添付一覧
○「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」の一部改正について
(令和5年5月26日)
(医政地発0526第5号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)
(公印省略)
医療計画(医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第1項に規定する医療計画をいう。以下同じ。)に5疾病・5事業及び在宅医療に係る医療連携体制に関する事項等を定めるに当たって参考とすべき指針については、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(令和5年3月31日付け医政地発0331第14号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知。以下「課長通知」という。)によりお示ししているところであるが、今般、追ってお示しすることとしていた「そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療」の確保に必要な事業に関する事項に関し、社会保障審議会医療部会及び感染症部会等での議論を踏まえ、課長通知の一部を別紙新旧対照表のとおり改正し、本日から適用することとしたため通知する。
貴職におかれては、これを御了知の上、医療計画作成のための参考にしていただきたい。
[様式ダウンロード]
別添1
○疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について
(令和5年3月31日)
(医政地発0331第14号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)
最終改正 令和5年5月26日医政地発0526第5号
(公印省略)
医療法(昭和23年法律第205号。以下「法」という。)第30条の4の規定に基づき、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病及び精神疾患の5疾病並びに救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地の医療、周産期医療及び小児医療(小児救急医療を含む。以下同じ。)の6事業(以下あわせて「5疾病・6事業」という。)並びに居宅等における医療(以下「在宅医療」という。)について医療計画に記載することとされています。
各都道府県が医療提供体制を確保するに当たり、特に5疾病・6事業及び在宅医療については、①疾病又は事業ごとに必要となる医療機能を明確化した上で、②地域の医療機関がどのような役割を担うかを明らかにし、さらに③医療連携体制を推進していくことが求められています。
医療機能の明確化から連携体制の推進に至るこのような過程を、以下、医療体制の構築ということとします。
5疾病・6事業及び在宅医療の医療体制を構築するに当たっては、それぞれに求められる医療機能を具体的に把握し、その特性及び地域の実情に応じた方策を講ずる必要があることから、下記のとおり、それぞれの体制構築に係る指針を国において定めましたので、新たな医療計画作成のための参考としていただきますようお願いします。
なお、本通知は法第30条の8に基づく技術的助言であることを申し添えます。
また、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(平成29年3月31日付け医政地発0331第3号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)は廃止します。
記
1 法的根拠
法第30条の4第4項の規定に基づき、都道府県は、5疾病・6事業及び在宅医療に係る医療連携体制に関する事項等を医療計画に定めることとされている。
また、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療体制を各都道府県が構築するに当たっては、法第30条の3第1項に基づき厚生労働大臣が定める医療提供体制の確保に関する基本方針(平成19年厚生労働省告示第70号。以下「基本方針」という。)第四の二及び三に示すとおり、地域の医療提供施設の医療機能を医療計画に明示することにより、患者や住民に対し、分かりやすい情報提供の推進を図る必要がある。
一方、基本方針第二の二に示すとおり、国は5疾病・6事業及び在宅医療について調査及び研究を行い、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに求められる医療機能を明らかにすることとされており、本通知は、国として当該医療機能を明らかにすること等により、都道府県の医療体制構築を支援するものである。
なお、医療機能に関する情報の提供については、法第6条の3に基づく医療機能情報提供制度が別途実施されている。
5疾病・6事業及び在宅医療の医療体制構築に当たっては、当該制度により都道府県に報告された医療機能情報を活用できること、特に、患者や住民に情報を提供するためだけではなく、地域の医療関係者が互いに情報を共有することで信頼を醸成し、円滑な連携を推進するためにも活用すべきであることに留意されたい。
2 策定に当たっての留意点
別紙「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制構築に係る指針」は、国として、①5疾病・6事業及び在宅医療の医療機能の目安を明らかにした上で、②各医療機能を担う地域の医療機関が互いに信頼を醸成し、円滑な連携を推進するために、都道府県が取るべき手順を示したものである。
都道府県においては、地域において良質かつ適切な医療を切れ目なく効率的に提供するため、本指針を参考にしつつ、医療計画の策定に当たられたい。
なお策定に当たっては、次に掲げる点に留意されたい。
① 5疾病・6事業及び在宅医療の医療体制については、各都道府県が、患者動向、医療資源など地域の実情に応じて構築するものであること。
② したがって、本指針は医療体制の構築のための目安であり、必ずしもこれに縛られるものではないこと。
③ 5疾病・6事業ごと及び在宅医療の医療体制構築に当たっては、地域の実情に応じて必要性の高いものから優先的に取り組むべきものであること。
④ 医療計画の実効性を高めるよう、5疾病・6事業及び在宅医療ごとにPDCAサイクルを効果的に機能させ、政策循環の仕組みを強化するため、それぞれの指標を活用すること。
⑤ 本指針は国における現時点での知見に基づくものであり、今後も検討、調査及び研究を続けて適宜提示するものであること。
3 本指針の位置付け及び構成
5疾病・6事業及び在宅医療の医療体制を含めた、医療計画制度の全体像については、「医療計画について」(令和5年3月31日付け医政発0331第16号厚生労働省医政局長通知)の別紙「医療計画作成指針」により別途提示しているところである。
「医療計画作成指針」と「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制構築に係る指針」との関係は別表のとおりであり、各都道府県におかれては、新たな医療計画の作成に当たり、「医療計画作成指針」を参考に計画全体の構成、作成の手順等を検討した上で、本指針により5疾病・6事業及び在宅医療に係る具体的な医療体制の構築及び計画の作成を図られたい。
(別表)
(別紙)
疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制構築に係る指針
目次
第1 趣旨
第2 内容
第3 手順
第4 連携の推進等
第5 評価等
がんの医療体制構築に係る指針
第1 がんの現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
脳卒中の医療体制構築に係る指針
第1 脳卒中の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
心筋梗塞等の心血管疾患の医療体制構築に係る指針
第1 心筋梗塞等の心血管疾患の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
糖尿病の医療体制構築に係る指針
第1 糖尿病の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
精神疾患の医療体制構築に係る指針
第1 精神疾患の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
救急医療の体制構築に係る指針
第1 救急医療の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
災害時における医療体制の構築に係る指針
第1 災害医療の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
新興感染症発生・まん延時における医療体制の構築に係る指針
第1 新興感染症発生・まん延時における医療の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
へき地の医療体制構築に係る指針
第1 へき地の医療の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
周産期医療の体制構築に係る指針
第1 周産期医療の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
小児医療の体制構築に係る指針
第1 小児医療の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
在宅医療の体制構築に係る指針
第1 在宅医療の現状
第2 医療体制の構築に必要な事項
第3 構築の具体的な手順
疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制構築に係る指針
第1 趣旨
人口の減少及び高齢化が進む中、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病及び精神疾患の5疾病(以下「5疾病」という。)については、生活の質の向上を実現するため、これらに対応した医療体制の構築が求められている。
また、地域医療の確保において重要な課題となる救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地の医療、周産期医療及び小児医療の6事業(以下「6事業」という。)についても、これらに対応した医療体制の構築により、患者や住民が安心して医療を受けられるようにすることが求められている。
さらに、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、在宅医療に係る医療体制を整備し、地域包括ケアシステムを構築することが求められている。
疾病構造の変化や地域医療の確保等の課題に対応するためには、効率的で質の高い医療体制を構築することが求められる。
具体的には、各都道府県において、5疾病・6事業及び在宅医療について、それぞれに求められる医療機能を明確にした上で、地域の医療関係者等の協力の下に、医療機関が機能を分担及び連携することにより、切れ目なく医療を提供する体制を構築することが必要である。
加えて、こうした医療体制の構築に患者や住民が参加することを通じ、患者や住民が地域の医療機能を理解し、医療の必要性に応じた質の高い医療を受けられるようになることが期待される。
以下、第2「内容」、第3「手順」、第4「連携の推進等」及び第5「評価等」において、医療体制の構築に当たって5疾病・6事業及び在宅医療に共通する事項を示すとともに、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれの指針において、それぞれに特有の事項を示すので参考とされたい。
第2 内容
5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれについて、まず「1 医療体制の政策循環」を実現するため、「2 指標」を活用し、「3 必要となる医療機能」を明らかにした上で、「4 各医療機能を担う医療機関等の名称」及び「5 課題、数値目標及び施策の方向性」を記載する。
1 医療体制の政策循環
5疾病・6事業及び在宅医療の医療体制を構築するに当たっては、住民の健康状態や患者の状態といった成果(アウトカム)などを用いた評価を行うことが重要である。具体的には、施策や事業を実施したことにより生じた結果(アウトプット)が、成果(アウトカム)に対してどれだけの影響(インパクト)をもたらしたかという関連性を念頭に置きつつ、施策や事業の評価を1年ごとに行い、見直しを含めた改善を行うこと。都道府県は、この成果(アウトカム)に向けた評価及び改善の仕組み(PDCAサイクル等)を、政策循環の中に組み込んでいくことが重要である。施策の検討に当たっては、成果(アウトカム)と施策の結果(アウトプット)の関連性を明確にし、ロジックモデル等のツールの活用を積極的に検討すること。また、当該ロジックモデル等のツールを活用した評価を行い、必要に応じてその結果を施策に反映することによりPDCAサイクル等の実効性を確保すること。
(用語の定義)
・ 成果(アウトカム)
施策や事業が対象にもたらした変化
・ 結果(アウトプット)
施策や事業を実施したことにより生じる結果
・ 影響(インパクト)
施策や事業のアウトプットによるアウトカムへの寄与の程度
・ ロジックモデル
施策が目標とする成果を達成するに至るまでの論理的な関係を体系的に図式化したもの(別添)
2 指標
医療体制の構築に当たっては、現状の把握や課題の抽出の際に、多くの指標を活用することとなるが、ロジックモデル等のツールも活用し、各指標の関連性を意識し、地域の現状をできる限り構造化しながら整理する必要がある。その際には、指標をアウトカム、プロセス、ストラクチャーに分類し、活用すること1。
(用語の定義)
・ アウトカム指標
住民の健康状態や患者の状態を測る指標
・ プロセス指標
実際にサービスを提供する主体の活動や、他機関との連携体制を測る指標
・ ストラクチャー指標
医療サービスを提供する物的資源、人的資源及び組織体制、外部環境並びに対象となる母集団を測る指標
3 必要となる医療機能
例えば、脳卒中の場合に、急性期、回復期から維持期・生活期に至るまでの病期ごとの医療機能を明らかにするなど、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれについて明らかにすること。
4 各医療機能を担う医療機関等の名称
前記3の各医療機能を担う医療機関等については、後記第3の2に示すとおり、地域の医療提供者等が参加する作業部会等において検討し、検討結果を踏まえ、原則として、それらを担う医療機関等の名称を記載すること。なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関が複数の機能を担うことも想定される。
また、医療機関等の名称については、例えば医療連携体制の中で各医療機能を担う医療機関等が圏域内に著しく多数存在する場合にあっては、別途当該医療機関等の名称を表示したホームページのURLを医療計画上に記載する等の方法をとることも差し支えない。
5 課題、数値目標及び施策の方向性
5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれの課題について、地域の実情に応じた数値目標を設定し、課題解決に向けた施策の方向性を記載すること。
数値目標の設定に当たっては、基本方針第十一に掲げる諸計画等に定められる目標を勘案すること。
第3 手順
1 情報の収集
都道府県は、医療体制を構築するに当たって、患者動向、医療資源及び医療連携等の医療体制に関する情報等を収集し、現状を把握する必要がある。
医療提供体制等に関する情報のうち、地域住民の健康状態やその改善に寄与すると考えられるサービスに関する指標(重点指標)、その他国が提供するデータや独自調査データ、データの解析等により入手可能な指標(参考指標)について、指標間相互の関連性を踏まえ、地域の医療提供体制の現状を客観的に把握すること。
なお、重点指標及び参考指標については、厚生労働科学研究「地域の実情に応じた医療提供体制の構築を推進するための政策研究」2、厚生労働科学研究「糖尿病の実態把握と環境整備のための研究」3及び厚生労働科学研究「良質な精神保健医療福祉の提供体制構築を目指したモニタリング研究」4の令和4年度研究報告書を参考とすること。
また、既存の統計・調査等のみでは現状把握ができない場合、医療施設・関係団体等に対する調査や患者・住民に対するアンケート調査、ヒアリング等、積極的に新たな調査を行うことが重要である。
(既存の統計・調査等の例)
(1) 人口動態統計
(2) 国民生活基礎調査
(3) 患者調査
(4) 国民健康・栄養調査
(5) 衛生行政報告例
(6) 介護保険事業状況報告調査
(7) 病床機能報告
(8) レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)
(9) 診断群分類(DPC)データ
(10) 医療施設調査
(11) 病院報告
(12) 医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査)
(13) 地域保健・健康増進事業報告
(14) 介護サービス施設・事業所調査
(15) 介護給付費等実態統計(旧:介護給付費等実態調査)
国においては、都道府県の課題解決に向けた評価及び改善の仕組みを効果的に機能させる取組を支援するため、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれの指標を提供することとしているが、各都道府県の取組等を踏まえ、各指標を用いた各都道府県の現状の把握、新たな指標の検討、医療計画の評価手順のあり方の検討等も随時行っていくこととしている。
都道府県においても、地域の実情に応じて、他の指標との関連性を踏まえた独自の指標を開発していくことが望ましい。独自に開発した指標が全国で参考になると考えられる場合は、厚生労働省に報告されたい。
2 作業部会及び圏域連携会議の設置
都道府県は、法第72条に規定する都道府県医療審議会又は法第30条の23第1項に規定する地域医療対策協議会の下に、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療体制を構築するため、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれについて協議する場(以下「作業部会」という。)を設置すること。また、必要に応じて圏域ごとに関係者が具体的な連携等について協議する場(以下「圏域連携会議」という。)を設置すること。
協議に際しては、数値目標の設定やそれを達成するための施策の実施により、地域格差が生じたり、患者・住民が不利益を被ったりすることのないよう配慮すること。
なお、作業部会と圏域連携会議は、緊密に連携しながら協議を進めることが重要である。
(1) 作業部会
① 構成
作業部会は、地域の実情に応じた医療体制を構築するため、例えば次に掲げる者を代表する者により構成すること。
ア 地域医師会等の医療関係団体
イ 医師、歯科医師、薬剤師、看護師など現に診療に従事する者
ウ 介護保険法(平成9年法律第123号)に規定するサービス事業者
エ 医療保険者
オ 医療・介護サービスを受ける患者・住民
カ 保健・医療・福祉サービスを担う都道府県・市町村
キ 学識経験者
ク その他、各疾病及び事業において重要な役割を担う者
② 内容
作業部会は、下記の事項について協議すること。
ア 地域の医療資源の把握と現行の医療計画の評価
「1 情報の収集」において把握した情報から、地域において各医療機能の要件を満たす医療機関を確認する。また、患者動向等も加味して、地域において不足している医療機能又は調整・整理が必要な医療機能を明確にすること。特に、5疾病については、まずは二次医療圏を基礎として医療資源を把握すること。
あわせて、現行の医療計画において設定された課題及びそれに対する施策に加え、施策の中で実施した事業について整理を行うこと。その際、課題解決につながっていない施策や事業については、見直しを含む改善を行うこと。
イ 圏域の設定
上記アに基づき、圏域を検討・設定すること。その際、5疾病・6事業及び在宅医療に特有の重要事項に基づき、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定すること。
ウ 課題の抽出
上記アにより把握した現状を分析し、求められる医療機能とその連携体制など、目指すべき方向を踏まえ、地域の医療提供体制の課題を抽出すること。その際、現状分析に用いたストラクチャー、プロセス、アウトカム指標の関連性を考慮し、病期・医療機能による分類も踏まえ、可能な限り医療圏ごとに課題を抽出すること。
以下に、課題の抽出に当たって想定される手順を示す。
(ア) まず、アウトカム指標を確認すること。例えば、アウトカム指標が全国平均と乖離している等の問題があればそれを課題とすること。
(イ) 次に、指標が示すデータから得られた課題について、データの留意点や限界を踏まえ、検討すること。さらに、当該地域を全国平均又は都道府県内平均と比較することにより、仮に対策を行った場合の影響(インパクト)を考慮した上で、課題として設定するとともに、その緊急度と重要度を検討すること。
(例:仮に全国平均値であった場合に、治療等の対応が可能であった患者数などを推計し、優先的に課題解決に向けた資源投入をするか否かを判断すること。)
エ 数値目標の設定
抽出した課題をもとに、事後に定量的な比較評価が行えるよう、地域の実情に応じた数値目標、目標達成に要する期間を定めること。
数値目標の設定に当たっては、各指標の全国データ等を参考にするとともに、基本方針第十一に掲げる諸計画等に定められた目標等も勘案すること。なお、達成可能なものだけを目標とするのではなく、真に医療圏の課題を解決するために必要な目標を設定すること。
オ 施策
課題に対応した数値目標の達成のために行う具体的な施策を盛り込んだ計画を策定すること。
施策の検討に当たっては、ロジックモデル等のツールの活用を積極的に検討し、課題について原因分析を行い、検討された施策の結果(アウトプット)が課題に対してどれだけの影響(インパクト)をもたらしうるかという観点を踏まえること。
(2) 圏域連携会議
圏域連携会議は、各医療機能を担う関係者が、相互の信頼を醸成し、円滑な連携が推進されるよう実施するものである。
その際、保健所は、地域医師会等と連携して当会議を主催し、医療機関相互又は医療機関と介護サービス事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすこと。
① 構成
各医療機能を担う全ての関係者
② 内容
以下のアからウについて、関係者全てが認識・情報を共有した上で、各医療機能を担う医療機関を決定すること。また、状況に応じて、地域連携クリティカルパス導入に関する検討を行うこと。
ア 医療連携の必要性について認識
イ 医療機関等に係る人員、施設設備及び診療機能に関する情報
ウ 当該疾病及び事業に関する最新の知識・診療技術に関する情報
3 患者・住民の意見の反映
都道府県は、患者・住民の作業部会への参加やタウンミーティングの開催、患者・住民へのヒアリングやアンケート調査、医療計画のパブリックコメントなどにより、患者・住民の意見を反映させた上で、医療計画の内容について分かりやすく公表し、周知すること。
4 医療計画への記載
都道府県は、前記第3の2に示すとおり、医療機能ごとに医療機関等に求められる事項、数値目標等について検討し、医療計画に記載すること。
また、前記第2の4に示すとおり、原則として、各医療機能を担う医療機関等の名称も記載すること。
なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関が複数の機能を担うこともあり得ること。
さらに、医療機関等の名称については、例えば圏域内に著しく多数の医療機関等が存在する場合にあっては、地域の実情に応じて記載することで差し支えないが、住民に分かりやすい周知に努めること。
5 変更が生じた場合の措置
医療計画の策定後に、医療機能を担う医療機関の変更が生じた場合は、可能な限り速やかに記載内容を変更する必要がある。
この場合、都道府県医療審議会の議をその都度経なくても済むよう、変更に伴う手続をあらかじめ定めておく必要がある。
第4 連携の推進等
計画の推進体制については、第3の2に定める作業部会等を設けるなど、関係者が互いに情報を共有することにより、信頼関係を醸成し、円滑な連携が推進されるような体制を構築することが望ましい。
第5 評価等
医療計画の実効性を上げるためには、具体的な数値目標の設定と評価を行い、その評価結果に基づき、計画の内容を見直すことが重要である。
都道府県は、あらかじめ評価を行う体制を整え、評価を行う組織や時期を医療計画に記載すること。この際、少なくとも施策及び事業の進捗状況の評価については、1年ごとに行うこととし、課題に対する数値目標の達成状況、現状把握に用いた指標の状況については、3年ごとの中間評価も踏まえつつ、少なくとも6年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要があるときは、都道府県はその医療計画を変更すること。
評価に当たっては、策定に関わった者以外の第三者による評価の仕組みを取り入れること等も有効である。さらに、施策及び事業の評価の際には、施策及び事業の結果(アウトプット)のみならず、地域住民の健康状態や患者の状態や地域の医療の質などの成果(アウトカム)にどのような影響(インパクト)を与えたかといった観点から、施策の検討時に用いたロジックモデル等のツールを再度活用することにより施策及び事業の評価を行い、必要に応じて計画の内容を改善することが重要である。
課題の評価に当たっては、次のような数値目標を設定した指標を活用することも重要である。また、最終的な成果(アウトカム)を達成するための過程を確認し、過程のどの段階に課題があるかといった観点からの評価も重要である。
(参考:評価指標の考え方1)
評価指標:最終的な成果(アウトカム)の達成に向け、施策や事業を進捗管理し、評価するために設定する指標。
良い評価指標は以下の頭文字を取り、SMARTな指標と言われている。
① 具体性、特異性(Specific)
具体的であるかどうか、施策や事業に特異的であるかどうか。
② 測定可能性(Measurable)
数値目標、達成期間、期待する達成度などが明示され、測定可能であるかどうか。
③ 達成可能性(Attainable)
達成可能であるかどうか。コスト、スケジュール、従事者の質と量、社会環境への適合性に問題はないか。関係者の反対はどうか。
④ 現実性(Realistic)
現実的かどうか。目標を達成するための手段は適切な因果関係となっているかどうか。
⑤ 期限明示(Time―bound)
実施時期、終期、期限などが明示されているか。
――――――――――
1 厚生労働科学研究「地域医療構想策定及び医療計画PDCAサイクルの推進に資する都道府県の人材育成等手法に関する研究」(研究代表者 熊川寿郎)(平成26年度)を参考に記載
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/23651
2 厚生労働科学研究「地域の実情に応じた医療提供体制の構築を推進するための政策研究」(研究代表者 今村知明)(令和4年度)
3 厚生労働科学研究「糖尿病の実態把握と環境整備のための研究」(研究代表者 山内敏正)(令和4年度)
4 厚生労働科学研究「良質な精神保健医療福祉の提供体制構築を目指したモニタリング研究」(研究代表者 西大輔)(令和4年度)
がんの医療体制構築に係る指針
がん検診等でがんの可能性が疑われた場合や症状を呈した場合、まず精密検査等が実施される。
そして、がんの確定診断等が行われた場合、更に詳細な検査により、がんの進行度の把握や治療方針の決定が行われる。
がんの治療は、がん診療連携拠点病院等(以下この指針において「拠点病院等」という。)やその他のがん診療に係る医療機関において、個々のがんの種類や進行度に応じて、手術療法、放射線療法、薬物療法や、これらを組み合わせた集学的治療等が実施される。
同時に、がんと診断された時から、身体的な苦痛及び精神心理的な苦痛等に対して、患者とその家族等への緩和ケアが必要である。
その後も再発予防のための術後補助化学療法や再発の早期発見のための定期的かつ専門的検査等、長期の管理が必要となる。
このように、がん患者に必要とされる医療は、患者の状態やがんの種類・病期等によって異なるため、それぞれの医療機関が相互に連携しながら、継続して実施されることが必要である。
また、がん対策について政府は、がん対策基本法(平成18年法律第98号)に基づき「がん対策推進基本計画」(令和5年3月閣議決定)を策定し、都道府県は、これを基本とし、各都道府県におけるがん医療の現状等を踏まえて、「都道府県がん対策推進計画」を策定し、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図っている。
本指針は、がん対策推進基本計画のうち医療計画に反映すべき事項等について、住民・患者の視点に立った計画を作成するという観点から、その考え方を示すものである。
具体的には、「第1 がんの現状」でがんの発症・転帰がどのようなものであるのか、どのような医療が行われているのかを概観し、次に「第2 医療体制の構築に必要な事項」でどのような医療体制を構築すべきかを示している。
都道府県は、これらを踏まえつつ、「第3 構築の具体的な手順」に則して、地域の現状を把握・分析するとともに、各病期に求められる医療機能を理解した上で、地域の実情に応じて圏域を設定し、その圏域ごとの医療機関とそれら医療機関相互の連携の検討を行い、最終的には都道府県全体で評価を行えるようにすること。
第1 がんの現状
がんは、浸潤性に増殖し転移する悪性腫瘍であり、基本的にほぼ全ての臓器・組織で発生しうるものである。このため、がん医療は、その種類によって異なる部分があるが、本指針においてはがん医療全体に共通する事項を記載する。
1 がんの疫学
がんは、我が国において昭和56年(1981年)より死因の第1位であり、令和3年には年間約38万人以上の国民が亡くなっている1。
1年間に新たにがんに罹患する者は約99万人以上2であり、生涯のうちにがんに罹患する可能性はおよそ2人に1人と推計されている3。
さらに、今後、人口の高齢化とともにがんの罹患者数及び死亡者数は増加していくことが予想され、依然としてがんは国民の生命と健康にとって重要な課題である。一方で、がん患者・経験者の中にも長期生存し、社会で活躍している者も多い。
がんの年齢調整死亡率は近年減少傾向であるが、がんの種類によりその傾向に違いが見られる。また、全がんの5年相対生存率は67.5%である4が、原発巣による予後の差は大きく、乳がん、肺がん、膵がんの5年相対生存率はそれぞれ92.2%(女性のみ)、47.7%(非小細胞肺がん)、12.5%となっている5。
2 がんの予防、がんの早期発見
(1) がんの予防
がんの原因には、喫煙(受動喫煙を含む。)、食生活、運動等の生活習慣、ウイルスや細菌の感染など様々なものがある。
がんの予防には、これらの生活習慣の改善やがんと関連するウイルスの感染予防等が重要であり、バランスのとれた取組が求められる。
(2) がんの早期発見
がんの早期発見のために、胃がんでは胃部エックス線検査又は胃内視鏡検査、肺がんでは胸部エックス線検査及び喀痰細胞診、乳がんでは乳房エックス線検査、大腸がんでは便潜血検査、子宮頸がんでは細胞診等のがん検診が行われている。
これらのがん検診においてがんの可能性が疑われた場合、さらにCT・MRI検査等の精密検査が実施される。
3 がんの医療
(1) 診断
がん検診によりがんの可能性が疑われた場合や症状を呈した場合、確定診断のために精密検査が実施され、がんの種類やがんの進行度の把握、治療方針の決定等が行われる。
(2) がん治療
がんの治療については、がんの種類や病態に応じて、手術療法、放射線療法、薬物療法や、これらを組み合わせた集学的治療等が行われる。
また、学会等が様々ながんに対する診療ガイドラインを作成しており、各医療機関ではこれらの診療ガイドライン等に基づいてクリティカルパス(検査と治療等を含めた診療計画表をいう。)が作成されている。
(3) 緩和ケア
がんと診断された時から、身体的な苦痛及び精神心理的な苦痛等に対して、患者とその家族等への緩和ケアを、がんの治療と並行して実施するとともに、必要に応じて在宅においても適切に提供することが必要である。
がん疼痛の緩和については、医療用麻薬等の投与や、専門的疼痛治療としての神経ブロック等が行われる。また、疼痛以外の悪心や食欲不振、呼吸困難感といった身体的諸症状に対する治療やケアも行われる。
あわせて、患者とその家族等には、しばしば不安や抑うつ等の精神心理的な問題が生じることから、心のケアを含めた精神医学的な対応が行われる。
(4) リハビリテーション、定期的なフォローアップ、在宅療養
がんの治療後は、治療の影響や病状の進行により、患者の嚥下や呼吸運動などの日常生活動作に障害を来すことがあるため、リハビリテーションが行われる。また、再発したがんの早期発見などを目的として、定期的なフォローアップ等が行われる。さらに、在宅療養を希望する患者に対しては、患者やその家族等の意向に沿った継続的な医療が提供されるとともに、居宅等での生活に必要な介護サービスが提供される。さらに、人生の最終段階には、看取りまで含めた医療や介護サービスが行われる。
(5) 小児・AYA世代(思春期世代と若年成人世代)のがん
小児及びAYA世代のがんは、多種多様ながん種を含み、特徴あるライフステージで発症することから、成人のがんとは異なる対策が求められている。小児がん患者とその家族等が適切な医療や支援を受けられるように、小児がん拠点病院及び小児がん連携病院を中心とした地域のネットワークによる診療体制が構築されている。
(6) がんゲノム医療
ゲノム医療を必要とするがん患者が、全国どこにいても、がんゲノム医療を受けられる体制を国とともに段階的に構築し、患者・家族等の理解を促し、心情面でのサポートや治療法選択の意思決定支援を可能とする体制の整備が求められている。また、がんゲノム医療の推進とともに、がんゲノム情報の取扱いやがんゲノム医療に関する国民の理解を促進するため、教育や普及啓発に努めるとともに、安心してがんゲノム医療に参加できる環境の整備が求められている。がんゲノム医療提供体制として令和5年3月1日時点で、がんゲノム医療中核拠点病院が12施設、がんゲノム医療拠点病院が33施設、がんゲノム医療連携病院が198施設整備されている。
第2 医療体制の構築に必要な事項
1 目指すべき方向
前記「第1 がんの現状」を踏まえ、個々の医療機能、それを満たす医療機関、さらにそれらの医療機関相互の連携により、保健、医療及び介護サービスが連携・継続して実施される体制を構築すること。
(1) 手術療法、放射線療法、薬物療法や、これらを組み合わせた集学的治療等が実施可能な体制
① 進行・再発といった様々ながんの病態に応じ、手術療法、放射線療法、薬物療法や、これらを組み合わせた集学的治療の実施
② 患者とその家族等の意向に応じて、専門的な知識を有する第三者の立場にある医師に意見を求めることができるセカンドオピニオンを受けられる体制
③ 医療従事者間の連携と補完を重視した多職種でのチーム医療を受けられる体制
(2) がんと診断された時から緩和ケアを実施する体制
① がんと診断された時から患者とその家族等に対する全人的な緩和ケアの実施
② 外来、入院、在宅など様々な場面における切れ目のない緩和ケアの実施
(3) 地域連携・支援を通じたがん診療水準の向上
① 拠点病院等による各種研修会、カンファレンスなどを通じた地域連携・支援の実施
② がん診療機能や在宅療養支援機能を有する医療機関が相互に連携を強化し、急変時の対応等に関して在宅療養中の患者に対する支援の実施
(4) 新興感染症の発生・まん延時における体制
① 新興感染症の発生・まん延時の状況に応じた適切ながん検診の提供体制
② 必要ながん医療を提供するための診療機能の役割分担や各施設が協力した人材育成や応援体制の構築等、地域の実情に応じた連携体制
2 各医療機能と連携
前記「1 目指すべき方向」を踏まえ、がんの医療体制に求められる医療機能を下記(1)から(3)に示す。
都道府県は、各医療機能の内容(目標、医療機関等に求められる事項等)について、地域の実情に応じて柔軟に設定すること。
(1) がんを予防する機能【予防・早期発見】
① 目標
・ 喫煙やがんと関連するウイルスの感染予防などがんのリスクを低減させること
・ 科学的根拠に基づくがん検診を実施し、がん検診の精度管理を実施することにより、がん検診受診率を向上させること
② 関係者に求められる事項
(医療機関)
・ がん検診の結果、要精密検査とされた者(以下「要精検者」という。)等に対して、がんに係る精密検査を実施すること
・ 精密検査の結果をフィードバックする等、がん検診の精度管理に協力すること
・ 都道府県や市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が実施するたばこ対策に積極的に協力すること
(行政)
・ 市町村は科学的根拠に基づくがん検診を実施すること
・ がん登録の情報の利用等を通じてがんの現状把握に努めること
・ 要精検者が確実に医療機関を受診するように連携体制を構築すること
・ 都道府県は、生活習慣病検診等管理指導協議会の一層の活用を図る等により、検診の実施方法の改善や精度管理の向上等に向けた取組を検討すること
・ 都道府県は、市町村に対して、指針の内容を遵守し、科学的根拠に基づくがん検診を実施するよう、必要な助言・指導等を実施すること
・ 禁煙希望者に対する禁煙支援や受動喫煙の防止等のたばこ対策に取り組むこと
・ 感染に起因するがん対策を推進すること
(2) がん診療機能【治療】
① 目標
・ 精密検査や確定診断等を実施すること
・ 診療ガイドラインに準じた診療を実施すること
・ 患者の状態やがんの病態に応じて、手術療法、放射線療法、薬物療法や、これらを組み合わせた集学的治療等を実施すること
・ がんと診断された時から患者とその家族等に対して全人的な緩和ケアを実施すること
・ 治療の合併症予防や、その症状の軽減を図ること
・ 治療後のフォローアップを行うこと
・ 各職種の専門性を活かし、医療従事者間の連携と相互補完を重視した多職種でのチーム医療を実施すること
② 医療機関に求められる事項
次に掲げる事項を含め、該当する医療機関は関係する診療ガイドラインに準じた診療を実施していることが求められる。
・ 血液検査、画像検査(エックス線検査、CT、MRI、核医学検査、超音波検査、内視鏡)及び病理検査等の、診断・治療に必要な検査が実施可能であること
・ 画像診断や病理診断等が実施可能であること
・ 患者の状態やがんの病態に応じて、手術療法、放射線療法、薬物療法や、これらを組み合わせた集学的治療等が実施可能であること
・ がんと診断された時から患者とその家族等に対して全人的な緩和ケアを実施すること
さらに、拠点病院等としては以下の対応が求められる。なお、詳細については、「がん診療連携拠点病院等の整備について」(令和4年8月1日付け健発0801第16号厚生労働省健康局長通知)を参照すること。
・ 患者の病態に応じて、より適切ながん医療を提供できるよう、多職種によるカンファレンスを設置し、月1回以上、開催すること
・ がんゲノム医療等の高度かつ専門的な医療等については、地域における役割分担等を踏まえつつ、必要に応じて他の医療機関と連携し実施すること
・ 患者とその家族等の意向に応じて、専門的な知識を有する第三者の立場にある医師の意見を求めるためのセカンドオピニオンを提示する体制を整備し、患者やその家族等に分かりやすく公表すること
・ 相談支援の体制を確保し、情報の収集・発信、患者・家族等の交流の支援等を実施していること。その際、小児・AYA世代のがん、希少がん、難治性がん等に関する情報についても提供できるよう留意すること
・ 就職支援や、仕事と治療の両立に向けた就労継続支援を行えるよう、事業者・産業医等との連携を含めた体制を確保し、相談支援や情報の発信等を行うこと
・ がんと診断された時から患者とその家族等に対して全人的な緩和ケアを実施するために必要な緩和ケアチームや外来での緩和ケア提供体制等を整備すること
・ がんの治療の合併症予防や、その病状の軽減を図るため、治療中の口腔管理を実施する病院内の歯科や歯科医療機関との連携を図ること
・ 地域連携支援の体制を確保するため、病院間の役割分担を進めるとともに、研修、カンファレンス、診療支援等を活用し、急変時の対応や緩和ケア等について、他のがん診療機能や在宅療養支援機能を有している医療機関等と連携すること
・ 院内がん登録を実施すること
③ 医療機関の例
・ 拠点病院等
・ 病院又は診療所
(3) 在宅療養支援機能【療養支援】
① 目標
・ 患者やその家族等の意向を踏まえ、在宅等の生活の場での療養を選択できるようにすること
・ 在宅緩和ケアを実施すること
② 医療機関等に求められる事項
・ 24時間対応が可能な在宅医療を提供していること
・ がん疼痛等に対する緩和ケアが実施可能であること
・ 看取りを含めた人生の最終段階におけるケアを24時間体制で提供すること
・ がん診療機能を有する医療機関等と、診療情報や治療計画を共有するなどして連携が可能であること(地域連携クリティカルパスを含む。)
・ 医療用麻薬を提供できること
③ 医療機関等の例
・ 病院又は診療所
・ 薬局(専門医療機関連携薬局を含む。)
・ 訪問看護事業所
第3 構築の具体的な手順
1 現状の把握
都道府県は、がんの医療体制を構築するに当たって、(1)及び(2)に示す項目を参考に、患者動向、医療資源及び医療連携等について、現状を把握すること。さらに、(3)に示す、病期・医療機能ごと及びストラクチャー・プロセス・アウトカムごとに分類された指標例により、数値で客観的に現状を把握すること。
なお、(1)及び(2)の各項目について、参考として調査名を示しているが、その他必要に応じて調査を追加されたい。
(1) 患者動向に関する情報
・ がん検診受診率(国民生活基礎調査など)
・ 喫煙率(国民生活基礎調査)
・ 罹患者数及びその内訳(性・年齢階級別、部位別)(全国がん登録)
・ がん患者の在宅死亡割合(人口動態統計)
・ 年齢調整死亡率(都道府県別年齢調整死亡率(業務・加工統計))
・ 都道府県の地域がん登録に基づく情報
(2) 医療資源・連携等に関する情報
① がん診療機能
・ 手術、放射線療法や外来化学療法の実施状況
・ がん診療を専門的に行う医療従事者数
・ 緩和ケアの実施状況
緩和ケアに関する基本的な知識を習得した医師
緩和ケアチームや緩和ケア外来の設置状況 等
・ 診療ガイドライン等に基づき作成されたクリティカルパスの整備状況
・ 周術期口腔機能管理の取組状況
・ 院内がん登録の実施状況
・ がん診療に関する情報提供の状況
パンフレットの配布、ホームページでの情報提供 等
・ 相談支援センターの整備状況
相談員の研修状況 等
・ 小児がん拠点病院・小児がん連携病院の連携状況
・ がんゲノム医療中核拠点病院等と都道府県内のがん診療を行う病院との連携状況
② 在宅療養支援機能
・ 在宅療養における24時間対応の有無
・ 疼痛等に対する緩和ケアの実施状況(医療機関、薬局)
・ がん診療機能を有する病院等との連携状況
③ がんの予防・早期発見
(医療機関等)
・ 禁煙外来の実施状況
・ 敷地内禁煙の実施状況
・ 薬局の禁煙指導状況
(行政)
・ がん検診の受診状況
・ 市町村におけるがん検診の精度管理の状況
(3) 指標による現状把握
別表1に掲げるような指標例により、地域の医療提供体制の現状を客観的に把握し、医療計画に記載すること。その際、地域住民の健康状態やその改善に寄与すると考えられるサービスに関する指標(重点指標)、その他国が提供するデータや独自調査データ、データの解析等により入手可能な指標(参考指標)に留意して、把握すること。
2 圏域の設定
(1) 都道府県は、がんの医療体制を構築するに当たって、「第2 医療体制の構築に必要な事項」を基に、前記「1 現状の把握」で収集した情報を分析し、予防、治療、療養支援等に関する医療機能を明確にして、圏域を設定すること。
(2) 医療機能を明確化するに当たって、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの施設が複数の機能を担うこともあり得る。逆に、圏域内に機能を担う施設が存在しない場合には、圏域の再設定を行うこともあり得る。
(3) 圏域を設定するに当たっては、各医療機能の実施状況を勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定すること。
(4) 検討を行う際には、地域医師会等の医療関係団体、現にがん診療に従事する者、がん患者・家族等、市町村等の各代表が参画すること。
3 連携の検討
(1) 都道府県は、がんの医療体制を構築するに当たって、予防から専門的治療、緩和ケア、再発予防や在宅療養まで継続して医療が行われるよう、また、関係機関・施設の信頼関係が醸成されるよう配慮すること。
さらに、医療機関、地域医師会等の関係者は、診療技術や知識の共有、診療情報の共有、連携する施設・医師等専門職種の情報の共有に努めること。
(2) 保健所は、「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(平成6年厚生省告示第374号)の規定に基づき、また、「医療計画の作成及び推進における保健所の役割について」(平成19年7月20日付け健総発第0720001号厚生労働省健康局総務課長通知)を参考に、医療連携の円滑な実施に向けて、地域医師会等と連携して医療機関相互の調整を行うなど、積極的な役割を果たすこと。
(3) 医療計画には、原則として、各医療機能を担う医療機関等の名称を記載すること。
なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関が複数の機能を担うこともある。
さらに、医療機関等の名称については、例えば医療連携体制の中で各医療機能を担う医療機関等が圏域内に著しく多数存在する場合にあっては、地域の実情に応じて記載することで差し支えないが、住民に分かりやすい周知に努めること。
4 課題の抽出
都道府県は、「第2 医療体制の構築に必要な事項」を踏まえ、「1 現状の把握」で収集した情報や指標により把握した数値から明確となった現状について分析を行い、地域のがんの医療体制の課題を抽出し、医療計画に記載すること。
その際、現状把握に用いたストラクチャー・プロセス・アウトカム指標の関連性も考慮し、病期・医療機能による分類も踏まえ、可能な限り医療圏ごとに課題を抽出すること。
5 数値目標
都道府県は、がんの良質かつ適切な医療を提供する体制について、事後に定量的な比較評価を行えるよう、「4 課題の抽出」で明確にした課題に対して、地域の実情に応じた目標項目やその数値目標、目標達成に要する期間を設定し、医療計画に記載すること。
数値目標の設定に当たっては、基本方針第十一に掲げる諸計画に定められる目標を勘案すること。
なお、達成可能なものだけを目標とするのではなく、真に医療圏の課題を解決するために必要な目標を設定すること。
6 施策
数値目標の達成には、課題に応じた施策を実施することが重要である。都道府県は、「4 課題の抽出」に対応するよう「5 数値目標」で設定した目標を達成するために行う施策について、医療計画に記載すること。
7 評価
計画の実効性を高めるためには、評価を行い、必要に応じて計画の内容を見直すことが重要である。都道府県は、あらかじめ評価を行う体制を整え、医療計画の評価を行う組織や時期を医療計画に記載すること。この際、少なくとも施策の進捗状況の評価については、1年ごとに行うことが望ましい。また、数値目標の達成状況、現状把握に用いた指標の状況について、少なくとも6年(在宅医療、医師の確保及び外来医療に関する事項については3年)ごとに調査、分析及び評価を行い、必要があるときは、都道府県はその医療計画を変更すること。
8 公表
都道府県は、住民に分かりやすい形で医療計画を公表し、医療計画やその進捗状況を周知する必要がある。このため、指標による現状把握、目標項目、数値目標、施策やその進捗状況、評価体制や評価結果を公表する。その際、広く住民に周知を図るよう努めること。
――――――――――
1 厚生労働省「人口動態統計(確定数)」(令和3年)
2 国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所「全国がん罹患モニタリング集計2019年罹患数・率報告」
3 国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所による推計値(2019年)
4 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所「院内がん登録5年生存率集計結果(2013―2014診断例)」(令和3年12月公表)
5 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所「院内がん登録5年生存率集計結果(2013―2014診断例)」(令和3年12月公表)
脳卒中の医療体制構築に係る指針
脳卒中を発症した場合、まず急性期医療において内科的・外科的治療が行われ、同時に機能回復のためのリハビリテーションが開始される。リハビリテーションを行ってもなお障害が残る場合、中長期の医療及び介護支援が必要となる。
このように一人の脳卒中患者に必要とされる医療・介護はその病期・転帰によって異なる。さらに、重篤な患者の一部には、急性期を乗り越えたものの、重度の後遺症等によって退院や転院が困難となる状況があることが指摘されており、それぞれの機関が相互に連携しながら、継続してその時々に必要な医療・介護・福祉を提供することが必要である。
平成30年12月に成立した、健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(平成30年法律第105号)に基づき、令和2年1月に設置された循環器病対策推進協議会では、脳卒中及び心血管疾患の医療に係るサービスの提供を含めた対策についての議論が行われ、同年10月に第1期循環器病対策推進基本計画が策定された。第1期循環器病対策推進基本計画の実行期間は3年を目安としていたため、令和5年3月には第2期循環器対策推進基本計画が策定され、関係する諸計画との調和の観点から、その実行期間は6年を目安とされた。都道府県は、この基本計画を基本とし、各都道府県における循環器病医療の現状等を踏まえて、「都道府県循環器病対策推進計画」を策定し、循環器病対策の総合的かつ計画的な推進を図っている。
本指針は、循環器病対策推進基本計画のうち医療計画に反映すべき事項等について、住民・患者の視点に立った計画を作成するという観点から、その考え方を示すものである。
具体的には、「第1 脳卒中の現状」で脳卒中の発症・転帰がどのようなものであるのか、どのような医療が行われているのかを概観し、次に「第2 医療体制の構築に必要な事項」でどのような医療体制を構築すべきかを示している。都道府県は、これらを踏まえつつ、「第3 構築の具体的な手順」に則して、地域の現状を把握・分析するとともに、また各病期に求められる医療機能を理解した上で、地域の実情に応じて圏域を設定し、その圏域ごとの医療機関とそれら医療機関相互の連携の検討を行い、最終的には都道府県全体で評価を行えるようにすること。
第1 脳卒中の現状
脳卒中は、脳血管の閉塞や破綻によって脳機能に障害が起きる疾患であり、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に大別される。
脳梗塞は、さらに、アテローム硬化(動脈硬化)により血管の内腔が狭くなりそこに血栓ができて脳血管が閉塞するアテローム血栓性脳梗塞、脳の細い血管が主に高血圧を基盤とする変化により閉塞するラクナ梗塞、心臓等に生じた血栓が脳血管まで流れ血管を閉塞する心原性塞栓症の3種類に分けられる。
また、脳出血は脳の細い血管が破綻するものであり、くも膜下出血は脳動脈瘤が破綻し出血するものである。
脳卒中発症直後の医療(急性期の医療)は、脳梗塞、脳出血及びくも膜下出血によって異なるが、急性期を脱した後の医療は共通するものが多いことから、本指針においては一括して記載することとする。
1 脳卒中の疫学
1年間に救急車によって搬送される急病患者の約7.5%、約27.0万人が脳卒中(脳血管疾患)を含む脳疾患である1。さらに、年間約10.5万人が脳卒中を原因として死亡し、死亡数全体の7.3%を占め、死亡順位の第4位である2。
脳卒中は、死亡を免れても後遺症として片麻痺、嚥下障害、言語障害、高次脳機能障害、遷延性意識障害などの後遺症が残ることがある。
介護が必要になった者の16.1%は脳卒中が主な原因であり第1位である3。
これらの統計から、脳卒中は、発症後命が助かったとしても後遺症が残ることも多く、患者及びその家族の日常生活に与える影響は大きい。
2 脳卒中の医療
(1) 予防
脳卒中の最大の危険因子は高血圧であり、発症の予防には高血圧のコントロールが重要である。その他、糖尿病、脂質異常症、不整脈(特に心房細動)、喫煙、過度の飲酒なども危険因子であり、生活習慣の改善や適切な治療が重要である。
また、脳卒中の無症候性病変、危険因子となる画像異常等の発見にはMRI、MRアンギオグラフィ(以下「MRA」という。)、頸動脈超音波検査が行われている。
一過性脳虚血発作(TIA)直後は脳梗塞発症リスクが高く、これを疑えば、脳梗塞予防のための適切な治療を速やかに開始する。
同時に、住民に脳卒中の症状や発症時の緊急受診の必要性を周知させるように、啓発を進める必要がある。
(2) 発症直後の救護、搬送等
脳卒中を疑うような症状が出現した場合、本人や家族等周囲にいる者は、速やかに専門の医療施設を受診できるよう行動することが重要である。できるだけ早く治療を始めることでより高い効果が見込まれ、さらに後遺症も少なくなることから、診断や治療の開始を遅らせることにならないよう、速やかに救急隊を要請する等の対処を行うことが重要である。
救急救命士を含む救急隊員は、メディカルコントロール体制※の下で定められた、病院前における脳卒中患者の救護のためのプロトコール(活動基準)に則して、適切に観察・判断・救急救命処置等を行った上で、対応が可能な医療機関に搬送することが重要である。このため、病院到着前に脳卒中の重症度を点数化し、組織プラスミノゲン・アクチベータ(t―PA)の静脈内投与による血栓溶解療法の適応や血管内治療(機械的血栓回収療法、経動脈的血栓溶解療法等)など、超急性期の再開通治療の適応※※となる傷病者を抽出することなどを目的とした病院前脳卒中スケールを活用することが望ましい。
※ メディカルコントロール体制については、「救急医療の体制構築に係る指針」参照。
※※ 超急性期の再開通治療(t―PAなど)の適応:t―PA静注療法は、発症4.5時間以内の脳梗塞患者のうち、広範な早期脳虚血性変化や頭蓋内出血などの禁忌項目に該当しない患者が対象となる。また、脳梗塞を発症した時刻が不明であっても、MRIの画像所見に基づき、t―PA静注療法の適応となることがある。機械的血栓回収療法は、症状の重症度と画像所見に基づいた治療適応判定を行うことで、発症24時間以内の脳梗塞が対象となる。経動脈的血栓溶解療法は発症6時間以内の脳梗塞の一部が対象となる。
(3) 診断
問診や身体所見の診察等に加えて、画像検査(CT、MRI、MRA、超音波検査等)を行うことで正確な診断が可能になる。最近ではCTの画像解像度の向上、MRIの普及もあり、脳梗塞超急性期の診断が可能となり、超急性期の再開通治療の適応や転帰がある程度予測が可能になった。特に、機械的血栓回収療法の治療適応を検討する際には、CT又はMRIを用いた脳血流の灌流画像が有用である。
また、救急患者のCT、MRI画像を専門的な診断が可能な施設へネットワーク経由で伝送すること等により、専門的な医師がいない医療機関で早期診断を行うことも考えられる。
(4) 急性期の治療
脳卒中の急性期には、呼吸管理、循環管理等の全身管理とともに、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血等の個々の病態に応じた治療が行われる。
① 脳梗塞では、まず発症後4.5時間以内の超急性期血栓溶解療法(t―PA静注療法)の適応患者に対する適切な処置が取られる必要がある。また、脳梗塞を発症した時刻が不明であっても、MRIの画像所見に基づき、t―PA静注療法の適応となることがあるため、発症時刻が明確ではない脳梗塞患者に対しても適切な処置を行う必要がある。t―PA静注療法は、治療開始までの時間が短いほどその有効性は高いことから、来院後に少しでも早く治療を開始する(遅くとも来院後1時間以内に治療を開始することが望ましい。)。なお、国内の一部の地域においては、t―PA静注療法を行う際、日本脳卒中学会が定める「脳卒中診療における遠隔医療(Telestroke)ガイドライン」に沿って、情報通信機器を用いて他の医療機関と連携し、診療を行うことが可能である。また、脳梗塞に対する機械的血栓回収療法については、症状の重症度と画像所見に基づき、発症後24時間以内の脳梗塞に対して適応となる可能性がある。機械的血栓回収療法についても、治療開始までの時間が短いほどその有効性は高いため、機械的血栓回収療法の適応と考えられる脳梗塞患者については、速やかに治療を開始する必要がある。また、機械的血栓回収療法が実施できない施設においては、同療法を実施可能な医療機関への速やかな転院搬送を検討する必要がある。
また、超急性期の再開通治療の適応とならない患者も、できる限り早期に、脳梗塞の原因に応じた、抗凝固療法や抗血小板療法、脳保護療法などを行うことが重要である。
② 脳出血の治療は、血圧や脳浮腫の管理、凝固能異常時の是正が主体であり、出血部位(皮質・皮質下出血や小脳出血等)によって手術が行われることもある。
③ くも膜下出血の治療は、動脈瘤の再破裂の予防が重要であり、再破裂の防止を目的に開頭手術による外科的治療又は開頭を要しない血管内治療を行われることもある。
また、脳卒中の治療に際しては、専門チームによる診療や脳卒中の専用病室※等での入院管理により予後を改善できることが明らかになってきている。
※ 専門医療スタッフが急性期からの濃厚な治療とリハビリテーションを組織的かつ計画的に行う脳卒中専用の治療病室。例えば、診療報酬上で脳卒中の入院医療管理料が算定できる治療室である脳卒中ケアユニット等。
(5) リハビリテーション
脳卒中のリハビリテーションは、病期によって分けられるが、急性期から維持期・生活期まで一貫した流れで行われることが勧められる。
① 急性期に行うリハビリテーションは、廃用症候群や合併症の予防及びセルフケアの早期自立を目的として、可能であれば発症当日からベッドサイドで開始することが望ましい。
② 回復期に行うリハビリテーションは、機能回復や日常生活動作(ADL)の向上を目的として、訓練室での訓練が可能になった時期から集中して実施することが望ましい。
③ 維持期・生活期に行うリハビリテーションは、回復した機能や残存した機能を活用し、歩行能力等の生活機能の維持・向上を目的として実施することが望ましい。
(6) 急性期以後の医療・在宅療養
急性期を脱した後は、再発予防のための治療、基礎疾患や危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈(特に心房細動)、喫煙、過度の飲酒等)の継続的な管理、脳卒中に合併する種々の症状や病態に対する加療が行われる。
在宅療養では、上記治療に加えて、機能を維持するためのリハビリテーションを実施し、在宅生活に必要な介護サービスを受ける。脳卒中は再発することも多く、患者や患者の周囲にいる者に対し、適切な服薬や危険因子の管理の継続の必要性及び脳卒中の再発が疑われる場合の適切な対応について教育する等、再発に備えることが重要である。
なお、重篤な神経機能障害・精神機能障害等を生じた患者の一部では、急性期を脱しても重度の後遺症等により退院や転院が困難となっている状況が見受けられる。これらの患者は、急性期の医療機関において救命医療を受けたものの、重度の後遺症等のため、回復期の医療機関等への転院や退院が行えず、当該医療機関にとどまっていることが指摘されている。
この問題の改善には、急性期以後の医療機関における診療及び在宅医療を強化するとともに、これらの医療機関、介護・福祉施設等と、急性期の医療機関との連携を強化するなど、総合的かつ切れ目のない対応が必要である。
第2 医療体制の構築に必要な事項
1 目指すべき方向
前記「第1 脳卒中の現状」を踏まえ、個々の医療機能、それを満たす医療機関、さらにそれら医療機関相互の連携により、医療から介護サービスまでが連携し継続して実施される体制を構築すること。また、都道府県は、医療機関の協力を得て、脳卒中に関する市民への啓発を積極的に行うことが重要である。
(1) 発症後、速やかな搬送と専門的な診療が可能な体制
① 発症後、専門的な診療が可能な医療機関への迅速な救急搬送
② 医療機関到着後1時間以内の専門的な治療の開始
③ 専門的な治療を実施できない施設から、治療可能な施設への速やかな転院搬送
④ 脳卒中診療の地域格差を解消し、均てん化を進めるための、デジタル技術を活用した診療の拡充
(2) 病期に応じたリハビリテーションが一貫して実施可能な体制
① 廃用症候群や合併症の予防、セルフケアの早期自立のためのリハビリテーションの実施
② 機能回復及び日常生活動作向上のために専門的かつ集中的なリハビリテーションの実施
③ 生活機能を維持又は向上させるリハビリテーションの実施
