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○医療用医薬品の製造に当たり承認書の「別紙規格欄」及び「規格及び試験方法欄」に規定する試験方法に代用しうる試験方法を実施する場合の取扱いについて

(令和5年6月21日)

(/薬生薬審発0621第4号/薬生監麻発0621第5号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)

(公印省略)

医療用医薬品(体外診断用医薬品、生物由来製品を除く。以下「医薬品」という。)について、承認書の「別紙規格欄」及び「規格及び試験方法欄」に規定された試験方法に代用しうる試験方法を行う場合の取扱いを下記のとおり定めたので、貴管下関係業者等に対して周知いただきますようお願いします。

1.基本的な考え方

医薬品原薬等の供給元の多様化等を背景に、承認書に規定する規格及び試験方法を前提にしつつも、運用実態として承認書に規定する規格及び試験方法の実施が困難な場合がある。その中で、承認された際の品質を確保・維持しつつ、医薬品の安定的な供給を図るためには、承認書に規定する試験方法と製造所、試験機関等で実施される試験方法の同等性等を適切に検証し、恒常的に管理することが必要となる。

医薬品の試験の実態において、承認書の「別紙規格欄」及び「規格及び試験方法欄」に規定する試験方法(以下「規定の試験方法」という。)に代用しうる方法(以下「代用法」という。)により試験を行うことは、それが真度(正確さ)、精度(精密さ)等の分析能パラメータにより規定の試験方法と同等以上の分析性能があることや当該方法により承認規格への適合・不適合が確認できること等が検証及び文書化され、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号。以下「GMP省令」という。)に基づく管理が適切に行われている場合は許容され得る。

代用法は、基本的に、規定の試験方法と同一の原理の試験方法であることを前提とする。ただし、原理が異なる場合も2.(3)(イ)に該当する場合には代用法として取り扱うことができる。また、代用法は、その試験結果について疑いのある場合には、規定の試験方法で最終の判定を行うことを前提に実施される。

既承認医薬品に係る通常時の試験方法として、今後も代用法を継続する場合は、製造販売承認事項の一部変更承認申請等を行うこと。なお、製造販売承認事項の一部変更承認申請等が行われていること及び製造販売業者の責任において、医薬品の品質を適切に保証可能と判断できることを前提に、代用法による出荷を継続することができるものとするが、審査の過程において代用法が妥当ではないと判断された場合には、速やかに適切な試験方法により市場流通品の品質確認を行うとともに、不適合品を認めた場合は回収等の措置を講じること。ただし、規定の試験方法が現在の関係通知又は科学的水準からみて不十分と認められる場合は、代用法を実施するのではなく、速やかに製造販売承認事項の一部変更承認申請等を行うことが適当である。

また、代用法の基本原則に適合しない試験方法を規定の試験方法の代わりとして実施しようとする場合は、製造販売承認事項の一部変更承認申請等の必要な変更手続きを行った上で実施することが必要になる。

2.本取扱いの対象となる試験方法

本取扱いは、医薬品に係る規定の試験方法のうち、以下の(1)~(3)全ての条件に該当する試験方法及び当該試験方法に係る代用法を対象とする。

(1) 化成品に係る試験であること。

(2) 規定の試験方法が医薬品の品質等に係る日本薬局方又は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第42条に係る基準の各条に定める試験方法以外の試験方法であること。

(3) 以下のいずれかに該当すること。

(ア) 代用法が、規定の試験方法と同一の原理の試験方法(注)で、規定の試験方法と同等以上の分析性能がある場合

(注:以下のようなケースが含まれ得る。疑義等がある場合は、個別に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に相談すること。

・ 規定の試験方法と異なる発色試薬を使用した定性試験

・ 規定の試験方法と異なるカラム、流速、移動相で行うクロマトグラフィー

・ 確認試験として赤外吸収スペクトル測定法(IR)を設定しており、規定の測定法(錠剤法、ATR法等)とは異なる測定法により確認を行う場合)

(イ) 代用法が、規定の試験方法とは原理が異なる試験方法であるが、以下の①、②又は③に該当し、規定の試験方法と同等以上の分析性能がある場合

① 確認試験又は有機不純物を対象とする純度試験において、規定の試験方法が薄層クロマトグラフィーによる試験方法であるときに、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はガスクロマトグラフィー(GC)による代用法を行おうとする場合

② 定量法において、規定の試験方法が滴定法、蛍光光度法又は紫外可視吸光度測定法による試験方法であるときに、クロマトグラフィーによる代用法を行おうとする場合

③ 官能基の確認試験において、規定の試験方法が呈色反応による試験方法であるときに、赤外吸収スペクトル測定法(IR)による代用法を行おうとする場合

3.対応方法

(1) 代用法を実施する際の要件

(ア) 代用法の導入前に、以下の事項を含め、試験方法のバリデーション及び規定の試験方法とのクロスバリデーションを行い、適切に検証し文書化を行うこと。

①規定の試験方法と同等以上の分析性能があること。

②代用法により、承認規格への適合・不適合が確認できること。

③代用法の検証記録等を、GMP省令第20条又は第22条の規定に基づき、適切な期間保管すること。

なお、クロスバリデーションとは、同一試料に対して規定の試験方法と代用法を並行して試験を実施し、同等の試験結果が得られることを検証する一連の作業をいう。クロスバリデーションによる比較は、それぞれの試験方法のフルバリデーション又はパーシャルバリデーションを実施した上で実施する。クロスバリデーションを行う場合、規定の試験方法のバリデーション結果に基づき、あらかじめ適切な判定基準を定め、当該基準を満たすことを検証すること。

(イ) 代用法の試験方法、妥当性の根拠等を医薬品製品標準書に記載しておくこと。また、代用法の変更管理を行う場合は上記(ア)に準じて規定の試験方法を対照に検証を行うこととし、試験方法の検証の記録を含めた当該変更管理に係る記録については、GMP省令第20条又は第22条の規定に基づき、適切な期間保管すること。必要な記録等を整備しておくこと。

(ウ) 実際の製造の際に、代用法の結果について疑いのある場合は、承認書に製造所又は試験機関として記載された施設において規定の試験方法で試験を行うことが必要になる。このため、代用法を用いる場合でも、規定の試験方法を実施するための手順、設備、体制を整備しておくこと。なお、規定の試験方法で使用する試薬、機材等(例えば、滴定法における発色試薬やクロマトグラフィーにおけるカラムなど。)が入手できない状況となった場合は、速やかに製造販売承認事項の一部変更承認申請等を行うこと。

(エ) 製造される医薬品原薬等が原薬等登録原簿(MF)に登録されている場合を含め、原薬、添加剤等の原材料及び製剤の試験を委託して行わせる場合、実際の製造所、試験機関等において代用法を用いることについて製造所と製造販売業者の間で十分な情報・認識の共有を行い、合意を得ておくこと。

(2) 手順の整備等

(ア) 上記(1)に示す検証等が適切に実施されていることを前提として、代用法の実施により、実際に規定の試験方法を実施していなくとも、その結果によって承認規格への適合・不適合を判断することは差し支えない。

(イ) 代用法は、3.(1)(ア)の検証がなされた試験方法であるため、代用法により不適合の結果が出た後に、必ずしも規定の試験方法による再試験を行う手順とする必要は無い。

また、仮に代用法で不適合の結果が出た後に、別途規定の試験方法で再試験を実施し、適合の結果が得られた場合、短絡的に当該ロットが承認規格に適合していると判断せずに、関連する手順書に従って適切な原因調査及び影響評価を行い、それらの結果を踏まえて最終判定を行うこと。

(ウ) 製造の際に代用法を実施すること等をあらかじめ医薬品製品標準書、手順書等に定めておくこと。なお、この限りにおいて、代用法を行ってもGMP省令第15条の逸脱の管理は要しない。

(エ) 規定の試験方法と同等以上の分析性能を有していない可能性が疑われる場合など、代用法の試験結果に疑義がある場合には、規定の試験方法を実施すること。この上で、バリデーションを含む再検証の要否、代用法による試験方法により出荷判定を行った製品への品質評価等を検討すること。

(オ) 定期的な機器の保守・メンテナンスのため代用法を用いる期間が一定頻度で発生する場合、定期的に代用法が規定の試験方法と同等以上の分析性能を有していることを確認しておくこと。また、確認の記録は、GMP省令第20条又は第22条の規定に基づき、適切な期間保管すること。

4.医薬品医療機器等法上の取扱いに関する留意点等

(1) 既承認医薬品に係る通常時の試験方法として、代用法を継続する場合は、製造販売承認事項の一部変更承認申請等を行うこと。その他の場合は個別の判断を要するが、既承認医薬品又は新規申請品目において、機器の故障・修理及び保守・メンテナンス等のために一時的に代用法により試験を行う場合、製造販売承認事項の一部変更承認申請等の措置又は新規申請時の承認申請書への記載は要しないものとする。ただし、将来発生しうる承認申請、GMP省令に定める基準への適合性に係る調査(以下「GMP調査」という。)申請等に際し、規制当局からの求めに応じて、代用法の妥当性等を説明する資料や変更管理の記録等を提出できるようにしておくこと。また、必要に応じて審査又はGMP調査の際に、①代用法の妥当性、根拠、②医薬品製品標準書、手順書等への記載、③承認規格外の試験結果の処理、④変更管理の記録、⑤規定の試験方法が手順書どおり支障なく行えることを定期的に確認した記録等について確認するので留意すること。

(2) 上記(1)に基づき、製造販売承認事項の一部変更承認申請等又は承認事項への記載を要しない範囲で代用法を用いる場合、将来発生しうる「別紙規格欄」若しくは「規格及び試験方法欄」に係る一部変更承認申請等又は新規申請の際に、本通知に則った代用法を実施している旨を備考欄に記載するとともに、審査部門の求めに応じて、代用法の内容及び妥当性を説明する資料を提出すること。

(3) 代用法により試験を行い、承認規格に適合していることをもって出荷された製品は、上記1.の妥当性確認等が適切になされており、品質に影響がないことが確認できている場合に限り、規定の試験方法を行っていないことのみを理由として回収を行う必要はない。

(4) 代用法の使用の有無に関わらず、規定の試験方法が現在の関係通知、科学的水準等からみて不十分と認められる場合、又は規定の試験方法では最終の判定を行うことができない状況にある場合は、速やかに製造販売承認事項の一部変更承認申請等を行うこと。

(5) 都道府県等により行われる収去検査等は、原則として規定の試験方法により行われるので留意すること。

(6) 本通知の通知日以前に規定の試験方法とは異なる試験方法を導入しており、当該試験方法が本通知に記載された代用法の要件を満たさない試験方法(以下「別法」という。)である場合、市場流通品に対し速やかに規定の試験方法により品質確認を行う等、必要な措置を講じること。また、今後も継続して別法により試験を行う必要がある場合は、速やかに製造販売承認事項の一部変更承認申請等を行うこと。なお、医薬品の安定供給等の観点から、別法による出荷を継続せざるを得ない場合、製造販売承認事項の一部変更承認申請等が行われていること及び製造販売業者の責任において、医薬品の品質を適切に保証可能と判断できることを前提に、別法による出荷の継続を許容することもありうるが、審査の過程において別法の変更又は廃止が必要と判断された場合には、速やかに適切な試験方法により市場流通品の品質確認を行うとともに、不適合品を認めた場合は回収等の措置を講じること。

以上