添付一覧
○エルラナタマブ(遺伝子組換え)製剤の使用にあたっての留意事項について
(令和6年3月26日)
(/医薬薬審発0326第1号/医薬安発0326第1号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長・厚生労働省医薬局医薬安全対策課長通知)
(公印省略)
エルラナタマブ(遺伝子組換え)製剤(販売名:エルレフィオ皮下注44mg、同皮下注76mg、以下「本剤」という。)については、本日、「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」が「効能又は効果」として、承認されたところです。
本剤は重度のサイトカイン放出症候群があらわれることがあることから、その使用にあたっては、特に下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関に対する周知をお願いします。
なお、本通知の写しについて、別記の関係団体宛てに連絡するので、念のため申し添えます。
記
1.本剤の適正使用について
(1) 本剤については、承認に際し、製造販売業者による全症例を対象とした使用成績調査をその条件として付されている。
【承認条件】(電子化された添付文書抜粋)
1.医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2.国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
3.緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、サイトカイン放出症候群の管理等の適切な対応がなされる体制下で本剤が投与されるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。
(2) サイトカイン放出症候群に関する「警告」、「効能又は効果」、「効能又は効果に関連する注意」、「用法及び用量」、「用法及び用量に関連する注意」、「重要な基本的注意」は以下のとおりであるので、特段の留意をお願いしたい。なお、その他の使用上の注意については、電子化された添付文書を参照されたい。
【警告】(電子化された添付文書抜粋)
・本剤の投与は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例のみに行うこと。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。
・重度のサイトカイン放出症候群(CRS)及び免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)があらわれることがあるので、特に治療初期は入院管理等の適切な体制下で本剤の投与を行うこと。
・重度のCRSがあらわれることがあるので、CRSに対する前投与薬の投与等の予防的措置を行うとともに、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、製造販売業者が提供するCRS管理ガイダンス等に従い、適切な処置を行うこと。
【効能又は効果】(電子化された添付文書抜粋)
・再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
【効能又は効果に関連する注意】(電子化された添付文書抜粋)
・本剤による治療は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも3つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。
・臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
【用法及び用量】(電子化された添付文書抜粋)
・通常、成人にはエルラナタマブ(遺伝子組換え)として、1日目に12mg、4日目に32mgを1回皮下投与する。8日目以降は1回76mgを1週間間隔で皮下投与する。なお、24週間以上投与し、奏効が認められている場合は、投与間隔を2週間間隔とすること。
【用法及び用量に関連する注意】(電子化された添付文書抜粋)
・他の抗悪性腫瘍剤との併用における有効性及び安全性は確立していない。
・本剤投与によるサイトカイン放出症候群(CRS)を軽減させるため、1日目、4日目及び8日目の投与については、本剤投与開始の約1時間前に、解熱鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤及び抗ヒスタミン剤を投与すること。
・本剤投与により副作用が発現した場合には、次の基準を参考に本剤を休薬又は中止すること。
副作用発現時の本剤の休薬又は中止基準
副作用 |
重症度注) |
処置 |
サイトカイン放出症候群(CRS) |
Grade 1、2又は3(初発) |
回復するまで本剤を休薬する。 |
Grade 3(再発)又はGrade 4 |
本剤の投与を中止する。 |
|
免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS) |
Grade 1、2又は3(初発) |
回復するまで本剤を休薬する。 |
Grade 3(再発)又はGrade 4 |
本剤の投与を中止する。 |
|
血液学的毒性 |
好中球数が500/μL未満 |
500/μL以上に回復するまで本剤を休薬する。 |
発熱性好中球減少症 |
好中球数が1,000/μL以上に回復し発熱が治まるまで本剤を休薬する。 |
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ヘモグロビンが8g/dL未満 |
8g/dL以上に回復するまで本剤を休薬する。 |
|
血小板数が25,000/μL未満 血小板数が25,000/μL~50,000/μLの間で出血がある |
25,000/μL以上に回復し出血が治まるまで本剤を休薬する。 |
|
その他の非血液学的毒性 |
Grade 3又は4 |
・Grade 1以下又はベースラインに回復するまで本剤を休薬する。 ・回復しない場合は本剤の投与を中止する。 |
注) CRS及びICANSのGradeはASTCT 2019に準じ、その他の非血液学的毒性のGradeはNCI―CTCAE Version5.0に準じる。
・副作用等の理由による休薬後に本剤を再開する場合は、下表を参考に投与すること。以降は、用法・用量の投与スケジュールに準じること。
休薬後に再開する場合の用量
休薬直前の用量 |
休薬期間 |
再開時の用量 |
12mg |
2週間(14日)以内の休薬 |
4日目の投与量(32mg)で投与する注)。 |
2週間(14日)を超える休薬 |
1日目の投与量(12mg)で投与する注)。 |
|
32mg |
2週間(14日)以内の休薬 |
8日目の投与量(76mg)で投与する注)。 |
2週間を超え、4週間以内(15日から28日まで)の休薬 |
32mgで投与する注)。忍容性が認められた場合には1週間後に76mgを投与する注)。 |
|
4週間(28日)を超える休薬 |
1日目の投与量(12mg)で投与する注)。 |
|
76mg |
6週間(42日)以内の休薬 |
76mgで投与する。 |
6週間を超え、12週間以内(43日から84日まで)の休薬 |
32mgで投与する注)。忍容性が認められた場合には1週間後に76mgを投与する注)。 |
|
12週間(84日)を超える休薬 |
1日目の投与量(12mg)で投与する注) |
注) 本剤投与開始の約1時間前に前投与(解熱鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤及び抗ヒスタミン剤)を行うこと。
【重要な基本的注意】(電子化された添付文書抜粋)
・サイトカイン放出症候群(CRS)及び免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は投与初期に多く認められることから、少なくとも初回投与(12mg投与)後48時間及び2回目の投与(32mg投与)後24時間は必ず入院管理とし、以降の投与についても患者の状態に応じて入院管理を検討すること。
・CRSがあらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、以下の事項に注意すること。
・CRSに対する前投与薬の投与等の予防的措置を行うこと。
・本剤の投与中は発熱、低酸素症、悪寒、低血圧、頻脈、頭痛、肝酵素増加等について、観察を十分に行うこと。また、CRSが疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
・緊急時に備えてトシリズマブ(遺伝子組換え)を速やかに使用できるように準備しておくこと。
(3) 本剤については、サイトカイン放出症候群等が発生した際に緊急性のある状況に対応可能であり、自施設又は連携施設において入院管理が可能※1、かつ副作用の鑑別に必要な検査の結果が直ちに得られる体制が整っている施設および医師要件を満たしている施設に対して、製造販売業者から製品および安全対策の事前説明を行った上で納入すること。
※1 バイタルサインの24時間モニタリング設備、高流量の酸素投与が可能な呼吸管理設備及び脳波測定設備を有する
2.医療機関における適正使用に関する周知事項について
本剤については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第79条に基づき、承認取得者である製造販売業者に対し、「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施する」よう義務付けたので、その調査の実施にご協力願いたい。
別記
公益社団法人 日本医師会
一般社団法人 日本癌治療学会
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
一般社団法人 日本血液学会
公益社団法人 日本薬剤師会
一般社団法人 日本病院薬剤師会
ファイザー株式会社
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
各地方厚生局