○生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律の公布について〔旅館業法〕
(令和5年6月14日)
(生食発0614第2号)
(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知)
(公印省略)
生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律(令和5年法律第52号。以下「改正法」という。)については、第211回国会(通常国会)において、政府案を一部修正の上、令和5年6月7日に可決成立し、本日公布されたところである。
改正法の趣旨及び主な内容は下記のとおりであるので、これらの内容について十分御了知の上、貴管下営業者に対する周知徹底及び指導等について、遺漏なきよう適切な対応を願いたい。
必要な政省令等については、今後順次制定し、その内容については別途連絡する予定であるので、あらかじめ御承知おき願いたい。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であることを申し添える。
記
第1 改正法の趣旨
生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るため、旅館業の営業者が新型インフルエンザ等感染症等の症状を呈している宿泊者等に対して感染防止対策への協力を求めることができる規定の創設、事業譲渡に係る手続の整備等の措置を講ずる。
第2 改正法の主な内容
1 旅館業法の一部改正関係
(1) 旅館業の施設における宿泊者に対する感染防止対策への協力の求めに関する事項
ア 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)に規定する一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症(入院又は宿泊療養若しくは自宅療養に係る感染症法の規定が準用されるものに限る。以下同じ。)及び新感染症を「特定感染症」と定義することとしたこと。(旅館業法第2条第6項関係)
イ 営業者は、宿泊しようとする者に対し、旅館業の施設における特定感染症のまん延の防止に必要な限度において、特定感染症国内発生期間に限り、次に掲げる者の区分に応じ、それぞれ次の協力を求めることができることとしたこと。(旅館業法第4条の2第1項関係)
(ア) 特定感染症の症状を呈している者その他の政令で定める者 次に掲げる協力
① 当該者が特定感染症の患者等(特定感染症(新感染症を除く。)の患者、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は指定感染症の患者とみなされる者及び新感染症の所見がある者をいい、宿泊することにより旅館業の施設において特定感染症をまん延させるおそれがほとんどないものとして厚生労働省令で定める者を除く。以下同じ。)であるかどうかが明らかでない場合において、医師の診断の結果その他の当該者が特定感染症の患者等であるかどうかを確認するために必要な事項として厚生労働省令で定めるものを厚生労働省令で定めるところにより営業者に報告すること。
② 当該旅館業の施設においてみだりに客室その他の当該営業者の指定する場所から出ないことその他の旅館業の施設における当該特定感染症の感染の防止に必要な協力として政令で定めるもの
(イ) 特定感染症の患者等 (ア)の②に掲げる協力
(ウ) (ア)及び(イ)に掲げる者以外の者 当該者の体温その他の健康状態その他厚生労働省令で定める事項の確認の求めに応じることその他の旅館業の施設における当該特定感染症の感染の防止に必要な協力として政令で定めるもの
ウ イの特定感染症国内発生期間は、次に掲げる特定感染症の区分に応じ、それぞれ次の期間(特定感染症のうち国内に常在すると認められる感染症として政令で定めるものにあっては、政令で定める期間)とすることとしたこと。(旅館業法第4条の2第2項関係)
(ア) 一類感染症及び二類感染症 当該感染症が国内で発生した旨の公表が行われたときから、国内での発生がなくなった旨の公表が行われるまでの間
(イ) 新型インフルエンザ等感染症及び新感染症 当該感染症が国内で発生した旨の公表が行われたときから、当該感染症が新型インフルエンザ等感染症として認められなくなった旨の公表又は当該感染症について一類感染症に係る感染症法の規定を適用することを定める政令の廃止が行われるまでの間
(ウ) 指定感染症 感染症法第44条の7第1項の規定により国内で発生した旨の公表が行われ、かつ、当該感染症について入院又は宿泊療養若しくは自宅療養に係る感染症法の規定が準用されたときから、当該感染症について全国的かつ急速なまん延のおそれがなくなった旨の公表が行われ、又は当該感染症について入院並びに宿泊療養及び自宅療養に係る感染症法の規定がいずれも準用されなくなるときまでの間
エ 厚生労働大臣は、イの(ア)の②及び(ウ)の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者並びに旅館業の業務に関し専門的な知識及び経験を有する者の意見を聴かなければならないこととしたこと。(旅館業法第4条の2第3項関係)
オ 宿泊しようとする者は、営業者からイの協力の求めがあったときは、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならないこととしたこと。(旅館業法第4条の2第4項関係)
(2) 旅館業の営業者が宿泊を拒むことができる事由の見直しに関する事項
ア 宿泊しようとする者が、伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるときに宿泊を拒むことができることとされていたところを、特定感染症の患者等であるときに宿泊を拒むことができることとしたこと。(旅館業法第5条第1項第1号関係)
イ 宿泊しようとする者が、営業者に対し、その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求として厚生労働省令で定めるものを繰り返したときは、宿泊を拒むことができることとしたこと。(旅館業法第5条第1項第3号関係)
(3) みだりに宿泊を拒むことの禁止等に関する事項
営業者は、旅館業の公共性を踏まえ、かつ、宿泊しようとする者の状況等に配慮して、みだりに宿泊を拒むことがないようにするとともに、宿泊を拒む場合には、宿泊を拒むことができる事由のいずれかに該当するかどうかを客観的な事実に基づいて判断し、及び宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにすることとしたこと。(旅館業法第5条第2項関係)
(4) 厚生労働大臣による指針の作成に関する事項
ア 厚生労働大臣は、宿泊者に対する感染防止対策への協力の求めに関する事項及び宿泊を拒むことができる事由等に関する事項に関し、営業者が適切に対処するために必要な指針(以下この(4)において単に「指針」という。)を定めることとしたこと。(旅館業法第5条の2第1項関係)
イ 厚生労働大臣は、指針を定める場合には、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者、旅館業の業務に関し専門的な知識及び経験を有する者並びに旅館業の施設の利用者の意見を聴かなければならないこととしたこと。(旅館業法第5条の2第2項関係)
ウ 厚生労働大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならないこととしたこと。(旅館業法第5条の2第3項関係)
エ イ及びウは、指針の変更について準用することとしたこと。(旅館業法第5条の2第4項関係)
(5) 事業譲渡による旅館業の営業者の地位の承継に関する事項
営業者が旅館業を譲渡する場合において、譲渡人及び譲受人がその譲渡及び譲受けについて都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長。以下同じ。)の承認を受けたときは、譲受人は、営業者の地位を承継することとしたこと。(旅館業法第3条の2関係)
(6) 従業者に対する必要な研修の機会の付与に関する事項
営業者は、旅館業の施設において特定感染症のまん延の防止に必要な対策を適切に講じ、及び高齢者、障害者その他の特に配慮を要する宿泊者に対してその特性に応じた適切な宿泊に関するサービスを提供するため、その従業者に対して必要な研修の機会を与えるよう努めなければならないこととしたこと。(旅館業法第3条の5第2項関係)
(7) 宿泊者名簿の記載事項の見直しに関する事項
営業者が旅館業の施設等に備え、都道府県知事の要求に応じて提出しなければならない宿泊者名簿の記載事項について、宿泊者の職業を削除し、宿泊者の連絡先を追加することとしたこと。(旅館業法第6条第1項関係)
(8) その他所要の改正を行うこと。
2 食品衛生法、理容師法、興行場法、公衆浴場法、クリーニング業法、美容師法及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律の一部改正関係
営業を譲渡する場合の営業者の地位の承継について、1の(5)に準じた改正を行うこととしたこと。(食品衛生法第56条、理容師法第11条の3、興行場法第2条の2、公衆浴場法第2条の2、クリーニング業法第5条の3、美容師法第12条の2及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律第7条関係)
第3 施行期日等
1 施行期日
この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、附則第12条の規定は、公布の日から施行すること。(附則第1条関係)
2 検討
(1) 政府は、第2の1の(1)のイの協力の求め(第2の1の(1)のイの(ウ)に掲げる者にあっては、当該者の体温その他の健康状態その他厚生労働省令で定める事項の確認に係るものに限る。)を受けた者が正当な理由なくこれに応じないときの対応の在り方について、旅館業の施設における特定感染症のまん延防止を図る観点から検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしたこと。(附則第2条第1項関係)
(2) 政府は、過去に旅館業の施設において宿泊を拒むことができる事由に関する規定の運用に関しハンセン病の患者であった者等に対して不当な差別的取扱いがされたことを踏まえつつ、第2の1の(2)の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしたこと。(附則第2条第2項関係)
(3) (1)及び(2)のほか、政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後のそれぞれの法律の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、当該規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしたこと。(附則第2条第3項関係)
3 経過措置
(1) 都道府県知事は、当分の間、本改正により措置した規定により営業者の地位を承継した者(営業の譲渡により当該地位を承継したものに限る。)の業務の状況について、当該地位が承継された日から起算して6月を経過するまでの間において、少なくとも1回調査しなければならないこととしたこと。(附則第3条第1項、第4条第2項、第5条第2項、第6条第2項、第7条第2項、第8条第2項、第9条第2項及び第10条第2項関係)
(2) 旅館業の営業者は、当分の間、第2の1の(2)のア又はイのいずれかに該当することを理由に宿泊を拒んだときは、厚生労働省令で定める方法により、その理由等を記録しておくこととしたこと。(附則第3条第2項関係)
(3) (1)及び(2)のほか、この法律の施行に関し必要な経過措置を定めること。(附則第3条第3項、第4条第1項、第5条第1項、第6条第1項、第7条第1項、第8条第1項、第9条第1項、第10条第1項、第11条及び第12条関係)
別添
[様式ダウンロード]