○生活保護法第37条の2に規定する保護の方法の特例(住宅扶助の代理納付)に係る留意事項について
(平成18年3月31日)
(社援保発第0331006号)
(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長通知)
今般、介護保険法等の一部を改正する法律(平成17年法律第77号)に伴う介護保険法施行令等の一部を改正する政令(平成18年政令第154号)が公布され、平成18年4月1日より施行することとされた。
今回の改正により、新たに生活保護法(以下「法」という。)第37条の2を創設するとともに、改正後の生活保護法施行令第3条において、法第33条第4項の規定により交付する保護金品(住宅扶助)について、保護の実施機関による代理納付を可能とした。
また、生活保護法の一部を改正する法律(平成25年法律第104号)に伴う生活保護法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成26年政令第164号)が公布され、平成26年7月1日より施行することとされた。
この改正により、法第31条第3項の規定により交付する保護金品であって賃借して居住する住宅に係る共益費(以下「共益費」と言う。)についても、代理納付を可能としたところである。
さらに、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)の一部を改正する法律(平成29年法律第24号)が平成29年10月25日より施行されている。
この改正により、生活保護受給者を含む低額所得者、高齢者、子育て世帯等の、賃貸人から入居を制限される場合のある者を「住宅確保要配慮者」と位置づけ、民間の空き家・空き室を有効活用した住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度が創設された。住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として登録された住宅の賃貸人で住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)第21条第1項に規定する登録事業者は生活保護受給者の家賃滞納等に係る情報を福祉事務所に通知することができることとされ、通知を受けた福祉事務所は、代理納付等の措置の必要性を判断するため、速やかに事実確認を行うこととされた。
また、高齢者単身又は高齢者のみの世帯や低所得者世帯等が安心して地域で暮らしていくため、大家が抱える不安に対する対策が必要であり、生活保護制度においては住宅扶助の代理納付の活用が求められている。
住宅扶助の代理納付の実施にあたっての留意事項は、下記のとおりであるので、管内実施機関及び関係機関に対し周知方お願いしたい。
なお、法第37条の2に規定する介護保険料の代理納付については、「介護保険料加算の認定及び代理納付の実施等について」(平成12年9月1日社援保第54号本職通知)により取り扱われたい。
おって、下記3のとおり関係通知について、一部を改正することとしたので、了知の上、保護の実施に遺憾のなきを期されたい。
記
1 改正の趣旨
住宅扶助費は、家賃等の実額を被保護者に対して金銭給付するものであるが、一部に家賃等の支払いを滞納する事例が見受けられるところであり、家主等とトラブルになる場合もある。このことについては、本来、家主と入居者である被保護者との間で解決されるべき問題ではあるが、住宅扶助として使途を限定された扶助費を一般生活費に充当することは生活保護法の趣旨に反するものであり、住宅扶助費が家賃支払いに的確に充てられる必要がある。また、原則として共益費は住宅扶助費と同時に家主等に支払う必要があるものである。
こうしたことを踏まえて、法第37条の2及び生活保護法施行令第3条の規定により、被保護者に代わり保護の実施機関が納付することを可能とするものである。
2 留意事項
(1) 家賃等を滞納している場合
住宅扶助費を支給しているにもかかわらず家賃等以外に費消し家賃等を滞納している被保護者については、滞納期間及び滞納額、生活状況、金銭の消費状況等を把握の上、上記1の改正の趣旨を踏まえ、住宅扶助及び共益費について、原則、代理納付を適用されたい。ただし、家主が希望しない場合や住宅扶助費が満額支給されない場合等は、代理納付を適用しない取扱いとして差し支えない。
(2) 公営住宅の場合
公営住宅は公営住宅法に基づき、国と地方公共団体が協力して、住宅に困窮する低額所得者に対し、低廉な家賃で供給されるものであること及び上記1の改正の趣旨に鑑み、住宅扶助について、原則、代理納付を適用されたい。
ただし、口座振替により住宅扶助の目的が達せられる場合や住宅扶助費が満額支給されない場合等は、代理納付を適用しない取扱いとして差し支えない。
(3) 登録住宅の場合
住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)第10条第5項に規定する登録住宅(以下「登録住宅」という。)は、同法第2条に規定する住宅確保要配慮者の入居を拒まない住居であり、被保護者の住居確保の観点からも、その増加が望ましい。登録住宅の増加のためには家賃滞納に関する賃貸人の不安を解消することが重要であること及び上記1の改正の趣旨に鑑み、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)第21条第1項に規定する登録事業者が提供する登録住宅に新たに入居する被保護者の住宅扶助及び共益費については、原則、代理納付を適用されたい。
ただし、口座振替により住宅扶助の目的が達せられる場合や家主が希望しない場合、住宅扶助費が満額支給されない場合等は、代理納付を適用しない取扱いとして差し支えない。
なお、現に登録住宅に被保護者が入居している場合や、現に被保護者が入居している住居が登録住宅となった場合、現に登録住宅に入居している者が被保護者になった場合については、上記2(1)及び住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)第21条第1項に規定する通知等があった場合を除き、代理納付を適用しない取扱いとして差し支えない。
また、要保護者が住居を確保するに際し、登録住宅においては住宅扶助及び共益費については上記の場合を除き代理納付であることを事前に説明するとともに、賃貸人とも適宜連携されたい。
(4) 無料低額宿泊所の場合
無料低額宿泊所に入居している場合については、従前、「生活保護法による住宅扶助の認定について」(平成27年4月14日社援保発0414第2号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)2(1)により、一律に住宅扶助の代理納付は適用しない取扱いとしていた。令和2年4月1日に「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」(平成30年法律第44号)による、事前届出制の導入、設備及び運営に関する基準を定めた条例の制定、当該基準を満たさない場合の改善命令に関する規定が施行されることを踏まえ、同通知にかかわらず、無料低額宿泊所に入居する者の居室使用料及び共益費についても、実施機関において個別に検討した上で、代理納付を適用して差し支えない。
また、日常生活支援住居施設に入居している場合については、(5)の取扱いによるものとする。
(5) その他の場合
住宅扶助費等の代理納付は、被保護者、家主ともに事務負担の軽減につながるとともに、家賃等の支払いへの家主の不安を軽減し住宅提供を促進することや、家賃等の支払いが確実に履行されることによって、被保護者の居住の安定や居住先確保が図られるものである。このため、(1)~(3)の場合に限らず、住宅扶助及び共益費について、原則、代理納付を適用されたい。
ただし、口座振替により住宅扶助の目的が達せられる場合や家主が希望しない場合、住宅扶助費が満額支給されない場合等は、代理納付を適用しない取扱いとして差し支えない。
また、不適切なサービス提供を家主やその関係事業者が行っているおそれがある場合は、代理納付を適用しない取扱いとされたい。
代理納付の実施にあたっては、(1)~(4)の場合も含め、被保護者の同意及び委任状等は要しないものであるが、被保護者に代理納付の実施やその趣旨について説明し理解を得ることに努めるようご留意願いたい。
3 関係通知の改正
(1) 「介護保険料加算の認定及び代理納付の実施等について」(平成12年9月1日社援保第54号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)の一部を別紙1のとおり改正し、平成18年4月1日から適用することとする。
(2) 「公営住宅に入居する被保護者の保証人及び家賃の取扱いについて」(平成14年3月29日付社援保発第0329001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)の一部を別紙2のとおり改正し、平成18年4月1日から適用することとする。
(別紙1)
(別紙2)