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○GMP調査結果報告書情報を用いた情報収集・蓄積・分析・共有等事業実施要領の策定について
(令和6年3月29日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課通知)
令和3年の後発医薬品製造業者への行政処分以降、医薬品製造業者等による、承認書と異なる製造・試験方法の実施といったGMPに係る不正事案については、様々な観点から対策を講じてきたところですが、依然として不正事案の発生が続いております。このような状況を受け、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」や「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」において、薬事監視の更なる強化が議論されたところです。
今般、薬事監視の更なる強化を図るため、「GMP調査要領の制定について」(令和6年3月29日付け医薬監麻発0329第9号厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長通知。以下「本通知」という。)を発出したところですが、本通知の第4の2.10に関して、別紙のとおり「GMP調査結果報告書情報を用いた情報収集・蓄積・分析・共有等事業実施要領」を策定しましたので、国と都道府県の薬事監視の速やかな情報共有を含めた連携体制の整備にご協力願います。
別紙
GMP調査結果報告書情報を用いた情報収集・蓄積・分析・共有等事業実施要領
1.事業の目的及び概要
・ 令和3年の後発医薬品製造業者への行政処分以降、医薬品製造業者等による、承認書と異なる製造・試験方法の実施といったGMPに係る不正事案については、様々な観点から対策を講じてきたところであるが、令和6年時点においても依然として不正事案の発生が続いている。このような状況を受け、厚生労働省の会議体である「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」においては、「国と都道府県の薬事監視の速やかな情報共有を含めた連携体制の整備を行い、薬事監視の質的な向上を図る必要」について指摘があり、具体的には「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」において、「PMDAにおいて、全国のGMP調査において判明した不備事項を収集・蓄積・共有・分析等を行う体制の検討・構築を行う」ことが議論されたところである。
・ 本事業においては、当該有識者検討会の議論を踏まえ、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課(以下「監麻課」という。)が国と都道府県の薬事監視の速やかな情報共有を含めた連携体制を整備することを目的とする。
・ そのため、厚生労働省は都道府県のGMP調査結果報告書情報を収集するとともに、独立行政法人医薬品医療機器総合機構医薬品品質管理部(以下「PMDA」という。)に対し、PMDAのGMP調査結果報告書情報も含め、GMP調査結果報告書情報の蓄積・分析を依頼し、その成果物を都道府県及びPMDA(以下「調査当局」という。)が活用・共有できる体制を構築することで、日本における薬事監視体制の強化を図る。
2.事業の対象となるGMP調査結果報告書
・ 本要領の対象となるGMP調査結果報告書の範囲は、以下のア~エの全てに該当するものとする。
ア 調査対象製造所が保有する業許可区分が、医薬品一般区分若しくは医薬品無菌区分又はその両方であり、当該区分に係る製造工程を対象とした調査であること。
イ 調査対象品目に医療用医薬品(医療用医薬品に用いる原薬も含む。)が含まれる調査であること。
ウ 適合性調査(実地)又は立入検査であること。
エ 調査結果報告書の決裁日が令和6年4月1日以降であること。
3.役割分担
(1) 監麻課
・ 本事業の事業主体として、本事業が円滑に行われるよう必要な調整を行う。
・ 都道府県からGMP調査結果報告書の写しを受領し、当該報告書の写しをPMDAに提供する。PMDAに対し、PMDAのGMP調査結果報告書情報も含め、GMP調査結果報告書情報の蓄積・分析を依頼するとともに、PMDAが実施する作業を監督する。
・ PMDAへの分析の依頼にあたっては、当該分析に基づく成果物が調査当局によるGMP調査に資するものであるか事前に検討する。
・ PMDAが作成した成果物を受領し都道府県と共有するとともに、これを活用しGMP調査業務に係る企画立案を行う。
(2) PMDA
・ 監麻課からの依頼に基づき、都道府県のGMP調査結果報告書の写しを受領し、PMDAのGMP調査結果報告書情報も含め、GMP調査結果報告書情報の蓄積・分析を行い、成果物を作成する。
・ GMP調査業務の実施や調査員の査察能力の維持・向上等に当たり、監麻課から共有された成果物を活用する。
・ 都道府県調査員の支援等に当たり、成果物を活用する。
(3) 都道府県
・ 監麻課に対し、GMP調査結果報告書の写しを提出する。
・ GMP調査業務の実施や調査員の査察能力の維持・向上等に当たり、監麻課から共有された成果物を活用する。
4.分析項目及び成果物の活用方針
・ GMP調査結果報告書情報の分析にあたっては、単に全調査当局の指摘事項を俯瞰するのみならず、各製造所における基本情報も踏まえ情報整理した上での検討が必要となる。本事業においては、収集されたGMP調査結果報告書中の以下の情報を用い、総合的な観点で分析を行う。
・ なお、GMP調査結果報告書情報の分析は、【成果物とその活用方針例】に記載のとおり、今後の薬事監視行政の検討のため、GMP調査における制度上又は運用上の課題の抽出やその課題に対する対応策等を検討するために実施するものであり、個々の調査員の査察能力の適否の判断には使用しない。そのため、成果物には、調査員を特定できる情報は含めず、また、特段の必要性が認められない限り、製造所を特定できる情報も含めない。
【分析項目】
● 調査実施日(調査に要した時間を含む。)
● 調査対象製造所の名称
● 調査対象製造所の所在地
● 調査対象製造所に係る製造業者等の【許可・登録・認定】の区分、番号及び年月日
● 調査対象製造所で実施している活動
● 調査の範囲
● 調査内容
● 指摘事項及び改善状況
● 総合判定
【成果物とその活用方針例】
● GMP調査における制度上又は運用上の課題(調査当局間差、国際水準からの相違等)の抽出及び対応策の検討
● 重要な指摘事項(調査当局間で対応に差異が見られる事例、新たに判明した事例又は共有すべき好事例など調査当局間での議論・調整・共有が必要な指摘事項等)及びその背景情報の抽出結果並びに調査当局への共有
● GMP調査の経時的な動向把握(過去年度の分析結果との比較等)
● GMP調査業務に係る企画立案のための基礎資料
5.実施手順
①GMP調査結果報告書の写しの提出時期
・ 都道府県は、監麻課に対し、GMP調査結果報告書の決裁日の翌月15日(決裁日よりもGMP調査結果報告書の内容確定日が遅い場合は、内容確定日の翌月15日)までにGMP調査結果報告書の写しを提出することとする。
・ 都道府県は、提出したGMP調査結果報告書の写しのうち修正又は変更があった場合には、監麻課に対して速やかに修正又は変更を報告することとする。
②GMP調査結果報告書の写しの提出方法
・ 都道府県は、医薬品・医療機器申請審査システム(Pegasus)を介して監麻課宛てに電子媒体(word形式)で提出することとする。
・ Pegasusを介した提出が困難な事由がある場合、電子メールに添付での提出も差し支えないが、各都道府県のセキュリティ管理に則った対応とすること。
・ なお、GMP調査結果報告書上の個人情報については、6.に記載のとおり、監麻課及びPMDAの情報セキュリティポリシーに則り管理・対応するが、都道府県の判断により当該部を黒塗り等の処理を施した上で提出することでも差し支えない。
③GMP調査結果報告書情報の収集・蓄積・分析等
・ 監麻課は、都道府県から受領したGMP調査結果報告書の写しについて、PMDAに提供し、PMDAに対して、PMDAのGMP調査結果報告書情報も含め、GMP調査結果報告書情報の蓄積・分析を依頼する。
・ PMDAは監麻課と協議の上、GMP調査結果報告書情報の蓄積・分析を行う。
・ PMDAは、少なくとも年度毎に、4.の成果物を作成する。作成した成果物は速やかに監麻課へ提出する。
・ 監麻課は、都道府県から受領したGMP調査結果報告書の写しについて、本事業の実施に当たり確認が必要と認めた場合には、都道府県に対して必要な情報の提供を求めることができる。
④成果物の共有
・ 監麻課は、PMDAから受領した成果物の内容を確認し、GMP調査当局会議等を通じて都道府県と共有する。
・ 都道府県は、共有された成果物の内容に疑義がある場合は、監麻課に対して意見を述べることができる。
⑤データの保管
・ PMDAは、GMP調査結果報告書の写しを受領した翌年度末に、成果物を除き、中間生成物は含めて、受領したGMP調査結果報告書の写し及びそれに由来する、媒体等に保存されたデータの消去を行う。その上で、PMDAは監麻課に対しデータ消去の報告を行う。
・ 監麻課は、PMDAからデータ消去の報告を受けた場合は、内容の確認を行う。
6.その他
・ 本実施要領については、今後必要に応じ、関係者間での協議を経た上で、見直しを検討するものとする。特に成果物については、GMP調査結果報告書情報の分析を積み重ね、さらなるGMP調査の質の向上に向けて、継続的に見直しを検討する。
・ 監麻課は、都道府県から受領したGMP調査結果報告書の写しを取り扱うに当たり、以下のセキュリティ対策を実施する。また、監麻課は、PMDAにGMP調査結果報告書の写しを提供し蓄積・分析を依頼するにあたり、PMDAに対して以下のセキュリティ対策を実施させる。なお、各セキュリティ文書は最新版に従うこととし、また、ここに記載された文書以外であっても、その時点において必要となるセキュリティ対策がある場合はこれを講じる。
監麻課:「厚生労働省情報セキュリティポリシー」及び当該ポリシーに基づく運用手順書によるセキュリティ対策。
PMDA:「独立行政法人医薬品医療機器総合機構サイバーセキュリティポリシー」及び当該ポリシーに基づく各種運用手順書によるセキュリティ対策。さらに、「厚生労働省情報セキュリティポリシー」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参照し、政府機関等の統一的・横断的な情報セキュリティ対策と同等以上のセキュリティ条件を確保する。