○マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について
(令和5年7月10日)
(保発0710第1号)
(地方厚生(支)局主管課・都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)・都道府県後期高齢者医療主管部(局)後期高齢者医療主管課(部)・都道府県後期高齢者医療広域連合事務局・全国健康保険協会・健康保険組合・健康保険組合連合会・関係各省共済組合等所管課(室)・国民健康保険中央会・社会保険診療報酬支払基金あて厚生労働省保険局長通知)
(公印省略)
オンライン資格確認等システムについては、令和3年10月より本格運用が開始され、令和5年7月2日現在で約78.6%の医療機関・薬局(以下「医療機関等」という。)において運用が開始されている。
マイナンバーカードで受診等(受診又は調剤をいう。以下同じ。)していただくことで、患者の直近の資格情報等を確認することができるとともに、患者本人の同意に基づき、過去の薬剤情報等を医療関係者に共有して重複投薬や併用禁忌を回避するなど、健康・医療に関する多くのデータに基づいたより良い医療を受けていただくことが可能となる。また、令和6年秋に健康保険証の廃止が予定されているところ、マイナンバーカードと健康保険証の一体化は、国民皆保険の下、デジタル社会における質の高い、持続可能な医療の実現に資するものである。
他方、マイナンバーカードで医療機関等を受診等される方が急速に増えている中で、その場でマイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合について、窓口での対応や医療費の負担の取扱い等が必ずしも明確になっていなかったことから、今般、こうした場合の取扱いについて、
・ 保険料を支払っている被保険者等が、適切な自己負担分(3割分等)の支払で必要な保険診療を受けられる
・ 医療機関等には、事務的対応以上のご負担はおかけしないようにする
という基本的考え方に沿って整理したので通知する。本通知の内容について十分ご了知の上、関係者及び貴管下の関係機関等に対して周知徹底いただくとともに、その運用につき遺漏なきよう特段のご配慮をお願いしたい。
記
1.マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができないケース
(1) マイナンバーカードによりオンライン資格確認を行った際に、資格確認端末において、「資格(無効)」、「資格情報なし」と表示される場合
・ オンライン資格確認等システムにより確認できる患者の直近の資格情報が無効(資格喪失済み)であり、資格喪失後の新たな資格情報が確認できない場合、医療機関等の資格確認端末において、「資格(無効)」と表示される。
・ また、喪失済みのものを含め、オンライン資格確認等システムにより資格情報が確認できない場合(過去に保険者等から資格情報が登録されていない場合や、保険者等において登録データを確認中の場合)には、医療機関等の資格確認端末において「資格情報なし」と表示される。
こうしたケースは、新たな保険者等が資格情報をシステムに登録し、又はデータの確認作業が終了次第解消していくものであり、今後、保険者等による迅速かつ正確なデータ登録の取組を徹底し、こうした事象自体を減少させていく。
※ オンライン資格確認において「資格(無効)」、「資格情報なし」と表示される場合、マイナポータルにおいても直近の有効な資格情報を確認することはできない。
※ 「資格(無効)」「資格情報なし」の表示は、患者が健康保険証を持参した場合に、医療機関等の職員が健康保険証の資格情報を入力して当該健康保険証の有効性をオンライン資格確認等システムに照会する場合も生じる。なお、健康保険証によりオンライン資格確認を行う場合は、マイナンバーカードによりオンライン資格確認を行う場合と異なり、当該資格が喪失している場合に、患者の直近の資格情報を確認することはできない。
(2) 医療機関等の機器不良等によりその場でマイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合
保険者等によるシステムへのデータ登録は完了しているが、医療機関等の機器不良等によりオンライン資格確認を行うことができない場合として、例えば以下のようなケースが考えられる。
・ 顔認証付きカードリーダーや資格確認端末の故障
・ 患者のマイナンバーカードが使用できない場合(カードの券面汚損、ICチップの破損、カードに搭載されている利用者証明用電子証明書の有効期限切れ)
・ 停電、施設の通信障害、広範囲のネットワーク障害など
これらのケースは、医療機関等において、オンライン資格確認等システムへのアクセス自体は可能である場合と、医療機関等において、オンライン資格確認等システムへのアクセス自体が困難となっている場合に分けることができ、それぞれに応じた対応を行う。
2.1のケースにおける資格確認及び窓口負担
(1) 患者が自身のスマートフォン等によりマイナポータルにアクセスして医療保険の被保険者資格情報の画面を提示できる場合や、患者が健康保険証を持参している場合は、当該マイナポータルの画面や、健康保険証を医療機関等の受付窓口に提示することにより資格確認を行い、医療機関等の窓口負担として、患者の自己負担分(3割分等)の支払を求める。
(2) (1)による資格確認を行うことができない場合、患者に、マイナンバーカードの券面情報(氏名、生年月日、性別、住所)、連絡先、保険者等に関する事項(加入医療保険種別、保険者等名称、事業所名)、一部負担金の割合等を申し立てる被保険者資格申立書(別添3)を可能な範囲で記入いただき、医療機関等の窓口負担として、患者が申し立てた自己負担分(3割分等)の支払を求める。なお、過去に当該医療機関等への受診歴等がある患者について、その時から資格情報が変わっていないことを口頭で確認し、被保険者資格申立書に記載すべき情報を把握できている場合には、被保険者資格申立書の提出があったものと取り扱って差し支えない。
※ 70歳以上等の患者について、患者の申立てに基づく割合で一部負担金を受領した場合、実際の負担割合が異なっていたとしても、負担割合相違によるレセプト返戻は行わないことを基本とする。なお、保険者等が判明した場合において負担割合の相違が確認された場合には、当該保険者等から患者に対して返還請求等が行われる。
※ 停電、施設の通信障害、広範囲のネットワーク障害などが発生した場合や、顔認証付きカードリーダーが故障した場合には、オンライン資格確認等システムの「緊急時医療情報・資格確認機能」(資格情報照会(システム障害時))(以下「システム障害時モード」という。)を立ち上げ、患者の氏名、生年月日、性別、住所又は保険者名で照会することにより、停電の復旧等によりオンライン資格確認等システムにアクセス可能になった後、資格確認を行うことができる。システム障害時モードの立ち上げ方については、別添2を参照願いたい。
また、何らかの事情により顔認証付きカードリーダーで顔認証が上手く機能しない場合には、カードに搭載された利用者証明用電子証明書の暗証番号の入力のほか、オンライン資格確認の目視モードを立ち上げ、医療機関等の職員が患者のマイナンバーカードの券面の写真を目視することによる本人確認を行うことも可能である。目視モードの立ち上げ方については、別添2を参照願いたい。
(3) 患者がマイナンバーカード又は健康保険証のいずれも持参していない場合や、有効な健康保険証の交付を受けていない場合であってマイナンバーカードによる資格確認を行うこともできない場合には、新しい健康保険証の交付を受けていない場合の現行の取扱いと同様に、医療機関等は、患者に対して医療費の全額(10割)を請求することを基本とする。ただし、当該患者が再診であり、医療機関等において過去の受診歴等や患者の身元が分かる場合など、個々の医療機関等の判断により、当該医療機関等で保有している情報等に基づき患者の窓口負担を3割分等とするなど、柔軟な対応を行うことが妨げられるものではない。
3.診療報酬請求等
(1) マイナポータルの画面や健康保険証の提示及びシステム障害時モードによりその場で又は事後的に資格確認を行った場合には、当該資格確認結果に基づく患者の保険者等番号及び被保険者等記号・番号を診療報酬明細書等(以下単に「明細書」という。)に記載して診療報酬請求等を行う。
(2) 患者からの聞き取り等により患者の現在の資格情報を確認できた場合や、過去に当該医療機関等への受診歴等がある患者について、その時から資格情報が変わっていないことを口頭で確認できた場合には、当該資格に基づく患者の保険者等番号及び被保険者等記号・番号を明細書に記載して診療報酬請求等を行う。
(3) 有効な保険証が発行されている場合であって、患者の現在の資格情報を確認できなかった場合においても、「資格(無効)」画面に表示された喪失済みの資格や、過去の受診歴等から確認した資格に基づく保険者等番号及び被保険者等記号・番号を明細書に記載して診療報酬請求等を行うことができる。
※ マイナンバーカードによるオンライン資格確認において「資格(無効)」と表示された場合、当該表示画面において無効とされた旧保険者等番号と旧被保険者等記号・番号を確認することができる。なお、資格確認端末に連携しているレセプトコンピューターから資格情報を閲覧した場合、レセプトコンピューターの仕様によっては喪失済みの資格情報が表示されない可能性があるが、その場合は資格確認端末本体からオンライン資格確認等システムにアクセスし、資格確認履歴を参照することにより、喪失済みの資格情報を確認することができる。
※ 喪失済みの資格に基づき診療報酬請求等を行った場合であっても、医療費の審査支払の時点で新たな保険者等からデータ登録がなされている場合には、オンライン資格確認等システムのレセプト振替機能を活用して、医療機関等へ明細書を返戻することなく当該新たな保険者等に対して医療費請求を自動的に振り替えることを基本とする。
(4) 有効な保険証が発行されている場合であって(1)~(3)によることができないとき、被保険者資格申立書の提出があった患者については、患者から事後的に医療機関等に対して被保険者等記号・番号等の提供がなかった場合には医療機関等から患者へ確認を行った上で、なお、患者の現在又は喪失済みの保険者等番号又は被保険者等記号・番号を特定することができないときには、明細書の摘要欄に、被保険者資格申立書により把握している患者の住所、事業所名、連絡先等の情報その他請求に必要となる情報を記載の上、保険者等番号及び被保険者等記号・番号は「不詳」のまま診療報酬請求等を行うことができる。
※ 被保険者資格申立書に関する説明書に「被保険者番号等の情報(健康保険証のコピーや写真を含む。)がわかり次第、必ず受診された医療機関等にお伝えください」と記載されている。
4.保険者等の診療報酬等の支払について
3(3)及び(4)による診療報酬請求等について、審査支払機関は、オンライン資格確認等システムのレセプト振替機能も活用しつつ、患者が医療機関等を受診等した当時の加入保険者等を可能な限り特定し、当該特定作業により判明した保険者等が診療報酬等を負担する。なお、当該特定作業により保険者等を特定することができない場合には、災害等の際の取扱いに準じ、各保険者等で、当該医療機関等に対する診療報酬等の支払実績に応じて診療報酬等を按分して支払うこととする。
5.その他
(1) 2(2)のとおり、患者が医療機関等を受診等した際、マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合でも、被保険者資格申立書を記入いただき、医療機関等の窓口に提出いただくことで、申し立てた自己負担分(3割分等)に基づく支払によって必要な保険診療を受けることが可能となるが、本来、保険者が加入者に対し、個別にオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況をお知らせすることができれば、患者にこうした窓口手続きを求める必要はなくなるものである。
このため、今後、被用者保険の保険者が、転職等による保険資格変更時に、健康保険証の交付と併せてオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況をお知らせする取組を進めていく。
一方、このような仕組みが整備されるまでの間、被用者保険の各保険者等及び事業主におかれては、患者の窓口手続きの負担を回避し、医療現場での円滑な受診等に資するよう、事業主が加入者に健康保険証を配付する機会を捉え、加入者に対し、次の点を周知していただくことについてご協力をお願い申し上げる。
・ マイナンバーカードで医療機関等を受診等する際に、事前にマイナンバーを提出いただいていない等により、オンライン資格確認等システムへのデータ登録に必要な確認に時間を要する場合は、医療機関等で「資格(無効)」や「資格情報なし」と表示される場合があること
・ オンライン資格確認等システムへのデータ登録が完了している場合であっても、医療機関等の機器不良等によりオンライン資格確認を行うことができない場合があること
・ その場合、医療機関等の窓口において本来の負担割合で受診等いただくことは可能だが、その際にマイナンバーカードの券面情報等を記載した書面を提出していただく必要が生じ得ること
・ 被用者保険の加入者にオンライン資格確認等システムへのデータ登録の状況をお知らせする仕組みが整備されるまでの間、窓口でのこうした手続を回避するには、初めてマイナンバーカードで医療機関等を受診等する場合や、転職等により新しい健康保険証が交付された場合などは、受診等の前にマイナポータルで新しい資格が登録されていることを確認するか、念のためマイナンバーカードとあわせて健康保険証を持参していただきたいこと
なお、こうした対応は、あくまでも、オンライン資格確認等システムへのデータ登録状況をお知らせする仕組みが整備されるまでの時限的なものであり、かつ、初めてマイナンバーカードで医療機関等を受診等する場合といった限定的な場面での取扱いとしてお願いするものであり、患者に将来にわたって、マイナンバーカードによる医療機関等の受診等の際に恒常的に健康保険証を持参していただくことを求める趣旨のものではない点、ご留意いただきたい。
(2) 3(3)、(4)及び4に係る事務取扱いの詳細は追って別途通知する。3(4)の取扱いについては、令和5年9月の請求から適用するものであるが、これに先立って、被保険者資格申立書を患者に記入いただく運用を行っていただくことは差し支えない。
(3) (1)の被用者保険の加入者にオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況をお知らせする仕組みの整備に係る詳細については、別途通知する。
(参考)別添資料について
・別添1 マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応
・別添2 システム障害時モード・目視モードの立ち上げ方
・別添3 被保険者資格申立書
[別添1]
[別添2]
[別添3]