○有害性情報の報告に関する運用について
(平成30年3月30日)
(/薬生発0330第6号/20180329製局第2号/環保企発第18033010号/)
(厚生労働省医薬・生活衛生局長、経済産業省製造産業局長、環境省大臣官房環境保健部長通知)
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律第53号)の施行に伴い、平成30年4月1日から化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号。以下「法」という。)第41条第1項(第2項において準用する場合を含む。以下同じ。)及び第3項並びに有害性情報の報告に関する省令(平成16年厚生労働省、経済産業省、環境省令第2号。以下「省令」という。)に関しては、下記によりその運用を行うこととする。
なお、「有害性情報の報告に関する運用について」(平成23年3月31日付け薬食発0331第10号、平成23・03・29製局第8号、環保企発第110331012号厚生労働省医薬・生活衛生局長・経済産業省製造産業局長・環境省大臣官房環境保健部長連名通知)については、平成30年3月31日をもって廃止する。
記
1 報告を要する知見の範囲等について
(1) 法第41条第1項に規定する「第四条第七項に規定する試験の項目又は第十条第二項若しくは第十四条第一項に規定する有害性の調査の項目に係る試験を行った場合」には、「新規化学物質等に係る試験を実施する試験施設に関する基準について」(平成23年3月31日付け薬食発0331第8号、平成23・03・29製局第6号、環保企発第110331010号厚生労働省医薬・生活衛生局長・経済産業省製造産業局長・環境省大臣官房環境保健部長連名通知)で示している基準(以下「化学物質GLP」という。)に適合する試験施設において行った場合のほか、化学物質GLPに適合しない試験施設で行った場合も含まれるものとする。
また、「新規化学物質等に係る試験の方法について」(平成23年3月31日付け薬食発0331第7号、平成23・03・29製局第5号、環保企発第110331009号厚生労働省医薬・生活衛生局長・経済産業省製造産業局長・環境省大臣官房環境保健部長連名通知。以下「試験方法等通知」という。)で示している方法によって試験を行った場合のほか、以下の試験方法により試験を行った場合についても含まれるものとする。
① 微生物等による化学物質の分解度試験については、経済協力開発機構(OECD)における試験法ガイドライン(OECD理事会決定[C(81)30最終別添1]。以下「OECDテストガイドライン」という。)301A、301B、301D、301E又は302Cの試験方法により行われた試験
② 試験の目的が試験方法等通知で示している慢性毒性試験、生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験、催奇形性試験、変異原性試験、がん原性試験、生体内運命に関する試験、薬理学的試験又は反復投与毒性試験の目的に合致している試験
③ 試験に用いる生物種及びエンドポイントが試験方法等通知で示しているほ乳類の生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験、鳥類の繁殖に及ぼす影響に関する試験、藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験、魚類急性毒性試験、ミジンコ繁殖試験、魚類初期生活段階毒性試験又は底質添加によるユスリカ毒性試験と合致している試験方法により行われた試験
(2) 省令第3条に規定する知見については、試験方法等通知で示している方法によって行われた試験結果若しくは以下の試験方法による試験結果又はモデルによる計算結果とし、化学物質GLPに適合する試験施設において行った試験の結果のほか、化学物質GLPに適合しない試験施設で行った試験の結果も含まれるものとする。
① 融点については、OECDテストガイドライン102で定められた方法に準じて実施された試験結果
② 沸点については、OECDテストガイドライン103で定められた方法に準じて実施された試験結果
③ 蒸気圧については、OECDテストガイドライン104で定められた方法に準じて実施された試験結果
④ 1―オクタノールと水との間の分配係数については、OECDテストガイドライン107又は117で定められた方法に準じて実施された試験結果
⑤ 水に対する溶解度については、OECDテストガイドライン105で定められた方法に準じて実施された試験結果
⑥ 解離定数については、OECDテストガイドライン112で定められた方法に準じて実施された試験結果
⑦ 光分解性については、OECDテストガイドライン316で定められた方法に準じて実施された試験結果
⑧ 加水分解性については、OECDテストガイドライン111で定められた方法に準じて実施された試験結果
⑨ 大気、水域、底質又は土壌に係る分配係数については、OECDテストガイドライン106又は121で定められた方法に準じて実施された試験結果若しくは③及び⑤の試験結果を使用して得られた計算結果
⑩ 生分解性については、OECDテストガイドライン301A、301B、301D、301E又は302Cの試験方法により行われた試験結果
⑪ 魚類に対する急性毒性又は慢性毒性、水生の無脊椎動物に対する急性毒性又は慢性毒性、水生の植物に対する毒性、鳥類の繁殖に及ぼす影響及び底生生物に対する毒性については、試験に用いる生物種及びエンドポイントが試験方法等通知で示している魚類急性毒性試験、魚類初期生活段階毒性試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験、ミジンコ繁殖試験、藻類生長阻害試験、鳥類の繁殖に及ぼす影響に関する試験又は底質添加によるユスリカ毒性試験と合致している試験方法により行われた試験結果
⑫ 生体内運命、薬理学的特性、反復投与による毒性、慢性毒性、変異原性、がん原性、催奇形性、生殖能及び後世代に及ぼす影響については、試験の目的が試験方法等通知に規定する生体内運命に関する試験、薬理学的試験、反復投与毒性試験、慢性毒性試験、変異原性試験、がん原性試験、催奇形性試験、生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験の目的に合致している試験方法により行われた試験結果
(3) 化学物質安全性データシート(MSDS)に記載されている概要のみの有害性情報を入手した場合については、法第41条第1項に規定する「当該試験を行ったと同等の知見(公然と知られていないものに限る。)が得られた場合」又は同条第3項に規定する「知見(公然と知られていないものに限り、第十条第二項、第十四条第一項又は第一項の規定により報告すべきものを除く。)を有している」には該当しない。
(4) 法第41条第1項及び第3項に規定する「公然と知られていない」知見には、以下のものは含まれないものとする。
① 国内の行政機関又は独立行政法人の報告書や公表資料(国内の行政機関又は独立行政法人が実施した試験結果で既に公表されているものを含む。)
② 海外の行政機関の報告書や公表資料
③ 国際機関の報告書や公表資料
④ 上記以外の文献により一般に公開されているもの
(5) 省令第1条第1号に規定する「易分解性」とは、例えばOECDテストガイドライン301の6種類の試験方法において、その総則に記載されているパスレベルを満たす場合をいう。
(6) 省令第1条第2号ロ及び第3条第4号に規定する知見については、以下のとおりとする。
① 界面活性のある物質、分子量分布を有する混合物、有機金属化合物、純度の低い物質及び無機化合物を対象として実施された試験については、含まれないものとする。
② 計算値については、報告の対象とはしない。
③ 既存化学物質の安全性点検において、濃縮度試験の結果から高濃縮性でないとの結果が公表されているものについては、分配係数の対数が3.5以上という知見が得られた場合でも報告の対象とはしない。
(7) 省令第1条第3号に規定する知見の例は、以下のとおりとする。
① 慢性毒性試験において、被験物質による死亡、長期にわたる障害、神経行動毒性、催腫瘍性、重篤な病理組織学的な変化等の毒性学的に重要な変化が認められたもの。
② 生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験において、被験物質による死亡又は生殖能又は後世代への影響等の生殖発生毒性学的に重要な変化が認められたもの。
③ 催奇形性試験において、母胎毒性の如何に関わらず、被験物質による死亡又は胎仔の発生に及ぼす障害、特に催奇形性が認められたもの。
④ 変異原性試験において、陽性と認められたもの。
⑤ がん原性試験において、被験物質による死亡又は催腫瘍性が認められたもの。
⑥ 生体内運命に関する試験又は薬理学的試験において、上記①から③及び⑤に準じるもの。
⑦ 反復投与毒性試験において、無影響量が概ね300mg/kg/日以下のもの。
⑧ 反復投与毒性試験において、死亡、神経行動毒性、催腫瘍性、重篤な病理組織学的な変化、非可逆的変化等の毒性学的に重要な変化が認められたもの。
(8) 省令第1条第4号に規定する知見については、以下のとおりとする。
① ほ乳類の生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験、鳥類の繁殖に及ぼす影響に関する試験並びにユスリカの生息又は生育に及ぼす影響に関する試験については、同号において例示したもののほか、それぞれの試験法において観察することとされている事項について意義のある変化が認められた場合に、「毒性学的に重要な影響がみられたもの」とする。
② 藻類生長阻害試験における「半数影響濃度」とは、藻類の生長(暴露期間中の細胞濃度(培地1mL当たりの細胞の数)の増加をいう。)を50%阻害したと算定される試験溶液中の被験物質濃度をいうものとする。また、ミジンコ急性遊泳阻害試験における「半数影響濃度」とは、50%のミジンコが遊泳阻害(試験容器を穏やかに動かしても15秒間泳げない状態をいう。)を示したと算定される試験溶液中の被験物質濃度をいうものとする。
③ 藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験及び魚類急性毒性試験については10mg/L以下の被験物質濃度で、ミジンコの繁殖に及ぼす影響に関する試験並びに魚類の初期生活段階における生息又は生育に及ぼす影響に関する試験については1mg/L以下の被験物質濃度で、半数影響濃度等にかかわらず、例えば藻類においては細胞の大きさや形態の異常、ミジンコにおいては行動や外見の異常、魚類においては平衡、遊泳行動、呼吸機能、体色等の異常が観察された場合に、「毒性学的に重要な影響がみられたもの」とする。
(9) 第二種特定化学物質にあっては省令第1条第1号に該当する知見について、監視化学物質にあっては省令第1条第1号及び第2号に該当する知見について、それぞれ報告対象とはしない。
2 報告手続き等について
(1) 省令第2条に規定する「当該知見を得た日」とは、報告対象物質の製造又は輸入の事業を営む者が、化学物質GLPに規定される最終報告書又はこれに準ずる報告を受領した日とする。なお、「当該知見を得た日」が平成16年3月31日以前の場合にあっては本報告の対象外であるが、最終報告書等の作成日が平成16年3月31日以前のものであっても、「当該知見を得た日」が平成16年4月1日以後である場合においては、本報告の対象となる。
(2) 省令別記様式第一の「1 報告対象物質の名称及び構造式」及び様式第二の「1 優先評価化学物質、監視化学物質又は第2種特定化学物質の名称及び構造式」には、当該化学物質の名称及び構造式のほか官報公示整理番号(付されている場合)及びケミカル・アブストラクツ・サービス登録番号(CAS番号)(付されている場合)を記載することとする。
(3) 有害性情報を報告する場合にあっては、原則として、試験報告書のほか、有害性情報の内容を示す資料を作成し、提出すること。なお、次に掲げる試験に係る有害性情報の内容を示す資料については、試験方法等通知別添の様式1から様式11までのいずれかの様式により作成した資料とする。その他の試験に係る有害性情報の内容を示す資料の様式及び有害性報告情報の内容を示す書類等の提出方法については、別に定める報告要領によることとする。
①微生物等による化学物質の分解度試験
②魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験
③1―オクタノールと水との間の分配係数測定試験
④ほ乳類を用いる反復投与毒性試験
⑤ほ乳類を用いる反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験
⑥ほ乳類を用いる簡易生殖発生毒性試験
⑦細菌を用いる復帰突然変異試験
⑧ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験
⑨藻類生長阻害試験
⑩ミジンコ急性遊泳阻害試験
⑪魚類急性毒性試験
(4) 次に掲げる場合には、試験報告書、有害性情報の内容を示す書類等の添付を省略できるものとする。
① 報告対象物質が法第3条第1項第5号又は法第5第4項の確認に係る新規化学物質であって、法第3条第1項の規定に基づく届出並びに法第5条第1項又は第7項の規定に基づく申出(以下「新規化学物質の届出等」という。)に係る準備のために試験を実施し、報告を要する知見を得た場合
② 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条の3第1項の規定に基づき、報告対象物質の名称等を当該有害性情報を添付して既に厚生労働大臣に届け出ている場合
③ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第14条第1項若しくは第9項、第19条の2第1項若しくは同条第5項において準用する第14条第9項、第23条の2の5第1項若しくは第11項、第23条の2の17第1項若しくは同条第5項において準用する第23条の2の5第11項、第23条の25第1項若しくは第9項又は第23条の37第1項若しくは同条第5項において準用する第23条の25第9項の規定に基づき、報告対象物質と同一の名称の医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、体外診断用医薬品又は再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)について、当該有害性情報を添付して既に厚生労働大臣に製造販売の承認の申請を行っている場合
なお、①の場合にあっては、省令別記様式の「3 有害性情報の概要」の欄に、新規化学物質の届出等に係る準備のための試験である旨を記載し、報告期限内に当該様式を提出するものとする。また、様式を提出した後、報告対象物質について新規化学物質の届出等を行わないこととした場合にあっては、当該物質の製造又は輸入の事業を営む者は速やかに試験報告書、有害性情報の内容を示す書類等を提出するものとする。
②の場合にあっては、省令別記様式の「3 有害性情報の概要」の欄に、労働安全衛生法の規定に基づく届出を行った日、受付番号、既に厚生労働大臣に対して当該有害性情報を提出済みである旨及び提出済みの有害性情報を参照して差し支えない旨を記載し、報告期限内に当該様式を提出するものとする。
③の場合にあっては、省令別記様式の「3 有害性情報の概要」の欄に、医薬品医療機器等法の規定に基づく製造販売の承認の申請を行った日、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品の別、医薬品等の名称(一般的名称及び販売名)、申請者の氏名(法人にあっては、名称及び代表者の氏名)及び既に厚生労働大臣に対して当該有害性情報を提出済みである旨並びに提出済みの有害性情報を参照して差し支えない旨を記載し、報告期限内に当該様式を提出するものとする。
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