担金の清算ではこの12万円を調定額として計上

※ 残りの88万円については、翌年度以降も同様に処理されていくこととなる。

※ 毎月の返還額・期間については、債務者と自治体との話し合いで決められるものである。

③ 「履行延期の特約」の処理をせずに債権の全額を調定しないことは、国庫負担金を過大に請求することとなり、国庫への返還対象となるので留意されたい。

④ やむを得ない事由により調定額が収納できない場合には、収納できない額を「不納欠損額」として調定額から控除することとしている。

ただし、この取扱いは地方自治法に基づき自治体において適切に納入指導や時効中断等の債権管理が行われていることを前提としており、必要な措置を行わず時効(5年間)となり、結果として不納欠損とすることは適切な事務処理とは認められないことから、このような事例の場合には、国庫への返還対象となるので留意されたい。

⑤ 国庫負担金の清算が適切に行われているか確認を行うのに必要であるため、生活保護費負担金の事業実績報告の提出に合わせて別添の様式を提出されたい。

[様式ダウンロード]

画像9 (29KB)別ウィンドウが開きます