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○変異原性が認められた化学物質の取扱いについて

(令和5年11月30日)

(基発1130第4号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

標記について、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条の4第1項の規定に基づき届出のあった化学物質及び同条同項の既存の化学物質として政令に定める化学物質のうち、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴取し、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得たものについて、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」(平成5年5月17日付け基発第312号の3の別添1。以下「指針」という。)の対象物質に追加することとし、別添により関係事業者団体に対して、指針に基づく措置を講ずるよう周知していただきたい旨要請したところである。

ついては、貴職におかれても、管内の事業者に対して、別添の別紙1(1)に掲げる化学物質を製造し、又は取り扱う際には、指針に基づく措置を講ずる等、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講ずるよう周知されたい。

なお、別添の別紙1(2)に掲げる化学物質については、従前、指針に基づく措置を講ずるよう届出事業者及び関係団体に要請していたが、有識者による再評価の結果、指針の対象から除外することとしたので、了知されたい。

別添

○変異原性が認められた化学物質の取扱いについて

(令和5年11月30日)

(基発1130第3号)

((別紙の団体の長)あて厚生労働省労働基準局長通知)

(公印省略)

労働基準行政の運営につきましては、日頃から格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。

標記の件に関し、これまで、

1.労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条の4第1項の規定に基づき届出のあった化学物質(以下「届出物質」という。)のうち、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得たもの(合計1,085物質)

2.法第57条の4第1項の既存の化学物質として政令に定める化学物質(以下「既存化学物質」という。)のうち、有害性の調査結果等により、強度の変異原性が認められたもの(合計244物質)

については、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」(平成5年5月17日付け基発第312号の3の別添1。以下「指針」という。別添参照。)に基づく措置を講ずるよう、届出事業者及び関係団体に対して要請しているところです。

今般、「労働安全衛生法第57条の4第3項の規定に基づき新規化学物質の名称を公表する件」(令和4年厚生労働省告示第373号、令和5年厚生労働省告示第95号、第217号及び第281号)により、636物質の名称を公表したところですが、それらの化学物質のうち、別紙1(1)に掲げる計18の届出物質について、学識経験者から、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得ました。

つきましては、貴団体におかれましても、傘下会員又は傘下事業場に対し、別紙1に掲げる届出物質を製造し、又は取り扱う際には、指針に基づく措置を講ずる等、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講ずるよう周知いただきますようお願いします。

なお、別紙1(2)に掲げる化学物質については、従前、指針に基づく措置を講ずるよう届出事業者及び関係団体に要請していましたが、有識者による再評価の結果、指針の対象から除外することとしましたので、了知いただきますようお願いいたします。

(別紙)

一般社団法人日本化学工業協会

一般社団法人日本化学品輸出入協会

化成品工業協会

農薬工業会

日本製薬団体連合会

日本製薬工業協会

[別添1]

変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針

(平成5年5月17日付け労働省労働基準局長伺い定め)

平成5年5月17日

一部改正 平成18年3月9日

一部改正 平成24年12月11日

1 趣旨

この指針は、微生物を用いる変異原性試験、乳類培養細胞を用いる染色体異常試験等の結果から強度の変異原性が認められた化学物質(以下「変異原化学物質」という。)又は変異原化学物質を含有するもの(変異原化学物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く。)(以下「変異原化学物質等」という。)を製造し、又は取り扱う作業に関し、当該変異原化学物質への暴露による労働者の健康障害を未然に防止するため、その製造又は取扱いに関する留意事項について定めたものである。事業者は、この指針に定める措置を講ずるほか、労働者の健康障害を防止するための適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 変異原化学物質による暴露を低減するための措置について

(1) 労働者への変異原化学物質による暴露の低減を図るため、当該事業場における変異原化学物質等の物性、製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。

イ 作業環境管理

(イ) 使用条件等の変更

(ロ) 作業工程の改善

(ハ) 設備の密閉化

(ニ) 局所排気装置等の設置

ロ 作業管理

(イ) 労働者が変異原化学物質に暴露されないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択

(ロ) 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用

(ハ) 変異原化学物質に暴露される時間の短縮

(2) (1)により暴露を低減するための装置等の設置等を行った場合には、次によること。

イ 局所排気装置等については、作業が行われている間、適正に稼働させること。

ロ 局所排気装置等については定期的に保守点検を行うこと。

ハ 変異原化学物質等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染を防止すること。

ニ 保護具については同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、送気マスクを使用させたときは、当該労働者が有害な空気を吸入しないような措置を講ずること。

(3) 次の事項について当該作業に係る作業規定を定め、これに基づき作業させること。

イ 設備、装置等の操作、調整及び点検

ロ 異常な事態が発生した場合における応急の措置

ハ 保護具の使用

3 作業環境測定について

(1) 変異原化学物質に係る作業が屋内で行われる場合であって、当該物質に関する作業環境測定手法が開発されているときには、定期に当該物質の性状に応じ作業環境測定基準、作業環境ガイドブック等を参考として作業環境測定を実施することが望ましいこと。

(2) 作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めること。

4 労働衛生教育について

(1) 変異原化学物質等を製造し、又は取り扱う作業に従事している労働者及び当該作業に従事させることとなった労働者に対して、次の事項について労働衛生教育を行うこと。

イ 変異原化学物質の性状及び有害性

ロ 変異原化学物質による健康障害、その予防方法及び応急措置

ハ 局所排気装置その他の変異原化学物質への暴露を低減するための設備並びにそれらの保守及び点検の方法

ニ 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理

(2) 上記事項に係る労働衛生教育の時間は4時間以上とすること。

(3) (1)のイからニの全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該項目についての教育を省略して差し支えないこと。

5 危険有害性等の表示、通知等について

変異原化学物質等を譲渡し、又は提供する場合は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の14及び第24条の15の規定に準じて、容器又は包装に名称等の表示を行うとともに、相手方に安全データシート(以下「SDS」という。)の交付等により名称等の通知を行うこと。この場合、微生物等への強い変異原性を有することについて表示及び通知の内容に含めること。

6 変異原化学物質等の製造等に従事する労働者の把握について

変異原化学物質等を製造し、又は取り扱う作業に常時従事する労働者について、1年を超えない期間ごとに次の事項を記録すること。

イ 労働者の氏名

ロ 従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間

ハ 変異原化学物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び講じた応急措置の概要

なお、上記の事項の記録は、当該記録を行った日から30年間保存するよう努めること。

別紙1

(1) 変異原性が認められた届出物質


名称公表通し番号

名称公表年月日

名称公表告示番号

名称

構造式

性状

用途の例

1

30539

令和4年12月27日 厚生労働省告示第373号

4―(トリクロロメチル)ベンゾニトリル

別添参照

白色~微黄色固体

農薬の製造中間体

2

30585

1―ブロモエチル=アダマンタン―1―カルボキシラート

別添参照

白色固体

医薬品開発用中間体

3

30614

{[モノ(又はビス又はトリス)(1―フェニルエチル)フェノキシ]メチル}オキシランを主成分とする、(クロロメチル)オキシランとトリス(1―フェニルエチル)フェノールとビス(1―フェニルエチル)フェノールと(1―フェニルエチル)フェノールの反応生成物

別添参照

液体

熱硬化性樹脂の原料

4

30620

令和5年3月27日 厚生労働省告示第95号

(2S,3R,4S,6R)―6―{[(1S,3S)―3―アセチル―3,5,12―トリヒドロキシ―10―メトキシ―6,11―ジオキソ―1,2,3,4,6,11―ヘキサヒドロテトラセン―1―イル]オキシ}―3―ヒドロキシ―2―メチルオキサン―4―アミニウム=クロリド

別添参照

赤橙色の粉末

医薬品中間物

5

30622

3―アミノ―2,8―ジメチル―5―フェニルフェナジン―5―イウム=クロリド

別添参照

黒色粉末

めっき浴添加剤

6

30624

1―アミノ―2―(N―ヒドロキシエタンイミドイル)アントラセン―9,10―ジオンを主成分とする、2―アセチル―1―アミノアントラセン―9,10―ジオンと硫酸ビス(ヒドロキシアンモニウム)の反応生成物

別添参照

暗赤色固体

染料中間体

7

30631

2―(N―エチルアニリノ)エチル=3―クロロプロパノアート

別添参照

淡黄色液体

中間物(合成原料)

8

30673

1―(ジフェニルメチル)アゼチジン―3―イル=メタンスルホナート

別添参照

白~黄色固体

医薬中間体または原料

9

30726

N,N'―{フルオランテン―3,8―ジイルビス[アザンジイル(9,10―ジオキソ―9,10―ジヒドロアントラセン―4,1―ジイル)]}ジベンズアミド

別添参照

黒色固体

染料中間体

10

30732

1―ブロモブタ―2―イン

別添参照

微黄色液体

医薬品原薬の原料

11

30790

令和5年6月27日 厚生労働省告示第217号

1―[2―クロロ―3―(2―メチルプロポキシ)プロピル]ピロリジン

別添参照

黄褐色~赤褐色油状物

医薬品製造中間体

12

30835

1,4―ビス[(2―ヒドロキシエチル)アミノ]アントラセン―9,10―ジオンと1,4―ビス[(3―ヒドロキシプロピル)アミノ]アントラセン―9,10―ジオンと1―[(2―ヒドロキシエチル)アミノ]―4―[(3―ヒドロキシプロピル)アミノ]アントラセン―9,10―ジオンの混合物

別添参照

暗青色粉末

毛髪の染色

13

30865

4―フルオロ―2―メトキシ―5―ニトロアニリン

別添参照

うすい黄色~褐色粉末~結晶

製造用原料

14

30869

9―ブロモノナン―1―オール

別添参照

半透明結晶

電子材料製造中間体

15

30892

2―ヨード―2―メチルプロパンニトリル

別添参照

淡黄色~濃赤色液体

化学合成品原料

16

30901

令和5年9月27日 厚生労働省告示第281号

2―アミノ―4―ニトロ安息香酸

別添参照

黒色~茶色粉末

染料の原料

17

30915

1―[2―(エタンスルホニル)エチル]―2―メチル―5―ニトロ―1H―イミダゾール

別添参照

淡黄色の結晶性の粉末

医薬品原料

18

31069

2―(2―メトキシエトキシ)エチル=メタンスルホナート

別添参照

無色透明液体

合成中間体

(2) これまで指針に基づく措置を要請した物質のうち、指針の対象から除外する物質

1

29973

令和4年3月25日 厚生労働省告示第84号

(4Z)―4―(ヒドロキシイミノ)―1―[5―O―(2―メチルプロパノイル)―β―D―リボフラノシル]―3,4―ジヒドロピリミジン―2(1H)―オン(別名:モルヌピラビル)

別添参照

白色の固体

医薬品原料

(除外する理由)

この物質は、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得たため、令和4年12月7日付け基発第1207第2号及び第3号により指針の対象としていたが、その後、いずれも陰性との報告がなされている各種変異原性試験(実験動物等を用いる染色体異常や遺伝毒性に関連する試験を含む。)の結果に関する情報が得られたため、改めて有識者による総合的評価を行った結果、本物質には強い変異原性が認められるとした以前の評価については見直しを要すると判断されたため。

(別添)

別紙1

(1) 変異原性が認められた届出物質の構造式

安衛法官報通し番号

構造式

安衛法官報通し番号

構造式

30539

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30585

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30614

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30901

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30915

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31069

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(2) これまで指針に基づく措置を要請した物質のうち、指針の対象から除外する物質の構造式

安衛法官報通し番号

構造式

29973

画像19 (15KB)別ウィンドウが開きます