添付一覧
○食品、添加物等の規格基準に定められた食品に残留する農薬等の試験法における留意事項について
(平成29年11月24日)
(薬生食基発1124第1号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課長通知)
(公印省略)
食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成29年厚生労働省告示第340号)が本日公布されたことから、試験を実施するに際しての留意事項を別添のとおり通知します。
(別添)
試験実施に際しての留意事項
1.2,4,5―T試験法
(1) 分析対象化合物
2,4,5―T
(2) 分析対象食品
農産物及び畜水産物
(3) 留意事項
1) 試験法の概要
2,4,5―Tを試料から塩酸酸性下アセトンで抽出し、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:1)の混液に転溶する。脂質等が多い試料についてはアセトニトリル/ヘキサン分配で脱脂する。加水分解した後、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム及びグラファイトカーボン/エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラムで精製した後、液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)で定量及び確認する方法である。
2) 注意点
① 2,4,5―Tには、分析操作中に2,4,5―Tに変換される化合物(2,4,5―Tブチル及び2,4,5―Tイソオクチル等)が含まれる。
② 2,4,5―Tは塩基性で水溶性となるため、抽出及び転溶時には酸性に保つ必要性がある。
③ 夾雑成分の影響でLC―MS/MSで感度上昇あるいは感度下降が見られる時は、測定条件の濃度勾配の時間を適宜変更するなどして測定すること。
④ 2,4,5―TのLC―MS/MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。
定量イオン(m/z):プリカーサーイオン253、プロダクトイオン195
定性イオン(m/z):プリカーサーイオン255、プロダクトイオン197
⑤ 試験法開発時に検討した食品
農産物:玄米、大豆、らっかせい、ほうれんそう、キャベツ、ばれいしょ、オレンジ、りんご、茶及びコーヒー豆
畜水産物:牛の筋肉、牛の脂肪、牛の肝臓、鶏の筋肉、鶏卵、牛乳、はちみつ、うなぎ、さけ、しじみ及びはちみつ
⑥ 検体から試験に用いる試料を採取するに当たっては、別に規定する場合を除き、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号医薬食品局食品安全部長通知)の第1章総則の4.試料採取に従うこととする。
2.ダミノジッド試験法
(1) 分析対象化合物
ダミノジッド
1,1―ジメチルヒドラジン
(2) 分析対象食品
農産物及び畜水産物
(3) 留意事項
1) 試験法の概要
ダミノジッド及び1,1―ジメチルヒドラジンを試料から水で抽出し、ダミノジッドを塩基性下で加水分解して1,1―ジメチルヒドラジンに変換した後、水蒸気蒸留により1,1―ジメチルヒドラジンを捕集する。次いでo―ニトロベンズアルデヒドで誘導体化してo―ニトロジメチルヒドラゾンに変換した後、n―ヘキサンに転溶する。アルミナ(塩基性)ミニカラムで精製した後、高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC―NPD)(又はアルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC―FTD))で定量し、ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC―MS)で確認する方法である。なお、1,1―ジメチルヒドラジンの含量に換算係数を乗じてダミノジッドの含量に変換し分析値とする。ダミノジッドの分析値には、ダミノジッド及び1,1―ジメチルヒドラジンが含まれる。
2) 注意点
① ダミノジッドそのものの微量定量は困難であるため、1,1―ジメチルヒドラジンに加水分解した後、さらにo―ニトロジメチルヒドラゾンに変換して測定している。
② 畜水産物では、農産物に比べ脂肪分が非常に多いため、抽出時にn―ヘキサンを加えて脂肪分の除去を行う。
③ 水で定容した抽出液は放置により沈殿が生じるため、抽出後は速やかに分取し、蒸留を行うことが望ましい。
④ 抽出液をろ過する際に目詰まりが生じ、ろ過速度が極めて遅くなることがあるため、ろ過器上にガラス繊維ろ紙とろ過補助剤としてケイソウ土を敷いて吸引ろ過を行う。
⑤ 水蒸気蒸留時、留出液のpHが高くなると1,1―ジメチルヒドラジンの捕集効率が低下するため、留出液に加えたフェノールフタレインの発色には十分に注意する。
⑥ 1,1―ジメチルヒドラジンは揮発しやすいため、標準品の秤量は迅速に行う必要がある。
⑦ 試験法開発時に検討した食品
農産物:玄米、大豆、ばれいしょ、ほうれんそう、キャベツ、りんご、オレンジ、コーヒー豆、茶及びホップ
畜水産物:牛の筋肉、牛の脂肪、牛の肝臓、牛乳、鶏卵、さけ、うなぎ、えび、しじみ及びはちみつ
⑧ 検体から試験に用いる試料を採取するに当たっては、別に規定する場合を除き、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号医薬食品局食品安全部長通知)の第1章総則の4.試料採取に従うこととする。
3.マラカイトグリーン試験法
(1) 分析対象化合物
マラカイトグリーン
ロイコマラカイトグリーン
(2) 分析対象食品
畜水産物
(3) 留意事項
1) 試験法の概要
マラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーンをジブチルヒドロキシトルエン・エタノール溶液及びクエン酸溶液を加えて磨砕均一化した試料からアセトンで抽出する。スルホン酸塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラム及び4級アンモニウム塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラムで精製し、液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)で定量及び確認する方法である。
2) 注意点
① ロイコマラカイトグリーンは分析操作中に回収率の低下が起こるため、分析操作は速やかに行う。
② 吸引ろ過の際にろ過助剤としてケイソウ土を用いるとロイコマラカイトグリーンの回収率が低下することがあるため、ろ過助剤は使用せず、ガラス繊維ろ紙を用いて吸引ろ過する。
③ スルホン酸塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラムからのマラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーンの溶出は、ロットによって最適な条件が異なる場合があるため、ロットごとに溶出調査を事前に行い、十分な回収が得られることを確認してから使用する。
④ スルホン酸塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラム精製の際に、流速が速いと負荷及び洗浄の際にロイコマラカイトグリーンが流出することがあるため、流速に留意する。
⑤ マラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーンのLC―MS/MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。
マラカイトグリーン
定量イオン(m/z):プリカーサーイオン329、プロダクトイオン313
定性イオン(m/z):プリカーサーイオン329、プロダクトイオン165
ロイコマラカイトグリーン
定量イオン(m/z):プリカーサーイオン331、プロダクトイオン239
定性イオン(m/z):プリカーサーイオン331、プロダクトイオン316
⑥ 試験法開発時に検討した食品:牛の筋肉、牛の脂肪、牛の肝臓、牛乳、鶏の筋肉、鶏卵、はちみつ、うなぎ、しじみ及びしめさば
⑦ 検体から試験に用いる試料を採取するに当たっては、別に規定する場合を除き、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号医薬食品局食品安全部長通知)の第1章総則の4.試料採取に従うこととする。