添付一覧
○プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認に係る取扱いについて
(令和5年11月16日)
(医薬機審発1116第2号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長通知)
(公印省略)
市販前の新たな治験実施の有無によらず、プログラム医療機器を含む医療機器の承認申請を行い得ると考えられるケースの取扱いについては、『医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について』(薬生機審発1117第1号、薬生安発1117第1号、平成29年11月17日厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長、医薬・生活衛生局医薬安全対策課長連名通知。以下、「リバランス通知」という。)により示しています。
今般、プログラム医療機器の開発及び薬事承認を効率的に行う観点から、「プログラム医療機器の特性を踏まえた薬事承認制度の運用改善検討事業」(研究代表者:中野壮陛(公益財団法人医療機器センター専務理事))において、二段階承認の考え方を含めた薬事承認制度の在り方を検討し、「プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のためのガイダンスの公表について」(令和5年5月29日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課事務連絡)が示され、下記のとおり、プログラム医療機器の特性を踏まえた二段階承認に係る取扱い及び運用を明確化しました。なお、二段階承認の考え方は選択肢の一つであり、当該アプローチを適用せずに薬事承認を取得できることを念のため申し添えます。
つきましては、本通知について御了知の上、貴管内各関係事業者、関係団体等に周知方よろしくお願いします。
なお、本通知の写しを一般社団法人日本医療機器産業連合会、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会、日本デジタルヘルス・アライアンス、一般社団法人日本医療ベンチャー協会、AI医療機器協議会、日本製薬工業協会及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構宛てに送付していることを申し添えます。
記
第1.疾病診断用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
1.基本的な考え方
疾病の診断又は予後予測の参考情報となり得ると考えられるものの、臨床症状や病態と生理学的状態の関連付けが広く認知されるには至っておらず、その臨床的意義や医学的判断基準が十分に確立していない生理学的パラメータ、リスクスコア又は特徴量を各種検査結果等から算出するプログラム医療機器、生体信号に関わる生理学的指標に係る能動なモニタリング医療機器等の解析機能により患者増悪リスクを予測するプログラム医療機器等の開発が想定される。
このような疾病診断用プログラム医療機器は広く使用されることで臨床的意義が明らかになるものもあることから、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談の上で、最終的に目標とする臨床的意義が確立されていない段階でも、算出される生理学的パラメータ等に関する臨床的意義を臨床実績の取りまとめ等により説明した上で、非臨床試験や機械的な性能(測定性能や検出性能、演算性能)に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定した第1段階承認を取得し、臨床現場で使用された経験を踏まえながら市販後に臨床的エビデンス(製造販売後臨床試験、リアルワールドデータを含む)が確立された後に、必要に応じて、承認事項一部変更承認申請又は新規申請等を行って第2段階承認を取得するような開発の戦略が想定される。
2.具体的な対応
疾病の診断又は予後予測の参考情報となり得る生理学的パラメータ等を算出することにより、疾病の診断を補助又は支援するためのプログラムで、二段階承認の考え方に基づく開発戦略を検討する場合には、あらかじめ独立行政法人医薬品医療機器総合機構の開発前相談を活用して、審査側との意見交換を進めること。なお、第2段階承認に向けたプロトコル相談等も並行して行うことが望ましい。
3.対象となるプログラム
対象となるプログラム医療機器の考え方は、以下に例を示す。
(1) 生体信号に関わる生理学的指標に係る能動なモニタリング医療機器(生体物理現象検査用装置、生体電気現象検査用装置、生体現象監視用装置、画像診断装置等)等、非侵襲的な測定や撮影等を行う医療機器やスマートフォン等の携帯情報端末を含む汎用コンピュータ等のWebカメラ等の内部又は外部センサ、各種検査情報等から生理学的パラメータ等を算出するプログラム。
(2) 最終的に目標とする臨床的意義がまだ確立されていないものの、別途、疾病の診断の参考情報として、いくつかの判断基準の一つを提供するプログラム医療機器と位置づけられるもの。
(3) 誤った検査結果が得られた場合に、ヒトの生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものではないもの。
4.対象とならないプログラム
以下のような場合には、臨床的により精緻な情報が期待されるため、原則、二段階承認の考え方は適用されないので留意すること。なお、開発される製品の使用目的又は効果の範囲等により二段階承認の考え方が適用されない場合も考えられる一方、開発される製品等の特徴等に応じて二段階承認の対象となり得ると判断される場合もあるので、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談すること。
(1) 検査・診断結果が、がんの治療方針や救急医療における初期対応方針等のように医学的判断に大きく影響するもの
(2) 遺伝子関連検査のように日々新たな情報が提供される分野
(3) 肺結節やポリープ等、プログラム医療機器が提示する情報が臨床的意義や医学的判断基準が確立されている分野(既に類似の承認品目がある等)
(4) 申請品目と同様の使用目的又は効果の範囲である医療機器又はプログラム医療機器等が第2段階承認を取得し、臨床現場で使用されている場合
5.第2段階承認の取得に向けた臨床評価等の計画
(1) 第2段階承認の取得に向けて必要な臨床的意義を確認するための臨床評価等の計画については、第1段階承認申請のための相談時をはじめ、第1段階承認申請後も並行して独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談することが望ましい。
(2) 第2段階承認における臨床評価データは申請資料の信頼性の基準に適合する必要があるが、第2段階承認を取得するために必要な臨床評価の方法としては、製造販売後臨床試験成績以外にもレジストリを含めたリアルワールドデータ等を活用することも可能である。そのため、あらかじめ独立行政法人医薬品医療機器総合機構のリアルワールドデータの活用を含めた臨床試験要否相談やプロトコル相談等を活用して、審査側との意見交換を進めること。
第2.疾病治療用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
1.基本的な考え方
疾病の治療を補助又は支援するための情報を提示する性能又は機能を有するものの、治療としての臨床的エビデンスが確立していないプログラム医療機器は、当該プログラム医療機器による治療法としての臨床的意義について根拠に基づいた説明が求められる。
一方、遺伝や生活習慣など様々な要因が複合する多因子疾患に関連する疾病治療用プログラム医療機器、効果判定に患者自身の主観的な指標を主要評価項目とする精神疾患領域、疼痛、機能性症候群に関連する疾病治療用プログラム医療機器等では、国内治験への被験者リクルートに係る課題や評価に長期間を要する等の問題から治験の実施可能性が低い場合がある。
このようなプログラム医療機器の中には、治療法としての臨床的エビデンスや臨床的意義が十分ではないが、特定の症状緩和又は状態改善等が探索的治験成績等により示され、患者や医療現場にとって有用であると期待されるものもある。
こういったプログラム医療機器については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談の上で、最終的に目標とする臨床的意義が確立されていないものの、性能評価に関する試験成績に加えて、特定の症状緩和又は状態改善等が探索的治験成績に基づき、一定の有効性が蓋然性をもって確認できる範囲に限定した使用目的又は効果で第1段階承認を取得し、臨床現場で使用された経験を踏まえながら市販後に臨床的エビデンス(製造販売後臨床試験やリアルワールドデータ等)が確立された後に、必要に応じて、承認事項一部変更承認申請又は新規申請等を行って第2段階承認を取得する開発戦略も考えられる。
2.具体的な対応
疾病の治療を補助又は支援する目的であるプログラムで、二段階承認の考え方に基づく開発戦略を検討する場合には、あらかじめ独立行政法人医薬品医療機器総合機構の開発前相談を活用して、審査側との意見交換を進めること。なお、第2段階承認に向けたプロトコル相談等も並行して行うことが望ましい。
3.対象となるプログラム
対象となるプログラム医療機器の考え方は、以下に例を示す。
(1) 最終的に目標とする疾病の治療法としての臨床的意義が確立されていないものの、性能評価に関する試験成績に加えて、特定の症状緩和又は状態改善等が探索的治験成績等により示されているなど、一定の有効性が蓋然性をもって確認できるもの。
(2) プログラム医療機器が提示する情報に基づいて、医師による治療等を補助又は支援した場合でも、既存治療等の有効性及び安全性に影響を及ぼす懸念が想定されないもの。
4.対象とならないプログラム
申請品目と同様の使用目的又は効果の範囲である医療機器又はプログラム医療機器が第2段階承認を取得し、臨床現場で使用されている場合にあっては、臨床的により精緻な情報が期待されることから、原則、二段階承認の考え方は適用されないので留意すること。
なお、開発される製品の使用目的又は効果の範囲等により二段階承認の考え方が適用されない場合も考えられる一方、開発される製品等の特徴等に応じて二段階承認の対象となり得ると判断される場合もあるので、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談すること。
5.第2段階承認の取得に向けた臨床評価等の計画
(1) 第2段階承認の取得に向けて必要な臨床的意義を確認するための臨床評価等の計画については、第1段階承認申請のための相談時をはじめ、第1段階承認申請後も並行して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談することが望ましい。
(2) 第2段階承認における臨床評価データは申請資料の信頼性の基準に適合する必要があるが、第2段階承認を取得するために必要な臨床評価の方法としては、製造販売後臨床試験成績以外にもレジストリを含めたリアルワールドデータを活用することも可能である。そのため、あらかじめ独立行政法人医薬品医療機器総合機構のリアルワールドデータの活用を含めた臨床試験要否相談やプロトコル相談等を活用して、審査側との意見交換を進めること。
第3.疾病予防用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
(基本的な考え方)
健康増進等の一次予防に貢献するプログラムは、プログラム医療機器の定義を満たさないことから、医療機器に該当しない。
また、疾病の二次予防又は三次予防に貢献するプログラムは、疾病診断用プログラム医療機器又は疾病治療用プログラム医療機器に該当する可能性があるため、その開発方針については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と開発段階から相談することが望ましい。
以上