○プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のためのガイダンスの公表について
(令和5年5月29日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課通知)
医療機器は、改良、改善が頻繁かつ多様な内容で行われるため、その開発に当たっては、個々の医療機器ごとの特性を踏まえて、治験の要否や症例数を含めた治験デザイン等を検討する必要があります。
今般、プログラム医療機器の開発及び薬事承認をより効率的に行う観点から、「プログラム医療機器の特性を踏まえた薬事承認制度の運用改善検討事業」(研究代表者:中野壮陛(公益財団法人医療機器センター専務理事)において、市販前から市販後まで一貫した安全性及び有効性の確保策を実施することにより、従来の医療機器とは異なる開発ステージにおいても早期に承認申請を行い得ると考えられるケースの取扱いの運用の明確化を図るため、二段階承認の考え方を含め、プログラム医療機器の特性に合った薬事承認制度の在り方を整理し、別添のように「プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のためのガイダンス」を取りまとめました。
ついては、プログラム医療機器の開発に当たり参考とするよう、貴管内の製造販売業者において浸透が図られるよう、周知方御配慮願います。
なお、同旨の事務連絡を一般社団法人日本医療機器産業連合会、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会、日本デジタルヘルス・アライアンス、一般社団法人日本医療ベンチャー協会、AI医療機器協議会及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構宛てに送付していることを申し添えます。
令和4年度「プログラム医療機器の特性を踏まえた薬事承認制度の運用改善検討事業」報告書
プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のためのガイダンス
令和5年3月
まえがき
医療機器は、改良、改善が頻繁かつ多様な内容で行われるため、その開発に当たっては、個々の医療機器ごとの特性を踏まえて、治験の要否や症例数を含めた治験デザイン等を検討する必要がある。
そのような医療機器の開発をより効率的に行う観点から、「医療機器の迅速かつ的確な承認及び開発に必要な治験ガイダンスのあり方に関する研究」(研究代表者:中野壮陛(公益財団法人医療機器センター専務理事)、平成28年度日本医療研究開発機構委託研究費(医薬品等規制調和・評価研究事業)において治験ガイダンスを策定し、「医療機器の迅速かつ的確な承認及び開発のための治験ガイダンスの公表について」(平成29年11月17日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課事務連絡。以下、「治験ガイダンス」という。)が公表され、同時に、市販前の新たな治験実施の有無によらず、医療機器の承認申請を行い得ると考えられるケースの取扱いについて、「医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について」(平成29年11月17日付け薬生機審発1117第1号、薬生安発1117第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長、医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知。以下、「リバランス通知」という。)により公表された。
プログラム医療機器は、平成25年11月27日に公布(平成26年11月25日施行)された改正薬事法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に名称変更。以下、「医薬品医療機器等法」という。)により、プログラム単体のみであっても流通規制の対象になり得る薬事規制の枠組みが新設されて以後、約8.5年が経過したわが国においても、企業のみならず、アカデミアにおいても研究開発が活発に行われている。特にここ数年は世界発のプログラム医療機器がわが国の企業から上市される等、過去には見られなかったわが国発のイノベーションも顕著であり、プログラム医療機器をより早くわが国の医療現場へ提供していくことが今後さらに求められている。
今般、プログラム医療機器に関しては、改良、改善が頻繁かつ多様な手法で行われる等の特性があり、開発及び薬事承認をより効率的に行う観点から、有効性及び安全性が確保されたプログラム医療機器を迅速かつ的確に薬事承認を行うための論点を整理することとした。
本報告書は、プログラム医療機器は従来の医療機器と比較すると安全性に大きな問題が発生しにくいとされることを踏まえ、リバランス通知の考え方を参考に、市販前から市販後まで一貫した安全性及び有効性の確保策を実施することにより、従来の医療機器とは異なる開発ステージにおいても早期に承認申請を行い得ると考えられるケースの取扱いの運用の明確化を図るため、プログラム医療機器の特性に合った薬事承認制度の在り方を調査・検討し、議論の経過及び考え方の概要を含め、実践的なガイダンスとして、産学官の関係者と協議してとりまとめたものである。
研究代表者
公益財団法人医療機器センター 中野壮陛
目次
1.はじめに
1.1.背景と目的
1.2.ガイダンスの位置づけ
1.3.用語の定義
2.プログラム医療機器の適切かつ迅速な承認及び開発に関する一体的考え方
2.1.プログラム医療機器の特性を踏まえて承認及び開発を一体的に考える必要性
2.2.承認審査の観点を踏まえた開発戦略を考えるための一般的考え方
2.2.1.基本的な視点
2.2.2.固有技術・製品別の視点
2.2.3.プログラム医療機器の変更
2.3.現時点において利活用可能な薬事承認制度
2.3.1.プログラム医療機器に係る優先的な審査等の試行的実施
2.3.2.特定用途医療機器指定制度
2.3.3.医療機器等条件付き承認制度(迅速な適用追加含む)
2.3.4.変更計画確認手続制度(IDATEN)
2.3.5.リバランス通知
2.4.更なる上市の加速に向けた新たな薬事承認制度の考え方
2.4.1.疾病診断用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
2.4.2.疾病治療用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
2.4.3.疾病予防用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
3.おわりに
主な関連通知等
附属資料:本ガイダンスに関連する事例集
1.はじめに
1.1.背景と目的
平成25年11月27日に公布(平成26年11月25日施行)された改正薬事法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に名称変更。以下、「医薬品医療機器等法」という。)により、プログラム単体のみであっても流通規制の対象になり得る薬事規制の枠組みが新設されて以後、プログラム医療機器は年々増加している。
そのような中、令和2年11月にはプログラム医療機器の最先端医療機器の審査抜本改革として「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略」、通称DASH for SaMDが策定された。DASH for SaMDは、萌芽的シーズを早期に把握し、審査の考え方を示し、開発から償還価格までの相談窓口を一元化するとともに、プログラム医療機器の特性を踏まえた審査制度・体制を確立することにより、その早期実用化を促進するものである。
具体的には、令和3年4月には厚生労働省・医療機器審査管理課に「プログラム医療機器審査管理室」、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」という)に「プログラム医療機器審査室(SaMD室)」、薬事・食品衛生審議会の医療機器・体外診断薬用医薬品部会の下に「プログラム医療機器調査会」が、令和4年7月にはPMDA科学委員会に「AIを活用したプログラム医療機器に関する専門部会」それぞれ設置され、プログラム医療機器のための専門部門を新設して体制の強化を図っている。同時に、プログラム医療機器の開発においては従来の医療機器とはステークホルダーが一部異なることが特徴でもあるため、萌芽的シーズの把握や開発における考え方の整理に関する課題について、産学開発者と規制当局関係者とがその解決に向けた情報共有や忌憚のない意見交換を行う場を設ける必要があるとの認識から、SaMD産学官連携フォーラム(厚生労働省、経済産業省主催)も開催し、産学開発者と規制当局関係者の相互理解に努めてきた。
このようにプログラム医療機器の実用化を促進する動きや開発環境の整備が活発化してきているため、プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発をさらに後押しするためのガイダンスについて、厚生労働省「プログラム医療機器の特性を踏まえた薬事承認制度の運用改善検討事業」において産学官の関係者と協議し、以下の通りガイダンスをとりまとめた。
本ガイダンスの目的は、現時点で考えられるプログラム医療機器の承認審査における共通事項を行政、アカデミア、産業界が共有することで、産業界及びアカデミアが、より効率的にプログラム医療機器の実用化を図り、わが国におけるプログラム医療機器開発を促進させることにある。
本ガイダンスにより、行政、アカデミア、産業界が共通理解を持つことでプログラム医療機器開発及び審査に投入する時間、リソースが最適化され、より良いプログラム医療機器がより早く上市されることが望まれる。
1.2.ガイダンスの位置づけ
本ガイダンスは、「医療機器プログラムの承認審査に関するガイダンスの公表について」(平成28年3月31日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器・再生医療等製品担当参事官室事務連絡。以下、「承認申請ガイダンス」という。)で示されている考え方や治験ガイダンスの考え方を補助しつつ、プログラム医療機器が従来の医療機器と比較して安全性に大きな問題が発生しにくいとされていることを踏まえ、リバランス通知の考え方を参考に、市販前から市販後まで一貫した安全性及び有効性の確保策を実施することにより、従来の医療機器とは異なる開発段階においても承認申請を行い得ると考えられるケースの取扱いの明確化を図ったものである。
そのため、現時点で考え得るプログラム医療機器の特性を踏まえた薬事承認制度の在り方を調査・検討し、プログラム医療機器について、最終的に目標とする製品が臨床で用いられた際の、治療や診断等から得られる患者の利益や価値(以下、「臨床的意義」という。)がまだ確立されていなくても、これまでの臨床実績や機能又は性能に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定した承認後に、臨床現場で使用された経験を踏まえながら、臨床的エビデンスが確立されたのちに、必要に応じて承認事項一部変更承認申請を行っていくような開発の戦略(以下、「二段階承認の考え方」という。)に関する実践的なガイダンスとなることを目指した。
プログラム医療機器の特性を踏まえれば、本ガイダンスは今後の技術革新や知見の集積等をもとに改定され得るものであり、プログラム医療機器の開発及び承認に当たっては、個別の製品の特性を理解した上で、科学的な合理性をもって柔軟に対応することが必要である。
また、プログラム医療機器の開発初期段階から、必要に応じてPMDAの各種相談制度を活用することにより、開発及び承認申請に関する問題点を解決しながら進めていくことが推奨される。
なお、全てのプログラム医療機器が二段階承認の考え方を経て上市される必要はなく、次章にプログラム医療機器の適切かつ迅速な承認及び開発に関する一体的考え方を含めてとりまとめている。
1.3.用語の定義
本ガイダンスの用語は以下の定義とする。
・ プログラム医療機器
医薬品医療機器等法に基づくプログラム医療機器であり、医薬品医療機器等法施行令(昭和36年政令第11号)別表第一で定められる、疾病診断用プログラム、疾病治療用プログラム又は疾病予防用プログラム(プログラムを記録した記録媒体も含む)。ただし、副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものを除く。なお、本邦においてはプログラム単体として流通する製品(医療機器に該当するもの)を「医療機器プログラム」と呼び、それに加え、プログラムを記録した記録媒体も含むものを「プログラム医療機器」と呼ぶ。
・ SaMD
Software as a Medical Deviceの略であり、IMDRF(国際医療機器規制当局フォーラム)の「Software as a Medical Device (SaMD):Key Definitions(2013年12月)」では「1つ以上の医療目的で使用されることが意図されたソフトウェアで、ハードウェアの医療機器の一部とならずにこれらの目的を果たすもの」とされている。即ち、本邦における「医療機器プログラム」を指す。
・ リバランス通知
「医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について」(平成29年11月17日付け薬生機審発1117第1号、薬生安発1117第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長、医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知)
・ 治験ガイダンス
「医療機器の迅速かつ的確な承認及び開発のための治験ガイダンスの公表について」(平成29年11月17日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課事務連絡)
・ プログラム基本通知
「医療機器プログラムの取扱いについて」(平成26年11月21日付け薬食機参発1121第33号、薬食安発1121第1号、薬食監麻発1121第29号 厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)、厚生労働省医薬食品局安全対策課長、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)
・ 承認審査ガイダンス
「医療機器プログラムの承認審査に関するガイダンスの公表について」(平成28年3月31日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器・再生医療統制品担当参事官室事務連絡)
・ 記載事例事務連絡
「医療機器プログラムの製造販売承認(認証)申請書及び添付資料の記載事例について」(平成27年2月10日付け厚生労働省医薬食品局医療機器・再生医療等製品担当参事官室事務連絡)
・ 該当性ガイドライン
「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインの一部改正について」(令和5年3月31日付け薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第4号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・同監視指導・麻薬対策課長通知)
・ 0929通知
「追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた診断用医療機器の性能評価試験の取扱いについて」(令和3年9月29日付け薬生機審発0929第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
2.プログラム医療機器の適切かつ迅速な承認及び開発に関する一体的考え方
2.1.プログラム医療機器の特性を踏まえて承認及び開発を一体的に考える必要性
プログラム医療機器を持続的に創出するためには、申請者となる製造販売業者が主体性をもって、臨床現場で使用できるプログラム医療機器を提供することや、承認後の販売戦略や保険償還までを見据えた開発戦略を策定するとともに、市販後も含めたプログラム医療機器のトータルライフサイクルを見据えた効率的な開発1を行うことが重要である。
従って、開発するプログラム医療機器の特性を適切に評価し、臨床の実態を踏まえたユースケースを想定した検討が必要となる。その中でも薬事規制への対応については、「2.2 承認審査の観点を踏まえた開発戦略を考える視点」と「2.3 利活用可能な薬事承認制度と更なる加速化に向けた視点」の2軸への理解が必要となるため、本章ではそれらについて概説する。
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1 プログラム医療機器のトータルライフサイクルを見据える上では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の「サクセス双六でみる研究開発ステップ」等が参考となる。
https://www.amed.go.jp/program/list/02/sangaku_pamphlet.html#success
2.2.承認審査の観点を踏まえた開発戦略を考えるための一般的考え方
2.2.1.基本的な視点
プログラム医療機器の承認審査の観点を踏まえた開発戦略を考えるためには、「概念的要求事項の整理、共通の論点や承認申請書及び添付資料に記載する事項等を理解する必要がある。
ア 「概念的要求事項」の整理
プログラム医療機器を開発する際、開発中のプログラム医療機器に関する臨床的位置づけ及び設計コンセプト等を整理し、既承認医療機器との差分を踏まえて、「概念的要求事項」を整理することが重要となる。「概念的要求事項」が整理されることで、承認申請に必要な有効性・安全性を評価する際の評価項目等を明確化することができる。
以降では、承認審査を進めるために必要な「概念的要求事項」の整理の考え方を概説する。
図1.プログラム医療機器に関する「概念的要求事項」の整理の考え方
① 開発コンセプトの明確化
開発しようとする、あるいは開発中の製品について、開発するに至った背景や経緯、対象疾患の自然歴(既存療法の有無及び既存療法による治療経過)、又は医療実態(臨床成績)、疾患の重症度、国内外における最新の開発状況等を踏まえて、開発の意図を明確にする。
② 臨床的位置づけの検討
プログラム医療機器の臨床的位置づけは、治験要否の判断や治験の計画立案の際の試験デザインや主要評価項目を決定する上で重要な要素となるほか、製造販売承認申請書の添付資料における開発の経緯や、対面助言の資料、特に承認された医療機器の特徴を示す「使用目的又は効果」に関係するため、承認取得後の販売戦略にも大きく影響する。「臨床的位置づけ」とは、疾病の様態や患者の状況、既存の治療法・診断法に対して、開発したプログラム医療機器がどのような目的で使用され、どのような効果をもたらすか、他の治療法・診断法等と比較した場合の性能等の差異や治療における優先順位等を意味するものであり、その医療機器の特徴を決定づけるものである。
「臨床的位置づけ」を整理するためには、既存の治療法・診断法と当該製品との関係(当該製品の新規性、改良点等の明示、当該製品が既存の治療法・診断法の代替・併用・補助のいずれの目的で使用されるものなのか等)、どのような臨床転帰が改善するのか等を踏まえながら、できるだけ第三者2が確認可能な理解しやすいものとすることが重要である。例えば、疾病治療の支援・補助を意図するプログラム医療機器の場合、死亡率の低下、機能改善、症状の改善あるいは緩和、生活の質の改善、機能喪失確率の低減等につながることを意図したものであるのか等を明確にすることが重要である。また、疾病の診断支援を意図するプログラム医療機器の場合、疾病の発見・確認、発現予測、疾病の診断、ある治療法が奏効する可能性が高い患者の特定等につながることを意図したものであるのか等を明確にすることが重要である。
表1.臨床的位置づけの整理のための項目とポイント
疾病診断用プログラム |
疾病治療用プログラム |
|
対象とする疾患・患者等は何か。 |
疾病の重症度、疾病の発生時期(急性期、慢性期等)や製品による介入時期、他の治療法・診断法の選択肢の有無等の確認 |
|
対象とする疾患・患者等に対する現状の医療実態とその課題は何か。 |
ガイドラインや文献等から、課題を定量的に説明する情報の整理 |
|
誰が誰に使用させるか。 |
専門医、非専門医、コメディカル、患者等の明確化 |
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開発中のプログラムがその課題をどのように解決するのか。 ※右のいずれに該当するのか |
① 既存法を代替するものなのか ② 併用することで効果を高めるものなのか ③ 既存の診断法に比べ、非侵襲又は低侵襲に(早期)診断ができるものなのか ④ 既存法を補助するものなのか ⑤ 診断法等が存在しなかった疾病に対しあらたな診断法等の手段を提供するものなのか ⑥ 医療者の負荷を軽減するものなのか 等 |
|
開発中のプログラムを医療現場に導入することで、何がどのように変わるのか。 ※右の点について整理 |
・現状の診療フロー等がどのように行われているか。当該製品を導入することで、診療フロー等がどのように変化し、診療フローのどこに位置づけられるか ・患者にとってどのような医学的メリットがあるのか |
・死亡率を低下させる、機能改善、症状の緩和、生活の質の改善、機能喪失確率の低減等、患者にとってどのような医学的メリットがあるのか ・対症療法又は根治療法等のいずれに該当するか ・既存の治療法と比較して効果を得られる確率や安全性がどう変化することを意図しているか ・既存療法と比較しての効果の持続性がどう変化することを意図しているか |
表1の「臨床的位置づけを整理・検討する上でのポイント」を踏まえ、「開発コンセプト」に基づき、「臨床的位置づけ」を整理することが、第三者が確認可能な理解しやすいものとするポイントである。
なお、2.3.4項に記載の通り、疾病予防用プログラムについては承認等の実績がないが、臨床的位置づけを整理する上では、疾病診断用プログラムや疾病治療用プログラムの考え方を用いて整理することも可能である。
③ 既承認の医療機器との比較
プログラム医療機器に限らず、開発中の製品に類似医療機器がある場合は、類似医療機器と比較をしながら、開発中の製品に関する情報を整理する必要がある。類似医療機器の比較方法については、「医療機器の製造販売承認申請書添付資料の作成に際し留意すべき事項について」(平成27年1月20日付薬食機参発0120第9号通知)等を参考にすること。
④ 概念的要求事項の検討
「概念的要求事項」とは、開発中のプログラム医療機器の臨床的な有効性・安全性を評価する上で必要な評価項目等をいう。上述した①~③を踏まえ、開発中の製品に関する概念的要求事項を整理し、プログラム医療機器の開発コンセプトや特性も踏まえた適切な評価方法を検討することになる。また、既承認の医療機器(プログラム医療機器を含む。)との差分については、個別にリスク分析を行い、必要な評価を行うことも必要となる。
「概念的要求事項」は、後述する「医療機器プログラムの審査ポイント」に個別事例が紹介されているため参考となる。
なお、新規性の高いプログラム医療機器については、既存の評価方法も活用しながら、臨床上の有効性及び安全性を確保するために、様々な観点から考察し、評価を行う必要がある。
イ 承認審査上の論点
① 申請品目の機能及び性能
承認審査においては、開発コンセプトに基づき、どのような機能をもつ製品を開発しようとしたか、どの程度の性能を有する製品として開発しようとしたのか(設計コンセプト)を整理し、詳細に説明する必要がある。承認を得たいと考えている臨床的位置づけにより、開発中の製品に必要な、あるいは求められる機能や性能が変わるため、医療実態や臨床的位置づけを踏まえ、開発者としての考え方を明確にすることが必要となる。なお、承認審査において確認する機能は、臨床的な有効性を発揮するために必要な機能のみを意図しているわけではなく、申請品目が有しているすべての機能を意図している。
また、使用者や使用方法等を踏まえて、入力された情報を適切な精度等をもって処理するために必要な入力情報の要件、プラットフォーム要件、使用環境要件についても説明が必要である。例えば、センサを搭載したウェアラブルデバイス(非医療機器を含む)をプラットフォームとする場合、適切なデータを取得するためには、センサの精度管理等が重要となるため、プログラム医療機器の開発であったとしても、併用する機器等に求められる要件についても検討する必要がある。また、プログラム医療機器をインストールするプラットフォームが医療現場の環境において用いられる場合、患者や使用者等への安全性(電気的安全性、電磁両立性等)が確保されることをプログラム医療機器の開発者として説明する必要がある。
プログラム医療機器が他の医療機器からの入力情報を処理したり、他の医療機器に出力する場合や、医薬品と併用することが想定される場合は、併用が想定される医療機器等の条件を特定し、併用が想定される医療機器等の共同開発や規制上の手続きの要否等について、当該医療機器等の製造販売業者とも協議を行い、対応しておく必要がある。
② 製品としての機能及び原理・アルゴリズム
プログラム医療機器が、入力された情報をどのような原理・アルゴリズム(処理の内容、判断基準、カットオフ値等を含む。)に基づき処理しているか、入力された情報を正常に処理できる入力条件、アルゴリズム処理後にどのような情報が出力されるのかを、説明する必要がある。特に、機械学習を用いている場合は、どのような学習アルゴリズムなのか、開発データがどのようなデータ(データ収集施設、正解となるラベルの設定方法、どの程度の学習データ量か)なのか等を明確にすることが重要である(図2)。
図2.プログラム医療機器の入力情報・演算処理・出力情報の考え方
③ 製品が有する各機能に関する評価
上述①で明確にした機能について、開発者が意図した通りに動作することを評価する必要がある。
④ 治験の要否検討
(1) データの充足性の評価
プログラム医療機器の治験の要否は、プログラム医療機器としての新規性の程度と有効性・安全性を評価する上で必要な評価内容によって判断される。開発コンセプト、臨床的位置づけ、既承認の類似プログラム医療機器との差分、概念的要求事項の検討を踏まえ、性能試験、動物試験等の非臨床試験成績又は既存臨床データ、文献等を基に総合的に臨床評価を行い、治験でなければ評価できないことが未評価のまま残る場合には新たな治験の実施が必要となる。
一方、プログラム医療機器やその出力情報等に関し、すでに臨床的意義が確立されている、あるいは臨床的な有効性・安全性が検証されているような疾病診断用プログラム医療機器については、後述するように治験を実施せずとも追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた性能試験により有効性・安全性を評価可能である場合もある。
他方、臨床試験成績に関する資料の提出が必要とされるプログラム医療機器であっても、臨床評価報告書による臨床評価が可能な場合もある。
(2) 追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた性能試験による評価
疾病診断用プログラム医療機器に関する評価を検討する際、追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等3を用いた性能試験により有効性・安全性が評価可能である場合には、0929通知の活用が想定される。
治験を改めて実施することなく0929通知に該当する性能評価試験で評価データが充足する場合には、より迅速な開発が見込めることとなる。
なお、0929通知に示された考え方は広く利活用できる可能性があるため、事前にPMDAに相談することが迅速な開発に向けて推奨される。
表2.0929通知の具体的な取扱い
(1)既存の医用画像データ又は生体試料のみを収集し、新たに評価上必要な情報等を付ける等した上で、性能評価に用いる場合 |
(2)既存の医用画像データ又は生体試料及びこれらに関連する既存の診療情報を収集し、性能評価に用いる場合 |
|
申請区分 |
主に改良医療機器(臨床なし) |
主に改良医療機器(臨床あり) |
倫理性確保4 |
― |
○ |
信頼性確保5 |
○ |
○6 |
承認申請時の添付資料の位置付け |
設計及び開発に関する資料 (施行規則第114条の19第1項第1号ロ) |
臨床試験の試験成績に代替する資料 (施行規則第114条の19第1項第1号ヘ) |
考えられる事例 |
胸部CT画像を後ろ向きに収集し、診断支援用画像解析機能の判定性能を評価する場合 |
胸部CT画像及び確定診断結果付きのカルテ情報7を後ろ向きに収集し、診断支援用画像解析機能の判定性能を評価する場合 |
(3) 外国で実施された治験成績の取扱い
外国で実施されたピボタル治験によりプログラム医療機器の有効性及び安全性が検証されている場合は、民族的要因(内的要因と外的要因)を考慮して、本邦における有効性及び安全性を評価する国内治験の必要性を検討することになる。
使用言語や生活様式等が異なる海外において開発されたプログラム医療機器においては、翻訳の妥当性や文化背景、生活様式の差異等の外的要因が論点となることから、本邦の医療環境下において、海外ピボタル治験と同様の有効性及び安全性が示されるか等を市販前に評価し、より適切な市販後安全対策を講じる必要がある。
国際共同治験を実施する際の基本的な考え方は、医薬品や医療機器で示されているところであるが、プログラム医療機器においても同様に民族的要因(内的要因と外的要因)を考慮する必要がある。プログラム医療機器において考慮されるべき民族的要因としては以下のようなものが挙げられる。
1) 内的要因:人種差(例えば、体格差や骨の厚み等、形態学上の差異、疾患のタイプ、医薬品を含有する医療機器における代謝系の差異等)等
2) 外的要因:手技の新規性の高さ、併用薬剤・併用機器の差異、標準治療の違い・診療ガイドライン等の差異、医療事情の差異(移植医療の状況、類似の手技の普及の度合い、医療従事者の資格の相違、治療介入の考え方の相違等)、社会的・文化的背景の差異、生活様式、使用言語及び識字率、ITリテラシー、ヘルスリテラシー等
一方、プログラム医療機器の特性を踏まえると、海外治験成績の外挿性を考える前提として、プログラムへの入力情報とプログラムからの出力情報に左右される要素が設計上、考慮されているかについても検討する必要がある。
例えば、入力情報の違いが国内外でどの程度、プログラム医療機器の機能差・性能差に影響を与えるのか(入力情報が肌の画像情報である場合に色調調整機能が設計上考慮されているか等)、疾病の診断に関する様々な判定の差(疾病のグレーディングの相違等)によって、学習データ等のアノテーションに差が生じ、プログラム医療機器の出力に影響を与えるのか(アジア人特有の疾病に起因するものや地域性に由来する学習データの偏りの可能性等)等である。
このようなケースの中には、市販後に限定された施設や対象患者において慎重にプログラム医療機器を使用するとともにデータ収集や安全対策をより適切に実施することで、市販前の治験を通じた評価によらずとも、当該機器の安全かつ適切な使用を確保できる可能性も考えられる。このような対応により、海外ですでに承認されているプログラム医療機器の国内早期導入に資することが可能と考えられる。ただし、使用言語以外の外的要因の差異等により、安全性だけではなく、有効性に係る懸念が大きい、あるいは不明である場合には、市販前にリスク・ベネフィットバランスの評価を行う必要があり、追加の国内治験の実施を考慮するべきである。
なお、国内外の差異以外に、音声情報から会話情報を処理することによる疾病診断用プログラム医療機器等では方言等も、プログラム医療機器の評価上の論点として重要になる場合もあるため、上記1)や2)を参考に評価の妥当性を説明することが重要である。
治験は人を対象とした介入試験であり研究的な側面があり、倫理性が確保される必要があり、また治験の実施には、多くの時間、コスト、リソースが必要となる場合もある。そのため、プログラム医療機器開発を効率的に行うためには、既存の臨床データ及び文献情報等を総合的に評価した上で、早期の患者アクセスの確保のためにはどのような手段が取り得るか等を慎重に検討し、必要とされる臨床データを見極めることが重要となる。治験の要否判断にあっては、「ア 概念的要求事項の整理」や「イ 承認審査上の論点」にて検討した内容を踏まえ、PMDAの開発前相談や臨床試験要否相談を活用することが勧められる。治験の要否について検討した結果、プログラム医療機器に関して治験を実施する必要があると判断された場合においても、治験ガイダンスの「3.治験デザイン及び症例数の基本的考え方」、「5.良質な治験の実施及び治験データの品質管理」で言及されている情報は、治験実施者にとって有益となりうる。
⑤ 個別製品によらないその他の論点
医療機器の基本要件基準において、リスクマネジメント、開発のライフサイクルプロセスの確保、サイバーセキュリティの確保、ユーザビリティエンジニアリングの確保などが求められている。ここでは主にプログラム医療機器において特に論点となることが多い、リスクマネジメント、ソフトウェアライフサイクルプロセス、サイバーセキュリティ等について概説する。
(1) リスクマネジメント
医療機器の基本要件基準第2条(リスクマネジメント)に基づき、プログラム医療機器を含むすべての医療機器にリスクマネジメントが求められており、これに対応する公的規格としてJIS T 14971(医療機器 リスクマネジメントの医療機器への適用)が知られている。当該事項には、既知の危害だけでなく予見し得る危害についても評価することが求められている点に留意されたい。
承認申請に際しては、リスクマネジメントの実施状況や残留リスク等について、添付資料に記載することが必要となる。
(2) ソフトウェアライフサイクルプロセス
医療機器の基本要件基準第12条(プログラムを用いた医療機器に対する配慮)第2項の規定に基づき、プログラム医療機器に開発のライフサイクルプロセスの確保が求められており、JIS T 2304(医療機器ソフトウェア―ソフトウェアライフサイクルプロセス)等を参考に、添付資料において規格への適合性を説明することが必要となる。
なお、当該規格では、開発しているプログラム医療機器の使用に起因してもたらされ得る危害のリスクに応じたソフトウェア安全クラスに分類し、このクラスに応じた対応が求められる。プログラム医療機器は医療に使用されるため、出力情報に誤りがあった場合、危険状態の一因となり得る可能性があることを踏まえて分類することが必要である。
(3) サイバーセキュリティ
医療機器の基本要件基準第12条(プログラムを用いた医療機器に対する配慮)第3項の規定に基づき、プログラム医療機器にサイバーセキュリティの確保が求められており、JIST 81001―5―1(ヘルスソフトウェア及びヘルスITシステムの安全、有効性及びセキュリティ―第5―1部:セキュリティ―製品ライフサイクルにおけるアクティビティ)等を参考に、添付資料において規格への適合性を説明することが必要となる。
(4) 各試験における評価検体の考え方
非臨床試験及び臨床試験を問わず、評価に使用する製品は、原則として承認を得ようとするバージョンのものを用いる必要がある。しかしながら、プログラム医療機器の場合、OSのアップデートなど外部環境の変化などにより評価後に頻回に変更修正が生じる可能性もあることから、承認を得ようとするバージョンと異なるバージョンの製品を用いて試験を実施した場合、差分を特定した上で、その差分があったとしても承認を得ようするバージョンの製品の評価に用いることの妥当性を説明する必要がある。
(5) 機械学習を用いたプログラム医療機器に関する論点
プログラム医療機器の開発において、申請品目の臨床的位置づけ及び試験の目的を踏まえ、評価試験に用いる評価データについては、可能な限りバイアスを排除した上で、そのバリエーションを検討することが必要である。
一方、教師付き機械学習は、入力情報に対して出力が非線形に変化する特性を利用したAIの機械学習方法であるため、開発時の学習データに用いていないような未知データが上市後に入力情報として演算処理された場合には、意図しない結果を出力することがある。また、承認申請書に規定する原理、アルゴリズムや設計仕様等のみでは、機械学習によって得られた出力情報の品質が確保できることを説明できない場合が多い。特に、深層学習によるニューラルネットワークを活用したものは、その設計者であってもその挙動を十分に解釈できない場合があり得る。
そのため、機械学習を用いたプログラム医療機器の評価においては、想定される臨床的位置づけを踏まえ、可能な限りバイアスを排除し、入力が想定される範囲を網羅した評価データに対して、適切な出力情報が得られることを確認することが現時点では重要と考える。
ウ 承認申請書及び添付資料に記載する事項
承認申請書には、申請品目の有効性・安全性を確保する上で、使用目的又は効果、形状、機能、構造及び原理、性能及び安全性に関する規格等を適切に記載することが必要である。
プログラム医療機器の承認申請書における記載事項については、プログラム基本通知の「8 製造販売承認申請の取扱いについて」や記載事例事務連絡等の関連通知等を参考にして、整備する必要がある。また、プログラム医療機器の添付資料の各欄の記載事項については、上記通知等に加えて、PMDAが作成している「医療機器Good Review Practice(GRP)」(平成28年6月3日)が有益である。
2.2.2.固有技術・製品別の視点
厚生労働省では、審査時に用いる技術評価指標等を公表しており、製品の効率化及び承認審査の迅速化を図る目的で、検討分野を選定して次世代評価指標を公表してきた。プログラム医療機器に関連する次世代医療機器評価指標としては、以下の3点が公表されている。
① 「次世代医療機器評価指標の公表について:別紙3「血流シミュレーションソフトウェア」」(令和元年5月23日付け薬生機審発0523第2号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
② 「次世代医療機器評価指標の公表について:別紙4「人工知能技術を利用した医用画像診断支援システムに関する評価指標」」(令和元年5月23日付け薬生機審発0523第2号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
③ 「次世代医療機器評価指標の公表について:別紙2「行動変容を伴う医療機器プログラムに関する評価指標」」(令和4年6月9日付け薬生機審発0609第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
いずれの評価指標も法的な基準という位置づけではなく、技術開発の著しい次世代医療機器としての評価項目が示されており、製品の特性に応じて、評価指標に示すもの以外の評価が必要である場合や評価指標に示す評価項目のうち適用しなくてもよい項目もあり得る。
厚生労働省及びPMDAは、承認実績が存在するプログラム医療機器について、産業界の協力を得つつ、認証基準の策定及び改正を主体的に行っている。また、PMDAでは、「医療機器プログラムの審査ポイント」として、承認申請に際し、資料の作成の効率化及び審査の迅速化に資するため、規定する適用範囲に示す医療機器について、必要な評価項目を示している。令和5年3月時点で、2つの認証基準および5つの審査ポイントが策定・公表されている。
認証基準 |
放射線治療計画プログラム認証基準 |
呼吸装置治療支援プログラム認証基準 |
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審査ポイント |
腹膜透析用治療計画プログラム |
歯科インプラント用治療計画支援プログラム |
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眼科手術用治療計画プログラム |
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病変検出用内視鏡画像診断支援プログラム |
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医用画像の読影支援を目的としたコンピュータ診断支援プログラム |
さらに、PMDAに設定されている科学委員会では、先端科学技術応用製品に対する対応方針、ガイドライン、ガイダンス等の作成、その他、審査等業務の科学的な面における向上方策の提言を行っており、専門部会において議論された内容が報告書として取りまとめられ、公表されている。令和5年5月時点で「AIを活用した医療診断システム・医療機器等に関する課題と提言2017」が公表されているが、令和4年7月から「AIを活用したプログラム医療機器に関する専門部会」が設置され、活動している。論点として①データ再利用のあり方、②評価データに求められる条件、③市販後に性能変化することを意図するAI(AdaptiveAI)の審査のあり方が挙げられており、報告書の公表が待たれる。
公表されている通知等の対象範囲は各文書において特定されているが、プログラム医療機器の評価の考え方等は、開発中のプログラムによらず参考になる場合があるので、開発者や製造販売業者は、開発や承認申請に際し、こういった文書の内容を確認されることが望まれる。
2.2.3.プログラム医療機器の変更
承認取得後のプログラム医療機器の変更等に伴い、承認事項(当該医療機器の承認書の「使用目的又は効果欄」、「形状、構造及び原理欄」、「性能及び安全性に関する規格欄」等に記載された事項)を変更しようとする際、当該変更が有効性及び安全性に影響を与えるものである場合には、承認事項一部変更承認申請が必要になる。
一方、軽微変更届が必要となる事例としては、異なる種類の動作環境であるOSへの変更・追加等の動作環境であるOSの種類やクラウド動作の追加・変更・削除等が含まれる。
また、承認事項一部変更承認申請及び軽微変更届のいずれの手続きも要さない事例(届出不要)としては、「医療機器プログラムの一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」(平成29年10月20日付け薬生機審発1020第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)により、医療機器プログラムの動作環境であるOS等の変更・追加・削除(医療機器としての使用目的又は効果及びその性能に影響を与えない場合に限る。)、動作環境として推奨する汎用PCや情報端末の追加・変更・削除等が示されている。ただし、バグフィックス等の対応を行う場合は、その内容により、回収を要する場合もあるため、「医療機器プログラムの取扱いに関するQ&Aについて(その2)」(平成27年9月30日厚生労働省医薬食品局医療機器・再生医療等製品担当参事官室・厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)により注意喚起されている。
なお、AIを活用した医療機器のように市販後に恒常的に性能等が変化するプログラム医療機器については、変更計画確認手続制度(IDATEN:Improvement Design within Approval for Timely Evaluation Notice)の利活用が期待される。
プログラム医療機器の変更手続きについて、一部変更承認申請、軽微変更届、届出不要のいずれに該当するのかについては、PMDAの簡易相談の利用も可能である。
――――――――――
2 ここでの第三者とは狭義にはPMDAを指し示すものであるが、広義には製造販売業者以外の関係企業、研究者、公的資金等の支援者等の幅広い概念を含むものである。
3 既存の医用画像データ又は生体試料及びこれらに関連する既存の診療情報等(通常の診療で得られたもの又はそれらを収集したバイオバンク、データベース等において提供されているものに限るものであり、介入を伴う臨床研究等で得られたデータ等を除く。)
4 試験に使用するデータ等の第三者への提供・開示及び承認申請を含む商用利用に関する患者等の同意が適切に得られていることについて、承申請時にPMDAの求めに応じ申請者が根拠資料に基づいて説明できること。同意の適切性については個人情報の保護に関する法律等を参照すること。
5 試験に使用するデータ等の信頼性確保のための適切な管理(例えばQC/QA体制の構築等)が行われ、施行規則第114条の22に規定する申請資料の信頼性の基準に従って添付資料が作成されていること。
6 適切な管理が行われていることについて、PMDAによる信頼性調査時に申請者が根拠資料に基づいて説明できること。
7 診断後の治療方針に関わる確定診断の情報が含まれるカルテ情報など
2.3.現時点において利活用可能な薬事承認制度
プログラム医療機器に関係する薬事承認制度等は図3で整理される。
図3.現行制度における製造販売承認申請の選択肢
2.3.1.プログラム医療機器に係る優先的な審査等の試行的実施
プログラム医療機器は、その特性からも先駆的医療機器指定制度の対象になり難い。例えば、疾病治療用プログラムでは多因子疾患等を対象としたものが多く、既存の先駆的医療機器指定制度の対象疾患の重篤性にかかる要件を満たさない。また、疾病診断用プログラムでは、非専門医による診断の質を向上させる場合が想定され、既存診断法と比較した有効性に係る指定要件との関係で評価が難しいという課題がある。このような点を踏まえて、令和4年9月2日付けで厚生労働省が通知「プログラム医療機器に係る優先的な審査等の試行的実施について」(薬生機審発0902第2号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)を発出した。
本通知では、プログラム医療機器の特性に合せた指定要件を設定し、期限を限定した上で、指定希望品目の公募、ヒアリング、予備的審査、予備的審査、PMDAによる評価、薬事・食品衛生審議会における審議・了承された場合には公表する予定8である。指定された場合には、優先相談・優先審査・事前評価・コンシェルジェ対応等を行い、総審査期間6か月以内を目標とする。
優先的な審査等の指定を受けるプログラム医療機器は、以下の3つのすべての要件を満たす必要がある。なお、3つのすべての要件を満たす場合であっても、当該プログラム医療機器と同等の原理に基づく使用目的又は効果を有する他の医療機器が既に承認されている場合には原則として指定されない。
(1) 指定要件1:治療法、診断法又は予防法の画期性
原則として、プログラム医療機器としての原理が既存の医療機器と比べて明らかに異なるものであること。
(2) 指定要件2:対象疾患に係る医療上の有用性
以下のいずれかに該当するものであること
ア 既存の治療法、予防法若しくは診断法がない、又は、臨床試験等(公的な競争的資金により実施された臨床研究を含む。)において既存の治療法、予防法若しくは診断法に比べて極めて高い有効性若しくは安全性が見込まれること。例えば、根治率の向上や合併症の軽減等を可能とする治療計画支援用プログラム、重篤な疾病の早期発見を可能とする疾病診断用プログラム、既存の診断法と比較して明らかに高い診断性能により従来の診療フローの改善が可能な疾病診断用プログラム等が挙げられる。
イ 臨床試験等(公的な競争的資金により実施された臨床研究を含む。)において、高い有効性及び安全性が確保されていることに加え、患者の肉体的・精神的な負担等の観点から、既存の治療法、予防法又は診断法と比べて医療上特に有用であると見込まれること。例えば、既存の治療薬の減量が可能な疾病治療用プログラム、既存の侵襲が非常に高い検査・診断法と同等の検査・診断が侵襲なく実施できる疾病診断用プログラム等が挙げられる。
(3) 指定要件3:世界に先駆けて日本で早期開発及び承認申請する意思並びに体制
日本における早期開発を重視し、世界に先駆けて又は同時に日本で承認申請される(最初の国の承認申請を起算日とし、同日から30日以内の申請は同時申請とみなす。ただし、申請日と申請受理日が存在する国においては、申請受理日を起算日とする。)予定のものであり、PMDAで実施されている先駆け総合評価相談を活用し承認申請できる体制及び迅速な承認審査に対応できる体制を有していること。
2.3.2.特定用途医療機器指定制度
特定用途医療機器は、医薬品医療機器等法第77条の2第3項に基づき、対象とする用途の需要が著しく充足していないことや医療上特にその必要性が高いもの等の条件に合致するものとして、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が指定するものである。
本制度は、小児に対する用法又は用量が設定されていない等、医療上のニーズが著しく充足されていない医療機器等の研究開発の促進に寄与することを目的としており、以下の指定要件をすべて満たすものが対象となり得る。
(1) 指定要件1:対象疾患
以下のいずれかに該当するもの。
ア 小児の疾病の診断、治療又は予防の用途に用いることとなるものとして、法第23条の2の5又は法第23条の2の17の承認を受けようとするもの
イ 既に法第23条の2の5又は法第23条の2の17の承認を受けているものであって、形状、構造及び原理又は使用方法を変更することにより、小児の疾病の診断、治療又は予防の用途に用いることとなるもの
(2) 指定要件2:対象とする用途への需要の充足性
対象とする用途の需要が著しく充足されていないものであって、以下のいずれかに該当するものであること。
ア 既存の治療法、予防法又は診断法がないもの
イ 有効性、安全性又は肉体的若しくは精神的な患者負担の観点から、既存の治療法等よりも有用性の高い治療法、予防法又は診断法が必要とされているもの
(3) 指定要件3:対象とする用途に対する特に優れた使用価値
以下の2つの両方を満たすものであること。
ア 適応疾患の重篤性が高い、又は重篤性の高い疾患に対して支持的に用いるもの
イ 国際的なガイドライン等で標準的な治療法として確立しているもの、又はランダム化比較試験の結果等で高いエビデンスが得られているもの
2.3.3.医療機器等条件付き承認制度(迅速な適用追加含む)
生命に重大な影響があり、かつ既存の治療法等に有効なものがない疾患を対象とする革新的な医療機器については、患者数が少なく治験の実施に相当な時間を要する等の理由により臨床開発が長期化する等、承認申請に必要な臨床データの収集に著しい困難を伴うことから、医薬品医療機器等法第23条の2の5第12項の規定により条件を付して同条第1項又は第15項の「医療機器等条件付き承認制度」が適用され得る。
「医療機器及び体外診断用医薬品の条件付き承認の取扱いについて」(令和2年8月31日付け薬生機審発0831第2号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)における指定要件は、以下の(1)又は(2)において示す要件のいずれにも該当する医療機器とされている。
(1) 類型1
ア.生命に重大な影響がある疾患又は病気の進行が不可逆的で日常生活に著しい影響を及ぼす疾患を対象とすること。
イ.既存の治療法、予防法若しくは診断法がないこと、又は既存の治療法等と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること。
ウ.一定の評価を行うための適切な臨床データを提示できること。
エ.新たな臨床試験又は臨床性能試験の実施に相当の困難があることを合理的に説明できること。
オ.関連学会と緊密な連携の下で、適正使用基準を作成することができ、また、市販後のデータ収集及びその評価の計画を具体的に提示できること。
(2) 類型2
ア.焼灼その他の物的な機能により人体の構造又は機能に影響を与えることを目的とする医療機器又は体外診断用医薬品であって、医療上特にその必要性が高いと認められるものであること。
イ.既存の臨床データでは直接的に評価されていない適用範囲に関する有効性及び安全性について、一定の外挿性をもって評価を行うための適切な臨床データを提示できること。
ウ.新たな臨床試験又は臨床性能試験を実施しなくとも、その適正な使用を確保できることを合理的に説明できること。
エ.関連学会と緊密な連携の下で、適正使用基準を作成することができ、また、市販後のデータ収集及びその評価の計画を具体的に提示できること。
2.3.4.変更計画確認手続制度(IDATEN)
医療機器の特性に応じ将来改良が見込まれている医療機器について、その改良計画自体を承認する制度である。医薬品医療機器等法第23条の2の5第1項の承認を受けた医療機器のうち、法第23条の2の10の2(法第23条の2の19において準用する場合を含む。)の規定に基づき、当該医療機器の変更計画を立て、それを実施しようとする者又は選任製造販売業者に実施させようとする者から申請があった場合には、医療機器の使用目的又は効果、形状、構造、原理、原材料、性能及び安全性に関する規格、使用方法、保管方法、有効期間、製造方法等に関する変更計画について、所要の確認を行う9こととされている。
変更計画の確認を希望する場合には、PMDAの医療機器開発前相談を申し込み、提出予定の変更計画について事前に助言を受ける必要があるとされている。
2.3.5.リバランス通知
※リバランス通知「3.診断の参考情報となり得る生理学的パラメータを測定する診断機器に関する相談」に基づく承認のみ抽出
生理学的パラメータ又はそれを演算処理して得られた数値等の中には、診断の参考情報になり得ると考えられるものの、臨床症状や病態との関連付けが広く認知されるには至っておらず、現時点では広く医療現場において用いられると想定されていないもので、その臨床的意義や医学的判断基準が十分確立しているとは言い難いものがある。
そのような生理学的パラメータ等を測定・提示する装置を医療機器として開発する場合は、最終的に目標とする臨床的意義がまだ確立されていなくても、これまでの臨床実績や機械的な性能(測定性能)に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定して承認申請を行うことが考えられる。
加えて、承認後には臨床現場で使用された経験を踏まえながら、臨床的エビデンスが確立されたのちに、必要に応じて承認事項一部変更承認申請を行っていくような開発の戦略が想定される(図4)。
図4.リバランス通知に基づく開発戦略のイメージ
リバランス通知では、対象医療機器は、生体の生理的な機能を測定する機器(検体検査に係るものを除く。)で、以下に要件に該当するものを、診断支援を行う医療機器として開発する場合とされている。
(1) 生体信号として示される生理学的指標の非侵襲的な測定を行う能動的なモニタリング医療機器(いわゆる生体物理現象検査用機器、生体電気現象検査用機器、生体現象監視用機器等)で、測定原理の明らかな既存センサ等から得られる情報に対し演算処理して得られる新たな指標を提供するもの。
(2) 最終的に目標とする臨床的意義がまだ確立されていないものの、別途、診断の参考情報として、いくつかの判断基準の一つを提供する医療機器と位置づけられるもの。
(3) 誤った検査結果が得られた場合に、ヒトの生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものではないもの。
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8 令和4年度に、厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課は、プログラム医療機器調査会の審議結果を受けて3製品の指定を行った。なお、令和5年度以降の運用等については、本プログラム医療機器に係る優先的な審査等の試行的実施の状況を踏まえ、別途示される予定である。
9 PMDAが公開している令和3年度の業務実績の自己評価によると、令和3年度中にプログラム医療機器に関する医療機器変更計画確認申請を2件受け付け、年度内に1件の調査を終了している。
https://www.pmda.go.jp/files/000248353.pdf
2.4.更なる上市の加速に向けた新たな薬事承認制度の考え方
プログラム医療機器は、従前の有体物たる医療機器と比較し、一般的に侵襲性が低く、安全性に関して大きな問題が生じる可能性が低いことに加えて、臨床現場での使用に伴い認識される問題点等に対する改良や改善が、頻繁かつ多様な手法により行われることで、性能の持続的な向上が行い易いことから、プログラム医療機器としての開発開始後、できるだけ早期に市場導入されることが期待されている。また、プログラム医療機器の実用化推進は、医師の働き方改革を含めた医療・福祉サービス改革への貢献が期待されることも相まって、従来の有体物としての医療機器に比べ、当該分野はベンチャーや製薬、IT等の異業種分野からの新規参入、アカデミア側による主導的開発も多く、さらに従来の医療機関内に止まることなく一般生活環境下において使用するプログラム医療機器も多く開発されることが想定されることから、更なる上市の加速化に向けプログラム医療機器の特性に合わせた薬事承認制度の考え方を明確化させることが期待されてきた。
令和4年12月22日付け「規制改革推進に関する中間答申(規制改革推進会議)」では、「SaMDの臨床現場における使用を早期に可能とする必要があることを踏まえ、SaMDに関する二段階承認制度を導入する方向(SaMD版リバランス通知を新たに発出することにより対応する場合を含む。)で検討する。その検討に当たっては、第一段階の承認については、非臨床試験で評価できる場合や探索的臨床試験が必要である場合の整理、標榜可能な臨床的意義の範囲など、プログラム医療機器の使用目的や機能等の違いに応じた検討を行う。なお、第二段階の承認に当たっては、治験による場合の他、リアルワールドデータなどを活用して有効性の確認を行いうることとする。」とされ、プログラム医療機器を開発開始後早期に臨床現場に導入できる考え方の明確化が求められている。
一般的に、医療機器の承認審査においては、非臨床試験、臨床試験等において得られたデータの考察やリスク対策を講じた上で、医療機器としての有効性・安全性を評価し、リスクとベネフィットのバランスが許容されることを確認することになる。一方、臨床試験により有効性及び安全性を確認するためには長期間を要する場合があることに加えて、プログラム医療機器については安全性に関して大きな問題が生じる可能性が低いといわれていることもあり、治験等による限られた被験者や医療施設を対象とした評価のみでは市販後の多様な臨床環境で実際の多くの患者に使用した際の不具合や有害事象等を完全に明らかにすることも難しい。
そのため、安全性が確保されていることを前提として、承認申請時に提出されたデータから一定の有効性が蓋然性をもって確認できた範囲に限定する薬事承認をもって、早期の上市を進め、臨床現場における使用等を通じて有効性及び安全性の評価しつつ、開発を続けることにより、臨床的意義を確立していく開発戦略の可能性が考えられる。
その際、最も重要なのはリスクマネジメントであり、開発当初から臨床現場で想定される使用方法(開発側が意図する使用方法、意図する目的)を踏まえたハザードを特定し、リスク推定及びリスク評価を行うとともに、リスクコントロールの効果及びリスクコントロール手段を講じた後の残留リスクに関する評価や受容可能性等を監視する方法を上市前に計画することが必要である。なお、リスク評価とは「社会の現在の価値観に基づく状況で、リスクが受容可能なレベルにあるかをリスク分析に基づいて判断する」ことであり、プログラム医療機器としての安全性に関する一般的な理解を前提とするため、そのプログラム医療機器の使用される状況、対象疾患、使用者等によって、市販後のリスク管理の手法や考え方が異なることに留意した上で、製造販売承認に係る法的要求事項を満たし、ベネフィットがリスクを上回ると判断される場合には、プログラム医療機器の早期の実用化を促進することを検討すべきである。
従って、プログラム医療機器に関して、適切かつ十分なリスクマネジメント等により製造販売承認の法的要求事項を満たすのであれば、評価データから一定の有効性が蓋然性をもって確認できる範囲で第一段階承認を行い、臨床現場で使用しながら本品の有効性及び安全性に関する評価データを製造販売後臨床試験成績やリアルワールドデータ等として収集し、臨床的意義のある有効性を示すための臨床評価データが得られた時点で、承認事項一部変更承認申請により使用目的又は効果を変更10する第二段階承認が可能になると考えられる11。
ただし、第二段階承認を取得するために必要な臨床評価の計画については、あらかじめ第一段階承認申請前からPMDAの開発前相談等を活用した審査側との意見交換を進めることが必要である。特に、新たな保険点数等を見据えた開発計画を検討している場合には、第一段階承認申請と並行して、第二段階承認の取得に向けた、臨床的意義を確認するための臨床評価計画の妥当性について、開発者とPMDAが合意しておくことが推奨される。その過程の中で、PMDAの一元的相談窓口で申し込むことが可能なPMDAが担当する薬事開発相談と厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課医療機器政策室が担当する医療保険相談を同時に実施し、製造販売業者を含む三者で意見交換することも有益と考えられる。
また、薬事承認における臨床評価データは信頼性基準に適合する必要があるが、第二段階承認を取得するために必要な臨床評価では、製造販売後臨床試験成績以外にもレジストリを含めたリアルワールドデータを活用12することも想定される。
なお、第一段階承認時に標榜できる臨床的意義の範囲、即ち、添付文書における使用上の注意等に記載する注意喚起のあり方については、リバランス通知「3.診断の参考情報となり得る生理学的パラメータを測定する診断機器に関する相談」に基づく、最終的に目標とする臨床的意義が確立されていなくても、これまでの臨床実績や機能又は性能に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定した承認事例が参考13となる。一方、プログラム医療機器の二段階承認の考え方は、リバランス通知の考え方を参考にしつつも、プログラム医療機器は安全性の問題が発生しにくいとされていることや継続的な性能等に関する改良、改善が想定される等の特性を踏まえて情報提供のあり方14を検討することが必要である。
以上から、プログラム医療機器のトータルプロダクトライフサイクルを適切に管理し、医療機器のリスクとベネフィットのバランスを保ちつつ、開発を促進するため以下のような方策が考えられる。
2.4.1.疾病診断用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
診断又は予後予測の参考情報となり得ると考えられるものの、臨床症状や病態と生理学的状態の関連付けが広く認知されるには至っておらず、その臨床的意義や医学的判断基準が確立していない生理学的パラメータ、リスクスコア、又は特徴量を各種検査結果等から算出するプログラム医療機器、CT等の医用画像データから関心領域等を示すプログラム医療機器、生体信号に関わる生理学的指標に係る能動なモニタリング医療機器等の解析機能により患者増悪リスクを予測するプログラム医療機器等の開発が想定される。
このようなプログラム医療機器は広く使用されることで臨床的意義が明らかになるものもあることから、PMDAと相談の上で、最終的に目標とする臨床的意義が確立されていない段階でも、算出される生理学的パラメータ等に関する臨床的意義を臨床実績の取りまとめる等により説明した上で、非臨床試験や機械的な性能(測定性能や検出性能、演算性能)に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定した第一段階承認を取得し、臨床現場で使用された経験を踏まえながら市販後に臨床的エビデンス(製造販売後臨床試験やリアルワールドデータ等)が確立された後に、必要に応じて承認事項一部変更承認申請を行って第二段階承認を取得する開発戦略も考えられる(図4)。
具体的に、以下の3つの条件に合致するプログラム医療機器については、二段階承認の考え方に基づく開発戦略を検討する場合には、あらかじめPMDAの開発前相談を活用した審査側との意見交換を進めることが有用と考えられる。
① 生体信号に関わる生理学的指標に係る能動的な医療機器(生体物理現象検査用装置、生体電気現象検査用装置、生体現象監視用装置、画像診断装置等)等、非侵襲的な測定や撮影等を行う医療機器やスマートフォン等の携帯情報端末を含む汎用コンピュータ等のWebカメラ等の内部又は外部センサ(以下「汎用センサ等」という。)、各種検査情報等から生理学的パラメータ等を算出するプログラム医療機器
② 診断の参考情報として、いくつかの判断基準の一つを提供するプログラム医療機器と位置づけられるもの
③ 当該情報を参照したとしても、本来の診断結果等に影響する安全性上の懸念が想定されない場合
一方、例えば以下のような場合には、臨床的により精緻な情報が期待されることから、必ずしも二段階承認の考え方の取扱いが適当ではないので留意する必要がある。
・ 検査・診断結果が治療における医学的判断に直接的に大きく影響する分野(例えば、がんの治療方針や救急医療における初期対応方針等)
・ 遺伝子関連検査のように日々新しい情報が提供されて進化の途上にある分野
・ 肺結節やポリープ等、プログラム医療機器が提示する情報が臨床的意義や医学的判断基準が確立されている分野(既に類似の承認品目がある等)
・ 申請品目と同様の医療機器又はプログラム医療機器が、第二段階承認を取得し、臨床現場で使用されている場合
なお、診断用プログラム医療機器については、0929通知等を活用し、治験によらず、臨床的有用性や性能に関する評価を実施することで承認を取得している事例が既に数多くあるなど、二段階承認の考え方を適用せずとも早期に市場導入が可能となるケースもあることから、PMDAと開発段階から意見交換を進めることが有用と考えられる。
2.4.2.疾病治療用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
疾病の治療を補助又は支援するための情報を提示する性能又は機能を有するものの、治療としての臨床的エビデンスが確立していないプログラム医療機器は、当該プログラム医療機器による治療法としての臨床的意義について根拠に基づいた説明が求められる。
一方、遺伝や生活習慣など様々な要因が複合する多因子疾患に関連する疾病治療用プログラム医療機器、効果判定に患者自身の主観的な指標を主要評価項目とする精神疾患領域、疼痛、機能性症候群に関連する疾病治療用プログラム医療機器等では、国内治験への被験者リクルートに係る課題や評価期間に長期の評価期間を要する等の問題から治験の実施可能性が低い場合がある。このようなプログラム医療機器の中には、疾患に対する治療法としての臨床的エビデンスや臨床的意義は十分ではないが、当該疾患の特定の症状緩和又は状態改善等が示されるもの、医師の行う治療を補助・支援して一定の品質水準を保証した形で提供できるものもあり、患者や医療現場にとって有用であると期待されるものもある。
こういったプログラム医療機器については、PMDAと相談の上で、最終的に目標とする臨床的意義が確立されていなくても、性能評価に関する試験成績に加えて、特定の症状緩和又は状態改善等が探索的治験成績等に基づき、一定の有効性が蓋然性をもって確認できる範囲に限定した使用目的又は効果で第一段階承認を取得し、臨床現場で使用された経験を踏まえながら市販後に臨床的エビデンス(製造販売後臨床試験やリアルワールドデータ等)が確立された後に、必要に応じて承認事項一部変更承認申請を行って二段階承認を取得する開発戦略も考えられる(図5)。
図5.疾病治療用プログラム医療機器の二段階承認の考え方に基づく開発戦略のイメージ
具体的には、以下の2つの条件に合致するプログラム医療機器については、二段階承認の考え方に基づく開発戦略を検討する場合には、あらかじめPMDAの開発前相談を活用した審査側との意見交換を進めることが有用と考えられる。
① 最終的に目標とする疾病の治療法としての臨床的意義がまだ確立されていないものの、非臨床試験及び探索的治験成績等により特定の症状緩和又は特定の状態の改善が示されているなど、一定の有効性が蓋然性をもって確認できるもの
② プログラム医療機器が提示する情報に基づいて、医師による治療等を補助又は支援した場合でも、既存治療等に影響する安全性上の懸念が想定されないもの
また、申請品目と同様の医療機器又はプログラム医療機器が、第二段階承認を取得し、臨床現場で使用されている場合にあっては、臨床的により精緻な情報が期待されることから、必ずしも上記の二段階承認の考え方の取扱いが適当ではないので留意する必要がある。
一方、現時点においては疾病治療用プログラム医療機器の承認実績が少ないことから、二段階承認の考え方が当てはまらない疾患領域やプログラム医療機器であっても、今後の臨床現場における治療方針や治療方法の導入状況に応じて求められるプログラム医療機器の特性や機能も変化してくることが想定されることから、二段階承認の考え方については柔軟性に対応することも考慮されるべきである。
2.4.3.疾病予防用プログラム医療機器に関する二段階承認の考え方
施行令 別表第1の類別に「三 疾病予防用プログラム(副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものを除く。次項第三号において同じ。)」と定義されているものの、現時点で一般的名称も、当該類別名称での承認等の実績もなく、二段階承認の考え方を整理するための十分な実績がないため、今後の開発及び承認実績等に応じて整理されることが期待される。
なお、予防医学においては、予防という概念を一次予防、二次予防、三次予防に分類しており、一般的に一次予防は健康増進(健康教育含む)、予防接種による発症予防等の発病前の段階での処置や指導等の取り組みを指し、二次予防は早期発見・早期治療による重症化予防等の取り組みを指し、三次予防は機能維持・機能回復等のためのリハビリテーションを行うことにより社会復帰を促したり、治療過程における保健指導により再発を防止する等の取り組みとされる。
そのため、二次予防や三次予防に貢献するプログラム医療機器の多くは、診断用プログラム医療機器や治療用プログラム医療機器にて評価の考え方を用いることができ、実際の申請において診断用プログラム医療機器や治療用プログラム医療機器の一般的名称も踏まえた対応がなされるものと考えられる。
一方、健康増進等の一次予防に貢献するプログラム医療機器については、該当性ガイドラインにおいて、医療機器の定義を満たさないため、医薬品医療機器等法の規制対象とはならないもの15として示されている「(3)使用者(患者や健康な人)が自らの医療・健康情報を閲覧等することを目的とするプログラム;①個人の健康記録を保存、管理、表示するプログラム、②スポーツのトレーニング管理等の医療・健康以外を目的とするプログラム」や「(4)生命及び健康に影響を与えるリスクが低いと考えられるプログラム;①有体物の一般医療機器(クラスⅠ)と同等の処理を行うプログラム」に該当することも考えられる。また、公益財団法人日本WHO協会では健康の定義を『1947年に採択されたWHO憲章では、前文において「健康」を次のように定義しています。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」この健康の定義は、いまも世界中でひろく使われています。』と紹介しており、このような健康の定義を前提とすると、プログラム医療機器が最終的に目標とする臨床的意義をどのように設定することが妥当であるのかについて、現時点においては関係者間で統一した見解を持つことが極めて困難になるのではないかと考えられる。
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10 プログラム医療機器の変更については、合わせて「2.2.3.プログラム医療機器の変更」も参照のこと。
11 医療機器の定義については、医薬品医療機器等法第2条第2項において、「二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)」とされており、第一段階の承認審査において、全く臨床的意義が見いだせない状況においては、医薬品医療機器等法における医療機器の定義を踏まえれば、二段階承認の考え方の対象外となる。即ち、クラスⅠ相当のプログラムは薬事規制対象から除かれていることから、第一段階承認時点においても、クラスⅡ以上のプログラム医療機器として承認可能である場合のみ、二段階承認の考え方の対象となり得る。
12 リアルワールドデータを利活用するにあたっては、「「承認申請等におけるレジストリの活用に関する基本的考え方」について」(令和3年3月23日付け薬生薬審発0323第1号・薬生機審発0323第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長・同医療機器審査管理課長通知)及び「「レジストリデータを承認申請等に利用する場合の信頼性担保のための留意点」について」(令和3年3月23日付け薬生薬審発0323第2号・薬生機審発0323第2号 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長・同医療機器審査管理課長通知)に基づく対応が必要となる。
13 これまでの臨床実績や機械的な性能に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定した承認事例においては、これまでの臨床実績や機械的な性能に関する試験成績等により示すことのできる使用目的又は効果の範囲に限定して承認されていることが分かるように(所謂、標榜上の制限)、例えば、添付文書の使用目的又は効果に関連する使用上の注意に「本品が提示する情報/指標に基づく疼痛管理の有用性(臨床的アウトカム等)は評価されていない。」、「本装置が提示する●●●●トモグラフ機能の情報と肺機能との関係は確立していない。」、「●●●●機能が提示する情報と心不全増悪兆候との関係は確立していない。」、その他の注意に「本品が出力するバイオマーカ値(●●●●バイオマーカー)の臨床的意義は評価されていないことに留意すること」を明記することで適切な注意喚起を促してきた。
14 例えば、プログラム医療機器の性能、機能に対し、「●●●●の結果から、●●●●機能を提供しています」など、開発の状況を含めた情報提供ができないか、など。一方、今後、多くの第一段階承認のプログラム医療機器が市場導入されることを期待すると、プログラム医療機器の使用者が混乱なく、必要なプログラム医療機器を自ら選択できるように二段階承認の考え方に基づいて第一段階承認された医療機器の一覧を公表することもなどの方策も合わせて検討することも必要かもしれない。
15 詳細は、該当性ガイドラインを参照のこと。なお、当該通知以外にも医療機器プログラムへの該当性判断に係る明確化・精緻化のために、随時更新される「プログラム医療機器事例データベース」が厚生労働省のウエブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179749_00004.html)にて公表されている。
3.おわりに
近年、AIなどの情報処理技術が向上したことでプログラム医療機器が提供する情報の価値が向上したり、デジタルドクターとも表現される行動変容のためのプログラム医療機器の開発や疾患兆候表示やトリアージ用のプログラム医療機器が開発、医療機関外で使用出来るウェアラブル型のものが登場するなど、プログラム医療機器の幅が広がってきたことやわが国の今後の医療資源の課題もあり、より早期の実用化、上市が期待されてきた。
そのような中、本ガイダンスは、プログラム医療機器の更なる早期の上市を意図し、現時点にて最大限取り得る方策を産学官の関係者と協議してとりまとめたものである。言い換えると、これまでの開発経験と承認審査経験の両面をプログラム医療機器の早期上市に向けて、誰もがその経験知を共有・利活用できるようガイダンスとして実装したものである。
一方、プログラム医療機器の数は年々増加しているものの、新医療機器として扱われるほどのプログラム医療機器は未だ少なく、改良医療機器や後発医療機器の審査の枠組みにおいて承認されてきた。また、従来の既存の承認制度の中でも十分承認されてきた実績もある。この二つの事実はプログラム医療機器であったとしても、開発品目の位置づけにより承認審査が柔軟に行われていることを端的に表しているものであり、今回のガイダンスではこの事実を十分踏まえ作成した。即ち、本ガイダンス作成は、プログラム医療機器の二段階承認の考え方を明確にする観点で議論を進めてきたが、この議論により、既存の承認制度を効果的に利活用できるプログラム医療機器の範囲も明らかにすることができた。ただし、二段階承認の考え方による開発戦略は、製品の上市自体は早められる可能性が高いが、販売時の標ぼうや保険戦略に対しても一定の制限が係ることが想定される。従って、全てのプログラム医療機器が二段階承認の考え方を経て上市される必要はなく、各開発者は当該整理や従来の制度のメリット・デメリットを理解しながら上市戦略を検討することが望まれる。
他方、検討班の議論では、承認申請にレジストリを含めたリアルワールドデータの利活用に対する期待もあったが、検討時間が短期間であったことから、既存通知の紹介に留めたため、実際の利活用に際しては、リアルワールドデータの信頼性に係る要件を検討する必要がある。さらに、申請者が二段階承認の考え方を活用できるよう、二段階承認に係る臨床評価報告書の様式や手引き等を策定することなども、令和5年度以降も検討する必要がある。また、特定臨床研究で取得されたデータを薬事承認申請に利活用することも課題16が挙げられており、令和4年度厚生労働科学特別研究事業「特定臨床研究で得られた情報の薬事申請における活用のための研究」の成果も参照しつつ、今後も整理する必要がある。
なお、プログラム医療機器の多様性を踏まえると総論的アプローチの限界もあり、今後の展開としては、個別の次世代評価指標や医療機器プログラムの審査ポイントの増加も期待される。当面は個別の審査ポイントが増加していくことを期待するものであるが、個別の審査ポイントなどの情報が蓄積されてきた際などには、今後も一定期間毎に本ガイダンスの見直しが行われ、プログラム医療機器が持続的に創出できる環境整備が更に進むことを強く期待する。
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16 医薬品については先行して「特定臨床研究で得られた試験成績を医薬品の承認申請に利用する場合の留意点・考え方の例示について」(令和4年3月31日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課事務連絡)において一定の整理がなされている。
主な関連通知等
・ 「医療機器プログラムの取扱いについて」(平成26年11月21日付け薬食機参発1121第33号、薬食安発1121第1号、薬食監麻発1121第29号 厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)、厚生労働省医薬食品局安全対策課長、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)
・ 「医療機器プログラムの取扱いに関するQ&Aについて」(平成26年11月25日付け厚生労働省医薬食品局医療機器・再生医療等製品担当参事官室、厚生労働省医薬食品局安全対策課、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)
・ 「医療機器プログラムの取扱いに関するQ&Aについて(その2)」(平成27年9月30日付け厚生労働省医薬食品局医療機器・再生医療等製品担当参事官室、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)
・ 「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインの一部改正について」(令和5年3月31日付け薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第4号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・同監視指導・麻薬対策課長通知)
・ 「プログラムの医療機器該当性判断事例について」(令和5年3月31日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課 事務連絡)
・ 「医療機器プログラムの製造販売承認(認証)申請書及び添付資料の記載事例について」(平成27年2月10日付け厚生労働省医薬食品局医療機器・再生医療等製品担当参事官室 事務連絡)
・ 「医療機器プログラムの承認申請に関するガイダンスの公表について」(平成28年3月31日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器・再生医療等製品担当参事官室 事務連絡)
・ 「医療機器プログラムの一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」(平成29年10月20日付け薬生機審発1020第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
・ 「医療機器の変更計画の確認申請の取扱いについて」(令和2年8月31日付け薬生機審発0831第14号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
・ 「追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた診断用医療機器の性能評価試験の取扱いについて」(令和3年9月29日付け薬生機審発0929第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
・ 「追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた診断用医療機器の性能評価試験の取扱いに関する質疑応答集(Q&A)について」(令和4年12月8日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課事務連絡)
・ 「次世代医療機器評価指標の公表について 別紙3「血流シミュレーションソフトウェア」」(令和元年5月23日付け薬生機審発0523第2号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
・ 「次世代医療機器評価指標の公表について 別添4「人工知能技術を利用した医用画像診断支援システムに関する評価指標」」(令和元年5月23日付け薬生機審発0523第2号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
・ 「次世代医療機器評価指標の公表について 別添2「行動変容を伴う医療機器プログラムに関する評価指標」」(令和4年6月9日付け薬生機審発0609第1号 厚生労働省医薬・活衛生局医療機器審査管理課長通知)
・ 「医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について」(平成29年11月17日付け薬生機審発1117第1号・薬生安発1117第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・同医薬安全対策課長通知)
・ 「医療機器の迅速かつ的確な承認及び開発のための治験ガイダンスの公表について」(平成29年11月17日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 事務連絡)
・ 「「承認申請等におけるレジストリの活用に関する基本的考え方」について」(令和3年3月23日付け薬生薬審発0323第1号・薬生機審発0323第1号 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長・同医療機器審査管理課長通知)
・ 「「レジストリデータを承認申請等に利用する場合の信頼性担保のための留意点」について」(令和3年3月23日付け薬生薬審発0323第2号・薬生機審発0323第2号 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長・同医療機器審査管理課長通知)
・ 「人工知能(AI)を用いた診断、治療等の支援を行うプログラムの利用と医師法第17条の規定との関係について」(平成30年12月19日付け医政医発1219第1号 厚生労働省医政局医事課長通知)
・ 「医療機器Good Review Practiceの改訂について」(平成28年6月3日付け独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療機器審査第一部・医療機器審査第二部・医療機器審査第三部 事務連絡)
・ 「AIを活用した医療診断システム・医療機器等に関する課題と提言2017」(2017年12月27日 科学委員会AI専門部会)
・ 「医療機器プログラム(SaMD)の審査ポイント」(https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/devices/0047.html)
附属資料:本ガイダンスに関連する事例集
※ 本事例集は、本ガイダンス検討中の議論を踏まえ、2章の「プログラム医療機器の適切かつ迅速な承認及び開発に関する一体的考え方」を補助するために作成したものである。これらは考え方の例として示したものであることから必ずしもこれに限るものではなく、ここに記載されていないケースでも、今後の技術進展、非臨床試験方法の発展、また臨床データの蓄積などにより、異なる取扱になることもあり得る。また、一段階承認時に提示された一定の有効性等が、将来的な医療現場における治療方針の変容などにより、二段階承認の対象とされる場合も想定される。さらに、開発中の製品の新規性の程度などから事例集とは異なる取扱いとなる場合もあることから、本ガイダンスに記した「2.2.承認審査の観点を踏まえた開発戦略を考えるための一般的考え方」なども参照しながら、二段階承認の考え方を踏まえた上で、必要に応じてPMDAに相談することが有益である。
【事例1】解析機能付きセントラルモニタ用プログラム等(疾病診断用プログラム医療機器)
ネットワークを介して接続されたセントラルモニタや医療情報システムから取得した臨床データを収集、解析し、リスクを判断・予測するプログラムであって、医療従事者の判断の参考情報となり得るパラメータやスコアを提示するだけの機能を標榜する場合には、第一段階承認の検討が可能である。なお、リスクが提示されたとしても疾病の増悪を回避できるかについては、提示されたリスクに応じた処置が確立されているかによって異なることとなる。 パラメータやスコア等から疾患の増悪等を予測し、臨床的アウトカムと関連づけた情報を提示する機能を標榜する場合には、患者予後等との関連を臨床試験の中で評価することが必要となるため、第一段階承認後に関連するデータ収集等を行い、それらの製造販売後臨床試験成績等をもって、第二段階承認の検討が可能である。 |
【事例2】患者容態増悪評価プログラム等(疾病診断用プログラム医療機器)
生体モニタ等の医療機器、電子カルテや医療従事者により入力されたデータを基に、患者の容態増悪リスクを表示するプログラムであって、医療従事者の判断の参考情報となり得るパラメータやスコアを提示するだけの機能を標榜する場合には、第一段階承認の検討が可能である。なお、リスクが提示されたとしても疾病の増悪を回避できるかについては、提示されたリスクに応じた処置が確立されているかによって異なることとなる。 患者の容態増悪リスク等から疾患の増悪等を予測し、臨床的アウトカムと関連づけた情報を提示する機能を標榜する場合には、患者予後等との関連を臨床試験の中で評価することが必要となるため、第一段階承認後に関連するデータ収集等を行い、それらの製造販売後臨床試験成績等をもって、第二段階承認の検討が可能である。 |
【事例3】骨粗しょう症評価プログラム等(疾病診断用プログラム医療機器)
これまで骨粗しょう症の診断等に用いていないX線写真等の画像から、患者の骨粗しょう症のリスクを表示するプログラムについては、二段階承認の考え方によらず、0929通知を踏まえた既存の診療情報等を用いた試験等により、既存品の診断精度に対して開発品を用いた診断精度が劣らないことを示すことで通常の承認の検討が可能である。 |
【事例4】糖尿病治療補助プログラム等(疾病治療用プログラム医療機器)
患者が入力情報を基に、独自のアルゴリズムに基づいて表示される内容に対応することで患者の行動変容を促し、例えば糖尿病であれば血糖値を改善することを目的とするプログラム。糖尿病由来の病的な症状等の緩和・改善を評価するための探索的治験成績を実施して、糖尿病由来の病的な症状等の緩和・改善が示された場合は、症状等の緩和・改善するプログラム医療機器として、第一段階承認の検討が可能である。 特定の症状等の緩和・改善のみではなく、糖尿病の改善や長期的な有効性を標榜する場合には、糖尿病としての治療成功を示す目的の臨床試験成績にて評価することが必要となるため、第一段階承認後に関連するデータ収集等を行い、それらの製造販売後臨床試験成績をもって、第二段階承認の検討が可能である。 |
【事例5】精神疾患治療補助用プログラム等(疾病治療用プログラム医療機器)
患者が入力情報を基に、独自のアルゴリズムに基づいて表示される内容に対応することで、患者の行動変容等を促し、例えば、精神疾患の治療において寛解状態を維持することを目的とするプログラムについては、探索的治験成績から患者に確認されている一部の症状のみの消失等が示された場合は、症状等を緩和・改善するプログラム医療機器として、第一段階承認の検討が可能である。 特定の症状等の緩和・改善のみではなく、寛解状態の維持を標榜する場合には、精神疾患としての治療成功を示す目的の臨床試験成績にて評価することが必要となるため、第一段階承認後に関連するデータ収集等を行い、それらの製造販売臨床試験成績をもって、第二段階承認の検討が可能である。 |
ガイダンスの検討メンバー
●SaMDの承認審査運用改善検討班(五十音順) ※本事業の代表者
大阪歯科大学 医療イノベーション研究推進機構
事業化研究推進センター 開発支援部門 教授 谷城博幸
国際医療福祉大学 医学部 循環器内科学 教授 田村雄一
公益財団法人医療機器センター専務理事 中野壮陛 ※
京都大学大学院医学研究科 健康要因学講座 健康増進・行動学分野 教授 古川壽亮
国立国際医療研究センター国府台病院 放射線診療科長 待鳥詔洋
昭和大学 横浜市北部病院消化器センター 講師 三澤将史
(オブザーバー)
一般社団法人日本医療機器産業連合会 田中志穂
一般社団法人日本医療機器産業連合会 越後雅博
一般社団法人日本医療機器産業連合会 深谷李映
一般社団法人日本医療ベンチャー協会 桐山瑶子
一般社団法人日本医療ベンチャー協会 佐竹晃太
一般社団法人日本医療ベンチャー協会 落合孝文
AI医療機器協議会 多田智裕
AI医療機器協議会 島原佑基
AI医療機器協議会 中山和男
日本デジタルヘルス・アライアンス 南雲俊一郎
日本デジタルヘルス・アライアンス 小島真一
日本デジタルヘルス・アライアンス 高橋喜元
厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課
課長 中山智紀
プログラム医療機器審査管理室長 飯島稔
プログラム医療機器審査管理室 班長 村上まどか
プログラム医療機器審査管理室 主査 西川玄希
プログラム医療機器審査管理室 坂部彩
独立行政法人医薬品医療機器総合機構
プログラム医療機器審査室長 岡画像6 (18KB)
譲
プログラム医療機器審査室 審査役補佐 小池和央
プログラム医療機器審査室 審査専門員 加藤健太郎
スペシャリスト 望月修一
(事務局)
公益財団法人医療機器センター附属医療機器産業研究所 上級研究員 日吉和彦
公益財団法人医療機器センター附属医療機器産業研究所 上級研究員 画像7 (18KB)
山修一
公益財団法人医療機器センター附属医療機器産業研究所 上級研究員 昌子久仁子
公益財団法人医療機器センター附属医療機器産業研究所 主任研究員 本田大輔
公益財団法人医療機器センター附属医療機器産業研究所 主任研究員 松橋祐輝