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○手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム等について

(令和5年6月26日)

(障企自発0626第1号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長通知)

(公印省略)

手話奉仕員及び手話通訳者の養成については、平成18年8月1日障発第0801002号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「地域生活支援事業等の実施について」に基づき、手話奉仕員養成研修事業(市町村必須事業)並びに専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業(都道府県必須事業)が実施されています。

しかし、現行の養成カリキュラム及び学習指導要領は、通知発出から20年以上経過していることから、手話奉仕員及び手話通訳者の養成に関する現状把握と課題整理を行い、養成カリキュラム等の見直しを検討する調査研究事業を行ったところです。

今般、当該調査研究事業の結果を踏まえ、別添のとおり、新たに養成カリキュラム及び学習指導要領を定めたので、今後、手話奉仕員養成研修事業並びに専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業を実施する際は、本通知の内容を基本に実施されるとともに、管内市町村及び関係団体への周知について特段の配慮をお願いします。

なお、平成10年7月24日障企第63号厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長通知「手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム等について」及び平成11年8月16日障企第50号厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長通知「手話奉仕員及び手話通訳者の学習指導要領について」は廃止します。

別添1 手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム

別添2 手話奉仕員及び手話通訳者の学習指導要領

(参考)

調査研究事業(障害者総合福祉推進事業)

実施主体:社会福祉法人全国手話研修センター

令和3年度「手話奉仕員及び手話通訳者養成事業の現状把握と課題整理事業」

令和4年度「手話通訳者等の養成カリキュラム策定事業」

別添1

手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム

1.手話奉仕員養成カリキュラム

対象者

日本語で日常会話ができ、手話の学習経験がない者等

養成目標

聴覚障害、聴覚障害者の生活及び関連する法律・制度等についての理解と認識を深めるとともに、コミュニケーションにおいて活用できる基礎的な手話の技能を身に付ける。

カリキュラム構成

入門課程

35時間

到達目標

あいさつや自己紹介程度であれば、相手の簡単な話を理解し、会話が可能なレベル

養成目標

①簡単な日常会話に必要な語彙(目標語彙数600語)を習得する。

②簡単な日常会話に必要な基本的な表現を習得する。

③音声言語と手話のしくみの違いを理解する。

カリキュラム

〔別表1〕

基礎課程

35時間

到達目標

日常生活に関する身近で簡単な事柄について、相手の話を理解し、簡単な語句や基本的な表現を用いて会話することが可能なレベル

養成目標

①日常会話に必要な語彙(目標語彙数:600語に新たに400語を追加)を習得する。

②日常会話に必要な基本的な表現と読み取り能力を習得する。

③会話を通して実践的なコミュニケーション能力を習得する。

カリキュラム

〔別表2〕

合計

70時間


[別表1] 手話奉仕員 入門課程カリキュラム


教科名

時間数

目的(学習の目標)

内容

講義担当職種例

講義

聴覚障害の基礎知識

1.5

耳の仕組みや聴覚障害の原因を理解するとともに、聴覚障害者のコミュニケーション方法を理解する。

1 障害の見方

2 耳の働き、聞こえの仕組み

3 身体障害者福祉法における障害認定

4 ことばの獲得・習得と発達

5 補聴器と人工内耳

6 コミュニケーション方法と対応・支援

講師養成研修修了者

聴覚障害特別支援学校(ろう学校)教員等学識経験者

手話の基礎知識(ことばの仕組みⅠ[手話])

1.5

日本の手話の歴史及び特徴を理解する。

1 身振りと手話の違い

2 手話と音声言語の違い

3 日本の手話の歴史

4 標準手話と地域の手話

講師養成研修修了者

学識経験者

聴覚障害者の生活

2

聴覚障害者の日常生活とその課題や対応方法を理解する。

1 聴覚障害者(ろう者、難聴者、中途失聴者、盲ろう者等)の障害特性とアイデンティティ

2 家族とのコミュニケーションと生活

3 地域の人々とのコミュニケーションと生活

4 家庭生活、社会生活でのコミュニケーション(保育、教育、医療等)

5 職場でのコミュニケーション

講師養成研修修了者

聴覚障害者

実技

手話との出会い

15

1 手話表現の基本を理解する。

2 場面に応じたあいさつができる。

3 簡単な日常生活の表現ができる技能を習得する。

4 日本語(音声言語)と手話の違いを理解する。

5 身の回りのことを表現する基本的な手話語彙を習得する。

1 あいさつ・自己紹介

2 数字・自己紹介

3 地名・自己紹介

4 職業・自己紹介

5 時間表現(1日の生活)

6 気持ちを表す表現・表情や強弱

7 疑問詞の表現

8 指文字

9 総合練習(自己紹介)

講師養成研修修了者

語彙を増やす

15

1 日常会話の表現を見て理解する力を高める。

2 手話の語彙を増やし、使い方を習得する。

3 手話構文の組み立て方を習得する。

1 時に関わる表現(1週間、1年等)

2 スポーツや趣味の表現

3 繰り返し表現

4 具体的表現(形や動作のCL表現)

5 空間の活用(位置、方向)

6 否定の表現

7 身体の状態の表現

8 他の人の話を伝える表現(動詞の動き)

9 さまざまな場面での会話練習・手話によるスピーチ

講師養成研修修了者


合計

35




※ 聴覚障害者が講義を担当する際には、適宜、手話通訳が必要である。

(注1) CL表現:手話では、話者が物の形や動き、物を動かす様子などを述べる時に、特定の手指を物に見立てて表現する方法がある。日本語の助数詞が対象物の属するカテゴリーに応じて選択されることと同様に、手話でも対象物の属するカテゴリーに応じて適切な手指が選択されることとなり、この手指を言語学の研究では「Classifier(類別辞)」と呼ぶ。これを略した用語「CL(シーエル)」が世界各地の手話指導現場等で広く使用されている。この用語を用いて「具体的表現(CL表現)」とする。

[別表2] 手話奉仕員 基礎課程カリキュラム


教科名

時間数

目的(学習の目標)

内容

講義担当職種例

講義

障害者福祉の基礎

2

障害者権利条約に至る障害者に関わる国際的な歴史、理念等障害者福祉の概要を理解する。

1 障害者福祉の歴史・基礎的理念・発展

①リハビリテーション

②ノーマライゼーション

③バリアフリー

④ICF(国際生活機能分類)

2 障害者権利条約の基礎的概念

①障害の概念

②合理的配慮

③インクルージョン

講師養成研修修了者

福祉関係職員

聴覚障害者活動と聴覚障害者福祉制度

2

聴覚障害者活動の歴史を学習することにより、時代背景と聴覚障害者の要望、関連する聴覚障害者福祉制度を理解する。

1 聴覚障害者組織等の活動と歴史

2 人権確立に向けた活動と成果

3 手話通訳制度化に向けた活動と成果

4 災害救援活動の内容と成果

講師養成研修修了者

聴覚障害者団体役員

福祉関係職員

ボランティア活動

1

ボランティア活動(手話奉仕員活動)の概念、心構え等を理解するとともに、手話サークル等への参加意欲を高める。

1 ボランティア活動の概念

2 今日のボランティア活動の特徴と課題

3 ボランティア活動にあたっての心構え

4 地域手話サークル活動の紹介

講師養成研修修了者

福祉関係職員

実技

手話の基本文法

15

1 日本の手話の基本文法を習得し、表現と読み取り能力のレベルアップを図る。

2 手話語彙を増やし、使い方を習得する。

1 具体的表現(CL表現)

2 「誰が」、「誰に」の表現(動きの方向の変化)

3 同時表現(両手の活用)

4 空間の活用

5 代理的表現

6 指さしの活用

7 役割の切り替え(ロールシフト)

講師養成研修修了者

会話力

15

1 習得した手話語彙や基本文法を基に、相手に伝達する能力のレベルアップを図る。

2 聴覚障害者との手話による会話を通じ、実践的なコミュニケーション能力を習得する。

1 会話の力を高める表現

2 さまざまなテーマでの会話・スピーチ練習

3 手話によるスピーチとろう者とのディスカッション

講師養成研修修了者


合計

35




※ 聴覚障害者が講義を担当する際には、適宜、手話通訳が必要である。

(注1) ロールシフト:手話では、自身の体験や映画のワンシーンなどを話す時に、話者がある人物や動物になりきって、その発話や行動を描写する方法がある。主として上体を前後左右に動かし、表情を使い分ける、この方法(役割の切り替え)を手話指導現場等では「ロールシフト」と呼ぶ。

2.手話通訳者養成カリキュラム

対象者

手話通訳者を目指し、次の条件を満たす者

①日本語を理解し、使用することができる。

②聴覚障害者と手話で日常会話ができる。

養成目標

障害者福祉の概要や手話通訳者の役割・責務等について理解と認識を深めるとともに、手話通訳に必要な手話語彙、手話通訳能力及び手話通訳技術の基本を習得する。

カリキュラム構成

基本課程

56時間

到達目標

①対象の聴覚障害者の理解を確認しながらであれば、手話通訳が可能なレベル

②資料の活用等、手話以外のコミュニケーション手段が付随する場面で通訳が可能なレベル

養成目標

①手話通訳に必要な語彙を習得する。

②習得した語彙を用いて手話通訳に必要な表現能力を習得する。

③手話通訳技術(表現技術・翻訳技術)を習得する。

カリキュラム

〔別表3〕

応用課程

57時間

到達目標

一部難しい内容は聴覚障害者の理解の確認が必要であるが、日常場面の手話通訳は基本的に可能なレベル

養成目標

①より専門的な手話通訳に必要な語彙を習得する。

②習得した語彙を用いて手話通訳に必要な表現能力の応用を習得する。

③手話通訳技術(表現技術・翻訳技術)の応用を習得する。

④手話通訳実践技術の基礎を習得する。

カリキュラム

〔別表4〕

合計

113時間


[別表3] 手話通訳者 基本課程カリキュラム


教科名

時間数

目的(学習の目標)

内容

講義担当職種例

講義

ことばの仕組みⅡ(音声言語)

1.5

日本語(音声言語)の特徴を理解する。

1 言語の分類

2 音声言語共通の特徴

3 日本語の音

講師養成研修修了者

大学教員等学識経験者

ことばの仕組みⅡ(手話)

1.5

手話の特徴、音声言語との仕組みの違いを理解する。

1 手話共通の特徴

2 手話の「音」

講師養成研修修了者

大学教員等学識経験者

日本語演習

2

手話通訳者に必要な日本語の演習を通じ、場面や対象者に応じた日本語の使い方の向上を目指す。

1 日本語の文法(口語文法)

①品詞

②文

③敬語表現

2 場面や対象者に応じた日本語表現

3 演習

講師養成研修修了者

国語教員

手話通訳の理念と仕事(Ⅰ)

2

通訳の役割を理解し、手話通訳者として必要な基本知識を習得するとともに、手話通訳のメッセージ伝達の仕組み及び手話通訳者の職務を理解する。

1 通訳の役割と仕事

2 手話通訳活動の歴史

3 手話通訳者の役割

4 手話通訳の対象、場面

5 手話通訳者の身分

6 手話通訳者の職務

7 手話通訳の技術、技法

講師養成研修修了者

手話通訳士

手話通訳者の健康管理

1

手話通訳労働が身体及び精神に及ぼす疲労や影響を正しく理解し、健康に手話通訳活動ができる条件について理解する。

1 手話通訳者の健康問題と健康管理

2 手話通訳者が頸肩腕障害になる理由

3 健康に手話通訳を続けるための対策

講師養成研修修了者

専門医師

手話通訳士

実技

手話通訳能力の向上(Ⅰ)

10.5

1 手話通訳に必要な表現能力(読み取り通訳、聞き取り通訳)の基本を習得する。

2 手話の語彙を習得する。

1 具体的表現(CL表現)

2 格の決定(動きと方向)

3 同時表現(両手の活用)

4 空間の活用

5 代理的表現

6 指さしの活用

7 役割の切り替え(ロールシフト)

講師養成研修修了者

手話通訳能力の向上(Ⅱ)

13.5

1 手話で話すことと手話通訳することの相違点を知る。

2 手話通訳に必要な表現能力を習得する。

3 メッセージ蓄積能力の向上を図る。

4 要約能力(話のポイント把握、ことばの置き換え力)の向上を図る。

5 手話語彙を習得する。

1 手話通訳にチャレンジ

2 音声によるシャドーイングトレーニング

3 聴覚障害者が表現する手話のシャドーイングトレーニング

4 文章、音声、手話によるサマリートレーニング

①日本語表現から日本語での要約

②日本語表現から手話での要約

③手話表現から同じ手話での要約

④手話表現から別の手話での要約

⑤手話表現から日本語での要約

講師養成研修修了者

手話通訳の技術(基本)

18

1 手話通訳に必要な基本技術を習得する。

2 日本語の文法と手話の文法の違いを意識した通訳技術を習得する。

3 手話語彙を習得する。

1 逐次通訳技術の習得(読み取り)

要約表現と完全表現

2 同時通訳技術の習得(読み取り)

3 逐次通訳技術の習得(聞き取り)

要約表現と完全表現

4 同時通訳技術の習得(聞き取り)

講師養成研修修了者

場面における手話通訳技術(Ⅰ)

6

1 読み取り通訳、聞き取り通訳の切り替え技術を習得する。

2 通訳場面における遵守事項、留意事項を理解する。

3 通訳場面における個別の通訳技術を習得する。

4 手話語彙を習得する。

1 医療場面(問診場面等)での通訳練習

2 相談場面での通訳練習

3 教育場面(三者懇談等)での通訳練習

4 会議場面での通訳練習

①聴覚障害者の発言保障ができる通訳技術

②場面状況の情報提供

講師養成研修修了者


合計

56




※ 聴覚障害者が講義を担当する際には、適宜、手話通訳が必要である。

(注1) シャドーイングトレーニングとは、話し手の表現をほぼ同時に真似をして表現する練習をいう。

(注2) サマリートレーニングとは、メッセージを要約する練習をいう。

[別表4] 手話通訳者 応用課程カリキュラム


教科名

時間数

目的(学習の目標)

内容

講義担当職種例

講義

手話通訳の理念と仕事(Ⅱ)

2

手話通訳者の専門職としての倫理と具体的通訳場面での責務を理解するとともに、手話通訳者登録・派遣制度の概要を理解する。

1 手話通訳者の職業倫理

2 手話通訳領域と手話通訳者の仕事

①社会福祉法に基づく社会福祉事業としての情報保障、手話通訳

②環境整備・差別解消の取り組みとしての情報保障、手話通訳

3 手話通訳の具体的場面と内容

4 手話通訳者登録・派遣制度の仕組み

講師養成研修修了者

手話通訳士

聴覚障害児の教育

1.5

聴覚障害児教育の現状について理解するとともに、聴覚障害児の言語獲得やコミュニケーション方法の多様性について理解する。

1 聴覚障害児が教育を受ける場

2 聴覚障害児の言語発達と障害に対する認識

3 高等教育機関での教育

講師養成研修修了者

聴覚障害特別支援学校(ろう学校)教員等学識経験者

手話通訳者に必要な援助技術

1

医療、教育等コミュニティ通訳場面で手話通訳実践に必要な援助技術の基本を習得する。

1 通訳場面における通訳者の役割・事例検討

2 手話通訳者に必要な援助技術とは

①支援者の基本的立場

②手話通訳実践に必要な技術とソーシャルワーク

講師養成研修修了者

相談業務担当者

障害者福祉概論

1.5

日本における障害者福祉の関連法や制度等の歴史を理解するとともに、今日の障害児・者に対する福祉制度やサービスの概要を理解する。

1 日本における障害者福祉の歴史

2 障害者基本法の概要

3 障害者の実態

4 障害者総合支援法による障害福祉サービス等の概要

5 障害者福祉関連法の概要

講師養成研修修了者

福祉関係職員

実技

手話通訳能力の向上(Ⅲ)

7.5

1 手話通訳に必要な表現能力を習得する。

2 メッセージ蓄積能力の向上を図る。

3 要約能力の向上を図る。

4 手話語彙を習得する。

1 音声によるデカラージ・シャドーイングトレーニング

2 聴覚障害者が表現する手話のデカラージ・シャドーイングトレーニング

3 音声、手話によるサマリートレーニング(イントラリンガルトレーニング)

①日本語表現から日本語での要約

②日本語表現から手話での要約

③手話表現から同じ手話での要約

④手話表現から別の手話での要約

⑤手話表現から日本語での要約

講師養成研修修了者

手話通訳の技術(応用)

15

1 手話通訳に必要な基本技術の応用能力の向上を図る。

2 日本語の文法と手話の文法の違いを意識した通訳技術のレベルアップを図る。

3 手話語彙を習得する。

1 逐次通訳技術の習得(読み取り)

要約表現と完全表現

2 同時通訳技術の習得(読み取り)

3 逐次通訳技術の習得(聞き取り)

要約表現と完全表現

4 同時通訳技術の習得(聞き取り)

講師養成研修修了者

場面における手話通訳技術(Ⅱ)

22.5

1 通訳場面における遵守事項、留意事項を理解する。

2 通訳場面における個別の通訳技術を習得する。

3 人間関係の支援・情報提供について理解を深める。

4 手話語彙を習得する。

1 講演場面での通訳練習、事例検討

2 会議場面での通訳練習、事例検討

3 打ち合わせ場面での通訳練習、事例検討

4 相談場面での通訳練習、事例検討

5 面接場面(医療場面中心)での通訳練習、事例検討

6 ロールプレイ

講師養成研修修了者

手話通訳実践技術の基礎

6

1 手話通訳者としての役割やあるべき姿について認識する。

2 手話通訳実践技術の基礎を習得する。

3 手話通訳場面を客観的に観察する力を養い、場面対応力の基礎を学ぶ。

4 手話語彙を習得する。

1 意図の正しい理解・伝達

2 手話通訳例から考察

3 事例検討

4 ロールプレイ

講師養成研修修了者


合計

57




※ 聴覚障害者が講義を担当する際には、適宜、手話通訳が必要である。

(注1) デカラージ・シャドーイングトレーニングとは、話し手の表現を2~3語遅らせて模倣する練習をいう。

(注2) イントラリンガルトレーニングとは、メッセージ内容を把握した後にそれを別の言葉に置き換える練習をいう。

別添2

手話奉仕員及び手話通訳者の学習指導要領

第1章 総則

第1節 手話通訳者等養成カリキュラムの基本的考え方

第1 手話通訳者等養成事業の検討経過

1 手話奉仕員養成事業は、聴覚障害者のコミュニケーションの円滑化を図るため、昭和45(1970)年から都道府県及び政令指定都市への国の補助事業として、また、平成7(1995)年からは、市町村への補助事業として実施されてきた。

2 本事業は、事業開始以降すべての都道府県等で実施されるようになったこともあり、国民に手話を普及し、手話通訳活動に参加する者を育成する上で非常に大きな効果があった。しかし、反面、養成カリキュラム等が不十分であったため、実施にあたって都道府県等で地域格差を生ずる結果となった。

3 これらの課題を解決するため、平成10(1998)年の厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長通知により、手話奉仕員と手話通訳者の役割を明確化した、手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラムを都道府県等に通知した。

また、平成11(1999)年の通知により、手話奉仕員及び手話通訳者を養成する指導者がカリキュラムに基づく養成研修を行うために必要な学習指導要領を都道府県等に通知した。

4 この学習指導要領において、手話奉仕員の養成目標を「手話等を習得し、地域の聴覚障害者と手話で会話ができ、習得した手話等を活用して、地域の聴覚障害者団体の行事への参加や、手話サークル活動への参加等、手話活動を行う者」と位置づけた。また、手話通訳者の養成目標を「手話通訳に必要な知識及び技術等を習得し、地域において手話通訳活動を行う者」と位置付けた。

5 手話通訳者等の養成カリキュラム制定後、20年以上が経過し、全国的に一定レベルの養成が可能になり、言語としての手話の認知やICTの活用も含めたコミュニケーション方法に関する状況は大きく変化してきた。

また、ニーズの拡大もあり多様な場面での手話通訳が求められる一方、手話通訳者の高齢化、手話通訳活動ができる登録手話通訳者の減少、手話通訳者を目指す人材の不足等、新たな課題が指摘されている。

6 平成18(2006)年12月に国連総会において「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」が採択され、手話が音声言語と同等の言語として定義された。

7 この権利条約を批准するため「障害者基本法」の改正が行われ、手話が言語に含まれると明記されるとともに、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行され、あらゆる差別の禁止や合理的配慮の提供等により、手話によるコミュニケーションや意思疎通の配慮等が図られてきた。

8 手話通訳者等の養成事業及び派遣事業は都道府県及び市町村のメニュー事業として実施されてきたが、平成18(2006)年に施行された「障害者自立支援法」において地域生活支援事業の一つとして整理され、平成25(2013)年に施行された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」において手話通訳者養成事業は都道府県、手話奉仕員養成事業は市町村の必須事業として整理された。

9 最近では、ICT技術の進展により、遠隔手話通訳サービスや電話リレーサービス等の情報保障の多様化も急速に進んでいる。

10 このような社会環境の変化等に対応できる手話通訳者等の養成が必要となってきており、今回の検討に至ったものである。

第2 養成にあたっての基本視点

1 聴覚障害のある者が、ない者と真に対等、平等の立場で社会参加するためには、情報の保障、コミュニケーションの保障及び自己決定できる条件等の保障が不可欠である。手話奉仕員及び手話通訳者は、この点を十分に認識して活動や業務を行う必要があり、養成にあたっても、この点を重視すべきである。

2 手話奉仕員及び手話通訳者は、その活動や業務において聴覚障害者のプライバシーに関わることが多い。当然のことながら活動や業務上知り得た個人の秘密保持、人権尊重等手話奉仕員及び手話通訳者としての倫理観の確立を重視した養成を行うべきである。

3 手話奉仕員及び手話通訳者は、習得した専門的知識や技術を用いて聴覚障害者へのコミュニケーション保障等に関わるが、決して保護的立場や、指導的立場ではない。あくまでも人間として対等、平等であることを十分に認識して活動や業務を行う必要があり、養成にあたっても、この点を重視すべきである。

4 手話奉仕員及び手話通訳者は、聴覚障害者の社会参加の推進や、手話や手話通訳に関わる理解と認識を深めるため、聴覚障害者団体や手話サークル等の社会活動に積極的に参加することが大切であることを重視した養成を行うべきである。

5 手話奉仕員及び手話通訳者は、相互援助、相互研鑽のためにも、集団的に活動することが大切であることを重視した養成を行うべきである。

第3 カリキュラム編成等の基本的考え方

1 手話通訳者等の養成カリキュラムは、これまでと同様に、様々な分野、様々な年齢層の人々が参加する地域での手話講習会に照準を当てた内容とした。

2 カリキュラムの編成にあたって、これまでと同様に、学習指導要領における養成目標を、手話等を習得し、地域の聴覚障害者と手話で会話ができ、習得した手話等を活用して、地域の聴覚障害者団体の行事への参加や、手話サークル活動への参加等、手話活動を行う「手話奉仕員」と、手話通訳に必要な知識及び技術等を習得し、地域において手話通訳活動を行う「手話通訳者」の養成とに明確に区分した。

3 手話奉仕員及び手話通訳者の養成について、それぞれ養成カリキュラムの見直しを行うとともに、養成を担当する講師については、厚生労働省(委託先:社会福祉法人全国手話研修センター)や都道府県等が実施する講師養成研修を修了した者を基本とする等、全国統一的な養成の徹底を図ることとした。

第2節 手話通訳者等養成カリキュラムの概要

第1 手話奉仕員養成カリキュラムの概要

1 手話奉仕員養成カリキュラムでは、養成対象者を「日本語で日常会話ができ、手話の学習経験がない者等」とし、養成目標を「聴覚障害、聴覚障害者の生活及び関連する法律・制度等についての理解と認識を深めるとともに、コミュニケーションにおいて活用できる基礎的な手話の技能を身に付ける。」と設定した。

2 カリキュラム構成については、入門課程及び基礎課程とし、入門課程にあっては、講義5時間、実技30時間の計35時間とし、基礎課程にあっては、講義5時間、実技30時間の計35時間として、合わせて講義10時間、実技60時間の合計70時間に設定した。

なお、この設定時間数については、全国統一的内容を講習するために必要な最低時間数を定めたものであり、それぞれの地域において求められる手話奉仕員養成レベルに見合ったより長い養成時間の設定をすることができる。

3 手話奉仕員養成カリキュラムの中で「日本の手話」及び「基本文法」と表現しているが、「日本の手話」とは、「現在日本の聴覚障害者が日常生活において一般的に使用している手話」であり、「基本文法」とは、「現在日本の聴覚障害者が日常生活において一般的に使用している手話の共通的な主な特徴」という範囲で定義づけているものである。

第2 手話通訳者養成カリキュラムの概要

1 手話通訳者養成カリキュラムでは、養成対象者を「手話通訳者を目指し、次の条件を満たす者①日本語を理解し、使用することができる。②聴覚障害者と手話で日常会話ができる。」とし、養成目標を「障害者福祉の概要や手話通訳者の役割・責務等について理解と認識を深めるとともに、手話通訳に必要な手話語彙、手話通訳能力及び手話通訳技術の基本を習得する。」と設定した。

2 カリキュラム構成については、基本課程及び応用課程とし、基本課程にあっては、講義8時間、実技48時間の計56時間、応用課程にあっては、講義6時間、実技51時間の計57時間として、合わせて講義14時間、実技99時間の合計113時間に設定した。

なお、この設定時間数については、全国統一的内容を講習するために必要な最低時間数を定めたものであり、それぞれの地域において求められる手話通訳者養成レベルに見合ったより長い養成時間の設定をすることができる。

第3節 手話通訳者等養成カリキュラムの活用

第1 養成講座企画にあたっての留意点

1 手話通訳者等の養成カリキュラムについては、養成に必要な全国統一的内容を定めたものであり、地域において養成講座を企画するにあたり、地域で必要と判断した講義及び実技を加えて差し支えない。

2 講義テーマによっては、地域性を出すことで学習効果があがる場合がある。

例えば、「聴覚障害者の生活」等は、聴覚障害者のくらしに関わる全体的な問題を包括的に講義する方法の他に、地域の聴覚障害者を講師として、「職場でのコミュニケーション」「病院でのコミュニケーション」等というようにテーマを絞って色々な人から話を聞く方法もあり、地域の実情にあった講師の選定に留意することが望ましい。

3 手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラムの各課程の講座定員は、1教室あたり、原則として20名以内が望ましい。

1回の講座数及び講座期間、1講座の時間については、地域の実情に合わせて設定して差し支えない。

第2 養成講座指導にあたっての留意点

1 養成講座における指導内容を高めるためにも、講師の役割は重要である。カリキュラムの構成やテキストのねらい等について正しく理解し、自信を持って指導するためにも、講師養成研修には必ず参加することが大切である。

2 講師は、講師養成研修を修了した者を基本とするが、当面、これと同等の力を有すると認められた者も可能とする。なお、養成事業実施団体は、担当講師の講師養成研修受講を計画的に進めることが大切である。

3 指導内容の統一化及び充実を図るためにも、養成講座を担当する複数の講師で講師団を編成し、講習計画(講習カリキュラム)及び指導案の作成を行うことが大切である。

4 養成講座を複数の講師で担当する場合には、養成講座の進め方や、それぞれの講師の責任分担等を調整し、養成講座を効果的に運営することが大切である。

5 講師は、聴覚障害のある講師と聞こえる講師が協力して指導することを基本とするが、地域の実情、講座内容等によっては1名で担当することも可能である。

また、指導にあたり、サブ講師等の協力は差し支えないが、十分、打ち合わせを行いスムーズな講座運営に努めることが大切である。

6 聴覚障害のある講師と聞こえる講師は、対等かつ平等の立場であることを認識し、お互いの能力が十分発揮できるような役割分担が重要である。

7 受講者に講習内容の理解が高まるように、受講者や講習ポイントに合わせた補助教材等の準備をすることが大切である。

8 地域で開催する養成講座であることを認識し、受講者中心の楽しい講座運営をこころがけることが大切である。講師が一方的に教えるだけの講習ではなく、受講者が積極的、自発的に参加できる運営をすることにより、学習効果を高めることが大切である。

第2章 各課程

第1節 手話奉仕員養成カリキュラム「入門課程」

【講義】

第1 聴覚障害の基礎知識

1 目標

耳の仕組みや聴覚障害の原因を理解するとともに、聴覚障害者のコミュニケーション方法を理解する。

2 内容

(1) 障害の見方

① 医学モデルと社会モデル、二つの見方があることを理解する。

② 聴覚障害による不便さへの支援は、社会モデルに立って考えることを理解する。

(2) 耳の働き、聞こえの仕組み

① 耳の仕組みと聞こえの仕組みの基本を理解する。

② 聴覚障害の種類とその特徴を理解する。

③ 聴覚障害による不便さと対応について理解する。

(3) 身体障害者福祉法における障害認定

① 身体障害者手帳の障害程度等級と聞こえの程度の関連を理解する。

(4) ことばの獲得・習得と発達

① ことばの獲得・習得過程と聴覚障害の関係を理解する。

② 教育の場や、手話の獲得・習得の大切さを知る。

(5) 補聴器と人工内耳

① 補聴器の活用、補助制度について理解する。

② 補聴器が必要な人について理解する。

③ 人工内耳の仕組み、手術の要件、手術後の支援が必要なことを理解する。

(6) コミュニケーション方法と対応・支援

① 聞こえのサポート、福祉制度における支援を理解する。

② 聴覚障害者のコミュニケーション方法について理解する。

第2 手話の基礎知識(ことばの仕組みⅠ[手話])

1 目標

日本の手話の歴史及び特徴を理解する。

2 内容

(1) 身振りと手話の違い

① 身振りと手話の違いを理解する。

(2) 手話と音声言語の違い

① 聴覚障害者の生活における手話の必要性を理解する。

② 日本語と手話の違いを理解する。

(3) 日本の手話の歴史

① 日本の手話の歴史について理解する。

② 日本の手話の研究、新しい手話創作の必要性について理解する。

(4) 標準手話と地域の手話

① 手話の地域性、個人性等について理解するとともに、それが形成された歴史的背景について理解する。

② 標準手話の習得の必要性及び地域の聴覚障害者が使用する手話の習得の必要性について理解する。

第3 聴覚障害者の生活

1 目標

聴覚障害者の日常生活とその課題や対応方法を理解する。

2 内容

(1) 聴覚障害者(ろう者、難聴者、中途失聴者、盲ろう者等)の障害特性とアイデンティティ

① 同じ聴覚障害者であっても、障害の程度や障害者になった時期、教育内容等により障害特性やアイデンティティが異なることを理解する。

(2) 家族とのコミュニケーションと生活

① 聴覚障害者が家族と生活する上でのさまざまな課題や工夫について理解するとともに、共生社会のあり方について理解する。

(3) 地域の人々とのコミュニケーションと生活

① 聴覚障害者が地域で生活する上でのさまざまな課題や工夫について理解するとともに、共生社会のあり方について理解する。

(4) 家庭生活、社会生活でのコミュニケーション(保育、教育、医療等)

① 聴覚障害者の結婚、出産、育児等でのさまざまな課題や工夫について理解するとともに、共生社会のあり方について理解する。

(5) 職場でのコミュニケーション

① 聴覚障害者の就職、職場での課題等、労働問題について理解するとともに、情報保障のあり方等について理解する。

【実技】

第1 手話との出会い

1 目標

(1) 手話表現の基本を理解する。

(2) 場面に応じたあいさつができる。

(3) 簡単な日常生活の表現ができる技能を習得する。

(4) 日本語(音声言語)と手話の違いを理解する。

(5) 身の回りのことを表現する基本的な手話語彙を習得する。

2 内容

(1) あいさつ・自己紹介

① 自分の名前を手話や指文字で表せるようにする。

② 質問に対して、「頷き(肯定)」、「首振り(否定)」で答えられるようにする。

(2) 数字・自己紹介

① 時刻、年齢、誕生日など2桁以内の数を使って表すことができるようにする。

② 日にちを表すことができるようにする。

(3) 地名・自己紹介

① 身近な地名や交通の手段について話すことができるようにする。

(4) 職業・自己紹介

① 仕事が始まる時間、働く人数などについて話すことができるようにする。

(5) 時間表現(1日の生活)

① 時刻を用いて、1日の生活を話すことができるようにする。

(6) 気持ちを表す表現・表情や強弱

① 「好き」、「嫌い」などについて、表情や手話の強弱を使って話すことができるようにする。

(7) 疑問詞の表現

① 「何」、「いつ」、「誰」、「どこ」、「どちら」などの疑問詞を使って尋ねたり答えたりできるようにする。

(8) 指文字

① 指文字を使う場面を理解できるようにする。

② 指文字を使うことができるようにする。

(9) 総合練習(自己紹介)

① 自己紹介に関わる短い手話の文を見て理解できるようにする。

② 自己紹介に関わる短い文を手話で表すことができるようにする。

第2 語彙を増やす

1 目標

(1) 日常会話の表現を見て理解する力を高める。

(2) 手話の語彙を増やし、使い方を習得する。

(3) 手話構文の組み立て方を習得する。

2 内容

(1) 時に関わる表現(1週間、1年等)

① 1週間の生活について簡単な文で話すことができるようにする。

(2) スポーツや趣味の表現

① スポーツや趣味について簡単な文で話すことができるようにする。

(3) 繰り返し表現

① 語を繰り返すことで、継続したことを表したり、強調したりできるようにする。

(4) 具体的表現(形や動作のCL表現(注1))

① 物の形や手の動作を使って身の回りにあるものを表すことができるようにする。

(5) 空間の活用(位置、方向)

① 空間を使って、建物の位置や行く方向を表すことができるようにする。

(6) 否定の表現

① 「~がない」、「~ではない」、「~ができない」などの否定の表現を使うことができるようにする。

(7) 身体の状態の表現

① 身体の部位を活用して、身体の状態について表すことができるようにする。

(8) 他の人の話を伝える表現(動詞の動き)

① 動詞の動きと方向を活用して、他の人が話したことを伝えることができるようにする。

(9) さまざまな場面での会話練習・手話によるスピーチ

① 身近で簡単な事柄について、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。

(注1) CL表現

手話では、話者が物の形や動き、物を動かす様子などを述べる時に、特定の手指を物に見立てて表現する方法がある。日本語の助数詞が対象物の属するカテゴリーに応じて選択されることと同様に、手話でも対象物の属するカテゴリーに応じて適切な手指が選択されることとなり、この手指を言語学の研究では「Classifier(類別辞)」と呼ぶ。これを略した用語「CL(シーエル)」が世界各地の手話指導現場等で広く使用されている。この用語を用いて「具体的表現(CL表現)」とする。

第2節 手話奉仕員養成カリキュラム「基礎課程」

【講義】

第1 障害者福祉の基礎