添付一覧
○エプコリタマブ(遺伝子組換え)製剤の使用にあたっての留意事項について
(令和5年9月25日)
(/医薬薬審発0925第1号/医薬安発0925第1号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長・厚生労働省医薬局医薬安全対策課長通知)
(公印省略)
エプコリタマブ(遺伝子組換え)製剤(販売名:エプキンリ皮下注4mg及び同皮下注48mg。以下「本剤」という。)については、本日、「再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)」及び「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」が「効能又は効果」として承認されたところです。
本剤は重度のサイトカイン放出症候群があらわれることがあり、死亡に至る例が報告されていることから、その使用にあたっては、特に下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関に対する周知をお願いします。
なお、本通知の写しについて、別記の関係団体宛てに連絡するので、念のため申し添えます。
記
1.本剤の適正使用について
(1) 本剤については、承認に際し、製造販売業者による全症例を対象とした使用成績調査をその条件として付されている。
【承認条件】(電子化された添付文書抜粋)
1.医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2.国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
3.緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、サイトカイン放出症候群の管理等の適切な対応がなされる体制下で本剤が投与されるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。
(2) サイトカイン放出症候群に関する「警告」、「効能又は効果」、「効能又は効果に関連する注意」、「用法及び用量」、「用法及び用量に関連する注意」、「重要な基本的注意」は以下のとおりであるので、特段の留意をお願いしたい。なお、その他の使用上の注意については、電子化された添付文書を参照されたい。
【警告】(電子化された添付文書抜粋)
・本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して、十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
・重度のサイトカイン放出症候群があらわれることがあり、死亡に至る例が報告されている。特に治療初期は入院管理等の適切な体制下で本剤の投与を行うこと。また、サイトカイン放出症候群に対する前投与薬の投与等の予防的措置を行うとともに、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、製造販売業者が提供するサイトカイン放出症候群管理ガイダンス等に従い、適切な処置を行うこと。
【効能又は効果】(電子化された添付文書抜粋)
・以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
高悪性度B細胞リンパ腫
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫
・再発又は難治性の濾胞性リンパ腫
【効能又は効果に関連する注意】(電子化された添付文書抜粋)
<効能共通>
・本剤による治療は、抗CD20モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも2つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。
<再発又は難治性の濾胞性リンパ腫>
・十分な経験を有する病理医により、Grade 3Bと診断された患者に投与すること。
【用法・用量】(電子化された添付文書抜粋)
通常、成人にはエプコリタマブ(遺伝子組換え)として、28日間を1サイクルとして、1サイクル目は1日目に1回0.16mg、8日目に1回0.8mg、15日目及び22日目に1回48mgを皮下投与する。その後は1回48mgを、2及び3サイクル目は1、8、15、22日目、4から9サイクル目には1、15日目、10サイクル目以降は1日目に皮下投与する。
【用法及び用量に関連する注意】(電子化された添付文書抜粋)
・本剤と他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
・本剤投与によるサイトカイン放出症候群及び腫瘍崩壊症候群を予防するため、本剤投与時は水分補給を十分に行うこと。
・本剤投与によるサイトカイン放出症候群を軽減させるため、本剤投与前後に下表のとおり薬剤投与を行うこと。
サイクル |
対象患者 |
薬剤 |
投与スケジュール |
1サイクル目(1、8、15及び22日目) |
全ての患者 |
・副腎皮質ホルモン剤 |
本剤の週1回投与毎: ・本剤投与30~120分前 ・本剤投与後1、2及び3日目 |
・抗ヒスタミン剤 ・解熱鎮痛剤 |
本剤の週1回投与毎: ・本剤投与30~120分前 |
||
2サイクル目以降 |
本剤の前回投与後にGrade 2又は3注)のサイトカイン放出症候群があらわれた患者 |
・副腎皮質ホルモン剤 |
サイトカイン放出症候群発現後、次回の本剤投与時: ・本剤投与30~120分前 ・本剤投与後1、2及び3日目 本剤の投与後にGrade 2以上のサイトカイン放出症候群があらわれなくなるまで投与を行う。 |
注)Gradeは米国移植細胞治療学会(ASTCT)コンセンサスに基づく。
・本剤投与により副作用が発現した場合には、以下の基準を参考に、本剤を休薬又は中止すること。
副作用 |
程度注) |
処置 |
サイトカイン放出症候群 |
Grade 3以下 |
回復するまで休薬する。 |
Grade 4 |
投与を中止する。 |
注)Gradeは米国移植細胞治療学会(ASTCT)コンセンサスに基づく。
・以下のいずれかに該当する投与遅延があった場合は、サイトカイン放出症候群を軽減するために、1サイクル目の投与方法に戻して再び投与を開始すること。
・0.16mgと0.8mgの投与間隔が8日を超えた場合
・0.8mgと48mgの投与間隔が14日を超えた場合
・48mgの投与間隔が6週間を超えた場合
その後は、予定されていた次の投与サイクル(投与を延期したサイクルの次の投与サイクル)の1日目から投与を再開すること。
【重要な基本的注意】(電子化された添付文書抜粋)
・サイトカイン放出症候群があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、以下の事項に注意すること。
・サイトカイン放出症候群に対する前投与薬の投与等の予防的措置を行うこと。
・本剤の投与中は発熱、低血圧、低酸素症、悪寒、頻脈、頭痛、呼吸困難等について、観察を十分に行うこと。
・サイトカイン放出症候群は投与初期に多く認められることから、第1サイクルの各投与後には入院管理を検討すること。ただし、少なくとも第1サイクルの初回の48mg投与後48時間は必ず入院管理とすること。
・サイトカイン放出症候群が疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
・緊急時に備えてトシリズマブ(遺伝子組換え)を速やかに使用できるように準備しておくこと。
(3) 本剤については、サイトカイン放出症候群等が発生した際に24時間診療体制の下、(i)自施設※1又は連携施設※2において入院管理が可能、かつ(ii)必要な検査の結果が当日中に得られ直ちに対応可能な体制が整っている施設であること等の施設要件および医師要件を満たしている施設に対して、製造販売業者又は販売提携業者から製品および安全対策の事前説明を行った上で納入すること。
※1 ICU又はICUと同等の設備を有する医療施設
※2 ICU又はICUと同等の設備を有する医療施設と連携している医療施設
2.医療機関における適正使用に関する周知事項について
本剤については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第79条に基づき、承認取得者である製造販売業者に対し、「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施する」よう義務付けたので、その調査の実施にご協力願いたい。
別記
公益社団法人 日本医師会
一般社団法人 日本癌治療学会
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
一般社団法人 日本血液学会
公益社団法人 日本薬剤師会
一般社団法人 日本病院薬剤師会
ジェンマブ株式会社
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
各地方厚生局