○「新規化学物質等に係る試験の方法について」の一部改正について
(令和2年11月5日)
(/薬生発1105第2号/20201015製局第1号/環保企発第2011055号/)
(厚生労働省医薬・生活衛生局長、経済産業省製造産業局長、環境省大臣官房環境保健部長通知)
「新規化学物質等に係る試験の方法について」(平成23年3月31日薬食発0331第7号厚生労働省医薬食品局長、平成23・03・29製局第5号経済産業省製造産業局長、環保企発第110331009号環境省総合環境政策局長連名通知)」(以下「連名通知」という。)の一部を下記のとおり改正し、令和2年11月5日から施行する。
なお、令和2年12月17日以前に開始された試験であって、本改正前の連名通知に規定する試験の方法に基づき行われたものの取扱いについては、なお従前の例によることができるものとする。
記
1 別添<藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験及び魚類急性毒性試験>の「Ⅱ 定義」中「3 その他」、「Ⅲ 総則」中「3 難水溶性物質の扱い」及び「Ⅵ 魚類急性毒性試験」を別紙1のとおり改める。
2 別添[様式11]を別紙2のとおり改める。
別紙1
<藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験及び魚類急性毒性試験>
Ⅱ 定義
この試験法において使用する用語は、次に掲げた定義による。
3 その他
・閾値濃度(Threshold Concentration) 既存で信頼できる藻類又は急性無脊椎動物(例えばミジンコ)毒性試験データの最小EC50値をいう(No.126 SHORT GUIDANCE ON THE THRESHOLD APPROACH FOR ACUE FISH TOXICITY OECD, 2010(以下「OECD,2010」という。)。
・全長 魚の正中線に沿って吻端から尾びれの先端までの直線的長さをいう。
・UVCB物質(chemical substances of Unknown or Variable composition, Complex reaction products and Biological materials) 組成が未知か又は不定な構成要素を持つ物質、複雑な反応生成物又は生体物質をいう。
・(Q)SARモデル 物質の化学構造や物性から生物活性を予測する構造活性相関((Quantitative)Structure‐Activity Relationship)モデルをいう。
・カテゴリーアプローチ 有害性が類似又は規則的なパターンを示す構造の類似した物質群をグループ化して評価を行う方法をいう。
・リードアクロス(read‐across) 試験データがない化学物質の安全性を類似物質の試験データから推定する手法をいう。
・トレンドアナリシス推定値 観測された測定値の時系列を踏まえて傾向分析して推定した値をいう。
・レンジファインディングテスト 暴露濃度の水準を決めるための予備試験をいう。
Ⅲ 総則
3 難水溶性物質の扱い
被験物質が水に溶けにくい場合であっても、原則として分散剤は使用せず、試験濃度は被験物質の溶解限度以下に設定することとする。ただし、被験物質の培地等への溶解度が極端に低く、通常の測定法では溶解限度を求めることができない場合であって、溶解限度以下の濃度ではLC50等の毒性値は求めることができない場合には、分散系で試験を行うこととする。当該被験物質が分散剤や乳化剤とともに使用されるものである場合には、分散剤を使用して試験を行ってもよい。
試験の結果、被験物質の培地等への溶解又は分散可能な上限濃度以下の濃度ではLC50等の毒性値は求められないと結論づけるためには、被験物質を培地等に可能な限り溶解又は分散させる手段を講じた上で、被験物質の培地等への溶解又は分散可能な上限の濃度の値を測定しておくことが必要である。
なお、難水溶性物質の扱いについては、OECDガイダンス文書(Guidance document on aqueous‐phase aquatic toxicity testing of difficult test chemicals, Series on Testing and Assessment No.23 second edition, 2019, OECD, 以下「OECDガイダンス文書No.23」という。)も参照して対応すること。
Ⅵ 魚類急性毒性試験
目的
本試験は、魚類を被験物質に96時間暴露し、死亡率を測定することにより、魚類に対する被験物質の毒性を明らかにすることを目的とする。
1 供試生物
メダカ(ミナミメダカ)が推奨されるが、例えば付表1に示す魚種などを使用してもよい。魚は良好な健康状態にあり、外見上の奇形があってはならない。また、各試験に使用する魚は同一供給源と個体群に由来した性分化していない同一齢(同一採卵日からふ化したバッチや同一週齢の様に同一齢と定義できる群)で、できる限り均一な大きさの幼魚を用いること。付表1の推奨魚種の場合、全長は推奨される全長の範囲にあること。なお、野生の個体からの魚の使用は可能な限り避けること。
付表1 推奨される供試魚種の全長と試験の条件
魚種 |
推奨試験温度 (℃) |
塩分濃度 (‰) |
硬度 (mg/LCaCO3) |
試験魚の推奨全長 (cm) |
Danio rerio ゼブラフィッシュ |
21―25 |
<0.2 |
40―250 <180を推奨 |
1.0―2.0 |
Pimephales promelas ファットヘッドミノー |
21―25 |
<0.2 |
40―250 <180を推奨 |
1.0―3.0 |
Cyprinus carpio コイ |
20―24 |
<0.2 |
40―250 <180を推奨 |
2.0―4.0 |
Oryzias latipes メダカ(ミナミメダカ) |
23―27 |
<0.2 |
40―250 <180を推奨 |
1.0―2.0 |
Poecilia reticulata グッピー |
21―25 |
<0.2 |
40―250 <180を推奨 |
1.0―2.0 |
Lepomis macrochirus ブルーギル |
21―25 |
<0.2 |
40―250 <180を推奨 |
1.0―3.0 |
Oncorhynchus mykiss ニジマス |
10―14 |
<0.2 |
40―250 <180を推奨 |
3.0―6.0 |
Gasterosteus aculeatus イトヨ |
13―19 |
0―35 |
40―7,500 |
1.0―2.0 |
Cyprinodon variegatus シープヘッドミノー |
23―27 |
15―35 |
3,000―7,500 |
1.0―2.0 |
Dicentrarchus labrax ヨーロピアンシーバス |
18―22 |
15―35 |
3,000―7,500 |
4.0―8.0 |
Pagrus major マダイ |
18―22 |
30―35 |
5,000―7,500 |
2.0―4.0 |
2 試験容器及び機器
本試験では次に示す試験容器及び機器を用いる。
2―1 試験容器
試験容器等、試験溶液と接触する器具は全てガラス製又は化学的に不活性な材質でできたものを用いる。シリコン樹脂の器具については、被験物質を吸着することから、試験溶液と接触する部分への使用は最小にすること。試験容器は、推奨収容量に対し適切な大きさのものを用いる。水の蒸発及び試験溶液へのほこりの混入を防ぐため、試験容器は緩く蓋をする。
被験物質が揮散しやすい物質の場合は、密閉系で試験を行うこととし、溶存酸素不足を防ぐために十分な大きさの試験容器を用いる。
2―2 器具
本試験には、以下の器具又は装置を適切に用いる。
・酸素濃度計
・pH計
・照度計
・水の硬度を測定する装置
・適切な温度制御を行う装置
・全有機炭素(TOC)濃度及び/又は化学的酸素要求量(COD)を測定する装置
・試験溶液中の被験物質濃度を測定する装置
・溶存酸素濃度を維持する装置
3 試験用水
淡水魚の場合、魚の飼育及び試験に適した水ならば、天然水(表流水又は地下水)、脱塩素した水道水又は人工調製水(注参照)のいずれを用いてもよい。汽水魚又は海水魚の場合、海水よりも、脱イオン水又は蒸留水に市販の海塩(Instant Ocean((R)) Sea Salt、Red Sea Salt((R))又は同等品)を加えることで調製した再構成水を用いることが望ましい。全硬度は炭酸カルシウム濃度で付表1に記載した範囲、pHは6.0~8.5の水が望ましい。人工調製水の調製に用いる試薬は分析用の特級であり、脱イオン水及び蒸留水の電導度は10μS/cmを超えてはならない。天然水を使用する場合には、OECDテストガイドライン203のパラグラフ15に定められている方法に準じて実施すること。
試験用水は半年ごとに分析を行うこと。分析は専門の分析機関に委託することが可能である。付表2に記載された水質の基準を満たした試験水は試験に適しているが、基準を満たせない場合でも、魚の飼育に影響を及ぼさないことを、飼育時やじゅん化期間における死亡率等により判断できるものは試験用水として使用しても差し支えない。
付表2 試験水の水質
パラメーター |
最大濃度 |
SS |
5mg/L |
全有機炭素(TOC) |
2mg/L |
非イオン化アンモニア(NH3) |
1μg/L |
硝酸イオン(NO3-) |
<9mg/L |
残留塩素 |
10μg/L |
全有機リン系農薬 |
50ng/L |
全有機塩素系農薬+PCB |
50ng/L |
全有機塩素 |
25ng/L |
アルミニウム(Al) |
1μg/L |
ヒ素(As) |
1μg/L |
クロム(Cr) |
1μg/L |
コバルト(Co) |
1μg/L |
銅(Cu) |
1μg/L |
鉄(Fe) |
1μg/L |
鉛(Pb) |
1μg/L |
ニッケル(Ni) |
1μg/L |
亜鉛(Zn) |
1μg/L |
カドミウム(Cd) |
100ng/L |
水銀(Hg) |
100ng/L |
銀(Ag) |
100ng/L |
化学的酸素要求量(COD) |
5mg/L |
4 じゅん化
全ての供試魚を、少なくとも試験に使用する9日前に入手し、じゅん化しなければならない。48時間の新たな生育環境への移行期間に続いて、暴露開始前に少なくとも7日間試験で使用する水質の水で以下の条件下においてじゅん化する。なお、新たな生育環境への移行期間以降の薬浴は行わないことが望ましい。
・照明 一日当たり12~16時間
・温度 供試魚種の適温(付表1参照)
・酸素濃度 飽和酸素濃度の少なくとも80%
・給餌 暴露開始の24~48時間前まで、3回/週又は毎日給餌する。給餌量については、飽食になるまで与えても良いが、魚種によっては過度の給餌により付表1の全長を超えることがあるので注意すること。余剰な餌やフン等の老廃物が溜まらない様に除去すること。
じゅん化期間中の死亡率を記録し、供試魚に以下の基準を適用する。
・じゅん化期間中の連続した7日間で全体の死亡率が10%を超えた場合、試験に使用しない。
・じゅん化期間中の連続した7日間で全体の死亡率が5~10%の間の場合、7日間延長してじゅん化する。2回目のじゅん化期間の死亡率が5%以上の場合は、そのバッチは試験に使用しない。
・じゅん化期間中の連続した7日間で全体の死亡率が5%より低い場合、試験に使用できる。
5 試験溶液
各濃度の試験溶液の調製は、必要量の被験物質を試験用水で直接溶解するか、あるいは、適切な濃度の被験物質の原液を調製し、原液を試験用水で希釈することにより行う。この他、試験溶液の調製に関しては、Ⅲ総則の2 試験溶液の調製によるものとする。
試験はpHの調整をせずに行う。被験物質を添加後、試験溶液のpHに顕著な変化が認められる場合、pHを被験物質添加前の試験用水のpHに調整して追加試験をすることが望ましい。このpHの調整は被験物質の濃度変化がなく、被験物質の化学反応又は沈殿が起こらないような方法で行う。pH調整には塩酸又は水酸化ナトリウムを用いることが望ましい。助剤を使用する場合は、OECDガイダンス文書No.23で推奨されている低毒性溶媒(アセトン、エタノール、メタノール、ターシャリーブチルアルコール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トリエチレングリコール)のみを使用し、毒性が不明な溶媒は使用しないこと。なお、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドは、人に対する健康影響と安全性の観点から、その使用については考慮すべきである。また、アセトニトリル等は藻類生長阻害試験において生長促進作用を有する場合もあることに留意すること。
6 試験条件
6―1 試験方式
試験は流水式又は半止水式で行うことが望ましい。また、被験物質の濃度が安定しない際には流水式を用いることが望ましい。
6―2 暴露期間
96時間とする。
6―3 収容量と供試魚の数
・収容量 止水式及び半止水式では最高密度で0.8魚体g/Lが推奨される。流水式の場合、推奨される最大収容密度は、24時間あたり0.5g魚体湿重量/Lである(例:10L容量の水槽を用い、流量は24時間で5倍量とすると、24時間で合計50Lが水槽を通過する。収容する魚の合計体重が25gの場合、これは24時間で50L当たり25gとなり、24時間で0.5g/Lに相当する)。また常に収容密度は5g/Lを超えないことが推奨される。
・供試魚の数 各試験濃度区及び対照区で少なくとも7尾の供試魚を用いる。
6―4 試験濃度
試験濃度範囲の選択には、例えば適切な(Q)SARモデルによる適用ドメイン内での推定値、カテゴリーアプローチによるリードアクロスやトレンドアナリシス推定値、魚類胚試験や培養細胞を使用した試験等他の試験法によるデータ等、全ての情報源を使用することができる。そのようなデータが利用できない場合や十分な信頼性が得られない場合は、同じ種の魚を使用したレンジファインディングテストを検討する必要がある。この場合、藻類及びミジンコの試験から得られた閾値濃度(OECD,2010)を使用して、濃度範囲の設定を行うことができる。
試験濃度範囲の設定においては、少なくとも5濃度区を等比級数的にとる。公比は2.2を超えないことが望ましい。最高試験濃度区では、全ての魚に致死影響が起こることが望ましいが、100mg/L以上の濃度で試験を行う必要はない。最低試験濃度区では影響が観察されないことが望ましい。なお、0%の死亡率を引き起こす最大濃度又は100%の死亡率を引き起こす最小濃度での試験の実施は必須ではない。
6―5 対照区
別に対照区をおく。やむを得ず助剤を使用した場合は、対照区に加え助剤対照区を設ける。ただし、当局の了解が得られる場合、助剤対照区のみの実施で評価することができる。
6―6 試験中の暴露環境
・温度 供試魚の適温(付表1参照)で、±2℃の範囲内で一定に保つ。
・照明 一日当たり12~16時間、光強度が10―20μE/m2/s、540―1000lux又は50―100ft―c(実験室レベル)でなければならない。
・溶存酸素濃度 飽和酸素濃度の60%を下回ってはならない。被験物質の顕著な消失が確認できなければばっ気を行ってもよい。
・給餌 行わない。
・かく乱 過度の振動や騒音などの魚の行動を変化させるようなかく乱要因は回避又は可能な限り軽減すること。
6―7 魚の測定
暴露開始前に、試験に使用する魚と同一の飼育容器より少なくとも10尾の魚について個別に湿重量と全長を測定する。測定に使用された魚を試験に使用しないこと。これらの魚の全長測定を試験開始の8日以上前に実施した場合、暴露終了時に、付表1に示す推奨魚種のサイズ要件を満たしていることを確認するために再度魚の全長を測定する必要がある。全長の測定は写真を使用することができる。湿重量は、例えば飼育水を入れ、事前に計量した飼育水入り容器の中に生きた魚を入れ、重量増加分を湿重量とみなす。
6―8 魚の人道的殺処分
暴露終了後、生き残った魚を別の試験に用いてはならない。生き残った魚に対して殺処分を行う場合は、深い麻酔、迅速な中枢の破壊等を用いてよい。また、OECDテストガイドライン203のパラグラフ28に定められた方法に準じて実施してもよい。
7 被験物質への暴露の開始
各試験容器に、6―3に基づき設定した供試数のじゅん化された魚を移して暴露を開始する。
8 観察
暴露開始後24時間以内に少なくとも2回の観察を実施し、観察の間隔は少なくとも3時間とすることが望ましい。(例えば、0―1日は暴露開始の2±0.5時間後、5±1時間後、24±2時間後に観察する。)また、2―4日は2回/日魚の様子を観察する(観察時間については様式11の4.各観察時間における観察された症例の記録を参照しても良い。)。観察可能な動き(例えば、鰓蓋の動きなど)がなく、尾柄部に触れて反応がない場合には魚は死亡しているとみなす。観察時に死亡魚を取り除き死亡率を記録する。また付表3に記述された異常が観察された場合は記録しておく。付表3に当てはまらない魚種特有の観察される症状についても記録しておく。
付表3 観察される症状例
症状分類 |
症状名 |
症状の定義 |
平行喪失 |
バランス喪失 |
バランスを失う、上下・水平感覚を失う、頭部を上又は下に向けた体勢 |
浮力喪失 |
着底・横転するか表面に浮上 |
|
遊泳及び行動異常 |
不活発・嗜眠 |
自発運動の低下、刺激への反応が鈍った状態、嗜眠状態 |
過活発 |
自発運動の上昇、刺激等により不定方向への激しい動き |
|
異常な遊泳方法 |
背泳、スパイラル(らせん運動)、コークスクリュー(ドリル状の回転運動)遊泳 これらの症例は多くの場合、複合的に観察 |
|
けいれん |
遊泳中に筋肉が強く収縮することで起こるビクッとした動き |
|
硬直 |
ヒレがたたまれて硬直して遊泳不能 |
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鼻上げ |
水面に口を出す呼吸異常行動 |
|
着底 |
水槽の底面に腹部をつけ遊泳不能 |
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孤立 |
集団と離れた行動 |
|
密集 |
密な状態で集団を形成 |
|
呼吸機能異常 |
過呼吸 |
呼吸頻度の増加と頻繁な開口と鰓蓋を開く行動 |
低呼吸 |
呼吸頻度と鰓蓋を開く行動の低下 |
|
深呼吸・飲み込み |
大きく口を膨らませて水を吸い込む、あるいは水面での呼吸行動、及び過度な逆洗(coughing)運動 |
|
その他 |
体色変化 |
脱色、白化、鮮明化等 |
眼球突出 |
眼窩の腫れによる眼球の突出 |
|
浮腫 |
腹部の膨張とそれに伴う鱗の突出と腹部の亀裂 |
|
出血 |
皮下出血等 |
|
曲り |
骨折などによる背骨の曲り等 |
|
攻撃性 |
他の個体を追い回すなどの異常行動 |
|
糞便異常 |
異常な糞便状況(偽糞、排泄行動の増加等) |
9 被験物質濃度等の測定
9―1 被験物質濃度の測定
被験物質の濃度は、原則として少なくとも最低及び最高試験濃度区について暴露開始時及び終了時に測定する。また、暴露期間中に初期濃度より20%以上低下することが予測される場合は、全ての試験濃度区について暴露開始時及び終了時に測定することが望ましい。さらに、揮発性あるいは吸着性の強い物質など、暴露期間中に著しく濃度が低下することが予測されるものについては、暴露期間中24時間間隔で分析を追加することが望ましい。
半止水式試験の場合は、換水直後と次の換水の直前を1セットとして、少なくとも2セット測定を行うことが望ましい。
9―2 試験環境の測定
pH、溶存酸素濃度、水温、塩分濃度は少なくとも毎日1回測定する。また、硬度(安定性が実証されない場合)及びTOCは希釈水での暴露開始時に測定する。
10 限度試験
100mg/L又は水溶解限度のより低い方の濃度で被験物質が致死を示さないことが予想される場合等には、この濃度で限度試験を行い、LC50がその濃度より大きいことを示すことができる。限度試験には少なくとも7尾を用い、対照区においても同数を用いる。目視可能な異常が確認された場合は記録する。暴露終了時までに死亡が観察された場合、正規の試験を行う。
11 試験の有効性
次の条件が満たされる場合、試験は有効とみなされる。
・対照区の死亡率が暴露終了時に10%(10尾より少ない数を使った場合は1尾)を超えないこと。
・溶存酸素濃度が暴露期間中少なくとも飽和酸素濃度の60%を維持していること。
・被験物質の濃度が暴露期間中十分維持されていることが明らかであること。
12 結果の算出方法
結果の算出は、原則として被験物質の実測濃度の適切な平均値に基づいて行う。暴露期間中、被験物質濃度が初期濃度の±20%以内に保たれていたことが証明できる場合には、初期濃度に基づいて結果の算出を行うことができる。
各試験濃度区と対照区の累積死亡率を暴露期間と被験物質濃度とともに表にする。対数正規確率紙に各試験濃度区に対する各暴露期間における累積死亡率をプロットする。次にプロビット法などの適切な統計手法を用い、回帰直線の傾き、暴露期間96時間におけるLC50及び95%信頼限界を算出する。さらに、各観察時毎のLC50及び95%信頼限界を算出することが望ましい。
得られたデータが100%あるいは0%死亡のみを示す場合は、全く死亡を起こさない最高試験濃度と100%死亡を起こす最低試験濃度の幾何平均をLC50の近似値とみなす。
13 結果のまとめ
試験の結果は様式11によりまとめ、最終報告書を添付するものとする。
注 人工調製水
OECD(ISO6341―1982)の組成
(a) 塩化カルシウム溶液
塩化カルシウム二水和物11.76gを脱イオン水に溶かし1Lとする。
(b) 硫酸マグネシウム溶液
硫酸マグネシウム七水和物4.93gを脱イオン水に溶かし1Lとする。
(c) 炭酸水素ナトリウム溶液
炭酸水素ナトリウム2.59gを脱イオン水に溶かし1Lとする。
(d) 塩化カリウム溶液
塩化カリウム0.23gを脱イオン水に溶かし1Lとする。
(a)~(d)の溶液各々25mLを脱イオン水に混合し、全量を1Lとする。この溶液のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量の和は、2.5mmol/Lである。また、カルシウムとマグネシウムイオンの比は4:1であり、ナトリウムとカリウムイオンの比は10:1である。
脱イオン水の電導度は10μS/cmを越えてはならない。全ての試薬は分析用特級とする。
調製した人工調製水は、溶存酸素が飽和に達するまでばっ気し、使用前までばっ気をせずに約2日間貯蔵する。
別紙2