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○「食品用器具及び容器包装の製造に用いる合成樹脂の原材料としてのリサイクル材料の使用に関する指針」について

(令和6年3月28日)

(/健生食基発0328第7号/健生食監発0328第7号/)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康・生活衛生局食品基準審査課長、厚生労働省健康・生活衛生局食品監視安全課長通知)

(公印省略)

食品用器具・容器包装における製造管理に関する事項(食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号。以下「施行規則」という。)第66条の5関係)の運用については、「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政省令の制定について」(令和元年11月7日付け生食発1107第1号厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知。以下「令和元年11月7日通知」という。)により通知しており、「「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政省令の制定について」及び「食品衛生法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政省令の制定について」の一部改正について」(令和6年3月28日付け健生発第0328第21号厚生労働省健康・生活衛生局長通知)により改正したところです。

今般、合成樹脂に対してポジティブリスト制度が導入されたことを踏まえ、施行規則第66条の5第2項に規定する食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な再生プラスチック材料に関するリスク管理として参考にされたい内容について、令和6年3月12日薬事・食品衛生審議会器具・容器包装部会で議論し、「食品用器具及び容器包装の製造に用いる合成樹脂の原材料としてのリサイクル材料の使用に関する指針」が別紙のとおりとりまとめられました。別紙について御了知いただくとともに、貴管内関係者への周知方よろしくお願いします。

参考:令和6年3月12日薬事・食品衛生審議会器具・容器包装部会

(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38147.html)

別紙

食品用器具及び容器包装の製造に用いる合成樹脂の原材料としてのリサイクル材料の使用に関する指針

第1 総則

1.目的

本指針は、食品用器具及び容器包装の原材料として『リサイクル材料』を使用する際の、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第18条第3項に基づく規格(ポジティブリスト)への適合及び第52条第1項に基づく食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)第66条の5第2項(適正製造管理基準)に規定する食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な管理の水準に関する要件を定め、これをもって製造された食品用器具及び容器包装の安全性の確保を図ることを目的とする。

2.用語の定義

本指針で用いられる用語を以下のように定義する。

【リサイクル材料】JIS Q14021

製造工程において『回収材料』から再加工され、更に最終製品、又は製品へ組み込まれる部品に使用される材料。

【回収材料】JIS Q14021

廃棄物として処分されるはずの材料、又はエネルギー回収の目的に供されるはずの材料ではあるが、代わってリサイクル又は製造工程のために、新規の原料(『一次原材料』)に替わる原料として収集及び回収される材料。

【一次原材料】JIS Z0130―4

最終用途製品の形に一度も加工されたことのない材料。

【物理的再生処理された重合体】

食品衛生法第18条第3項における政令で定める材質(合成樹脂)の原材料(基材)に該当する重合体の内、「食品、添加物等の規格基準別表第1第1表に規定する基材を構成するモノマー等について」(令和5年11月30日付け健生食基発1130第1号厚生労働省健康・生活衛生局食品基準審査課長通知)において「任意の化学処理」として「物理的再生処理」が規定された重合体が該当する。なお、本指針では、『リサイクル材料』のうち、『ポストコンシューマ材料』を『回収材料』として『物理的再生処理』により得られた重合体を指し、『プレコンシューマ材料』を『回収材料』とした重合体は含まれない。

【物理的再生処理】

『ポストコンシューマ材料』を『回収材料』とし、『リサイクル材料』の製造に適さない製品や異物を除去したのち、粉砕してフレークとする。水、温水、洗浄剤、アルカリ水などにより洗浄を繰り返し、その間に比重の差により異なる材質やゴミを取り除く、風乾時に軽い異物を吹き飛ばすなどの不純物除去を行う。主に物理的、機械的な処理による再生法であるが、上記工程に加えて、高温・減圧下等で一定時間処理し、残存している不純物の除去、ポリマーの重合度の向上等を施す場合もある。

【化学的再生処理】

『回収材料』を加熱、化学反応等により原料物質(モノマー)等に分解し、得られた分解物を蒸留、結晶化などにより精製後、これを再び重合してポリマーにする方法。

【リユース】JIS Z0108

一旦使用された製品を回収し、必要に応じ適切な処置を施しつつ製品として再使用を図る、又は再使用可能な部品の使用を図る行為。

【ポストコンシューマ材料】JIS Q14021

家庭から排出される材料、又は製品のエンドユーザとしての商業施設、工業施設及び各種施設から本来の目的のためにはもはや使用できなくなった製品として発生する材料。これには、流通経路から戻される材料を含む。

【プレコンシューマ材料】JIS Q14021

製造工程における廃棄物の流れから取り出された材料。その発生と同一の工程で再使用できる加工不適合品、研磨不適合品、スクラップなどの再利用を除く。

【汚染物質】

『回収材料』に混入する異物(食品残渣、意図しない材料、意図しない製品等)、保管時又は再生処理工程で使用された薬剤等に由来し、『リサイクル材料』に残存することを意図しない物質。

3.適用範囲

本指針は、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第3 器具及び容器包装 A 器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格における別表第1(以下「別表第1」という。)第1表に掲げる物質として、『リサイクル材料』を食品用器具又は容器包装の原材料(合成樹脂の基材)として使用する場合に適用する。本指針において、『リユース』に供される製品は、『回収材料』に該当しないため、『リユース』に供される製品、並びにこれに含まれる重合体は、本指針の適用範囲外とする。

第2 食品用器具又は容器包装の原材料として適切な『リサイクル材料』の要件

食品衛生法第18条第3項の規定により、政令で定める材質の原材料に含まれる物質は、規格が設定された物質(別表第1に掲げられた物質)に限定される。そのため、合成樹脂の原材料として使用する『リサイクル材料』は、第18条第3項の規定に基づく規格(ポジティブリスト)に適合していなければならない。さらに、食品衛生法第52条第1項に基づく食品衛生法施行規則第66条の5第2項(適正製造管理基準)の規定により、食品用器具又は容器包装を製造する事業者は、その原材料が食品用途の製品の原材料として適切なものであることを確認する必要があり、『リサイクル材料』を原材料として使用する場合にも同様である。

1.『化学的再生処理』により製造された『リサイクル材料』

『化学的再生処理』は、『回収材料』を原料物質(モノマー)等に分解し、これを再び重合する処理であるため、『回収材料』中の『汚染物質』が十分に除去されることが保証される場合においては、『化学的再生処理』により製造された『リサイクル材料』は、『一次原材料』として取り扱う。ただし、『化学的再生処理』により製造された『リサイクル材料』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、『リサイクル材料』の製造者に対して、『リサイクル材料』がポジティブリストに適合する物質であること、食品用途の製品の原材料として適切なものであることを確認しなければならない。

2.『物理的再生処理』により『プレコンシューマ材料』から製造された『リサイクル材料』

『プレコンシューマ材料』(『リサイクル材料』または『リサイクル材料』を原材料とした製品の製造工程から取り出された材料を除く。)は、一度も使用されていない製品であることから、使用済み製品に該当せず、その由来や含有されている物質が明確であること、『汚染物質』が混入する可能性が極めて低く品質が良好であることから、ポジティブリストに適合する『プレコンシューマ材料』から得られた『リサイクル材料』は、『一次原材料』として取り扱う。ただし、『プレコンシューマ材料』から製造された『リサイクル材料』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、『リサイクル材料』の製造者に対して、『リサイクル材料』がポジティブリストに適合するものであること、食品用途の製品の原材料として適切なものであることを確認しなければならない。

3.『物理的再生処理』により『ポストコンシューマ材料』から製造された『リサイクル材料』

『ポストコンシューマ材料』(食品用途の製品の原材料として用いることが不適切な材料*1を除く。)から製造された『リサイクル材料』は、『物理的再生処理された重合体』として取り扱う。『ポストコンシューマ材料』は、製品が販売又は使用されてから、回収されるまでの期間中は衛生管理されていないこと、回収方法により品質が異なることから、予期せぬ汚染物質が混入する可能性を否定することはできない。そのため、『物理的再生処理された重合体』を原材料として使用して食品用器具又は容器包装を製造する事業者は、その原材料が食品用途の製品の原材料として適切なものであることを確認しなければならない。すなわち、『物理的再生処理された重合体』を用いて製造した器具又は容器包装から『汚染物質』が食品へ移行して人の健康に影響を与えることがないよう、以下の点について適切な管理水準を設定し、これを満たすことを確認しなければならない。(別添参照)

1) 『物理的再生処理された重合体』の製造に使用される『回収材料』の品質と選別

2) 『物理的再生処理された重合体』の製造に使用される処理工程と『汚染物質』の除去能

3) 『物理的再生処理された重合体』を用いて製造する器具又は容器包装の仕様及び用途

4) 『物理的再生処理された重合体』を用いて製造された器具又は容器包装の食品衛生法への適合

注:本指針作成時点において、合成樹脂の原材料として使用が認められている『物理的再生処理された重合体』は、「構成成分に対してスチレンが50%以上の重合体(ポリスチレン)」、「テレフタル酸とエチレングリコールの合計が構成成分に対して50mol%以上の重合体(ポリエチレンテレフタレート)」のみである。

1) 『物理的再生処理された重合体』の製造に使用される『回収材料』の品質と選別

食品衛生法第18条第3項の規定により、政令で定める材質の原材料に含まれる物質は、食品、添加物等の規格基準において規格が設定された物質(別表第1に掲げられた物質)に限定される。食品用途以外の製品には、別表第1(ポジティブリスト)に掲げられていない物質や食品用途の製品に不適切な物質が混入している可能性がある。そのため、原材料として使用する『物理的再生処理された重合体』は、食品用途の使用済み製品を原材料として製造されたものに限定されなければならない。したがって、『物理的再生処理された重合体』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、『物理的再生処理された重合体』の製造者に対して、適切な品質の『回収材料』を用いていること、『回収材料』が適切な場所に保管されていること、『回収材料』に混入する『物理的再生処理された重合体』の製造に不適切な製品や異物等が十分に除去され、食品用途の使用済み製品のみが選別されていることを確認しなければならない。

『物理的再生処理された重合体』の製造に不適切な製品や異物の混入率が高い『回収材料』を用いる場合、『物理的再生処理された重合体』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、『物理的再生処理された重合体』の製造者に対して、これらの除去・選別が確実に実施されていることを確認するとともに、『物理的再生処理された重合体』の品質に十分注意を払わなければならない。

2) 『物理的再生処理された重合体』の製造に使用される処理工程と『汚染物質』の除去能

器具又は容器包装の製造に用いる原材料には、有害若しくは有毒な物質が含まれていてはならない。しかしながら、『物理的再生処理された重合体』に混入する『汚染物質』は、『回収材料』の品質や保管状態等により様々であるため特定が困難である。そのため、『回収材料』の処理工程は、広範の『汚染物質』に対して、十分な除去能を有するものでなければならない。したがって、『物理的再生処理された重合体』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、『物理的再生処理された重合体』の製造者に対して、『物理的再生処理された重合体』が適切な処理工程により製造されていること(衛生管理及び製造管理が適切に行われたものであることの確認を含む)、製造された『物理的再生処理された重合体』が食品用器具又は容器包装の原材料として適切なものであることを確認しなければならない。

3) 『物理的再生処理された重合体』を用いて製造する器具又は容器包装の仕様及び用途

『回収材料』に混入する可能性のある『汚染物質』は多岐にわたるため、それらの一部が『物理的再生処理された重合体』中に残存してしまう場合がある。このような場合、『物理的再生処理された重合体』を用いて製造された器具又は容器包装に含まれる『汚染物質』が食品へ移行して人の健康に影響を与えることがないよう製造する器具又は容器包装の仕様及び用途に配慮しなければならない。したがって、『物理的再生処理された重合体』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、『物理的再生処理された重合体』の製造者から、『物理的再生処理された重合体』の許容されない用途や使用条件等に関する情報の提供を受け、その情報を基に、『物理的再生処理された重合体』を用いて製造した器具又は容器包装から『汚染物質』が人の健康を損なうおそれのない量(0.01mg/kg)を超えて食品に移行しないことを確認しなければならない。

4) 『物理的再生処理された重合体』を用いて製造された器具又は容器包装の食品衛生法への適合

『物理的再生処理された重合体』を用いて製造された器具又は容器包装は、食品衛生法第18条に基づく規格基準に適合していなければならないことに加えて、同法第16条に定められた有毒な若しくは有害な物質が含まれ、若しくは、付着して人の健康を損なうおそれがある器具又は容器包装であってはならないことに留意しなければならない。

注:食品衛生法第18条第3項の規定において、『物理的再生処理された重合体』に含まれる『回収材料』(使用済み製品)に使用されていた添加剤は、最終製品に残存することを意図しない物質として取り扱う。そのため、『回収材料』(使用済み製品)に使用されていた添加剤が『物理的再生処理された重合体』に含まれていたとしても別表第1第2表の制限を受けない。

第3 その他

『リサイクル材料』を原材料として使用して食品用器具又は容器包装を製造する事業者は、以下の点についても留意しなければならない。

『リサイクル材料』に含まれる『汚染物質』により食品が汚染されないことを保証する上で、『リサイクル材料』を用いて製造された器具又は容器包装の使用対象食品や使用温度を規定することが必要な場合もある。そのため、『リサイクル材料』を用いて製造された器具又は容器包装の販売先に対して、製品が適切に使用されるよう、その使用条件等の情報を提供し、注意喚起等に努めなければならない。

『リサイクル材料』の品質は、その原料(『回収材料』)の品質や処理工程によって、大きく変化する可能性があるため、指針に示された内容以外においても、必要に応じて、適宜自主的な対策を組み合わせることにより、自らの製品の安全性を保証しなければならない。

資源循環の観点から、『リサイクル材料』を用いて製造する器具又は容器包装は、『回収材料』となりうる(分別回収、再商品化が実施可能な)製品であることが望ましい。食品用途の製品の原材料として用いることが不適切な材料は、『物理的再生処理』の『回収材料』として不適切であるため、これらが『回収材料』に混入しないよう、器具又は容器包装の設計及び製造に配慮することが望ましい。

――――――――――

*1: 例えば、法第18条第3項ただし書きに規定する加工がされている器具又は容器包装であり、食品に接触しない部分にポジティブリストへの適合が確認できていない部分を含む製品が挙げられる。

別添

『物理的再生処理された重合体』を使用して器具又は容器包装を製造する者が『物理的再生処理された重合体』の製造者に対して行うべき確認事項

『物理的再生処理された重合体』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、その製品の販売先及び使用者に対して、製造した器具又は容器包装が食品用途として適切なものであることを説明するとともに、当該製品を適切に使用するために必要な情報を提供しなければならない。そのため、以下の事項について、使用する『物理的再生処理された重合体』の管理水準等を定め、その水準等を満たすことを『物理的再生処理された重合体』の製造者に対して確認しなければならない。

また、『物理的再生処理された重合体』を販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者は、『物理的再生処理された重合体』を使用して器具又は容器包装を製造する者から確認を求められた場合には、食品用器具及び容器包装の安全性確保の観点から、必要な説明をするよう努めなければならない。

① 『物理的再生処理された重合体』の製造に使用される『回収材料』の品質と選別

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 『物理的再生処理された重合体』は、食品用途の使用済み合成樹脂製品から製造されたものであること。

・『回収材料』の品質(例:ランク、回収範囲、回収方法など)

画像2 (7KB)別ウィンドウが開きます
 『回収材料』が適切に管理されていること。

・『回収材料』の管理内容(例:基準と実施状況)

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 『回収材料』から不適切な製品や異物が十分に取り除かれていること。

・不適切な製品(着色された製品、食品残渣のある製品、汚れのひどい製品等)や異物(回収対象の範囲外の製品、ガラス、金属、アルミニウム、紙ラベル、梱包材等の混入物)の除去方法(例:手順、異物等の混入率)

・不適切な製品や異物の除去作業に対する管理(例:基準と実施状況)

② 『物理的再生処理された重合体』の製造に使用される処理工程と『汚染物質』の除去能

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 『回収材料』または処理工程等に由来する『汚染物質』の除去を目的とした適切な工程が組み込まれていること。

・『汚染物質』の除去方法(例:洗浄工程、使用している機器等)

・『汚染物質』の除去能(例:代理汚染試験の結果)(参考資料1)

画像5 (7KB)別ウィンドウが開きます
 処理工程が適切に管理されていること。

・製造作業に関する管理(例:基準と実施状況)

・その他、汚染物質を低減させるべく実施している方策等

③ 『物理的再生処理された重合体』の品質と許容される使用用途

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 『物理的再生処理された重合体』が食品用途の製品の原材料として適切なものであること。

・『物理的再生処理された重合体』の品質確認(例:定期的な試験の結果)

画像7 (7KB)別ウィンドウが開きます
 『物理的再生処理された重合体』が適切に管理されていること。

・『物理的再生処理された重合体』の管理(例:基準と実施状況)

・問題発生時の対応

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 食品衛生上の危害の発生を防止するために留意すべき事項

・許容できない使用方法、使用条件等の情報の提供(参考資料2)

参考資料1

代理汚染試験

代理汚染試験とは、『物理的再生処理された重合体』の製造工程における『汚染物質』の除去能を確認することを目的とした試験である。物理化学的性質を代表する種々の化学物質(代理汚染物質)で意図的に汚染させた試料(汚染試料)を調製し、これを実際の処理工程(または実工程と同様の性能を有する工程)で処理して代理汚染物質の残存量又は残存率を求める。

1) 代理汚染物質の選定

代理汚染物質としては、『回収材料』の品質(回収する製品の範囲、回収方法)及び保管方法等から『汚染物質』を想定し、一般的な化学物質から、極性、揮発性の観点から性質が異なる物質を組み合わせて選択する(下記参照)。ただし、代理汚染物質の『回収材料』への吸着能、代理汚染物質の安定性、設備や装置への汚染、機器分析による定量下限値等に留意する必要がある。

代理汚染物質の例

・極性・揮発性物質:分子量100程度、logP3以下、沸点100~150℃

(クロロホルム、クロロベンゼン、トリクロロエタン、ジエチルケトンなど)

・非極性・揮発性物質:分子量100程度、沸点150℃以下の炭化水素

(トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)

・極性・不揮発性物質:分子量150~400、logP3以下、沸点200℃以上

(ベンゾフェノン、サリチル酸メチルなど)

・非極性・不揮発性物質:分子量150~400、沸点200℃以上のC=10以上の炭素鎖を構造内に有する物質

(テトラコサン、ステアリン酸メチル、1―フェニルデカンなど)

上記のほか、『回収材料』の品質、処理工程の内容等を考慮し、必要に応じて、重金属(またはFe、Cu、Zn、Mn、Co、Ni等を含む代替物質)、食品残渣、処理工程内で使用した薬剤等の追加も検討するとよい。

2) 汚染試料の調製

処理工程へ混入させる代理汚染物質の量は、実際に起こりうる『回収材料』の汚染の程度を想定して設定する。想定される汚染の程度は、『回収材料』の品質や選別の工程によって異なるため、事業所(処理工場)ごとに、汚染された使用済み製品の汚染レベルとその混入率を想定し、これに安全マージンを加味して設定する。

汚染試料(汚染された使用済み製品)の汚染レベルは、使用済み製品が『汚染物質(農薬、洗剤などの食品以外の物質)』と長期間(0.5~1年間)接触した場合を想定するとよい。『回収材料』に混入した異物は、選別、粉砕、洗浄等の工程により取り除かれるため、意図されている『回収材料』に吸着した『汚染物質』のみを考慮すればよい。

『回収材料』に混入させる『汚染試料』の量は、『回収材料』の回収方法や汚染された使用済み製品の選別・除去工程によるため、『回収材料』の品質や選別・除去工程を考慮して設定する。

代理汚染物質による汚染方法の例

選定した代理汚染物質(4種以上)を1~10%の濃度で含有する有機溶剤(ヘキサン、ヘプタンなど)を調製し、40℃で10~14日間(25℃で0.5~1年間に相当*1)製品と接触させる。代理汚染物質溶液を取り除いた後、室温で乾燥させる。製品に収着した代理汚染物質の量を確認する。収着する『汚染物質』の量は、製品の材質と『汚染物質』の種類により大きく異なるが、数百~数千mg/kgを目安とする。

汚染試料の混入率の考え方の例

使用済みPETボトルを『回収材料』とした場合、汚染された使用済み製品の混入率は、EUでは0.03~0.04%*2、国内では0.0008%*3という調査結果を参考とし、これに安全マージンを加味して0.3~1%と考えればよい。一方で、『回収材料』の品質や処理工程等において、混入率を低下させる要因が存在するのであれば、より低い混入率を設定してもよい。

3) 再生処理

上記の汚染方法に基づいて汚染させた試料(汚染試料)について、実際の処理工程またはそれに準じた方法で処理を実施する。実際の処理工程よりも小規模(パイロットプラント、ラボスケール)で実施する場合は、規模の大きさが『汚染物質』の除去能に及ぼす影響に留意し、十分な安全マージンを設定することが望ましい。

4) 代理汚染物質の残存量の測定

得られた『物理的再生処理された重合体』中の代理汚染物質の残存量又は残存率を測定し、処理工程における『汚染物質』の除去能を確認する。

1:Food and Drug Administration, USA, Guidance for Industry: Use of recycled plastics in food packaging: Chemistry considerations(2006).

2:EFSA Panel on food contact materials, enzymes, flavorings and processing aids(CEF): Scientific opinion on the criteria to be used for safety evaluation of a mechanical recycling process to produce recycled PET intended to be used for manufacture of materials and articles in contact with food. EFSA Journal 2011, 9(2011)

3:上新原十和ら、物理的再生法によるPETボトルリサイクルにおける汚染物質除去効果、日本食品化学学会誌、19(1)7―13(2012)

参考資料2

リサイクル材料の許容できる使用方法、使用条件の確認

『リサイクル材料』を使用して器具又は容器包装を製造する者は、『リサイクル材料』の製造者から、代理汚染試験の結果、『リサイクル材料』の許容されない用途や使用条件等に関する情報等の提供を受け、それらの情報を基に、『汚染物質』が人の健康を損なうおそれのない量(0.01mg/kg)を超えて食品に移行しないよう、器具又は容器包装の設計及び製造を行わなければならない。

1) 代理汚染試験の結果による確認

『物理的再生処理された重合体』中に残存する代理汚染物質が全て食品へ移行すると仮定して、最終製品からの最大移行量を推定する。

食品1kgあたりの代理汚染物質の移行量(mg/kg)=A×B×C×D

A:代理汚染物質の残存量(mg/g)

B:最終製品の密度(g/cm3)

C:容器の厚さ(cm)

D:食品1kgが接触する最終製品の面積(cm2/kg)

2) 溶出試験による確認

代理汚染試験で得られた『物理的再生処理された重合体』、又は汚染試料を用い、溶出試験を実施し、最終製品からの移行量を推定する。

・溶出試験の条件は、最終製品の用途、使用条件(温度・時間)等を考慮して、溶出条件(温度、時間、浸出用液等)を設定する。

・汚染試料を用いる場合は、汚染された使用済み製品の混入率及び代理汚染物質の残存率を考慮して、最終製品から食品への移行量を推定する。

3) 既存データ、in silicoによる予測値等を活用した確認

既存の試験結果やin silicoによる予測値等から、科学的に妥当と判断される根拠により最終製品からの移行量を推定する。

・既存のデータや文献等の試験結果から予想される移行量が0.01mg/kg以下である。

・最終製品は、『汚染物質』の移行量が0.01mg/kg以下となることが確認されたものと同様の手法及び管理により製造されたものである。