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○「既に得られているその組成、性状等に関する知見」としての取扱いについて

(平成30年3月14日)

(/薬生発0313第8号/20180308製局第1号/環保企発第1803124号/)

(厚生労働省医薬・生活衛生局長、経済産業省製造産業局長、環境省大臣官房環境保健部長通知)

下記の取扱いについては、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号。以下「法」という。)第4条第1項(法第7条第2項において準用する場合を含む。)及び法第5条第2項で規定する「既に得られているその組成、性状等に関する知見」によるものとして平成30年4月1日から運用する。

なお、「既に得られているその組成、性状等に関する知見」としての取扱いについて(平成23年3月31日付け薬食発0331第4号・平成23・03・29製局第2号・環保企発第110331006号厚生労働省医薬食品局長・経済産業省製造産業局長・環境省総合環境政策局長連名通知)については、平成30年3月31日をもって廃止する。

1 1種類以上の単量体単位の連鎖により生成する分子の集合から構成され、3連鎖以上の分子の合計重量が全体の50%以上を占め、かつ同一分子量の分子の合計重量が全体の50%未満であり、数平均分子量が1,000以上の化合物(以下「高分子化合物」という。)であって、以下の(1)及び(2)の条件を満たすものについては、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生物の体内に蓄積されやすいものでないものとして、以下の(1)から(3)までの条件をすべて満たすものについては法第4条第1項第2号イに該当しないものとして、また、以下の(1)、(2)及び(4)の条件をすべて満たすものについては法第4条第1項第2号ロに該当しないものとして、それぞれ取り扱うこととする。なお、以下の(1)及び(2)の条件を満たすかどうかの評価については別添の高分子化合物の安全性評価のための試験方法によることとする。

(1) 「物理化学的安定性試験」において安定性が確認されること。溶存有機炭素濃度(以下「DOC」という。)の変化又は重量変化があった場合には、他の分析方法により構造変化が見られない等物理的・化学的安定性が確認されること。

(2) 以下のいずれかに該当するものであること。

① 「酸・アルカリに対する溶解性試験」及び「水及び有機溶媒に対する溶解性試験」において酸、アルカリ、水及び有機溶媒のいずれにも不溶と確認されること。

② 「水及び有機溶媒に対する溶解性試験」において水又はいずれかの有機溶媒に対して溶解が確認されたもののうち、分子量1,000未満の成分の含有が1%以下であり、生体内への高蓄積性を示唆する知見がないこと。

③ 「水及び有機溶媒に対する溶解性試験」において水又はいずれかの有機溶媒に対して溶解が確認されたもののうち、分子量1,000未満の成分の含有が1%を超えるものであり、生体内への高蓄積性を示唆する知見がなく、かつ、分子量1,000未満の成分について生体内に蓄積されやすいものでないことが示唆されるものであること。

(3) 重金属を含まないものであって、化学構造と慢性毒性との関連性に関する知見等から判断して、継続的に摂取した場合に人の健康を損なうおそれを有すると示唆されないこと。

(4) 重金属を含まず、かつ「酸・アルカリに対する溶解性試験」において水、酸及びアルカリに対して溶解性が確認された場合に基本骨格部分が陽イオン性を示さないものであって、化学構造と動植物への毒性との関連性に関する知見等から判断して、動植物の生息又は生育に支障を及ぼすおそれを有すると示唆されないこと。

2 無機化合物であって、遮光条件下でない空気中及び水中で容易に化学的変化を生じない場合には、自然的作用による化学的変化を生じにくいものとして取り扱うものとする。

3 分子量800以上(ハロゲン元素を2個以上含む化合物にあっては分子量1,000以上)の化学物質については、生物の体内に蓄積されやすいものではないものとして取り扱うものとする。ただし、化学物質の構造等から当該取扱いができるものと判断できない場合には、この限りではない。

4 微生物等による化学物質の分解度試験等により生成した化学物質(元素を含む。)のうち、法第2条第2項第1号若しくは法第4条第1項第2号ロ(1)に該当しないもの又は法第2条第3項第1号イに該当する疑いのないものとして取り扱うものについては、以下のとおりとする。

(1) 法第2条第2項第1号及び法第4条第1項第2号ロ(1)に該当しないもの並びに法第2条第3項第1号イに該当する疑いのないものとして取り扱うものとするもの。

Na、K、NH4、Mg2+、Ca2+、BO33-、SiO44-、PO43-、SO42-、F、Cl、Br、I

(2) 法第2条第2項第1号に該当しないもの及び同条第3項第1号イに該当する疑いのないものとして取り扱うものとするもの。

Fe2+、Fe3+、Zn2+、Al3+

改正文 (令和元年7月1日/薬生発0701第1号/20190619製局第2号/環保企発第1907011号/) 抄

令和元年7月1日から施行します。

別添

高分子化合物の安全性評価のための試験方法(高分子フロースキーム)

Ⅰ 用語

試験方法において使用する用語は、日本産業規格(JIS K 0211(分析化学用語(基礎部門))、JIS K 0215(分析化学用語(分析機器部門))、JIS K 7252(プラスチック―サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方)、JIS Z 8801(試験用ふるい)等)による。

Ⅱ 被験物質の調製

平均分子量が最も小さいものを被験物質とする。ただし、合成時に溶媒に溶解又は分散している場合には、化学物質の性質を変えずに溶媒から高分子化合物を単離して被験物質とすること。

Ⅲ 試験方法

1 物理化学的安定性及び酸・アルカリに対する溶解性試験法

(1) 被験物質の粒度 60メッシュから80メッシュまでを目安とすること。

(2) 試験液のpHとその調製 経済協力開発機構(OECD)における試験法ガイドライン(OECD理事会決定[C(81)30最終別添1])111「pHの関数としての加水分解」に採用されているpH4.0及び9.0とする。ただし、pH4.0については、TG111に規定されていない無機溶媒を使用してもよいが、試験前後でpHが維持できていることを確認すること。

(3) 試験温度 40±2℃

(4) 光 室内光

(5) 空気 試験液をかくはんすることにより空気との接触を図ること。

(6) 試験期間 2週間とすること。

(7) 被験物質の試験濃度 1,000mg/Lとすること。ただし、被験物質の性質により試験が困難な場合には試験濃度を100mg/Lから10,000mg/Lまでの範囲において変更することができる。

(8) 連数(繰り返し) 2連

(9) 分析 試験開始時及び終了時にDOC、IRスペクトル及び分子量分布について分析し、化学的変化の有無を調べ、加水分解が可能な側鎖が存在する場合には、直接分析等を行い物理化学的安定性を確認すること。ただし、被験物質が無機高分子化合物である場合や、pH4.0においてTG111に採用されている緩衝液を使用する等、DOCの分析が適切でない場合には重量について分析する。なお、やむを得ない理由がある場合は、この限りでない。

2 水及び有機溶媒に対する溶解性試験法

(1) 試験溶媒

① 水

② テトラヒドロフラン(以下「THF」という。)及びジメチルホルムアミド(以下「DMF」という。)

(注1) n―オクタノール及びn―ヘプタン(脂肪への親和性の指標)への溶解性は、THF及びDMFの溶解性から確認することができる。

(注2) DMFに代えて、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」という。)又は1―メチル―2―ピロリドン(以下「NMP」という。)を使用することができる。

(2) 試験温度 35℃から40℃までとすること。

(3) 試験時間 1時間かくはんすること。

(4) 平衡 25±2℃にて24時間平衡状態を保つこと。

(5) 被験物質の試験濃度 2,000mg/L

(6) 粒度 60メッシュから80メッシュまでを目安とすること。

(7) 連数(繰り返し) 2連

(8) かくはん 溶媒との接触を図るため、緩やかに常時かくはん又は振とうを行うものとすること。

(9) 分析

① 水についてDOCを分析する。ただし、水についてDOCを分析することが適切でない場合には、試験液をフィルターでろ過した後、残試料を恒量化して重量変化を調べる。膨潤や容器への付着等の被験物質の性質によりろ過法が使用できない場合には、他の方法により残試料と試験液を分離することができる。残試料の重量分析が困難な場合には、分離した試験液を乾固して溶解した分の重量分析を行うことができる。

② THF及びDMFについては、試験液をフィルターでろ過した後、残試料を恒量化して重量変化を調べる。膨潤や容器への付着等の被験物質の性質によりろ過法が使用できない場合には、他の方法により残試料と試験液を分離することができる。残試料の重量分析が困難な場合には、分離した試験液を乾固して溶解した分の重量分析を行うことができる。

(10) 溶解性の判断

不溶については、原則として水及び2種類の有機溶媒に対して不溶であることを確認すること。また、水及び2種類の有機溶媒のうち1種に溶解したと判断される場合は、少なくとも水に対する溶解性データを備えること。

3 分子量分布の測定法

2(10)において溶解したと判断される場合には、サイズ排除クロマトグラフィー(以下「SEC」という。)法等によることとし、次の点に留意すること。

(1) 溶離液

溶離液は次のいずれかの汎用の溶離液とする。被験物質が汎用の溶離液に溶解しない場合には、可能な限り②の特殊な溶離液についても検討する。日本産業規格(JIS K 7252)に定める温度で溶解しない場合はo―ジクロロベンゼン(以下「ODCB」という。)、トルエン、DMF又は水を用いて加熱溶解試験を行うことができる。

① 汎用の溶離液 THF、クロロホルム、ジクロロメタン、DMF、水(緩衝液も含む)等

② 特殊な溶離液 1,1,1,3,3,3―ヘキサフルオロ―2―プロパノール(HFIP)、1,2,4―トリクロロベンゼン(TCB)、ODCB、トルエン、1,2―ジクロロエタン、NMP、m―クレゾール、ベンゼン、DMSO、テトラクロロエチレン、2―クロロフェノール、トリフルオロエタノール等

(2) 分子量換算方法被験物質に応じて次の方法から選択すること。

① 単分散分子量標準試料を用いる方法(標準試料として、ポリエチレンオキサイド、ポリスチレン等を用いること。)

② 多分散分子量標準試料を用いる方法数平均、重量平均又はZ平均分子量が絶対法(膜浸透圧法、光散乱法、超遠心法等)で測定されたもののうち1~2種を用いること。

③ 伸長鎖長による方法

④ 流体力学的容積による方法

⑤ SEC―粘度検出器法

⑥ SEC―LS法

(3) 安定性ベースラインが直線的であること。

(4) 検出器応答感度応答感度の分子量依存性がないこと(依存性がある場合は補正する。)。

(5) 分離高分子化合物のピークに他のピーク(添加物、溶媒中の不純物等)が重ならないようにすること。ただし、ピークの分離が技術的に困難な場合であって、単量体及びオリゴマーを含む全分子量領域に相当する点までを分子量の計算範囲とするときは、この限りでない。この場合において、ピークが明確に添加物又は溶媒中の不純物等によるものと識別できる場合は、当該ピークを除外して計算することができる。

(6) 低分子領域のベースラインの引き方ベースラインの安定性がよい2枚のチャートについて計算し、平均値を求めること。

(7) データ処理SEC法及びその他の測定方法により得られたデータから数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分散度(Mw/Mn)及び分子量1,000未満成分の含有率を求めること。

Ⅳ 結果のまとめ

試験結果のとりまとめは別紙様式によるものとし、試験報告書を添付すること。

別紙

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